切断装置
【課題】金属板の切断精度を維持しつつ、冷却水の金属板への付着を抑制した切断装置を提供することにある。
【解決手段】金属板6,7の通板経路の上方および下方にそれぞれ配置され、切断刃11,12が組み付けられた上ドラム13および下ドラム14と、上ドラム13へ冷却水Wを噴射する上スプレーヘッダ15a,15bとを備え、上ドラム13と下ドラム14とを回転駆動して金属板6,7を切断する切断装置10であって、上ドラム13に近接して配置され、上スプレーヘッダ15a,15bによって上ドラム13へ噴射された冷却水を捕捉する冷却水捕捉機構20,30を具備した。
【解決手段】金属板6,7の通板経路の上方および下方にそれぞれ配置され、切断刃11,12が組み付けられた上ドラム13および下ドラム14と、上ドラム13へ冷却水Wを噴射する上スプレーヘッダ15a,15bとを備え、上ドラム13と下ドラム14とを回転駆動して金属板6,7を切断する切断装置10であって、上ドラム13に近接して配置され、上スプレーヘッダ15a,15bによって上ドラム13へ噴射された冷却水を捕捉する冷却水捕捉機構20,30を具備した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金属素材(スラブなど)を粗圧延機により粗圧延してなる金属板の先端と後端とを複数の仕上圧延機からなる仕上圧延機群の前に配置される切断装置(以下、仕上前CSと称す)により切断し、複数の仕上圧延機により所望の板厚まで圧延する(仕上げ圧延する)工程を一つのスラブ毎に行う熱間圧延設備が知られている。
【0003】
また、上述した熱間圧延設備において、粗圧延機と仕上前CSとの間に接合機を設置することで、この接合機により複数の金属板を先行の金属板の後端と後行の金属板の先端とを接合し連続して仕上げ圧延する熱間圧延設備も知られている。このような熱間圧延設備では、接合機の入側(粗圧延機と接合機との間)に切断装置(以下、接合前CSと称す)が配置されており、先行材の金属板の後端と後行材の金属板の先端、いわゆる接合面のクロップが切り落とされている。
【0004】
さらに、上述した、接合機を有する熱間圧延設備においても、一つのスラブ毎に仕上げ圧延するバッチ処理を行う場合には、上記接合前CSを使用せず、上記仕上前CSのみを使用している。
【0005】
ここで、金属板は高温であり、この金属板からの輻射熱により接合前CSおよび仕上前CSは加熱されている。これらCSとしては、ドラムに切断刃が取り付けられたドラム型のクロップシャー(CS)が用いられる。このようなドラム型のCSでは、この周方向の延びを抑制して切断精度を維持するために、上記ドラムに冷却水を噴射することで冷却している(例えば特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】特表2006−509638号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した熱間圧延設備では、冷却水の噴射により接合前CSおよび仕上前CSが冷却され、それが有するドラムの熱変形を抑制してその切断精度を維持することができるものの、金属板を連続処理する場合には、CS内を連続的に金属板が通板することとなり、ドラムに噴射した冷却水が金属板に付着しこの金属板の品質が変化してしまう可能性があった。
【0008】
そこで、本発明は、前述した問題に鑑み提案されたもので、金属板の切断精度を維持しつつ、冷却水の金属板への付着を抑制した切断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決する第1の発明に係る切断装置は、
金属板の通板経路の上方および下方にそれぞれ配置され、切断刃が組み付けられた上ドラムおよび下ドラムと、前記上ドラムへ冷却水を噴射する冷却水噴射手段とを備え、前記上ドラムと前記下ドラムとを回転駆動して前記金属板を切断する切断装置であって、
前記上ドラムに近接して配置され、前記冷却水噴射手段によって前記上ドラムへ噴射された冷却水を捕捉する冷却水捕捉機構を具備した
ことを特徴とする。
【0010】
上述した課題を解決する第2の発明に係る切断装置は、第1の発明に係る切断装置であって、
前記冷却水捕捉機構が、前記金属板の幅よりも長尺であり、上方が開放した樋状部材である
ことを特徴とする。
【0011】
上述した課題を解決する第3の発明に係る切断装置は、第2の発明に係る切断装置であって、
前記樋状部材の先端部にワイパブレードを設ける
ことを特徴とする。
【0012】
上述した課題を解決する第4の発明に係る切断装置は、第1乃至第3の何れか一つの発明に係る切断装置であって、
前記上ドラムに組み付けられた前記切断刃が一対であり、前記一対の切断刃が前記上ドラムの同一平面上に配置されたものであり、
前記冷却水捕捉機構を、前記冷却水を捕捉する捕捉位置と、前記捕捉位置から離間した退避位置との間で移動させる移動手段を具備し、
前記移動手段が、前記上ドラムの前記一対の切断刃を水平に配置したときに、前記冷却水噴射手段により前記上ドラムへ前記冷却水を噴射するように制御すると共に、前記冷却水捕捉機構を前記捕捉位置に位置付けるように制御し、前記上ドラムを回転移動するときに、前記冷却水噴射手段による前記上ドラムへの前記冷却水の噴射を停止するように制御すると共に、前記冷却水捕捉機構を前記退避位置に位置付けるように制御する制御手段を備えた
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る切断装置によれば、冷却水捕捉機構が上ドラムへ噴射された冷却水を捕捉するため、冷却水により上ドラムを冷却して上ドラムの熱変形を抑制する。その結果、上ドラムに組み付けられた切断刃の位置ずれが無くなり、金属板の切断精度を維持できる。また、冷却水噴射手段により上ドラムへ噴射した冷却水を冷却水捕捉機構が捕捉し、金属板への冷却水の付着を抑制する。その結果、金属板への冷却水の付着に起因した当該金属板の品質の変化を抑制できる。
【0014】
本発明に係る切断装置によれば、冷却水捕捉機構が、金属板の幅よりも長尺であり、上方が開放した樋状部材であることにより、冷却水捕捉機構自体が簡易であり、装置のコスト増を抑制できる。
【0015】
本発明に係る切断装置によれば、樋状部材の先端部にワイパブレードを設けることにより、ワイパブレードと上ドラムに組み付けられた切断刃との間の隙間の大きさを調整できる。これにより、上ドラムの下側へ到達する冷却水の量を調整でき、冷却水により上ドラムの全体を冷却できる。その結果、上ドラムの熱変形を抑制し、この上ドラムに取り付けられた切断刃の位置ずれがなくなり、金属板の切断精度を維持することができる。
【0016】
本発明に係る切断装置によれば、上ドラムに組み付けられた切断刃が一対であり、一対の切断刃が上ドラムの同一平面上に配置されたものであり、冷却水捕捉機構を、冷却水を捕捉する捕捉位置と、捕捉位置から離間した退避位置との間で移動させる移動手段を具備し、移動手段が、上ドラムの一対の切断刃を水平に配置したときに、冷却水噴射手段により上ドラムへ冷却水を噴射するように制御すると共に、冷却水捕捉機構を捕捉位置に位置付けるように制御し、上ドラムを回転移動するときに、冷却水噴射手段による上ドラムへの冷却水の噴射を停止するように制御すると共に、冷却水捕捉機構を退避位置に位置付けるように制御する制御手段を備えたことにより、冷却水噴射手段によって噴射された冷却水を冷却水捕捉機構で確実に捕捉できる。その結果、金属板への冷却水の付着を抑制して当該金属板の品質の変化を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本発明に係る切断装置を実施するための最良の形態を実施例に基づき具体的に説明する。
【実施例1】
【0018】
本発明の第1の実施例に係る切断装置について、図1および図2を参照して説明する。
図1は、本発明の第1の実施例に係る切断装置を具備する熱間圧延設備の概略図である。図2は、切断装置の側面図である。図2にて、冷却水捕捉機構を捕捉位置に位置付けた場合を実線にて示し、冷却水捕捉機構を退避位置に位置付けた場合を二点鎖線にて示す。
【0019】
本実施例に係る切断装置を具備する熱間圧延設備は、図1に示すように、上流側から粗圧延機(以下、粗ミルと称す)1、コイルボックス2、接合機3、複数段の圧延機により構成される仕上圧延機(以下、仕上ミルと称す)4およびダウンコイラー5を備える。
【0020】
粗ミル1でスラブが圧延されてなる金属板6,7はコイルボックス2のコイラーに巻き取られる。コイルボックス2のコイラーから巻き出された後行金属板6は後行金属板6の先端を接合前切断装置10により切断された後、接合機3で必要に応じて接合前切断装置10により端部が切断された先行金属板7の後端と接合機3で接合される。
【0021】
接合機3で接合されて連続状態となった金属板(連続帯鋼)および接合機3で接合しなかった金属板は、仕上ミル4に送られる。
【0022】
仕上ミル4に送られた金属板7は複数段の圧延機により順次熱間圧延されて所望の板厚に圧延され、所望の板厚に圧延された金属板7はダウンコイラー5に巻き取られる。ダウンコイラー5の入側(仕上ミル4の出側)には切断手段8が配置され、この切断手段8により所定の部位が切断されて製品コイルとなる。
【0023】
図1中の符号で、9は仕上ミルの入側に設けられた仕上前切断装置であり、この仕上前切断装置9により金属板の先端および後端が切断される。
なお、仕上前切断装置9の配置は、熱間圧延設備の状況などにより適宜選択して配置されるものであり、配置位置や配置の有無などは図示例に限定されるものではない。
【0024】
ここで、接合前切断装置10について、図2を参照して詳細に説明する。
接合前切断装置10は、図2に示すように、ハウジング18内における、金属板6,7の通板経路の上方に配置され、2つの切断刃11a,11bが組み付けられた上ドラム13と、金属板6,7の通板経路の下方に配置され、2つの切断刃12a,12bが組み付けられた下ドラム14と、上ドラム13における上側の外周に冷却水Wを噴射する上スプレーヘッダ(冷却水噴射手段)15a,15bとを有し、上ドラム13と下ドラム14とを回転駆動して金属板6,7を切断する切断装置である。
【0025】
上述した接合前切断装置10では、上ドラム13に近接して配置され、上スプレーヘッダ15a,15bから上ドラム13へ噴射された冷却水を捕捉する冷却水捕捉機構20,30が設けられている。接合前切断装置10の金属板6,7の入側および出側には、テーブルローラ19が複数配置されており、これにより金属板6,7が通板される。
【0026】
なお、下ドラム14の下方には下スプレーヘッダ17a,17bが設けられており、これら下スプレーヘッダ17a,17bから噴射された冷却水Wにより下ドラム14が冷却される。これにより、金属板6,7の輻射熱による下ドラム14の熱変形が抑制され、この下ドラム14に取り付けられた切断刃12a,12bの位置ずれがなくなり、金属板6,7の切断精度を維持することができる。
【0027】
上ドラム13は、回転方向に沿う断面にて長径と短径を有する略楕円状に形成されている。切断刃11aと切断刃11bとは、上ドラム13の長径をなす円弧状の周面に対向して配置される。すなわち、切断刃11aと切断刃11bとは、上ドラム13の長径をなす円弧状の周面にて同一平面上に配置される。金属板6,7を切断しない場合には、上ドラム13の長径(切断刃11aと切断刃11b)を水平となる位置に配置して、上ドラム13を停止する。このような位置にて上ドラム13を停止することにより、上ドラム13と金属板6,7との距離を確保することができ、金属板6,7からの輻射熱による上ドラム13の熱変形を抑制し、この上ドラム13に取り付けられた切断刃11a,11bの位置ずれがなくなり、金属板6,7の切断精度を維持することができる。
【0028】
他方、下ドラム14は、回転方向に沿う断面にて略円状に形成されている。切断刃12aと切断刃12bとは、下側ドラム14の周面に対向して配置される。すなわち、切断刃12aと切断刃12bとは、下側ドラム14の周面にて同一平面上に配置される。金属板6,7を切断しない場合には、切断刃12aと切断刃12bを水平となる位置に配置して、下ドラム14を停止する。
【0029】
なお、上述した上ドラム13および下ドラム14は、図示しない駆動源により同期して回転駆動される。
【0030】
冷却水捕捉機構20,30は、接合前切断装置10の金属板6,7の入側および出側にそれぞれ配置される。接合前切断装置10の金属板6,7の入側および出側に配置された冷却水捕捉機構20,30は、上述した金属板6,7の幅よりも長尺である。具体的には、冷却水捕捉機構20,30は、それぞれ、底板部21,31と、この底板部21,31の基端部側に接続し、垂直に延在する垂直側壁部23,33と、底板部21,31の先端部側に接続し、上ドラム13側へ延在すると共に、水平方向から上方へ傾斜して延在する傾斜側壁部22,32と、垂直側壁部23,33の上端部に接続し、上ドラム13側へ向けて水平方向に延在する上板部24,34とを具備している。冷却水捕捉機構20,30では、上板部24,34の先端部側が傾斜側壁部22,32の先端部22a,32aと離間しておりこの箇所に開口部25,35が形成されている。すなわち、冷却水捕捉機構20,30は、金属板6,7の幅よりも長尺であり、上方が開放した樋状部材である。
【0031】
冷却水捕捉機構20,30の傾斜側壁部22,32の先端部22a,32aには、上ドラム13へ向けて直線状に延在する第1のワイパブレード26,36がそれぞれ設けられている。上ドラム13の切断刃11aおよび切断刃11bを水平に配置した場合における、切断刃11aまたは切断刃11bと第1のワイパブレード26,36の隙間の大きさを調整できる。
【0032】
上述した第1のワイパブレード26,36と切断刃11a,11bとの間の大きさは、金属板6,7を切断しない時に(上ドラム13停止時に)、所定の間隔、例えば約2mm以上5mm以下となるように調整する。このように隙間の大きさを調整することで、上スプレーヘッダ15a,15bから噴射され、上ドラム13の上側からこの下側へ到達する冷却水Wの流量を調整できる。すなわち、上ドラム13の上側の外周を伝わった冷却水Wのうちの大部分を、第1のワイパブレード26,36を介して冷却水捕捉機構20,30に案内し金属板6,7の通板経路の外側へ排水する一方、冷却水Wの一部が切断刃11a,11bと第1のワイパブレード26,36との間を通り、上ドラム13の下側へ到達する。これにより、上ドラム13の下側を冷却して、上ドラム13の全体が冷却される。その結果、上ドラム13の熱変形をさらに抑制し、この上ドラム13に取り付けられた切断刃11a,11bの位置ずれがなくなり、金属板6,7の切断精度を維持することができる。
【0033】
上スプレーヘッダ15a,15bから噴射された冷却水Wの一部が上ドラム13の下側へ到達し上ドラム13から落下して金属板6,7に付着することになるが、その量が切断刃11a,11bと第1のワイパブレード26,36との隙間により調整されて上スプレーヘッダ15a,15bから噴射される冷却水Wの一部のみとなるため、金属板6,7への冷却水Wの付着量が少なく、この冷却水の金属板6,7への付着に起因した金属板6,7の品質の変化が抑制される。
【0034】
上述した接合前切断装置10は、図2に示すように、金属板6,7の入側および出側にそれぞれ配置され、金属板6,7を通板するガイドローラ42,52を具備し、回動自在な通板機構40,50を具備する。さらに、接合前切断装置10は、通板機構40,50にそれぞれ連結され、上ドラム13へ噴射された冷却水を捕捉する捕捉位置と、この捕捉位置から離間した退避位置との間で移動させる移動機構(移動手段)60,70をさらに具備する。なお、これら通板機構40,50には、上述した冷却水捕捉機構20,30がそれぞれ固定される。
【0035】
通板機構40,50は、ガイドローラ42,52を回転可能に支持する通板機構本体41,51を具備する。これら通板機構本体41,51は、軸81,82を介して接合前切断装置10に回動可能に支持される。ガイドローラ42,52は、図示しないギヤなどを介して駆動源である駆動モータ(図示せず)に連結されており、前記駆動モータを駆動することで、ガイドローラ42,52が回転し、この回転により金属板6,7を通板している。
【0036】
上述した移動機構60,70は、一端部側が軸体61,71を介し回転可能に固定されたシリンダ62,72と、シリンダ62,72内への油圧の給排などにより伸縮するロッド63,73とを有する。ロッドの先端部63a,73aは、軸体64,74を介して通板機構本体41,51にそれぞれ支持される。そして、この移動機構60,70は、上ドラム13の一対の切断刃11a,11bを水平に配置したときに、上スプレーヘッダ15a,15bにより上ドラム13へ冷却水Wを噴射するように制御すると共に、冷却水捕捉機構20,30を捕捉位置に位置付けるように制御し、上ドラム13を回転移動するときに、上スプレーヘッダ15a,15bによる上ドラム13への冷却水の噴射を停止するように制御すると共に、冷却水捕捉機構20,30を退避位置に位置付けるように制御する図示しない制御装置(制御手段)を備えている。
【0037】
ここで、通板機構本体41,51の下部には、冷却水Wを金属板6,7の通板経路の外側へ案内する、ドラム13,14の中心軸と同一方向に延在し、金属板6,7の通板経路よりも長尺な板状の案内部材83,84がそれぞれ設けられ、この案内部材83,84の先端には第2のワイパブレード85,86がそれぞれ固定される。通板機構40,50が上述した退避位置に配置される場合に、第2のワイパブレード85,86が上ドラム13の切断刃11a,11b近傍にそれぞれ配置される。これら第2のワイパブレード85,86と切断刃11a,11bとの隙間の大きさを調整することで、上スプレーヘッダ15a,15bから噴射され、上ドラム13の上側からこの下側へ到達する冷却水Wの流量を調整できる。すなわち、上ドラム13の上側の外周を伝わった冷却水Wのうちの大部分を、第2のワイパブレード85,86を介して案内部材83,84に案内して金属板6,7の通板経路の外側に排水する一方、冷却水Wの一部が切断刃11a,11bと第2のワイパブレード85,86との間を通り、上ドラム13の下側へ到達する。これにより、上ドラム13の下側を冷却して、上ドラム13の全体を冷却する。その結果、上ドラム13の熱変形をさらに抑制し、この上ドラム13に取り付けられた切断刃11a,11bの位置ずれがなくなり、金属板6,7の切断精度を維持することができる。
【0038】
したがって、本実施例に係る切断装置10によれば、冷却水捕捉機構20,30が上ドラム13へ噴射された冷却水を捕捉するため、冷却水により上ドラム13を冷却して上ドラム13の熱変形を抑制する。その結果、上ドラム13に組み付けられた切断刃11a,11bの位置ずれが無くなり、金属板6,7の切断精度を維持できる。また、上スプレーヘッダ15a,15bにより上ドラム13へ噴射した冷却水を冷却水捕捉機構20,30で捕捉し、金属板6,7への冷却水の付着を抑制する。その結果、金属板6,7への冷却水の付着に起因した当該金属板6,7の品質の変化を抑制できる。具体的には、冷却水捕捉機構20,30を具備することにより、上スプレーヘッダ15a,15bから噴射し、上ドラム13における上側の外周を伝わって流れる冷却水Wの大部分を捕捉して、冷却水Wの金属板6,7への付着を抑制する。これにより金属板6,7の品質の変化を抑制できる。また、上スプレーヘッダ15a,15bから噴射された冷却水Wにより上ドラム13の上側を冷却する一方、この冷却水Wの一部が上ドラム13の下側へ伝わり上ドラム13の下側を冷却して、上ドラム13の全体を冷却する。これにより金属板6,7の輻射熱による上ドラム13の熱変形を抑制し、この上ドラム13に取り付けられた切断刃11a,11bの位置ずれがなくなり、金属板6,7の切断精度を維持できる。
【0039】
なお、上記では、接合前切断装置10における金属板6,7の入側および出側のそれぞれに冷却水捕捉機構20,30を設けた接合前切断装置10を用いて説明したが、切断装置の入側または切断装置の出側にのみ冷却水捕捉機構を設けた接合前切断装置とすることも可能である。このような接合前切断装置であっても、上述した接合前切断装置10と同様な作用効果を奏する。
【0040】
上記では、冷却水捕捉機構20,30を具備する接合前切断装置10を用いて説明したが、このような冷却水捕捉機構を具備する仕上前切断装置とすることも可能である。このような仕上前切断装置であっても、上述した接合前切断装置10と同様な作用効果を奏する。
【0041】
上記では、冷却水捕捉機構20,30が有する第1,第2のワイパブレード26,36,85,86と上ドラム13に取り付けられた切断刃11a,11bとの隙間を調整することで、上ドラム13の上側からこの下側へ到達する冷却水Wの流量を調整した切断前切断装置10を用いて説明したが、第1,第2のワイパブレードの先端を櫛状にし、これらの先端部を上ドラムに取り付けられた切断刃に近接する形状(大きさ)にして、上ドラムの上側からこの下側へ到達する冷却水の流量を調整することも可能である。このような冷却水捕捉機構を具備する切断装置であっても、上述した接合前切断装置10と同様な作用効果を奏する。
【0042】
上記では、冷却水捕捉機構20,30が通板機構40,50に固定された切断装置10を用いて説明したが、これら冷却水捕捉機構20,30を、上ドラム13へ噴射された冷却水を捕捉する捕捉位置と、この捕捉位置から離間した退避位置との間で移動可能にハウジング18に支持させた切断装置とすることも可能である。このような切断装置であっても、上述した接合前切断装置10と同様な作用効果を奏する。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、切断装置に利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の第1の実施例に係る切断装置を具備する熱間圧延設備の概略図である。
【図2】本発明の第1の実施例に係る切断装置の側面図である。
【符号の説明】
【0045】
1 粗圧延機
2 コイルボックス
3 接合機
4 仕上圧延機
5 ダウンコイラー
6 金属板(後行金属板)
7 先行金属板
9 仕上前切断装置
10 接合前切断装置
11,12 切断刃
13 上ドラム
14 下ドラム
18 ハウジング
20,30 冷却水捕捉機構
26,36 第1のワイパブレード
40,50 通板機構
42,52 ガイドローラ
60,70 移動機構
83,84 案内部材
85,86 第2のワイパブレード
【技術分野】
【0001】
本発明は、切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金属素材(スラブなど)を粗圧延機により粗圧延してなる金属板の先端と後端とを複数の仕上圧延機からなる仕上圧延機群の前に配置される切断装置(以下、仕上前CSと称す)により切断し、複数の仕上圧延機により所望の板厚まで圧延する(仕上げ圧延する)工程を一つのスラブ毎に行う熱間圧延設備が知られている。
【0003】
また、上述した熱間圧延設備において、粗圧延機と仕上前CSとの間に接合機を設置することで、この接合機により複数の金属板を先行の金属板の後端と後行の金属板の先端とを接合し連続して仕上げ圧延する熱間圧延設備も知られている。このような熱間圧延設備では、接合機の入側(粗圧延機と接合機との間)に切断装置(以下、接合前CSと称す)が配置されており、先行材の金属板の後端と後行材の金属板の先端、いわゆる接合面のクロップが切り落とされている。
【0004】
さらに、上述した、接合機を有する熱間圧延設備においても、一つのスラブ毎に仕上げ圧延するバッチ処理を行う場合には、上記接合前CSを使用せず、上記仕上前CSのみを使用している。
【0005】
ここで、金属板は高温であり、この金属板からの輻射熱により接合前CSおよび仕上前CSは加熱されている。これらCSとしては、ドラムに切断刃が取り付けられたドラム型のクロップシャー(CS)が用いられる。このようなドラム型のCSでは、この周方向の延びを抑制して切断精度を維持するために、上記ドラムに冷却水を噴射することで冷却している(例えば特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】特表2006−509638号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した熱間圧延設備では、冷却水の噴射により接合前CSおよび仕上前CSが冷却され、それが有するドラムの熱変形を抑制してその切断精度を維持することができるものの、金属板を連続処理する場合には、CS内を連続的に金属板が通板することとなり、ドラムに噴射した冷却水が金属板に付着しこの金属板の品質が変化してしまう可能性があった。
【0008】
そこで、本発明は、前述した問題に鑑み提案されたもので、金属板の切断精度を維持しつつ、冷却水の金属板への付着を抑制した切断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決する第1の発明に係る切断装置は、
金属板の通板経路の上方および下方にそれぞれ配置され、切断刃が組み付けられた上ドラムおよび下ドラムと、前記上ドラムへ冷却水を噴射する冷却水噴射手段とを備え、前記上ドラムと前記下ドラムとを回転駆動して前記金属板を切断する切断装置であって、
前記上ドラムに近接して配置され、前記冷却水噴射手段によって前記上ドラムへ噴射された冷却水を捕捉する冷却水捕捉機構を具備した
ことを特徴とする。
【0010】
上述した課題を解決する第2の発明に係る切断装置は、第1の発明に係る切断装置であって、
前記冷却水捕捉機構が、前記金属板の幅よりも長尺であり、上方が開放した樋状部材である
ことを特徴とする。
【0011】
上述した課題を解決する第3の発明に係る切断装置は、第2の発明に係る切断装置であって、
前記樋状部材の先端部にワイパブレードを設ける
ことを特徴とする。
【0012】
上述した課題を解決する第4の発明に係る切断装置は、第1乃至第3の何れか一つの発明に係る切断装置であって、
前記上ドラムに組み付けられた前記切断刃が一対であり、前記一対の切断刃が前記上ドラムの同一平面上に配置されたものであり、
前記冷却水捕捉機構を、前記冷却水を捕捉する捕捉位置と、前記捕捉位置から離間した退避位置との間で移動させる移動手段を具備し、
前記移動手段が、前記上ドラムの前記一対の切断刃を水平に配置したときに、前記冷却水噴射手段により前記上ドラムへ前記冷却水を噴射するように制御すると共に、前記冷却水捕捉機構を前記捕捉位置に位置付けるように制御し、前記上ドラムを回転移動するときに、前記冷却水噴射手段による前記上ドラムへの前記冷却水の噴射を停止するように制御すると共に、前記冷却水捕捉機構を前記退避位置に位置付けるように制御する制御手段を備えた
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る切断装置によれば、冷却水捕捉機構が上ドラムへ噴射された冷却水を捕捉するため、冷却水により上ドラムを冷却して上ドラムの熱変形を抑制する。その結果、上ドラムに組み付けられた切断刃の位置ずれが無くなり、金属板の切断精度を維持できる。また、冷却水噴射手段により上ドラムへ噴射した冷却水を冷却水捕捉機構が捕捉し、金属板への冷却水の付着を抑制する。その結果、金属板への冷却水の付着に起因した当該金属板の品質の変化を抑制できる。
【0014】
本発明に係る切断装置によれば、冷却水捕捉機構が、金属板の幅よりも長尺であり、上方が開放した樋状部材であることにより、冷却水捕捉機構自体が簡易であり、装置のコスト増を抑制できる。
【0015】
本発明に係る切断装置によれば、樋状部材の先端部にワイパブレードを設けることにより、ワイパブレードと上ドラムに組み付けられた切断刃との間の隙間の大きさを調整できる。これにより、上ドラムの下側へ到達する冷却水の量を調整でき、冷却水により上ドラムの全体を冷却できる。その結果、上ドラムの熱変形を抑制し、この上ドラムに取り付けられた切断刃の位置ずれがなくなり、金属板の切断精度を維持することができる。
【0016】
本発明に係る切断装置によれば、上ドラムに組み付けられた切断刃が一対であり、一対の切断刃が上ドラムの同一平面上に配置されたものであり、冷却水捕捉機構を、冷却水を捕捉する捕捉位置と、捕捉位置から離間した退避位置との間で移動させる移動手段を具備し、移動手段が、上ドラムの一対の切断刃を水平に配置したときに、冷却水噴射手段により上ドラムへ冷却水を噴射するように制御すると共に、冷却水捕捉機構を捕捉位置に位置付けるように制御し、上ドラムを回転移動するときに、冷却水噴射手段による上ドラムへの冷却水の噴射を停止するように制御すると共に、冷却水捕捉機構を退避位置に位置付けるように制御する制御手段を備えたことにより、冷却水噴射手段によって噴射された冷却水を冷却水捕捉機構で確実に捕捉できる。その結果、金属板への冷却水の付着を抑制して当該金属板の品質の変化を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本発明に係る切断装置を実施するための最良の形態を実施例に基づき具体的に説明する。
【実施例1】
【0018】
本発明の第1の実施例に係る切断装置について、図1および図2を参照して説明する。
図1は、本発明の第1の実施例に係る切断装置を具備する熱間圧延設備の概略図である。図2は、切断装置の側面図である。図2にて、冷却水捕捉機構を捕捉位置に位置付けた場合を実線にて示し、冷却水捕捉機構を退避位置に位置付けた場合を二点鎖線にて示す。
【0019】
本実施例に係る切断装置を具備する熱間圧延設備は、図1に示すように、上流側から粗圧延機(以下、粗ミルと称す)1、コイルボックス2、接合機3、複数段の圧延機により構成される仕上圧延機(以下、仕上ミルと称す)4およびダウンコイラー5を備える。
【0020】
粗ミル1でスラブが圧延されてなる金属板6,7はコイルボックス2のコイラーに巻き取られる。コイルボックス2のコイラーから巻き出された後行金属板6は後行金属板6の先端を接合前切断装置10により切断された後、接合機3で必要に応じて接合前切断装置10により端部が切断された先行金属板7の後端と接合機3で接合される。
【0021】
接合機3で接合されて連続状態となった金属板(連続帯鋼)および接合機3で接合しなかった金属板は、仕上ミル4に送られる。
【0022】
仕上ミル4に送られた金属板7は複数段の圧延機により順次熱間圧延されて所望の板厚に圧延され、所望の板厚に圧延された金属板7はダウンコイラー5に巻き取られる。ダウンコイラー5の入側(仕上ミル4の出側)には切断手段8が配置され、この切断手段8により所定の部位が切断されて製品コイルとなる。
【0023】
図1中の符号で、9は仕上ミルの入側に設けられた仕上前切断装置であり、この仕上前切断装置9により金属板の先端および後端が切断される。
なお、仕上前切断装置9の配置は、熱間圧延設備の状況などにより適宜選択して配置されるものであり、配置位置や配置の有無などは図示例に限定されるものではない。
【0024】
ここで、接合前切断装置10について、図2を参照して詳細に説明する。
接合前切断装置10は、図2に示すように、ハウジング18内における、金属板6,7の通板経路の上方に配置され、2つの切断刃11a,11bが組み付けられた上ドラム13と、金属板6,7の通板経路の下方に配置され、2つの切断刃12a,12bが組み付けられた下ドラム14と、上ドラム13における上側の外周に冷却水Wを噴射する上スプレーヘッダ(冷却水噴射手段)15a,15bとを有し、上ドラム13と下ドラム14とを回転駆動して金属板6,7を切断する切断装置である。
【0025】
上述した接合前切断装置10では、上ドラム13に近接して配置され、上スプレーヘッダ15a,15bから上ドラム13へ噴射された冷却水を捕捉する冷却水捕捉機構20,30が設けられている。接合前切断装置10の金属板6,7の入側および出側には、テーブルローラ19が複数配置されており、これにより金属板6,7が通板される。
【0026】
なお、下ドラム14の下方には下スプレーヘッダ17a,17bが設けられており、これら下スプレーヘッダ17a,17bから噴射された冷却水Wにより下ドラム14が冷却される。これにより、金属板6,7の輻射熱による下ドラム14の熱変形が抑制され、この下ドラム14に取り付けられた切断刃12a,12bの位置ずれがなくなり、金属板6,7の切断精度を維持することができる。
【0027】
上ドラム13は、回転方向に沿う断面にて長径と短径を有する略楕円状に形成されている。切断刃11aと切断刃11bとは、上ドラム13の長径をなす円弧状の周面に対向して配置される。すなわち、切断刃11aと切断刃11bとは、上ドラム13の長径をなす円弧状の周面にて同一平面上に配置される。金属板6,7を切断しない場合には、上ドラム13の長径(切断刃11aと切断刃11b)を水平となる位置に配置して、上ドラム13を停止する。このような位置にて上ドラム13を停止することにより、上ドラム13と金属板6,7との距離を確保することができ、金属板6,7からの輻射熱による上ドラム13の熱変形を抑制し、この上ドラム13に取り付けられた切断刃11a,11bの位置ずれがなくなり、金属板6,7の切断精度を維持することができる。
【0028】
他方、下ドラム14は、回転方向に沿う断面にて略円状に形成されている。切断刃12aと切断刃12bとは、下側ドラム14の周面に対向して配置される。すなわち、切断刃12aと切断刃12bとは、下側ドラム14の周面にて同一平面上に配置される。金属板6,7を切断しない場合には、切断刃12aと切断刃12bを水平となる位置に配置して、下ドラム14を停止する。
【0029】
なお、上述した上ドラム13および下ドラム14は、図示しない駆動源により同期して回転駆動される。
【0030】
冷却水捕捉機構20,30は、接合前切断装置10の金属板6,7の入側および出側にそれぞれ配置される。接合前切断装置10の金属板6,7の入側および出側に配置された冷却水捕捉機構20,30は、上述した金属板6,7の幅よりも長尺である。具体的には、冷却水捕捉機構20,30は、それぞれ、底板部21,31と、この底板部21,31の基端部側に接続し、垂直に延在する垂直側壁部23,33と、底板部21,31の先端部側に接続し、上ドラム13側へ延在すると共に、水平方向から上方へ傾斜して延在する傾斜側壁部22,32と、垂直側壁部23,33の上端部に接続し、上ドラム13側へ向けて水平方向に延在する上板部24,34とを具備している。冷却水捕捉機構20,30では、上板部24,34の先端部側が傾斜側壁部22,32の先端部22a,32aと離間しておりこの箇所に開口部25,35が形成されている。すなわち、冷却水捕捉機構20,30は、金属板6,7の幅よりも長尺であり、上方が開放した樋状部材である。
【0031】
冷却水捕捉機構20,30の傾斜側壁部22,32の先端部22a,32aには、上ドラム13へ向けて直線状に延在する第1のワイパブレード26,36がそれぞれ設けられている。上ドラム13の切断刃11aおよび切断刃11bを水平に配置した場合における、切断刃11aまたは切断刃11bと第1のワイパブレード26,36の隙間の大きさを調整できる。
【0032】
上述した第1のワイパブレード26,36と切断刃11a,11bとの間の大きさは、金属板6,7を切断しない時に(上ドラム13停止時に)、所定の間隔、例えば約2mm以上5mm以下となるように調整する。このように隙間の大きさを調整することで、上スプレーヘッダ15a,15bから噴射され、上ドラム13の上側からこの下側へ到達する冷却水Wの流量を調整できる。すなわち、上ドラム13の上側の外周を伝わった冷却水Wのうちの大部分を、第1のワイパブレード26,36を介して冷却水捕捉機構20,30に案内し金属板6,7の通板経路の外側へ排水する一方、冷却水Wの一部が切断刃11a,11bと第1のワイパブレード26,36との間を通り、上ドラム13の下側へ到達する。これにより、上ドラム13の下側を冷却して、上ドラム13の全体が冷却される。その結果、上ドラム13の熱変形をさらに抑制し、この上ドラム13に取り付けられた切断刃11a,11bの位置ずれがなくなり、金属板6,7の切断精度を維持することができる。
【0033】
上スプレーヘッダ15a,15bから噴射された冷却水Wの一部が上ドラム13の下側へ到達し上ドラム13から落下して金属板6,7に付着することになるが、その量が切断刃11a,11bと第1のワイパブレード26,36との隙間により調整されて上スプレーヘッダ15a,15bから噴射される冷却水Wの一部のみとなるため、金属板6,7への冷却水Wの付着量が少なく、この冷却水の金属板6,7への付着に起因した金属板6,7の品質の変化が抑制される。
【0034】
上述した接合前切断装置10は、図2に示すように、金属板6,7の入側および出側にそれぞれ配置され、金属板6,7を通板するガイドローラ42,52を具備し、回動自在な通板機構40,50を具備する。さらに、接合前切断装置10は、通板機構40,50にそれぞれ連結され、上ドラム13へ噴射された冷却水を捕捉する捕捉位置と、この捕捉位置から離間した退避位置との間で移動させる移動機構(移動手段)60,70をさらに具備する。なお、これら通板機構40,50には、上述した冷却水捕捉機構20,30がそれぞれ固定される。
【0035】
通板機構40,50は、ガイドローラ42,52を回転可能に支持する通板機構本体41,51を具備する。これら通板機構本体41,51は、軸81,82を介して接合前切断装置10に回動可能に支持される。ガイドローラ42,52は、図示しないギヤなどを介して駆動源である駆動モータ(図示せず)に連結されており、前記駆動モータを駆動することで、ガイドローラ42,52が回転し、この回転により金属板6,7を通板している。
【0036】
上述した移動機構60,70は、一端部側が軸体61,71を介し回転可能に固定されたシリンダ62,72と、シリンダ62,72内への油圧の給排などにより伸縮するロッド63,73とを有する。ロッドの先端部63a,73aは、軸体64,74を介して通板機構本体41,51にそれぞれ支持される。そして、この移動機構60,70は、上ドラム13の一対の切断刃11a,11bを水平に配置したときに、上スプレーヘッダ15a,15bにより上ドラム13へ冷却水Wを噴射するように制御すると共に、冷却水捕捉機構20,30を捕捉位置に位置付けるように制御し、上ドラム13を回転移動するときに、上スプレーヘッダ15a,15bによる上ドラム13への冷却水の噴射を停止するように制御すると共に、冷却水捕捉機構20,30を退避位置に位置付けるように制御する図示しない制御装置(制御手段)を備えている。
【0037】
ここで、通板機構本体41,51の下部には、冷却水Wを金属板6,7の通板経路の外側へ案内する、ドラム13,14の中心軸と同一方向に延在し、金属板6,7の通板経路よりも長尺な板状の案内部材83,84がそれぞれ設けられ、この案内部材83,84の先端には第2のワイパブレード85,86がそれぞれ固定される。通板機構40,50が上述した退避位置に配置される場合に、第2のワイパブレード85,86が上ドラム13の切断刃11a,11b近傍にそれぞれ配置される。これら第2のワイパブレード85,86と切断刃11a,11bとの隙間の大きさを調整することで、上スプレーヘッダ15a,15bから噴射され、上ドラム13の上側からこの下側へ到達する冷却水Wの流量を調整できる。すなわち、上ドラム13の上側の外周を伝わった冷却水Wのうちの大部分を、第2のワイパブレード85,86を介して案内部材83,84に案内して金属板6,7の通板経路の外側に排水する一方、冷却水Wの一部が切断刃11a,11bと第2のワイパブレード85,86との間を通り、上ドラム13の下側へ到達する。これにより、上ドラム13の下側を冷却して、上ドラム13の全体を冷却する。その結果、上ドラム13の熱変形をさらに抑制し、この上ドラム13に取り付けられた切断刃11a,11bの位置ずれがなくなり、金属板6,7の切断精度を維持することができる。
【0038】
したがって、本実施例に係る切断装置10によれば、冷却水捕捉機構20,30が上ドラム13へ噴射された冷却水を捕捉するため、冷却水により上ドラム13を冷却して上ドラム13の熱変形を抑制する。その結果、上ドラム13に組み付けられた切断刃11a,11bの位置ずれが無くなり、金属板6,7の切断精度を維持できる。また、上スプレーヘッダ15a,15bにより上ドラム13へ噴射した冷却水を冷却水捕捉機構20,30で捕捉し、金属板6,7への冷却水の付着を抑制する。その結果、金属板6,7への冷却水の付着に起因した当該金属板6,7の品質の変化を抑制できる。具体的には、冷却水捕捉機構20,30を具備することにより、上スプレーヘッダ15a,15bから噴射し、上ドラム13における上側の外周を伝わって流れる冷却水Wの大部分を捕捉して、冷却水Wの金属板6,7への付着を抑制する。これにより金属板6,7の品質の変化を抑制できる。また、上スプレーヘッダ15a,15bから噴射された冷却水Wにより上ドラム13の上側を冷却する一方、この冷却水Wの一部が上ドラム13の下側へ伝わり上ドラム13の下側を冷却して、上ドラム13の全体を冷却する。これにより金属板6,7の輻射熱による上ドラム13の熱変形を抑制し、この上ドラム13に取り付けられた切断刃11a,11bの位置ずれがなくなり、金属板6,7の切断精度を維持できる。
【0039】
なお、上記では、接合前切断装置10における金属板6,7の入側および出側のそれぞれに冷却水捕捉機構20,30を設けた接合前切断装置10を用いて説明したが、切断装置の入側または切断装置の出側にのみ冷却水捕捉機構を設けた接合前切断装置とすることも可能である。このような接合前切断装置であっても、上述した接合前切断装置10と同様な作用効果を奏する。
【0040】
上記では、冷却水捕捉機構20,30を具備する接合前切断装置10を用いて説明したが、このような冷却水捕捉機構を具備する仕上前切断装置とすることも可能である。このような仕上前切断装置であっても、上述した接合前切断装置10と同様な作用効果を奏する。
【0041】
上記では、冷却水捕捉機構20,30が有する第1,第2のワイパブレード26,36,85,86と上ドラム13に取り付けられた切断刃11a,11bとの隙間を調整することで、上ドラム13の上側からこの下側へ到達する冷却水Wの流量を調整した切断前切断装置10を用いて説明したが、第1,第2のワイパブレードの先端を櫛状にし、これらの先端部を上ドラムに取り付けられた切断刃に近接する形状(大きさ)にして、上ドラムの上側からこの下側へ到達する冷却水の流量を調整することも可能である。このような冷却水捕捉機構を具備する切断装置であっても、上述した接合前切断装置10と同様な作用効果を奏する。
【0042】
上記では、冷却水捕捉機構20,30が通板機構40,50に固定された切断装置10を用いて説明したが、これら冷却水捕捉機構20,30を、上ドラム13へ噴射された冷却水を捕捉する捕捉位置と、この捕捉位置から離間した退避位置との間で移動可能にハウジング18に支持させた切断装置とすることも可能である。このような切断装置であっても、上述した接合前切断装置10と同様な作用効果を奏する。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、切断装置に利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の第1の実施例に係る切断装置を具備する熱間圧延設備の概略図である。
【図2】本発明の第1の実施例に係る切断装置の側面図である。
【符号の説明】
【0045】
1 粗圧延機
2 コイルボックス
3 接合機
4 仕上圧延機
5 ダウンコイラー
6 金属板(後行金属板)
7 先行金属板
9 仕上前切断装置
10 接合前切断装置
11,12 切断刃
13 上ドラム
14 下ドラム
18 ハウジング
20,30 冷却水捕捉機構
26,36 第1のワイパブレード
40,50 通板機構
42,52 ガイドローラ
60,70 移動機構
83,84 案内部材
85,86 第2のワイパブレード
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板の通板経路の上方および下方にそれぞれ配置され、切断刃が組み付けられた上ドラムおよび下ドラムと、前記上ドラムへ冷却水を噴射する冷却水噴射手段とを備え、前記上ドラムと前記下ドラムとを回転駆動して前記金属板を切断する切断装置であって、
前記上ドラムに近接して配置され、前記冷却水噴射手段によって前記上ドラムへ噴射された冷却水を捕捉する冷却水捕捉機構を具備した
ことを特徴とする切断装置。
【請求項2】
請求項1に記載の切断装置であって、
前記冷却水捕捉機構が、前記金属板の幅よりも長尺であり、上方が開放した樋状部材である
ことを特徴とする切断装置。
【請求項3】
請求項2に記載の切断装置であって、
前記樋状部材の先端部にワイパブレードを設ける
ことを特徴とする切断装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の切断装置であって、
前記上ドラムに組み付けられた前記切断刃が一対であり、前記一対の切断刃が前記上ドラムの同一平面上に配置されたものであり、
前記冷却水捕捉機構を、前記冷却水を捕捉する捕捉位置と、前記捕捉位置から離間した退避位置との間で移動させる移動手段を具備し、
前記移動手段が、前記上ドラムの前記一対の切断刃を水平に配置したときに、前記冷却水噴射手段により前記上ドラムへ前記冷却水を噴射するように制御すると共に、前記冷却水捕捉機構を前記捕捉位置に位置付けるように制御し、前記上ドラムを回転移動するときに、前記冷却水噴射手段による前記上ドラムへの前記冷却水の噴射を停止するように制御すると共に、前記冷却水捕捉機構を前記退避位置に位置付けるように制御する制御手段を備えた
ことを特徴とする切断装置。
【請求項1】
金属板の通板経路の上方および下方にそれぞれ配置され、切断刃が組み付けられた上ドラムおよび下ドラムと、前記上ドラムへ冷却水を噴射する冷却水噴射手段とを備え、前記上ドラムと前記下ドラムとを回転駆動して前記金属板を切断する切断装置であって、
前記上ドラムに近接して配置され、前記冷却水噴射手段によって前記上ドラムへ噴射された冷却水を捕捉する冷却水捕捉機構を具備した
ことを特徴とする切断装置。
【請求項2】
請求項1に記載の切断装置であって、
前記冷却水捕捉機構が、前記金属板の幅よりも長尺であり、上方が開放した樋状部材である
ことを特徴とする切断装置。
【請求項3】
請求項2に記載の切断装置であって、
前記樋状部材の先端部にワイパブレードを設ける
ことを特徴とする切断装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の切断装置であって、
前記上ドラムに組み付けられた前記切断刃が一対であり、前記一対の切断刃が前記上ドラムの同一平面上に配置されたものであり、
前記冷却水捕捉機構を、前記冷却水を捕捉する捕捉位置と、前記捕捉位置から離間した退避位置との間で移動させる移動手段を具備し、
前記移動手段が、前記上ドラムの前記一対の切断刃を水平に配置したときに、前記冷却水噴射手段により前記上ドラムへ前記冷却水を噴射するように制御すると共に、前記冷却水捕捉機構を前記捕捉位置に位置付けるように制御し、前記上ドラムを回転移動するときに、前記冷却水噴射手段による前記上ドラムへの前記冷却水の噴射を停止するように制御すると共に、前記冷却水捕捉機構を前記退避位置に位置付けるように制御する制御手段を備えた
ことを特徴とする切断装置。
【図1】
【図2】
【図2】
【公開番号】特開2010−99687(P2010−99687A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−272600(P2008−272600)
【出願日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(502251784)三菱日立製鉄機械株式会社 (130)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(502251784)三菱日立製鉄機械株式会社 (130)
【Fターム(参考)】
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