説明

判断装置及び判断方法

【課題】器具使用等の判断にあたり、消費電力を低減することが可能な判断装置及び判断方法を提供する。
【解決手段】ガスメータ40は、流量センサ41と微分回路42と積分回路43とマイコン44とを備えている。微分回路42は、流量センサ41からの電気信号が所定の出力変化を超える場合、第1トリガ信号を出力する。積分回路43は、流量センサ41からの電気信号を積算して積算量が所定量に達した場合に、第2トリガ信号を出力する。マイコン44は、第1トリガ信号及び第2トリガ信号の入力状況に応じて、ガバナ付きガス器具が使用されていないか、ガス漏れが発生していないかを判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、判断装置及び判断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、使用中のガス器具にガバナが設けられているかを判断するガス器具判別装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−265513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
また、本件出願人は、特願2008−86022の技術を発明している。この発明では、ガス圧力に基づいてガバナ付きガス器具が使用されたか、ガバナ無しガス器具が使用されたか、及び、ガス漏れが発生しているか否かを判断するようになっている。
【0005】
しかし、特願2008−86022の技術の場合、ガバナ付きガス器具が使用されたか等のガス使用状況を判断するにあたり、圧力波形の周波数分析等を行う必要があり、この周波数分析により処理量が多くなって消費電力の増大を招いてしまう可能性がある。なお、本明細書では特願2008−86022の一部技術を説明しているが、この説明は特願2008−86022の技術の公知性を認めるものではない。
【0006】
本発明はこのような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、ガス使用状況を判断するにあたり、消費電力を低減することが可能な判断装置及び判断方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の判断装置は、流路内のガス流量に応じた電気信号を出力する流量センサと、流量センサからの電気信号が所定の出力変化を超える場合、第1トリガ信号を出力する微分手段と、流量センサからの電気信号を積算して積算量が所定量に達した場合に、第2トリガ信号を出力する積分手段と、微分手段からの第1トリガ信号及び積分手段からの第2トリガ信号の入力状況に応じて、ガス使用状況を判断する判断手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
この判断装置によれば、流量センサからの電気信号が所定の出力変化を超える場合、第1トリガ信号を出力すると共に、流量センサからの電気信号を積算して積算量が所定量に達した場合に、第2トリガ信号を出力し、第1トリガ信号及び第2トリガ信号の入力状況に応じて、ガス使用状況を判断する。ここで、例えばガバナ付きガス器具が使用されていない場合には、流量波形に高周波成分が含まれない傾向にある。一方、ガス漏れが発生していない場合には、流量波形に高周波成分が多く含まれる傾向にある。また、第1トリガ信号は、所定の出力変化が発生した場合に出力されることから、流量波形に高い周波数成分が多く含まれているときに比較的早めに出力される。一方、第2トリガ信号は、全体的な流量増加が発生した場合に出力される。よって、このような第1トリガ信号と第2トリガ信号の出力状況から、ガス使用状況を判断することができ、消費電力を低減することができる。
【0009】
また、本発明の判断装置は、流路内のガス圧力に応じた電気信号を出力する圧力センサと、流路内のガス流量に応じた電気信号を出力する流量センサと、圧力センサからの電気信号が所定の出力変化を超える場合、第1トリガ信号を出力する微分手段と、流量センサからの電気信号を積算して積算量が所定量に達した場合に、第2トリガ信号を出力する積分手段と、微分手段からの第1トリガ信号及び積分手段からの第2トリガ信号の入力状況に応じて、ガス使用状況を判断する判断手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
この判断装置によれば、圧力センサからの電気信号が所定の出力変化を超える場合、第1トリガ信号を出力すると共に、流量センサからの電気信号を積算して積算量が所定量に達した場合に、第2トリガ信号を出力し、第1トリガ信号及び第2トリガ信号の入力状況に応じて、ガス使用状況を判断する。ここで、例えばガバナ付きガス器具が使用されていない場合には、圧力波形及び流量波形に高周波成分が含まれない傾向にある。一方、ガス漏れが発生していない場合には、圧力波形及び流量波形に高周波成分が多く含まれる傾向にある。また、第1トリガ信号は、所定の出力変化が発生した場合に出力されることから、圧力波形に高い周波数成分が多く含まれているときに比較的早めに出力される。一方、第2トリガ信号は、全体的な流量増加が発生した場合に出力される。よって、このような第1トリガ信号と第2トリガ信号の出力状況から、ガス使用状況を判断することができ、消費電力を低減することができる。
【0011】
また、本発明の判断装置において、判断手段は、マイコンの1機能として構成され、微分手段及び積分手段の少なくとも一つは、マイコンの外部の周辺アナログ回路によって構成されていることが好ましい。
【0012】
この判断装置によれば、判断手段は、マイコンの1機能として構成され、微分手段及び積分手段の少なくとも一つは、マイコンの外部の周辺アナログ回路によって構成されている。このため、第1及び第2トリガ信号の少なくとも一方を出力するにあたり、演算の必要がなく、一層演算量を減らして消費電力を低減することができる。
【0013】
所定値未満のガス圧力の変化では第1トリガ信号を発生させず、所定値以上のガス圧力の変化により第1トリガ信号を出力する圧力スイッチと、流路内のガス流量に応じた電気信号を出力する流量センサと、流量センサからの電気信号を積算して積算量が所定量に達した場合に、第2トリガ信号を出力する積分手段と、圧力スイッチからの第1トリガ信号及び積分手段からの第2トリガ信号の入力状況に応じて、ガス使用状況を判断する判断手段と、を備えることを特徴とする。
【0014】
この判断装置によれば、所定値以上のガス圧力の変化によって圧力スイッチが第1トリガ信号を出力すると共に、流量センサからの電気信号を積算して積算量が所定量に達した場合に、第2トリガ信号を出力し、第1トリガ信号及び第2トリガ信号の入力状況に応じて、ガス使用状況を判断する。ここで、ガバナ付きガス器具が使用されていない場合には、圧力波形及び流量波形に高周波成分が含まれない傾向にある。一方、ガス漏れが発生していない場合には、圧力波形及び流量波形に高周波成分が多く含まれる傾向にある。また、第1トリガ信号は、所定値以上のガス圧力の変化が発生した場合に出力されることから、圧力波形に高い周波数成分が多く含まれているときに比較的早めに出力される。一方、第2トリガ信号は、全体的な流量増加が発生した場合に出力される。よって、このような第1トリガ信号と第2トリガ信号の出力状況から、ガス使用状況を判断することができ、消費電力を低減することができる。
【0015】
また、本発明の判断装置において、判断手段は、マイコンの1機能として構成され、積分手段は、マイコンの外部の周辺アナログ回路によって構成されていることが好ましい。
【0016】
この判断装置によれば、判断手段は、マイコンの1機能として構成され、積分手段は、マイコンの外部の周辺アナログ回路によって構成されている。このため、第2トリガ信号の出力にあたり、演算の必要がなく、一層演算量を減らして消費電力を低減することができる。
【0017】
また、本発明の判断装置において、判断手段は、第1トリガ信号を入力した後に、第2トリガ信号を入力した場合、ガス漏れが発生していないと判断することが好ましい。なお、ここでいうガス漏れとは、少量のみのガス漏れを意味する概念であってもよいし、少量及び大量のガス漏れの双方を意味する概念であってもよい。
【0018】
この判断装置によれば、第1トリガ信号を入力した後に、第2トリガ信号を入力した場合、ガス漏れが発生していないと判断する。ここで、ガス漏れが発生していない場合には、波形に比較的高い周波数成分が多く含まれる傾向にある。このため、比較的高い周波数成分によって第1トリガ信号が第2トリガ信号よりも先に出力される傾向にある。従って、上記の場合、ガス漏れが発生していないと判断でき、ガス漏れの可能性を排除でき、演算量を減らして消費電力を低減することができる。
【0019】
また、本発明の判断装置において、判断手段は、第1トリガ信号を入力せず、第2トリガ信号を入力した場合、ガバナ付きガス器具の使用ではないと判断することが好ましい。
【0020】
この判断装置によれば、第1トリガ信号を入力せず、第2トリガ信号を入力した場合、ガバナ付きガス器具の使用ではないと判断する。ここで、ガバナ付きガス器具の使用ではない場合には、波形に高周波成分が多く含まれない傾向にある。このため、第1トリガ信号が出力されず、全体的な流量増加により積算値が所定量に達して第2トリガ信号のみが出力される傾向にある。従って、上記の場合、ガバナ付きガス器具の使用ではないと判断することで、ガバナ付きガス器具の使用である可能性を排除でき、演算量を減らして消費電力を低減することができる。
【0021】
また、本発明の判断装置において、判断手段は、第1トリガ信号を入力せず、第2トリガ信号を入力し、かつ、第2トリガ信号入力後の規定時間内における平均ガス流量が規定量以上であった場合、ガス漏れであると判断することが好ましい。
【0022】
この判断装置によれば、第1トリガ信号を入力せず、第2トリガ信号を入力し、かつ、第2トリガ信号入力後の規定時間内における平均ガス流量が規定量以上であった場合、ガス漏れであると判断する。ここで、ガス漏れ発生時(特に大量のガス漏れ発生時)には、波形に高周波成分が多く含まれない傾向にある。さらに、ガバナ無しガス器具は流量が特定の流量よりも大きくならない傾向がある。このため、第1トリガ信号が出力されず、全体的な流量増加により積算値が所定量に達して第2トリガ信号のみが出力され、しかも規定時間内における平均ガス流量が規定量以上であった場合には、もはやガス漏れでしかなくなる。従って、上記の場合、ガス漏れであると判断することで、他のガバナ付きガス器具の使用等である可能性を排除でき、演算量を減らして消費電力を低減することができる。さらに、演算量を減らせたことで、ガス漏れであることの判断をすばやく実施することができ、保安処理等をすばやく実施することができるため、より安全性を高めることができる。
【0023】
また、本発明の判断装置において、判断手段は、第1トリガ信号を入力してから所定時間以内に第2トリガ信号を入力しない場合、着火ミスであると判断することが好ましい。
【0024】
この判断装置によれば、第1トリガ信号を入力してから所定時間以内に第2トリガ信号を入力しない場合、着火ミスであると判断する。ここで、着火ミスが生じた場合、圧力波形及び流量波形は共に比較的高い周波数で大きな振幅を示す傾向にあり、比較的高い周波数成分により第1トリガ信号が出力される。しかし、流量については比較的高い周波数で大きな振幅を示すだけで、ガス供給が遮断されることとなり、流量が積算されても所定量に達することなく、第2トリガ信号は出力されないこととなる。従って、上記の場合、着火ミスであると判断することで、ガバナ付きガス器具の使用等を判断する必要がなくなり、演算量を減らして消費電力を低減することができる。
【0025】
また、本発明の判断方法は、流路内のガス流量に応じた電気信号を出力する流量センサからの電気信号が所定の出力変化を超える場合、第1トリガ信号を出力する微分工程と、流量センサからの電気信号を積算して積算量が所定量に達した場合に、第2トリガ信号を出力する積分工程と、微分工程にて出力される第1トリガ信号及び積分工程にて出力される第2トリガ信号の入力状況に応じて、ガス使用状況を判断する判断工程と、を備えることを特徴とする。
【0026】
この判断方法によれば、流量センサからの電気信号が所定の出力変化を超える場合、第1トリガ信号を出力すると共に、流量センサからの電気信号を積算して積算量が所定量に達した場合に、第2トリガ信号を出力し、第1トリガ信号及び第2トリガ信号の入力状況に応じて、ガス使用状況を判断する。ここで、例えばガバナ付きガス器具が使用されていない場合には、流量波形に高周波成分が含まれない傾向にある。一方、ガス漏れが発生していない場合には、流量波形に高周波成分が多く含まれる傾向にある。また、第1トリガ信号は、所定の出力変化が発生した場合に出力されることから、流量波形に高い周波数成分が多く含まれているときに比較的早めに出力される。一方、第2トリガ信号は、全体的な流量増加が発生した場合に出力される。よって、このような第1トリガ信号と第2トリガ信号の出力状況から、ガス使用状況を判断することができ、消費電力を低減することができる。
【0027】
また、本発明の判断方法は、流路内のガス圧力に応じた電気信号を出力する圧力センサからの電気信号が所定の出力変化を超える場合、第1トリガ信号を出力する微分工程と、流路内のガス流量に応じた電気信号を出力する流量センサからの電気信号を積算して積算量が所定量に達した場合に、第2トリガ信号を出力する積分工程と、微分工程にて出力される第1トリガ信号及び積分工程にて出力される第2トリガ信号の入力状況に応じて、ガス使用状況を判断する判断工程と、を備えることを特徴とする。
【0028】
この判断方法によれば、圧力センサからの電気信号が所定の出力変化を超える場合、第1トリガ信号を出力すると共に、流量センサからの電気信号を積算して積算量が所定量に達した場合に、第2トリガ信号を出力し、第1トリガ信号及び第2トリガ信号の入力状況に応じて、ガス使用状況を判断する。ここで、例えばガバナ付きガス器具が使用されていない場合には、圧力波形及び流量波形に高周波成分が含まれない傾向にある。一方、ガス漏れが発生していない場合には、圧力波形及び流量波形に高周波成分が多く含まれる傾向にある。また、第1トリガ信号は、所定の出力変化が発生した場合に出力されることから、圧力波形に高い周波数成分が多く含まれているときに比較的早めに出力される。一方、第2トリガ信号は、全体的な流量増加が発生した場合に出力される。よって、このような第1トリガ信号と第2トリガ信号の出力状況から、ガス使用状況を判断することができ、消費電力を低減することができる。
【0029】
また、本発明の判断方法は、所定値未満のガス圧力の変化では第1トリガ信号を発生させず、所定値以上のガス圧力の変化により第1トリガ信号を出力する圧力スイッチを有した判断装置におけるガス使用状況の判断方法であって、流路内のガス流量に応じた電気信号を出力する流量センサからの電気信号を積算して積算量が所定量に達した場合に、第2トリガ信号を出力する積分工程と、圧力スイッチからの第1トリガ信号及び積分手段からの第2トリガ信号の入力状況に応じて、ガス使用状況を判断する判断工程と、を備えることを特徴とする。
【0030】
この判断方法によれば、所定値以上のガス圧力の変化により圧力スイッチが第1トリガ信号を出力すると共に、流量センサからの電気信号を積算して積算量が所定量に達した場合に、第2トリガ信号を出力し、第1トリガ信号及び第2トリガ信号の入力状況に応じて、ガス使用状況を判断する。ここで、例えばガバナ付きガス器具が使用されていない場合には、圧力波形及び流量波形に高周波成分が含まれない傾向にある。一方、ガス漏れが発生していない場合には、圧力波形及び流量波形に高周波成分が多く含まれる傾向にある。また、第1トリガ信号は、所定値以上のガス圧力の変化が発生した場合に出力されることから、圧力波形に高い周波数成分が多く含まれているときに比較的早めに出力される。一方、第2トリガ信号は、全体的な流量増加が発生した場合に出力される。よって、このような第1トリガ信号と第2トリガ信号の出力状況から、ガス使用状況を判断することができ、消費電力を低減することができる。
【0031】
なお、上記においてガス使用状況とは、ガバナ付きガス器具の使用でないこと、ガバナ付きガス器具及びガバナ無しガス器具の使用のどちらでもないこと、ガス漏れでないこと、ガバナ無しガス器具の使用及びガス漏れのどちらでもないこと、ガバナ付きガス器具の使用であること、ガバナ付きガス器具及びガバナ無しガス器具の使用のいずれかであること、ガス漏れであること、ガス漏れ及びガバナ無しガス器具の使用のいずれかであること、電子制御機能を有するガス器具の使用であること、電子制御機能を有するガス器具の使用でないこと、並びに、着火ミスであること、の少なくとも1つをいう概念である。また、電子制御機能とは、PIDなどの自動制御によりガス量を細かく調整することでガス燃焼量を制御する機能をいう。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、ガス使用状況を判断するにあたり、消費電力を低減することが可能な判断装置及び判断方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施形態に係る計測装置を含むガス供給システムの構成図である。
【図2】図1に示したガバナの一例を示す側方断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係るガスメータの構成図である。
【図4】ガバナ付きガス器具の使用を開始したときの流量変化の様子を示すグラフである。
【図5】ガバナ無しガス器具での燃料ガスの供給の様子を示す概略図である。
【図6】ガス漏れ時の流量変化の様子を示すグラフである。
【図7】本実施形態に係るガスメータの判断方法を示すフローチャートである。
【図8】図7に示した第1判断処理(S3)の詳細を示すフローチャートである。
【図9】スペクトルデータの一例を示すグラフであり、(a)はガバナ付きガス器具の使用時を示し、(b)はガバナ無しガス器具の使用時を示し、(c)はガス漏れ発生時を示している。
【図10】図7に示した第2判断処理(S6)の詳細を示すフローチャートである。
【図11】本発明の第2実施形態に係るガスメータの構成図である。
【図12】本発明の第3実施形態に係るガスメータの構成図である。
【図13】着火ミス時における流量及び圧力の波形を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態に係る計測装置を含むガス供給システムの構成図である。ガス供給システム1は、各ガス器具10に燃料ガスを供給するものであって、複数のガス器具10と、ガス供給元の調整器20と、配管31,32と、ガスメータ(計測装置)40とを備えている。なお、図1に示す例では、ガスメータ40を計測装置の一例として挙げるが、計測装置はガスメータ40に限らず、ガス流量を計測する他の装置であってもよい。
【0035】
調整器20は上流からの燃料ガスを所定圧力に調整して第1配管31に流すものである。この調整器20は、例えば燃料ガスを2.9kPa程度の圧力に調整して第1配管31に流す構成となっている。第1配管31は、調整器20とガスメータ40とを接続するものである。第2配管32はガスメータ40とガス器具10とを接続する配管である。ガスメータ40は、燃料ガスの流量を測定して積算流量を表示するものである。このようなガス供給システム1では、ガスメータ40内に第1配管31及び第2配管32とつながる流路が形成されており、調整器20を通じて流れてきた燃料ガスは第1配管31からガスメータ40、及び第2配管32を通じてガス器具10に到達し、ガス器具10において燃焼されることとなる。
【0036】
また、ガス器具10は、概略的に、遮断弁12、ガバナ13、及びバーナー14を備えている。遮断弁12は、ガス器具10に設けられた弁である。ガバナ13は、ガバナ内弁13aを有し、ガス器具10のバーナー14に供給するガスの圧力をガバナ内弁13aの開度によって調整するものである。圧力調整された燃料ガスはガバナ13の先端のノズル13bを通じてバーナー14に至り、燃焼することとなる。なお、ガス器具10は、全てがガバナ13を有しているわけでなく、ガスコンロなどのようにガバナ13を有さないものもある。
【0037】
図2は、図1に示したガバナ13の一例を示す側方断面図である。なお、図2では、ガバナ13の一例を示すに過ぎず、ガバナ13の構成は図2に示すものに限られない。また、図2に示すガバナ13については図1に示したノズル13bを省略して図示する。
【0038】
図2に示すようにガバナ13は、外壁13cとガバナキャップ13dとによって形成される内部空間の一部をガス流路として用いるものである。このようなガバナ13は、ガバナ内弁13aに加えて、内部空間に、ダイヤフラム13e、調整スプリング13f、及び調整ネジ13gを備えている。
【0039】
ダイヤフラム13eは、ガバナ13の内部空間を仕切る膜状の部材である。このダイヤフラム13eには、一方側(流路側)にガバナ内弁13aが取り付けられている。また、ダイヤフラム13eの他方側(流路として機能しない側)に調整スプリング13fが取り付けられている。調整スプリング13fは、一端にダイヤフラム13eが取り付けられ、他端に調整ネジ13gが取り付けられている。調整ネジ13gは、ねじ切り溝が形成されたガバナ13の内壁に固定される構造となっており、ねじ切り溝との固定位置を変化させることで調整スプリング13fの圧縮率を変更可能となっている。また、調整ネジ13gは外部にむき出しとなっておらず、ガバナキャップ13dによって覆われた構造となっている。
【0040】
また、ガバナ13の外壁13cには、ダイヤフラム13eの他方側に通じる空気孔13hが形成されている。このため、ダイヤフラム13eの他方側は空気圧となっている。さらに、図2に示す例においてガバナ内弁13aは半球形状となっており、上下動によって通過口13iの開口割合を制御可能となっている。
【0041】
このようなガバナ13では、ガス入側のガス圧が高くなると、ダイヤフラム13eが上へ押し上げられ、同時にダイヤフラム13eに取り付けられているガバナ内弁13aも上に引き上げられる。これにより、通過口13iの開口割合が小さくなって、ガス流量が減少する。一方、ガス入側のガス圧が低くなると、ダイヤフラム13eが下がり、同時にダイヤフラム13eに取り付けられているガバナ内弁13aも下がる。これにより、通過口13iの開口割合が大きくなって、ガス流量が増大する。このように、ガバナ13は上流側の圧力の変動に対して下流側の流量を一定に保つことで、下流側の圧力を調整することとなる。
【0042】
図3は、本発明の実施形態に係るガスメータ40の構成図である。図3に示すように、本実施形態に係るガスメータ40は、流量センサ41と、微分回路(微分手段)42と、積分回路(積分手段)43と、マイコン(判断手段)44とを備えている。
【0043】
流量センサ41は、ガスメータ40内の流路に設置され、流路内のガス流量を検出するためのものである。本実施形態に係るガスメータ40がフローセンサなどの熱式センサを搭載したガスメータである場合、温度分布をつくり出すヒータと、その温度分布に応じた信号を発生させるサーモパイル等によって構成される。なお、流量センサ41は、熱式のセンサに限らず、他のセンサによって構成されてもよい。
【0044】
微分回路42は、流量センサ41からの電気信号が所定の出力変化を超える場合、第1トリガ信号を出力するものである。この微分回路42は、マイコン44の周辺アナログ回路として構成されている。また、積分回路43は、流量センサ41からの電気信号を積算して積算量が所定量に達した場合に、第2トリガ信号を出力するものである。この積分回路43についても微分回路42と同様に、マイコン44の周辺アナログ回路として構成されている。
【0045】
なお、本実施形態では、図3において流量センサ41からの信号が直接微分回路42、積分回路43及びマイコン44に入力され、微分回路42及び積分回路43の出力も直接マイコン44に入力されているが、場合によっては増幅器等の他の要素が両者間に追加されていてもよい。ここで、両者間に追加する他の要素としては、ピークホールド回路等がある。すなわち、微分回路42の後段にピークホールド回路など一時的に振幅信号を固定する回路を設けることにより、第1トリガ信号が不安定になるのを防ぐことができるからである。また、積分回路43の後段にコンパレータ回路など積分量を比較してパルス出力を出力する回路などを設けることにより、コンパレータ回路で積算量を設定できると共に、ヒステリシスを設けて第2トリガ信号が不安定になるのを防ぐことができるからである。
【0046】
さらに、本実施形態では流量センサ41は1つとなっているが、微分回路42、積分回路43及びマイコン44に入力される流量センサのうち少なくとも1つを別個に設けてもよい。
【0047】
また、微分手段として微分回路42を用いているが、微分手段は流量変化を出力できれば微分回路42に限らず、ハイパスフィルタのように高い周波数を主に取り出す回路であってもよい。
【0048】
マイコン44は、ガスメータ40の全体を制御するものであり、流量の積算制御、表示制御、遮断弁の遮断制御等を行うものである。また、本実施形態においてマイコン44は、ガバナ付きガス器具10の使用、ガバナ無しガス器具10の使用、及びガス漏れの発生を判断する機能を有している。
【0049】
ここで、マイコン44によるガバナ付きガス器具10の使用等の判断原理について説明する。図4は、ガバナ付きガス器具10の使用を開始したときの流量変化の様子を示すグラフである。なお、図4において縦軸は、流量に応じた流量センサ41からの出力電圧(V)を示し、横軸はガバナ付きガス器具10の使用を開始してからの経過時間を示している。また、図4は流量センサ41がフローセンサである場合のグラフを示している。
【0050】
ガバナ付きガス器具10の使用が開始された場合、流量は、図4に示す所定の振動を示した後に、安定状態となる。具体的には、ガバナ付きガス器具10の使用開始直後に、出力電圧は、一度約「0.3」Vを示した後(符号a1参照)、約「−0.2」Vを示す(符号a2参照)。その後、出力電圧は約「0.3」Vを示した後に(符号a3参照)、約「−0.27」Vを示す(符号a4参照)。以後、徐々に振幅が小さくなりつつも波形は振動を繰り返し、最終的には出力電圧約「0.2」Vで安定状態となる。
【0051】
このような流量の振動が発生する理由は、ガバナ13内に調整スプリング13fが設けられているからである。すなわち、ガバナ付きガス器具10の使用が開始されると、調整スプリング13fが振動すると共に、ガバナ内弁13aについても振動する。これにより、通過口13iの開口割合についても小刻みに大きくなったり小さくなったりと変化して、この結果、流量波形は比較的高い周波数成分を多く含むこととなる。
【0052】
図5は、ガバナ無しガス器具10での燃料ガスの供給の様子を示す概略図である。図5に示すように、ガバナ無しガス器具10が使用された場合、燃料ガスは第2配管32からノズルホルダ100を通じてバーナー14等に至る。ここで、ノズルホルダ100にある流速を持った気体が流入したときはその慣性力で急には流速が小さくならずに一端ガスが圧縮され圧力が上昇する。その後上昇した圧力により流入流速が小さく(場合によっては逆流)なって圧力が下がる。このような流速の変化を繰り返すことによって、流量の振動が発生する。
【0053】
以上のように、ガバナ付きガス器具10の使用時と、ガバナ無しガス器具10の使用時とでは、流量は振動することとなる。しかしながら、ガバナ付きガス器具10の使用時における流量波形には、ガバナ無しガス器具10の使用時よりも高い周波数成分が多く含まれる傾向にある。
【0054】
まず、ガバナ無しガス器具10の場合、調整スプリング13fがなく、ノズルホルダ100への気体流入慣性力による振動が発生しているのみである。これに対し、ガバナ付きガス器具10であっても、ノズルホルダ100を有しており、ノズルホルダ100への気体流入慣性力による振動は発生する。これに加えて、ガバナ付きガス器具10は、ガバナ13を有しており、調整スプリング13fによる振動が加算される。この結果、ガバナ付きガス器具10ではガバナ無しガス器具10よりも高い周波数成分を多く含むこととなる。
【0055】
図6は、ガス漏れ時の流量変化の様子を示すグラフである。なお、図6において縦軸は、流量に応じた流量センサ41からの出力電圧(V)を示し、横軸はガス漏れが発生してからの経過時間を示している。
【0056】
図6に示すように、ガス漏れが発生した場合、流量は一応の振動を示すが、その振動は比較的緩やかなものとなる。このように、ガス漏れの場合、調整スプリング13fの振動、及び、ノズルホルダ100の圧縮性による振動の双方が発生しないため、図4に示すほどの明確な振動が見られず、流量波形は高周波成分をほとんど含まないものとなる。
【0057】
以上のように、ガバナ付きガス器具10の使用開始時と、ガバナ無しガス器具10の使用開始時と、ガス漏れ発生時とでは、流量波形に特徴的な差異がある。しかも、上記の特徴は、ガス器具10の使用開始又はガス漏れ発生から最大でも数秒程度以内に生じるものである。従って、マイコン44は、上記の特徴から、短時間でガバナ付きガス器具10の使用等を判断することができる。
【0058】
しかし、上記の特徴に基づいて、ガバナ付きガス器具10の使用、ガバナ無しガス器具10の使用、及びガス漏れの発生を判断する場合、マイコン44の演算量が多くなり、消費電力が多くなってしまう。特にガスメータ40は10年間電池による駆動を行わなければならず、消費電力は少なければ少ないほどよい。
【0059】
そこで、本実施形態に係るガスメータ40は、微分回路42及び積分回路43を備え、これらから出力されるトリガ信号に基づいて、ガバナ付きガス器具10の使用であるか、ガバナ無しガス器具10の使用であるか、及びガス漏れの発生であるかの判断処理を軽減することとしている。
【0060】
図7は、本実施形態に係るガスメータ40の判断方法を示すフローチャートである。なお、図7に示す処理は、流量センサ41から検出される流量がゼロである場合に実行されている。すなわち、流量センサ41からの電気信号によって計測可能な最低流量(例えば1.5L/hr)以下の流量しかガス流路内に流れていない場合に実行される。そして、流量がゼロである状態からゼロを超える状態に変化してから数秒程度の時間が経過するまで実行される。
【0061】
図7に示すように、流量センサ41から検出される流量がゼロである状態で、まずマイコン44は、第1トリガ信号が第2トリガ信号よりも先に入力されたか否かを判断する(S1)。第1トリガ信号が第2トリガ信号よりも先に入力されたと判断した場合(S1:YES)、マイコン44は、ガス漏れではないと判断する(S2)。
【0062】
ここで、マイコン44がガス漏れでないと判断する理由は以下の通りである。ガス漏れが発生した場合には、図6に示すように流量波形には低周波成分が多く含まれ、高周波成分が多く含まれない傾向にある。ところが、第1トリガ信号が第2トリガ信号よりも先に入力された場合とは、例えば図4に示すように高周波成分によって所定の出力変化が発生し、微分回路42から第1トリガ信号が早期に出力される場合である。このように、第1トリガ信号が第2トリガ信号よりも先に入力される場合とは、ガバナ付きガス器具10が使用された可能性が高く、誤差等を考慮しても少なくともガス漏れではないと判断することができる。
【0063】
なお、本実施形態ではステップS2においてガス漏れでないと判断しているが、ガバナ付きガス器具10の使用であると判断してもよいし、ガバナ付きガス器具10の使用及びガバナ無しガス器具10の使用のどちらかであると判断してもよい。具体的に説明すると、第1トリガ信号が出力されるか否かは微分回路42の乗数によって決まる。このため、ガバナ付きガス器具10の使用でない限り、第1トリガ信号が第2トリガ信号よりも先に出力されないように微分回路42の乗数を設定することで、ステップS2においてガバナ付きガス器具10の使用であると判断することができる。同様に、ガバナ付きガス器具10の使用及びガバナ無しガス器具10の使用のどちらかでない限り、第1トリガ信号が第2トリガ信号よりも先に出力されないように微分回路42の乗数を設定することで、ステップS2においてガバナ付きガス器具10の使用及びガバナ無しガス器具10の使用のどちらかであると判断することができる。
【0064】
ステップS2の後、マイコン44は、第1判断処理を実行する(S3)。この処理において、マイコン44は、ガバナ付きガス器具10の使用であるか、ガバナ無しガス器具10の使用であるかを判断することとなる。そして、図7に示す処理は終了する。なお、ステップS3の第1判断処理では、ガス漏れである可能性が排除されているため、演算量が少なくなり、消費電力が低減されることとなる。
【0065】
ところで、第1トリガ信号が第2トリガ信号よりも先に入力されていないと判断した場合(S1:NO)、マイコン44は、第1トリガ信号を入力せず、第2トリガ信号のみを入力したか否かを判断する(S4)。第1トリガ信号を入力し、又は第2トリガ信号を入力しなかった場合(S4:NO)、処理はステップS1に移行する。第1トリガ信号を入力せず、第2トリガ信号のみを入力したと判断した場合(S4:YES)、マイコン44は、ガバナ付きガス器具10の使用ではないと判断する(S5)。
【0066】
ここで、マイコン44がガバナ付きガス器具10の使用でないと判断する理由は以下の通りである。ガバナ付きガス器具10が使用された場合には、図4に示すように流量波形には高周波成分が多く含まれる傾向にある。ところが、第1トリガ信号が入力されず、第2トリガ信号のみが入力される場合とは、例えば図6に示すように流量波形に高周波成分が含まれずに所定の出力変化が発生しない場合である。このように、第1トリガ信号が入力されず、第2トリガ信号のみが入力される場合とは、ガス漏れである可能性が高く、誤差等を考慮しても少なくともガバナ付きガス器具10の使用ではないと判断することができる。
【0067】
なお、本実施形態ではステップS5においてガバナ付きガス器具10の使用でないと判断しているが、ガス漏れであると判断してもよいし、ガス漏れ及びガバナ無しガス器具10の使用のどちらかであると判断してもよい。具体的に説明すると、第1トリガ信号は微分回路42の乗数によって出力されるか否かが決まる。このため、ガバナ付きガス器具10の使用及びガバナ無しガス器具10の使用の場合に限り、第1トリガ信号が出力されるように微分回路42の乗数を設定することで、ステップS5においてガス漏れであると判断することができる。同様に、ガバナ付きガス器具10の使用の場合に限り、第1トリガ信号が出力されるように微分回路42の乗数を設定することで、ステップS5においてガス漏れ及びガバナ無しガス器具10の使用のどちらかであると判断することができる。
【0068】
なお、各家庭によって配管状態は異なっている。このため、第1トリガ信号が出力されるか否かは、配管状態によっても異なってくる。よって、ステップS5においてガス漏れを判断する場合、以下の2通りの方法を行ってもよい。1つ目は、或る家庭であるとガス漏れを一部判断し損ねるが、他の家庭であるとガス漏れを適切に判断できるように、微分回路42の乗数を設定する方法である。この方法により、第1トリガ信号が入力されず、第2トリガ信号が入力された場合は、必ずガス漏れであると判断できるからである。
【0069】
2つ目は、或る家庭であるとガス漏れを適切に判断するが、他の家庭であるとガス漏れ以外もガス漏れと判断してしまうように、微分回路42の乗数を設定する方法である。この方法により、第1トリガ信号が入力されず、第2トリガ信号が入力された場合は、ガス漏れでないかもしれないが、安全性を考慮してガス漏れであると判断し、保安処理等を行うことができるかである。
【0070】
なお、上記した或る家庭であるとガス漏れを一部判断し損ねる場合、及び、ガス漏れ以外もガス漏れと判断してしまう場合については、ステップS5の後に、詳細な判定を行う処理(後述のステップS8に示す第2判断処理)を実行することにより、ガス漏れを一部判断し損ねる可能性、及び、ガス漏れ以外もガス漏れと判断してしまう可能性を低減することができる。
【0071】
ステップS5の後、マイコン44は、第2トリガ信号が入力されてから規定時間(例えば0.3〜2秒間)の間の平均流量が規定量(例えば平均流量で100L/hr)以上であるか否かを判断する(S6)。規定量以上であると判断した場合(S6:YES)、マイコン44は、ガス漏れであると判断する(ステップS7)。そして、図7に示す処理は終了する。なお、ガス漏れであると判断された場合、マイコン44は、遮断弁を遮断動作させるなどの保安処理を実行することとなる。
【0072】
ここで、ガス漏れ発生時(特に大量のガス漏れ発生時)には、波形に高周波成分が多く含まれない傾向にある。さらに、ガバナ無しガス器具10は流量が特定の流量よりも大きくならない傾向がある。このため、ガバナ付きガス器具10の使用ではないと判断された後において、規定時間内における平均ガス流量が規定量以上であった場合には、もはやガス漏れでしかなくなる。特に、大量のガス漏れは危険度が高く、図7に示すフローチャートにおいてガス漏れは、上記第1判断処理(S3)や後述の第2判断処理(S8)という詳細な処理を実行することなく判断できることから、早急な保安処理を実行できることとなり、図1に示すようなガス供給システム1の安全性を高めることができる。
【0073】
なお、ステップS6においては、平均流量に基づいてガス漏れを判断しているが、これに限らず、規定時間内における積算流量に基づいて判断してもよい。積算流量についても規定時間で除することにより平均流量として扱うことができるからである。
【0074】
ところで、ステップS6において平均流量が規定量未満であると判断した場合(S6:NO)、マイコン44は、第2判断処理を実行する(S8)。この処理において、マイコン44は、ガバナ無しガス器具10の使用であるか、ガス漏れであるかを詳細に判断することとなる。そして、図7に示す処理は終了する。なお、ステップS8の第2判断処理では、ガバナ付きガス器具10の使用である可能性が排除されているため、演算量が少なくなり、消費電力が低減されることとなる。
【0075】
ここで、流量波形の特徴は、図4〜図6を参照して説明したように、ガス器具10の使用開始又はガス漏れ発生から最大でも数秒程度以内に生じるものである。従って、図7に示す処理は、流量がゼロを超える状態となってから数秒の時間が経過した場合、終了することが望ましい。
【0076】
図8は、図7に示した第1判断処理(S3)の詳細を示すフローチャートである。図8に示すように、第1判断処理においてマイコン44は、流量波形をフーリエ変換する(S11)。これにより、マイコン44は、周波数と振幅との相関を示すスペクトルデータを生成することとなる。そして、マイコン44は、スペクトルデータのうち、高周波成分の振幅値が第1所定振幅値以上であるか否かを判断する(S12)。
【0077】
図9は、スペクトルデータの一例を示すグラフであり、(a)はガバナ付きガス器具10の使用時を示し、(b)はガバナ無しガス器具10の使用時を示している。なお、図9に示すスペクトルデータは、圧力波形をフーリエ変換したものであるが、圧力と流量とには一定の相関があり、周波数や振幅の特徴は似たものとなるため、図9では圧力波形をフーリエ変換して得られたスペクトルデータを示すものとする。
【0078】
図9(a)に示すように、ガバナ付きガス器具10が使用された場合、20Hz以上の周波数成分において高い振幅を示す傾向がある。一方、図9(b)に示すように、ガバナ無しガス器具10が使用された場合、20Hz以上の周波数成分において高い振幅を示さない傾向がある。このため、マイコン44は、図8のステップS12に示すように、高周波成分の振幅値が第1所定振幅値以上であるか否かを判断する。
【0079】
高周波成分(具体的には20Hz以上の成分)の振幅値が第1所定振幅値以上であると判断した場合(S12:YES)、マイコン44は、ガバナ付きガス器具10の使用であると判断する(S13)。その後、図8に示す処理は終了する。一方、高周波成分の振幅値が第1所定振幅値以上でないと判断した場合(S12:NO)、マイコン44は、ガバナ無しガス器具10の使用であると判断する(S14)。その後、図8に示す処理は終了する。
【0080】
図10は、図7に示した第2判断処理(S6)の詳細を示すフローチャートである。図10に示すように、第2判断処理においてマイコン44は、流量波形をフーリエ変換する(S21)。これにより、マイコン44は、周波数と振幅との相関を示すスペクトルデータを生成することとなる。そして、マイコン44は、スペクトルデータのうち、中周波成分の振幅値が第2所定振幅値以上であるか否かを判断する(S22)。
【0081】
図9(c)は、ガス漏れ発生時のスペクトルデータの一例を示すグラフである。図9(c)に示すように、ガス漏れが発生した場合、20Hz以上の周波数成分において高い振幅を示さないのみならず、10Hz程度の周波数成分についても高い振幅を示さない傾向がある。一方、図9(b)に示すように、ガバナ無しガス器具10が使用された場合、20Hz以上の周波数成分において高い振幅を示さない点については同じであるが、約10Hz付近の周波数成分においてガス漏れ発生時よりも高い振幅を示す傾向がある。このため、マイコン44は、図10のステップS22に示すように、中周波成分の振幅値が第2所定振幅値以上であるか否かを判断する。
【0082】
中周波成分(具体的には10Hz程度の成分)の振幅値が第2所定振幅値以上であると判断した場合(S22:YES)、マイコン44は、ガバナ無しガス器具10の使用であると判断する(S23)。その後、図10に示す処理は終了する。一方、中周波成分の振幅値が第2所定振幅値以上でないと判断した場合(S22:NO)、マイコン44は、ガス漏れであると判断する(S24)。その後、図10に示す処理は終了する。
【0083】
なお、図8のステップS12では、高周波成分の振幅値が第1所定振幅値以上であるか否かを判断し、図10のステップS22では、中周波成分の振幅値が第2所定振幅値以上であるか否かを判断した。しかし、これに限らず、他の方法により判断を行ってもよい。例えば、予めマイコン44に、ガバナ付きガス器具10の使用時の使用時におけるスペクトルデータ及びガバナ無しガス器具10の使用時におけるスペクトルデータを記憶させておく。そして、図8のステップS12においてマイコン44は記憶したスペクトルデータを読み出し、どちらのスペクトルデータと、ステップS11において得られたスペクトルデータとの類似度が高いか否かを判断して、ガバナ付きガス器具10の使用であるか、ガバナ無しガス器具10の使用であるかを判断するようにしてもよい。図10のステップS22についても同様である。
【0084】
このようにして、本実施形態に係るガスメータ40及び判断方法によれば、流量センサ41からの電気信号が所定の出力変化を超える場合、第1トリガ信号を出力すると共に、流量センサ41からの電気信号を積算して積算量が所定量に達した場合に、第2トリガ信号を出力し、第1トリガ信号及び第2トリガ信号の入力状況に応じて、ガバナ付きガス器具10が使用されていないか、ガス漏れが発生していないかを判断する。ここで、例えばガバナ付きガス器具10が使用されていない場合には、流量波形に高周波成分が含まれない傾向にある。一方、ガス漏れが発生していない場合には、流量波形に高周波成分が多く含まれる傾向にある。また、第1トリガ信号は、所定の出力変化が発生した場合に出力されることから、流量波形に高い周波数成分が多く含まれているときに比較的早めに出力される。一方、第2トリガ信号は、全体的な流量増加が発生した場合に出力される。よって、このような第1トリガ信号と第2トリガ信号の出力状況から、ガス使用状況を判断することができ、消費電力を低減することができる。
【0085】
また、微分回路42及び積分回路43は、マイコン44の外部の周辺アナログ回路によって構成されている。このため、第1及び第2トリガ信号の出力にあたり、演算の必要がなく、一層演算量を減らして消費電力を低減することができる。なお、第1実施形態において微分回路42及び積分回路43は、マイコン44の外部の周辺アナログ回路によって構成されているが、少なくとも一つが周辺アナログ回路によって構成されていてもよい。これによっても、周辺アナログ回路によって構成された側について、演算量を減らして消費電力を低減することができるからである。
【0086】
また、第1トリガ信号を入力した後に、第2トリガ信号を入力した場合、ガス漏れが発生していないと判断する。ここで、ガス漏れが発生していない場合には、波形に比較的高い周波数成分が多く含まれる傾向にある。このため、比較的高い周波数成分によって所定の出力変化が発生して第1トリガ信号が第2トリガ信号よりも先に出力される傾向にある。従って、上記の場合、ガス漏れが発生していないと判断でき、ガス漏れの可能性を排除でき、演算量を減らして消費電力を低減することができる。
【0087】
また、第1トリガ信号を入力せず、第2トリガ信号を入力した場合、ガバナ付きガス器具10の使用ではないと判断する。ここで、ガバナ付きガス器具10の使用ではない場合には、波形に高周波成分が多く含まれない傾向にある。このため、所定の出力変化が生じずに第1トリガ信号が出力されず、全体的な流量増加により積算値が所定量に達して第2トリガ信号のみが出力される傾向にある。従って、上記の場合、ガバナ付きガス器具10の使用ではないと判断することで、ガバナ付きガス器具10の使用である可能性を排除でき、演算量を減らして消費電力を低減することができる。
【0088】
また、第1トリガ信号を入力せず、第2トリガ信号を入力し、かつ、第2トリガ信号入力後の規定時間内における平均ガス流量が規定量以上であった場合、ガス漏れであると判断する。ここで、ガス漏れ発生時(特に大量のガス漏れ発生時)には、波形に高周波成分が多く含まれない傾向にある。さらに、ガバナ無しガス器具10は流量が特定の流量よりも大きくならない傾向がある。このため、第1トリガ信号が出力されず、全体的な流量増加により積算値が所定量に達して第2トリガ信号のみが出力され、しかも規定時間内における平均ガス流量が規定量以上であった場合には、もはやガス漏れでしかなくなる。従って、上記の場合、ガス漏れであると判断することで、他のガバナ付きガス器具の使用等である可能性を排除でき、演算量を減らして消費電力を低減することができる。さらには、大量のガス漏れ発生時において迅速に保安処理を実行することも可能となる。
【0089】
次に、本発明の第2実施形態を説明する。図11は、本発明の第2実施形態に係るガスメータ40の構成図である。なお、図11において、図3に示すガスメータ40と同一又は同様の構成には、同じ符号を付して詳細な説明を省略する。図11に示すように、ガスメータ40は、圧力センサ45を備えている。圧力センサ45は、流路内のガス圧力に応じた電気信号を出力するものである。
【0090】
また、第2実施形態において微分回路42は圧力センサ45からの電気信号を入力する。ここで、流量波形と圧力波形とには一定の相関がある。特に圧力波形は、ガバナ付きガス器具10の使用時において、流量と同様に高周波数成分が多く含まれる傾向にあり、ガバナ無しガス器具10の使用時に中程度の周波数成分が多く含まれる傾向にあり、ガス漏れ発生時に中程度の周波数成分がほとんど含まれない傾向にある。このため、第2実施形態に係る微分回路42は、圧力センサ45からの電気信号を入力して、第1実施形態と同様に第1トリガ信号を出力することとなる。
【0091】
一方、積分回路43に関しては、第1実施形態と同様に流量センサ41からの電気信号を入力する。圧力センサ45からの電気信号を積分回路43に入力してしまうと、配管が夜間に冷却された後に昼間に温められると圧力の上昇を起こし、積分回路43にて積算量が所定量に達してしまう。このため、積分回路43に圧力センサ45からの電気信号を入力させた場合、適切に第2トリガ信号を出力できなくなってしまう。よって、積分回路43に関しては、流量センサ41からの電気信号を入力する。
【0092】
なお、マイコン44は、第1実施形態と同様にして、ガバナ付きガス器具10の使用でないことを判断すると共に、ガス漏れでないことを判断する。また、マイコン44は、第1実施形態と同様に微分回路42の乗数を設定することで、ガバナ付きガス器具10の使用を判断してもよいし、ガバナ付きガス器具10の使用及びガバナ無しガス器具10の使用のどちらかであると判断してもよい。また、マイコン44は、微分回路42の乗数を設定することで、ガス漏れであると判断してもよいし、ガス漏れ及びガバナ無しガス器具10の使用のどちらかであると判断してもよい。
【0093】
このようにして、第2実施形態に係るガスメータ40及び判断方法によれば、圧力センサ45からの電気信号が所定の出力変化を超える場合、第1トリガ信号を出力すると共に、流量センサ41からの電気信号を積算して積算量が所定量に達した場合に、第2トリガ信号を出力し、第1トリガ信号及び第2トリガ信号の入力状況に応じて、ガバナ付きガス器具10が使用されていないか、ガス漏れが発生していないかを判断する。ここで、例えばガバナ付きガス器具10が使用されていない場合には、圧力波形及び流量波形に高周波成分が含まれない傾向にある。一方、ガス漏れが発生していない場合には、圧力波形及び流量波形に高周波成分が多く含まれる傾向にある。また、第1トリガ信号は、所定の出力変化が発生した場合に出力されることから、圧力波形に高い周波数成分が多く含まれているときに比較的早めに出力される。一方、第2トリガ信号は、全体的な流量増加が発生した場合に出力される。よって、このような第1トリガ信号と第2トリガ信号の出力状況から、ガス使用状況を判断することができ、消費電力を低減することができる。
【0094】
また、第1実施形態と同様に、ガバナ付きガス器具10の使用である可能性や、ガス漏れである可能性を排除でき、演算量を減らして消費電力を低減することができる。さらに、微分回路42及び積分回路43をマイコン44の外部アナログ回路として構成することで、一層演算量を減らして消費電力を低減することができる。
【0095】
次に、本発明の第3実施形態を説明する。図12は、本発明の第3実施形態に係るガスメータ40の構成図である。なお、図12において、図3に示すガスメータ40と同一又は同様の構成には、同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0096】
圧力スイッチ46は、ガスメータ40内の流路内に存在するガスの圧力変化に応じて第1トリガ信号を出力するものである。なお、本実施形態において圧力スイッチ46は、ガスメータ40内の流路に設けられているが、これ限らず、可能であれば本発明の構成を逸脱しない場合でガスメータ40の外部に存在する第1配管31側や第2配管32側に設置されていてもよい。
【0097】
また、圧力スイッチ46は、変位部46a、分岐管46b、バイパス流路46c及び圧力抑制部46d等を備えている。
【0098】
まず、分岐管46bは、ガス流路から分岐された配管であって、ガス流路から分岐された分岐空間47a,47bを形成している。また、変位部46aは、薄膜部材のダイヤフラムによって形成され、分岐空間47a,47bを一方側Aと他方側Bとに隔てる構成となっている。ここで、一方側Aとは、圧力変動と正対する正対側であって、ガス流路と正対する正対側ともいう。すなわち、この一方側Aは、バイパス流路46cを介することなくガス流路と空間を同じとする側となる。また、この変位部46aは、薄膜ダイヤフラムによって形成されていることから、ガス流路の圧力変動に応じて一方側Aと他方側Bとに変位可能となっている。
【0099】
バイパス流路46cは、一方側Aと他方側Bとを接続する流路である。圧力抑制部46dは例えばオリフィスである。オリフィスはバイパス流路46cの径よりも径の小さい孔を有した部材である。このオリフィスにより、一方側Aにおける圧力変化に基づく他方側Bでの圧力変化の発生を抑制することとなる。すなわち、ガス器具10の使用時など、ガス流路内の圧力が比較的急激に低下した場合には、一方側Aにおいて圧力が低下するが、他方側Bにおいては圧力抑制部46dによって圧力が低下しにくくなる。このため、変位部46aは一方側Aに変位することとなる。一方、少量のガス漏れ時など、圧力が緩やかに低下した場合には、一方側Aにおいて圧力が低下すると共に、他方側Bにおいても圧力が低下する。このため、変位部46aは変位しないか、又は僅かに変位する程度である。
【0100】
また、圧力スイッチ46は、変位部46aに第1接点46eを有している。この第1接点46eはグランドに接続されている。また、圧力スイッチ46は、第2接点46fを備えている。このため、ガス流路内のガス圧が急減して変位部46aが所定量一方側Aに変位した場合、第1接点46eと第2接点46fとが接触する。これにより、変位部46aが所定量一方側Aに変位した旨を示す第1トリガ信号がマイコン44に出力される。すなわち、圧力スイッチ46は、所定値未満のガス圧力の減少では第1トリガ信号を発生させず、所定値以上のガス圧力の減少により第1トリガ信号を発生させる。従って、圧力スイッチ46は、第1実施形態及び第2実施形態に示した微分回路42と同様の挙動を示すこととなり第1トリガ信号を発生させることとなる。
【0101】
なお、圧力スイッチ46は、所定値以上のガス圧力の減少により第1トリガ信号を発生させるが、これに限らず、所定値以上のガス圧力の増加によりトリガ信号を発生させるようになっていてもよい。また、圧力スイッチ46は、ガスメータ40内の流路に限らず、第1配管31側や第2配管32側に設置されてもよいが、この場合、分岐管46b及び圧力抑制部46d等についても第1配管31側や第2配管32側に設置されることは言うまでもない。
【0102】
また、積分回路43に関しては、上記実施形態と同様に流量センサ41からの電気信号を入力する。また、マイコン44は、上記実施形態と同様にして、ガバナ付きガス器具10の使用でないことを判断すると共に、ガス漏れでないことを判断する。
【0103】
また、圧力スイッチ46については、微分回路42の乗数を設定することと同様に、変位部46aの素材、バイパス流路46cの径、及びオリフィスの径などを調整することで、第1トリガ信号の発生について調整可能である。
【0104】
このようにして、第3実施形態に係るガスメータ40及び判断方法によれば、所定値以上のガス圧力の変化によって圧力スイッチ46が第1トリガ信号を出力すると共に、流量センサ41からの電気信号を積算して積算量が所定量に達した場合に、第2トリガ信号を出力し、第1トリガ信号及び第2トリガ信号の入力状況に応じて、ガス使用状況を判断する。ここで、例えばガバナ付きガス器具10が使用されていない場合には、圧力波形及び流量波形に高周波成分が含まれない傾向にある。一方、ガス漏れが発生していない場合には、圧力波形及び流量波形に高周波成分が多く含まれる傾向にある。また、第1トリガ信号は、所定の出力変化が発生した場合に出力されることから、圧力波形に高い周波数成分が多く含まれているときに比較的早めに出力される。一方、第2トリガ信号は、全体的な流量増加が発生した場合に出力される。よって、このような第1トリガ信号と第2トリガ信号の出力状況から、ガス使用状況を判断することができ、消費電力を低減することができる。
【0105】
また、第1実施形態と同様に、ガバナ付きガス器具10の使用である可能性や、ガス漏れである可能性を排除でき、演算量を減らして消費電力を低減することができる。さらに、積分回路43をマイコン44の外部アナログ回路として構成することで、一層演算量を減らして消費電力を低減することができる。
【0106】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよい。例えば、本実施形態において判断装置はガスメータ40の内部構成として存在しているが、これに限らず、判断装置をガスメータ40から取り出して構成してもよい。
【0107】
また、本実施形態では、図7に示すフローチャートが流量ゼロの場合に実行されるが、所定の流量値が発生している場合に実行されてもよい。この場合、マイコン44は、微分回路42又は圧力スイッチ46からの第1トリガ信号を入力すると共に、積分回路43からの第2トリガ信号を入力せず、所定の流量値から、積分回路43が第2トリガ信号を出力するのに相当する流量変化があった場合に、内部で第2トリガ信号を生成することとなる。
【0108】
また、マイコン44は、図7に示した例に限らず、他の方法によってガス漏れでないことを判断してもよい。例えば、第2トリガ信号を第1トリガ信号よりも先に入力した場合に、マイコン44はガス漏れでないと判断する。各家庭での配管等の相異から、流量波形や圧力波形のうち高周波成分や中周波成分が遅れて観測される場合があり得るため、このような場合には、ガス器具10の使用である可能性が高いため、ガス漏れでないと判断することとなる。
【0109】
さらに、本実施形態では、ガバナ付きガス器具10の使用でない等を判断するが、これに限らず、電子制御機能を有するガス器具10の使用であることや、電子制御機能を有するガス器具10の使用でないことを判断するようにしてもよい。ここで、電子制御機能とは、PIDなどの自動制御によりガス量を細かく調整することでガス燃焼量を制御する機能をいう。このため、電子制御機能を有するガス器具10の使用においては、一層高い周波数(例えば50Hz以上)が圧力波形や流量波形に重畳して、波形には高い周波数の振幅信号が重畳計測される。この場合であっても微分回路42の乗数を調整することで、判断することができる。
【0110】
加えて、本実施形態では、微分回路42の乗数を調整することで、ガバナ付きガス器具10の使用及びガバナ無しガス器具10の使用のどちらでもないことを判断してもよいし、ガバナ無しガス器具10の使用及びガス漏れのどちらでもないことを判断してもよい。
【0111】
さらに、本実施形態ではガス器具10の使用者が一度着火を行ったが、うまく着火できなった場合の着火ミスを判断するようにしてもよい。図13は、着火ミス時における流量及び圧力の波形を示すグラフである。
【0112】
図13に示すように、図13に示すように着火ミス時において流量波形は、比較的高い周波数成分を示す傾向にある。しかしながら、結局着火に失敗しているため、使用者は着火をやり直すこととなる。この結果、流量は増加を示すことなく、波形には、比較的高い周波数成分を含みつつも全体として流量増加を示さなくなる。従って、第1実施形態の場合、微分回路42から第1トリガ信号が出力されるものの、積分回路43からは第2トリガ信号が出力されなくなる。以上により、マイコン44は、1トリガ信号を入力してから所定時間以内に第2トリガ信号を入力しない場合、着火ミスであると判断することができる。
【0113】
また、図13に示すように着火ミス時において圧力波形は、比較的高い周波数成分を示す傾向にある。従って、第2及び第3実施形態の場合、第1トリガ信号が出力されるものの、第2トリガ信号が出力されなくなる。以上により、マイコン44は、1トリガ信号を入力してから所定時間以内に第2トリガ信号を入力しない場合、着火ミスであると判断することができる。
【0114】
また、太めの配管に大きな亀裂が生じたり太めの配管を切断してしまったりした場合には、大量のガスが流れることとなる。そして、大量のガスが流れたことにより、第1トリガ信号が出力されてしまう可能性がある。さらに、ガス漏れ発生時には第2トリガ信号が出力されることから、大量のガス漏れが発生した場合、第1トリガ信号が入力された後に第2トリガ信号が入力されてしまうことがある。従って、マイコン44は、第1トリガ信号が入力された後に第2トリガ信号が入力された場合、少量のガス漏れが発生していないと判断し、大量のガス漏れについては、後の処理(例えばステップS8の第2判断処理)によって判断するようにしてもよい。また、大量のガス漏れであっても第1トリガ信号が出力されないように、微分回路42の乗数を調整、又は、圧力スイッチ46の各構成を調整するようにしてもよい。これにより、マイコン44は、少量のガス漏れのみならず大量のガス漏れについても発生していないことを判断することができる。
【0115】
さらに、本実施形態において微分回路42及び積分回路43は、マイコン44の周辺アナログ回路によって構成されているが、これに限らず、マイコン44の1機能となっていてもよい。マイコン44の1機能であっても全体的な演算量が少なくなり、消費電力の低減につなげることができるからである。さらには、微分回路42及び積分回路43の少なくとも1つを外付けの小型マイコンとしてもよい。
【符号の説明】
【0116】
1…ガス供給システム
10…ガス器具
12…遮断弁
13…ガバナ
13a…ガバナ内弁
13b…ノズル
13c…外壁
13d…ガバナキャップ
13e…ダイヤフラム
13f…調整スプリング
13g…調整ネジ
13h…空気孔
14…バーナー
20…調整器
31…第1配管
32…第2配管
40…ガスメータ(判断装置)
41…流量センサ
42…微分回路(微分手段)
43…積分回路(積分手段)
44…マイコン(判断手段)
45…圧力センサ
46…圧力スイッチ
46a…変位部
46b…分岐管
46c…バイパス流路
46d…圧力抑制部
46e…第1接点
46f…第2接点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路内のガス流量に応じた電気信号を出力する流量センサと、
前記流量センサからの電気信号が所定の出力変化を超える場合、第1トリガ信号を出力する微分手段と、
前記流量センサからの電気信号を積算して積算量が所定量に達した場合に、第2トリガ信号を出力する積分手段と、
前記微分手段からの第1トリガ信号及び前記積分手段からの第2トリガ信号の入力状況に応じて、ガス使用状況を判断する判断手段と、
を備えることを特徴とする判断装置。
【請求項2】
流路内のガス圧力に応じた電気信号を出力する圧力センサと、
流路内のガス流量に応じた電気信号を出力する流量センサと、
前記圧力センサからの電気信号が所定の出力変化を超える場合、第1トリガ信号を出力する微分手段と、
前記流量センサからの電気信号を積算して積算量が所定量に達した場合に、第2トリガ信号を出力する積分手段と、
前記微分手段からの第1トリガ信号及び前記積分手段からの第2トリガ信号の入力状況に応じて、ガス使用状況を判断する判断手段と、
を備えることを特徴とする判断装置。
【請求項3】
前記判断手段は、マイコンの1機能として構成され、
前記微分手段及び前記積分手段の少なくとも一つは、マイコンの外部の周辺アナログ回路によって構成されている
ことを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の判断装置。
【請求項4】
所定値未満のガス圧力の変化では第1トリガ信号を発生させず、所定値以上のガス圧力の変化により第1トリガ信号を出力する圧力スイッチと、
流路内のガス流量に応じた電気信号を出力する流量センサと、
前記流量センサからの電気信号を積算して積算量が所定量に達した場合に、第2トリガ信号を出力する積分手段と、
前記圧力スイッチからの第1トリガ信号及び前記積分手段からの第2トリガ信号の入力状況に応じて、ガス使用状況を判断する判断手段と、
を備えることを特徴とする判断装置。
【請求項5】
前記判断手段は、マイコンの1機能として構成され、
前記積分手段は、マイコンの外部の周辺アナログ回路によって構成されている
ことを特徴とする請求項4に記載の判断装置。
【請求項6】
前記判断手段は、前記第1トリガ信号を入力した後に、前記第2トリガ信号を入力した場合、ガス漏れが発生していないと判断する
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の判断装置。
【請求項7】
前記判断手段は、前記第1トリガ信号を入力せず、前記第2トリガ信号を入力した場合、ガバナ付きガス器具の使用ではないと判断する
ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の判断装置。
【請求項8】
前記判断手段は、前記第1トリガ信号を入力せず、前記第2トリガ信号を入力し、かつ、前記第2トリガ信号入力後の規定時間内における平均ガス流量が規定量以上であった場合、ガス漏れであると判断する
ことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の判断装置。
【請求項9】
前記判断手段は、前記第1トリガ信号を入力してから所定時間以内に前記第2トリガ信号を入力しない場合、着火ミスであると判断する
ことを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の判断装置。
【請求項10】
流路内のガス流量に応じた電気信号を出力する流量センサからの電気信号が所定の出力変化を超える場合、第1トリガ信号を出力する微分工程と、
前記流量センサからの電気信号を積算して積算量が所定量に達した場合に、第2トリガ信号を出力する積分工程と、
前記微分工程にて出力される第1トリガ信号及び前記積分工程にて出力される第2トリガ信号の入力状況に応じて、ガス使用状況を判断する判断工程と、
を備えることを特徴とする判断方法。
【請求項11】
流路内のガス圧力に応じた電気信号を出力する圧力センサからの電気信号が所定の出力変化を超える場合、第1トリガ信号を出力する微分工程と、
流路内のガス流量に応じた電気信号を出力する流量センサからの電気信号を積算して積算量が所定量に達した場合に、第2トリガ信号を出力する積分工程と、
前記微分工程にて出力される第1トリガ信号及び前記積分工程にて出力される第2トリガ信号の入力状況に応じて、ガス使用状況を判断する判断工程と、
を備えることを特徴とする判断方法。
【請求項12】
所定値未満のガス圧力の変化では第1トリガ信号を発生させず、所定値以上のガス圧力の変化により第1トリガ信号を出力する圧力スイッチを有した判断装置におけるガス使用状況の判断方法であって、
流路内のガス流量に応じた電気信号を出力する流量センサからの電気信号を積算して積算量が所定量に達した場合に、第2トリガ信号を出力する積分工程と、
前記圧力スイッチからの第1トリガ信号及び前記積分手段からの第2トリガ信号の入力状況に応じて、ガス使用状況を判断する判断工程と、
を備えることを特徴とする判断方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−181128(P2010−181128A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−27728(P2009−27728)
【出願日】平成21年2月9日(2009.2.9)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】