説明

切断装置

【課題】切断マークなどの目印を設けることなく、有機ELテープを所望の切断位置で切断可能な、切断装置を提供すること。
【解決手段】有機ELテープを収納する第1収納部と、有機ELテープを収納部から引き出して搬送する搬送部と、有機ELテープの発光層に含まれる有機ELの発光スペクトルより短波長成分を含む光を有機ELテープに対して照射する光源部と、発光層からの励起光を検出する検出部と、検出部の検出結果に基づいて有機ELテープを切断する切断位置を決定する決定部と、前記切断位置において有機ELテープを切断する切断部と、を有する切断装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一列に配置された複数の有機ELセルを有する有機ELテープを切断するための切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、はさみ等によって裁断可能な、薄型のElectro−Luminescence(EL)発光装置が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。はさみ等で裁断することで、使用者がEL発光装置の寸法を簡単に変更できるので、様々な用途に合わせてEL発光装置を利用できるようになる。また、多数の切断マークが間隔を隔てて付されている長尺のラベルテープを切断することで、予め定められた寸法を有する一つのラベルを作成するための技術が知られている。例えば、特許文献2では、ラベルテープの切断マークの前後に所定寸法の空白部分が備えられる。このラベルテープは、予め定めた進行経路に沿って進行され、進行経路の途中に配設したカッターにより切断される。具体的には、切断マークの前に備えられた空白部分と、切断マークと、切断マークの後に備えられた空白部分とがセンサによって確認された後で、ラベルテープが切断位置に進行され、ラベルテープが切断される。この構成によって、ラベルテープにおける切断マーク相互の間隔が変わっても、常に各切断マークを基準にして、一定の位置でラベルテープを切断できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−92469号公報
【特許文献2】特開2003−381001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のEL発光装置は、所望の寸法のEL発光装置を得るためには、鋏などを用いて手動で切断する必要がある。ここで、例えば、無機ELに比べて薄型化が可能な有機ELセルを複数用い、一列に配置された複数の有機ELセルで構成される、テープ状の有機ELテープが考えられる。この有機ELテープを、特許文献2に記載の技術を用いて切断できれば、自動的に所望の寸法の有機EL発光装置が得られると考えられる。
【0005】
しかし、有機ELテープに切断マークが設けられると、以下の様な不利な点があると考えられる。先ず、精度が原因で切断マークが設けられる位置がずれた場合、有機ELテープが所望の切断位置で切断されない可能性がある。次に、有機ELセルから発光された光が、切断マークによって遮蔽される可能性がある。その結果、有機ELセルの発光効率が低下する恐れがある。
【0006】
本発明は、切断マークなどの目印を設けることなく、有機ELテープを所望の切断位置で切断可能な、切断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一側面は、有機ELからなる平板状の発光層と、前記発光層の一方の面に設けられる第1電極層と、前記発光層の他方の面に設けられる第2電極層と、を含む有機ELセルと、前記発光層の厚み方向に直交する第1方向に沿って一列に配置された複数の前記有機ELセルの、前記第1電極層側の面に接触する基材と、隣り合う一方の前記有機ELセルと、隣り合う他方の前記有機ELセルとの間に設けられる絶縁帯と、を有する有機ELテープを切断する切断装置であって、前記有機ELテープを収納する第1収納部と、前記第1収納部に収納された前記有機ELテープを、前記収納部から引き出すとともに、前記第1方向に向けて所定の搬送経路に沿って搬送する搬送部と、前記搬送経路に設けられ、前記発光層に含まれる有機ELの発光スペクトルより短波長成分を少なくとも含む光を、前記有機ELテープに対して照射する光源部と、前記搬送経路に設けられ、前記光源部からの光によって励起された前記発光層からの励起光を検出する検出部と、前記検出部の検出結果に基づいて、前記有機ELテープを切断する切断位置を決定する決定部と、前記搬送経路の前記光源部及び前記検出部より下流側に設けられ、前記決定部によって決定された切断位置において、前記有機ELテープを切断する切断部と、を備える切断装置である。
【0008】
これによれば、光源部が、有機ELセルの発光層に含まれる有機ELの発光スペクトルより短波長成分を少なくとも含む光を、有機ELテープに対して照射する。有機ELの発光スペクトルは、有機ELのバンドギャップによって決定される。即ち、発光スペクトルよりも短波長成分を含む光、換言すれば、バンドギャップ以上のエネルギーを有する光子を受けた有機ELでは、価電子層に存在する電子が伝導層へと遷移する。そして、伝導層へ遷移した電子が価電子層に遷移する際に放出する励起光が、検出部によって検出される。そして、検出部の検出結果に基づいて決定された切断位置において、有機ELテープが切断される。有機ELセルの発光層からの励起光を検出した結果に基づいて切断位置が決定されるので、有機ELセルに対して所望の位置で正確に切断できる。また、切断マークなどの目印を設ける必要もない。
【0009】
この切断装置は、他の構成を含むようにしても良い。即ち、前記検出部は、少なくとも前記励起光を含む可視光に対して感度を有する受光素子と、前記受光素子の受光面に対向する位置に設けられ、前記発光層からの励起光に対応する波長の光を選択的に透過するフィルタとを有する、ようにしてもよい。
【0010】
これによれば、少なくとも励起光を含む可視光に対して感度を有する受光素子が、受光素子の受光面に対向する位置に設けられたフィルタを介して受光する。このフィルタは、発光層からの励起光に対応する波長の光を選択的に透過する。従って、外光などのノイズを排除し、発光層からの励起光を選択的に検出することが可能となる。その結果、正確に切断位置を決定することができる。また、特定の波長に対してのみ感度を持つような特殊な受光素子を用いることなく、例えばシリコン製のフォトダイオードなど、一般に広く利用されている受光素子の利用が可能となる。
【0011】
この切断装置は、さらに他の構成を含むようにしても良い。即ち、前記決定部は、前記検出部の検出結果と、所定の閾値とを比較する比較部分と、前記比較部分の比較結果に従って、前記有機ELセル前記絶縁帯との境界を決定する境界決定部分とを有し、前記境界決定部分の決定結果に従って、前記切断位置を決定する、ようにしてもよい。
【0012】
光源部から光が照射された場合、有機ELセルからは励起光が放射され、絶縁層からは励起光は放射されない。そのため、有機ELセルと絶縁層との境界では、検出部の検出結果が変化する。そこで、検出部の検出結果と所定の閾値とを比較することで、有機ELセルと絶縁層との境界が決定される。従って、この境界を用いて、切断位置を決定することができる。
【0013】
この切断装置は、さらに他の構成を含むようにしても良い。即ち、前記決定部は、前記絶縁帯において前記有機ELテープが切断されるように、前記境界決定部分によって境界が決定されたタイミングから、前記切断部における前記切断位置と前記検出部との間の距離に対応した時間間隔後に前記切断部を動作するようにして、前記切断位置を決定する、ようにしてもよい。
【0014】
これによれば、絶縁帯において有機ELテープが切断されるように、切断位置が決定される。切断部は検出部より下流側に設けられるので、絶縁層において有機ELテープが切断されるためには、切断部は、境界決定部分によって境界が決定されたタイミングよりも後に動作する必要がある。そこで、このタイミングから切断部における切断位置と検出部との間の距離に対応した時間間隔後に切断部を動作することで、絶縁層において有機ELテープを切断することができる。
【0015】
この切断装置は、さらに他の構成を含むようにしても良い。即ち、前記決定部は、前記搬送部が前記有機ELテープを搬送する搬送速度に基づいて、前記時間間隔を決定する、ようにしてもよい。
【0016】
これによれば、時間間隔が、有機ELテープを搬送する搬送速度に基づいて決定される。そのため、搬送速度が変化しても、的確に絶縁層において有機ELテープを切断することができる。
【0017】
この切断装置は、さらに他の構成を含むようにしても良い。即ち、前記有機ELテープに接着される装飾テープを収納する第2収納部と、前記装飾テープと前記有機ELテープとを接着する接着テープを収納する第3収納部とをさらに備え、前記搬送部は、さらに、前記接着テープが前記有機ELテープと前記接着テープとに挟まれた状態で、前記装飾テープ及び前記接着テープを前記搬送経路に沿って搬送し、前記搬送経路の前記切断部より上流側であって、前記第1収納部、前記第2収納部及び前記第3収納部より下流に設けられ、前記有機ELテープ、前記装飾テープ及び前記接着テープを、前記厚み方向に対して押圧することで接着する接着部をさらに備える、ようにしてもよい。
【0018】
これによれば、有機ELテープと装飾テープとが、接着テープを介して接着されたものを得ることができる。従って、より装飾性の高い有機ELテープが得られる。また、切断位置は有機ELセルからの励起光を利用して決定されるので、装飾テープの色彩や模様に左右されず、正確に所望の位置での切断が可能である。
【0019】
この切断装置は、さらに他の構成を含むようにしても良い。即ち、前記搬送経路の前記第2収納部より下流側に設けられ、前記装飾テープに対して印刷を行う印刷部をさらに備えてもよい。
【0020】
これによれば、印刷が施された装飾テープと有機ELテープとが接着されたものを得ることができる。従って、さらに装飾性の高い有機ELテープが得られる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、切断マークなどの目印を設けることなく、有機ELテープを所望の切断位置で切断可能な、切断装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】切断装置100の概要を示す模式図。
【図2】(A)有機ELテープ1の概要を示す斜視図、(B)有機ELテープ1の概要を示す平面図、(C)有機ELテープ1の概要を示すA−A断面図。
【図3】有機ELセル10に含まれる発光層12からの励起光を検出する様子を説明する模式図。
【図4】(A)発光層12からの励起光の波長分布を示す模式図、(B)光源151からの光の波長分布を示す模式図、(C)光学フィルタ152bの波長特性を示す模式図。
【図5】切断装置100の機能を説明するブロック図。
【図6】切断装置100の各構成から出力される信号波形を説明する図。
【図7】切断装置100が行う処理を説明するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の一側面を反映した実施形態について、図面を用いて以下に詳細に説明する。本発明の一側面は以下に記載の構成に限定されるものではなく、同一の技術的思想において種々の構成を採用することができる。例えば、以下に説明する各構成において、所定の構成を省略し、または他の構成などに置換してもよい。また、他の構成を含むようにしてもよい。
【0024】
[切断装置100の概要]
図1に示されるように、切断装置100は、第1収納部140と、第2収納部110と、第3収納部130と、印刷部120と、励起光検出部150と、第1接着部161と、第2接着部162と、切断部170と、搬送部180と、決定部190とを有する。切断装置100は、搬送経路に沿って搬送される、後記する有機ELテープ1、基材テープ及び接着テープ(これらを区別しない場合、単にテープと表記する)を、所定の切断位置において切断し、切断装置100の筐体に設けられた取出口101から切断されたテープを排出する装置である。以下、切断装置100の構成を説明する。
【0025】
第1収納部140は、有機ELテープ1がロール状に収納される。この有機ELテープ1の構成の説明は、図2を用いて後述する。
【0026】
第2収納部110には、装飾テープとしての、帯状の基材テープが、ロール状に収納されている。この基材テープは、例えば、PET(ポリエチレンテレフタラート)などからなる、色付きの透明樹脂フィルムによって構成される。
【0027】
印刷部120は、第2収納部110に収納された基材テープに対して印刷を行う。印刷部120は、第2収納部110よりも搬送経路の下流に設けられる。印刷部120は、サーマルヘッド121と、インクリボンカセット122と、サーマルヘッド駆動回路123(図5参照)を有する。サーマルヘッド駆動回路123は、外部からの印刷情報に従った印刷画像を形成する。サーマルヘッド121は、その印刷画像を出力するように、サーマルヘッド駆動回路123によって駆動される。インクリボンカセット122は、ロール状のインクリボンを収納する。インクリボンによって、サーマルヘッド121によって出力される印刷画像が、基材テープに対して転写される。
【0028】
第3収納部130には、第2収納部110に収納された基材テープと第1収納部140に収納された有機ELテープ1とを接着するための接着テープが、ロール状に収納されている。第3収納部は、印刷部120よりも搬送経路の下流に設けられる。この接着テープは、適宜の粘着材からなるラベル貼り付け用の粘着剤層の両面に、剥離材層が設けられることにより構成される。
【0029】
第1接着部161は、基材テープと接着テープとを厚み方向に押圧することで、両者を接着する。第1接着部161は、第3収納部130よりも搬送経路の下流に設けられる。第3収納部130と第1接着部161との間には、第1剥離ローラ131が設けられている。第1剥離ローラ131は、接着テープの両面に設けられた剥離材層のうち、基材テープに接する側の剥離剤層を巻き取る。これにより、一方の面が露出した接着テープと基材テープとが、第1接着部161によって接着可能となる。
【0030】
励起光検出部150は、有機ELテープ1に含まれる有機ELセル10の発光層12から放出される励起光を検出するためのものである。励起光検出部150は、第1収納部140よりも搬送経路の下流に設けられる。励起光検出部150の構成の説明は、図3を用いて後述する。
【0031】
第2接着部162は、有機ELテープ1と接着テープ及び基材テープとを厚み方向に押圧することで、両者を接着する。第2接着部162は、励起光検出部150よりも搬送経路の下流に設けられる。なお、第2剥離ローラ132が、第1接着部161と第1収納部140との間に設けられている。第2剥離ローラ132は、接着テープの両面に設けられた剥離材層のうち、有機ELテープ1に接する側の剥離剤層を巻き取る。これにより、他方の面が露出した接着テープと有機ELテープ1とが、第2接着部162によって接着可能となる。
【0032】
切断部170は、テープを切断する。切断部170は、第2接着部162よりも搬送経路の下流に設けられる。切断部170は、テープの表面に接触し切断するカッター172と、このカッターを駆動するモータ又はアクチュエータや制御回路を含むカッター駆動回路171とを有する(図5参照)。
【0033】
搬送ローラ180は、テープの表面に接触し、回転することで摩擦力によってテープを搬送経路に沿って搬送する。搬送ローラ180は、切断部170よりも搬送経路の下流に設けられる。搬送ローラ180は、ローラの回転軸に連結されて駆動力を発生するモータ181と、そのモータ181を駆動するモータ駆動回路182とを有する(図5参照)。
【0034】
決定部190は、励起光検出部150に含まれる受光素子152a(図3参照)からの検出結果に基づいて、有機ELテープ1を含むテープを切断する切断位置を決定する。そして、その決定された切断位置においてテープが切断されるように、カッター駆動回路171に対して信号を送信する。決定部190の構成の説明は、図5を用いて後述する。
【0035】
[有機ELテープ1の構成]
第1収納部140に収納される、有機ELテープ1の構成を、図2を用いて説明する。
【0036】
図2(A)に示されるように、有機ELテープ1は、有機ELセル10と、光透過フィルム20と、陽極補助電極41と、陰極補助電極42と、封止フィルム60とを含んで構成される。有機ELセル10は、有機ELからなる平板状の発光層12と、発光層12の一方の面に設けられる陰極層11と、発光層12の他方の面に設けられる陽極層13とを含んで構成される。有機ELセル10は、陽極層13を介して光透過フィルム20上に接する。なお、有機ELセル10の製造は、例えば特開2010−32750号公報などに記載の公知の方法にて行われる。また、図2(A)では、説明のために、封止フィルム60の構成と有機ELセル10の構成とが、Z方向に離間した状態で示される。
【0037】
発光層12は、有機ELを含む矩形平板状の層である。発光層12は、陰極層11と陽極層13との間に電圧が印加されることで発光する。発光層12に含まれる有機ELとしては、例えばポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリチオフェン誘導体等の高分子発光材料、及び、テトラフェニルブタジエン(TPB)、ペリレン、クマリン、ルブレン、ナイルレッド、4−ジシアノメチレン−2−メチル−6−ジメチルアミノスチリル−4−ピラン(DCM)、4−ジシアノメチレン−6−シーピージュロリジノスチリル−2−ターシャルブチル−4H−ピラン(DCJTB)、スクアリリウム、アルミニウム錯体(例えばAlQ3)等の低分子系材料が用いられる。陰極層11に接する発光層12の面には、図示されない電荷注入層が設けられる。電子注入層は、オキサジゾール誘導体、トリアゾール系、及びアルミニウム錯体のいずれかが用いられる。発光層12の厚さは、30〜150nmが望ましい。
【0038】
陰極層11は、発光層12の一方の面に接触する、矩形状の電極層である。陰極層11は、例えばアルミニウム(Al),フッ化リチウム(LiF),Al/Ca,Al/LiF及びAl/Ba等で構成される。陰極層11の厚さの一例は、Al/LiFが陰極層11として用いられる場合、Al層が100nm、LiF層が1nmである。陰極層11は、図2(C)に示されるように、X方向正側に延出する陰極覆設部11aを有する。陰極層11と陽極層13との間に所定の電圧が印加されたとき、陰極層11は、前記した電荷注入層を介して発光層12に電子を注入する。
【0039】
陽極層13は、発光層12の他方の面に接触する、矩形状の電極層である。陽極層13は、透明電極用の材料であるインジウムチタンオキサイド(ITO)又はポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)で構成される。陽極層13は、図2(C)に示されるように、X方向負側に延出する陽極覆設部13aを有する。陰極層11と陽極層13との間に所定の電圧が印加されたとき、陽極層13は、発光層12に正孔を注入する。陽極層13の厚さは、150nm程度が望ましい。
【0040】
陽極層13が接する光透過フィルム20は、絶縁性と可撓性とを備え、光を透過することが可能な材料で構成される。光透過フィルム20としては、例えばポリイミド、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレン(PS)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)等が用いられる。光透過フィルム20は、透明な材料で構成されるのが望ましいが、光を散乱・拡散させる半透明な材料で構成されても良い。光透過フィルム20の厚さは、5〜200μm程度が望ましい。
【0041】
陽極補助電極41は、陽極覆設部13aの陰極層11に対向する面に接続される。陽極覆設部13aは、発光層12及び陰極層11に対してX方向負側に延出するので、陽極補助電極41は、発光層12及び陰極層11に接することなく、陽極覆設部13aを介して陽極層13に接続される。陰極補助電極42は、陽極層13からX方向正側に離間して、光透過フィルム20上に設けられる。陰極補助電極42は、陰極覆設部11aの陽極層13に対向する面に接続される。陰極覆設部11aは、発光層12及び陽極層13に対してX方向正側に延出するので、陰極補助電極42は、発光層12及び陽極層13に接することなく、陰極覆設部11aを介して陰極層11に接続される。陽極補助電極41の長手方向と、陰極補助電極42の長手方向とは、平行である。陽極補助電極41及び陰極補助電極42は、例えば、アルミニウム(Al),クロム(Cr)等の導電材料で構成される。
【0042】
封止部材60は、有機ELセル10と、光透過フィルム20と、陽極補助電極41と、陰極補助電極42と、絶縁帯30とを、外気に接触しないように封止する。封止部材60は、陰極層11に対向する上部封止部材61と、光透過フィルム20に対向する下部封止部材62とで構成される。上部封止部材61と下部封止部材62とは、接着剤50によって互いに固定される。なお、接着剤50は、例えば超音波を用いての融着などで代替されてもよい。上部封止部材61及び下部封止部材62は、PET,PEN,PS,PES,ポリイミド等のフィルムに、ガスバリア性を持たせるためにSiO,AL,SiNx等の無機薄膜と柔軟性のあるアクリル樹脂薄膜などを複数層コーティングすることで形成される。
【0043】
[励起光検出部150の構成]
励起光検出部150の構成を、図3及び図4を用いて説明する。励起光検出部150は、光源151と、検出部152とを有する。光源151は、発光層12に含まれる有機ELを励起するための光を、有機ELテープ1に対して照射する。より具体的には、光源151は、発光層12に含まれる有機ELの発光スペクトルより短波長成分を少なくとも含む光、換言すれば、有機ELのバンドギャップよりもエネルギーの高い周波数成分を含む光を、光透過フィルム20及び陽極層13を通して、発光層12に対して照射する。例えば、図4(A)に示されるように、発光層12に含まれる有機ELの発光スペクトルの中心波長がλcであった場合、光源151は、λcよりも短波長側にピークを有する光を照射する(図4(B)参照)。この光を受けた発光層12では、価電子帯に存在する電子が、バンドギャップよりもエネルギーの高い光子を受け取ることにより、伝導帯へと遷移する。即ち、自由電子と自由正孔のペアが生成される。そして、伝導帯へと遷移した自由電子が価電子帯の自由正孔と結合することで、有機ELのバンドギャップに相当するエネルギーが、励起光として放出される。なお、光源151としては、例えば紫外線LEDなどが利用可能である。
【0044】
検出部152は、受光素子152aと、光学フィルタ152bとを有する。受光素子152aは、光源151からの光によって励起された発光層12からの励起光を検出する。受光素子としては、少なくとも発光層12からの励起光を含む可視光に対して感度を有するフォトダイオードなどが利用可能である。光学フィルタ152bは、受光素子152aの受光面に対向する位置に設けられる。光学フィルタ152bは、図4(C)に示されるように、発光層12からの励起光に対応する波長の光を選択的に透過する。従って、受光素子152aに外光などのノイズが入射することを排除し、発光層12からの励起光を選択的に検出することが可能となる。なお、光学フィルタ152bとしては、発光層12からの励起光の波長に対応し、カラーフィルタや誘電体薄膜を利用した干渉フィルタなどが、適宜選択される。
【0045】
[切断装置100の機能的構成]
以下、図5及び図6を参照して、切断装置100の機能的構成を説明する。なお、図5及び図6において、横軸のt1、t2、t3はそれぞれ、有機ELセル10の先頭部分、換言すれば、有機ELセル10と絶縁帯30との境界が検知されたタイミングを示す。
【0046】
図5に示されるように、切断装置100の機能は、光源151、受光素子152a、カッター駆動回路171、モータ181、モータ駆動回路182、サーマルヘッド121、サーマルヘッド駆動回路123及び決定部190を有する。ここで、決定部190以外の構成は既に説明されているため、説明が省略される。決定部190は、電圧比較器191、基準電圧発生器192、ワンショットパルス発生器193、第1遅延器194、第2遅延器195を有する。以下、決定部190の個々の構成を説明する。
【0047】
電圧比較器191は、受光素子152aからの励起光検出信号と、基準電圧発生器192からの基準電圧の値とを比較する。受光素子152aから電圧比較器191へと送信される励起光検出信号は、図6(a)に示されるように、アナログ波形である。電圧比較器191は、励起光検出信号の電圧が基準電圧を上回った場合に「1」を、下回った場合に「0」を出力する。従って、電圧比較器191を通過した励起光検出信号は整形され、図6(b)に占めされる光テープ位置信号として、ワンショットパルス発生器193に入力される。なお、基準電圧発生器192は、発生する基準電圧の値を設定可能に構成される。
【0048】
ワンショットパルス発生器193は、光テープ位置信号の波形をパルス変換し、有機ELセル10と絶縁帯30との境界を決定する。ワンショットパルス発生器193は、光テープ位置信号の波形が立ち上がるタイミング、換言すれば、有機ELセル10の先頭(有機ELセル10と絶縁帯30との境界)でパルスを発生する。ワンショットパルス発生器193としては、例えば、特開平9−93092号公報に記載の回路などが利用できる。ワンショットパルス発生器193を通過した光テープ位置信号は、図6(c)に示されるカッター駆動トリガ信号として、第1遅延器194に入力される。
【0049】
第1遅延器194は、搬送されるテープにおいて、有機ELセル10の先頭から切断位置としての絶縁帯30までの距離に相当する時間の遅延を、カッター駆動トリガ信号に対して付与する。今、有機ELセル10の先頭から次の絶縁帯30の中心までの距離をL1、テープの搬送速度をvとすると、有機ELセル10の先頭が検知されてから、次の絶縁帯30の中心まで移動するのに必要な時間Dは、D=L1/vで求められる。ここで、L1は有機ELテープ1の構成で決まっているので、既知の値である。また、搬送速度vも、第1遅延器194がモータ駆動回路182から取得することで分かる。有機ELセル10の先頭が検出される時間は、前記したように、t1、t2、t3である。そのため、個々の有機ELセル10毎に切断するための切断位置である絶縁帯30は、時間位置t1+D、t2+D、t3+Dにおいて指定される。第1遅延器194を通過したカッター駆動トリガ信号は、図6(d)に示されるように、切断位置に相当する時間Dの遅延が付与され、第2遅延器194に入力される。
【0050】
第2遅延器195は、テープが受光素子152aの位置から切断部170に含まれるカッター172の位置まで搬送される距離に相当する時間の遅延を、カッター駆動トリガ信号に対して付与する。有機ELテープ1が受光素子152aの位置からカッター172の位置まで搬送されるのに必要な時間Tは、T=L2/vで求められる。ここで、L2は受光素子152aの位置からカッター172の位置までの距離のため、既知の値である。また、搬送速度vも、第2遅延器195がモータ駆動回路182から取得することで分かる。従って、第1遅延器194からのカッター駆動トリガ信号に対し、時間Tの遅延を付加することによって、切断位置がカッター172の位置まで移動したときにカッター駆動回路171に対して、パルス信号を出力することができる。第2遅延器195を通過したカッター駆動トリガ信号は、図6(e)に示されるように、時間Tの遅延がさらに付与され、カッター駆動回路171に入力される。
【0051】
[切断装置100による切断処理]
以下、図7を参照して、切断装置100によって実行される切断処理の説明を行う。なお、図7に示される処理は、切断装置100の電源が投入され、切断されたテープを得るための操作が所定の操作部を介して入力された際に実行される。また、光テープは一定速度で搬送経路を流れるものとする。
【0052】
まず、ステップS1において、光源151が点灯され、所定の搬送速度vにて搬送ローラ180を回転させるように、モータ駆動回路182によってモータ181が駆動される。そして、ステップS2において、受光素子152aが、搬送されて励起光検出部を通過するテープの発光層12からの、励起光を検出する。この検出結果は、図6(a)に示される励起光検出信号として、電圧比較器191に送信される。
【0053】
ステップS3において、電圧比較器191は、前記したように励起光検出信号を整形し、図6(b)に示される光テープ位置信号として、ワンショットパルス発生器193に送信する。そして、ステップS4において、ワンショットパルス発生器193は、前記したように光テープ位置信号をパルス変換し、図6(c)に示されるカッター駆動トリガ信号として、第1遅延器194に送信する。
【0054】
ステップS5において、第1遅延器194は、入力されたカッター駆動トリガ信号に対して、有機ELセル10の先頭から絶縁帯30までの距離に相当する遅延時間Dを付与する。そして、第1遅延器194は、遅延時間Dが付与されたカッター駆動トリガ信号(図6(d)参照)を、第2遅延器195に送信する。
【0055】
ステップS6において、第2遅延器195は、入力されたカッター駆動トリガ信号に対して、受光素子152aからカッター172までの距離に相当する遅延時間Tを付与する。そして、第2遅延器195は、遅延時間Tが付与されたカッター駆動トリガ信号(図6(e)参照)を、カッター駆動回路171に送信する。
【0056】
ステップS7において、カッター駆動回路171は、入力されたカッター駆動トリガ信号に従って、カッター172を駆動する。カッター駆動トリガ信号には、有機ELセル10の先頭の検出時間であるt1、t2、t3に対して、遅延時間D、Tが付与されている。そのため、切断マークなどの目印を設けることなく、絶縁帯30の位置において、テープを切断することが可能となる。
【0057】
<変形例>
本発明は、今までに述べた実施形態に限定されることは無く、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の変形・変更が可能である。以下にその一例を述べる。
【0058】
前記した実施形態において、第2収納部110と、第3収納部130とは、別体に設けられる。しかし、これらは一体として設けられても差し支えない。即ち、PETなどからなる基材層と、その基材層に一方の面において接着される適宜の粘着材からなる粘着剤層と、粘着剤層の他方の面に設けられる剥離層とを有するテープが、一体として設けられた第2収納部110及び第3収納部130としてのカートリッジに収納されても差し支えない。この場合、第1接着部161と第2接着部162とは、この基材層、粘着剤層及び剥離層を一体に備えたテープと有機ELテープ1とを接着するために、何れか一方のみが設けられても良い。
【0059】
前記した実施形態において、図4(B)に示されるように、光源151は、発光層12に含まれる有機ELの発光スペクトルの中心波長λcよりも短波長側にピークを有するスペクトルの光を放射する。しかし、光源151は、中心波長λcよりも短波長の成分を含んでさえいれば、中心波長λcよりも長波長側にピークを有するスペクトルの光を放射してもよい。この場合、光源151は、紫外線LEDでなく、可視光波長を主として放射する蛍光管やLEDによって構成可能である。
【0060】
有機ELテープ1は、励起光を放射可能な有機ELを含む部分と、励起光を放射せず切断位置として用いられる部分とが一列に配置されてさえいれば、図1に示される構成に限定されない。
【符号の説明】
【0061】
1 有機ELテープ
10 有機ELセル
11 陰極層
11a 陰極覆設部
12 発光層
13 陽極層
13a 陽極覆設部
20 光透過フィルム
41 陽極補助電極
42 陰極補助電極
50 接着部
60 封止フィルム
61 上部封止部材
62 下部封止部材
100 切断装置
101 取出口
110 第2収納部
120 印刷部
121 インクリボンカセット
122 サーマルヘッド
123 サーマルヘッド駆動回路
130 第3収納部
131 第1剥離ローラ
132 第2剥離ローラ
140 第1収納部
150 励起光検出部
151 光源
152 検出部
151a 受光素子
152b 光学フィルタ
161 第1接着部
162 第2接着部
170 切断部
171 カッター駆動回路
172 カッター
180 搬送ローラ
181 モータ
182 モータ駆動回路
190 決定部
191 電圧比較器
192 基準電圧発生器
193 ワンショットパルス発生器
194 第1遅延器
195 第2遅延器


【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機ELからなる平板状の発光層と、前記発光層の一方の面に設けられる第1電極層と、前記発光層の他方の面に設けられる第2電極層と、を含む有機ELセルと、
前記発光層の厚み方向に直交する第1方向に沿って一列に配置された複数の前記有機ELセルの、前記第1電極層側の面に接触する基材と、
隣り合う一方の前記有機ELセルと、隣り合う他方の前記有機ELセルとの間に設けられる絶縁帯と、を有する有機ELテープを切断する切断装置であって、
前記有機ELテープを収納する第1収納部と、
前記第1収納部に収納された前記有機ELテープを、前記収納部から引き出すとともに、前記第1方向に向けて所定の搬送経路に沿って搬送する搬送部と、
前記搬送経路に設けられ、前記発光層に含まれる有機ELの発光スペクトルより短波長成分を少なくとも含む光を、前記有機ELテープに対して照射する光源部と、
前記搬送経路に設けられ、前記光源部からの光によって励起された前記発光層からの励起光を検出する検出部と、
前記検出部の検出結果に基づいて、前記有機ELテープを切断する切断位置を決定する決定部と、
前記搬送経路の前記光源部及び前記検出部より下流側に設けられ、前記決定部によって決定された切断位置において、前記有機ELテープを切断する切断部と、
を備えることを特徴とする切断装置。
【請求項2】
前記検出部は、少なくとも前記励起光を含む可視光に対して感度を有する受光素子と、
前記受光素子の受光面に対向する位置に設けられ、前記発光層からの励起光に対応する波長の光を選択的に透過するフィルタとを有する、
請求項1に記載の切断装置。
【請求項3】
前記決定部は、
前記検出部の検出結果と、所定の閾値とを比較する比較部分と、
前記比較部分の比較結果に従って、前記有機ELセル前記絶縁帯との境界を決定する境界決定部分とを有し、
前記境界決定部分の決定結果に従って、前記切断位置を決定する、
請求項1又は2に記載の切断装置。
【請求項4】
前記決定部は、前記絶縁帯において前記有機ELテープが切断されるように、前記境界決定部分によって境界が決定されたタイミングから、前記切断部における前記切断位置と前記検出部との間の距離に対応した時間間隔後に前記切断部を動作するようにして、前記切断位置を決定する、
請求項3に記載の切断装置。
【請求項5】
前記決定部は、前記搬送部が前記有機ELテープを搬送する搬送速度に基づいて、前記時間間隔を決定する、
請求項4に記載の切断装置。
【請求項6】
前記有機ELテープに接着される装飾テープを収納する第2収納部と、
前記装飾テープと前記有機ELテープとを接着する接着テープを収納する第3収納部とをさらに備え、
前記搬送部は、さらに、前記接着テープが前記有機ELテープと前記接着テープとに挟まれた状態で、前記装飾テープ及び前記接着テープを前記搬送経路に沿って搬送し、
前記搬送経路の前記切断部より上流側であって、前記第1収納部、前記第2収納部及び前記第3収納部より下流に設けられ、前記有機ELテープ、前記装飾テープ及び前記接着テープを、前記厚み方向に対して押圧することで接着する接着部をさらに備える、
請求項1〜5の何れか1項に記載の切断装置。
【請求項7】
前記搬送経路の前記第2収納部より下流側に設けられ、前記装飾テープに対して印刷を行う印刷部をさらに備える、
請求項6に記載の切断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−64490(P2012−64490A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−208922(P2010−208922)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】