説明

判定装置、判定方法、およびコンピュータープログラム

【課題】検査対象物を透過した光を受光して欠陥部分を判定する場合に、エッジ部分を誤って欠陥部分として判定してしまうことを抑止すること。
【解決手段】欠陥部分を判定するために設定された第一閾値と、検査対象物がない部分を判定するために設定された第二閾値とを予め記憶し、検査対象物を撮像して得られる輝度情報から、第一閾値に基づいて検査対象物の欠陥部分又はエッジ部分の候補となる第一閾値部分を判定し、第二閾値に基づいて検査対象物が存在しない第二閾値部分を判定し、第一閾値部分のうち、第二閾値部分との距離が所定の閾値よりも短いものをエッジ部分と判定し、第二閾値部分との距離が所定の閾値よりも長いものを欠陥部分と判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査対象物を撮像して得られる輝度情報に基づいて欠陥部分を検出するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、シートや板金等の検査対象物を搬送路上に流し、定点に設置されたカメラで検査対象物を撮像することによって欠陥部分を検出する技術が提案されている。例えば、走行するシート状物をライン状照明装置で照明しその正反射光をラインセンサで受光することで、シート状物に生じた欠陥部分を検出する技術が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
ただし、特許文献1のように検査対象物(シート状物)で反射した光を受光して欠陥部分を検出する場合、検査対象物の厚さの制限があった。このような制限を回避するために、検査対象物を一方から照らし、その透過光を他方に設置されたカメラで受光することによって欠陥部分を検出する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3210846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のように透過光を受光して欠陥部分を検出する場合、検査対象物のエッジ部分(端部)と欠陥部分とが同じような輝度値で撮像されてしまうため、エッジ部分を誤って欠陥部分として判定してしまうという問題があった。
【0006】
上記事情に鑑み、本発明は、検査対象物を透過した光を受光して欠陥部分を判定する場合に、エッジ部分を誤って欠陥部分として判定してしまうことを抑止できる判定装置、判定方法、コンピュータープログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、判定装置であって、欠陥部分を判定するために設定された第一閾値と、検査対象物がない部分を判定するために設定された第二閾値とを記憶する閾値記憶部と、前記検査対象物を撮像して得られる輝度情報から、前記第一閾値に基づいて検査対象物の欠陥部分又はエッジ部分の候補となる第一閾値部分を判定し、前記第二閾値に基づいて検査対象物が存在しない第二閾値部分を判定する閾値判定部と、前記第一閾値部分のうち、前記第二閾値部分との距離が所定の閾値よりも短いものをエッジ部分と判定し、前記第二閾値部分との距離が所定の閾値よりも長いものを欠陥部分と判定するエッジ判定部と、を備える。
【0008】
本発明の一態様は、判定方法であって、欠陥部分を判定するために設定された第一閾値と、検査対象物がない部分を判定するために設定された第二閾値とを記憶する閾値記憶部を備える判定装置が、前記検査対象物を撮像して得られる輝度情報から、前記第一閾値に基づいて検査対象物の欠陥部分又はエッジ部分の候補となる第一閾値部分を判定し、前記第二閾値に基づいて検査対象物が存在しない第二閾値部分を判定する閾値判定ステップと、前記判定装置が、前記第一閾値部分のうち、前記第二閾値部分との距離が所定の閾値よりも短いものをエッジ部分と判定し、前記第二閾値部分との距離が所定の閾値よりも長いものを欠陥部分と判定するエッジ判定ステップと、を備える。
【0009】
本発明の一態様は、コンピュータープログラムであって、欠陥部分を判定するために設定された第一閾値と、検査対象物がない部分を判定するために設定された第二閾値とを記憶する閾値記憶部を備えるコンピューターに対し、前記検査対象物を撮像して得られる輝度情報から、前記第一閾値に基づいて検査対象物の欠陥部分又はエッジ部分の候補となる第一閾値部分を判定し、前記第二閾値に基づいて検査対象物が存在しない第二閾値部分を判定する閾値判定ステップと、前記第一閾値部分のうち、前記第二閾値部分との距離が所定の閾値よりも短いものをエッジ部分と判定し、前記第二閾値部分との距離が所定の閾値よりも長いものを欠陥部分と判定するエッジ判定ステップと、を実行させるためのものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、検査対象物を透過した光を受光して欠陥部分を判定する場合に、エッジ部分を誤って欠陥部分として判定してしまうことを抑止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】欠陥検査システムのシステム構成の一部を表すシステム構成図である。
【図2】第一実施形態の欠陥判定装置の機能構成を表す概略ブロック図である。
【図3】検査対象物のエッジ周辺の概略を表す図である。
【図4】エッジ部分の輝度値の変化を表すグラフである。
【図5】第一実施形態の欠陥判定装置の動作例を表すフローチャートである。
【図6】第二実施形態の欠陥判定装置の機能構成を表す概略ブロック図である。
【図7】横方向エッジ部分周辺の概略を表す図である。
【図8】第二実施形態の欠陥判定装置の動作例を表すフローチャートである。
【図9】欠陥判定装置の検出結果を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、欠陥検査システムのシステム構成の一部を表すシステム構成図である。図1Aは、欠陥検査システムを図1Bの矢印X2の方向へ水平に見た態様を表す図であり、図1Bにおける断面線Aにおける断面を表す図である。図1Bは、欠陥検査システムを上方から図1Aの矢印X1の方向へ見下ろした態様を表す図である。欠陥検査システムは、ローラー搬送装置10、投光器20、撮像装置40、欠陥判定装置100を備える。
【0013】
検査を行う場合には、ローラー搬送装置10の上に検査対象物30が載せられ、図1Bの矢印X3の方向へローラー搬送装置10の各ローラーが回転することによって検査対象物30も同方向へ移動する。ローラー搬送装置10による検査対象物30の移動速度は、例えば20メートル毎分であり、その他どのような速度であっても良い。また、ローラー搬送装置10の搬送路の幅は、例えば2500ミリメートルであり、その他どのような幅をもって設計されても良い。また、ローラー搬送装置10の各ローラー同士の間隔は、例えば100ミリメートルであり、この間隔から投光器20からの光が検査対象物30及び撮像装置40側へ通るように構成されればその他どのような幅をもって設計されても良い。
【0014】
投光器20は、ローラー搬送装置10のローラーの間の隙間及び検査対象物30を透過して撮像装置40へ到達するような光を投光する。例えば投光器20は、蛍光灯照明やロッド照明を用いて構成され、検査対象物30を幅方向(ローラー搬送装置10の進行方向と垂直な水平方向)に均一に照明するためのライン状の照明装置として構成される。また、投光器20の上面と検査対象物30の下面との間の距離は例えば300ミリメートルであり、その他どのような幅をもって設計されても良い。
【0015】
撮像装置40は、例えばラインCCD(Charge Coupled Device)センサなどの撮像装置を用いて構成され、所定の撮像ラインについて所定の周期で繰り返し撮像を行い、輝度情報を出力する。なお、撮像装置40が撮像する撮像ラインの位置自体は移動しないが、検査対象物30が所定の速度で移動するため、繰り返し撮像が行われる度に撮像される検査対象物30の位置は変化し、撮像によって得られる輝度情報はその都度変化する。なお、輝度情報とは、複数の輝度値を含む情報であり、ラインCCDセンサの画素毎に受光した光の強度を表す輝度値が順に並んだ情報である。また、撮像装置40の撮像面と検査対象物30の下面との間の距離は例えば789ミリメートルであり、その他どのような距離をもって設計されても良い。また、撮像装置40の幅方向分解能は例えば0.06ミリメートル/画素であり、流れ方向分解能は例えば0.1ミリメートル/スキャンであり、これらの値は検査対象物30やローラー搬送装置10との距離や搬送速度などに応じて適宜設定される。また、撮像装置40は、幅方向に複数台(例えば3台)並べて設置されても良く(例えば図1(A)参照)、検査対象となる幅は1110ミリメートルなど適宜設定される。
【0016】
検査対象物30は、光を透過させる素材でできたものであり、欠陥部分の有無に関する検査の対象となる。欠陥部分とは、表面や内部への異物混入や打痕などのように光を遮光する欠陥が生じた部分である。例えば、検査対象物30は、マスキングフィルム付き透明樹脂板である。
【0017】
欠陥判定装置100は、撮像装置40によって繰り返し出力される輝度情報を受け付け、各輝度情報に基づいて検査対象物30の欠陥の有無を判定する。以下、欠陥判定装置の第一実施形態及び第二実施形態のそれぞれについて説明する。
【0018】
[第一実施形態]
図2は、第一実施形態の欠陥判定装置100の機能構成を表す概略ブロック図である。欠陥判定装置100は、閾値記憶部101、閾値判定部102、エッジ判定部103を備える。閾値記憶部101は、磁気ハードディスクや半導体メモリなどの記憶装置を用いて構成され、欠陥部分を判定するために設定された第一閾値(Th1)及び検査対象物がない部分を判定するために設定された第二閾値(Th2)を記憶する。閾値判定部102は、撮像装置40によって得られた輝度情報を受け付け、輝度値が第一閾値を下回った部分(第一閾値部分)及び輝度値が第二閾値を上回った部分(第二閾値部分)を検出する。第一閾値部分は、欠陥部分又はエッジ部分の候補となる。エッジ判定部103は、閾値判定部102の判定結果に基づき、第一閾値部分が欠陥部分であるかエッジ部分であるかを判定する。
【0019】
図3は、検査対象物30のエッジ周辺の概略を表す図である。図3Aは、エッジ周辺を輝度情報に基づいて平面的な画像として表す図である。図3Bは、エッジ周辺のうち撮像ラインTにおける輝度情報を表すグラフであり、横軸は幅方向の座標を表し、縦軸は輝度値の大きさを表す。欠陥判定装置100は、一本の撮像ラインTに沿って幅方向に並ぶ各画素の輝度値を受け付け、撮像ラインTに重なる部分を検査対象とする。欠陥判定装置100は、撮像ラインTに重なる部分の検査が終了すると、所定の長さ分ずれた撮像ラインTに重なる部分を検査対象とし、この撮像ラインの輝度情報を撮像装置40から受け付けて検査を行う。
【0020】
図3A及び図3Bから明らかなように、欠陥を生じていない本体部分の輝度値は第一閾値と第二閾値との間の値をとり、欠陥部分の輝度値は第一閾値を下回り、検査対象物30が存在しない部分(照明部分)の輝度値は第二閾値を上回る。第一閾値及び第二閾値は、各部分の輝度値と上記のような関係となるように、検査対象物30の材質や厚さ、投光器20及び撮像装置40の性能などに応じて予め設定される。
【0021】
もし、エッジ部分の輝度値が、予め設定された第一閾値を下回らない場合には、そもそもエッジ部分が欠陥部分として誤って判定されることがないため問題は生じない。したがて、以下の説明では、エッジ部分の輝度値が欠陥部分と同様に第一閾値を下回ってしまう場合について説明する。
【0022】
エッジ部分は、必ず照明部分と隣接する。そのため、エッジ部分において輝度値が第一閾値を下回っている部分と、照明部分において輝度値が第二閾値を上回っている部分とが幅方向に離れている距離は非常に短い。一方、欠陥部分は本体部分に生じるため照明部分と隣接することがない。そのため、欠陥部分において輝度値が第一閾値を下回っている部分と、照明部分において輝度値が第二閾値を上回っている部分とが幅方向に離れている距離は、上記のエッジ部分の場合に比べて長くなる。以上に鑑みて、エッジ判定部103は、閾値判定部102において検出された第一閾値部分のうち、幅方向の所定距離(エッジ判定用距離)よりも近い位置に第二閾値部分が存在するものはエッジ部分と判定し、その他の第一閾値部分については欠陥部分と判定する。すなわち、欠陥判定装置100は、第一閾値部分と第二閾値部分とが、予め設定されたエッジ判定用距離(膨張係数)内に入っている場合、第一閾値と第二閾値の性質をもった欠陥(明暗)として処理し、エッジ判定用距離(膨張係数)内に入っていない場合はそれぞれの欠陥とする。そして、欠陥判定装置100は、明暗として処理された欠陥については、エッジ部分であると判定する。
【0023】
図4は、エッジ部分の輝度値の変化を表すグラフであり、図3Bのエッジ部分周辺を拡大して表したものである。図4において、X1とX3との間が、エッジ部分に基づく第一閾値部分である。上記のエッジ判定用距離の始点(エッジ判定用始点)は、本体部分側の第一閾値部分の境界箇所(第一閾値と同じ輝度値となる箇所)X1であっても良いし、第一閾値部分の中のピーク箇所X2(第一閾値部分の中で最も輝度値が低い箇所)であっても良いし、照明部分側の第一閾値部分の境界箇所X3であっても良いし、第一閾値部分の中央箇所であっても良いし、第一閾値部分に基づく他の箇所であっても良い。エッジ判定用始点は、エッジ判定用距離とともに予め設計者や使用者によって設定される。エッジ判定用距離は、例えば膨張係数によって決まる値である。エッジ判定用距離は、例えば0.001ミリメートル〜4ミリメートルの値として設定される。なお、このエッジ判定用距離の値は一例であり、検査対象物30やその他の各装置の性能などに応じて適宜設定される。。
【0024】
図5は、第一実施形態の欠陥判定装置100の動作例を表すフローチャートである。まず、閾値判定部102が、撮像装置40から輝度値情報を受け付け、閾値記憶部101に記憶される第一閾値及び第二閾値に基づいて、第一閾値部分及び第二閾値部分を判定する(ステップS101)。
【0025】
次に、エッジ判定部103が、各第一閾値部分について、第二閾値部分との距離が所定の閾値よりも近いか否か判定する(ステップS102)。具体的には、各第一閾値部分のエッジ判定用始点から第二閾値部分の境界までの距離(以下、「閾値間距離」という。)がエッジ判定用距離よりも短いか否か判定する。閾値間距離がエッジ判定用距離よりも短い場合(ステップS102−YES)、エッジ判定部103はその第一閾値部分をエッジ部分と判定する(ステップS103)。一方、閾値間距離がエッジ判定用距離よりも長い場合(ステップS102−NO)、エッジ判定部103はその第一閾値部分を欠陥部分と判定する(ステップS104)。エッジ判定部103は、ステップS102〜S104の処理を、ステップS101の処理で検出された全ての第一閾値部分について実行する。そして、エッジ判定部103は判定結果を出力する(ステップS105)。
【0026】
このように構成された欠陥判定装置100では、検査対象物30を撮像することによって得られる輝度情報に基づいて欠陥部分を判定する際に、欠陥部分とエッジ部分とを区別して判定することが可能となる。そのため、エッジ部分を欠陥部分として誤って判定することを抑止することが可能となる。
【0027】
また、このように構成された欠陥判定装置100では、例えば検査対象物30が斜めに傾いてローラー搬送装置10に載せられている場合であっても、欠陥部分とエッジ部分とを区別して判定することが可能となる。
【0028】
以下、欠陥判定装置100を欠陥検査システムに適用することによる効果を説明する。例えば、図1に示された欠陥検査システムが不図示の報知部を備え、欠陥判定装置100において欠陥部分が検出された際に報知部がそのことを使用者に対して報知する構成である場合について説明する。この場合、欠陥判定装置100がエッジ部分を欠陥部分として誤って判定すると、使用者はその都度報知に応じた対処を行う必要があり作業効率が低下してしまう。そのため、従来のように欠陥判定装置100の欠陥判定処理の精度が低い場合には、報知部は欠陥部分が検出される都度に報知を行うのではなく、所定の周期毎にまとめて報知を行うことによって作業効率の低下を抑止する方法が採用される場合もあった。しかしながら、欠陥部分が検出される度に欠陥に対する対処を行うことが望ましい場合もある。このような要求に対し、上記の欠陥判定装置100によれば、エッジ部分を欠陥部分として誤って判定することを抑止できるため、欠陥部分が検出される度に報知部が報知を行っても作業効率の低下を招かないという顕著な効果を奏する。なお、上記の報知部は、画像を出力することによって報知を行う装置であっても良いし、音声を出力することによって報知を行う装置であっても良いし、所定の照明装置を点灯などさせることによって報知を行う装置であっても良いし、ローラー搬送装置10の流れを停止させることによって報知を行う装置であっても良いし、以上の処理を組み合わせることによって報知を行う装置であっても良いし、報知を行うことができればその他どのように構成されたものであっても良い。
【0029】
[第二実施形態]
図6は、第二実施形態の欠陥判定装置100aの機能構成を表す概略ブロック図である。第一実施形態の欠陥判定装置100と同じ機能部には図6において図2と同じ符号を付して表し、その説明を省く。
【0030】
第二実施形態の欠陥判定装置100aは、エッジ判定部103に代えてエッジ判定部103aを備える点で第一実施形態の欠陥判定装置100と異なり、他の構成は第一実施形態の欠陥判定装置100と同様である。
エッジ判定部103aは、撮像部40が撮像する撮像ラインに垂直方向に延びるエッジ部分だけではなく、撮像ラインに略平行に伸びるエッジ部分(以下、「横方向エッジ部分」という。)も判定する。以下、エッジ判定部103aの具体的な処理について説明する。
【0031】
図7は、横方向エッジ部分周辺の概略を表す図である。図7Aは、横方向エッジ部分周辺を輝度情報に基づいて平面的な画像として表す図である。図7B〜7Dは、横方向エッジ部分周辺のうちそれぞれ撮像ラインTb〜Tdにおける輝度情報を表すグラフであり、横軸は幅方向の座標を表し、縦軸は輝度値の大きさを表す。図7Bは、撮像ラインTbに沿って平行に伸びる細長い形状の欠陥部分を撮像した場合のグラフである。このグラフでは、欠陥部分の輝度値が第一閾値(Th1)を下回り、他の本体部分の輝度値は第一閾値と第二閾値との間に位置する。図7Cは、横方向エッジ部分を撮像した場合のグラフである。このグラフでは、横方向エッジ部分全体にわたって輝度値が第一閾値を下回っている。図7Dは、検査対象物30が撮像ライン上に存在しない時点で撮像が行われた場合のグラフ、言い換えればローラー搬送装置10上の進行方向に沿って並ぶ検査対象物30と検査対象物30との間の部分(以下、「無製品部分」という。)を撮像した場合のグラフである。このグラフでは、全体にわたって輝度値が第二閾値を上回っている。
【0032】
横方向エッジ部分は、撮像ラインと垂直方向で、必ず無製品部分と隣接する。そのため、各撮像ラインの幅方向の同一箇所(すなわち同一画素)における輝度値の変化に着目すると、横方向エッジ部分において輝度値が第一閾値を下回っている撮像ラインと、無製品部分において輝度値が第二閾値を上回っている撮像ラインとが隣接する。一方、撮像ラインに平行に伸びる細長い形状の欠陥部分は本体部分に生じるため、無製品部分の撮像ラインと隣接することがない。以上に鑑みて、エッジ判定部103aは、閾値判定部102において検出された第一閾値部分のうち、複数の撮像ラインの輝度情報にわたった輝度値の変化に基づいて横方向エッジ部分を判定し、その他の第一閾値部分については欠陥部分と判定する。
【0033】
図8は、第二実施形態の欠陥判定装置100aの動作例を表すフローチャートである。まず、閾値判定部102が、撮像装置40から輝度値情報を受け付け、閾値記憶部101に記憶されている第一閾値及び第二閾値に基づいて、第一閾値部分及び第二閾値部分を判定する(ステップS201)。
次に、エッジ判定部103aが、各第一閾値部分について、撮像ラインに沿った方向の長さが第一幅閾値よりも長いか否か判定する(ステップS202)。エッジ判定部103aは予め設定された第一幅閾値を記憶している。第一幅閾値の大きさは、検査対象物30の幅方向の長さよりも小さい値であり、且つ撮像ラインに垂直方向に伸びるエッジ部分の幅よりも十分に大きな値として設定される。
【0034】
横方向の長さが第一幅閾値よりも長い場合(ステップS202−YES)、エッジ判定部103aは、過去所定数以内の撮像ラインにおいて無製品部分が検出されたか否か判定する(ステップS203)。無製品部分が検出されていない場合(ステップS203−NO)、エッジ判定部103aは、処理対象となっている第一閾値部分を横方向エッジ候補と判定する(ステップS204)。一方、無製品部分が検出されていた場合(ステップS203−YES)、エッジ判定部103aは、処理対象となっている第一閾値部分を横方向エッジ部分と判定する(ステップS205)。このような第一幅閾値を用いた処理を行うことによって、明らかに横方向エッジ部分ではないような短い第一閾値部分について、横方向エッジ部分であるか否かの判定処理を省略することが可能となる。
【0035】
ステップS202において、横方向の長さが第一幅閾値よりも短い場合(S202−NO)、エッジ判定部103aは、第二閾値部分の横方向の長さが第二幅閾値よりも長いか否か判定する(ステップS206)。このとき、エッジ判定部103aは、処理対象となっている撮像ラインの輝度情報における全ての第二閾値部分について判定を行う。なお、エッジ判定部103aは、予め設定された第二幅閾値を記憶している。第二幅閾値は、照明部分の幅方向の長さよりも大きい値として設定され、投光器20の幅及び撮像装置40の視野の幅方向の長さよりも小さい値として設定される。
【0036】
全ての第二閾値部分の横方向の長さが第二幅閾値よりも短い場合又は第二閾値部分が無い場合(ステップS206−NO)、エッジ判定部103aは、第一実施形態のステップS102〜ステップS104と同様の処理を実行する。この場合、エッジ判定部103aは、ステップS102〜S104の処理を、ステップS201の処理で検出された全ての第一閾値部分について実行する。
【0037】
一方、横方向の長さが第二幅閾値よりも長い第二閾値部分が一つでも存在する場合(ステップS206−YES)、エッジ判定部103aは、現在の撮像ラインが無製品部分であると判定する(ステップS207)。
【0038】
次に、エッジ判定部103aは、過去所定数以内の撮像ラインにおいて横方向エッジ候補が検出されたか否か判定する(ステップS208)。横方向エッジ候補が検出されていた場合(ステップS208−YES)、エッジ判定部103aは、この横方向エッジ候補を横方向エッジ部分であると判定する(ステップS209)。一方、横方向エッジ候補が検出されていない場合(ステップS208−NO)、又はステップS103、S104、S204、S205、S209の処理の後、エッジ判定部103aは、判定結果を出力する(ステップS105)。このとき、エッジ判定部103aは、未だに横方向エッジ部分であると判定されていない横方向エッジ候補のうち、横方向エッジ候補であると判定されてから所定数以上の撮像ラインの処理が完了しているものがあれば、その横方向エッジ候補を欠陥部分であると判定する。その後、ステップS201に戻って、欠陥判定装置100aは、次の撮像ラインについて繰り返し処理を行う。
【0039】
このように構成された欠陥判定装置100aでは、検査対象物30を撮像することによって得られる輝度情報に基づいて欠陥部分を判定する際に、横方向エッジ部分と欠陥部分とを区別して判定することが可能となる。そのため、横方向エッジ部分を欠陥部分として誤って判定することを抑止することが可能となる。
【0040】
<検出結果>
図9は、上述した欠陥判定装置100によって実際に欠陥部分及びエッジ部分を検出した結果を表す図である。欠陥判定装置100によれば、エッジ部分はエッジ部分として欠陥部分と区別して検出される。そのため、図9のようにエッジ部分からわずか5.6ミリメートルしか離れていない欠陥部分についても、逆にエッジ部分と誤判定することなく、欠陥部分として正確に検出することが可能となる。
【0041】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0042】
10…ローラー搬送装置, 20…投光器, 30…検査対象物, 40…撮像装置, 100,100a…欠陥判定装置, 101…閾値記憶部, 102…閾値判定部, 103,103a…エッジ判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
欠陥部分を判定するために設定された第一閾値と、検査対象物がない部分を判定するために設定された第二閾値とを記憶する閾値記憶部と、
前記検査対象物を撮像して得られる輝度情報から、前記第一閾値に基づいて検査対象物の欠陥部分又はエッジ部分の候補となる第一閾値部分を判定し、前記第二閾値に基づいて検査対象物が存在しない第二閾値部分を判定する閾値判定部と、
前記第一閾値部分のうち、前記第二閾値部分との距離が所定の閾値よりも短いものをエッジ部分と判定し、前記第二閾値部分との距離が所定の閾値よりも長いものを欠陥部分と判定するエッジ判定部と、
を備える判定装置。
【請求項2】
欠陥部分を判定するために設定された第一閾値と、検査対象物がない部分を判定するために設定された第二閾値とを記憶する閾値記憶部を備える判定装置が、前記検査対象物を撮像して得られる輝度情報から、前記第一閾値に基づいて検査対象物の欠陥部分又はエッジ部分の候補となる第一閾値部分を判定し、前記第二閾値に基づいて検査対象物が存在しない第二閾値部分を判定する閾値判定ステップと、
前記判定装置が、前記第一閾値部分のうち、前記第二閾値部分との距離が所定の閾値よりも短いものをエッジ部分と判定し、前記第二閾値部分との距離が所定の閾値よりも長いものを欠陥部分と判定するエッジ判定ステップと、
を備える判定方法。
【請求項3】
欠陥部分を判定するために設定された第一閾値と、検査対象物がない部分を判定するために設定された第二閾値とを記憶する閾値記憶部を備えるコンピューターに対し、
前記検査対象物を撮像して得られる輝度情報から、前記第一閾値に基づいて検査対象物の欠陥部分又はエッジ部分の候補となる第一閾値部分を判定し、前記第二閾値に基づいて検査対象物が存在しない第二閾値部分を判定する閾値判定ステップと、
前記第一閾値部分のうち、前記第二閾値部分との距離が所定の閾値よりも短いものをエッジ部分と判定し、前記第二閾値部分との距離が所定の閾値よりも長いものを欠陥部分と判定するエッジ判定ステップと、
を実行させるためのコンピュータープログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−107082(P2011−107082A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−265015(P2009−265015)
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【出願人】(592180823)株式会社メック (12)
【Fターム(参考)】