説明

列車ドア開閉制御システム

【課題】構成が簡単で不具合が生じにくく、しかも簡単、迅速かつ確実なドア開閉作業が実現されるように支援する列車ドア開閉制御システムを提供すること。
【解決手段】軌道上を走行し、当該軌道に沿って設置された駅のプラットホームF1に停止する列車Tのドア開閉制御を行う列車ドア開閉制御システムであって、所定駅のプラットホームF1に隣接する所定位置に、ホーム位置情報タグ40およびリセットタグ50を設置し、これらのタグからの情報を列車Tに搭載された検知器20で読み取って、列車TのホームF1に対する位置を判断し、プラットホーム側のドアDのみを開閉可能な状態としたり、列車Tの全ドアDを開閉不可状態としたりする列車ドア開閉制御システムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線路などの軌道上を走行する列車のドアの開閉制御を行う列車ドア開閉制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
列車ドア開閉制御装置としては、例えば、列車ドアの開閉を的確かつ迅速に行うためのものがある。より具体的に説明すると、編成車両数が多数である列車がプラットホームに停車したときに、プラットホームに面していない列車ドアの開放を防止し、プラットホームに面している列車ドアだけが開放されるように制御しようとするものがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−242172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来の列車ドア開閉制御装置では、各列車ドアについてプラットホームに面しているか否かを検知するために多くのセンサ等の検出手段が必要であり、配線や制御が複雑になるという問題がある。配線や制御が複雑になると故障や不具合が生じやすくなる。
また、一両の車両からなる列車など、少数車両編成の列車では、列車の全てのドアについて、ドアの状態(例えばプラットホームに面しているか否かなど)を簡単かつ迅速に認識することが可能であるので、個々の列車ドアの開閉を制御することができる上記のような列車ドア開閉制御装置は必ずしも必要でない。
ところが、少数車両編成の列車は、ワンマン運転など、最小限の人数で列車の運行が行われる場合が少なくない。そして、少人数での列車運行では、運行従事者にかかる負担が大きい。従って、ドア開閉システムとしては、運行従事者にかかる負担ができるだけ小さいシステムが望ましい。
【0005】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、構成が簡単で不具合が生じにくく、しかも簡単、迅速かつ確実なドア開閉作業が実現されるように支援する列車ドア開閉制御システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本願発明は、以下のような列車ドア開閉制御システムを提供する。
本願発明は、軌道上を走行し、当該軌道に沿って設置された駅のプラットホームに停止する列車のドア開閉制御を行う列車ドア開閉制御システムであって、前記列車が停車する所定駅のプラットホームが前記軌道のどちら側に設置されているかに関するホーム位置情報を保持するホーム位置情報タグと、前記列車の全ドアの開閉を不可にする開閉不可指示情報を保持するリセットタグと、前記タグに保持された前記情報を検知する検知器と、前記列車のドア開閉制御に用いられる制御部と、を備えており、前記ホーム位置情報タグは、前記軌道沿いであると共に前記所定駅のプラットホームに隣接する位置であり、しかも当該所定駅のプラットホームの列車停止位置に停止状態の列車の前記検知器の位置よりも列車進入方向側の位置に設置されており、前記リセットタグは、前記軌道沿いであると共に前記所定駅のプラットホームに隣接する位置であり、しかも当該所定駅のプラットホームの列車停止位置に停止状態の列車の前記検知器の位置よりも列車進出方向側の位置に設置されており、前記検知器及び前記制御部は、前記列車に設置されており、且つ当該制御部は、前記検知器が前記ホーム位置情報を検知すると、当該ホーム位置情報を基に認識されたプラットホーム設置サイドと同じサイドのドアのみを開閉可能な状態とし、前記検知器が前記開閉不可指示情報を検知すると、前記列車の全ドアを開閉不可状態とするものであることを特徴とするものである。
そして、前記列車は、その両端に運転台を備えており、各運転台には、その運転台を列車の先頭にする場合にこれに対応して切替位置が前位置に切替えられる運転台切替器と、列車運転方法をワンマン運転方法にする場合にこれに対応して切替ポジションがワンマンポジションに切替えられる運転方法切替器とが設置されており、前記運転方法切替器の切替ポジションがワンマンポジションである状態で、列車の先頭になる先頭運転台に設置された運転台切替器の切替位置が前位置に切替えられると、前記列車ドア開閉制御システムが起動するようになっており、前記先頭運転台の運転台切替器の切替位置が前位置からそれ以外の切替位置に切替えられると、前記列車ドア開閉制御システムが停止するようになっているものでもよい。
また、前記検知器は、前記軌道の敷設面に面した列車下部に設置されており、
前記ホーム位置情報タグ及び前記リセットタグは、前記軌道を支持する枕木の上に設置されているものでもよい。
また、前記制御部は、前記列車ドア開閉制御システムの起動後、前記検知器による最初の情報検知までの間、全ドアの開閉が可能な状態にするものであってもよい。
また、前記制御部は、前記検知器が検知した前記ホーム位置情報タグ又は前記リセットタグからの情報が読取不可である場合、全ドアを開閉できない状態にするものであってもよい。
また、前記所定駅のプラットホームは、上り及び下りの両方向の列車が走行する双方向軌道に沿って設置されており、当該双方向軌道に隣接して、下り列車用ホーム位置情報タグと、上り列車用ホーム位置情報タグと、下り列車用リセットタグと、上り列車用リセットタグとが設置されており、前記下り列車用ホーム位置情報タグは、上り列車停止位置に停止した上り列車の前記検知器の位置よりも下り列車進入方向側の位置に設置されており、前記上り列車用ホーム位置情報タグは、下り列車停止位置に停止した下り列車の前記検知器の位置よりも上り列車進出方向側の位置に設置されており、前記下り列車用リセットタグは、前記上り列車用ホーム位置情報タグよりも下り列車進出方向側の位置に設置されており、前記上り列車用リセットタグは、前記下り列車用ホーム位置情報タグよりも上り列車進出方向側の位置に設置されているものでもよい。
また、前記列車は、当該列車の一方側のサイドのドアの開閉を行う一方側の戸締機構と、他方側のサイドのドアの開閉を行う他方側の戸締機構と、一方側の戸締機構を開閉動作させるための一方側ドア開閉スイッチと、他方側の戸締機構を開閉動作させるための他方側ドア開閉スイッチと、前記一方側ドア開閉スイッチが設置された回路上に設置された一方側回路スイッチと、前記他方側ドア開閉スイッチが設置された回路上に設置された他方側回路スイッチとを備えるものであり、前記制御部は、前記一方側回路スイッチおよび他方側回路スイッチのオンオフ制御を行うスイッチ制御部を有するものであり、配線で結ばれた前記制御部と前記一方側回路スイッチとの間と、前記制御部と前記他方側回路スイッチとの間に、それぞれ、前記一方側回路スイッチ及び前記他方側回路スイッチ側から前記制御部側への電流の流れを阻止する整流作用を有する整流手段が設置されているものでもよい。
【発明の効果】
【0007】
本願発明によれば、ホーム位置情報タグが、軌道沿いであると共に所定駅のプラットホームに隣接する位置で、しかも当該所定駅のプラットホームの列車停止位置に停止状態の列車の検知器の位置よりも列車進入方向側の位置に設置されており、リセットタグが、軌道沿いであると共に所定駅のプラットホームに隣接する位置で、しかも当該所定駅のプラットホームの列車停止位置に停止状態の列車の検知器の位置よりも列車進出方向側の位置に設置されているので、プラットホームに停車していた列車がプラットホームから進出し、検知器がリセットタグの情報を検知すると、その後、列車の全ドアが開閉不可の状態になる。そして、列車がプラットホームに進入し、検知器がホーム位置情報タグの情報を検知すると、その後、列車のプラットホーム側のドアのみが開閉可能な状態になり、プラットホームとは反対側のドアについては開閉不可の状態が維持される。
つまり、上記いずれの状態においても、プラットホームに掛かっていないドアは開閉不可の状態であるので、プラットホームに掛かっていないドアを誤って開放させるようなことが確実に防止され、簡単かつ迅速なドア開閉作業が実現される。このように、簡単、迅速かつ確実なドア開閉を実現できるシステムは、ワンマン運転など少人数での列車運行に好適である。
また、列車側に制御部と検知器を設置し、地上側にホーム位置情報タグとリセットタグを設置するだけでよく、構成が極めて簡単であるので、不具合などが生じにくい。
【0008】
そして、本願発明では、運転方法切替器の切替ポジションがワンマンポジションである状態で、列車の先頭になる先頭運転台に設置された運転台切替器の切替位置が前位置に切替えられると、列車ドア開閉制御システムが起動し、先頭運転台の運転台切替器の切替位置が前位置からそれ以外の切替位置に切替えられると、列車ドア開閉制御システムが停止するようになっている。つまり、運転台切替器を、列車ドア開閉制御システムのオンオフスイッチとして機能させている。従って、列車を走行させる際、確実に列車ドア開閉制御システムを起動させることができ、より確実なドア開閉制御を実現することができる。しかも、切替操作によって簡単かつ迅速に列車ドア開閉制御システムを起動させることができる。また、運転台切替器の切替位置が前位置以外の切替位置に切替えられる度に、列車ドア開閉制御システムが停止されてリセットされるようになっており、頻繁にシステムがリセットされる構成になっているので、制御システムの誤動作の発生をより確実に防止できるようになっている。
【0009】
また、本願発明では、検知器は、軌道の敷設面に面した列車下部に設置されており、ホーム位置情報タグ及びリセットタグは、軌道を支持する枕木の上に設置されているので、枕木上に設置されたタグと当該タグの上方を通過する列車下部の検知器に関して、極めて安定した離間距離が確保される。検知器20とタグ40,50との離間距離が安定していれば、離間距離に対応して、通信設定を最適化することができ、より確実に情報を検知できる環境が確保される。
【0010】
また、本願発明では、列車ドア開閉制御システムの起動後、検知器による最初の情報検知までの間、全ドアが開閉可能なフリー状態になっており、列車の全ドアを自由に開閉できるようになっている。列車は、運行に使用される前に、駐車場等において点検されることがあるところ、点検時にドア開閉を行うことができなければ、ドアの開閉動作確認作業に手間がかかる。従って、本願発明のように、列車ドア開閉制御システムの起動後、最初の情報検知までの間、ドア開閉を自由に行うことができれば、ドア開閉閉動作確認などの点検作業を、迅速、容易かつ確実に行うことができる。
【0011】
また、本願発明では、制御部は、検知器が検知したホーム位置情報タグ又はリセットタグからの情報が読取不可である場合、全ドアを開閉できない状態にするものであるので、プラットホームに面していない列車ドアを誤って開放させてしまうようなことが確実に防止される。
【0012】
また、本願発明では、上り及び下りの両方向の列車が走行する双方向軌道に沿って設置された所定駅のプラットホームでは、当該双方向軌道に隣接して、下り列車用ホーム位置情報タグと、上り列車用ホーム位置情報タグと、下り列車用リセットタグと、上り列車用リセットタグとが設置されている。
そして、下り列車用ホーム位置情報タグは、上り列車停止位置に停止した上り列車の検知器の位置よりも下り列車進入方向側の位置に設置されている。従って、上り列車運行時、上り列車が停止位置で停止する前に、上り列車の検知器が誤って下り列車用ホーム位置情報タグの情報を検知することが確実に防止される。同様に、上り列車用ホーム位置情報タグは、下り列車停止位置に停止した下り列車の検知器の位置よりも上り列車進出方向側の位置に設置されている。従って、下り列車運行時、下り列車が停止位置で停止する前に、下り列車の検知器が誤って上り列車用ホーム位置情報タグの情報を検知することが確実に防止される。このような構成にすることで、ドア開閉制御システムによるドア開閉制御がより確実な動作になる。
また、下り列車用リセットタグは、上り列車用ホーム位置情報タグよりも下り列車進出方向側の位置に設置されているので、下り列車がプラットホームから進出するとき、検知器が最後に検知する情報は、開閉不可指示情報である。同様に、上り列車用リセットタグは、下り列車用ホーム位置情報タグよりも上り列車進出方向側の位置に設置されているので、上り列車がプラットホームから進出するとき、検知器が最後に検知する情報は開閉不可指示情報である。従って、駅のプラットホームから進出して次の駅のプラットホームに進入するまでの間、列車のドアを誤って開放させるようなことが確実に防止され、簡単かつ迅速なドア開閉作業が実現される。
【0013】
また、本発明では、配線で結ばれた制御部と一方側回路スイッチとの間と、制御部と他方側回路スイッチとの間に、それぞれ、一方側回路スイッチ及び他方側回路スイッチ側から制御部側への電流の流れを阻止する整流作用を有する整流手段が設置されているので、回路スイッチのオンオフ動作の際に当該回路スイッチの接点においてノイズが発生しても、当該ノイズが制御部に悪影響が及ぶことが防止される。これにより、制御部の誤動作や動作停止などの不具合の発生がより確実に防止され、列車ドア開閉制御システムの運用状態をより安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る実施形態の列車ドア開閉制御システムが用いられる列車や駅のプラットホームを示す説明用の斜視図である。
【図2】(a)は、実施形態の列車ドア開閉制御システムの列車側の構成を示す説明図であり、(b)は、(a)に示される矢印Aの向きから見た切替レバーを示す部分平面図であり、(c)は、システムの構成を示すブロック図である。
【図3】図2(a)に示される列車の正面図である。車上送受信器および地上通信器の設置位置を示す説明図である。
【図4】(a)は、島式プラットホームの構成及びタグの配置を示す平面図であり、(b)は、双方向軌道である線路に沿って設置されたプラットホームの構成及びタグの配置を示す平面図である。
【図5】ドア開閉制御システムの動作の流れを示すフローチャート図である。
【図6】図2(c)に示される二点鎖線で囲まれた部分の具体的回路構成の一例を模式的に示す回路図である。
【符号の説明】
【0015】
10…ワンマン設定スイッチ(運転方法切替器)、11…切替レバー(運転台切替器)、
11a…前位置、11b…中位置、11c…後位置、
12(12R,12L)…ドア開閉スイッチ、
12Ra,12La…開接点、12Rb,12Lb…閉接点、
12pR,12pL…給電回路(戸締機構動作回路)、
12sR,12sL…回路スイッチ、
12sR1,12sL1…開閉接点、12sR2,12sL2…コイル(開閉手段)
13…表示ランプ、13a…電源ランプ、
13b…開閉可ランプ(ドア開閉可通知手段)、
13c…開閉不可ランプ(ドア開閉不可通知手段)、
13d…異常ランプ(システム異常通知手段)、
14(14R,14L)…戸締機構、
20…検知器、30…制御部(コントローラ)、32…信号判断部、
33…スイッチ制御部、35…ランプ制御部、40,50…タグ、
40a…下り列車用ホーム位置情報タグ、40b…上り列車用ホーム位置情報タグ、
40c…下り列車用ホーム位置情報タグ、40d…上り列車用ホーム位置情報タグ、
50a…下り列車用リセットタグ、50b…上り列車用リセットタグ、
61a,61b…ダイオード(整流手段)
C…運転台、D…ドア、
E…駅構内、Esa…下り列車用の場内信号機、Esb…上り列車用の場内信号機、
F1,F2…プラットホーム、
Ja…下り列車進入方向側分岐点、Jb…上り列車進入方向側分岐点、M…枕木、
P1〜P9…列車位置、R,Rs1,Rs2,Rd1,Rd2,Rm…線路、
Sa…下り列車停止位置、Sb…上り列車停止位置、
Sok-1…右側ドア開閉可能信号(ホーム位置情報)、
Sok-2…左側ドア開閉可能信号(ホーム位置情報)、
Sng…ドア開閉不可信号(開閉不可指示情報)、
T…列車、Ta…車両、X…駅間。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る列車ドア開閉制御システム(以下、単にシステムと称することがある)について、図面を用いて詳細に説明する。
【0017】
図1に示されるように、本実施例の列車ドア開閉制御システムは、線路Rなどの軌道を走行する列車Tにおいて用いられる。列車Tは、線路Rを走行し、線路Rに沿って設置された各駅のうち停車対象の駅のプラットホームF1に停車するように運行される。
【0018】
図2(a)に示される列車Tは、一両以上の車両Taによって構成されたものであり、列車Tの両端部(前後端部)に運転台Cが設置されている(図2(a)では一方のみ図示)。各運転台Cには、列車運転方法の設定の切替えに用いられるワンマン設定スイッチ(運転方法切替器)10と、運転台Cの位置設定の切替えに用いられる切替レバー(運転台切替器)11と、ドアDを開閉するための戸締機構14(図2(c)参照)を操作するためのドア開閉スイッチ12と、列車ドア開閉制御システムで用いられる表示ランプ13とが設置されている。
【0019】
ワンマン設定スイッチ10は、列車Tの運転者がドア開閉を行う場合(ワンマン運転の場合)の設定位置であるオン位置と、同乗の車掌がドア開閉を行う場合(ツーマン運転と称されることのある運転の場合)の設定位置であるオフ位置とに切替可能になっている。列車Tの運転者は、同乗の車掌によってドア開閉が行われる場合、ワンマン設定スイッチ10の設定位置をオフ位置にする。すると、ドア開閉スイッチ12が作動不可の状態になり、ドア開閉スイッチ12ではドアDを開閉できないようになる。この状態では、図示しない車掌用ドア開閉スイッチによってドア開閉が行われる。他方、ワンマン運転の場合、列車Tの運転者は、ワンマン設定スイッチ10の設定位置をオン位置にする。列車ドア開閉制御システムが起動状態且つ後述の回路スイッチ12sがオンの状態で、このようにワンマン設置スイッチ10がオン位置に設定されると、ドア開閉スイッチ12が作動可能状態になり、車掌用ドア開閉スイッチのみならず、ドア開閉スイッチ12によってもドアの開閉を行うことができるようになる。
【0020】
図2(b)に示されるように、切替レバー11は、前位置11a、中位置11b、後位置11cのいずれかの位置に切替可能になっている。そして、切替レバー11は、当該切替レバー11が設置された運転台Cを列車Tの先頭にする場合すなわち列車操縦用に使用する場合、切替位置の設定が前位置11aになるように切替えられる。また、切替レバー11は、当該切替レバー11が設置された運転台Cを最後尾に位置させる場合、切替位置の設置が後位置11cになるように切替えられる。なお、複数の車両で編成された列車にあって、切替レバー11が設置された運転台Cが隣接車両との連結位置に位置する場合、当該切替レバー11は中位置11bに切替えられる。
切替レバー11は、コントローラ30に接続されており(図2(c)参照)、列車ドア開閉制御システムのオンオフスイッチとしても機能する。つまり、いずれかの運転台Cに設置された切替レバー11が前位置11aに切替えられると、当該切替操作に基づく信号がコントローラ30に入力されてシステムのスイッチがオンになりシステムが起動する(図5のスタート参照)。そして、切替レバー11を前位置11aから前位置11a以外の位置に切替え、全ての切替レバー11の設定が前位置11a以外の位置に切替えられた状態になると、当該切替操作に基づく信号がコントローラ30に入力されてシステムのスイッチがオフになりシステムが停止する。
【0021】
ドア開閉スイッチ12としては、列車Tの一方側(例えば列車進行方向右側)のドアの開閉用のスイッチ12Rと他方側(例えば列車進行方向左側)のドアの開閉用のスイッチ12Lとがあり(図2(c)、図6参照)、それぞれのドア開閉スイッチ12R,Lが運転台Cに設置されている。各ドア開閉スイッチ12R,Lは、それぞれ開ボタン及び閉ボタンを備えており(いずれのボタンとも不図示)、両ボタンが操作されていないとき、各ドア開閉スイッチ12R,Lはドアが開閉されないニュートラル状態(図6参照)になっている。そして、いずれかのドア開閉スイッチ12R,Lの開ボタンが押されると、対応するドア開閉スイッチ12R,Lが開接点12Ra,12Laに接続された状態になり、対応する側のドアDの戸締機構14R,14Lが作動されてドアDが開く。また、いずれかのドア開閉スイッチ12R,Lの閉ボタンが押されると、対応するドア開閉スイッチ12R,Lが閉接点12Rb,12Lbに接続された状態になり、対応する側のドアDの戸締機構14R,Lが作動されてドアDが閉じられる。運転者は、これらのドア開閉スイッチ12R,Lを操作してドアDの開閉を行うことができる。
なお、ドア開閉スイッチ12R,Lは、対応する側のドアDの戸締機構14R,Lを動作させるための給電用の回路12pR,12pL(図6参照)中に設置されている。そして、この回路12pR,L中に、当該回路12pR,Lをオンオフするための回路スイッチ12sR,12sL(図2(c)、図6参照)が設置されている。これらの回路スイッチ12sR,12sLは、後述のコントローラ30のスイッチ制御部33によってオンオフ制御されるものであり、列車ドア開閉制御システムが起動している状態で、回路スイッチ12sRがオンになるとドア開閉スイッチ12Rによってドア開閉を行うことができる状態になり、回路スイッチ12sLがオンになるとドア開閉スイッチ12Lによってドア開閉を行うことができる状態になる。そして、これらの回路スイッチ12sR,12sLがオフになると、ドア開閉スイッチ12R,Lによるドア開閉が不可の状態になる。なお、スイッチ回路中に緊急時用のスイッチを別途設けて、緊急時にはいつでもスイッチ回路をオフ状態にすることができるようにしてもよい。
【0022】
表示ランプ13は、図2(c)に示されるように、システム電源起動時に点灯する電源ランプ13aと、列車Tの左右いずれかのサイドのドアDの開閉が可能であるときに点灯する開閉可ランプ(ドア開閉可通知手段)13bと、列車Tの全ドアDの開閉が不可であるときに点灯する開閉不可ランプ(ドア開閉不可通知手段)13cと、システムに何らかの異常が生じているときに点灯する異常ランプ(システム異常通知手段)13dとを備えている。
【0023】
また、図2(a),(c)に示されるように、列車Tには、地上側に設置された後述のタグ40,50からの情報を検知する検知器20と、検知器20からの出力信号が入力される列車ドア開閉制御システムの制御部(以下、コントローラ)30とが搭載されている。
【0024】
検知器20は、列車Tの両端(前後)側に設置されている(図2(a)では一端側の検知器のみ図示)。つまり、各検知器20は、各運転台Cに対応して設置されている。本実施例では、検知器20として無線機器であるアンテナ(車上受信器)が用いられている。検知器20は、地上側に設置された後述のタグ(地上送信器)40,50からの発信信号を受信し、受信した信号をコントローラ30に向けて出力するものである。さらに、後述するように、本実施例の列車ドア開閉制御システムでは、常に、列車Tの先頭側の検知器20を作動させて用いるようになっている。
【0025】
なお、検知器20及び後述のタグ40,50は、電波(マイクロ)を送受信するための送受信器(無線機器)である。検知器20は、主に、タグからの発信電波信号を受信する受信器として用いられるものである。そして、タグ40,50は、主に、電波信号を発信する発信器として用いられるものである。実施形態で用いられているタグ40,50は、電源としての電池が内蔵された発信器であるが、電源を内蔵していない、いわゆる反射型の発信器でもよい。
【0026】
また、検知器20は、車両TaのドアDよりも下方の検知器搭載位置に設置されている。より具体的に説明すると、検知器20は、線路Rが設置された路面に面した列車下部で、しかもその中央部に設置されている。つまり、検知器20は、路面(あるいは路面側)に設置された通信機器との間での信号の送受信が可能な状態で設置されている。このように、列車Tの下部に設置された検知器20は、線路Rに隣接して設置された通信機器との間での信号の送受信に好適である。
【0027】
検知器20は、さらに、切替レバー11によってスイッチがオンオフされるようになっている。つまり、いずれかの運転台Cに設置された切替レバー11が前位置11aに切替えられると、その運転台Cに対応して設置された検知器20だけスイッチがオンになる。このとき、その他の運転台Cに対応して設置された検知器20のスイッチはオフのままである。その後、前位置11aに切替えられた切替レバー11を前位置以外の位置に切替えると、対応する検知器20のスイッチがオフになり、全ての検知器20がオフの状態になる。
このように、切替レバー11は、当該切替レバー11が設置された運転台Cに対応する検知器20のオンオフスイッチとしても機能するようになっている。
【0028】
コントローラ30は、検知器20からの信号の種類を識別し、信号の情報内容を判断する信号判断部32と、ドア開閉スイッチ12R,Lが設置された回路12pR,L(図6参照)中に設置された回路スイッチ12sR,12sLのオンオフ制御を行うスイッチ制御部33と、表示ランプ13の点灯および消灯を制御するランプ制御部35とを備えている。
【0029】
信号判断部32は、受信した信号の種類を判断する。検知器20が受信する信号は、後述のホーム位置情報タグ40から発信されるホーム位置情報(右側ドア開閉可能信号Sok-1又は左側ドア開閉可能信号Sok-2)や後述のリセットタグ50から発信される開閉不可指示情報(ドア開閉不可信号Sng)である。つまり、信号判断部32は、受信信号がこれらのうちのいずれの信号であるかを判断する。
【0030】
スイッチ制御部33は、コントローラ30に入力された検知器20からの信号に基づいて回路スイッチ12sR,12sL(図6参照)のオンオフを制御する。
検知器20から右側ドア開閉可能信号Sok-1を受けると、コントローラ30は、一方側(本実施形態では下り列車進行方向右側)のドア開閉スイッチ12Rが設置された回路12pR中の回路スイッチ12sRをオン状態にする。すると、一方側のドア開閉スイッチ12Rによって、下り列車進行方向右側のドアDを開閉することができる状態になる。また、検知器20から左側ドア開閉可能信号Sok-2を受けると、コントローラ30は、他方側(本実施形態では下り列車進行方向左側)のドア開閉スイッチ12Lが設置された回路12pL中の回路スイッチ12sLをオン状態にする。すると、他方側のドア開閉スイッチ12Lによって、下り列車進行方向左側のドアDを開閉することができる状態になる。
そして、検知器20からドア開閉不可信号Sngを受けると、コントローラ30は、両方のドア開閉スイッチ12R,Lの回路中の回路スイッチ12sR,12sLをオフ状態にする。すると、列車Tの両側のドア開閉スイッチ12R,Lが共に作動しない状態になり、ドア開閉スイッチ12R,Lによるドア開閉が不可の状態になる。つまり、列車の全ドアDについて、ドア開閉スイッチ12R,Lによる開閉が不可の状態になる。
【0031】
ランプ制御部35は、表示ランプ13を構成する各種のランプの点灯及び消灯の状態を制御するものである。例えば、切替レバー11が前位置11aに切替えられ、列車ドア開閉制御システムが起動されると、電源ランプ13aを消灯状態から点灯状態にし、前位置11aから前位置以外の位置に切替えられてシステムが停止されると、電源ランプ13aを点灯状態から消灯状態にする。そして、ランプ制御部35は、システムが起動されると開閉可ランプ13bを点灯し、システムが停止されると開閉可ランプ13bを消灯する。また、ランプ制御部35は、検知器20からの信号が右側ドア開閉可能信号Sok-1または左側ドア開閉可能信号Sok-2であると、開閉可ランプ13bの点灯(または点灯状態の維持)をすると共に開閉不可ランプ13cの消灯(または消灯状態の維持)をする。他方、検知器20からの信号がドア開閉不可信号Sngであると、開閉不可ランプ13cの点灯(または点灯状態の維持)をすると共に開閉可ランプ13bの消灯(または消灯状態の維持)をする。さらに、システムについて何らかの異常を検知すると、異常ランプ13dの点灯(または点灯状態の維持)を行い、全ての異常状態が解消されると、異常ランプ13dを消灯する。
【0032】
また、列車ドア開閉制御システムは、図1、図3及び図4に示されるように、地上側に設置されたホーム位置情報タグ40(40a,40b)及びリセットタグ50(50a,50b)を備えている。図3に示されるように、タグ40,50は、線路R(Rs1,Rs2,Rd1,Rd2)のレールの下に敷かれた枕木Mの上であって、2本一組のレールの間であるレール間位置に設置されている(図1、図4では枕木Mは不図示)。当該レール間位置は、タグ40,50の設置位置として極めて好適である。
例えば、タグをプラットホームなど列車の側方に設置すると、検知器を列車側部に設置する必要が生じると共に、列車の両側に検知器を設置する必要が生ずるが、本実施形態のように、タグ40,50をレール間位置に設置すると、検知器20を列車下部に一つ設置するだけでよい。つまり、本実施形態のように検知器20及びタグ40,50を設置すると、列車ドア開閉制御システムの構成をシンプルにすることができる。また、レール間位置に設置されたタグ40,50は、列車Tの運転者から視認しやすく、目標や目印として使用可能である。
ところで、検知器20とタグ40,50との間における通信は、列車側の検知器20がタグ40,50の上を通過するときに行われる。つまり、送受信器の一方である検知器20は移動状態で通信を行う。また、検知器20とタグ40,50との間の通信は、屋外で行われるものである。このように、検知器20とタグ40,50との間の通信環境は必ずしも一定ではない。この点、枕木M上にタグ40,50を設置することは、より安定した通信を行う上で好ましいことである。つまり、列車Tは枕木M上に敷設されたレール上を走行するものであり、枕木Mと列車Tとの間の距離は極めて安定している。従って、枕木M上にタグ40,50を設置すると、当該タグ40,50とタグ上方を通過する列車側の検知器20との離間距離は極めて安定する。検知器20とタグ40,50との離間距離が一定であれば、離間距離に対応して通信設定を最適化することができるので、より確実な信号の送受信状態が確保される。
なお、枕木Mの材質は特に限定されるものではない。枕木であれば、木製、コンクリート製をはじめとして、種々の材質の枕木であってよい。
【0033】
ホーム位置情報タグ40は、当該タグ設置駅のプラットホームF1が列車進行方向を基準として、左右どちら側(一方側または他方側のどちら側)に設置されているかに関するホーム位置情報(すなわち右側ドア開閉可能信号Sok-1や左側ドア開閉可能信号Sok-2)を保持している。つまり、ホーム位置情報タグ40は、右側ドア開閉可能信号Sok−1を発信する右側用タグと、左側ドア開閉可能信号Sok-2を発信する左側用タグの2種類だけである。つまり、本実施形態で用いられるホーム位置情報タグ40は、上り下りの方向とは無関係に、列車の進行方向を基準として停止対象のプラットホームが左右いずれの側に設置されているかという点のみに着目して設置できるものであり、極めて設置が容易である。
【0034】
そして、ホーム位置情報タグ40は、レールRに対して次のような位置に設置されている。
例えば、下り列車用ホーム位置情報タグ(右側用タグ)40aは、図4(a)に示されるように、線路Rd1沿いであって、プラットホームF1に隣接しており、しかも当該プラットホームF1の下り列車停止位置Saに停車した状態の下り列車T(図4(a)のP2参照)に搭載された検知動作中の検知器20の位置20aよりも、下り列車進入方向側(図4(a)では左側)の位置に設置されている。本実施例では、検知器20の搭載位置は、列車Tの先頭位置(すなわち下り列車停止位置Sa)から下り列車進入方向に長さLだけ車両中央寄りの位置である。従って、下り列車用ホーム位置情報タグ40aの位置は、下り列車停止位置Saに停車した下り列車Tの検知動作中の検知器20の搭載位置に対応するプラットホームF1上の位置20aよりも下り列車進入方向側(図4(a)では左側)の位置である。なお、検知器20の搭載位置は、上記位置に限られるものではなく、例えば列車Tの先頭位置(L=0)であってもよい。この場合、検知器20の搭載位置に対応するプラットホームF1上の位置は下り列車停止位置Saに一致する。
そして、下り列車用ホーム位置情報タグ40aは、図4(a)に示されるようにプラットホームF1の下り列車進入方向側に線路の分岐がある場合、停車対象のプラットホームF1の下り列車進入方向側であって、最もプラットホームF1寄りに位置する分岐点(下り列車進入方向側分岐点)Jaの位置よりもプラットホームF1寄りの位置すなわち下り列車進出方向側(図4(a)では右側)の位置に設置されている。図4(a)に示される下り列車進入方向側分岐点Jaは、プラットホームF1の下り列車進入方向側に位置する単線区間(共通区間)Rs1から第1番線区間Rd1及び第2番線区間Rd2に分岐する分岐点である。
また、下り列車用ホーム位置情報タグ40aは、図4(a)に示されるように、停車対象のプラットホームF1がある駅の駅構内Eに設置されている。別言すれば、下り列車用ホーム位置情報タグ40aは、駅構内Eに進入して良いか否かを表示する下り列車用の場内信号機Esaよりもプラットホーム寄りの位置すなわち下り列車進出方向側(図4(a)では右側)の位置に設置されているということができる。駅構内Eへの進入の可否を表示する場内信号Esaは、通常、駅間Xと駅構内Eとの境界位置に設置されているからである。ここで、駅間Xとは、隣接する駅の駅構内Eの間の区間をいう。
なお、下り列車用ホーム位置情報タグ40aは、プラットホームF1に沿って敷設された線路内位置すなわちプラットホームF1の下り列車進入方向側の端部の位置よりも下り列車進出方向側の位置に設置されていることが好ましく、プラットホームF1の下り列車進入方向側の端部に列車最後尾位置が達した状態の下り列車Tに搭載された検知動作中の検知器20の位置よりも下り列車進出方向側の位置に設置されていることがより好ましい。
また、上り列車に搭載された検知動作中検知器の搭載位置と、上り列車停止位置Sbと、当該上り列車停止位置Sbに停車した上り列車の検知動作中検知器の搭載位置に対応するプラットホーム上の位置20bと、上り列車用ホーム位置情報タグ(右側用タグ)40bの位置と、停車対象のプラットホームの上り列車進入方向側にある最もプラットホーム寄りの分岐点Jbの位置と、駅構内Eと、上り列車用の場内信号機Esbの位置との位置関係は、上述した下り列車についての対応位置どうしの位置関係と、下りと上りが異なること以外同様であるので、ここでは、その説明を省略する。そして、下り列車進入方向と上り列車進出方向とは同じ方向であると共に、下り列車進出方向と上り列車進入方向とは同じ方向であり、これらは以下同様である。
【0035】
また、リセットタグ50は、列車Tの全ドアDの開閉を不可にする開閉不可指示情報であるドア開閉不可信号Sngを保持している。そして、リセットタグ50は、次のような位置に設置されている。
例えば、下り列車用リセットタグ50aは、線路Rd1沿いであって、プラットホームF1に隣接しており、しかも当該プラットホームF1の下り列車停止位置Saに停止した下り列車T(図4(a)のP2参照)に搭載された検知動作中の検知器20の検知器搭載位置よりも下り列車進出方向側(図4(a)では右側)の位置に設置されている。
そして、下り列車用リセットタグ50aは、図4(a)に示されるように、下り列車進出方向側に位置する単線区間(共通区間)Rs2から第1番線区間Rd1及び第2番線区間Rd2に分岐する分岐点(下り列車進出方向側分岐点)Jbよりも下り列車進入方向側(図4(a)では左側)に設置されている。
また、下り列車用リセットタグ50aは、図4(a)に示されるように、停車対象のプラットホームF1がある駅の駅構内Eに設置されている。別言すれば、下り列車用リセットタグ50aは、駅構内Eに進入して良いか否かを表示する上り列車用の場内信号機Esbよりもプラットホーム寄りの位置すなわち下り列車進入方向側(図4(a)では左側)の位置に設置されているということができる。駅構内Eへの進入の可否を表示する場内信号Esbは、通常、駅間Xと駅構内Eとの境界位置に設置されているからである。
なお、下り列車用リセットタグ50aは、プラットホームF1の下り列車進出方向側の端部の位置よりも下り列車進入方向側の位置に設置されていることが好ましく、プラットホームF1の下り列車進出方向側の端部に列車先頭位置が達した状態の下り列車Tに搭載された検知動作中の検知器20の位置20aよりも下り列車進入方向側の位置に設置されていることがより好ましい。
また、上り列車用リセットタグ50bと、列車停止位置Sbと、上り列車に搭載された検知動作中検知器の搭載位置と、停車対象のプラットホームの上り列車進入方向側にある最もプラットホーム寄りの分岐点Jbの位置と、駅構内Eと、上り列車用の場内信号機Esbの位置との位置関係は、上述した下り列車についての対応位置どうしの位置関係と、下りと上りが異なること以外同様であるので、ここでは、その説明を省略する。
ここでは、便宜的に、下り列車用リセットタグ50aと、上り列車用リセットタグ50bとに分けて説明を行ったが、両リセットタグ50a,50bは、いずれもドア開閉不可信号Sngを発信する同じ種類のタグである。つまり、リセットタグ50の種類は一種類だけであり、極めてシンプルな構成である。このように、下り列車用リセットタグ50a及び上り列車用リセットタグ50bとして共通のリセットタグ50を用いるシステムでは、リセットタグ50の取り違いがなく、リセットタグ50の設置、交換、保守点検、管理などの作業をより効率的に行うことが可能である。
【0036】
そして、タグ40,50は、検知器20からの所定の起動信号を受信すると起動して、保持情報を信号として発信し、所定の起動信号を受信しない状態になると、それから所定時間経過後に動作停止するものである。つまり、各タグ40,50は、列車運行上、列車が通過するときのみ作動し、タグ40,50の上方に検知器20がないときは作動しないようになっている。このような構成にすると、タグ40,50に内蔵された電池の消耗が抑制され、電池交換などの保守点検なしにタグ40,50を長期間動作させることができる。
また、上述したように、検知器20のスイッチは、当該検知器20に対応する運転台Cの切替レバー11が前位置11aに切替えられるとオンになり、前位置以外の位置に切替えられるとオフになるようになっている。つまり、列車Tには複数の検知器20が設置されているが、列車走行時にスイッチがオンになるのは、複数の検知器20のうちの一つだけである。このような構成にすると、タグ40,50のスイッチがオンになるのは、動作中の検知器20がタグ40,50の上方を通過するときだけであり、停止中の検知器20が通過してもタグのスイッチはオフのままであるので、内蔵された電池の消耗がさらに抑制され、電池交換などの保守点検なしにタグ40,50を長期間動作させることができる。
【0037】
次に、このような列車ドア開閉制御システムの動作を、図4(a)に示される配置図、図5に示されるフローチャートや図6を参照しつつ説明する。
【0038】
本ドア開閉制御システムでは、切替レバー11が前位置11aに切替えられるとシステムが起動して動作を開始する(図5のスタート参照)。このとき、同時に、コントローラ30のランプ制御部35の制御によって電源ランプ13aが消灯状態から点灯状態になる。また、本システムでは、システムが起動されると回路スイッチ12sR,12sLがオンに設定され、ランプ制御部35の制御によって開閉可ランプ13bが消灯状態から点灯状態になる全ドア開閉可能ステップが実行される(ステップ1)。
【0039】
つまり、システムの起動後、検知器20による最初の情報検知までの間、列車Tの全ドアDを自由に開閉できるフリー状態が確保される(ステップ1)。従って、この状態で、ワンマン設置スイッチ10がオン位置に設定されれば、ドア開閉スイッチ12R,Lが作動可能状態になり当該ドア開閉スイッチ12によってドアの開閉を行うことができるようになる。このように、ワンマン設置スイッチ10がオンの状態であれば、システムの起動後、最初の情報検知までの間、ドア開閉を自由に行うことができるので、ドア開閉スイッチ12R,Lによるドア開閉の動作確認を、迅速、容易かつ確実に行うことができる。
【0040】
次に、ワンマン運転の状態が維持されており、切替レバー11が前位置であるかを確認する切替レバー位置検知ステップが実行される(ステップ2)。
ここで、切替レバー11が前位置11a以外の位置であと、システムが停止して、システムの動作が終了する(図5のエンド)。
他方、切替レバー11の位置が前位置11aに維持されていれば、システム起動状態が維持され、コントローラ30が信号入力待ちの状態になる信号入力待ちステップが実行される(ステップ3)。
【0041】
そして、信号入力待ちの状態で、列車Tの検知器20がいずれかのタグ40,50から情報を検知すると、以下説明するように、タグ40,50からの情報に基づいたドア開閉制御が行われる。
【0042】
コントローラ30が信号入力待ちの状態である場合としては、例えば、駐車場でシステム起動された後、駐車場から駅のプラットホームに向かって走行する列車Tや、前の駅を進出し、次の駅に向かって走行する列車Tなどを挙げることができる。
【0043】
そこで、ここでは、一両編成の下り列車Tが単線路線に設置された島式プラットホームF1(図4(A)参照)からなる駅に向かって走行する状態を基点として、以下、信号入力待ち(ステップ3)以降の動作を説明する。なお、島式プラットホーム(以下、島式ホームとも称する)F1は、線路Rの単線区間Rs1、Rs2から分岐した第1番線区間Rd1及び第2番線区間Rd2に挟まれる状態で設置されたホームである。
【0044】
島式ホームF1に向かって線路Rs1上を走行している列車Tのコントローラ30は、上述したように、信号入力待ちの状態である(ステップ3)。
そして、当該検知器20が最後に検知した情報は、通常、前の駅の下り列車用リセットタグからの情報である。従って、この場合、下り列車はドアDの開閉が不可の状態である。なお、このとき表示ランプ13は、電源ランプ13a及び開閉不可ランプ13cが点灯状態であり、開閉可ランプ13b及び異常ランプ13dが消灯状態である。
【0045】
その後、下り列車TがプラットホームF1に進入し、図4(a)において二点鎖線で示される位置P1に達すると、検知器20が下り列車用ホーム位置情報タグ40aからの信号Sok-1を検知し、この信号がコントローラ30へと入力される。
なお、下り列車Tが位置P1に達した状態では、動作中の検知器20は、下り列車用ホーム位置情報タグ40aの直上方に位置しているが、図の複雑化を避けるため、図4(a)では検知器20の図示を省略した。また、列車Tが図4(a)の位置P3に達した状態や、図4(c)の位置P4,P5,P7,P8に達した状態においても、同様に、タグの直上方に位置する検知器20の図示を省略した。
【0046】
信号待ち状態のコントローラ30は、検知器20からの信号を受けると、次に、入力された信号の内容を読み取ることができるか否かを判断する信号読取可否判断ステップを実行する(ステップ4)。そして、読み取ることができる場合、システムは正常であるので、異常ランプを消灯(または消灯状態を維持)する異常ランプ消灯ステップを実行し(ステップ5)、続いて、信号の内容を具体的に判断する信号読取ステップを実行する(ステップ7)。
【0047】
検知器20が受信した信号は、下り列車用ホーム位置情報タグ40aからの右側ドア開閉可能信号Sok-1であるので、次に、右側ドア開閉可能ステップが実行される(ステップ8)。これにより、列車進行方向右側のドア開閉スイッチ12Rの回路スイッチ12sRがオンになり、列車進行方向右側のドア開閉スイッチ12Rが動作可能な状態になる(ステップ8)。また、このとき、ドア開閉可ランプ13bを消灯状態から点灯状態にし、ドア開閉不可ランプ13cの消灯状態を維持する。なお、この時点で、開閉可ランプ13bが既に点灯状態である場合は、開閉可ランプ13bの点灯状態を維持する。また、この時点で、開閉不可ランプ13cが点灯状態である場合は、開閉不可ランプ13cを点灯状態にする。以下、ランプの点灯維持制御については、ここで説明した内容と同様であるので、詳細な説明を省略する。
列車進行方向右側のドア開閉スイッチ12Rが動作可能な状態になると、当該右側ドア開閉スイッチ12Rの操作によって右側のドアDの戸締機構14R(図2(c)、図6参照)を動作させることで列車右側のドアDを開閉することができる。そして、運転者は、開閉可ランプ13bや不可ランプ13cの点灯状態を視認することによって、ドア開閉スイッチ12によるドア開閉が可能であることを簡単且つ迅速に認識できる。
その後、コントローラ30は、切替レバー11が前位置11aであることを確認した後(ステップ2)、切替位置を再び信号待ちの状態になる(ステップ3)。ステップ2において、切替レバー11の位置が前位置以外に切替えられていた場合は、制御を終了する。
【0048】
ところで、先に説明した信号読取可否判断ステップ(ステップ4)において、入力された信号が化け信号である場合など、何らかの原因で信号の内容を読み取ることができない場合は、信号内容の判断不能という不具合が発生したことになるので、異常ランプを点灯させて異常状態を知らせる(ステップ6)。そして、全ドア開閉不可ステップが実行され(ステップ10)、両側のドア開閉スイッチ12R,Lの回路スイッチ12sR,12sLがいずれもオフにされて、ドア開閉スイッチ12R,Lによるドア開閉ができない状態になり、ドア開閉可ランプ13bが消灯状態されると共にドア開閉不可ランプ13cが点灯状態にされる(ステップ10)。そして、その後、切替レバー11が前位置11aであることを確認して(ステップ2)、信号待ちの状態に戻る(ステップ3)。
このように、本実施形態のシステムでは、信号読取不可と判断すると、ドア開閉スイッチ12R,Lによるドア開閉をすることができなくなる制御を行う。このような制御にすると、プラットホームに面していない列車ドアを誤って開放させてしまうようなことが確実に防止される。
また、本実施形態のシステムでは、信号読取不可と判断すると、異常ランプ(システム異常通知手段)13d及びドア開閉不可ランプ(ドア開閉不可通知手段)13cが点灯される。これにより、運転者に対して迅速に、異常発生と、ワンマンドアスイッチによるドア開閉ができない状態であることとが通知される。
ところで、信号読取不可の場合に異常ランプ13dを点灯させる動作は、タグ40,50の異常検知手段として機能する。つまり、信号内容の読取りが正常に続いている状態で、単発的に、信号読取不可の状態が生じた場合、その主原因はタグ40,50から信号が発信されていない場合になるからである。従って、本システムによれば、迅速にタグ40,50の不具合を発見することができる。なお、上述したように、異常ランプ点灯状態になると、ドア開閉スイッチ12R,Lによるドア開閉を行うことができない状態になるが、上述したように、必要に応じて、車掌用ドア開閉スイッチによってドアの開閉を行うことができる。
なお、ステップ4において信号内容を判断できなかった場合の動作は、以降においても生ずることがあるが、ここで説明した動作と同様であるので、以下説明を省略する。
【0049】
その後、プラットホームF1に進入した下り列車Tは、下り列車停止位置Saに停止する(位置P2参照)。ここで、運転者は、下り列車進行方向右側に位置する一方側のドア開閉スイッチ12Rを使って、下り列車進行方向右側のドアDを開いて乗降可能な状態にし、その後、当該ドアDを一方側のドア開閉スイッチ12Rを使って閉じて列車Tの走行を再開する。
走行を再開した列車Tが位置P3(図4(a)参照)に達すると、検知器20は、下り列車用リセットタグ50aからのドア開閉不可信号Sngを検知し、検知されたドア開閉不可信号Sngがコントローラに入力される。
【0050】
コントローラ30は、先に説明したように、入力された信号を受信し(ステップ3)、その信号が読み取り可能であると判断すると(ステップ4)、ランプ状態のステップ(ステップ5)を経て、信号の内容を読み取る(ステップ7)。
【0051】
ここで、検知器20が受信した信号は、下り列車用リセットタグ50aからのドア開閉不可信号Sngであるので、両側のドア開閉スイッチ12R,Lの回路スイッチ12sR,12sLがオフになり、両側のドア開閉スイッチ12R,Lが動作不可の状態になる(ステップ10)。この状態になると、ドア開閉スイッチ12R,Lでは列車の全ドアDを開閉することができない状態になる。また、同時に、開閉可ランプ13bが点灯状態から消灯状態になり、開閉不可ランプ13cが消灯状態から点灯状態になる(ステップ10)。これにより、運転者は、ドア開閉スイッチ12R,Lによってドアを開閉できないことを簡単且つ迅速に認識できる。そして、コントローラ30は、切替レバー11の位置を確認した後(ステップ2)、再び信号待ちの状態になる(ステップ3)。
【0052】
下り列車Tは、その後、次の駅のプラットホームに進入すると、当該次の駅に設置された下り列車用ホーム位置情報タグからの信号を検知器20で検知することになり、上記動作を繰り返すことなる。このとき、例えば、下り列車用ホーム位置情報タグが左側用タグであれば、検知器20は、左側ドア開閉可能信号Sok-2を受信することになり、図5に示される左側ドア開閉可能ステップ(ステップ9)が実行されることになる。実行する内容は、開閉可能になるドアが右側ではなく左側であること以外ステップ8と同様であるので、ここでは、その詳細な説明を省略する。
【0053】
このように、本実施形態の列車ドア開閉制御システムを用いれば、プラットホームF1側のドアDだけを開閉でき、プラットホームF1とは反対側のドアDは開閉できない状態を確保することができるので、プラットホームF1とは反対側のドアDを誤って開放させるようなことが確実に防止され、簡単かつ迅速なドア開閉作業が実現される。簡単、迅速かつ確実なドア開閉を実現できるシステムは、ワンマン運転など少人数での列車運行に好適である。また、列車側に制御部及び検知器を設置し、地上側にホーム位置情報タグとリセットタグを設置するだけでよく、構成が極めて簡単であるので、システム不具合が生じにくい。
【0054】
そして、上述したように、切替レバー11が前位置11a以外の位置に切替えられると、システムが停止して、システムの動作が終了するようになっており、これらの操作が行われる度に、頻繁に列車ドア開閉制御システムを停止されてリセットできるようになっているので、制御システムの不具合発生をより確実に防止することができる。
【0055】
また、上述したように、列車ドア開閉制御システムの起動後、検知器による最初の情報検知まで、ワンマン設置スイッチ10がオンであれば、ドア開閉スイッチ12R,Lによって全ドアの開閉が可能なフリー状態になっており、その間、列車の全ドアを自由に開閉できるようになっている(ステップ1参照)。列車ドア開閉制御システムが起動される状況とは、例えば、始発駅に入線する前の駐車場所に停車している状態や折返し駅のプラットホームに停車している状態などである。このような状態の列車Tを実際の運行に用いる場合は、その事前作業として、ドア開閉スイッチ12R,Lによるドア開閉の動作確認などの点検作業を行う必要がある場合があるところ、列車ドア開閉制御システム起動時に自動的に全ドアの開閉が可能なフリー状態が確保されれば、上記ドア開閉動作確認を、迅速、容易かつ確実に行うことができる。
【0056】
次に、線路Rに対するプラットホームF2の配置が異なっており、プラットホームF2に対するタグ40,50の配置が異なっている駅に列車Tが停車する場合について、図4(b)及び図5を参照しつつ説明する。
【0057】
つまり、上り列車及び下り列車の両方が走行する単線路線の線路(双方向軌道)Rmに沿って設置されたプラットホームF2からなる駅に、1両編成の下り列車Tが到着する場合について説明する。なお、上記の実施例と同様のことについては、その説明を省略する。
【0058】
この駅では、ホーム位置情報タグ40は、次のような位置に設置されている。
例えば、下り列車用ホーム位置情報タグ(右側用タグ)40cは、図4(b)に示されるように、線路Rm沿いであって、プラットホームF2に隣接しており、しかも当該プラットホームF2の上り列車停止位置Sbに停止した上り列車Tに搭載された検知動作中の検知器20の検知器搭載位置20bより下り列車進入方向側の位置に設置されている。そして、上り列車用ホーム位置情報タグ(左側用タグ)40dは、図4(b)に示されるように、線路Rm沿いであって、プラットホームF2に隣接しており、しかも当該プラットホームF2の下り列車停止位置Saに停止した下り列車T(図4(b)のP6参照)に搭載された検知動作中の検知器20の検知器搭載位置20aより上り列車進入方向側の位置に設置されている。
なお、さらに言えば、本実施形態では、下り列車用ホーム位置情報タグ40cは、プラットホームF2の上り列車停止位置Sbよりも下り列車進入方向側の位置に設置されており、上り列車用ホーム位置情報タグ40dは、プラットホームF2の下り列車停止位置Saより上り列車進入方向側の位置に設置されている。
【0059】
また、リセットタグ50は、次のような位置に設置されている。
例えば、下り列車用リセットタグ50aは、線路Rm沿いであって、プラットホームF2に隣接しており、しかも当該プラットホームF2の上り列車用ホーム位置情報タグ40dよりも下り列車進出方向側の位置に設置されている。そして、上り列車用リセットタグ50bは、線路Rm沿いであって、プラットホームF2に隣接しており、しかも当該プラットホームF2の下り列車用ホーム位置情報タグ40cよりも下り列車進出方向側の位置に設置されている。
【0060】
なお、図4(c)に示されるように、ホーム位置情報タグ40c,40d及びリセットタグ50a,50bは、いずれも、停車対象のプラットホームF2がある駅の駅構内Eに設置されている。
また、先に説明した通り、下り列車停止位置Saに停車中の列車Tに搭載された検知作動中の検知器20の位置は、下り列車停止位置Sa(すなわち停車中の列車Tの先頭位置)から下り列車進入方向に距離Lだけ移動した検知器搭載位置であり、上り列車停止位置Sbに停車中の列車Tに搭載された検知作動中の検知器20の位置は、上り列車停止位置Sb(すなわち停車中の列車Tの先頭位置)から上り列車進入方向に距離Lだけ移動した検知器搭載位置である。
【0061】
このようなプラットホームF2に列車Tが停車する場合の列車ドア開閉制御システムの動作を、図4(b)に示される配置図や図5に示されるフローチャートを参照しつつ説明する。なお、先に説明した島式ホームF1に進入、停車し、その後進出する際の動作と同様のものについては、その詳細な説明を省略する。
【0062】
ここでは、一両編成の下り列車Tが単線路線の線路Rmに沿って設置されたプラットホームF2(図4(b)参照)に向かって走行する状態を基点として動作を説明する。
【0063】
プラットホームF2に向かって線路Rm上を走行する列車Tの検知器20は、上述した島式ホームF1に向かって走行する列車Tと同様、信号入力待ちの状態である(ステップ3)。
そして、当該検知器20が最後に検知した情報は、通常、前の駅の下り列車用リセットタグからの情報である。従って、この場合、下り列車はドアDの開閉が不可の状態であり、列車両側のドアDのドア開閉スイッチ12R,Lの回路スイッチ12sR,12sLがオフの状態である。
【0064】
下り列車Tは、その後、プラットホームF2に進入して位置P4(図4(b)参照)に達する。ここで、下り列車Tの検知器20は、タグ50bからのドア開閉不可信号Sngを検知する。そして、検知されたドア開閉不可信号Sngが信号入力待ち状態のコントローラ30の信号判断部32に入力される。信号判断部32は、入力された信号が読み取り可能であると判断すると(ステップ4)、ランプ制御ステップ(ステップ5)を経て、信号の内容を読み取る(ステップ7)。入力された信号はドア開閉不可信号Sngであるので、信号内容を読み取ったコントローラ30は、両側のドア開閉スイッチ12R,Lの回路スイッチ12sR,12sLがオフの状態を維持する。これにより、両側のドア開閉スイッチ12R,Lが動作不可の状態が維持され、同時に開閉可ランプ13bの消灯状態が維持され、開閉不可ランプ13cの点灯状態が維持される(ステップ10)。そして、コントローラ30は、切替レバーの位置確認ステップ(ステップ2)を経て、再び信号入力待ちの状態になる(ステップ3)。
【0065】
下り列車Tがさらに進み、位置P4を通過して位置P5に達すると、検知器20は下り列車用ホーム位置情報タグ40cからの信号Sok-1を検知し、この信号が信号入力待ち状態のコントローラ30の信号判断部32へと入力される。信号待ち状態の信号判断部32は、検知器20からの信号の内容を読み取ることができるか否かを判断し(ステップ4)、読み取り可能と判断すると、ランプ制御ステップ(ステップ5)を経て、その信号の内容を読み取る(ステップ7)。入力された信号は、右側ドア開閉可能信号Sok-1であるので、コントローラ30は、一方側(本実施形態では下り列車進行方向右側)のドア開閉スイッチ12Rの回路スイッチ12sRをオンにする。すると、一方側のドア開閉スイッチ12Rによって下り列車進行方向右側のドアDを開閉することができる状態になる(ステップ8)。そして、同時に開閉不可ランプ13cが点灯状態から消灯状態になり、開閉可ランプ13bが消灯状態から点灯状態になる(ステップ8)。そして、コントローラ30は、切替レバーの位置確認ステップ(ステップ2)を経て、再び信号入力待ちの状態になる(ステップ3)。
【0066】
下り列車Tは、その後、下り列車停止位置Saに停止する(位置P6参照)。ここで、運転者は、下り列車進行方向右側に位置する一方側のドア開閉スイッチ12Rを操作して下り列車進行方向右側のドアDを開いて乗降可能な状態にし、その後、ドアDを一方側のドア開閉スイッチ12Rを使って閉じて、下り列車Tの走行を再開する。
【0067】
走行を再開した下り列車Tは、その後、位置P7(図4(b)参照)に達する。ここで、下り列車Tの検知器20は、タグ40dからの左側ドア開閉可信号Sok-2を検知し、検知されたドア開閉可信号Sok-2が信号判断部32に入力され、信号判断部32で読み取り可能か否か判断され、読み取り可能と判断されると(ステップ4)、ランプ制御ステップ(ステップ5)を経て、信号の内容が読み取られる(ステップ7)。入力信号は左側ドア開閉可信号Sok-2であるので、信号内容を読み取ったコントローラ30は、左側ドア開閉可能ステップ(ステップ9)を実行する。そして、コントローラ30は、切替レバーの位置確認ステップ(ステップ2)を経て、再び信号入力待ちの状態になる(ステップ3)。
【0068】
下り列車Tは、その後、位置P7を通過して位置P8に達する。ここで、下り列車Tの検知器20は、リセットタグ50aからのドア開閉不可信号Sngを検知する。そして、検知されたドア開閉不可信号Sngが信号入力待ち状態のコントローラ30の信号判断部32に入力される。信号判断部32は、先に説明したように、入力された信号が読み取り可能であると判断すると(ステップ4)、ランプ制御ステップ(ステップ5)を経て、信号の内容を読み取る(ステップ7)。入力された信号はドア開閉不可信号Sngであるので、信号内容を読み取ったコントローラ30は、両側のドア開閉スイッチ12R,Lの回路スイッチ12sR,12sLをオフ状態にする(ステップ10)。これにより、両側のドア開閉スイッチ12R,Lが動作不可の状態が維持される。また、同時に開閉可ランプ13bが点灯状態から消灯状態になり、開閉不可ランプ13cが消灯状態から点灯状態になる(ステップ10)。そして、コントローラ30は、切替レバーの位置確認ステップ(ステップ2)を経て、再び信号入力待ちの状態になる(ステップ3)。
【0069】
下り列車Tは、その後プラットホームF2から進出する。そして、下り列車Tが次の駅のプラットホームに進入すると、当該次の駅において、上記動作を繰り返す。ここで、例えば下り列車用ホーム位置情報タグが左側用タグであれば、列車進行方向左側のドア開閉を可能にする左側ドア開閉可能信号Sok-2を受信することになるので、図5のステップ9を実行することになる。実行する内容は、開閉可能になるドアが右側ではなく左側であること以外、ステップ8と同様であるので、ここでは、その詳細な説明を省略する。
【0070】
このように、双方向軌道の線路Rmに沿って設置されたプラットホームF2の場合に、上記のような配置でホーム位置情報タグ40やリセットタグ50を設置すれば、上り列車運行時、上り列車が停止位置で停止する前に、上り列車の検知器が誤って下り列車用ホーム位置情報タグの情報を検知することが確実に防止される。同様に、下り列車運行時、下り列車が停止位置で停止する前に、下り列車の検知器が誤って上り列車用ホーム位置情報タグの情報を検知することが確実に防止される。つまり、ドア開閉制御システムの動作がより確実に実現される。また、上り及び下りのいずれの列車がプラットホームから進出する場合であっても、検知器が最後に検知する情報は開閉不可指示情報である。従って、駅のプラットホームから進出して次の駅のプラットホームに進入するまでの間、列車のドアを誤って開放させるようなことが確実に防止され、簡単かつ迅速なドア開閉作業が実現される。
【0071】
なお、本願の発明は、以上の実施例に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲において、種々の変形が可能である。
【0072】
例えば、図6に示されるように、各戸締機構14R,Lを動作させる各回路12pR,Lに設置された各回路スイッチ12sR,Lとしては、各回路12sR,L上に設置された開閉接点12sR1,12sL1と、当該開閉接点の開閉に用いられるコイル(開閉手段)12sR2,12sL2とを構成要素として有する継電器(リレー)12sR,12sLを用いることができる。この場合、スイッチ制御部33は、各継電器12sR,Lのコイル12sR2,L2に動作信号を送信して当該コイル12sR2,L2を作動させる。
具体的に説明すると、スイッチ制御部33は、列車の一方側(例えば右側)のサイドのドアを開閉可能にするために回路スイッチ12sRをオン状態にする場合、コイル12sR2に通電信号を送って当該コイル12sR2を通電状態とし、これにより開閉接点12sR1を閉じて、回路スイッチ12sRをオン状態とする。そして、列車の一方側のサイドのドアのみを開閉可能にする場合、スイッチ制御部33は、コイルsR2に通電信号を送信すると同時にコイル12sL2に停電信号を送信し、これにより開閉接点12sL1を開状態として回路スイッチ12sLを確実にオフ状態とする。他方、列車の他方側(例えば左側)のサイドのドアを開閉可能にするために回路スイッチ12sLをオン状態にする場合、コイル12sL2に通電信号を送って当該コイル12sL2を通電状態とし、これにより開閉接点12sL1を閉じて、回路スイッチ12sLをオン状態とする。そして、列車の他方側のサイドのドアのみを開閉可能にする場合、スイッチ制御部33は、コイルsL2に通電信号を送信すると同時にコイル12sR2に停電信号を送信し、開閉接点12sR1を開状態として回路スイッチ12sRを確実にオフ状態とする。
そして、このような構成において、配線で接続された制御部30のスイッチ制御部33と回路スイッチ12sRのコイル12sR2との間と、スイッチ制御部33と回路スイッチ12sLのコイル12sL2との間に、回路スイッチ12sR,12sL側からスイッチ制御部33側への電流の流入を阻止する整流作用を有するダイオード(整流手段)61a,61bを設置することが考えられる。より具体的に説明すれば、ダイオード61a,61bは、スイッチ制御部33とコイル12sR2,L2との間に配線された2本の信号線を相互に接続するように、コイル12sR2,L2に対して並列の状態で設置される。なお、この信号線は、上記通電信号や停電信号を送信するためのものである。
【0073】
ところで、上記各回路スイッチ12sR,Lは、戸締機構14R,Lに動作用の電力を供給する回路を構成する配線12pR,L上に設置されたものであるということが可能である。さらに、各回路スイッチ12sR,Lは、戸締機構14R,Lの開閉動作に用いられるドア開閉スイッチ12R,Lが設置された配線上に設置されたものであるということができる。
また、ドア開閉スイッチ12R,Lは、上述したように、開接点12Ra,Laに接続された状態、閉接点12Rb,Lbに接続された状態、いずれの接点にも接続されていないニュートラル状態(図6参照)にすることができるようになっている。つまり、回路スイッチ12sR,Lは、当該スイッチのオンオフさせることで、ドア開閉スイッチ12R,Lを使用可能状態にしたり、使用不可状態にしたりすることができるようにするために設置されたものである。回路スイッチ12sR,Lは、ドア開閉スイッチ12R,Lがいずれの状態にある場合でもオンオフ動作される可能性があるが、ドア開閉スイッチ12R,Lがニュートラル状態のときにオンオフ動作される場合が最も多い。
そして、例えば、ドア開閉スイッチ12R,Lがニュートラル状態であるときに回路スイッチ12sR,Lのオフ動作が実行される場合に着目すると、各スイッチ12SR,Lのオフ動作は、ニュートラル状態になる直前のドア開閉スイッチ12R,Lの操作(以下、直前操作)の違いによって大別することができるものである。つまり、当該オフ動作は、ドア開閉スイッチ12R,Lが開接点12Ra,La(図6参照)に接続された状態からニュートラル状態にされた後に実行される場合と、閉接点12Rb,Lbに接続された状態からニュートラル状態にされた後に実行される場合と、回路スイッチ12sR,Lがオンされた後、当該オフ動作がなされるまで一度もドア開閉スイッチ12R,Lが開接点12Ra,Laや閉接点12Rb,Lbに接続されずニュートラル状態が維持された後に実行される場合の3つの場合に大別できる。
このように、回路スイッチ12sR,12sLのオフ動作は、一定の条件の下になされる動作ではなく、様々な環境の下で実行される動作であるので、当該オフ動作の際に切り離される回路スイッチ12sR,Lの接点においてノイズが発生することがある。ノイズが発生すると、コイルと信号線である配線とを介して回路スイッチ12sR,Lにつながっているスイッチ制御部33に悪影響が及んで誤動作や制御停止などの不具合が発生する可能性がある。ドア開閉スイッチを常時操作可能なこれまでの装置では、このような不具合が生じることはないが、当該オフ動作が可能な構成においては、このような不具合が生じる。この点、上述したような位置に配置させたダイオード(整流手段)61a,61bを設ければ、スイッチ制御部33の誤動作がより確実に防止され、列車ドア開閉制御システムの運用状態をより安定させることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道上を走行し、当該軌道に沿って設置された駅のプラットホームに停止する列車のドア開閉制御を行う列車ドア開閉制御システムであって、
前記列車が停車する所定駅のプラットホームが前記軌道のどちら側に設置されているかに関するホーム位置情報を保持するホーム位置情報タグと、前記列車の全ドアの開閉を不可にする開閉不可指示情報を保持するリセットタグと、前記タグに保持された前記情報を検知する検知器と、前記列車のドア開閉制御に用いられる制御部と、を備えており、
前記ホーム位置情報タグは、前記軌道沿いであると共に前記所定駅のプラットホームに隣接する位置であり、しかも当該所定駅のプラットホームの列車停止位置に停止状態の列車の前記検知器の位置よりも列車進入方向側の位置に設置されており、
前記リセットタグは、前記軌道沿いであると共に前記所定駅のプラットホームに隣接する位置であり、しかも当該所定駅のプラットホームの列車停止位置に停止状態の列車の前記検知器の位置よりも列車進出方向側の位置に設置されており、
前記検知器及び前記制御部は、前記列車に設置されており、且つ当該制御部は、前記検知器が前記ホーム位置情報を検知すると、当該ホーム位置情報を基に認識されたプラットホーム設置サイドと同じサイドのドアのみを開閉可能な状態とし、前記検知器が前記開閉不可指示情報を検知すると、前記列車の全ドアを開閉不可状態とするものであることを特徴とする列車ドア開閉制御システム。
【請求項2】
前記列車は、その両端に運転台を備えており、
各運転台には、その運転台を列車の先頭にする場合にこれに対応して切替位置が前位置に切替えられる運転台切替器と、列車運転方法をワンマン運転方法にする場合にこれに対応して切替ポジションがワンマンポジションに切替えられる運転方法切替器とが設置されており、
前記運転方法切替器の切替ポジションがワンマンポジションである状態で、列車の先頭になる先頭運転台に設置された運転台切替器の切替位置が前位置に切替えられると、前記列車ドア開閉制御システムが起動するようになっており、前記先頭運転台の運転台切替器の切替位置が前位置からそれ以外の切替位置に切替えられると、前記列車ドア開閉制御システムが停止するようになっている請求項1に記載の列車ドア開閉制御システム。
【請求項3】
前記検知器は、前記軌道の敷設面に面した列車下部に設置されており、
前記ホーム位置情報タグ及び前記リセットタグは、前記軌道を支持する枕木の上に設置されている請求項1又は請求項2に記載の列車ドア開閉制御システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記列車ドア開閉制御システムの起動後、前記検知器による最初の情報検知までの間、全ドアの開閉が可能な状態にするものである請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の列車ドア開閉制御システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記検知器が検知した前記ホーム位置情報タグ又は前記リセットタグからの情報が読取不可である場合、全ドアを開閉できない状態にするものである請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の列車ドア開閉制御システム。
【請求項6】
前記所定駅のプラットホームは、上り及び下りの両方向の列車が走行する双方向軌道に沿って設置されており、当該双方向軌道に隣接して、下り列車用ホーム位置情報タグと、上り列車用ホーム位置情報タグと、下り列車用リセットタグと、上り列車用リセットタグとが設置されており、
前記下り列車用ホーム位置情報タグは、上り列車停止位置に停止した上り列車の前記検知器の位置よりも下り列車進入方向側の位置に設置されており、
前記上り列車用ホーム位置情報タグは、下り列車停止位置に停止した下り列車の前記検知器の位置よりも上り列車進出方向側の位置に設置されており、
前記下り列車用リセットタグは、前記上り列車用ホーム位置情報タグよりも下り列車進出方向側の位置に設置されており、
前記上り列車用リセットタグは、前記下り列車用ホーム位置情報タグよりも上り列車進出方向側の位置に設置されている請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の列車ドア開閉制御システム。
【請求項7】
前記列車は、当該列車の一方側のサイドのドアの開閉を行う一方側の戸締機構と、他方側のサイドのドアの開閉を行う他方側の戸締機構と、一方側の戸締機構を開閉動作させるための一方側ドア開閉スイッチと、他方側の戸締機構を開閉動作させるための他方側ドア開閉スイッチと、前記一方側ドア開閉スイッチが設置された回路上に設置された一方側回路スイッチと、前記他方側ドア開閉スイッチが設置された回路上に設置された他方側回路スイッチとを備えるものであり、
前記制御部は、前記一方側回路スイッチおよび他方側回路スイッチのオンオフ制御を行うスイッチ制御部を有するものであり、
配線で結ばれた前記制御部と前記一方側回路スイッチとの間と、前記制御部と前記他方側回路スイッチとの間に、それぞれ、前記一方側回路スイッチ及び前記他方側回路スイッチ側から前記制御部側への電流の流れを阻止する整流作用を有する整流手段が設置されている、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の列車ドア開閉制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−254294(P2010−254294A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−84426(P2010−84426)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(591146893)九州旅客鉄道株式会社 (18)
【出願人】(509091941)富士興株式会社 (1)
【Fターム(参考)】