説明

制御されたマクロ孔含有量を有するシリカ−アルミナをベースとする吸着剤上での、再循環させられる部分からの多芳香族化合物の吸着を包含する、再循環を伴う水素化分解法

【課題】再循環ループを有する水素化分解法において、触媒上に蓄積し、触媒能が失われるかあるいは触媒の全体的な失活につながる多芳香族化合物(PNA)の選択的、全体的または部分的な除去技術を提供する。
【解決手段】制御されたマクロ孔含有量を有するアルミナ−シリカをベースとする特定の吸着剤上での吸着によって、再循環させられるフラクションの少なくとも一部から多芳香族化合物を除去する工程を有する、再循環を伴う改良された水素化分解法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素化分解法の分野における多芳香族化合物(PNA)の除去に関する。
【背景技術】
【0002】
水素化分解法は、減圧蒸留からの重質の原料油(より高い沸点の炭化水素:一般に380℃)を転化する方法である。これは、高温および高水素圧力下に機能し、パラフィンおよびナフテン化合物を豊富に含み不純物濃度が非常に低いので非常に良好な品質の生成物を生じさせ得る。しかしながら、当該方法は、複数の不利益点を欠点として有する:水素消費に起因して、それは高価であり、かつ、それほど高い収率を有するわけではない(未転化原料油の30〜40%)。このため、再循環ループを用いることが有利であるようである。しかしながら、当該再循環の結果として、原料油の通過の間に形成される多芳香族化合物(PNA)が水素化分解触媒上に蓄積し、最終的には、この触媒上にコーク(coke)が形成されるに到る。これにより、触媒能(capacity)が失われるか、あるいは、触媒の全体的な失活さえ生じる(吸着部の被毒および細孔の閉塞)。さらに、これらの分子のサイズが大きくなる程、それらの溶解性が低くなる:所定の基準サイズを超えると、それらは配管、ポンプ等の装置の冷たい部分上に析出しかつ堆積し、交換器に熱伝達の問題を発生させ、それらの効果を低下させる。
【0003】
このような問題点を克服するため、最も簡単な解決方法は、再循環ループ上に脱集積パージ(deconcentration purge)を用いることである(特許文献1および2)。当該技術の不利益な点は、それにより、いくつかの転化点の部分で方法の収率が低下することである。したがって、提起された技術的な問題は、再循環させられる残渣からのPNAの選択的、全体的または部分的な除去を保証することになる代替となる技術を開発することである。
【0004】
多芳香族分子(非特許文献1)(すなわちPNA)は、芳香環の集まり(1以上の飽和の環も存在してよい)によって構成される分子であり、これは、アルキル基によって置換されてもされなくてもよい。それらの分子量が大きいため、それらはわずかに揮発性であるにすぎず、室温ではしばしば固体である。最終的に、それらの芳香族性が高いことおよび環上に極性置換基を有しないことの結果として、そのような分子の水またはアルカン中の溶解性は非常に低くなる。アルキル側鎖の数および長さが小さくなる場合にこの溶解性はさらに低下する。
【0005】
PNAは、それらの環数に応じて複数のカテゴリーに分類される場合がある:軽質のPNAは、2〜6個の環を有し;重質のPNAは、7〜10個の環を含有し、最終的には、11個を超える環を有するPNAがある。一般的に、水素化分解触媒への入口における原料油が主として軽質のPNAを含有することが知られている。水素化分解触媒上を通過した後、前記分子のより高い濃縮が観察されるが、水素化分解法に最も損傷を与える(触媒上および装置中の沈着/コーク形成の前駆体)分子である重質のPNAも存在する。これらの後者のものは、2以上の軽質のPNAの縮合、より大きい多環式化合物の脱水素化またはPNA上の既存の側鎖の環化およびこれに続く脱水素化によって形成され得る。続いて、重質のPNAの結合反応または二量化反応が起こり、これにより、11個を超える環を含有する化合物が形成され得る。
【0006】
前記重質のPNAの形成は原料油の組成に依存する(原料油が重質である程、それだけ原料油は重質なPNA前駆体をより多く含む)が、反応器の温度にも依存する。温度がより高い程、それだけ多くの脱水素および縮合が促進され、それ故に、重質なPNAの形成がより多くなる。転化度が高い場合に、この温度効果はより注目される。
【0007】
PNAの検出および分析のためにいくつかの選択肢が可能である(非特許文献2)。しかしながら、PNAの混合物が含まれることが多いので、最初に種々の分子を分離することが好ましい。この目的のために、液相クロマトグラフィが用いられる(HPLC)。次に、PNAの検出、同定およびアッセイが、UV吸収または蛍光のいずれかによって行われ得る。これらはPNAに特定の方法であり、このため、それらは高感度であるが、それらが、常時、全PNAを検出できるわけではない(中位の定量信頼性)。質量分析計またはIRによる直接的な分析も想定され得るが、それらは、実施および活用することがより困難である。
【0008】
再循環させられる部分からPNAを抜き出すいくつかの方法が既に文献に提案されている:析出およびこれに続くろ過、水素化および/または接触水素化分解または多孔質固体上への吸着である。
【0009】
PNAの析出は、凝集剤の添加(特許文献3)および/または温度降下(特許文献4)によって引き起こされ、これに続いて、デカンテーションまたは遠心分離および相分離が行われる。これは効果的な技術であるが、析出自体またはPNAのデカンテーションのいずれかのために必要な長い滞留時間および適用される低い温度におけるパラフィンの起こり得る結晶化のため、水素化分解法を連続的に機能させるのに適していないようである。
【0010】
PNAの接触水素化(特許文献5〜8)は、PNA含有量を低減させ得るが、これを完全に除去することはできない。さらに、それは、相当厳しい温度および圧力条件を必要とする。このため、それは、水素化分解法を連続的に機能させることには適合するが、現在では、非常に効果的な解決方法には相当しない。
【0011】
吸着は、効果的な方法であり、これは、固体および選択された操作条件に応じて、連続的に機能する水素化分解器に適合する。実際に、この関連で出願された大多数の特許によって証明されるように、これは最も頻繁に想定される解決方法である。それらは、いくつかの方法の構成を包含する。吸着帯域は、水素化分解器の前または後に配置されてよい。第一の場合、原料油は、PNA前駆体を除去するために前処理される(特許文献9)。しかしながら、PNAは主として水素化分解触媒上を通過する間に形成されることを考えると、この解決方法の利点は限られる。対照的に、分子が大きくなることおよび蓄積することを防ぐために触媒に再循環させられる部分からPNAを低減または除去までしようとすることは有用である。繰り返しになるが、吸着帯域のいくつかの位置は想定され得る:蒸留塔の前に位置する第一のSHPからの出口(特許文献10、11)または再循環させられる部分の全部または一部のみが通過する蒸留塔からの出口のライン上(特許文献12〜18)である。この第二の解決方法は最良である。分留帯域の前ではなく後に吸着帯域を位置づけることによって、処理されるべき原料油の容積ははるかにより小さい。これらの特許では、吸着帯域、特に、吸着剤の性質が多かれ少なかれ記述されている。概して、従来の既知の吸着剤の全てが挙げられる:シリカゲル、活性炭、活性または非活性アルミナ、シリカ/アルミナのゲル、クレー、ポリスチレンゲル、酢酸セルロース、モレキュラーシーブ(ゼオライト)。これらの全固体の中で、最も適切なものは、活性炭、アルミナおよび無定型シリカであるようである。さらに、選択された固体は可及的に高い細孔容積、BET比表面積および細孔直径を有さなければならないことがしばしば言及される。PNAについての吸着容量(adsorption capacity)を改善することを目的として硫酸により処理された多孔性の無定型シリカ等の特別に調製された固体の使用を示唆するものもある(特許文献16)。吸着剤にのみ関係する特許もある。特許文献19には、フッ素化物を含浸された活性炭の使用が提案され、特許文献20は、銅ベースの複合体を担持する無機材料に関係する。特許には、しばしば、吸着剤に対して想定され得る吸着剤床(固定床または移動床、2つの床を並列に有するシステム)の機能および再生様式が記載されているが、あまり多くは記述されていない。それは、主として、高温での気体流の通過(現場内および現場外の両方に適用可能な方法)または液体の通過による、吸着されたPNAの置換に関係する。第一の場合、より低い有効性の不活性ガスまたは効果的な酸化性ガス(燃焼技術)のいずれかを用いることが可能であるが、吸着剤の分解を引き起こし得る(特に活性担の場合)。水蒸気ストリッピングを想定することも可能である。これは、前述の2つの場合よりわずかに低い温度(370〜810℃)で操作することが可能である。特許文献21には、149〜371℃の温度で水素に富む気体を使用して、少なくとも部分的に芳香族化合物を脱着させることが提案されている。出口の流出液は、一旦16〜49℃に冷却されて、その後に、気−液分離器に送られ、液体は、多芳香族化合物からモノ化合物を分離するために蒸留塔に回収される。液体脱着剤に関して、それは、PNAを置換することが可能であるように固体と所定の親和性を有さなければならず、PNAを脱着するためにPNAと親和性を有さなければならない。このため、最良の溶媒は、芳香族化合物(トルエン、ベンゼン、エチルベンゼン、クメン、キシレン)の単独または混合物(FCC反応器からの軽質留分)である(特許文献14)。他のタイプの溶媒、例えば、ハロゲン化炭化水素溶媒、ケトン類、アルコール類または軽質の炭化水素等の単独または混合物も挙げられている(特許文献22)。
【0012】
吸着は、水素化分解装置においてPNAを除去するための最も適切な解決方法であるようであり、この浄化帯域の最適の位置は、蒸留塔からの出口の位置である。これは、この解決方法のみが工業スケールで実施されたという事実によって確認される(非特許文献3)。それは、下降流様式で機能する直列に設置された2つの144mの活性炭床を用いる。第一の床が処理されなければならない場合(簡単な逆洗(back flush)(3回だけ適用可能)または吸着剤の完全な更新)、第二の床が単独で機能する。当該方法の不利な点は、活性炭の再生を想定しておらず、このために高価であることである。
【0013】
この方法を経済的に有利なものにするために、PNAに良好な吸着容量を有すると共に再生可能な固体が見出されなければならない。活性炭は最も高い吸着容量を有する固体であるが、それらは、現在、溶媒溶出による以外では再生され得ない。必要とされる溶媒の量が非常に多いという事実は別に、溶媒を再利用するために補足的分離システムが用いられなければならない。このため、この解決方法は、余りにも高価過ぎて実施することができない。精油所の関連で、理想的な解決方法は、燃焼によって再生することができるようにすることであろう。しかしながら、この技術は、活性炭に適用可能ではない。このため、活性炭と比較して良好に実行するが、より耐久性がある固体が特定されなければならない。活性炭に対する代替としてこれまでに提案された固体は、おそらく細孔径が小さすぎる(モレキュラーシーブ)または表面積が狭すぎる(無定型のメソおよび/またはマクロ孔のシリカゲル、活性炭)という事実に起因して、比較的乏しい性能を有する。
【0014】
固体吸着剤は、コロネン/(他のコロネンよりは重質でないPNA、例えばピレン(芳香環数:4)、ペリレン(芳香環数:5))の選択性を1超、好ましくは2〜5とする大量のPNAを選択的に保持できなければならない。さらに、最適な仕方で吸着剤の多孔性を用いることが可能であるために、11.4Å(平坦な分子が、C−Cについて1.395Å、C−Hについて1.084Åおよび水素原子のファン・デル・ワールス半径について1.2Åの結合長さを有するとみなすことによって行われた文献(非特許文献4)からの計算値)より大きい、好ましくは20Åより大きい細孔を有する(細孔の中心に照準を定められたファン・デル・ワールスの原子半径に適合する)フリーの開口部を吸着剤が有することが必要である。この条件はゼオライト等のミクロ孔固体を除外している。最大の細孔を有するゼオライトであるホージャサイトが7.4Åの開口部を持つトンネルを有するからである。対照的に、比表面積、細孔容積およびしたがって全体的な吸着容量があまりに小さくなることを避けるために細孔の開口部は広すぎなくてもよい。比表面積は、一般に200m/g超でなければならず、好ましくは400m/g超である。これにより、シリカゲルおよびアルミナ(しばしば、200m/g未満のBET比表面積を有する)がPNAの吸着に適していない理由が説明される。最終的に、依然として空になっている細孔またはトンネルへの入口を分子の吸着が遮蔽する状況を避けるために、細孔ネットワークが枝分かれを有する固体を用いることが好ましい。これは、メソ構造型の材料または架橋されたクレーのいずれにも当てはまらない。これらの制約のため、活性炭を除いてPNAの吸着に最も適していると思われる固体は、無定型のメソ孔のシリカ−アルミナである。それらは活性炭より低い細孔容積、比表面積およびしたがって吸着容量を有するが、それらは、高温で調製され、したがって燃焼に耐久性があるという利点を有する。
【特許文献1】米国特許第3619407号明細書
【特許文献2】米国特許第4961839号明細書
【特許文献3】米国特許第5232577号明細書
【特許文献4】米国特許第5120426号明細書
【特許文献5】米国特許第4411768号明細書
【特許文献6】米国特許第4618412号明細書
【特許文献7】米国特許第5007998号明細書
【特許文献8】米国特許第5139644号明細書
【特許文献9】米国特許第4775460号明細書
【特許文献10】米国特許第4954242号明細書
【特許文献11】米国特許第5139646号明細書
【特許文献12】米国特許第4447315号明細書
【特許文献13】米国特許第4775460号明細書
【特許文献14】米国特許第5124023号明細書
【特許文献15】米国特許第5190633号明細書
【特許文献16】米国特許第5464526号明細書
【特許文献17】米国特許第6217746号明細書
【特許文献18】国際公開第02/074882号パンフレット
【特許文献19】米国特許第3340316号明細書
【特許文献20】欧州特許第0274432号明細書
【特許文献21】米国特許第5792898号明細書
【特許文献22】米国特許第4732665号明細書
【非特許文献1】ジュリウス・シェルツアー(Julius Scherzer)およびエイ・ジェイ・グルイア(A J Gruia)著,「ハイドロクラッキング・サイエンス・アンド・テクノロジー(Hydrocracking Science and Technology)」,ニューヨーク,マーシャル・ディッカー(Marcel Dekker)社,1996年,第11章,p.200−214
【非特許文献2】ミルトン・エル・リー(Milton L.Lee)、ミロス・ブイ・ノボトニ(Milos V Novotny)およびケイス・ディー・バーティー(Keith D Bartie)著,「アナリティカル・ケミストリ・オフ・ポリサイクリック・アロマティック・コンパウンズ(Analytical Chemistry of Polycyclic Aromatic Compounds)」,ロンドン,アカデミック・プレス(Academic Press)社,1981年
【非特許文献3】スチュアート・フレイザー(Stuart Frazer)およびウォーレン・シャーレイ(Warren Shirley)著,「PTQ」,1999年,第632巻,p.25−35
【非特許文献4】ヘンリー・ダブリュー・ハインズ・ジュニア(Henry W Haynes,Jr)、ジョン・エフ・パーチャー(Jon f Parcher)およびノーマン・イー・ハイマー(Norman E Heimer)著,「インダ・イング・ケム・プロセス・デス・デブ(Ind Eng Chem Process Des Dev)」,1983年,第22巻,p.409
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明により、4個を超える環を含む分子を吸着しやすく(accessible)するように高い比表面積および十分なサイズを有する細孔のために良好な吸着容量を有するシリカ−アルミナをベースとする吸着剤上での吸着によって、再循環させられる部分の少なくとも一部から多芳香族化合物を除去する工程を有する改良された水素化分解法が提案される。したがって、この発明により、原料油からPNAが効果的に除去され得、他方で、吸着剤は燃焼によって再生され得るので複数サイクルにわたって同一の吸着剤を用いるという可能性が提示される。さらに、これらの固体は、活性炭より高密度であるという利点を有し、これにより、同等の吸着剤塊(iso-adsorbent mass)においてそれらの吸着容量がより低いことはが部分的に相殺される。固体の消費量の増加に加えて、これにより、追加の投資、例えば、溶媒を再生する場合に必要である蒸留塔を用いることが回避され得る。
【0016】
より詳細には、本発明は、再循環を伴う改良された水素化分解法であって、シリカ(SiO)の質量含有量が5重量%超かつ95重量%以下であるアルミナ−シリカをベースとする(すなわち、アルミナおよびシリカを含む)吸着剤上での吸着によって少なくとも一部の再循環させられる部分から多芳香族化合物を除去する工程を有し、アルミナ−シリカは、
・ナトリウム含有量:0.03重量%未満;
・水銀多孔度測定法(porosimetry)によって測定された全細孔容積:0.45〜1.2ml/g;
・下記の多孔度:
i)40〜150Åの直径および80〜140Å(好ましくは80〜120Å)の平均細孔直径を有するメソ孔の容積が水銀多孔度測定法によって測定された全細孔容積の30〜80%を示す;
ii)500Åを超える直径を有するマクロ孔の容積が水銀多孔度測定法によって測定された全細孔容積の20〜80%を示す;
・BET比表面積:200〜550m/g;
・アルファ、ロー、カイ、エータ、ガンマ、カッパ、シータおよびデルタのアルミナからなる群に含まれる遷移アルミナの少なくとも1種の主要な特性(characteristic)ピークを少なくとも含むX線回折図:
を有する、方法に関する。
【0017】
本方法は、一般に、下記工程を包含する;
・水素化分解工程(水素化分解は、有利には、後述の「単流(once-through)」様式または「二段階」様式を用いて行われる);
・一般には常圧蒸留塔での、340℃を超えるT05留分点を有する未転化フラクションを(塔底部から)分離するための分離工程;および
・前記未転化フラクション(蒸留からの重質フラクション)中に含まれるPNAの全部または一部の液相吸着工程。
【0018】
好ましくは、吸着工程後に、吸着剤は燃焼による再生処理を経る。
【0019】
吸着工程は、再循環させられるフラクションの全てまたは一部のみについて行われてよく、連続式または回分式に機能してもよい。好ましくは、吸着工程は、再循環させられるフラクションの全体について行われる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
(工程1:水素化分解)
(原料油)
下記水素化分解法によって多種多様の原料油が処理されてよいが、それらは、一般的には少なくとも20容積%、通常には少なくとも80容積%の沸点が340℃超である化合物を含む。
【0021】
原料油は、例えば、LCO(light cycle oil−接触分解装置由来の軽質の軽油)、常圧留分、減圧留分、例えば直留原油蒸留またはFCC装置、コーキング装置、ビスブレーキング装置等の転化装置からの軽油、並びに潤滑基油の芳香族抽出のための装置からの原料油または潤滑基油の溶媒脱ろうからの原料油またはRAT(常圧残渣)および/またはRSV(減圧残渣)および/または脱アスファルト油の固定床または沸騰床における脱硫または水素化転化法由来の留分からの原料油であってよく、あるいは、原料油は、脱アスファルト油または上記に挙げられた原料油の任意の混合物であってよい。上記リストは、制限的ではない。原料油は、一般的には340℃超、より良好には370℃超の沸点T05を有し、すなわち、原料油中に存在する化合物の95%は、340℃超、より良好には370℃超の沸点を有する。
【0022】
水素化分解法において処理される原料油中の窒素含有量は、通常には500重量ppm超、好ましくは500〜10000重量ppm、より好ましくは700〜4000重量ppm、より一層好ましくは1000〜4000重量ppmである。水素化分解法において処理される原料油の硫黄含有量は、通常には0.01〜5重量%、好ましくは0.2〜4重量%、より一層好ましくは0.5〜2重量%である。
【0023】
原料油は、場合によっては、金属を含んでもよい。水素化分解法において処理される原料油の累積のニッケルおよびバナジウムの含有量は、好ましくは1重量ppm未満である。
【0024】
アスファルテンの含有量は、一般的には3000ppm未満、好ましくは1000ppm未満、より好ましくは200ppm未満である。
【0025】
(保護床(guard bed))
原料油が樹脂および/またはアスファルテンタイプの化合物を含む場合、最初に、原料油を、水素化分解または水素化処理の触媒とは異なる触媒または吸着剤の床に通過させることが有利である。
【0026】
用いられる触媒または保護床は、球または押出物の形状を有する。しかしながら、触媒は、有利には0.5〜5mm、より特定的には0.7〜2.5mmの直径を有する押出物の形態である。形状は、円筒型(中空その他)、捻れた円筒型、多葉型(例えば2、3、4または5葉)、リング状である。円筒型の形状が好ましいが、任意の他の形状が用いられてよい。
【0027】
原料油中の汚染物質および/または毒物の存在を改善するために、保護触媒は、さらに好ましい実施形態において、それらの空洞割合を増加させるためにより特異的な幾何学形状を有してもよい。これらの触媒の空洞割合は、0.2〜0.75である。それらの外径は、1〜35mmであってよい。制限されるわけではないが、特定の可能な形状は、中空円筒状、中空リング状、ラシヒ(Raschig)リング状、中空歯車型円筒状(hollow toothed cylinder)、中空円鋸型円筒状(hollow crenellated cylinder)、ペンタ−リング車輪状(penta-ring wheel)、多孔円筒状(multi-holed cylinder)等である。
【0028】
これらの触媒は、活性または不活性相を含浸されてもよい。好ましくは、触媒は、水添脱水素化相(hydrodehydrogenating phase)を含浸される。より好ましくは、CoMoまたはNiMo相が用いられる。
【0029】
これらの触媒は、マクロ孔性を有してもよい。保護層は、Norton−Saint−Gobainによって市販されるもの、例えばMacro Trap(登録商標)保護層であってもよい。保護層は、ACTファミリー:ACT077、ACT935、ACT961またはHMC841、HMC845、HMC941またはHMC945からのAxensによって市販されるものであってもよい。
【0030】
これらの触媒を高さが異なる少なくとも2つの異なる層内に置くことが特に有利であり得る。最も高い空洞率を有する触媒が、第一の触媒床(単数または複数)内の触媒反応器への入口において好適に用いられる。これらの触媒のために少なくとも2つの異なる反応器を用いることも有利であり得る。
【0031】
本発明の好ましい保護床は、HMCおよびACT961である。
【0032】
(操作条件)
操作条件、例えば温度、圧力、水素の再循環、毎時空間速度は、原料油の性質、生成物の所望の品質および精油所において利用可能な設備に応じて広く変動し得る。水素化分解/水素化転化の触媒または水素化処理の触媒は、水素の存在下に上記の原料油に接触させられるが、その際の温度は、一般的には200℃超、通常には250〜480℃、有利には320〜450℃、好ましくは330〜435℃であり、その際の圧力は、一般的には1MPa超、通常には2〜25MPa、好ましくは3〜20MPaであり、その際の空間速度は、一般的には0.1〜20h−1、好ましくは0.1〜6h−1、より好ましくは0.2〜3h−1であり、その際の導入される水素の量は、水素のリットル/炭化水素のリットルの容積比が一般的には80〜5000L/L、通常には100〜2000L/Lになるようにされる。
【0033】
水素化分解法において用いられるこれらの操作条件は、340℃未満、好ましくは370℃未満の沸点を有する生成物への1回通過当たりの転化率:一般的には15%超、好ましくは20〜95%を生じさせる。
【0034】
(実施形態)
本発明の触媒を用いる水素化分解および/または水素化転化法は、穏やかな水素化分解から高圧水素化分解までの圧力および転化の範囲にわたる。用語「穏やかな水素化分解」は、一般的には40%未満の中程度の転化をもたらし、低圧、一般的には2〜6MPaで操作する水素化分解を意味する。
【0035】
水素化分解の触媒は、単独で、単一もしくは複数の固定床において、1以上の反応器において、単流法と呼ばれる炭化水素の割付(layout)において、未転化フラクションの液体の再循環を伴うかまたは伴わずに、場合によっては、水素化分解触媒の上流に位置する水素化精製触媒と連動して用いられてよい。
【0036】
水素化分解触媒は、単独で、1以上の沸騰床式反応器において、単流水素化分解法において、未転化フラクションの液体の再循環を伴うかまたは伴わずに、場合によっては、水素化分解触媒の上流に位置する固定床式反応器または沸騰床式反応器内の水素化精製触媒と連動して用いられてもよい。
【0037】
沸騰床の稼働には、触媒の活性を安定に維持するために、使用済み触媒の抜き出しおよび新しい触媒の日毎の添加が伴う。
【0038】
2つの反応帯域間で中間分離を有する二段階の水素化分解法では、所与の工程において、水素化分解触媒は、1以上の反応器内で、水素化分解触媒の上流に位置する水素化精製触媒と組み合わせるか組み合わせないかで用いられてよい。
【0039】
(単流法)
単流の水素化分解法は、一般的に、最初の、原料油の深層性水素化脱窒および水素化脱硫を目的とする深層性水素化精製工程(deep hydrorefining)と、その後の、これを本来の水素化分解触媒に送る工程とを包含する。特に、後者の触媒がゼオライトを含む場合にこのようになされる。この原料油の深層水素化精製は、原料油のより軽質のフラクションへの限られた転化のみを生じさせ、不十分であり、したがって、より活性な水素化分解触媒により補足されなければならない。しかしながら、2タイプの触媒間で分離は行われないことに留意されるべきである。反応器からの流出物全体が、本来の水素化分解触媒上に注入され、この後に形成された生成物の分離のみが行われる。このバージョンの水素化分解である単流水素化分解は、未転化フラクションを原料油の深層転化用の反応器に再循環させる工程を包含するバリエーションを有する。
【0040】
(固定床の単流法)
例えばYゼオライトをベースとするゼオライトの水素化分解触媒の上流においてシリカ−アルミナをベースとする触媒が用いられる場合、高いシリカ重量含有率を有する触媒が有利に用いられる。すなわち、触媒組成物の一部を形成する担体のシリカの重量含有率は、20〜80%、好ましくは30〜60%を含む。それは、有利には、水素化精製触媒と関連して用いられてもよく、水素化精製触媒は、水素化分解触媒の上流に位置する。
【0041】
アルミナ−シリカまたはゼオライトをベースとする水素化分解触媒の上流で、内の同一の反応器内の相異なる触媒床においてまたは相異なる反応器において本発明の触媒が用いられる場合、転化は、一般的に(または好ましくは)50重量%未満であり、好ましくは40重量%未満である。
【0042】
水素化分解触媒は、ゼオライト触媒の上流または下流で用いられてよい。ゼオライト触媒の上流で、それは、PNAを分解し得る。
【0043】
(沸騰床単流法)
水素化分解触媒は、単独で1以上の反応器において用いられてよい。
【0044】
このような方法の関連で、有利には直列の複数の反応器が用いられてよく、水素化分解触媒を含む単数または複数の沸騰床式反応器は、固定または沸騰床における少なくとも1種の水素化精製触媒を含む1以上の反応器より前に置かれる。
【0045】
シリカ−アルミナをベースとする触媒が水素化精製触媒の下流で用いられる場合、この水素化精製触媒によってもたらされた原料油のフラクションの転化は、一般的には(または好ましくは)30重量%未満、好ましくは25重量%未満である。
【0046】
(中間分離を伴う固定床の単流法)
シリカ−アルミナをベースとする触媒はまた、水素化精製帯域、例えばホットフラッシュ(hot flash)によりアンモニアの部分的な除去を可能とする帯域および水素化分解触媒を含む帯域を含む単流水素化分解法において用いられてもよい。中間留分および可能性のあるオイルベースの製造のために炭化水素原料油を水素化分解するためのこの単流法は、水素化精製を含む少なくとも1つの第一反応帯域と、少なくとも1つの第二反応帯域とを含み、第二反応帯域において、第一反応帯域からの流出物の少なくとも一部の水素化分解が行われる。この方法はまた、第一帯域を離れる流出物からのアンモニアの不完全な分離を含む。この分離は、有利には、中間ホットフラッシュ(intermediate hot flash)を用いて行われる。第二反応帯域における水素化分解は、原料油中に存在する量より少ない量のアンモニアの存在下に、好ましくは窒素重量の1500重量ppm未満、より好ましくは1000重量ppm未満、より一層好ましくは800重量ppm未満で行われる。水素化分解触媒は、好ましくは、水素化分解触媒の上流に位置する水素化精製触媒と組み合わせるかまたは組み合わせないで、水素化分解反応帯域において用いられる。水素化分解触媒は、ゼオライト触媒の上流または下流で用いられてよい。ゼオライト触媒の下流で、PNAまたはPNA前駆体は、転化され得る。
【0047】
水素化分解触媒は、前処理物を転化するための第一反応帯域において単独かまたは本発明の触媒の上流に位置する従来の水素化精製触媒と関連するかのいずれかで、1以上の反応器内の1以上の触媒床において用いられてよい。
【0048】
(低活性触媒上での予備的水素化精製を伴う単流水素化分解法)
本発明の触媒は、
・原料油が、標準活性試験においてシクロヘキサン転化率が10重量%未満である少なくとも1種の水素化精製触媒と接触させられる第一の水素化精製帯域;
水素化精製工程からの流出物の少なくとも一部が、標準活性試験においてシクロヘキサン転化率が10重量%超である少なくとも1種のゼオライト水素化分解触媒と接触させられる第二の水素化分解反応帯域;
を含む水素化分解法において用いられてよく、本発明の触媒は、2つの反応帯域の少なくともいずれか中に存在する。
【0049】
水素化精製触媒の触媒容積の比率は、一般的には、全触媒容積の20〜45%を示す。
【0050】
第一反応帯域からの流出物は、少なくとも部分的に、好ましくは全体的に、前記方法の第二反応帯域に導入される。中間ガス分離は、上記のように行われてよい。
【0051】
第二反応帯域からの流出物は、ガスを分離するために最終的な分離(例えば常圧蒸留、場合によってはこれに続いて減圧蒸留を行う)を経る。少なくとも1種の残渣液フラクションが得られ、これは、必然的に、一般的には340℃超の沸点を有する化合物を含み、中間留分を生成する目的で、少なくとも一部が本発明の方法の第二反応帯域の上流、好ましくは、アルミナ−シリカをベースとする水素化分解触媒の上流に再循環させられてよい。
【0052】
340℃未満または370℃未満の沸点を有する化合物の転化率は、少なくとも50重量%である。
【0053】
(二段階法)
二段階水素化分解法は、単流法と同じく、原料油を水素化精製することを目的とする第一工程を含むが、原料油の転化を生じさせることも目的とし、この転化は、一般的には40〜60%程度である。第一工程からの流出物は、次いで、通常、中間分離と称され、未転化フラクションから転化生成物を分離することを目的とする分離(蒸留)を経る。二段階水素化分解法の第二工程では、第一工程において転化されない原料油のフラクションのみが処理される。この分離により、二段階水素化分解法は、中間留分(灯油+ディーゼル)において単流法より選択的であり得る。実際に、転化生成物の中間分離により、水素化分解触媒を用いる第二工程においてそれらをナフサおよびガスに「過剰分解」することが回避される。さらに、第二工程において処理される原料油の未転化フラクションは、一般に、ごく少量のNH並びに窒素含有有機化合物を、一般的には20ppm重量未満または10ppm重量未満でさえ含むことが留意されるべきである。
【0054】
単独または従来の水素化精製触媒と関連して触媒が用いられる場合と同一構成の固定床または沸騰床式の触媒床が、二段階法の第一工程において用いられてよい。水素化分解触媒は、ゼオライト触媒の上流または下流で用いられてよい。ゼオライト触媒の下流で、それはPNAまたはPNA前駆体を転化し得る。
【0055】
単流法および二段階水素化分解法の第一工程のために、本発明の触媒は、好ましくは非貴金属第VIII族元素をベースとするドーピングされた触媒、より好ましくはニッケルおよびタングステンをベースとする触媒であり、好ましいドーピング元素はリンである。
【0056】
二段階水素化分解法の第二工程において用いられる触媒は、好ましくは、第VIII族からの元素をベースとするドーピングされた触媒、より好ましくは白金および/またはパラジウムをベースとする触媒であり、好ましいドーピング元素はリンである。
【0057】
(工程2:蒸留塔における異なる留分の分離)
この工程は、水素化分解反応器からの流出物を異なるオイル留分に分離する工程からなる。高圧および中圧分離器を用いた液体および気体流の分離の後、液体流出物は、所望の蒸留間隔に従って留分を分離し、これを安定化するために常圧蒸留塔に注入される。
【0058】
本発明において処理されるべき未転化フラクションは、次いで、常圧蒸留塔の底部から得られる。より具体的には、本発明に従いリボイラから抜き出したものは340℃を超えるカットポイントT05を有するフラクションに相当する。
【0059】
それらの通常の沸騰温度(良好には340℃超)のために、本発明が除去することを提案する多芳香族化合物は、全て、蒸留塔の底部からのこの重質フラクション(重質残渣)中に濃縮されている。
【0060】
単流水素化分解法および中間分離を有する工程の場合、(340℃を超える沸点を有する)未転化部分は、一般的に、少なくとも部分的に再循環させられ、水素化精製触媒への入口または(好適には)水素化分解触媒のための入口のいずれかに再注入される。
【0061】
二段階水素化分解法の場合、(340℃を超える沸点を有する)未転化部分は、一般的に、少なくとも部分的に、第二水素化分解帯域に再循環させられ、かつ再注入される。
【0062】
(工程3:重質残渣の全部および一部を吸着帯域に通過させることによる重質残渣中に含まれるPNAの吸着)
この工程は、蒸留塔の底部、すなわち工程2由来の再循環させられるフラクション(380+フラクションすなわち重質残渣)の全部または一部中に含まれる多芳香族化合物の全部または一部を除去する工程からなる。その目的は、多芳香族化合物の含有量を、これを超えると水素化分解触媒の不活性化(水素化分解触媒の細孔ネットワーク中のPNAの蓄積に起因し、活性部位の被毒および/またはこれらの同一部位への接近の遮蔽を引き起こし得る不活性化)および本方法の低温部分上への沈着が観察されるであろう所定の臨界濃度より下に維持することである。このため、水素化分解触媒に再循環させられるフラクション中のPNAの濃度は制御される。したがって、場合によっては、処理されるべき原料油の容積を制限し、方法全体の費用を最小にすることが可能である。水素化分解触媒に最も損傷を与える分子は最小限で7の縮合環を有する化合物(コロネンから)であることを予備的な研究は示したので、主として、コロネンの濃度がモニタリングされるべきである。これは、パージが行われる場合には方法に再循環させられるフラクションの濃度、すなわち40ppmを超え得ない。この濃度は、触媒の不活性化を2℃/月に制限する。
【0063】
水素化分解器からの未転化原料油の少なくとも一部は、コロネン/他のより軽質のPNA(例えばピレン(芳香環数:4)、ペリレン(芳香環数:5))の選択性:一般的には1超、好ましくは2〜5をもって大量のPNAを選択的に保持することができる固体吸着剤に接触させられる。
【0064】
(本発明の方法において用いられ得る固体吸着剤の特徴)
吸着剤は、アルミナ−シリカをベースとし、該アルミナ−シリカは、以下の特徴を有する:
・シリカの百分率:5〜95重量%、好ましくは10〜80重量%、より好ましくは20〜60重量%、より一層好ましくは30〜50重量%;
・ナトリウム含有量:0.03重量%未満;
・水銀多孔度測定法により測定された全細孔容積:0.45〜1.2ml/g;
・下記の多孔度:
i)直径が40〜150Åであり、平均細孔直径が80〜140Å(好ましくは80〜120Å)であるメソ孔の容積が、全細孔容積の30〜80%、好ましくは40〜70%を示す;
ii)直径が500Å超、好ましくは1000〜10000Åであるマクロ孔の容積が、全細孔容積の20〜80%、好ましくは30〜60%を示し、より好ましくはマクロ孔の容積は、全細孔容積の少なくとも35%を示す;
・BET比表面積:200〜550m/g、好ましくは200〜500m/g、より好ましくは350m/g未満、より一層好ましくは200〜350m/g;
・ロー、カイ、カッパ、エータ、ガンマ、シータおよびデルタのアルミナからなる群に含まれる遷移アルミナの少なくとも1種の主要な特性ピークを少なくとも含み、好ましくは、ガンマ、エータ、シータおよびデルタのアルミナからなる群に含まれる少なくとも1種の遷移アルミナの少なくとも1種の主要な特性ピークを少なくとも含み、より好ましくは、ガンマおよびエータのアルミナの主要な特性ピークを少なくとも含み、より一層好ましくは、1.39〜1.40Åの「d」および1.97〜2.00Åの「d」を有するピークを含むX線回折図。
【0065】
好ましくは、アルミナ−シリカは、30〜50%のQサイト(ここでは、Siの1原子が、SiまたはAlの2つの原子および2つのOH基と結合する)を含み、さらに10〜30%のQサイト(ここでは、Siの1つの原子がSiまたはAlの3つの原子および1つのOH基と結合する)を含む。
【0066】
本発明の方法において用いられ得る吸着剤はまた、下記を含む:
・カチオン性の不純物:好ましくは0.1重量%未満、より好ましくは0.05重量%未満、より一層好ましくは0.025重量%未満の含有量(用語「カチオン性の不純物の含有量」は全アルカリ含有量を意味する);
・アニオン性の不純物:好ましくは1重量%未満、より好ましくは0.5重量%未満、より一層好ましくは0.1重量%未満の含有量;
・場合によっては、周期表の第VIB族および第VIII族からの元素によって形成される群から選択される少なくとも1種の水添脱水素化元素:単一種または複数種の第VIB族金属の重量含有量は、金属の形態または酸化物の形態で、1〜50重量%、好ましくは1.5〜35重量%、より好ましくは1.5〜30重量%であり、第VIII族金属の重量含有量は、金属の形態または酸化物の形態で、0.1〜30重量%、好ましくは0.2〜25重量%、より好ましくは0.2〜20重量%;
・場合によっては、触媒上に堆積されるドーピング元素としてのリン:0.01〜6%(用語「ドーピング元素」は、上記にアルミノケイ酸塩吸着剤を製造した後に導入される元素を意味する);場合によってはホウ素および/またはケイ素と組み合わされる;このため、リンおよびホウ素の組み合わせまたはリン、ホウ素およびケイ素の組み合わせが、ドーピング元素として用いられてよい;ホウ素および/またはケイ素の元素が触媒上に存在する場合、それらの酸化物の形態で計算されるホウ素およびケイ素の含有量:0.01〜6重量%、好ましくは0.1〜4重量%、より好ましくは0.2〜2.5重量%;
・場合によっては、少なくとも1種の第VIIB族元素(好ましくは例えばマンガン):酸化物または金属の形態の化合物の重量で0〜20重量%、好ましくは0〜10重量%の含有量;
・場合によっては、少なくとも1種の第VB族元素(好ましくは例えばニオブ):酸化物または金属の形態の化合物の重量で0〜40重量%、好ましくは0〜20重量%の含有量。
【0067】
本発明の好ましい実施形態では、触媒の担体は、アルミナ−シリカ単独によって構成される。
【0068】
本発明のさらなる実施形態では、担体は、1〜40重量%のバインダを含む。その場合担体は、アルミナ−シリカと、シリカ、アルミナ、クレー、酸化チタン、酸化ホウ素およびジルコニアによって形成される群から選択される少なくとも1種のバインダとの混合物に由来してもよい。
【0069】
吸着剤において、固体27Al MAS NMRによって測定される八面体AlVIの比率は、一般的には、50%超である。
【0070】
吸着剤はまた、ジルコニアおよびチタンによって形成される群から選択される少なくとも1種のプロモーター要素を低比率で含んでもよい。
【0071】
好ましくは、吸着剤は、合成後に下記に記載されるような水熱処理を経る。
【0072】
好ましくは、使用前に、吸着剤は、当業者に知られるあらゆる技術を用いて硫化工程を経る。
【0073】
本発明の吸着剤は、ゼオライトを含み得る(好ましくはゼオライトを含まない)。吸着剤中のゼオライトの全重量含有量は、一般的には、0〜30%、有利には0.2〜25%、好ましくは0.3〜20%、非常に好ましくは0.5〜20%、より一層好ましくは1〜10%である。
【0074】
導入されるゼオライトの量に応じて、吸着剤のX線回折図はまた、一般的な様式で、選択された単数種または複数種のゼオライトの特徴である主要ピークを含む。
【0075】
本発明のPNA除去法において用いられる吸着剤のシリカ−アルミナのベースの特徴化のための技術および特徴は、本出願人により2004年9月22日に出願された出願番号04/09997の「Catalyseur alumino-silicate dope et procede ameliore de traitement de charge hydrocarbonees」(ドーピングされたアルミノケイ酸塩触媒および改良された炭化水素原料油処理法)という名称の仏国特許出願に記載されている。ここで、この出願の内容は、本特許出願に参考として援用される。
【0076】
実用上の理由のために、吸着剤は、水素化分解帯域において用いられた触媒と同一であってよい。
【0077】
実用上の理由のために、吸着剤は、水素化精製触媒または再生された水素化分解触媒であってよい。
【0078】
(吸着法の特徴)
種々の設計が、吸着帯域のために用いられてよく、それは、直列または並列に配置された1以上の吸着剤の固定床によって構成されてよい。
【0079】
しかしながら、連続的な駆動が可能であるので、並列の2つの床の選択が最も賢明である。第一の床が飽和状態である場合、吸着を続けるために第二の床に切り換えられ、同時に、第一の床を再生または置換する。
【0080】
前記帯域が、回分式に機能するようにさせる、すなわち、PNAの濃度が固定の基準濃度を超えるまで開始しないようにさせることも可能である。これは、処理される原料油の容積を最小にし、したがって、操作費用を最小にすることができる。
【0081】
吸着帯域の良好な効率のために、操作条件は、一般的には50〜250℃、好ましくは100〜150℃の温度、1〜200バールの圧力(ある好ましい実施形態では、圧力は1〜10バールであり、別の好ましい実施形態では、圧力は30〜200バールである)および0.01〜500h−1、好ましくは0.1〜300h−1のHSVである(境界値が含まれる)。
【0082】
温度および圧力の選択は、原料油の適正な流れ(これは液状でなければならず、速度はあまり高すぎてはいけない)および吸着を最適化しつつPNAの吸着剤の細孔への良好な拡散を保証するようになされる。
【0083】
再循環させられるべき原料油中の多芳香族化合物の量は、一般的には、コロネンに対して0〜500ppm、ピリレンおよびピレンに対して0〜5000ppmである。吸着帯域からの出口において、含有量は、それぞれ、40、1000、1500ppmになる。分子は、UV吸収による検出に結び付けられた液相クロマトグラフィによって分析される。
【0084】
(工程4:燃焼による吸着帯域における吸着剤の再生)
この工程は、吸着帯域(工程3)の固体上に既に吸着されたPNAを除去し、固体を新しい吸着工程のために再使用可能にすることを目的とする。酸素0.1〜21%、好ましくは3〜6%を含有するNをベースとするガスの流れの中、400〜650℃、好ましくは500〜550℃の温度で吸着剤の燃焼再生が行われる。この操作は、現場外または現場内で行われてよい。
【0085】
好ましくは:
・最初に、窒素等の不活性ガスを用いて200〜300℃程度の温度でホットストリップが行われる;これは、並流方式および向流方式で行われてもよい;目的は、吸着剤の粒子および床の細孔中に捕捉された炭化水素および任意の痕跡量の水素を除去することである;
・5%程度の比率で窒素に添加された空気の存在下で燃焼する;前記混合気は、吸着剤に対する並流または向流として送られる;この操作は、最初に、吸着剤の細孔中に存在し得る炭化水素を除去するために400℃程度の温度で行われる(発熱反応);
・この操作は、全痕跡量の炭化水素が焼失することを確実に行うために約450℃で繰り返される;
・系が再度非熱的になった場合、温度が500〜550℃に上昇させられ、多孔質固体の表面上に吸着させられたPNAを燃焼するためにこの温度が約12時間にわたり維持される。
【0086】
メソ孔のシリカ−アルミナは、それを新生させなければならない前に約20回これらの処理を経てもよい。
【0087】
(図1の説明)
本発明は、図1に示されるように、第一の反応器への入口への再循環を伴う単流の実施形態において説明されるが、これに限定するものではない。飽和された化合物、樹脂および芳香族分子(モノ−、ジ−、トリ−芳香族およびPNA)によって構成される原料油がライン(1)により到達し、これはライン(2)により供給される水素流と混合され、ライン(3)により炭化水素反応器(4)に導入される。炭化水素器からの出口における原料油は、ライン(5)により高圧蒸留器(6)に導かれる。高圧蒸留器(6)は、気体および液体生成物を分離するように機能する。気体は、反応しなかった水素に対応し、ライン(8)および(3)により水素化分解反応器への入口に再注入される。液体生成物は、ライン(7)により分留帯域(9)に送られ、ここで、沸点の相違のために、分解された生成物(より軽質な化合物)が転換されなかったもの(380+残渣)から分離され、したがって、これは、塔の頂部からライン(10)を通じて回収される。これらの転換されなかったものは、塔の底部を構成し、ライン(11)を通じて排出される。場合によっては、このフラクションの一部は、ライン(12)を通じて除去される。他の部分は、ライン(13)により再循環ループに送られる。次に、固定されたPNA濃度についての臨界パラメータに応じて、原料油の全部または一部が、ライン(14)および(15)または(16)により吸着帯域(17)または(18)に送られる。この帯域からの出口において、PNA濃度が低いまたは0である流出物がライン(19)または(20)および(21)を通じて回収される。次いで、これは、ライン(22)に送られる。ライン(22)は、吸着処理されなかった原料油の一部を移送するものである。これら2つのフラクションの混合物は、ライン(23)を通じて新しい原料油を含むライン、すなわちライン(1)に移送される。
【0088】
(実施例)
(実施例1:シリカ−アルミナSA1の調製)
吸着剤SA1は下記のようにして得られた。
【0089】
吸着剤SA1は、Al60重量%およびSiO40重量%の化学組成を有するアルミナ−シリカであった。そのSi/Al比は0.6であった。そのナトリウム含有量は、100〜120重量ppm程度であった。押出物は、直径1.6mmの円筒状であった。その比表面積は345m/gであった。水銀多孔度測定法によって測定されたその全細孔容積は0.83cm/gであった。細孔分布は、二峰性であった。メソ孔の領域において、4〜15nmの間に7nmに最大を有する幅広いピークが観察された。担体について、50nmを超える最大直径を有するマクロ孔は、全細孔容積の約40%を示した。
【0090】
(実施例2:多孔質固体上への吸着による原料油からのPNA除去の比較)
用いられた原料油は、分留塔の底部からの残渣に対応する。その流動点は36℃程度であり、その15℃での密度は0.8357であった。それは、95重量%の飽和化合物(83.6重量%のパラフィン化合物および11.4重量%のナフテン化合物)、0.5重量%の樹脂および2.9重量%の芳香族化合物を含んでいた。芳香族化合物の2.6重量%はモノ芳香族化合物によって、その0.56重量%はジ芳香族化合物によって、その0.57重量%はトリ芳香族化合物によって、2704重量ppmはピレン(4環)によって、1215重量ppmはペリレン(5環)によって、59重量ppmはコロネン(7環)によって構成されていた。
【0091】
試験された多孔性の固体は、純粋なケイ酸性のMCM−41タイプのメソ孔の固体、SiOが架橋されたバイデライト(beidellite)タイプのクレー、シリカゲル、活性アルミナ、セルロース前駆体から物理的方法による活性炭および本発明のシリカ−アルミナである。それらが選ばれたのは、それらの比表面積が大きく、場合によってはそれらの直径が20〜80Åと大きいからであり、それらは、燃焼により再生される能力と結び付けられる。
【0092】
【表1】

【0093】
原料油は、固定床内で、30のHSVにより、150℃の温度および10バールの圧力で種々の吸着剤と接触させられた。
【0094】
それらのそれぞれについて、ペリレンおよびピレンに対するコロネンの吸着選択性が計算された。2種の分子iおよびjについての吸着剤の選択性は、下記のように定義される。
【0095】
【数1】

【0096】
i/jが1より大きい場合、これは、吸着剤が化合物jより化合物iを多く吸着することを意味する。本発明の場合、より軽質のPNAに対するコロネンの選択性が計算されたので、主目的が最も重質の分子を優先的に除去することであることからこれらの値は1より大きくなければならない。出口での原料油中のコロネンの濃度が入口での濃度の2/3を超えないように処理され得る吸着剤の最大容積当たりの原料油の容積も決定された。この比により、固体の吸着容量を概算することができる。これらの結果は、表2に示される。
【0097】
【表2】

【0098】
期待されるような最良の性能は、活性炭の性能であることが留意されるべきである。しかしながら、この特許明細書の関連で請求項に係る固体も、良好な選択性および吸着容量を有している。したがって、それは燃焼により連続して複数回再生され得るので、その使用は、活性炭の使用より経済的である。
【0099】
(実施例3:燃焼による吸着剤の再生)
吸着剤は、5%のOを含有するN流を550℃で用いる燃焼によって再生された。これらの操作の後、開始固体の能力の97%が回復した。
【0100】
この操作は、能力の30%を喪失する前に約10回行われ得る。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明に関する、第一の反応器への入口への再循環を伴う単流の実施形態を説明する図である。
【符号の説明】
【0102】
1 ライン
2 ライン
3 ライン
4 炭化水素反応器
5 ライン
6 高圧蒸留器
7 ライン
8 ライン
9 分留帯域
10 ライン
11 ライン
12 ライン
13 ライン
14 ライン
15 ライン
16 ライン
17 吸着帯域
18 吸着帯域
19 ライン
20 ライン
21 ライン
22 ライン
23 ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカ(SiO)の質量含有量が5重量%超かつ95重量%以下であるアルミナ−シリカをベースとする(すなわち、アルミナおよびシリカを含む)吸着剤上への吸着によって、再循環させられる部分の少なくとも一部から多芳香族化合物を除去する工程を有する、再循環を伴う改良された水素化分解法であって、該アルミナ−シリカは、
・ナトリウム含有量:0.03重量%未満;
・水銀多孔度測定法により測定された全細孔容積:0.45〜1.2ml/g;
・下記多孔度:
i)直径が40〜150Åであり、平均細孔直径が80〜140Åである
メソ孔の容積が、水銀多孔度測定法によって測定された全細孔容積の30〜80%を示し;
ii)直径が500Å超であるマクロ孔の容積が、水銀多孔度測定法によって測定された全細孔容積の20〜80%を示す;
・BET比表面積:200〜550m/g;および
・アルファ、ロー、カイ、エータ、ガンマ、カッパ、シータおよびデルタのアルミナからなる群に含まれる遷移アルミナの少なくとも1種の主要な特性ピークを少なくとも含むX線回折図
を有する、方法。
【請求項2】
・水素化分解工程;
・340℃超のT05カットポイントを有する未転化フラクションを分離するための分離工程;および
・分離工程からの前記未転化フラクション中に含まれるPNAの全部または一部の液相吸着工程
を連続して包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
水素化分解工程は、単流様式を用いて行われる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
水素化分解工程は、二段階様式を用いて行われる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
吸着剤は、吸着工程の後に燃焼再生処理を経る、請求項1〜4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
燃焼再生処理は
・窒素等の不活性ガスを用い、200〜300℃の温度でのホットストリップ;
・5%程度の比率で窒素に添加された空気の存在下、400℃程度の温度での燃焼;
・5%の程度の比率で窒素に添加された空気の存在下、450℃程度の温度での燃焼;および
・500〜550℃の高さへの昇温、その後の約12時間にわたる維持
を包含する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
吸着は、連続的に行われる、請求項1〜6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
吸着は、回分式に行われる、請求項1〜7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
吸着工程は、再循環させられるフラクションの全体について行われる、請求項1〜8のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
吸着工程は、50〜250℃の温度、1〜200バールの圧力、0.01〜500h−1のHSVで行われる、請求項1〜10のいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
吸着剤は、固体27Al MAS NMRスペクトル分析によって測定された八面体AlVIを50%超の比率で含む、請求項1〜9のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
アルミナ−シリカは、30〜50%のQサイト(Qサイトでは、1つのSi原子が2つのSiまたはAl原子と結合し、2つのOH基と結合する)を含み、10〜30%のQサイト(Qサイトでは、1つのSi原子が3つのSiまたはAl原子と結合し、1つのOH基と結合する)を含む、請求項1〜11のいずれか1つに記載の方法。
【請求項13】
吸着剤は、アルミナ−シリカによって構成される、請求項1〜12のいずれか1つに記載の方法。
【請求項14】
吸着剤は、1〜40重量%のバインダを含む、請求項1〜12のいずれか1つに記載の方法。
【請求項15】
吸着剤は、アルミナ−シリカと、シリカ、アルミナ、クレー、酸化チタン、酸化ホウ素およびジルコニアによって形成された群から選択された少なくとも1種のバインダとを混合することに由来する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
吸着剤は、カチオン性の不純物を0.1重量%未満の含有量で含む、請求項1〜15のいずれか1つに記載の方法。
【請求項17】
吸着剤は、アニオン性の不純物を1重量%未満の含有量で含む、請求項1〜16のいずれか1つに記載の方法。
【請求項18】
吸着剤は、使用前に水熱処理を経る、請求項1〜17のいずれか1つに記載の方法。
【請求項19】
吸着剤は、使用前に硫化処理を経る、請求項1〜18のいずれか1つに記載の方法。
【請求項20】
吸着剤は、水素化分解触媒と同一である、請求項1〜19のいずれか1つに記載の方法。


【図1】
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【公開番号】特開2006−291181(P2006−291181A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−63494(P2006−63494)
【出願日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(591007826)アンスティテュ フランセ デュ ペトロール (261)
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT FRANCAIS DU PETROL
【Fターム(参考)】