説明

列車無線システム

【課題】地上指令員の操作のみで乗務員が操作することなく、列車の状況を音声または画像で把握することができる列車無線システムを得る。
【解決手段】従来の列車無線システムの機能に加え、列車内の音声状況をモニタするマイクを備え、指令員の操作により指令卓で送出する音声取得指示を地上局を介して移動局に送信し、受信した音声取得指示に基づいて移動局がマイクによりモニタした音声情報を地上局に送信し、マイクからの音声情報を受信した地上局は、当該音声情報を指令卓に与えて再生させるようにしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、列車内における音声や可視状況を指令センタ側でモニタできるようにした列車無線システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
列車と指令センタ間で運行に関する連絡を無線で行う列車無線システムがあるが、従来の列車無線システムについて、この発明の実施の形態1の構成を示す図1を引用して説明する。従来の列車無線システムは図1において列車20内のマイク23を除いた構成で表される。指令センタ10には、通信機である地上局11、指令員が操作することにより地上局11を介して各列車20と情報のやりとりを行う指令卓12がある。一方、列車20には、地上局11と無線により通信を行う移動局21、移動局21に接続され乗務員が操作するハンドセット22が搭載されている。指令卓12とハンドセット22は、それぞれ入力された音声を電気信号である音声信号に変換する手段である。地上局11は、指令卓12からの音声信号を無線信号に変換して移動局21に送信し、また、受信した移動局21からの無線信号を音声信号に変換して指令卓12に与えてスピーカにより音声にさせる手段である。移動局21は、ハンドセット22からの音声信号を無線信号に変換して地上局11に送信し、また、受信した地上局11から無線信号を音声信号に変換してハンドセット22のスピーカに与えて音声に変換させる手段である。
【0003】
上記構成において、例えば、指令センタ10において、指令員が指令卓12を操作して列車20の乗務員を呼び出すとすると、それが個別呼び出しの場合、移動局21は着信音を鳴動させて乗務員に知らせる。列車20の乗務員は、着信音または指令員からの音声によって、当該列車が呼び出されたことを認識すると、ハンドセット22をオフフックし、ハンドセット22のマイクを通して指令センタ10の指令員と通話を行うことになる。一方、一斉呼び出しの場合、指令員からの音声を流して乗務員に知らせる。列車20の乗務員は、これに応じてハンドセット22をオフフックすると共に、ハンドセット22のプレススイッチを押下した時だけ、乗務員の音声を指令卓12に送信することになる。
【0004】
なお、列車の通信システムに関する従来技術として、音声とデータを同一無線チャネルにて伝送可能とするとともに、地域ごとに異なるデータを伝送可能にするようにした技術(例えば、特許文献1参照)、および列車内の非常事態発生を乗務員に知らせ、発生車両のカメラ映像を乗務員室のモニタ画面で表示するようにした技術(例えば、特許文献2参照)が開示されているが、この発明が解決対象としているものではない。
【0005】
【特許文献1】特開2004−222061号公報
【特許文献2】特開2003−346261号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
冒頭に説明した従来の列車無線システムでは、列車の乗務員がハンドセットをオフフックまたはハンドセットのプレススイッチを押下しないと、指令センタの指令員が列車側の音声状況や可視状況を確認することができない構成となっている。したがって、例えば乗務員室に不正な第三者が侵入してきた場合等、乗務員が指令センタからの呼び出しに応答できない状態にある場合、指令員は列車側の状況を把握することができないなどの問題があった。
【0007】
この発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、地上の指令センタの指令員の操作のみで列車内の音声や可視状況を把握できるようにする列車無線システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る列車無線システムは、指令センタに設置され、指令員の操作により指定した列車と音声情報のやりとりを行う指令卓と、この指令卓で入力した音声情報を指定した列車に送信し、また、列車から受信した音声情報を指令卓に与えて再生させる地上局と、列車に設置され、乗務員のオフフック操作により指令センタと音声情報のやりとりを行うハンドセットと、このハンドセットからの音声情報を指令センタに送信し、また、指令センタから受信した音声情報をオフフックされたハンドセットに与えて再生する移動局を備えた列車無線システムにおいて、列車内の音声状況をモニタするマイクを備え、指令員の操作により指令卓で送出する音声取得指示を地上局を介して移動局に送信し、受信した音声取得指示に基づいて移動局がマイクによりモニタした音声情報を地上局に送信し、マイクからの音声情報を受信した地上局は、当該音声情報を指令卓に与えて再生させるようにしたものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、従来の列車無線システムを充実化することにより、乗務員が操作することなく、地上の指令センタの指令員の操作のみにより、列車内の音声状況を把握できる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1による列車無線システムの構成を示すブロック図である。図において、この実施の形態1では、上記従来技術で説明した構成に加えて、移動局21に接続されたマイク23を備えている。この列車無線システムの一般的な動作は上記従来技術で説明したものと同じであるので、ここでの説明は省略する(以下の他の実施の形態でも同様とする)。
【0011】
次に、マイク23を使用する動作について説明する。
指令センタ10において、指令員は地上局11の指令卓12により、必要に応じて列車20の移動局21で音声状況を取得するための操作を行う。操作された指令卓12は音声取得指示を地上局11に与え、地上局11はこの音声取得指示を無線信号に変換して移動局21に伝送する。移動局21は、音声取得指示を受信すると、マイク23が動作するように切り替える。これにより、マイク23は入力された音声を電気的な音声信号に変換し移動局21に与える。移動局21はマイク23からの音声信号を無線信号に変換して音声取得指示を送信した地上局11に送信する。地上局11では、受信した無線信号を音声信号に変換し、指令卓12のスピーカで音声に再生して指令員に伝達する。指令員はその音声で列車内の状況を把握することができる。そして、列車20側からの音声に異常が無かった場合には、指令員は指令卓12を操作して音声監視の終了操作を行い、その終了指示を音声取得指示と同様な手順で対応する列車20の移動局21に送信し、マイク23からの音声取得動作を終了する。
【0012】
以上のように、この実施の形態1によれば、移動局21側に列車内の音声状況をモニタするマイク23を設け、指令員の操作により指令卓12で送出する音声取得指示を地上局11を介して移動局21に送信し、受信した音声取得指示に基づいて移動局21がマイク23によりモニタした音声情報を地上局11に送信し、マイク23からの音声情報を受信した地上局11は、当該音声情報を指令卓12に与えて再生させるように構成している。したがって、列車無線システムが従来から行っている通常の音声通信に加え、乗務員がハンドセット22をオフフックまたはプレススイッチを押下することなく、列車20内の音声状況を指令センタ10側の操作のみにて取得して把握できる。なお、ここで使用されるマイク23としては、ハンドセット22に元々内蔵されたマイクで、機械的な操作をせず電気的に音声取得動作に切り替えるようにしたものを使用してもよい。
【0013】
実施の形態2.
図2はこの発明の実施の形態2による列車無線システムの構成を示すブロック図である。この実施の形態2では、上記実施の形態1と異なる点は、図において移動局21に複数のマイク231,232が接続されていることである。
次に、複数のマイク231,232を使用する動作について説明する。
指令センタ10において、指令員は地上局11の指令卓12により、必要に応じて列車20の移動局21で音声状況を取得するための操作を行う。その際、移動局21のマイク231,232のうちのどの音声を取得するかを指定する。ここでは、マイク232を指定したとする。操作された指令卓12はマイクを指定した音声取得指示を地上局11に与え、地上局11はこの音声取得指示を無線信号に変換して移動局21に伝送する。移動局21は、音声取得指示を受信すると、指示されたマイク232が動作するように切り替える。これにより、マイク232は入力された音声を電気的な音声信号に変換し移動局21に与える。移動局21はマイク232からの音声信号を無線信号に変換して音声取得指示を送信した地上局11に送信する。地上局11は、受信した無線信号を音声信号に変換して指令卓12のスピーカで音声に再生して指令員に伝達する。そして、列車20側からの音声に異常が無かった場合には、指令員は指令卓12を操作して音声監視の終了操作を行いマイク232の動作を遮断するか、あるいは別のマイク231による音声取得の操作を行うことになる。
【0014】
以上のように、この実施の形態2によれば、移動局21に接続する複数のマイク231,232を設け、指令卓12からの音声取得指示を送出する際に複数のマイク231,232の中から任意のマイクを指定し、移動局21が指定されたマイクからの音声情報を地上局に送信するように構成している。したがって、指定されたマイクに入力された音声を指令卓12でモニタできるため、上記実施の形態1の効果に加え、列車20内のマイク231,232が設置された異なる場所の音声状況を選択して把握できる。なお、マイクの設置数は2個以上でもよい。
【0015】
実施の形態3.
図3はこの発明の実施の形態3による列車無線システムの構成を示すブロック図である。この実施の形態2では、上記実施の形態1と異なる点は、図において地上局11にモニタ装置(画像表示手段)13が接続されており、移動局21に、マイク23の代わりに監視カメラ24が接続されていることである。
次に、監視カメラ24を使用する動作について説明する。
指令センタ10において、指令員は地上局11の指令卓12により、必要に応じて列車20の移動局21の画像監視を実施するための画像取得の操作を行う。操作された指令卓12は画像取得指示を地上局11に与え、地上局11はこの画像取得指示を無線信号に変換して移動局21に伝送する。移動局21は、画像取得指示を受信すると、監視カメラ24が動作するように切り替える。これにより、監視カメラ24から得られる画像情報を、無線回線を介して地上局11に送信する。地上局11では、受信した画像情報をモニタ装置13のモニタ画面に表示し指令員に提示する。
【0016】
以上のように、この実施の形態3によれば、移動局21に接続した監視カメラ24と、地上局11に接続したモニタ装置13を設け、指令員の操作により指令卓12で発生する画像取得指示を地上局11を介して移動局21に送信し、受信した画像取得指示に基づいて移動局21が監視カメラ24によりモニタした画像情報を地上局11に送信し、監視カメラ24からの画像情報を受信した地上局11は、当該画像情報をモニタ装置13に与えて再生させるように構成している。したがって、列車無線システムが従来から行っている通常の音声通信に加え、乗務員の操作を必要とすることなく、指令センタ10側での操作だけで、列車20内の監視カメラ24が設置された場所の可視状況を監視することができる。なお、上記例では画像取得指示を指令卓12で行っているが、代わりにモニタ装置13により行うようにしてもよい。また、この実施の形態3を上記実施の形態1のマイクによる音声モニタ機能と組み合わせ、画像取得指示に基づいて画像と音声の状況を同時に把握できるようにしてもよい。
【0017】
実施の形態4.
図4はこの発明の実施の形態4による列車無線システムの構成を示すブロック図である。この実施の形態4では、上記実施の形態3と異なる点は、図において移動局21に複数の監視カメラ241,242が接続されていることである。
次に、複数の監視カメラ241,242を使用する動作について説明する。
指令センタ10において、指令員は地上局11の指令卓12により、必要に応じて列車20の移動局21の画像監視を実施するよう画像取得の操作を行う。その際、移動局21の監視カメラ241,242のうちのどの画像を監視するかを指定する。ここでは、監視カメラ242を指定したとする。操作された指令卓12は画像取得指示を地上局11に与え、地上局11はこの画像取得指示を無線信号に変換して移動局21に伝送する。移動局21は、画像取得指示を受信すると、指示された監視カメラ242が動作するように切り替える。これにより、監視カメラ242から得られる監視画像データを、無線回線を介して地上局11に送信する。地上局11では、受信した監視画像データをモニタ装置13のモニタ画面に表示し指令員に提示する。
【0018】
以上のように、この実施の形態4によれば、移動局21に複数の監視カメラ241,242を設け、指令卓12で画像取得指示を送出する際に前記複数の監視カメラ241,242の中から任意の監視カメラを指定し、移動局は指定された監視カメラからの画像情報を地上局11に送信するように構成している。したがって、実施の形態3の効果に加え、複数の監視カメラ241,242の監視画像を指令センタ10のモニタ装置13で選択して表示できる。なお、監視カメラ241,242の設置数は2個以上でもよい。なお、上記例では画像取得指示を指令卓で行っているが、代わりにモニタ装置により指示操作で行うようにしてもよい。また、この実施の形態4を、上記実施の形態2のマイクによる音声モニタ機能と組み合わせ、画像取得指示に基づいて指定した監視カメラの画像とそれに付随するマイクの音声の状況を同時に把握できるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明の実施の形態1による列車無線システムの構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態2による列車無線システムの構成を示すブロック図である。
【図3】この発明の実施の形態3による列車無線システムの構成を示すブロック図である。
【図4】この発明の実施の形態4による列車無線システムの構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0020】
11 地上局、12 指令卓、13 モニタ装置、20 列車、21 移動局、22 ハンドセット、23,231,232 マイク、24,241,242 監視カメラ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
指令センタに設置され、指令員の操作により指定した列車と音声情報のやりとりを行う指令卓と、この指令卓で入力した音声情報を前記指定した列車に送信し、また、列車から受信した音声情報を前記指令卓に与えて再生させる地上局と、列車に設置され、乗務員のオフフック操作により前記指令センタと音声情報のやりとりを行うハンドセットと、このハンドセットからの音声情報を前記指令センタに送信し、また、前記指令センタから受信した音声情報をオフフックされた前記ハンドセットに与えて再生する移動局とを備えた列車無線システムにおいて、
列車内の音声状況をモニタするマイクを備え、
指令員の操作により前記指令卓で送出する音声取得指示を前記地上局を介して前記移動局に送信し、
受信した音声取得指示に基づいて前記移動局が前記マイクによりモニタした音声情報を前記地上局に送信し、
前記マイクからの音声情報を受信した前記地上局は、当該音声情報を前記指令卓に与えて再生させることを特徴とする列車無線システム。
【請求項2】
列車内の音声をモニタするマイクを複数備え、
指令卓は、音声取得指示を送出する際に前記複数のマイクの中から任意のマイクを指定し、
移動局は、指定されたマイクからの音声情報を地上局に送信することを特徴とする請求項1記載の列車無線システム。
【請求項3】
列車内の音声をモニタするマイクの1つをハンドセットのマイクとしたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の列車無線システム。
【請求項4】
指令センタに設置され、指令員の操作により指定した列車と音声情報のやりとりを行う指令卓と、この指令卓で入力した音声情報を前記指定した列車に送信し、また、列車から受信した音声情報を前記指令卓に与えて再生させる地上局と、列車に設置され、乗務員のオフフック操作により前記指令センタと音声情報のやりとりを行うハンドセットと、このハンドセットからの音声情報を前記指令センタに送信し、また、前記指令センタから受信した音声情報をオフフックされた前記ハンドセットに与えて再生する移動局とを備えた列車無線システムにおいて、
列車内の可視状況をモニタする監視カメラと、指令センタに設置される画像表示手段とを備え、
指令員の操作により前記指令卓で発生する画像取得指示を前記地上局を介して前記移動局に送信し、
受信した画像取得指示に基づいて前記移動局が前記監視カメラによりモニタした画像情報を前記地上局に送信し、
前記監視カメラからの画像情報を受信した前記地上局は、当該画像情報を前記画像表示手段に与えて再生させることを特徴とする列車無線システム。
【請求項5】
列車内の可視状況をモニタする監視カメラを複数備え、
指令卓は、画像取得指示を送出する際に前記複数の監視カメラの中から任意の監視カメラを指定し、
移動局は、指定された監視カメラからの画像情報を地上局に送信することを特徴とすることを特徴とする請求項4記載の列車無線システム。
【請求項6】
画像取得指示の送出操作を、指令卓に代えて、画像表示手段で行うようにしたことを特徴とする請求項4または請求項5記載の列車無線システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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