説明

制御された照明を用いた微小藻類の発酵

微小藻類を培養するためのバイオリアクターおよび方法を本明細書にて提供する。このバイオリアクターおよび方法は、光シグナルを提供することによる従属栄養性成長効率を改善するための特徴および改良を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本願は、その全開示事項があらゆる点ですべて参照することで本明細書に組み入れられる2009年9月18日出願の米国特許仮出願第61/243,593号、および2010年6月29日出願の米国特許仮出願第61/359,726号の利益を主張するものである。
【0002】
本発明は、微小藻類を例とする微生物の発酵の方法、手段、およびシステムに関する。本発明は、医薬、美容品、および食品産業において、ならびに微小藻類からのオイルおよびバイオ燃料の入手のために、用いることができる。
【背景技術】
【0003】
近年、脂質、炭化水素、オイル、ポリサッカリド、色素、およびバイオ燃料を含む種々の物質の微小藻類を適用した生産に関心が向けられてきている。
【0004】
微小藻類を成長させるための従来の方法の1つとしては、それを密閉遮光システムで従属栄養培養するものである。エネルギー源として光の代わりに有機炭素を用いることによる、従属栄養成長条件下での水生微小藻類の大スケールでの生産のための技術が開発されている。例えば、特許文献1および特許文献2には、クロレラ(Chlorella)、スポンジオコッカム(Spongiococcum)、およびプロトセカ(Prototheca)などの藻類からタンパク質および色素を従属栄養によって生産するためのプロセスが記載されている。加えて、藻類の従属栄養培養では、光独立栄養培養よりも非常に高い密度を得ることができる。
【0005】
しかしながら、上記の適用は、限られた数の微小藻類株のみが従属栄養条件で成長することができることから、すべての微小藻類に適用可能というわけではない。従属栄養条件で微小藻類を成長させる試みは、多くの場合、従属栄養条件で成長可能である株のスクリーニング、またはそのような条件下での成長を可能とする生物の遺伝子改変を含む。
【0006】
糖の適切な輸送システムを有し、従属栄養条件で自然に成長可能である微小藻類は、成長速度が遅いか、または商業的興味のある物質の産生が少ないことが多く、それは、藻類が、代謝の面を制御する環境シグナルとして太陽光を利用し、光合成によって作り出されるエネルギーを利用するように長い年月をかけて進化してきたからである。
【0007】
微小藻類を含む光合成生物のほとんどは、自身の成長および生存を最適化するための環境シグナルとして光を用いる。光シグナルは、赤/遠赤色光の光受容体(フィトクロム)および青色光の光受容体(クリプトクロムおよびNPH)を含む種々の光受容体で感知される。光は、生理学的および発達プロセスを制御する環境シグナルとして働き、無機炭素の還元を促進するエネルギーを供給する。しかし、特定の条件下では、光は、有害となる可能性も有する。光阻害が発生するのは、葉緑体によって吸収された光子束が非常に多い場合(強光条件下)、または光エネルギーの流入が消費能力を超える場合(細胞がエネルギー源として還元炭素を用いる混合栄養条件下)のいずれかである。混合栄養条件下において、光合成生物は、独立栄養条件よりも相当に低い光強度にて光阻害を示し、それは、カルビン回路のフィードバック機構により、光合成器官を通して吸収された電子を効率的に使用することができないからである。
【0008】
吸収された光エネルギーは、色素ベッド(pigment bed)内に励起されたクロロフィル分子を蓄積させ、光化学系を損傷させることがある。過剰な励起の結果として色素ベッド内に蓄積された励起されたクロロフィル分子はまた、スーパーオキシド、ヒドロキシルラジカル、および一重項酸素などの活性酸素種の発生も促進し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第3,142,135号
【特許文献2】米国特許第3,882,635号
【発明の概要】
【0010】
本明細書では、従属栄養成長する能力を有する微小藻類を培養するための方法が開示され、その方法は:従属栄養成長条件下にて、微小藻類を成長させるのに十分な時間、微小藻類をインキュベートすることを含み、ここで、従属栄養成長条件は、炭素源を含有する培地を含み、およびここで、従属栄養条件はさらに、低放射照度光も含む。
【0011】
ある態様では、微小藻類は、ボツリオコッカス(Botryococcus)株であり、炭素源は、グルコースであり、低放射照度光は、1〜10μmol光子m−2−1である。
【0012】
ある態様では、微小藻類は、ボツリオコッカススデチクス(Botryococcus sudeticus)株である。ある態様では、微小藻類は、ボツリオコッカス株である。ある態様では、微小藻類は、UTEX2629株である。ある態様では、微小藻類は、ボツリオコッカスブラウニー(Botryococcus braunii)株である。ある態様では、微小藻類は、UTEX2441株である。ある態様では、微小藻類は、ネオクロリスオレアブンダンス(Neochloris oleabundans)株である。ある態様では、微小藻類は、ネオクロリス株である。ある態様では、微小藻類は、UTEX1185株である。ある態様では、微小藻類は、コナミドリムシ(Chlamydomonas reinhardtii)株である。ある態様では、微小藻類は、クラミドモナス(Chlamydomonas)株である。ある態様では、微小藻類は、UTEX2243株である。ある態様では、微小藻類は、光受容体を有する。
【0013】
ある態様では、炭素源は、グルコースである。ある態様では、炭素源は、固定炭素源、グルコース、フルクトース、スクロース、ガラクトース、キシロース、マンノース、ラムノース、N−アセチルグルコサミン、グリセロール、フロリドシド、グルクロン酸、トウモロコシデンプン、解重合セルロース系物質、サトウキビ、テンサイ、ラクトース、乳清、およびモラセスから成る群より選択される。
【0014】
ある態様では、光は、天然の光源から発生される。ある態様では、光は、天然の太陽光である。ある態様では、光は、全スペクトル光、または特定波長光を含む。ある態様では、光は、人工光源から発生される。ある態様では、光は、人工光である。ある態様では、低放射照度光の強度は、0.01〜1μmol光子m−2−1である。ある態様では、低放射照度光の強度は、1〜10μmol光子m−2−1である。ある態様では、低放射照度光の強度は、10〜100μmol光子m−2−1である。ある態様では、低放射照度光の強度は、100〜300μmol光子m−2−1である。ある態様では、低放射照度光の強度は、100〜300μmol光子m−2−1である。ある態様では、低放射照度光の強度は、3〜4μmol/m−1光子、2〜3μmol/m−1光子、1〜2μmol/m−1光子、または3〜5μmol/m−1光子である。
【0015】
ある態様では、方法は、微小藻類から物質を生産することをさらに含む。ある態様では、この物質は、ポリサッカリド、色素、脂質、または炭化水素である。ある態様では、この物質は、炭化水素である。
【0016】
ある態様では、方法は、物質を回収することをさらに含む。ある態様では、方法は、物質を抽出することをさらに含む。
【0017】
ある態様では、方法は、物質を処理することをさらに含む。ある態様では、物質の処理によって、処理された物質が生産される。ある態様では、処理された物質は、燃料、バイオディーゼル、ジェット燃料、美容品、医薬剤、界面活性剤、および再生可能ディーゼルから成る群より選択される。
【0018】
ある態様では、上記方法での微小藻類の成長速度は、第二の従属栄養成長条件下にて微小藻類を成長させるのに十分な時間インキュベートされた第二の微小藻類よりも速く、ここで、この第二の従属栄養成長条件は、炭素源を含む成長培地を含み、およびここで、この第二の従属栄養成長条件は、低放射照度光を含まない。
【0019】
本明細書ではさらに、炭素源および低放射照度光の存在下にて複数の微小藻類細胞を配置することを含む、微小藻類を培養する方法も記載される。
【0020】
本明細書ではさらに、物質を製造する方法も記載され、その方法は:その物質を産生する能力を有する微小藻類の提供;培地中でのその微小藻類の培養であって、その培地は炭素源を含む、培養;その微小藻類への低放射照度光の適用;および、微小藻類にその乾燥細胞重量の少なくとも10%を物質として蓄積させること、を含む。ある態様では、方法は、その物質の回収もさらに含む。
【0021】
本明細書ではさらに、バイオリアクターシステムも記載され、それは:バイオリアクター;バイオリアクター内部に配置された炭素源含有培地;培地中に配置された従属栄養成長に適応した微小藻類;および、低放射照度光を発生させ、バイオリアクターに操作可能に取り付けられた光源、を含む。
【0022】
ある態様では、光源からの光は、全スペクトル光または特定波長光を含む。ある態様では、光源からの光は、バイオリアクターに操作可能に取り付けられた太陽熱集熱器によって集められた天然の太陽光を含み、ここで、その光は、太陽熱集熱器およびバイオリアクターに操作可能に取り付けられた光ファイバーを通してバイオリアクターの内部に送られる。ある態様では、光源からの光は、人工光を含み、ここで、その人工光は、発光ダイオード(LED)または蛍光灯によって発生される。ある態様では、システムは、LEDまたは蛍光灯に十分な電力供給を行う電源であって、ここでその電源はバイオリアクターに操作可能に取り付けられた、電源;ならびに、この電源に操作可能に取り付けられた調光器であって、ここでその調光器は、LEDまたは蛍光灯による発光の強度および波長を調節するように適合された、調光器、をさらに含む。ある態様では、光ファイバーは、透明な光保護構造で搭載される。ある態様では、LEDは、透明な光保護構造で搭載される。
【0023】
本発明のこのような、ならびにその他の特徴、局面、および利点は、以下の記述および添付の図面を参照することでより良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、バイオリアクターの1つの態様である。
【図2】図2は、イソプレノイド/カロテノイド経路を示す。
【図3】図3A〜Cは、白色、青色、および赤色光の条件下におけるUTEX1185の成長を示す。X軸は日数を示す。Gluはグルコースを意味する。
【図4】図4A〜Cは、白色、青色、および赤色光の条件下におけるUTEX2629の成長を示す。X軸は日数を示す。Gluはグルコースを意味する。
【図5】図5A〜Cは、白色、青色、および赤色光の条件下におけるUTEX2441の成長を示す。Gluはグルコースを意味する。
【図6】図6は、赤色光条件下におけるUTEX2441による脂質の産生を示す。LGは、明+グルコースを意味し;DGは、暗+グルコースを意味する。
【図7】図7は、白色光条件下におけるUTEX2243の成長を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
請求項および明細書で用いられる用語は、特に断りのない限り、以下に示すように定義される。
【0026】
「純粋培養」とは、他の生存生物の混入がない状態での生物の培養を意味する。
【0027】
「バイオディーゼル」とは、ディーゼルエンジンの燃料としての使用に適する、生物学的に生産された脂肪酸アルキルエステルである。
【0028】
「バイオマス」の用語は、細胞の成長および/または繁殖によって産生された物質を意味する。バイオマスは、細胞および/または細胞内容物、ならびに細胞外物質を含んでよい。細胞外物質としては、これらに限定されないが、細胞によって分泌された化合物が挙げられる。
【0029】
「バイオリアクター」とは、所望に応じて懸濁液中で行ってもよい細胞の培養が行われる密閉容器または部分密閉容器を意味する。図1は、バイオリアクターの一例である。「フォトバイオリアクター」とは、少なくともその一部が、少なくとも部分的に透明であるかまたは部分的に開放されていることによって光の透過が可能であり、そこで1もしくは2つ以上の微小藻類細胞が培養される容器を意味する。フォトバイオリアクターは、ポリエチレンバッグもしくはエルレンマイヤーフラスコの場合のように閉鎖されていてよく、または屋外の池の場合のように環境に対して開放されていてもよい。
【0030】
本明細書で用いる「触媒」とは、反応体の生成物への化学反応を、その生成物の一部分となることなく補助もしくは推進する能力を有する、分子または高分子複合体などの剤を意味する。従って、触媒は、反応速度を上昇させ、その後、触媒は、別の反応体に作用して生成物を形成させることができる。触媒は、一般的に、反応に要する全体の活性化エネルギーを低下させ、それによって反応をより早く、またはより低い温度で進行させる。従って、反応平衡に、より早く到達することができる。触媒の例としては、生物学的触媒である酵素、非生物学的触媒である熱、および化石燃料精製プロセスで用いられる金属触媒が挙げられる。
【0031】
「セルロース系物質」とは、セルロースの分解産物を意味し、グルコースおよびキシロースが挙げられ、ならびに所望に応じて、ジサッカリド、オリゴサッカリド、リグニン、フルフラール、およびその他の化合物などの追加の化合物が挙げられる。セルロース系物質の生成源の限定されない例としては、サトウキビバガス、テンサイパルプ、トウモロコシストーバー(corn stover)、木材チップ、大鋸屑、およびスイッチグラスが挙げられる。
【0032】
「共培養」、および「共培養する」などのその変形は、同一のバイオリアクター内に2もしくは3種類以上の細胞型が存在することを意味する。2もしくは3種類以上の細胞型は、いずれも微小藻類などの微生物であってよく、または異なる細胞型と共に培養される微小藻類細胞であってもよい。培養条件は、2種類以上の細胞型の成長および/または繁殖を促進するものであってよく、または、2種類以上の細胞のうちの一方、もしくはサブセットの成長および/または増殖を補助するが、残りの細胞成長はそのままに維持するものであってもよい。
【0033】
本明細書で用いる「補助因子」の用語は、酵素がその酵素活性を行うのに必要である、基質以外のいずれの分子をも意味する。
【0034】
「培養された」の用語、およびその変形は、意図される培養条件を用いることによる、1もしくは2つ以上の細胞の成長(細胞サイズ、細胞内容物、および/または細胞活性の増加)および/または繁殖(有糸分裂による細胞数の増加)の意図的な促進を意味する。成長および繁殖の両方の組み合わせは、増殖と称される場合がある。1もしくは2つ以上の細胞は、微小藻類などの微生物のものであってよい。意図される条件の例としては、定められた培地(pH、イオン強度、および炭素源などの特性が既知である)の使用、特定の温度、酸素圧、二酸化炭素レベル、およびバイオリアクター中での成長、が挙げられる。この用語は、最終的には化石化して地質学的原油を発生させる生物の自然の成長など、天然での、もしくはそれ以外の直接の人間の介入のない状態での微生物の成長、または繁殖は意味しない。
【0035】
本明細書で用いる「細胞溶解」の用語は、低浸透圧環境における細胞の溶解を意味する。細胞溶解は、細胞内部への過剰な水の浸透または動きによって引き起こされる(水分過剰)。細胞は、内部の水の浸透圧に耐えることができず、破裂する。
【0036】
本明細書で用いる「発現ベクター」または「発現コンストラクト」の用語は、宿主細胞内にて特定の核酸の転写を可能とする一連の指定された核酸要素と共に遺伝子組換え、または合成によって作製された核酸コンストラクトを意味する。発現ベクターは、プラスミド、ウィルス、または核酸断片の一部であってよい。通常、発現ベクターは、プロモーターと作動可能に連結された転写されるべき核酸を含む。
【0037】
「外来性遺伝子」とは、細胞に形質転換された核酸を意味する。形質転換細胞は、遺伝子組換え細胞と称される場合もあり、そこへ、1もしくは複数の追加の外来性遺伝子を導入してもよい。外来性遺伝子は、形質転換される細胞に対して異なる種からのものであってよく(すなわち異種性)、または同一種からのものであってもよい(すなわち相同性)。相同性遺伝子の場合、それは、遺伝子の内在性コピーに対して、細胞のゲノム内の異なる位置を占める。外来性遺伝子は、細胞内にて2つ以上のコピーで存在していてよい。細胞内にて、外来性遺伝子は、ゲノムへの挿入として、またはエピソーム分子として維持されていてよい。
【0038】
「外来的に提供される」とは、細胞培養物の培地に提供された分子について述べるものである。
【0039】
「固定炭素源」とは、周囲温度および圧力にて固体または液体の形態で存在する炭素を含有する1もしくは複数の分子を意味し、例えば有機分子である。
【0040】
「ホモジネート」とは、物理的に粉砕されたバイオマスを意味する。
【0041】
本明細書で用いる「炭化水素」とは:(a)水素と炭素原子のみを含有し、ここで、この炭素原子が共有結合によって連結して、直鎖状、分岐鎖状、環状、または部分環状バックボーンを形成し、そこに水素原子が結合している分子;または、(b)主として水素と炭素原子を含有するだけであり、1から4つの化学反応によって水素と炭素原子のみを含有するように変換可能である分子、を意味する。後者の限定されない例としては、1つの炭素原子と1つの水素原子との間に酸素原子を有してアルコール分子を形成する炭化水素、さらには単一の酸素原子を有するアルデヒドが挙げられる。アルコールを還元して炭素原子と水素原子のみを含有する炭化水素とする方法は公知である。炭化水素の別の例は、エステルであり、ここで、酸素酸の1つの(もしくは2つ以上の)水素原子が有機基で置換されている。炭化水素化合物の分子構造は、天然ガスの成分であるメタン(CH)の形態である最も単純なものから、原油に見られるアスファルテン、石油、およびビチューメンなどのある種の分子など、非常に重く非常に複雑なものまで様々である。炭化水素は、気体、液体、もしくは固体の形態、またはこれらの形態のいずれの組み合わせで存在してもよく、およびバックボーン中の隣接する炭素原子間に1もしくは2つ以上の二重または三重結合を有していてもよい。従って、この用語は、直鎖状、分岐鎖状、環状、または部分環状のアルカン、アルケン、脂質、およびパラフィンを含む。例としては、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、オクタン、トリオレイン、およびスクアレンが挙げられる。
【0042】
「水素:炭素比」の用語は、原子対原子に基づく、分子内の炭素原子に対する水素原子の比率を意味する。この比を用いて、炭化水素分子内の炭素および水素原子の数を示すことができる。例えば、この比率の最も高い炭化水素はメタンCH(4:1)である。
【0043】
「疎水性画分」とは、水相と比較して、疎水性相においてより溶解性が高い物質の部分または画分を意味する。疎水性画分は、実質的に水に不溶性であり、通常は非極性である。
【0044】
本明細書で用いる「脂質収率の増加」の表現は、例えば、培養物1リットルあたりの細胞の乾燥重量の増加、脂質を構成する細胞の割合の増加、または単位時間あたりの培養物体積1リットルあたりの脂質の全体量の増加によって、微生物培養物の生産性が上昇することを意味する。
【0045】
「誘導性プロモーター」とは、特定の刺激に反応して、作動可能に連結された遺伝子の転写を媒介するプロモーターである。
【0046】
本明細書で用いる「作動可能に連結している」の表現は、制御配列(通常はプロモーター)および連結された配列などの2つの配列間の機能的連結を意味する。プロモーターは、遺伝子の転写を媒介することができる場合、外来性遺伝子と作動可能に連結している。
【0047】
「in situ」の用語は、「原位置で」または「その元の位置で」という意味である。例えば、培養物は、触媒を分泌する第一の微小藻類、および基質を分泌する第二の微生物を含有していてよく、この場合、第一および第二の細胞型は、物質のさらなる分離または処理の必要なしに特定の化学反応が共培養にてin situで発生するのに必要である成分を産生する。
【0048】
「栄養素の制限濃度」とは、培養される生物の繁殖を制限する培養物中の濃度である。「栄養素の非制限濃度」とは、所定の培養期間にわたって、最大の繁殖を支持する濃度である。従って、所定の培養期間にて発生する細胞の数は、栄養素が非制限である場合と比較して、制限濃度の栄養素の存在下の方が少ない。栄養素は、最大の繁殖を支持する濃度を超える濃度で存在する場合、培養物中に「過剰に」存在すると称される。
【0049】
本明細書で用いる「リパーゼ」とは、水不溶性である脂質基質のエステル結合の加水分解を触媒する水溶性酵素である。リパーゼは、脂質のグリセロールおよび脂肪酸への加水分解を触媒する。
【0050】
「脂質」とは、非極性溶媒(エーテルおよびクロロホルムなど)に可溶性であり、水には比較的または完全に不溶性である炭化水素の一種である。脂質分子がこのような特性を有するのは、これが疎水性の性質である長い炭化水素テール部から主として構成されるためである。脂質の例としては、脂肪酸(飽和および不飽和);グリセリドまたはグリセロ脂質(モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、または中性脂肪、およびホスホグリセリド、またはグリセロリン脂質など);非グリセリド(スフィンゴ脂質、コレステロールおよびステロイドホルモンを含むステロール脂質、テルペノイドを含むプレノール脂質、脂肪アルコール、ワックス、およびポリケチド);ならびに複雑な脂質誘導体(糖結合脂質、または糖脂質、およびタンパク質結合脂質)が挙げられる。「脂肪」とは、「トリアシルグリセリド」と称される脂質のサブグループである。
【0051】
「低放射照度光」の用語は、従属栄養条件下にて著しい光阻害を回避して微生物に適用することができる光の放射照度であり、微生物の光活性化代謝(light‐activated metabolism)を開始するのに必要である光の放射照度を意味する。光活性化代謝としては、これらに限定されないが、生活環、サーカディアンリズム、細胞分裂、生合成経路、および輸送システムが挙げられる。
【0052】
本明細書で用いる「ライセート」の用語は、溶解した細胞の内容物を含有する溶液を意味する。
【0053】
本明細書で用いる「溶解」の用語は、多くの場合機械的、ウィルス性、または浸透圧性の機構による、細胞内容物の少なくとも一部を放出するのに十分である生物の細胞膜、および場合に応じては細胞壁の、その完全性を損なわせる破断を意味する。
【0054】
本明細書で用いる「溶解する」の用語は、細胞内容物の少なくとも一部を放出するのに十分であるように、生物または細胞の細胞膜を、および場合に応じてはその細胞壁を破壊することを意味する。
【0055】
「微小藻類」とは、葉緑体を含有し、場合に応じては光合成を行う能力を有していてもよい真核微生物、または光合成を行う能力を有する原核微生物を意味する。微小藻類には、固定炭素源をエネルギーとして代謝することができない偏性光独立栄養生物、ならびに固定炭素源のみで生き延びることができる従属栄養生物が含まれる。微小藻類は、細胞分裂の直後に姉妹細胞から分離したクラミドモナスなどの単細胞生物を意味する場合もあり、また例えばボルボックス(Volvox)など、2つの異なる細胞型を持つ単純な多細胞光合成微生物を意味する場合もある。「微小藻類」はまた、クロレラおよびドナリエラ(Dunaliella)などの細胞を意味する場合もある。「微小藻類」はまた、アグメネルム(Agmenellum)、アナベナ(Anabaena)、およびピロボトリス(Pyrobotrys)などの細胞−細胞接着を示すその他の光合成微生物も含む。「微小藻類」はまた、特定の渦鞭毛藻類種など、光合成を行う能力を喪失した偏性従属栄養微生物も含む。微小藻類のその他の例は以下で述べる。
【0056】
「微生物(microorganism)」および「微生物(microbe)」の用語は、本明細書にて交換可能に用いられ、微小藻類を例とする微小な単細胞生物を意味する。
【0057】
本明細書で用いる「浸透圧ショック」の用語は、浸透圧の急な減少による溶液中の細胞の破裂を意味する。浸透圧ショックは、そのような細胞の細胞成分を溶液中へ放出させるために誘発されることがある。
【0058】
「ポリサッカリド」(「グリカン」とも称される)は、グリコシド結合によって互いに連結されたモノサッカリドから構成される。セルロースは、特定の植物細胞壁を構成するポリサッカリドの一例である。セルロースからは、これを酵素によって解重合して、キシロースおよびグルコースなどのモノサッカリド、ならびにこれらより大きなジサッカリドおよびオリゴサッカリドを生成させることができる。
【0059】
バイオリアクターに関する「ポート」とは、気体、液体、および細胞などの物質の流入、または流出を可能とするバイオリアクターの開口部を意味する。ポートには、通常、バイオリアクターから延びる配管が接続されている。
【0060】
「プロモーター」とは、核酸の転写を指令する核酸制御配列のアレイとして定義される。本明細書で用いられるように、プロモーターは、ポリメラーゼII型プロモーターの場合のTATAエレメントなど、転写開始部位近傍に必要な核酸配列を含む。プロモーターはまた、所望に応じて、遠位のエンハンサーまたはリプレッサーエレメントを含んでよく、これらは、転写開始部位から数千塩基対も離れて位置し得る。
【0061】
本明細書で用いる「組換え」の用語は、例えば細胞、または核酸、タンパク質、もしくはベクターに関して用いられる場合、細胞、核酸、タンパク質、またはベクターが、外来性核酸もしくはタンパク質の導入、または天然の核酸もしくはタンパク質の改変によって修飾されたこと、または、細胞が、そのように修飾された細胞由来のものであることを示す。従って、例えば、組換え細胞は、細胞の天然(非組換え)の形態では見られない遺伝子を発現するか、または天然遺伝子を、それ以外の形で異常発現するか、過小発現するか、またはまったく発現しない。本明細書において「組換え核酸」の用語は、一般的には、例えばポリメラーゼおよびエンドヌクレアーゼを用いることによる核酸の操作により、天然では通常見られない形態にて元々はインビトロで形成された核酸を意味する。この方法により、種々の配列の作動可能な連結が得られる。従って、直鎖状の単離された核酸、または通常は結合しないDNA分子を連結させることでインビトロにて形成される発現ベクターはいずれも、本発明の目的のために、組換えと見なされる。組換え核酸は、作製され、宿主細胞または生物に再導入されると、非組換えにより、すなわち、インビトロの操作ではなく宿主細胞のインビボの細胞機構を用いて複製を行うが;しかし、そのような核酸は、一度組換えによって作製された場合、続いての複製は非組換えによるものではあるが、本発明の目的のために、やはり組換えと見なされることは理解される。同様に、「組換えタンパク質」は、組換え技術を用いて、すなわち、上述の組換え核酸の発現によって作製されるタンパク質である。
【0062】
本明細書で用いる「再生可能ディーゼル」の用語は、脂質の水素化および脱酸素化によって作製されるアルカン(C:10:0、C12:0、C:14:0、C16:0、およびC18:0など)を意味する。
【0063】
本明細書で用いる「音波処理」の用語は、音波エネルギーを用いることによって細胞などの生物物質を破壊するプロセスを意味する。
【0064】
「フルフラールの種」とは、2−フランカルボキシアルデヒド、または同一の基本的構造特性を保持するその誘導体を意味する。
【0065】
本明細書で用いる「ストーバー」とは、穀粒を収穫した後に残る穀物の乾燥した茎および葉を意味する。
【0066】
「廃水」とは、典型的には洗浄水、洗濯廃棄物、糞便、尿、およびその他の液体または半液体廃棄物を含有する水状の廃棄物である。
【0067】
本明細書および添付の請求項で用いられる、単数形である「一の(a)」、「一の(an)」、および「その(the)」は、文脈からそうでないことが明らかに示されない限りにおいて、複数の言及を含むことには留意されたい。
【0068】
微生物
適切な脂質または炭化水素を産生するいずれの生物種も用いることができるが、高いレベルの適切な脂質または炭化水素を自然に産生する微生物が好ましい。微生物による炭化水素の産生は、Metzger et al. Appl Microbiol Biotechnol (2005) 66: 486−496およびA Look Back at the U.S. Department of Energy’s Aquatic Species Program: Biodiesel from Algae, NREL/TP−580−24190, John Sheehan, Terri Dunahay, John Benemann and Paul Roessler (1998)にレビューされている。
【0069】
本発明で用いる微生物の選択に関わる考慮事項としては、オイル、燃料、および油脂化学製品の生産に適する脂質または炭化水素の産生に加えて:(1)細胞重量に対する割合としての高脂質含量;(2)成長の容易性;(3)遺伝子操作の容易性;および(4)バイオマス処理の容易性が挙げられる。特定の態様では、野生型または遺伝子操作微生物から、脂質が少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、もしくは少なくとも70%、またはそれを超える割合である細胞が得られる。好ましい生物は、従属栄養成長するか、または、そうするように、例えば本明細書で開示される方法を用いて操作することができる。形質転換の容易性、ならびに、微生物中で機能性である構成型および/または誘導型の選択可能なマーカーならびにプロモーターの利用可能性が、遺伝子操作の容易性に影響する。処理に関する考慮としては、例えば、細胞溶解のための効果的な手段の利用可能性を挙げることができる。
【0070】
1つの態様では、微生物としては、従属栄養条件下で成長し、細胞プロセス制御のためのシグナルとして光を用いることができる、天然または操作された微生物が挙げられる。これらとしては、藍藻植物門(Cyanophyta)、緑藻植物門(Chlorophyta)、紅藻植物門(Rhodophyta)、クリプト植物門(Cryptophyta)、クロララクニオン植物門(Chlorarachniophyta)、ハプト植物門(Haptophyta)、ユーグレナ植物門(Euglenophyta)、不等毛植物門(Heterokontophyta)、および珪藻類(Diatoms)などの藻類を挙げることができる。
【0071】
藻類
本発明の1つの態様では、微生物は、微小藻類である。本発明に従って用いることができる微小藻類の限定されない例を以下に記載する。
【0072】
より詳細には、藍藻綱(Cyanophyceae)を含む藍藻植物門に属する藻類の分類群(algal taxa)は、原核生物上界(Prokaryotae)であり、酸素発生型の光合成能力を有し、以下の目および科に分類されるものである。クロオコッカス目(Chroococcales)は、ミクロキスティス科(Microcystaceae)、クロオコッカス科(Chroococcaceae)、エントフィサリス科(Entophysalidaceae)、カマエシフォン科(Chamaesiphoniaceae)、デルモカルペラ科(Dermocarpellaceae)、キセノコッカス科(Xenococcaceae)、およびヒドロコッカス科(Hydrococcaceae)を含み、ユレモ目(Oscillatoriales)は、ボルジア科(Borziaceae)、シュードアナベナ科(Pseudanabaenaceae)、シゾトリックス科(Schizotrichaceae)、ホルミジウム(Phormidiaceae)、ユレモ科(Oscillatoriaceae)、およびホモエオスリックス科(Homoeotrichaceae)を含み、ネンジュモ目(Nostocales)は、スキトネマ科(Scytonemataceae)、ミクロカエテ科(Microchaetaceae)、リブラリア科(Rivulariaceae)、およびネンジュモ科(Nostocaceae)を含み、スティゴネマ目(Stigonematales)は、クロログロエオプシス科(Chlorogloeopsaceae)、カプソシラ科(Capsosiraceae)、スティゴネマ科(Stigonemataceae)、フィッシェレラ科(Fischerellaceae)、ボルジネマ科(Borzinemataceae)、ノストコプシス科(Nostochopsaceae)、およびマスチゴクラズス科(Mastigocladaceae)を含む。
【0073】
緑藻植物門は、緑藻綱(Chlorophyceae)、プラシノ藻綱(Prasinophyceae)、ペディノ藻綱(Pedinophyceae)、トレボウクシア藻綱(Trebouxiophyceae)、およびアサオ藻綱(Ulvophyceae)を含む。より詳細には、緑藻綱は、アセタブラリア(Acetabularia)、アシクラリア(Acicularia)、アクチノクロリス(Actinochloris)、アンフィクリコス(Amphikrikos)、アナジオメネ(Anadyomene)、アンキストロデスムス(Ankistrodesmus)、アンキラ(Ankyra)、アファノカエテ(Aphanochaete)、アスコクロリス(Ascochloris)、アステロコッカス(Asterococcus)、アステロモナス(Asteromonas)、アストレホメネ(Astrephomene)、アトラクトモルファ(Atractomorpha)、アキシロコッカス(Axilococcus)、アキシロスファエラ(Axilosphaera)、バシクラミス(Basichlamys)、バシクラジア(Basicladia)、ビヌクレアリア(Binuclearia)、ビペジノモナス(Bipedinomonas)、ブラストフィサ(Blastophysa)、ボエルゲセニア(Boergesenia)、ボードレア(Boodlea)、ボロジネラ(Borodinella)、ボロジネロプシス(Borodinellopsis)、ボツリオコッカス(Botryococcus)、ブラチオモナス(Brachiomonas)、ブラクテアコッカアス(Bracteacoccus)、ブルボカエテ(Bulbochaete)、カエスピテラ(Caespitella)、カプソシホン(Capsosiphon)、カルテリア(Carteria)、セントロスファエラ(Centrosphaera)、カエトモルファ(Chaetomorpha)、カエトネマ(Chaetonema)、カエトペルチス(Chaetopeltis)、カエトフォラ(Chaetophora)、カルマシア(Chalmasia)、カマエトリコン(Chamaetrichon)、カラシオクロリス(Characiochloris)、カラシオシフォン(Characiosiphon)、カラシウム(Characium)、クラミデラ(Chlamydella)、クラミドボトリス(Chlamydobotrys)、クラミドカプサ(Chlamydocapsa)、クラミドモナス(Chlamydomonas)、クラミドポジウム(Chlamydopodium)、クロラノマラ(Chloranomala)、クロロシドリジオン(Chlorochydridion)、クロロキトリウム(Chlorochytrium)、クロロクラズス(Chlorocladus)、クロロクロステル(Chlorocloster)、クロロコッコプシス(Chlorococcopsis)、クロロコッカム(Chlorococcum)、クロロゴニウム(Chlorogonium)、クロロモナス(Chloromonas)、クロロフィサリス(Chlorophysalis)、クロロサルシナ(Chlorosarcina)、クロロサルシノプシス(Chlorosarcinopsis)、クロロスファエラ(Chlorosphaera)、クロロスファエロプシス(Chlorosphaeropsis)、クロロテトラエドロン(Chlorotetraedron)、クロロテシウム(Chlorothecium)、コダテラ(Chodatella)、コリシスチス(Choricystis)、クラドホラ(Cladophora)、クラドホロプシス(Cladophoropsis)、クロニオホラ(Cloniophora)、クロステリオプシス(Closteriopsis)、コッコボトリス(Cocobotrys)、コエラストレラ(Coelastrella)、コエラススロプシス(Coelastropsis)、コエラストルム(Coelastrum)、コエノクロリス(Coenochloris)、コレオクラミス(Coleochlamys)、コロナストルム(Coronastrum)、クルシゲニア(Crucigenia)、クルシゲニエラ(Crucigeniella)、クテノクラズス(Ctenocladus)、シリンドロカプサ(Cylindrocapsa)、シリンドロカプソプシス(Cylindrocapsopsis)、シリンドロシスチス(Cylindrocystis)、シモポリア(Cymopolia)、シストコッカス(Cystococcus)、シストモナス(Cystomonas)、ダクチロコッカス(Dactylococcus)、ダシクラズス(Dasycladus)、デアソニア(Deasonia)、デルベシア(Derbesia)、デスマトラクツム(Desmatractum)、デスモデスムス(Desmodesmus)、デスモテトラ(Desmotetra)、ディアカンソス(Diacanthos)、ディセルラ(Dicellula)、ディクロステル(Dicloster)、ディクラノカエテ(Dicranochaete)、ディクチオクロリス(Dictyochloris)、ディクチオコッカス(Dictyococcus)、ディクチオスファエリア(Dictyosphaeria)、ディクチオスファエリウム(Dictyosphaerium)、ジジモシスティス(Didymocystis)、ジジモゲネス(Didymogenes)、ジラビフィルム(Dilabifilum)、ジモルホコッカス(Dimorphococcus)、ジプロスファエラ(Diplosphaera)、ドラパルナルジア(Draparnaldia)、ドゥナリエラ(Dunaliella)、ジスモルホコッカス(Dysmorphococcus)、エチノコレウム(Echinocoleum)、エラカトスリックス(Elakatothrix)、エナラックス(Enallax)、エントクラジア(Entocladia)、エントランシア(Entransia)、エレモスファエラ(Eremosphaera)、エットリア(Ettlia)、エウドリナ(Eudorina)、ファシクロクロリス(Fasciculochloris)、フェルナンジネラ(Fernandinella)、ホリクラリア(Follicularia)、ホッテア(Fottea)、フランセイア(Franceia)、フリエドマンニア(Friedmannia)、フリチエラ(Fritschiella)、フソーラ(Fusola)、ゲミネラ(Geminella)、グロエオコッカス(Gloeococcus)、グロエオシスティス(Gloeocystis)、グロエオデンドロン(Gloeodendron)、グロエオモナス(Gloeomonas)、グロエオチラ(Gloeotila)、ゴレンキニア(Golenkinia)、ゴングロシラ(Gongrosira)、ゴニウム(Gonium)、グラエシエラ(Graesiella)、グラヌロシスチス(Granulocystis)、ギオルフィアナ(Gyorffiana)、ヘマトコッカス(Haematococcus)、ハゼニア(Hazenia)、ヘリコジクチオン(Helicodictyon)、ヘミクロリス(Hemichloris)、ヘテロクラミドモナス(Heterochlamydomonas)、ヘテロマスチクス(Heteromastix)、ヘテロテトラシスチス(Heterotetracystis)、ホルミジオスポラ(Hormidiospora)、ホルミジウム(Hormidium)、ホルモチラ(Hormotila)、ホルモチロプシス(Hormotilopsis)、ヒアロコッカス(Hyalococcus)、ヒアロジスカス(Hyalodiscus)、ヒアロゴニウム(Hyalogonium)、ヒアロラフィジウム(Hyaloraphidium)、ヒドロジクチオン(Hydrodictyon)、ヒプノモナス(Hypnomonas)、イグナチウス(Ignatius)、インテルフィルウム(Interfilum)、ケントロスファエラ(Kentrosphaera)、ケラトコッカス(Keratococcus)、ケルマチア(Kermatia)、キルキネリエラ(Kirchneriella)、コリエラ(Koliella)、ラゲルヘイミア(Lagerheimia)、ラウトスファエリア(Lautosphaeria)、レプトシロプシス(Leptosiropsis)、ロボシスチス(Lobocystis)、ロボモナス(Lobomonas)、ローラ(Lola)、マクロクロリス(Macrochloris)、マルバニア(Marvania)、ミクラクチニウム(Micractinium)、ミクロジクチオン(Microdictyon)、ミクロスポラ(Microspora)、モノラフィジウム(Monoraphidium)、ムリエラ(Muriella)、ミコナステス(Mychonastes)、ナノクロラム(Nanochlorum)、ナウトコッカス(Nautococcus)、ネグレクテラ(Neglectella)、ネオクロリス(Neochloris)、ネオデスムス(Neodesmus)、ネオメリス(Neomeris)、ネオスポンギオコッカム(Neospongiococcum)、ネフロクラミス(Nephrochlamys)、ネフロシチウム(Nephrocytium)、ネフロジエラ(Nephrodiella)、オエドクラジウム(Oedocladium)、オエドゴニウム(Oedogonium)、オーシステラ(Oocystella)、オーシスチス(Oocystis)オーネフリス(Oonephris)、オウロコッカス(Ourococcus)、パチクラデラ(Pachycladella)、パルメラ(Palmella)、パルメロコッカス(Palmellococcus)、パルメロプシス(Palmellopsis)、パルモジクチオン(Palmodictyon)、パンドリナ(Pandorina)、パラドキシア(Paradoxia)、パリエトクロリス(Parietochloris)、パスケリナ(Pascherina)、パウルスクルジア(Paulschulzia)、ペクトジクチオン(Pectodictyon)、ペジアストルム(Pediastrum)、ペジノモナス(Pedinomonas)、ペジノペラ(Pedinopera)、ペルクルサリア(Percursaria)、ファコツス(Phacotus)、ファエオフィラ(Phaeophila)、フィソシチウム(Physocytium)、ピリナ(Pilina)、プランクトネマ(Planctonema)、プランクトスファエリア(Planktosphaeria)、プラチドリナ(Platydorina)、プラチモナス(Platymonas)、プレオドリナ(Pleodorina)、プレウラストルム(Pleurastrum)、プレウロコッカス(Pleurococcus)、プロエオチラ(Ploeotila)、ポリエドリオプシス(Polyedriopsis)、ポリフィサ(Polyphysa)、ポリトマ(Polytoma)、ポリトメラ(Polytomella)、プラシノクラズス(Prasinocladus)、プラシノコッカス(Prasiococcus)、プロトデルマ(Protoderma)、プロトシフォン(Protosiphon)、シューデンドクロニオプシス(Pseudendocloniopsis)、シュードカラシウム(Pseudocharacium)、シュードクロレラ(Pseudochlorella)、シュードクロロコッカム(Pseudochlorococcum)、シュードコッコミキサ(Pseudococcomyxa)、シュードジクチオスファエリウム(Pseudodictyosphaerium)、シュードジジモシスチス(Pseudodidymocystis)、シュードキルクネリエラ(
Pseudokirchneriella)、シュードプレウロコッカス(Pseudopleurococcus)、シュードシゾメリス(Pseudoschizomeris)、シュードシュロエデリア(Pseudoschroederia)、シュードスチココッカス(Pseudostichococcus)、シュードテトラシスチス(Pseudotetracystis)、シュードテトラドロン(Pseudotetradron)、シュードトレボウクシア(Pseudotrebouxia)、プテロモナス(Pteromonas)、プルクラスファエラ(Pulchrasphaera)、ピラミモナス(Pyramimonas)、ピロボトリス(Pyrobotrys)、クアドリグラ(Quadrigula)、ラジオフィルム(Radiofilum)、ラジオスファエラ(Radiosphaera)、ラフィドセリス(Raphidocelis)、ラフィドネマ(Raphidonema)、ラフィドネモプシス(Raphidonemopsis)、リゾクロニウム(Rhizoclonium)、ロパロソレン(Rhopalosolen)、サプロカエテ(Saprochaete)、セネデスムス(Scenedesmus)、スキゾクラミス(Schizochlamys)、シゾメリス(Schizomeris)、シクロエデリア(Schroederia)、シクロエデリエラ(Schroederiella)、スコチエロプシス(Scotiellopsis)、シデロシストプシス(Siderocystopsis)、シフォノクラズス(Siphonocladus)、シロゴニウム(Sirogonium)、ソラストルム(Sorastrum)、スペルマトゾプシス(Spermatozopsis)、スファエレラ(Sphaerella)、スファエレロシスチス(Sphaerellocystis)、スファエレロプシス(Sphaerellopsis)、スファエロシスチス(Sphaerocystis)、スファエロプレア(Sphaeroplea)、スピロタエニア(Spirotaenia)、スポンギオクロリス(Spongiochloris)、スポンギオコッカム(Spongiococcum)、ステファノプテラ(Stephanoptera)、ステファノスファエラ(Stephanosphaera)、スチゲオクロニウム(Stigeoclonium)、ストルベア(Struvea)、テトメモルス(Tetmemorus)、テトラバエナ(Tetrabaena)、テトラシスチス(Tetracystis)、テトラデスムス(Tetradesmus)、テトラエドロン(Tetraedron)、テトララントス(Tetrallantos)、テトラセルミス(Tetraselmis)、テトラスポラ(Tetraspora)、テトラストルム(Tetrastrum)、トレウバリア(Treubaria)、トリプロセロス(Triploceros)、トロキスシア(Trochiscia)、トロキスシオプシス(Trochisciopsis)、ウルバ(Ulva)、ウロネマ(Uronema)、バロニア(Valonia)、バロニオプシス(Valoniopsis)、ベントリカリア(Ventricaria)、ビリジエラ(Viridiella)、ビトレオクラミス(Vitreochlamys)、ボルボックス(Volvox)、ボルブリナ(Volvulina)、ウエステラ(Westella)、ウィレア(Willea)、ウイスロウキエラ(Wislouchiella)、ゾークロレラ(Zoochlorella)、ジグネモプシス(Zygnemopsis)、ヒアロセカ(Hyalotheca)、クロレラ(Chlorella)、シュードプレウロコッカム(Pseudopleurococcum)、およびロパロシスチス(Rhopalocystis)を含む。プラシノ藻綱は、ヘテロマスチクス(Heteromastix)、マンメラ(Mammella)、マントニエラ(Mantoniella)、ミクロモナス(Micromonas)、ネフロセルミス(Nephroselmis)、オストレオコッカス(Ostreococcus)、プラシノクラズス(Prasinocladus)、プラシノコッカス(Prasinococcus)、シュードスコウルフィエルダ(Pseudoscourfielda)、ピクノコッカス(Pycnococcus)、ピラミモナス(Pyramimonas)、スケルフェリア(Scherffelia)を含む。ペディノ藻綱は、マルスピオモナス(Marsupiomonas)、ペジノモナス(Pedinomonas)、レスルトール(Resultor)を含む。トレボウクシア藻綱は、アパトコッカス(Apatococcus)、アステロクロリス(Asterochloris)、アウキセノクロレラ(Auxenochlorella)、クロレラ(Chlorella)、コッコミクサ(Coccomyxa)、デスモコッカス(Desmococcus)、ジクチオクロロプシス(Dictyochloropsis)、エリプトクロリス(Elliptochloris)、ジャアギエラ(Jaagiella)、レプトシラ(Leptosira)、ロボコッカス(Lobococcus)、マキノエラ(Makinoella)、ミクロサムニオン(Microthamnion)、ミルメシア(Myrmecia)、ナンノクロリス(Nannochloris)、オオシスチス(Oocystis)、プラシオラ(Prasiola)、プラシオロプシス(Prasiolopsis)、プロトセカ(Prototheca)、スチココッカス(Stichococcus)、テトラクロレラ(Tetrachlorella)、トレボウクシア(Trebouxia)、トリコフィルス(Trichophilus)、ワタナベア(Watanabea)、およびミルメシア(Myrmecia)を含む。アサオ藻綱は、アクロカエテ(Acrochaete)、ブリオプシス(Bryopsis)、セファレウロス(Cephaleuros)、クロロシスチス(Chlorocystis)、エンテロモルファ(Enteromorpha)、グロエオチロプシス(Gloeotilopsis)、ハロクロロコッカム(Halochlorococcum)、オストレオビウム(Ostreobium)、ピルラ(Pirula)、ピソフォラ(Pithophora)、プラノフィラ(Planophila)、シューデンドクロニウム(Pseudendoclonium)、トレンテポーリア(Trentepohlia)、トリコサルシナ(Trichosarcina)、ウロスリックス(Ulothrix)、ボルボコレオン(Bolbocoleon)、カエトシフォン(Chaetosiphon)、エウゴモンチア(Eugomontia)、オルトマンシエロプシス(Oltmannsiellopsis)、プリングスヘイミエラ(Pringsheimiella)、シュードデンドロクロニウム(Pseudodendroclonium)、シューズルベラ(Pseudulvella)、スプロクラドプシス(Sporocladopsis)、ウロスポラ(Urospora)、およびウィットロキエラ(Wittrockiella)を含む。
【0074】
紅藻植物門は、アクロカエチウム(Acrochaetium)、アガルドヒエラ(Agardhiella)、アンチサムニオニン(Antithamnion)、アンチサムニオネラ(Antithamnionella)、アステロシチス(Asterocytis)、アウドウイネラ(Audouinella)、バルビアニア(Balbiania)、バンギア(Bangia)、バトラコスペルムム(Batrachospermum)、ボンネマイソニア(Bonnemaisonia)、ボストリキア(Bostrychia)、カリサムニオン(Callithamnion)、カログロッサ(Caloglossa)、セラミウム(Ceramium)、カンピア(Champia)、クロオダクチロン(Chroodactylon)、クロオセセ(Chroothece)、コンプソポゴン(Compsopogon)、コンプソポゴノプシス(Compsopogonopsis)、クマグロイア(Cumagloia)、シアニジウム(Cyanidium)、シストクロニウム(Cystoclonium)、ダシア(Dasya)、ジゲニア(Digenia)、ジクソニエラ(Dixoniella)、エリスロクラジア(Erythrocladia)、エリスロロバス(Erythrolobas)、エリスロトリキア(Erythrotrichia)、フリンチエラ(Flintiella)、ガルジエリア(Galdieria)、ゲリジウム(Gelidium)、グラウコスファエラ(Glaucosphaera)、ゴニオトリクム(Goniotrichum)、グラシラリア(Gracilaria)、グラテロウピア(Grateloupia)、グリフィスシア(Griffithsia)、ヒルデンブランジア(Hildenbrandia)、ヒメノクラジオプシス(Hymenocladiopsis)、ヒプネア(Hypnea)、ラインギア(Laingia)、メンブラノプテラ(Membranoptera)、ミリオグランメ(Myriogramme)、ネマリオン(Nemalion)、ネムナリオノプシス(Nemnalionopsis)、ネオアガルドヒエラ(Neoagardhiella)、パルマリア(Palmaria)、フィロフォラ(Phyllophora)、ポリネウラ(Polyneura)、ポリシフォニア(Polysiphonia)、ポルフィラ(Porphyra)、ポルフィリジウム(Porphyridium)、シュードカントランシア(Pseudochantransia)、プテロクラジア(Pterocladia)、プゲチア(Pugetia)、ロデラ(Rhodella)、ロドカエテ(Rhodochaete)、ロドコルトン(Rhodochorton)、ロドソルス(Rhodosorus)、ロドスポラ(Rhodospora)、ロジメニア(Rhodymenia)、セイロスポラ(Seirospora)、セレナストルム(Selenastrum)、シロドチア(Sirodotia)、ソリエリア(Solieria)、スペルモサムニオン(Spermothamnion)、スピリジア(Spyridia)、スチロネマ(Stylonema)、ソレア(Thorea)、トライリエラ(Trailiella)、およびツオメヤ(Tuomeya)を含む。
【0075】
クリプト植物門は、クリプト藻綱を含む。より詳細には、カンピロモナス(Campylomonas)、キロモナス(Chilomonas)、クロオモナス(Chroomonas)、クリプトクリシス(Cryptochrysis)、クリプトモナス(Cryptomonas)、ゴニオモナス(Goniomonas)、グイラルジア(Guillardia)、ハヌシア(Hanusia)、ヘミセルミス(Hemiselmis)、プラギオセルミス(Plagioselmis)、プロテオモナス(Proteomonas)、ピレノモナス(Pyrenomonas)、ロードモナス(Rhodomonas)、およびストロレアツラ(Stroreatula)を含む。
【0076】
クロララクニオン植物門は、クロララクニオン(Chlorarachnion)、ロサレラ(Lotharella)、およびカットネラ(Chattonella)を含む。
【0077】
ハプト植物門は、アピストネマ(Apistonema)、クリソクロムリナ(Chrysochromulina)、コッコリソフォラ(Coccolithophora)、コルコントクリシス(Corcontochrysis)、クリコスファエラ(Cricosphaera)、ジアクロネマ(Diacronema)、エミリアナ(Emiliana)、パブロバ(Pavlova)、ルットネラ(Ruttnera)、クルシプラコリスス(Cruciplacolithus)、プリムネシウム(Prymnesium)、イソクリシス(Isochrysis)、カリプトスファエラ(Calyptrosphaera)、クリソチラ(Chrysotila)、コッコリスス(Coccolithus)、ジクラテリア(Dicrateria)、ヘテロシグマ(Heterosigma)、ヒメノモナス(Hymenomonas)、イマントニア(Imantonia)、ゲフィロカプサ(Gephyrocapsa)、オクロスファエラ(Ochrosphaera)、ファエオシスチス(Phaeocystis)、プラチクリシス(Platychrysis)、シュードイソクリシス(Pseudoisochrysis)、シラコスファエラ(Syracosphaera)、およびプレウロクリシス(Pleurochrysis)を含む。
【0078】
ユーグレナ植物門は、スタシア(stasia)、コラシウム(Colacium)、シクリジオプシス(Cyclidiopsis)、ジスチグマ(Distigma)、ユーグレナ(Euglena)、ユートレプチア(Eutreptia)、ユートレプチエラ(Eutreptiella)、ギロパイグネ(Gyropaigne)、ヒアロファクス(Hyalophacus)、カーウキネア(Khawkinea)、アスタシア(Astasia)、レポシンクリス(Lepocinclis)、メノイジウム(Menoidium)、パルミジウム(Parmidium)、ファクス(Phacus)、ラブドモナス(Rhabdomonas)、ラブドスピラ(Rhabdospira)、テトルエトレプチア(Tetruetreptia)、およびトラケロモナス(Trachelomonas)を含む。
【0079】
不等毛植物門は、珪藻綱(Bacillariophyceae)、褐藻綱(Phaeophyceae)、ペラゴ藻綱(Pelagophyceae)、黄緑藻綱(Xanthophyceae)、真正眼点藻綱(Eustigmatophyceae)、シヌラ藻綱(Syanurophyceae)、フェオタムニオン藻綱(Phaeothamniophyceae)、およびラフィド藻綱(Raphidophyceae)を含む。より詳細には、珪藻綱は、アクナンセス(Achnanthes)、アンフォラ(Amphora)、カエトセロス(Chaetoceros)、バシラリア(Bacillaria)、ニツキア(Nitzschia)、ナビクラ(Navicula)、およびピンヌラリア(Pinnularia)を含む。褐藻綱は、アスコセイラ(Ascoseira)、アステロクラドン(Asterocladon)、ボンダネラ(Bodanella)、デスマレスチア(Desmarestia)、ジクチオカ(Dictyocha)、ジクチオタ(Dictyota)、エクトカルプス(Ectocarpus)、ハロプテリス(Halopteris)、ヘリバウジエラ(Heribaudiella)、プレウロクラジア(Pleurocladia)、ポルテリネマ(Porterinema)、ピライエラ(Pylaiella)、ソロカルプス(Sorocarpus)、スペルマトクヌス(Spermatochnus)、スファセラリア(Sphacelaria)、およびワエルニエラ(Waerniella)を含む。ペラゴ藻綱は、アウレオコッカス(Aureococcus)、アウレオウンブラ(Aureoumbra)、ペラゴコッカス(Pelagococcus)、ペラゴモナス(Pelagomonas)、プルビナリア(Pulvinaria)、およびサルシノクリシス(Sarcinochrysis)を含む。黄緑藻綱は、クロロアメーバ目(Chloramoebales)、リゾクロリス目(Rhizochloridales)、ミスココックス目(Mischococcales)、トリボネマ目(Tribonematales)、およびフシナシミドロ目(Vaucheriales)を含む。真正眼点藻綱は、クロリデラ(Chloridella)、エリプソイジオン(Ellipsoidion)、ユースチグマトス(Eustigmatos)、モノドプシス(Monodopsis)、モノズス(Monodus)、ナンノクロロプシス(Nannochloropsis)、ポリエドリエラ(Polyedriella)、シュードカラシオプシス(Pseudocharaciopsis)、シュードスタウラストルム(Pseudostaurastrum)、およびビスケリア(Vischeria)を含む。シヌラ藻綱は、アロモナス(allomonas)、シヌラ(Synura)、およびテッセラリア(Tessellaria)を含む。フェオタムニオン藻綱は、ハエオボトリス(haeobotrys)およびフェオタムニオン(Phaeothamnion)を含む。ラフィド藻綱は、オリスソジスクス(Olisthodiscus)、バクオラリア(Vacuolaria)、およびフィブロカプサ(Fibrocapsa)を含む。
【0080】
珪藻類は、ボリド藻綱(Bolidophyceae)、コシノディスクス藻綱(Coscinodiscophyceae)、渦鞭毛藻綱(Dinophyceae)、およびアルベオラテス(Alveolates)を含む。ボリド藻綱は、ボリドモナス(Bolidomonas)、クリソフィセアエ(Chrysophyceae)、ギラウジオプシス(Giraudyopsis)、グロッソマスチクス(Glossomastix)、クロモフィトン(Chromophyton)、クリサモエバ(Chrysamoeba)、クリソカエテ(Chrysochaete)、クリソジジムス(Chrysodidymus)、クリソレピドモナス(Chrysolepidomonas)、クリソサッカス(Chrysosaccus)、クリソスファエラ(Chrysosphaera)、クリソキシス(Chrysoxys)、シクロネキシス(Cyclonexis)、ジノブリオン(Dinobryon)、エピクリシス(Epichrysis)、エピピキシス(Epipyxis)、ヒッベルジア(Hibberdia)、ラギニオン(Lagynion)、レポクロムリナ(Lepochromulina)、モナス(Monas)、モノクリシス(Monochrysis)、パラフィソモナス(Paraphysomonas)、ファエオプラカ(Phaeoplaca)、ファエオスキゾクラミス(Phaeoschizochlamys)、ピコファグス(Picophagus)、プレウロクリシス(Pleurochrysis)、スチコグロエア(Stichogloea)、およびウログレナ(Uroglena)を含む。コシノディスクス藻綱は、バクテリアストルム(Bacteriastrum)、ベレロケア(Bellerochea)、ビズルフィア(Biddulphia)、ブロクマンニエラ(Brockmanniella)、コレスロン(Corethron)、コスキノジスクス(Coscinodiscus)、エウカンピア(Eucampia)、エキスツボセルルス(Extubocellulus)、グイナルジア(Guinardia)、ヘリコセカ(Helicotheca)、レプトシリンドルス(Leptocylindrus)、レイアネラ(Leyanella)、リソデスミウム(Lithodesmium)、メロシラ(Melosira)、ミニジスクス(Minidiscus)、オドンテラ(Odontella)、プランクトニエラ(Planktoniella)、ポロシラ(Porosira)、プロボスキア(Proboscia)、リゾソレニア(Rhizosolenia)、ステラリマ(Stellarima)、サラシオネマ(Thalassionema)、ビコソエシド(Bicosoecid)、シンビオモナス(Symbiomonas)、アクチノシクルス(Actinocyclus)、アンフォラ(Amphora)、アルコセルルス(Arcocellulus)、デトヌラ(Detonula)、ジアトマ(Diatoma)、ジチルム(Ditylum)、フラギラリオフィセアエ(Fragilariophyceae)、アステリオネロプシス(Asterionellopsis)、デルフィネイス(Delphineis)、グラマトフォラ(Grammatophora)、ナノフルスツルム(Nanofrustulum)、シネドラ(Synedra)、およびタブラリア(Tabularia)を含む。渦鞭毛藻綱は、アデノイデス(Adenoides)、アレクサンドリウム(Alexandrium)、アンフィジニウム(Amphidinium)、セラチウム(Ceratium)、デラトコリス(Ceratocorys)、コオリア(Coolia)、クリプセコジニウム(Crypthecodinium)、エキスビアエラ(Exuviaella)、ガンビエルジスクス(Gambierdiscus)、ゴニアウラクス(Gonyaulax)、ギムノジニウム(Gymnodinium)、ギロジニウム(Gyrodinium)、ヘテロカプサ(Heterocapsa)、カトジニウム(Katodinium)、リングロジニウム(Lingulodinium)、フィエステリア(Pfiesteria)、ポラレラ(Polarella)、プロトセラチウム(Protoceratium)、ピロシスチス(Pyrocystis)、スクリップシエラ(Scrippsiella)、シンビオジニウム(Symbiodinium)、セカジニウム(Thecadinium)、ソラコスファエラ(Thoracosphaera)、およびゾオキサンセラ(Zooxanthella)を含む。アルベオラテスは、シストジニウム(Cystodinium)、グレノジニウム(Glenodinium)、オキシリス(Oxyrrhis)、ペリジニウム(Peridinium)、プロロセントルム(Prorocentrum)、およびウォロスジンスキア(Woloszynskia)を含む。
【0081】
微生物の培養方法およびバイオリアクター
微生物は、一般的に、遺伝子操作を行う目的、およびそれに続く炭化水素(例:脂質、脂肪酸、アルデヒド、アルコール、およびアルカン)の生産の両方のために培養される。前者のタイプの培養は、小スケールで、最初は少なくとも出発微生物が成長可能である条件下で行われるのが一般的である。炭化水素生産の目的の培養は、通常、大スケールで行われる。固定酸素源(例:フィードストック)が存在することが好ましい。培養はまた、一部、またはすべての時間にわたって光に曝露して行ってもよい。
【0082】
バイオリアクター
微小藻類は、液体培地中で培養してよい。培養物は、バイオリアクター内に含まれていてよい。微小藻類はまた、固定炭素源を含み、細胞に光を当てることができるフォトバイオリアクターで培養してもよい。微小藻類細胞の光への曝露は、細胞が輸送し利用する固定炭素源の存在下であっても、細胞の暗所培養と比較して、成長を促進することができる。培養条件パラメータを操作することで、炭化水素の総生産量、生産される炭化水素種の組み合わせ、および/または炭化水素種の生産量を最適化することができる。
【0083】
図1は、本発明のバイオリアクターの1つの態様である。1つの局面では、バイオリアクターはフォトバイオリアクターである。1つの局面では、バイオリアクターシステムは、微小藻類の培養に用いることができる。バイオリアクターシステムは、容器および照射集合体(irradiation assembly)を含んでよく、ここで、照射集合体は、容器と操作可能に接続されている。
【0084】
1つの局面では、バイオリアクターは、工業的発酵プロセスに用いられる発酵タンクである。
【0085】
ある態様では、バイオリアクターは、例えば、曝気、攪拌速度、温度、pH、およびその他の対象となるパラメータを制御するためのゲージおよび調整器を備えた、ガラス、金属、またはプラスチック製のタンクを含む。一般的に、ゲージおよび調整器は、バイオリアクターに操作可能に接続される。
【0086】
1つの局面では、バイオリアクターは、卓上用に十分小さい(5〜10Lもしくはそれ未満)ものであっても、または最大120,000Lもしくはそれより大きい容量の大スケールの工業用途のものであってもよい。
【0087】
ある態様では、バイオリアクターシステムは、1つの光拡散構造または複数の光拡散構造を含んでよい。ある態様では、複数の光拡散構造のうちの1もしくは2つ以上の光拡散構造が、バイオリアクターの内部表面にそって位置している。ある態様では、光拡散構造は、バイオリアクターに操作可能に接続されている。
【0088】
バイオリアクターシステムは、1もしくは2つ以上の光ファイバー、および/または複数の光源、および/または1つの光源を含んでよい。ある態様では、1もしくは2つ以上の光ファイバーは、保護され、光学的に透明な照明構造で搭載される。ある態様では、光ファイバーは、バイオリアクターに操作可能に接続されている。ある態様では、光源は、バイオリアクターに操作可能に接続されている。
【0089】
ある態様では、バイオリアクターシステムは、バイオリアクターに操作可能に接続されている照明構造を含んでよい。ここでの特定の態様では、照明構造は、バイオリアクター内部に光シグナルを誘導するいかなる形状または形態であってもよい。バイオリアクターシステムはまた、1もしくは2つ以上の光ファイバーのうちの少なくとも1つの第一の端部から太陽熱集熱器の一部まで伸びる少なくとも1つの光ファイバーを含んでいてもよい。ある態様では、太陽熱集熱器は、バイオリアクターに操作可能に接続されている。光ファイバーは、太陽熱集熱器をバイオリアクターに光学的に接続するように適合されていてよい。光ファイバーは、太陽熱集熱器に光学的に(直接または間接的に)接続されていてよい。
【0090】
ある態様では、バイオリアクターシステムは、バイオリアクターに操作可能に接続された複数の光源を含む。複数の光源は、複数のLEDを含んでよい。複数のLEDを含む複数の光源は、人工の全スペクトル光または特定波長光をバイオリアクターへ供給するように作動可能であってよい。
【0091】
1つの態様では、LEDは、保護され、光学的に透明な照明構造で搭載される。1つの態様では、LEDは、LEDアレイである。
【0092】
ある態様では、微小藻類は、異なる種類の透明または半透明材料で作製された密閉バイオリアクター中で成長および維持を行ってよい。そのような材料としては、Plexiglass(商標)製密閉容器、ガラス製密閉容器、ポリエチレンなどの物質から成るバッグ、透明または半透明の管、およびその他の材料を挙げることができる。微小藻類は、水路(raceway pond)、沈澱池、およびその他の非密閉容器など、開放型バイオリアクターで成長および維持を行ってもよい。
【0093】
微小藻類などの微生物を成長させるバイオリアクターの気体含有量は、操作してよい。バイオリアクターの容量の一部は、液体ではなく気体を含有していてよい。気体入口部を用いて、バイオリアクター内に気体を送気してよい。バイオリアクター内へ送気される気体は、空気、空気/O混合物、アルゴンなどの貴ガス、およびその他を含むいかなる気体であってもよい。バイオリアクター内への気体の導入速度もまた、操作してよい。バイオリアクター内への気体流を増加させると、微小藻類培養物の濁度が上昇する。気体をバイオリアクター内へ運ぶためのポートを設置することも、所定の気体流速における培養物の濁度に影響を与え得る。空気/O混合物を調節して、特定の生物による成長を最大化するための最適O量を作り出してよい。微小藻類は、光の存在下、例えば3%O/97%空気での方が100%空気よりも著しく速く成長する。3%O/97%空気は、空気と比較してOが約100倍多い。例えば、約99.75%空気:0.25%O、約99.5%空気:0.5%O、約99.0%空気:1.00%O、約98.0%空気:2.0%O、約97.0%空気:3.0%O、約96.0%空気:4.0%O、および約95.00%空気:5.0%Oの空気:O混合物を、バイオリアクターまたはバイオリアクターへ注入してよい。
【0094】
微小藻類培養物はまた、回転刃およびインペラなどのデバイス、培養物の振動、攪拌棒、圧縮ガスの注入、ならびにその他の装置を用いることで混合してもよい。
【0095】
バイオリアクターは、気体、固体、半固体、および液体を、微小藻類を含有するチャンバーへ導入するためのポートを有していてよい。ポートは、通常、配管または物質を運ぶためのその他の手段と接続されている。例えば、気体ポートは、気体を培養物内へ運ぶ。バイオリアクター内へ気体を送気することは、細胞にOおよびその他の気体を供給すること、ならびに培養物に曝気を行い、それによって濁りを発生させることの両方の作用を行うことができる。培養物の濁りの量は、気体ポートの数および位置の変更に従って様々となる。例えば、気体ポートは、円柱型ポリエチレンバッグの底部に沿って配置してよい。Oを空気に添加してバイオリアクター内へバブリングすることで、微小藻類の成長が速くなる。
【0096】
バイオリアクターは、培地の導入を可能とする1もしくは2つ以上のポートを有することが好ましい。1つのポートから1つだけの物質の導入または排出が行われる必要はない。例えば、ポートを、培地のバイオリアクター内への流入に用い、続いてその後、サンプリング、気体導入、気体排出、またはその他の目的に用いてもよい。ある場合では、バイオリアクターは、培養の開始時に培地で満たされ、培地に播種が行われた後は、それ以上の成長培地は注入されない。言い換えると、微小藻類のバイオマスは、微小藻類が繁殖し、その数を増加させる期間にわたって水性培地中で培養されるが;しかし、その期間全体を通して大量の水性培地がバイオリアクターに通液されることはない。従って、ある態様では、水性培地は、播種後にバイオリアクターに通液されない。
【0097】
他の場合では、微小藻類が繁殖し、その数を増加させる期間全体にわたって、培地がバイオリアクターに通液されてよい。ある態様では、播種の後、しかし細胞が所望される密度に達する前に、培地がバイオリアクター内へ注入される。言い換えると、微小藻類繁殖のための気体導入および培地導入の乱流様式は、前記微小藻類数の所望される増加が得られるまで維持されるものではない。
【0098】
バイオリアクターは、気体の導入を可能とする1もしくは2つ以上のポートを有することが好ましい。気体は、Oなどの栄養素の供給、ならびに培地への乱流の提供の両方の作用を行うことができる。乱流は、気体導入ポートを水性培地のレベルより下に配置し、それによってバイオリアクターに導入される気体が泡となって培地表面に向かうようにすることで得ることができる。1もしくは2つ以上の気体排出ポートによって気体を外部へ逃すことを可能とし、それによって、バイオリアクター内での圧力の蓄積が防止される。気体排出ポートは、汚染微生物がバイオリアクター内へ侵入することを防止するために、一方向弁へと繋がっていることが好ましい。ある例では、細胞は、微小藻類が繁殖し、その数を増加させる期間にわたってバイオリアクター内で培養されるが、気体導入によって引き起こされるほぼ培地全体にわたる乱流渦による乱流様式は、その全期間にわたって維持されるわけではない。他の例では、気体導入によって引き起こされるほぼ培地全体にわたる乱流渦による乱流様式は、微小藻類が繁殖し、その数を増加させる全期間にわたって維持してもよい。ある例では、バイオリアクターのスケールと渦流のスケールとの間の比率は、微小藻類が繁殖し、その数を増加させる期間にわたって所定の範囲内に維持されるわけではない。他の例では、そのような範囲を維持してよい。
【0099】
バイオリアクターは、培養物のサンプリングに用いることができる少なくとも1つのポートを有することが好ましい。サンプリングポートは、培養物の無菌状態を変化させてこれを損なうことなく、繰り返し使用可能であることが好ましい。サンプリングポートには、サンプルの流れの停止および開始を可能とするバルブまたはその他のデバイスが配置されていてよい。別の選択肢として、サンプリングポートは、連続サンプリングを可能とするものであってもよい。バイオリアクターは、培養物の播種を行うことができる少なくとも1つのポートを有することが好ましい。そのようなポートはまた、培地または気体の導入など、他の目的に用いてもよい。
【0100】
1つの態様では、照射システムを有するバイオリアクターを用いて、ボツリオコッカスから炭化水素を生産することができる。ボツリオコッセン(Botryococcenes)は、式C2n−10を有する非分岐鎖状イソプレノイドトリテルペンである。系統Aは、アルカジエンおよびアルカトリエン(脂肪酸誘導体)を産生し、ここでnは23から31の奇数である。系統Bは、ボツリオコッセンを産生し、ここでnは30から40の範囲である。これらは、ガソリン系炭化水素へのハイドロクラッキングに最適なバイオ燃料であり得る。
【0101】
培地
微小藻類培地は、通常、固定窒素源、微量元素、所望に応じてpH維持のためのバッファー、およびホスフェートなどの成分を含有する。その他の成分としては、特に海洋微小藻類用に、アセテートまたはグルコースなどの固定炭素源、および塩化ナトリウムなどの塩を挙げることができる。微量元素の例としては、亜鉛、ホウ素、コバルト、銅、マンガン、およびモリブデンの、例えばそれぞれ、ZnCl、HBO、CoCl・6HO、CuCl・2HO、MnCl・4HO、および(NHMo4・4ΗOの形態が挙げられる。
【0102】
固定炭素源で成長することができる生物において、固定炭素源は、例えば、グルコース、フルクトース、スクロース、ガラクトース、キシロース、マンノース、ラムノース、N−アセチルグルコサミン、グリセロール、フロリドシド、および/またはグルクロン酸であってよい。1もしくは2つ以上の炭素源は、50μM未満、少なくとも約50μM、少なくとも約100μM、少なくとも約500μM、少なくとも約5mM、少なくとも約50mM、少なくとも約500mM、および500mM超の濃度の、1もしくは2つ以上の外来的に提供された固定炭素源として供給されてよい。1もしくは2つ以上の炭素源は、培地の1%未満、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%で供給してよい。1もしくは2つ以上の炭素源はまた、培地の2.5%または3.7%を例とする、上記で示した割合の間の培地に対する割合で供給してもよい。
【0103】
いくつかの微生物は、都市廃棄物、二次処理下水、廃水、およびその他の固定炭素源などの化合物の不均質源である固定炭素源、ならびにサルフェート、ホスフェート、およびナイトレートなどのその他の栄養素によって自然に成長するか、または成長するように操作してよい。下水成分は、炭化水素産生における栄養源として作用し、培養物は、安価な炭化水素源を提供する。
【0104】
培地のpH、微量元素およびその他の培地構成成分の種類ならびに濃度などのその他の培養パラメータも操作してよい。
【0105】
本発明の方法において有用である微生物は、世界中の様々な場所および環境で見られる。他の種からの隔離、および結果としての進化的分岐により、最適な成長ならびに脂質および/または炭化水素成分の最適な生成のための特定の成長培地は、様々であり得る。ある場合では、微生物の特定の株が、ある種の阻害成分の存在のために、または微生物のその特定の株が必要とするある種の必須栄養必要条件が存在しないために、特定の成長培地上で成長することができないことがある。
【0106】
固体および液体成長培地は、一般的に、広範な種々の入手源から得ることができ、微生物の広範な様々な株に適する特定の培地の調製に関する説明は、例えば、オースティンのテキサス大学が管理するその藻類培養収集物に関するウェブサイト(UTEX)にて、オンラインで見ることができる。
【0107】
プロセス条件を調節して、特定の用途に適する脂質の収率の向上、および/または生産コストの低減を行うことができる。例えば、特定の態様において、微生物(例:微小藻類)は、例えば炭素および/または窒素、リン、または硫黄などの1もしくは2つ以上の栄養素の存在を制限濃度とし、グルコースなどの固定炭素エネルギーは過剰に供給して培養される。窒素の制限は、微生物による脂質の収率を、窒素が過剰に供給される培養物における微生物による脂質の収率よりも高める傾向にある。特定の態様では、脂質収率の向上は、少なくとも約:10%、20%、30%、40%、50%、75%、100%、200%、300%、400%、または500%である。制限量の栄養素の存在下での微生物の培養は、全培養期間の一部で行っても、または全期間にわたって行ってもよい。特定の態様では、全培養期間の間に、栄養素濃度は、制限濃度と非制限濃度との間のサイクルを少なくとも2回繰り返される。
【0108】
従属栄養成長および光
微生物は、固定炭素源が成長および脂質蓄積のためのエネルギーを提供する従属栄養成長条件下で培養してよい。
【0109】
微小藻類の従属栄養成長および繁殖のための標準的な方法は公知である(例えば、Miao and Wu, J Biotechnology, 2004, 11:85−93、およびMiao and Wu, Biosource Technology (2006) 97:841−846を参照)。
【0110】
炭化水素生産のために、本明細書で述べる本発明の組換え細胞を含む細胞を、大量に培養または発酵してよい。培養は、例えば懸濁培養などにおいて、大量の液体中で行ってよい。その他の例としては、小規模の細胞培養から開始して、これを細胞の成長および繁殖、ならびに炭化水素生産と組み合わせた大量のバイオマスへと拡張することが挙げられる。バイオリアクターまたはスチール製発酵槽を用いて、大量の培養物を収容してよい。バイオリアクターは発酵槽を含んでいてよい。エタノールの生産には極めて大きな発酵槽が用いられることから、ビールおよび/またはワインの生産に用いられるものと類似の発酵槽が適切であり得る。
【0111】
発酵槽において培養に適切である栄養源が提供される。これらとしては、以下の1もしくは2つ以上などの原材料が挙げられる:グルコース、トウモロコシデンプン、解重合セルロース系物質、スクロース、サトウキビ、テンサイ、ラクトース、乳清、またはモラセスなどの固定炭素源;脂肪または植物油などの脂肪源;タンパク質、大豆かす、コーンスティープリカー、アンモニア(純粋または塩の形態)、ナイトレートもしくはナイトレート塩、または分子窒素などの窒素源;ホスフェート塩などのリン源。加えて、発酵槽では、温度、pH、酸素圧、および二酸化炭素レベルなどの培養条件の制御が可能である。所望に応じて、酸素または窒素などの気体成分を、液体培養物中へバブリングしてもよい。コムギ、ジャガイモ、コメ、およびモロコシなどのその他のデンプン(グルコース)源。その他の炭素源としては、工業グレードのグリセロール、黒液、アセテートなどの有機酸、およびモラセスなどのプロセス流が挙げられる。炭素源はまた、スクロースと解重合テンサイパルプとの混合物などの混合物として提供してもよい。
【0112】
発酵槽を用いて、細胞にその成長周期の様々な期を経過させてよい。例えば、炭化水素産生細胞の種菌を培地へ導入し、それに続く遅滞期間(遅滞期)を経て、その後に細胞が成長を開始してよい。遅滞期間の後、成長速度は安定的に上昇し、対数期、または指数期に入る。指数期の次は、栄養素の減少および/または毒性物質の増加による成長の鈍化が続く。この鈍化の後、成長は停止し、細胞は、細胞に提供される特定の環境に応じて、静止期または定常状態に入る。
【0113】
本明細書に開示される細胞による炭化水素産生は、対数期、または、栄養素が供給されるかもしくは依然として利用可能である静止期を含むその後の期間に生じてよく、それによって細胞分裂のない状態での炭化水素の産生の継続が可能となる。
【0114】
好ましくは、本明細書で述べる、および本技術分野で公知の条件を用いて成長した微生物は、少なくとも約20重量%の脂質を含み、好ましくは少なくとも約40重量%、より好ましくは少なくとも約50重量%、最も好ましくは少なくとも約60重量%である。
【0115】
本発明に従う別の選択肢としての従属栄養成長法では、微生物は、フィードストックとして解重合セルロース系バイオマスを用いて培養してよい。セルロース系バイオマス(例:トウモロコシストーバーなどのストーバー)は、安価で容易に入手可能であるが;しかし、この物質を酵母のフィードストックとして用いる試みは失敗している。特に、そのようなフィードストックは、酵母の成長を阻害することが見出されており、酵母は、セルロース系物質から生成される五炭糖(例:ヘミセルロース由来のキシロース)を利用することができない。対照的に、微小藻類は、処理したセルロース系物質で成長することができる。従って、本発明は、セルロース系物質および/または五炭糖の存在下で微小藻類を培養する方法を提供する。
【0116】
適切なセルロース系物質としては、草質および木質のエネルギー作物、ならびに農作物からの残余物が挙げられ、すなわち、本来の食物または繊維産物と共には農地から取り除かれなかった、主に茎および葉である植物の部分である。例としては、サトウキビバガス、もみ殻、トウモロコシ繊維(茎、葉、皮、および穂軸を含む)、麦ワラ、稲ワラ、テンサイパルプ、柑橘類パルプ、柑橘類皮などの農業廃棄物;硬材および軟材の間伐材、ならびに伐採作業からの硬材および軟材残余物などの林業廃棄物;製材場廃棄物(木材チップ、大鋸屑)およびパルプ工場廃棄物などの木材廃棄物;都市固形廃棄物の紙部分、都市芝刈り屑(municipal grass clippings)などの都市樹木廃棄物(urban wood waste)および都市グリーン廃棄物(urban green waste)、などの都市廃棄物;ならびに建築材木廃棄物(wood construction waste)が挙げられる。さらなるセルロース系物質としては、スイッチグラス、交雑ポプラ材、および茅、茎繊維(fiber cane)、およびモロコシ繊維(fiber sorghum)などの特定用途のセルロース系作物が挙げられる。そのような物質から作られる五炭糖としてはキシロースが挙げられる。
【0117】
それ自体を所望に応じて上述の方法と組み合わせて用いてよい本発明に従うさらに別の選択肢としての従属栄養成長法では、例えばサトウキビまたはテンサイから作られたスクロースがフィードストックとして用いられる。
【0118】
従属栄養成長は、光および1もしくは複数の固定炭素源の両方を細胞が用いて、成長し、炭化水素を産生することを含んでよい。従属栄養成長は、フォトバイオリアクターで行ってよい。
【0119】
バイオリアクターは、微小藻類へ光シグナルを提供するために、1もしくは2つ以上の光源に曝露してよい。光シグナルは、光源によってバイオリアクターの表面に指向された光を介して提供してよい。好ましくは、光源は、細胞の成長には十分であるが、酸化障害を引き起こすかまたは光阻害反応を起こすほどには強くない強度を提供する。ある場合では、光源は、太陽の波長範囲を模倣するか、またはおよそ模倣する波長範囲を有する。他の場合では、異なる波長範囲が用いられる。バイオリアクターは、屋外、または温室、もしくは太陽光をその表面に当てることができるその他の施設内に配置してよい。ある態様において、ボツリオコッカス属の種に対する光子強度は、25から500μmEm−2−1の間である(例えば、Photosynth Res. 2005 June;84(1−3):21−7を参照されたい)。
【0120】
微小藻類細胞の培養物に当たる光子の数は操作してよく、波長スペクトルおよび1日あたりの明暗時間の比率などのその他のパラメータも同様である。微小藻類はまた、自然光、ならびにそれと同時および/またはその代わりとしての自然光と人工光との組み合わせで培養してもよい。例えば、微小藻類は、昼時間には自然光下で培養し、夜時間には人工光下で培養してよい。
【0121】
本発明の1つの局面では、微生物は、光合成に要する光放射照度の約0.1%から約1%に曝露され、好ましくはその生物が光合成に要する光放射照度の約0.3%から約0.8%である。典型的な光放射照度は、0.1〜300μmol光子m−2−1の間であり、0.1未満、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51から99、100、101から149、150、151、199まで、200、201から249、250、または250μmol光子m−2−1超を含む。光放射照度は、約0.01〜1μmol光子m−2−1であってよく、好ましくは1〜10μmol光子m−2−1、または10〜100μmol光子m−2−1、または100〜300μmol光子m−2−1、または100〜300μmol光子m−2−1である。また、上記で示した放射照度の間の光放射照度、例えば1.1、2.1、2.5、または3.5μmol光子m−2−1、も含まれる。
【0122】
1つの局面では、異なる光スペクトル(例:360〜700nm)を用いてよい。光スペクトルは、300未満、300、350、400、450、500、550、600、650、700、もしくは750nm、または750nm超であってよい。また、上記で示した光スペクトルの間の光スペクトル、例えば360または440nm、も含まれる。
【0123】
1つの態様では、照射は、連続して適用してよい。別の態様では、照射は、適切な照明期間を有する周期的パターンで適用してもよく、これらに限定されないが、明12時間:暗12時間または明16時間:暗8時間が挙げられる。光パターンとしては、1時間未満、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、もしくは24時間の明時間、および/または1時間未満、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、もしくは23時間(h)の暗時間を挙げることができる。また、上記で示した光パターンの間の光パターン、例えば7.5時間の明時間または7.5時間の暗時間、も含まれる。
【0124】
1つの態様では、照射は、太陽熱集熱器で集められ、光ファイバーを介してバイオリアクターの内部へ送られた自然太陽光であってよい。
【0125】
別の態様では、発光ダイオード(LED)または蛍光などの人工光を光源として用いてよい。別の態様では、自然太陽光および人工光を一緒に用いてよい。
【0126】
1つの態様では、照射は、全スペクトル光である。
【0127】
別の態様では、照射は、特定波長光、または特定のフィルターを透過させたあるスペクトル範囲の光である。
【0128】
脂質および炭化水素の回収方法
本発明の細胞によって産生された炭化水素(例:脂質、脂肪酸、アルデヒド、アルコール、およびアルカン)の収穫、または回収は、都合の良いいかなる手段で行ってもよい。例えば、細胞から分泌された炭化水素を遠心分離に掛けることにより、水性層中の不純物、および所望に応じて遠心分離後の沈澱としてのいずれの固体物質からも、疎水性層中の炭化水素を分離することができる。細胞または細胞画分を含有する物質は、遠心分離の前または後に、プロテアーゼで処理して不純物であるタンパク質を分解してよい。ある場合では、不純物であるタンパク質は、炭化水素または炭化水素前駆体と、共有結合も考えられる形で会合しており、これはタンパク質の除去によって炭化水素を形成する。他の場合では、炭化水素分子は、タンパク質も含有する製剤中に存在する。プロテアーゼをタンパク質含有炭化水素製剤に添加することで、タンパク質を分解してよい(例えば、ストレプトマイセスグリセウス(Streptomyces griseus)由来のプロテアーゼを用いてよい(シグマアルドリッチ カタログ番号P5147))。分解後、炭化水素は、残留タンパク質、ペプチド断片、およびアミノ酸から精製されることが好ましい。この精製は、例えば、遠心分離およびろ過など上記で挙げた方法によって行うことができる。
【0129】
細胞外炭化水素はまた、その後にバイオリアクターへ戻される微小藻類生細胞からインビボで抽出してもよく、それは、他の無菌環境下にある細胞を無毒性抽出溶媒に曝露し、続いて生細胞と抽出溶媒および炭化水素の疎水性画分とを分離することで行われ、ここで、分離された生細胞は、続いて、ステンレススチール製発酵槽またはフォトバイオリアクターなどの培養容器へ戻される(Biotechnol Bioeng. 2004 Dec. 5;88(5):593−600およびBiotechnol Bioeng. 2004 Mar. 5;85(5):475−81参照)。
【0130】
炭化水素はまた、全細胞抽出によって単離してもよい。まず細胞を破壊し、次に細胞内の、および細胞膜/細胞壁に会合した炭化水素、ならびに細胞外炭化水素を、上述の遠心分離を用いることなどにより、全細胞質量から回収してよい。
【0131】
上述の方法によって作製された細胞ライセートから炭化水素および脂質を分離するための種々の方法が利用可能である。例えば、炭化水素は、ヘキサンなどの疎水性溶媒で抽出してよい(Frenz et al. 1989, Enzyme Microb. Technol., 11:717参照)。炭化水素はまた、液化(例えば、Sawayama et al. 1999, Biomass and Bioenergy 17:33−39およびInoue et al. 1993, Biomass Bioenergy 6(4):269−274参照);油液化(oil liquefaction)(例えば、Minowa et al. 1995, Fuel 74(12):1735−1738参照);および超臨界CO抽出(例えば、Mendes et al. 2003, Inorganica Chimica Acta 356:328−334参照)を用いて抽出してもよい。
【0132】
Miao and Wuは、培養物から微小藻類脂質を回収するプロトコルを報告しており、そこでは、細胞は、遠心分離で回収され、蒸留水で洗浄され、フリーズドライによって乾燥された。得られた細胞粉末は、モーター(mortor)で粉砕し、次にn−ヘキサンで抽出した。Miao and Wu, Biosource Technology (2006) 97:841−846。
【0133】
細胞の溶解
微生物内で産生された細胞内脂質および炭化水素は、ある態様では、微生物の細胞を溶解した後に抽出される。抽出後、脂質および/または炭化水素をさらに精製し、例えばオイル、燃料、または油脂化学製品を生産することができる。
【0134】
培養の完了後、微生物は、発酵ブロスから分離してよい。所望に応じて、分離を遠心分離で行い、濃縮ペーストを作製してよい。遠心分離では、多量の細胞内水が微生物から除去されることはなく、これは乾燥工程ではない。次にこのバイオマスを洗浄溶液(例:DI水)で洗浄して、発酵ブロスおよびデブリを除去してよい。所望に応じて、洗浄した微生物バイオマスはまた、細胞破壊の前に乾燥してもよい(オーブン乾燥、凍結乾燥など)。別の選択肢として、細胞は、発酵の完了時、発酵ブロスの一部またはすべてから分離することなく溶解してもよい。例えば、細胞は、細胞の溶解時、細胞の細胞外液に対する体積:体積比が1:1未満の比率であってよい。
【0135】
脂質および/または炭化水素を含有する微生物を溶解して、ライセートを作製してよい。本明細書で詳述するように、微生物を溶解する工程は(細胞溶解とも称される)、都合の良いいかなる手段で行ってもよく、熱溶解、塩基の添加、酸の添加、プロテアーゼ、およびアミラーゼなどのポリサッカリド分解酵素などの酵素の使用、超音波の使用、機械的溶解、浸透圧ショックの使用、溶菌ウィルスの感染、ならびに/または1もしくは2つ以上の溶菌遺伝子(lytic genes)の発現、が挙げられる。溶解は、微生物によって産生された細胞内分子を放出させるために行われる。微生物溶解のためのこのような方法の各々は、単一の方法として、または同時もしくは順次の組み合わせとして用いてよい。
【0136】
細胞破壊の程度は、顕微鏡分析によって観察することができる。本明細書で述べる方法の1もしくは2つ以上を用いることで、通常、70%超の細胞破壊が観察される。好ましくは、80%超の細胞破壊であり、より好ましくは90%超、最も好ましくは約100%である。
【0137】
特定の態様では、微生物の溶解は、例えば、抽出またはさらなる処理のために細胞脂質および/または炭化水素の露出を高めることを目的として、成長の後に行われる。リパーゼ発現(例:誘導性プロモーター)または細胞溶解のタイミングを調節して、脂質および/または炭化水素の収率を最適化することができる。多くの溶解技術について以下に述べる。これらの技術は、個々に用いても、または組み合わせて用いてもよい。
【0138】
熱溶解
本発明の好ましい態様では、微生物を溶解する工程は、微生物を含有する細胞懸濁液を加熱することを含む。本態様では、微生物を含有する発酵ブロス(または発酵ブロスから単離された微生物の懸濁液)が、微生物、すなわち微生物の細胞壁および細胞膜が、分解または崩壊するまで加熱される。通常、適用される温度は少なくとも50Cである。より高効率の細胞溶解のために、少なくとも30C、少なくとも60C、少なくとも70C、少なくとも80C、少なくとも90C、少なくとも100C、少なくとも110C、少なくとも120C、少なくとも130C、または130C超などのより高い温度が用いられる。
【0139】
熱処理による細胞の溶解は、微生物を煮沸に掛けることで行ってよい。別の選択肢として、熱処理(煮沸なし)は、オートクレーブ中で行ってよい。熱処理されたライセートは、さらなる処理のために冷却されてよい。
【0140】
細胞破壊はまた、スチーム処理、すなわち加圧スチームを添加することで行ってもよい。細胞破壊のための微小藻類のスチーム処理は、例えば、米国特許第6,750,048号に記載されている。
【0141】
塩基を用いた溶解
本発明の別の好ましい態様では、微生物を溶解する工程は、微生物を含有する細胞懸濁液に塩基を添加することを含む。
【0142】
塩基は、用いた微生物のタンパク質性化合物の少なくとも一部を加水分解するのに十分な強さである必要がある。タンパク質の可溶化に有用である塩基は、化学の技術分野で公知である。本発明の方法に有用である代表的な塩基としては、これらに限定されないが、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウムの水酸化物、炭酸塩、および炭酸水素塩、ならびにこれらの混合物が挙げられる。好ましい塩基はKOHである。細胞破壊のための微小藻類の塩基処理は、例えば、米国特許第6,750,048号に記載されている。
【0143】
酸溶解
本発明の別の好ましい態様では、微生物を溶解する工程は、微生物を含有する細胞懸濁液に酸を添加することを含む。酸溶解は、10〜500mNまたは、好ましくは40〜160nMの濃度で酸を用いることで影響を及ぼすことができる。酸溶解は、好ましくは、室温よりも高い温度にて(例:40〜160にて 行うことが好ましく、好ましくは50〜130の温度である。ゆるやかな温度の場合(例:室温から100C、および特に室温から65、酸処理を、音波処理またはその他の細胞破壊法と組み合わせることが有用である。
【0144】
酵素を用いた細胞の溶解
本発明の別の好ましい態様では、微生物を溶解する工程は、酵素を用いることで微生物を溶解することを含む。微生物溶解のための好ましい酵素としては、プロテアーゼ、ならびにヘミセルラーゼ(例:アスペルギルスニゲル(Aspergillus niger)由来のヘミセルラーゼ;シグマアルドリッチ,セントルイス,ミズーリ州;#H2125)、ペクチナーゼ(例:リゾプス sp.(Rhizopus sp.)由来のペクチナーゼ;シグマアルドリッチ,セントルイス,ミズーリ州;#P2401)、Mannaway4.0L(ノボザイムズ(Novozymes))、セルラーゼ(例:トリコデルマビリデ(Trichoderma viride)由来のセルロース;シグマアルドリッチ,セントルイス,ミズーリ州;#C9422)、およびドリセラーゼ(例:バシジオミセテス sp.(Basidiomycetes sp.)由来のドリセラーゼ;シグマアルドリッチ,セントルイス,ミズーリ州;#D9515 などのポリサッカリド分解酵素である。
【0145】
セルラーゼ
本発明の好ましい態様では、微生物を溶解するためのセルラーゼは、所望に応じてクロレラまたはクロレラウィルス由来であってよい、ポリサッカリド分解酵素である。
【0146】
プロテアーゼ
微生物の溶解には、ストレプトマイセスグリセウスプロテアーゼ(Streptomyces griseus protease)、キモトリプシン、プロテイナーゼK、Degradation of Polylactide by Commercial Proteases, Oda Y et al., Journal of Polymers and the Environment, Volume 8, Number 1, January 2000, pp.29−32(4)に挙げられるプロテアーゼ、およびその他のプロテアーゼなどのプロテアーゼを用いてよい。用いてよいその他のプロテアーゼとしては、Alcalase 2.4FG(ノボザイムズ)およびFlavourzyme 100L(ノボザイムズ)が挙げられる。
【0147】
組み合わせ
前述のプロテアーゼおよびポリサッカリド分解酵素のいずれの組み合わせも含む、プロテアーゼおよびポリサッカリド分解酵素のいずれの組み合わせも用いてよい。
【0148】
超音波を用いた細胞溶解
本発明の別の好ましい態様では、微生物を溶解する工程は、超音波を用いることで、すなわち音波処理によって行われる。従って、細胞は、高周波音で溶解してもよい。音は、電子的に発生させ、適切に濃縮された細胞懸濁液へ金属製チップを介して伝導してよい。この音波処理(または超音波処理)は、細胞懸濁液中にキャビティを作り出すことに基づいて細胞の完全性を破壊するものである。
【0149】
機械的溶解
本発明の別の好ましい態様では、微生物を溶解する工程は、機械的溶解によって行われる。細胞は、機械的に溶解してよく、所望に応じてホモジナイズし、炭化水素(例:脂質)の回収を促進してもよい。例えば、圧力式破砕器(pressure disrupter)を用いて、細胞含有スラリーを制限オリフィスバルブ(restricted orifice valve)を通して送液してよい。高い圧力を掛け(最大1500バールまで)、続いて排出ノズルを通して瞬間的に膨張させる。細胞破壊は3つの異なる機構によって達成される:バルブへの衝突、オリフィス内での高液体せん断、および細胞の破裂を引き起こす排出時の急激な圧力低下。この方法により、細胞内分子が放出される。
【0150】
別の選択肢として、ボールミルを用いてもよい。ボールミル内で、細胞は、ビーズなどの小研磨粒子と共に懸濁液中で攪拌される。細胞は、せん断力、ビーズにはさまれての研削作用、およびビーズとの衝突によって破壊される。ビーズは細胞を破壊して、細胞内容物を放出する。細胞はまた、細胞の破壊のために、混合(例えば、高速またはワーリングブレンダーなどによる)、フレンチプレス、または細胞壁が弱い場合は遠心分離でもよいこれらの使用などのせん断力によって破壊してもよい。
【0151】
浸透圧ショックによる細胞の溶解(細胞溶解)
本発明の別の好ましい態様では、微生物を溶解する工程は、浸透圧ショックを適用することによって行われる。
【0152】
溶菌ウィルスによる感染
本発明の別の好ましい態様では、微生物を溶解する工程は、微生物を溶菌ウィルスに感染させることを含む。本発明での使用に適する、微生物を溶解する非常に様々なウィルスが知られており、特定の微生物に対して特定の溶菌ウィルスを選択し、使用することは、当業者の技能レベルの範囲内である。
【0153】
例えば、パラメシウムブルサリアクロレラウィルス(paramecium bursaria chlorella virus)(PBCV−1)は、特定の単細胞真核クロレラ様緑藻類内で複製してこれを溶解する、大型の正二十面体プラーク形成二本鎖DNAウィルスの群(フィコドナウィルス科(Phycodnaviridae)、クロロウィルス属(Chlorovirus))のプロトタイプである。従って、感受性の高い微小藻類のいずれも、適切なクロレラウィルスで培養物を感染させることで溶解することができる。例えば、Adv. Virus Res. 2006; 66:293−336; Virology, 1999 Apr. 25; 257(1):15−23; Virology, 2004 Jan. 5; 318(1):214−23; Nucleic Acids Symp. Ser. 2000; (44):161−2; J. Virol. 2006 March; 80(5):2437−44;およびAnnu. Rev. Microbiol. 1999; 53:447−94を参照されたい。
【0154】
自己溶菌(溶菌遺伝子の発現)
本発明の別の好ましい態様では、微生物を溶解する工程は、自己溶菌を含む。本態様では、本発明に従う微生物を遺伝子操作して、その微生物を溶解する溶菌タンパク質(lytic protein)を産生させる。この溶菌遺伝子は、細胞がまず発酵槽中で望ましい密度まで成長することができ、続いてプロモーターの誘導によって溶菌遺伝子が発現して細胞を溶解させるように、誘導性プロモーターを用いて発現させてよい。1つの態様では、溶菌遺伝子は、ポリサッカリド分解酵素をコードする。
【0155】
特定のその他の態様では、溶菌遺伝子は、溶菌ウィルス由来の遺伝子である。従って、例えば、クロレラウィルス由来の溶菌遺伝子を、C.プロトセコイデス(C. protothecoides)などのクロレラ属の藻類細胞中で発現させてよい。
【0156】
適切な発現方法は、リパーゼ遺伝子の発現に関連して本明細書で述べる。溶菌遺伝子の発現は、小分子、光、熱、およびその他の刺激の存在下などの刺激によって誘導される微小藻類中で活性であるプロモーターなどの誘導性プロモーターを用いて行われることが好ましい。例えば、Virology 260, 308−315 (1999); FEMS Microbiology Letters 180 (1999) 45−53; Virology 263, 376−387 (1999);およびVirology 230, 361−368 (1997)を参照されたい。
【0157】
脂質および炭化水素の抽出
本発明の微生物によって産生された脂質および炭化水素は、有機溶媒による抽出で回収することができる。ある場合では、好ましい有機溶媒は、ヘキサンである。通常、有機溶媒は、ライセート成分を予め分離することなく、ライセートに直接添加される。1つの態様では、上述の方法の1もしくは2つ以上によって作製されたライセートを、脂質および/または炭化水素成分に有機溶媒と共に溶液形成させるのに十分な時間、有機溶媒と接触させる。ある場合では、この溶液を続いてさらに精製して、特定の所望される脂質または炭化水素成分を回収してよい。ヘキサン抽出法は、本技術分野で公知である。
【0158】
脂質および炭化水素の処理方法
酵素修飾
本明細書で述べるように細胞によって産生された炭化水素(例:脂質、脂肪酸、アルデヒド、アルコール、およびアルカン)は、リパーゼを含む1もしくは2つ以上の酵素を用いて修飾してよい。炭化水素が細胞の細胞外環境にある場合、1もしくは2つ以上の酵素を、その酵素が炭化水素を修飾するか、または炭化水素前駆体からのその合成を完了する条件下にて、その環境に添加してよい。別の選択肢として、炭化水素は、酵素などの1もしくは2つ以上の触媒を添加する前に、細胞物質から部分的に、または完全に単離してもよい。そのような触媒は、外来的に添加され、その活性は、細胞の外部またはインビトロで作用する。
【0159】
熱およびその他の触媒修飾
本明細書で述べるように、細胞によってインビボで産生された、または酵素によってインビトロで修飾された炭化水素は、所望に応じて、従来の手段によってさらに処理してもよい。この処理としては、「クラッキング」によるサイズの減少を挙げることができ、それによって、炭化水素分子の水素:炭素比が上昇する。触媒および熱によるクラッキングの方法は、炭化水素およびトリグリセリドオイルの処理において日常的に用いられている。触媒による方法は、固体酸触媒などの触媒の使用を含む。触媒としては、シリカ−アルミナまたはゼオライトであってよく、これらは、炭素−炭素結合の異方性または非対称の開裂を起こし、カルボカチオンおよびヒドリドアニオンをもたらす。これらの反応性中間体は、次に、別の炭化水素と転位または水素移動を起こす。この反応は、こうして自己増殖性連鎖機構をもたらす中間体を再生することができる。炭化水素はまた、処理を行うことで、その炭素−炭素二重または三重結合の数を、所望に応じてはゼロまで、減少させてもよい。炭化水素はまた、処理を行うことで、その環状または環式構造を、除去または脱離してもよい。炭化水素はまた、処理を行うことで、水素:炭素比を上昇させてもよい。これには、水素の添加(「水素化」)および/またはより小さい炭化水素への炭化水素の「クラッキング」を含んでよい。
【0160】
熱による方法は、高温および高圧の使用による炭化水素のサイズの減少を含む。約800Cの高温、および約700kPaの高圧を用いてよい。これらの条件は、水素リッチの炭化水素分子を指して用いられることのある用語である「軽い(light)」炭化水素(光子束と区別して)を発生させ、同時に、縮合によって、相対的に水素が減少したより重い炭化水素分子も発生させる。この方法は、等方性または対称の開裂を起こしてアルケンを生成し、これは、所望に応じて、上述のように、酵素によって飽和させてもよい。
【0161】
触媒および熱による方法は、炭化水素処理および石油精製のプラントでは標準的なものである。従って、本明細書で述べるように細胞によって産生された炭化水素は、従来の手段によって回収し、処理または精製してよい。微小藻類産生炭化水素のハイドロクラッキングに関する報告は、Hillen et al.(Biotechnology and Bioengineering, Vol. XXIV:193−205(1982))を参照されたい。別の選択肢としての態様では、画分が、有機化合物、熱、および/または無機化合物などの別の触媒で処理される。脂質をバイオディーゼルへと処理する場合は、本明細書のセクションIVで述べるように、エステル交換プロセスが用いられる。
【0162】
本発明の方法によって生産された炭化水素は、種々の工業用途に有用である。例えば、ほとんどあらゆる種類の洗剤および洗浄製剤に用いられるアニオン性界面活性剤である直鎖アルキルベンゼンスルホネート(LAS)の生産では、一般的に10〜14炭素原子の鎖を含む炭化水素を利用する。例えば、米国特許第6,946,430号;同第5,506,201号;同第6,692,730号;同第6,268,517号;同第6,020,509号;同第6,140,302号;同第5,080,848号;および同第5,567,359号を参照されたい。LASなどの界面活性剤は、パーソナルケア組成物および洗剤の製造に用いてよく、米国特許第5,942,479号;同第6,086,903号;同第5,833,999号;同第6,468,955号;および同第6,407,044号に記載のものなどである。
【0163】
ディーゼル車両およびジェットエンジンでの使用に適する燃料の生産方法
バイオディーゼル、再生可能ディーゼル、およびジェット燃料などの燃料に生物由来の炭化水素成分を用いることに対して、ますます関心が向けられており、それは、化石燃料由来の出発物質に置き換え得る再生可能な生物学的出発物質が利用可能であり、その使用が望ましいからである。生物物質から炭化水素成分を生産するための方法が求められている。本発明は、バイオディーゼル、再生可能ディーゼル、およびジェット燃料を生産するための生物物質として本明細書で述べる方法によって作製された脂質を用いて、バイオディーゼル、再生可能ディーゼル、およびジェット燃料を生産するための方法を提供することにより、この要求を満たすものである。
【0164】
従来のディーゼル燃料は、パラフィン系炭化水素リッチである石油蒸留物である。これは、沸点範囲が370から780Fと広く、ディーゼルエンジン車両などの圧縮点火エンジンでの燃焼に適している。米国材料試験協会(ASTM)は、セタン価、曇点、引火点、粘度、アニリン点、硫黄含量、水分含量、灰含量、銅板腐食、および残留炭素分などのその他の燃料特性の許容範囲と共に、その沸点範囲に従ってのディーゼルのグレードを設定している。技術的には、バイオマス由来の、またはそれ以外の適切なASTM規格を満たす炭化水素蒸留物質はいずれも、ディーゼル燃料(ASTM D975)、ジェット燃料(ASTM D1655)、またはバイオディーゼル(ASTM D6751)として定義することができる。
【0165】
抽出後、本明細書で述べる微生物バイオマスから回収された脂質および/または炭化水素成分には、ディーゼル車両およびジェットエンジンに用いるための燃料を製造するために、化学的処理を施してよい。
【0166】
バイオディーゼル
バイオディーゼルは、生産用フィードストックに応じて、金色から暗褐色まで様々な色を呈する液体である。水とは実質的に不混和性であり、高沸点および低蒸気圧を有する。バイオディーゼルとは、ディーゼルエンジン車両に用いられる、ディーゼル相当の処理燃料を意味する。バイオディーゼルは、生分解性であり、無毒性である。従来のディーゼル燃料に対してバイオディーゼルのさらなる利点は、エンジン摩耗がより少ないことである。
【0167】
通常、バイオディーゼルは、C14−C18アルキルエステルを含む。本明細書で述べるように生産および単離されたバイオマスまたは脂質は、様々なプロセスによってディーゼル燃料に変換される。バイオディーゼルを生産するための好ましい方法は、本明細書で述べるように、脂質のエステル交換によるものである。バイオディーゼルとして用いるのに好ましいアルキルエステルは、メチルエステルまたはエチルエステルである。
【0168】
本明細書で述べる方法によって生産されたバイオディーゼルは、ほとんどの現代のディーゼルエンジン車両にて、単独で用いても、またはいずれの濃度で従来のディーゼル燃料とブレンドして用いてもよい。従来のディーゼル燃料(石油ディーゼル)とブレンドする場合、バイオディーゼルは、約0.1%から約99.9%で存在してよい。世界の多くでは、任意の燃料混合物中のバイオディーゼルの量を表すのに、「B」ファクター(”B” factor)として知られるシステムを用いている。例えば、20%バイオディーゼルを含有する燃料は、B20と表示される。純粋なバイオディーゼルは、B100と称される。
【0169】
バイオディーゼルはまた、家庭用および商業用ボイラーの加熱用燃料として用いてもよい。既存の石油ボイラーは、ゴム製部品を含んでいる場合があり、バイオディーゼルで使用するには転換が必要であり得る。転換プロセスは、通常は比較的簡便であり、バイオディーゼルが強溶媒であるために、ゴム製部品を合成部品に交換することを含む。その強溶媒としての能力に起因して、バイオディーゼルを燃焼することは、ボイラーの効率を向上させることになる。
【0170】
バイオディーゼルは、ディーゼル配合物の添加物として用いて、純粋超低硫黄ディーゼル(ULSD)燃料の潤滑性を向上することができ、このことは、これが実質的にまったく硫黄を含有していないことから、有利である。
【0171】
バイオディーゼルは、石油ディーゼルよりも良好な溶媒であり、これを用いて、これまで石油ディーゼルで走行していた車両の燃料ライン中の残渣堆積物を分解することができる。
【0172】
バイオディーゼルの生産
バイオディーゼルは、オイルリッチバイオマスに含有されるトリグリセリドのエステル交換によって生産することができる。従って、本発明の別の局面では、バイオディーゼルを生産するための方法が提供される。好ましい態様では、バイオディーゼルを生産するための方法は、(a)本明細書で開示する方法を用いて脂質含有微生物を培養する工程、(b)脂質含有微生物を溶解してライセートを作製する工程、(c)溶解した微生物から脂質を単離する工程、および(d)この脂質組成物をエステル交換し、それによってバイオディーゼルを生産する工程、を含む。
【0173】
微生物の成長、微生物の溶解によるライセートの作製、有機溶媒を含む媒体中でのライセートの処理による均質混合物の形成、および処理したライセートの脂質組成物への分離、のための方法は、上記で述べており、これらはバイオディーゼルの生産方法にも用いることができる。
【0174】
脂質組成物にエステル交換を施すことで、バイオディーゼルに有用である長鎖脂肪酸エステルを得ることができる。好ましいエステル交換反応を以下で概説するが、塩基触媒エステル交換および組換えリパーゼを用いたエステル交換が含まれる。
【0175】
塩基触媒エステル交換プロセスでは、トリアシルグリセリドを、通常は水酸化カリウムであるアルカリ性触媒の存在下にて、メタノールまたはエタノールなどのアルコールと反応させる。この反応により、メチルまたはエチルエステル、および副生物としてグリセリン(グリセロール)が形成される。
【0176】
一般的化学プロセス
動物油および植物油は、通常、遊離脂肪酸と三価アルコールであるグリセロールとのエステルであるトリグリセリドから構成される。エステル交換において、トリアシルグリセリド(TAG)中のグリセロールが、メタノールまたはエタノールなどの短鎖アルコールと置換される。
【0177】
組換えリパーゼの使用
エステル交換はまた、塩基の代わりにリパーゼなどの酵素を用いても実験的に実施した。リパーゼ触媒エステル交換は、例えば、室温から80Cの温度、およびTAGの低級アルコールに対するモル比1:1超、好ましくは約3:1にて行うことができる。
【0178】
エステル交換での使用に適するリパーゼは、例えば、米国特許第4,798,793号;同第4,940,845号;同第5,156,963号;同第5,342,768号;同第5,776,741号;および国際公開公報第89/01032号に記載されている。
【0179】
バイオディーゼルに適する脂肪酸エステルの生産のためにリパーゼを使用するにあたっての1つの課題は、強塩基プロセスで用いられる水酸化ナトリウム(NaOH)の価格よりも、リパーゼの価格が非常に高いということである。この課題は、再生可能である固定化リパーゼの使用によって対処されてきた。しかし、生産コストという面でリパーゼによるプロセスが強塩基プロセスと競争可能とするためには、固定化リパーゼの活性が、再生後、最低限のサイクル数の間維持される必要がある。固定化リパーゼは、エステル交換で通常用いられる低級アルコールによる触媒被毒を受ける。米国特許第6,398,707号(Wu et al.に対して2002年6月4日に発行)には、固定化リパーゼの活性の向上、および活性が低下した固定化リパーゼの再生のための方法が記載されている。
【0180】
特定の態様では、組換えリパーゼは、そのリパーゼが作用する脂質を産生するのと同じ微生物内で発現される。そのリパーゼおよび選択可能マーカーをコードするDNAは、好ましくは、コドン最適化cDNAである。微小藻類での発現のための遺伝子の再コード化の方法は、米国特許第7,135,290号に記載されている。
【0181】
標準
バイオディーゼルのための共通の国際標準は、EN14214である。ASTM D6751は、米国およびカナダで参照される最も一般的なバイオディーゼル標準である。ドイツでは、DIN EN14214が用いられ、英国では、BS EN14214の遵守が求められる。
【0182】
製品がこれらの標準に適合するかどうかを判定するための基本的な工業試験には、通常、ガスクロマトグラフィ、HPLC、およびその他が含まれる。品質標準を満たすバイオディーゼルは、非常に無毒性であり、毒性評価(LD50)が50mL/kg超である。
【0183】
再生可能ディーゼル
再生可能ディーゼルは、C16:0およびC18:0などのアルカンを含み、したがって、バイオディーゼルとは区別可能である。高品質の再生可能ディーゼルは、ASTM D975標準に適合する。
【0184】
本発明の方法で生産された脂質は、再生可能ディーゼル生産のためのフィードストックとして用いることができる。従って、本発明の別の局面では、再生可能ディーゼル生産のための方法が提供される。再生可能ディーゼルは、以下の少なくとも3つのプロセスによって生産することができる:水熱処理(水素化精製(hydrotreating));水素化処理(hydroprocessing);および間接液化。これらのプロセスから、非エステル蒸留物が得られる。これらのプロセスの過程で、本明細書で述べるように生産および単離されたトリアシルグリセリドが、アルカンに変換される。
【0185】
好ましい態様では、再生可能ディーゼルを生産するための方法は、(a)本明細書で開示する方法を用いて脂質含有微生物を培養する工程、(b)この微生物を溶解してライセートを作製する工程、(c)溶解した微生物から脂質を単離する工程、および(d)この脂質を脱酸素化および水素化精製してアルカンを生産し、それによって再生可能ディーゼルを生産する工程、を含む。再生可能ディーゼルの製造に適する脂質は、ヘキサンなどの有機溶媒を用いた微生物バイオマスからの抽出により、または米国特許第5,928,696号に記載のものなどのその他の方法により得ることができる。
【0186】
ある方法では、微生物脂質は、まずクラッキングが水素化精製と合わせて施され、炭素鎖長の短縮、およびに二重結合の飽和がそれぞれ行われる。次に、この物質は、やはり水素化精製と合わせて、異性化される。次に、ナフサ画分を蒸留によって除去してよく、続いて追加の蒸留を行って、D975標準を満たすためにディーゼル燃料に所望される成分の蒸発および蒸留を行い、一方D975標準を満たすために所望されるよりも重い成分は残留させる。トリグリセリドオイルを含むオイルを化学的に修飾するための水素化精製、ハイドロクラッキング、脱酸素化、および異性化の方法は、本技術分野で公知である。例えば、欧州特許出願第1741768(A1)号;欧州特許出願第1741767(A1)号;欧州特許出願第1682466(A1)号;欧州特許出願第1640437(A1)号;欧州特許出願第1681337(A1)号;欧州特許出願第1795576(A1)号;および米国特許第7,238,277号;同第6,630,066号;同第6,596,155号;同第6,977,322号;同第7,041,866号;同第6,217,746号;同第5,885,440号;同第6,881,873号を参照されたい。
【0187】
水素化精製
再生可能ディーゼル生産のための方法の好ましい態様では、アルカン生産のための脂質の処理は、脂質組成物の水素化精製によって行われる。水熱処理では、通常は、バイオマスを高温および高圧にて水中で反応させ、オイルおよび残留固体を形成させる。変換温度は、通常、300から660Fであり、圧力は、水を主として液体に維持するのに十分である100から170気圧(atm)である。反応時間は、15から30分のオーダーである。反応完了後、有機物を水から分離する。これによって、ディーゼルに適する蒸留物が生成される。
【0188】
水素化処理
「グリーンディーゼル」と称される再生可能ディーゼルは、従来の水素化処理技術によって脂肪酸から生産することができる。トリグリセリド含有オイルを、石油との共フィードとして、または専用フィードとしてのいずれかで水素化処理してよい。生成物は、ASTM D975規格に適合するディーゼル燃料である。従って、再生可能ディーゼル生産のための方法の別の好ましい態様では、アルカン生産のための脂質組成物の処理は、脂質組成物の水素化処理によって行われる。
【0189】
再生可能ディーゼルを作製するある方法において、トリグリセリドを処理する第一の工程は、水素化処理による二重結合の飽和、およびこれに続く水素および触媒の存在下、高温での脱酸素化である。ある方法では、水素化および脱酸素化は、同じ反応で行われる。他の方法では、脱酸素化は、水素化の前に行われる。次に、所望に応じて異性化を、やはり水素および触媒の存在下で行ってよい。ナフサ成分は、蒸留によって除去されることが好ましい。例えば、米国特許第5,475,160号(トリグリセリドの水素化);同第5,091,116号(脱酸素化、水素化、および気体除去);同第6,391,815号(水素化);および同第5,888,947号(異性化)を参照されたい。
【0190】
石油精製所では、フィードを水素で処理することによる水素化処理を用いて、不純物を除去している。水素化処理による転換温度は、通常は300から700Fである。圧力は、通常は40から100atmである。反応時間は、通常は10から60分のオーダーである。
【0191】
固体触媒を用いることで、特定の反応速度の上昇、特定の生成物の選択性の向上、および水素消費の最適化が得られる。
【0192】
水素化精製および水素化処理により、最終的には、フィードの分子量の低下が引き起こされる。トリグリセリド含有オイルの場合、トリグリセリド分子は、水素化処理条件下にて以下の4つの炭化水素分子に還元される:1つのプロパン分子、および通常はC8からC18の範囲の3つのより重い炭化水素分子。
【0193】
間接液化
従来の超低硫黄ディーゼルは、2工程プロセスにより、どのような形態のバイオマスからも生産することができる。まず、バイオマスは、水素および一酸化炭素リッチである気体混合物の合成ガスに変換される。次に、この合成ガスが、触媒により液体に変換される。通常、液体の生成は、フィッシャートロプシュ(FT)合成を用いて行われる。この技術は、石炭、天然ガス、および重油に適用される。従って、再生可能ディーゼル生産のための方法のさらに別の好ましい態様では、アルカン生産のための脂質組成物の処理は、脂質組成物の間接液化によって行われる。
【0194】
ジェット燃料
航空機用燃料は、透明から淡黄色である。最も一般的な燃料は、航空機用A−1(Aeroplane A−1)として分類される無鉛/パラフィンオイル系燃料であり、これは、国際的に標準化された一連の規格に従って生産される。航空機用燃料は、1000もしくはそれ以上も考えられる数多くの種々の炭化水素の混合物である。これらのサイズ(分子量または炭素数)の範囲は、凝固点または煙点を例とする生成物に対する要求事項によって制限される。ケロソン形(Kerosone−type)航空機用燃料(ジェットAおよびジェットA−1を含む)は、約8から16炭素数までの炭素数分布である。ワイドカット(wide−cut)またはナフサ形(naphta−type)航空機用燃料(ジェットBを含む)は、通常、約5から15炭素までの炭素数分布である。
【0195】
両航空機用燃料共に(ジェットAおよびジェットB)、数多くの添加剤を含有していてよい。有用な添加剤としては、これらに限定されないが、抗酸化剤、帯電防止剤、腐食防止剤、および燃料系統凍結防止(FSII)剤が挙げられる。抗酸化剤は、ゴム化(gumming)を防止するものであり、通常は、アルキル化フェノールを主体とし、例えば、AO−30、AO−31、またはAO−37である。帯電防止剤は、静電気を消散させ、火花発生を防止するものである。例えば、活性成分としてジノニルナフチルスルホン酸(DINNSA)を含むStadis450である。腐食防止剤としては、例えばDCI−4Aは、民生用および軍用燃料に用いられ、DCI−6Aは、軍用燃料に用いられる。FSII剤としては、例えばDi−EGMEが挙げられる。
【0196】
ソリューションは、藻類燃料を既存のジェット燃料とブレンドすることである。本発明は、そのようなソリューションを提供する。本発明の方法によって生産された脂質は、ジェット燃料生産用のフィードストックとして用いることができる。従って、本発明の別の局面では、ジェット燃料を生産するための方法が提供される。ここで、本発明の方法によって生産された脂質からジェット燃料を生産するための2つの方法が提供され:流動触媒クラッキング(FCC)および水素化脱酸素(HDO)である。
【0197】
流動触媒クラッキング
流動触媒クラッキング(FCC)は、オレフィン、特にプロピレンを、重質原油画分から生産するために用いられる1つの方法である。文献には、FCCを用いてカノーラ油などの植物油を処理することで、ガソリン燃料として有用である炭化水素流を得ることが可能であると報告されている。
【0198】
本発明の方法で生産された脂質は、オレフィンに変換することができる。このプロセスは、生産された脂質をFCCゾーンに通流させること、およびジェット燃料として有用であるオレフィンから成る生成物流を回収することを含む。生産された脂質は、クラッキング条件にてクラッキング触媒と接触され、ジェット燃料として有用であるオレフィンと炭化水素を含む生成物流が提供される。
【0199】
好ましい態様では、ジェット燃料を生産するための方法は、(a)本明細書で開示する方法を用いて脂質含有微生物を培養する工程、(b)この脂質含有微生物を溶解してライセートを作製する工程、(c)このライセートから脂質を単離する工程、および(d)この脂質組成物を処理し、それによってジェット燃料を生産する工程、を含む。
【0200】
ジェット燃料を生産するための方法の好ましい態様では、脂質組成物を、流動触媒クラッキングゾーンに通流させてよく、これは、1つの態様では、脂質組成物をクラッキング条件にてクラッキング触媒と接触させて、C−Cオレフィンを含む生成物流を提供することを含んでよい。
【0201】
この方法の特定の態様では、脂質組成物中に存在し得るいずれの不純物をも除去することが望ましい場合がある。従って、脂質組成物が流動触媒クラッキングゾーンに通流される前に、脂質組成物は前処理される。前処理は、脂質組成物をイオン交換樹脂と接触させることを含んでよい。イオン交換樹脂は、Amberlyst(商標)−15などの酸性イオン交換樹脂であり、脂質組成物を上向流または下向流のいずれかで通流させる反応器の樹脂床として用いてよい。その他の前処理としては、硫酸、酢酸、硝酸、または塩酸などの酸と脂質組成物を接触させることによる、緩酸による洗浄を挙げることができる。接触は、希酸溶液により、通常は周囲温度および大気圧で行われる。
【0202】
所望に応じて前処理されていてよい脂質組成物は、炭化水素系成分がオレフィンにクラッキングされるFCCゾーンへと送流される。触媒クラッキングは、反応ゾーン内にて、微細に粉砕された微粒子物質から成る触媒と脂質組成物を接触させることによって行われる。この反応は、ハイドロクラッキングとは対照的な触媒クラッキングであり、水素の添加または水素の消費なしで行われる。クラッキング反応が進行するに従って、触媒上に著しい量のコークスが堆積する。触媒は、再生ゾーンにて触媒からコークスを高温で焼却除去することによって再生される。本明細書にて「コークス化触媒(coked catalyst)」と称されるコークス含有触媒は、反応ゾーンから再生が行われる再生ゾーンへ連続的に輸送され、再生ゾーンからの実質的にコークスフリーの再生触媒と置き換えられる。種々の気体流による触媒粒子の流動化により、反応ゾーンと再生ゾーンとの間の触媒の輸送が可能となる。本明細書で述べる脂質組成物のものなどの炭化水素の、触媒流動化流でのクラッキング、反応および再生ゾーン間の触媒の輸送、ならびに再生器でのコークスの燃焼の方法は、FCCプロセスの技術分野の当業者には公知である。脂質組成物をクラッキングしてC−Cオレフィンを生成させるために有用である代表的なFCCの適用および触媒は、その全体が参照することで組み入れられる米国特許第6,538,169号、同第7,288,685号に記載されている。
【0203】
1つの態様では、本発明の脂質組成物のクラッキングは、FCCゾーンのライザーセクション(riser section)、または別の選択肢として、リフトセクション(lift section)で行われる。脂質組成物は、脂質組成物の急速な蒸発を引き起こすノズルによってライザー部へ導入される。触媒と接触する前の脂質組成物の温度は、通常は約149Cから約316C(300Fから600F)である。触媒は、混合容器からライザー部へ送流され、そこで、約2秒もしくはそれ未満の時間脂質組成物と接触する。
【0204】
混合された触媒および反応を起こした脂質組成物の蒸気は、次に出口部を通ってライザー部の最上部から排出され、オレフィンを含有するクラッキング生成物蒸気流と、著しい量のコークスに覆われ、一般的には「コークス化触媒」と称される触媒粒子の回収とに分離される。所望される生成物の所望されない他の生成物へのさらなる変換を促進する場合がある触媒と脂質組成物との接触時間を最小限に抑えるための取り組みとして、スワールアーム配置(swirl arm arrangement)などの分離器のいずれの配置も用いて、生成物流からコークス化触媒を迅速に除去してよい。スワールアーム分離器(swirl arm separator)を例とする分離器は、チャンバーの上側部分に設置され、そのチャンバーの下側部分にはストリッピングゾーン(stripping zone)が位置する。スワールアーム配置によって分離された触媒は、ストリッピングゾーンに落下する。軽質オレフィンを含むクラッキングされた炭化水素およびある程度の触媒を含有するクラッキング生成物蒸気流は、サイクロンと接続された導管を介してチャンバーから排出される。サイクロンは、生成物蒸気流から残留触媒粒子を除去して、粒子濃度を非常に低いレベルに低減する。次に、生成物蒸気流は、分離容器の最上部から排出される。サイクロンによって分離された触媒は、分離容器へ、次にストリッピングゾーンへと戻される。ストリッピングゾーンでは、スチームとの向流接触により、触媒表面から吸着した炭化水素が除去される。
【0205】
低い炭化水素分圧での運転が、軽質オレフィンの生産には好ましい。従って、ライザー圧の設定は、約35から172kPa(5から25psia)の炭化水素分圧での約172から241kPa(25から35psia)であり、好ましい炭化水素分圧は、約69から138kPa(10から20psia)である。このような炭化水素の比較的低い分圧は、希釈剤が脂質組成物の10から55重量%、好ましくは脂質組成物の約15重量%となる度合いにて、希釈剤としてのスチームを用いることで達成される。乾性ガスなどのその他の希釈剤を用いて対応する炭化水素分圧を達成してもよい。
【0206】
ライザー出口部でのクラッキング流の温度は、約510Cから621C(950Fから1150F)である。しかし、ライザー出口部温度が566C(1050F)よりも高い場合、より多くの乾性ガスおよびより多くのオレフィンが生成する。一方、ライザー出口部温度が566C(1050F)よりも低い場合、エチレンおよびプロピレンの生成量は低下する。従って、FCCプロセスの運転は、好ましい温度である約566Cから約630C、好ましい圧力である約138kPaから約240kPa(20から35psia)にて行うことが好ましい。このプロセスに対するもう1つの条件は、触媒の脂質組成物に対する比率であり、これは、約5から約20まで変動してよく、好ましくは、約10から約15である。
【0207】
ジェット燃料生産のための方法の1つの態様では、脂質組成物は、FCC反応器のリフトセクションに導入される。リフトセクションの温度は非常に高く、約700C(1292F)から約760C(1400F)の範囲であり、触媒の脂質組成物に対する比率は約100から約150である。脂質組成物をリフトセクションに導入することで、多量のプロピレンおよびエチレンが生産されることが予想される。
【0208】
生産された気体および液体炭化水素生成物は、ガスクロマトグラフィ、HPLCなどによって分析することができる。
【0209】
水素化脱酸素
本明細書で述べるようにして生産された脂質組成物または脂質を用いてジェット燃料を生産するための方法の別の態様では、脂質組成物または脂質の構造が、水素化脱酸素(HDO)と称されるプロセスによって分解される。
【0210】
HDOとは、水素によって酸素を除去することを意味し、すなわち、物質の構造を破壊しながら酸素が除去されるものである。オレフィン性二重結合が水素化され、硫黄および窒素化合物のいずれも除去される。硫黄の除去は水素化脱硫(HDS)と称される。原料(脂質組成物または脂質)の前処理および純度が、触媒の有効寿命に貢献する。
【0211】
HDO/HDS工程では、一般的に、水素がフィードストック(脂質組成物または脂質)と混合され、次に、この混合物が、単一相または二相フィードストックのいずれかとして、並流として触媒床を通流される。HDO/MDS工程の後、生成物画分が分離され、別の異性化反応器へ送られる。生物学的出発物質のための異性化反応器は、並流反応器として文献(フィンランド特許第100248号)に記載されている。
【0212】
本明細書の脂質組成物または脂質を例とする炭化水素フィードを水素化することによって燃料を生産するためのプロセスは、脂質組成物または脂質を、水素ガスとの並流として第一の水素化ゾーンに通流し、その後、炭化水素排出流を、炭化水素排出流に対する向流として第二の水素化ゾーンに水素ガスを送ることによって第二の水素化ゾーンでさらに水素化することによって行ってもよい。脂質組成物をクラッキングしてC−Cオレフィンを生成させるために有用である代表的なHDOの適用および触媒は、その全体が参照することで組み入れられる米国特許第7,232,935号に記載されている。
【0213】
通常、水素化脱酸素工程では、本明細書の脂質組成物または脂質などの生物成分の構造が分解され、酸素、窒素、リン、および硫黄化合物、ならびに軽質炭化水素が気体として除去され、オレフィン結合が水素化される。このプロセスの第二の工程、すなわちいわゆる異性化工程では、異性化は、炭化水素鎖を分岐させ、低温でのパラフィンの性能を向上させるために行われる。
【0214】
第一の工程、すなわちクラッキングプロセスのHDO工程では、水素ガスおよび水素化されるべき本明細書の脂質組成物または脂質は、並流または向流のいずれかとしてHDO触媒床系に送られ、前記触媒床系は、1もしくは2つ以上の触媒床を含み、好ましくは1〜3の触媒床である。HDO工程は、通常、並流の形で運転される。HDO触媒床系が2もしくは3つ以上の触媒床を含む場合、触媒床の1もしくは2つ以上を向流の原理を用いて運転してよい。
【0215】
HDO工程において、圧力は、20から150バールの間で、好ましくは50から100バールの間で様々であり、温度は、200から500Cの間で、好ましくは300〜400Cの範囲で様々である。
【0216】
HDO工程において、周期表のVIIおよび/またはVIB族金属を含有する公知の水素化触媒を用いてよい。好ましくは、水素化触媒は、担持されたPd、Pt、Ni、NiMo、またはCoMo触媒であり、担体は、アルミナおよび/またはシリカである。通常、NiMo/AlおよびCoMo/Al触媒が用いられる。
【0217】
HDO工程の前に、所望に応じて、本明細書の脂質組成物または脂質に、より温和な条件下にて予備水素化処理を行い、それによって二重結合の副反応を回避してもよい。そのような予備水素化は、予備水素化触媒の存在下、50から400Cの温度および1から200バールの水素圧にて、好ましくは、150から250Cの温度および10から100バールの水素圧にて行われる。触媒は、周期表のVIIIおよび/またはVIB族金属を含有していてよい。好ましくは、予備水素化触媒は、担持されたPd、Pt、Ni、NiMo、またはCoMo触媒であり、担体は、アルミナおよび/またはシリカである。
【0218】
水素を含有するHDO工程からの気体流は、冷却され、次に一酸化炭素、二酸化炭素、窒素、リン、および硫黄化合物、気体軽質炭化水素、ならびにその他の不純物がそこから除去される。圧縮後、精製水素または再生水素は、第一の触媒床および/または触媒床同士の間に戻され、引き抜かれた気体流(withdrawn gas stream)の補充に用いられる。凝縮液体から水が除去される。この液体は、第一の触媒床または触媒床同士の間に送られる。
【0219】
HDO工程後、生成物には異性化工程が施される。このプロセスで重要なことは、炭化水素が異性化触媒と接触する前に、不純物が可能な限り完全に除去されていることである。異性化工程は、所望に応じてストリッピング工程を含んでよく、ここで、HDO工程からの反応生成物を、水蒸気、または軽質炭化水素、窒素、もしくは水素などの適切な気体でのストリッピングによって精製することができる。所望に応じて行ってよいストリッピング工程は、気体および液体が互いに接触される異性化触媒上流のユニットにて向流の形で実施されるか、または、実際の異性化反応器の前の向流原理を用いる別個のストリッピングユニットにて実施される。
【0220】
ストリッピング工程後、水素ガスおよび本明細書の水素化された脂質組成物または脂質、ならびに所望に応じてn−パラフィン混合物が、1もしくは複数の触媒床を含む反応性異性化ユニットへと送られる。異性化工程の触媒床は、並流または向流の形態のいずれで運転してもよい。
【0221】
このプロセスにおいて重要なことは、向流の原理が異性化工程で適用されることである。異性化工程において、このことは、所望に応じて行ってよいストリッピング工程もしくは異性化反応工程のいずれか、またはその両方を向流の形態で実施することによって行われる。
【0222】
異性化工程およびHDO工程は、同一の圧力容器で行っても、または別々の圧力容器で行ってもよい。所望に応じて行ってよい予備水素化は、別個の圧力容器で行っても、またはHDOおよび異性化工程と同一の圧力容器で行ってもよい。
【0223】
異性化工程において、圧力は、20から150バールの範囲で様々であり、好ましくは20から100バールの範囲であり、温度は、200から500Cの間、好ましくは300から400Cの間である。
【0224】
異性化工程において、本技術分野で公知の異性化触媒を用いてよい。適切な異性化触媒は、モレキュラーシーブおよび/またはVII族金属および/またはキャリアを含有する。好ましくは、異性化触媒は、SAPO−11またはSAPO41またはZSM−22またはZSM−23またはフェリエライト、およびPt、Pd、またはN1、およびAlまたはSiOを含有する。典型的な異性化触媒は、例えば、Pt/SAPO−11/Al、Pt/ZSM−22/Al、Pt/ZSM−23/Al、およびPt/SAPO−11/SiOである。
【0225】
生成物として、ディーゼル燃料またはその構成成分として有用である生物由来の高品質炭化水素成分が得られ、前記炭化水素成分の密度、セタン価、および低温性能は、非常に優れている。
【0226】
微生物操作
上述のように、本発明の特定の態様では、微生物を遺伝的に改変して、脂質産生の向上、微生物によって産生される成分の特性もしくは割合の改変、または種々のフィードストック物質での新規の成長特性の改善もしくは提供を行うことが望ましい。
【0227】
プロモーター、cDNA、および3’UTR、ならびにベクターのその他のエレメントは、天然源から単離された断片を用いたクローン技術によって作製することができる(例えば、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Sambrook et al. (3d edition, 2001, Cold Spring Harbor Press;および米国特許第4,683,202号を参照)。別の選択肢として、エレメントは、公知の方法を用いて合成によって作製することもできる(例えば、Gene. 1995 Oct. 16; 164(1):49−53を参照)。微生物の操作方法は、あらゆる点でそのすべてが参照することで本明細書に組み入れられる米国特許出願第20090011480号を例として、本技術分野で一般的に公知である。
【実施例】
【0228】
以下は、本発明を実施するための具体的態様の例である。これらの例は、説明のためだけに提供されるものであり、いかなる形であっても本発明の範囲を限定することを意図するものではない。用いた数値(例:量、温度など)に関してはその正確性を確保するよう努めたが、ある程度の実験誤差や偏差は、当然許容されるべきである。
【0229】
本発明の実践では、特に断りのない限り、タンパク質化学、生化学、組換えDNA技術、および薬理学の従来の方法が、当業者の技能の範囲内で用いられる。そのような技術は、文献にて十分に説明されている。例えば、T.E. Creighton, Proteins: Structures and Molecular Properties (W.H. Freeman and Company, 1993); A.L. Lehninger, Biochemistry (Worth Publishers, Inc., current addition); Sambrook, et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual (2nd Edition, 1989); Methods In Enzymology (S. Colowick and N. Kaplan eds., Academic Press, Inc.);Remington’s Pharmaceutical Sciences, 18th Edition (Easton, Pennsylvania: Mack Publishing Company, 1990); Carey and Sundberg Advanced Organic Chemistry 3rd Ed. (Plenum Press) Vols A and B(1992)を参照されたい。
【0230】
実施例1:バイオマスは微小藻類発酵への低強度照明の適用によって増加する
ボツリオコッカスは、自然に炭化水素混合物を合成してこれに耐性を有し、85重量%もの炭化水素を産生するものであり、多くの場合、主たる炭化水素はボツリオコッセンである。これは、偏性光栄養生物であることも知られているが、グルコースを取り込む能力を有すると思われる(参考文献:”Biosynthesis of the triterpenoids, botryococcenes and tetramethylsqualene in the B race of Botryococcus braunii via the non−mevalonate pathway” Sato et al. 2003. Tetrahedron Letter 44:7035−7037)。
【0231】
ボツリオコッカス培養物は、BG11培地上(参考文献:”Autotrophic cultivation of Botryococcus braunii for the production of hydrocarbons and exopolysaccharides in various media”. Dayananda et al. 2007. Biomass and Bioenergy. 31:87−93)、バイオリアクター中、25〜35℃、溶存酸素10〜30%にて成長させる。ボツリオコッカスの従属栄養成長に対する光シグナルの影響は、異なる条件(暗+グルコースなし、暗+グルコースあり、明+グルコースなし、および明+グルコースあり)からの培養物の細胞乾燥重量を比較することで試験する。最適光強度(0.01〜300μmol光子m−2−1)および異なる光スペクトル(360〜700nm)、ならびに異なる明時間(9〜16時間)について試験する。低放射照度光とグルコースとの組み合わせにより、a)成長速度の改善、b)カロテノイド、脂質、およびボツリオコッセンなどの生成物の増加が得られる。
【0232】
実施例2:イソプレノイド経路の光制御
イソプレン、モノテルペン、およびセスキテルペンは、ある種の植物種および微小藻類種によって合成され、放出されるが、すべての種がこの能力を有しているわけではない。これらの揮発性の非必須イソプレノイド化合物は、カロテノイドおよび炭化水素などのより大きい商業的に有用であるイソプレノイドと同一の生化学的前駆体を共有している。2つの別々の経路が植物細胞内で作動することにより、すべてのイソプレノイドに共通のプレニルジホスフェート前駆体が合成される。
【0233】
サイトゾルおよびミトコンドリア前駆体は、メバロン酸(MVA)経路によって産生され、一方最近発見されたメチルエリスリトールリン酸(MEP)経路は、プラスチド内に位置する。ボツリオコッカスブラウニーは、非メバロン酸、MEP経路によって炭化水素を産生する(図2)。
【0234】
光は、MEP経路の制御にとって最も重要な環境因子である。1−デオキシ−d−キシルロース 5リン酸レダクトイソメラーゼ(DXR)は、律速段階であり、DXRをコードする遺伝子の発現は、光によって制御される(参考文献:”Expression and molecular analysis of the Arabidopsis DXR gene encoding 1−deoxy−d−xylulose 5−phosphate reductoisomerase, the first committed enzyme of the 2−c−methyl−d−erythritol 4−phosphate pathway”. Carretero−Paulet et al. Plant Physiology. 2002. 129: 1581−1591)。
【0235】
別の例は、単細胞緑藻類であるコナミドリムシ内のカロテノイド生合成酵素をコードする遺伝子の青色光活性化である。マイクロアレイおよび定量PCR実験により、PDS、HDS、PSY、およびZDSなどのカロテノイド生合成酵素をコードする遺伝子が、非常に低い放射照度の白色光(0.01μmol光子m−2−1)および青色光によって活性化されることが示された。さらなる証拠により、青色光受容体であるフォトトロピンが、カロテノイド生合成のための青色光活性化遺伝子発現に関与していることが示唆された(参考文献:”Phototropin involvement in the expression of genes encoding chlorophyll and carotenoid biosynthesis enzymes and LHC apoproteins in Chlamydomonas reinhardtii”. Im et al. The Plant Journal. 2006. 48:1−16)。
【0236】
一例としては、ボツリオコッカスによる炭化水素産生の増加である。種々の光強度(0.01〜300μmol光子m−2−1)および異なる光スペクトル(360〜700nm)をボツリオコッカス培養物へ適用し、異なる炭化水素種の量をGC−MSで測定する。
【0237】
実施例3.種々の光条件下におけるネオクロリスオレアブンダンスの成長
物質および方法
微小藻類および培養条件
ネオクロリスオレアブンダンス株UTEX1185は、テキサス大学(オースチン,テキサス州 米国)の藻類培養収集物から入手した。この微小藻類の初期培養物の成長は、2%グルコースを含む改変bold3N培地120mlを含む250mlのエルレンマイヤーフラスコ中、25℃の室温にて、アルミニウム箔でフラスコを緩く被覆し、交互に配置した2つの40W自然太陽光蛍光灯ランプ(392316,フィリップス)および2つの40W植物アクアリウム用蛍光灯ランプ(392282,フィリップス)の下、130rpmのオービタルシェーカー上にて行った。この培地(改変MB3N)は、脱イオン水1Lあたり以下の成分を含有していた:0.75g NaNO、0.075g KHPO、0.074g MgSO・7HO、0.025g CaCl・2HO、0.176g KHPO、0.025g NaCl、6ml P−IV金属溶液(1LのdI水中、0.75g NaEDTA・2HO、0.097g FeCl・6HO、0.041g MnCl・4HO、0.005g ZnCl、0.002g CoCl・6HO、0.004g NaMoO・2HO)、各3つのビタミンの1ml(0.1mM ビタミンB12、0.1mM ビオチン、6.5mM チアミン、別々に50mM HEPES pH7.8に溶解)。培地の最終pHは、培地をオートクレーブする前に、20% KOHで7.5に調節した。ビタミン溶液を添加して、オートクレーブした培地を冷却した。初期培養物が特定のコンフルエンスに到達したところで、Genesys 10 UV分光光度計(サーモサイエンティフィック(Thermo Scientific))を用い、680nmおよび750nmでの光学濃度(OD)によってその濃度を測定した。
【0238】
実験手順および成長測定
3つの異なる波長の光(白色、青色、および赤色)を試験した。LED照明は、スーパーブライトLED社(Super Bright LEDs, Inc.)から購入した(白色:RL5−W3030、青色:RL5−B2430、赤色:RL5−R1330)。各々の光波長に対して、2つの反復サンプルにて以下のような4つの異なる条件を設定した:
1−2. 改変MB3N + グルコースなし + 暗
3−4. 改変MB3N + グルコースなし + 薄明
5−6. 改変MB3N + 2%グルコース + 暗
7−8. 改変MB3N + 2%グルコース + 薄明
【0239】
最終体積120mlの細胞培養物を入れた合計で8つの250mlエルレンマイヤーフラスコを、各々の条件に対して750nmでのOD0.1の初期細胞濃度(およそ1.1×10細胞/ml)で準備した。光の強度は、白色に対しては3〜4μmol/m−1光子、青色に対しては2〜3μmol/m−1光子、赤色に対しては1〜2μmol/m−1光子に設定した。オービタルシェーカーの速度は、135rpmに設定した。実験は、室温にて2週間行った。24時間ごとに各フラスコから1mlの細胞培養物を採取し、サーモフィッシャーサイエンティフィック(Thermo Fisher Scientific)(ウォルサム,マサチューセッツ州,米国)製Genesys 10 UV分光光度計を用い、680nmおよび750nmでのODを測定することによって細胞濃度の評価を行った。比成長速度は、培養物の光学濃度の対数を時間に対してプロットすることによって決定した(図3)。低放射照度の赤色、白色、または青色光とグルコースとの組み合わせにおいて、コントロールと比較しての成長速度の向上が見られた。
【0240】
実施例4.種々の光条件下におけるボツリオコッカススデチクスの成長
物質および方法
株および培地
ボツリオコッカススデチクス株UTEX2629は、テキサス大学(オースチン,テキサス州 米国)の藻類培養収集物から入手した。ストック培養物の成長は、2%グルコースを含む改変BG11培地120mlを含む250mlエルレンマイヤーフラスコ中、25℃の室温にて、薄明下(4〜5μmol/m−1光子)、130rpmのオービタルシェーカー上にて行った。薄明照明は、40W自然太陽光蛍光灯ランプ(392316,フィリップス)および40W植物アクアリウム用蛍光灯ランプ(392282,フィリップス)の2つの異なるランプから構成する。1Lの培地(改変BG−11)は、以下を含有していた:10mM HEPES(pH7.8)、1.5g NaNO、0.04g KHPO、0.06g MgSO・7HO、0.036g CaCl・2HO、0.006g クエン酸HO、0.0138g クエン酸鉄(III)アンモニウム、0.001g NaEDTA・2HO、0.02g NaCO、2.86mg HBO、1.81mg MnCl・4HO、0.22mg ZnSO・7HO、0.39mg NaMoO・2HO、0.079mg CuSO・5HO、0.0494mg Co(NO・6HO、0.5g カゼイン加水分解物、および各3つのビタミンの1ml(0.1mM ビタミンB12、0.1mM ビオチン、6.5mM チアミン、別々に50mM HEPES pH7.8に溶解)。培地の最終pHは、20% KOHで7.8に調節した。
【0241】
実験手順および成長測定
3つの異なる波長の光(白色、青色、および赤色)を試験した。LED照明は、スーパーブライトLED社から購入した(白色:RL5−W3030、青色:RL5−B2430、赤色:RL5−R1330)。各々の光波長に対して、2つの反復サンプルにて以下のような4つの異なる条件を設定した:
1−2. 改変BG−11 + グルコースなし + 暗
3−4. 改変BG−11 + グルコースなし + 薄明
5−6. 改変BG−11 + 2%グルコース + 暗
7−8. 改変BG−11 + 2%グルコース + 薄明
【0242】
最終体積120mlの細胞培養物を入れた合計で8つの250mlエルレンマイヤーフラスコを、各々の条件に対して750nmでのOD0.1の初期細胞濃度(およそ1.1×10細胞/ml)で準備した。光の強度は、白色に対しては3〜4μmol/m−1光子、青色に対しては2〜3μmol/m−1光子、および赤色に対しては1〜2μmol/m−1光子に設定した。オービタルシェーカーの速度は、135rpmに設定した。実験は、室温にて2週間行った。各フラスコから1mlの細胞培養物を毎日採取し、サーモフィッシャーサイエンティフィック(ウォルサム,マサチューセッツ州,米国)製Genesys 10 UV分光光度計を用い、680nmおよび750nmでのODを測定することによって細胞濃度の評価を行った。比成長速度は、培養物の光学濃度の対数を時間に対してプロットすることによって決定した(図4)。低放射照度の赤色、白色、または青色光とグルコースとの組み合わせにおいて、コントロールと比較しての成長速度の向上が見られた。
【0243】
実施例5:ボツリオコッカスブラウニー:制御照明による発酵
物質および方法
株および培地
ボツリオコッカスブラウニー株UTEX2441は、テキサス大学(オースチン,テキサス州 米国)の藻類培養収集物から入手した。ストック培養物の成長は、2%グルコースを含む改変BG11培地120mlを含む250mlエルレンマイヤーフラスコ中、25℃の室温にて、薄明下(4〜5μmol/m−1光子)、130rpmのオービタルシェーカー上にて行った。薄明照明は、40W自然太陽光蛍光灯ランプ(392316,フィリップス)および40W植物アクアリウム用蛍光灯ランプ(392282,フィリップス)の2つの異なるランプから構成した。1Lの培地(改変BG−11)は、以下を含有していた:10mM HEPES(pH7.8)、1.5g NaNO、0.04g KHPO、0.06g MgSO・7HO、0.036g CaCl・2HO、0.006g クエン酸HO、0.0138g クエン酸鉄(III)アンモニウム、0.001g NaEDTA・2HO、0.02g NaCO、2.86mg HBO、1.81mg MnCl・4HO、0.22mg ZnSO・7HO、0.39mg NaMoO・2HO、0.079mg CuSO・5HO、0.0494mg Co(NO・6HO、0.5g カゼイン加水分解物、および各3つのビタミンの1ml(0.1mM ビタミンB12、0.1mM ビオチン、6.5mM チアミン、別々に50mM HEPES pH7.8に溶解)。培地の最終pHは、20% KOHで7.8に調節した。
【0244】
実験手順および成長測定
3つの異なる波長の光(白色、青色、および赤色)を試験した。LED照明は、スーパーブライトLED社から購入した(白色:RL5−W3030、青色:RL5−B2430、赤色:RL5−R1330)。各々の光波長に対して、2つの反復サンプルにて以下のような4つの異なる条件を設定した:
1−2 改変BG−11 + グルコースなし + 暗
3−4 改変BG−11 + グルコースなし + 薄明
5−6 改変BG−11 + 2%グルコース + 暗
7−8 改変BG−11 + 2%グルコース + 薄明
【0245】
最終体積120mlの細胞培養物を入れた合計で8つの250mlエルレンマイヤーフラスコを、各々の条件に対して750nmでのOD0.1の初期細胞濃度(およそ1.1×10細胞/ml)で準備した。光の強度は、白色に対しては3〜4μmol/m−1光子、青色に対しては2〜3μmol/m−1光子、および赤色に対しては1〜2μmol/m−1光子に設定した。オービタルシェーカーの速度は、150rpmに設定した。実験は、室温にて2週間行った。2日おきに各フラスコから5mlの細胞培養物を採取し、乾燥細胞重量(DCW)によって細胞成長の評価を行った。比成長速度は、培養物のDCWを時間に対してプロットすることによって決定した(図5)。
【0246】
ナイルレッドを用いることによる中性脂質の蛍光測定
藻類懸濁液の1mlに、アセトン中のナイルレッド溶液(250ug/ml)の4ulを添加した。この混合物を、室温にて10分間のインキュベーションの間に2回ボルテックス攪拌した。インキュベーション後、染色した藻類サンプルの200ulを、96−ウェルプレートの個々のウェルに移した。モレキュラーデバイス(Molecular Devices)の96ウェルプレート分光蛍光光度計上、励起波長490nm、発光波長585nm、530の発光カットオフフィルターを用いて蛍光測定した。藻類サンプルの相対蛍光強度を決定するために、蛍光強度からブランク(媒体中ナイルレッドのみ)を差し引いた。
【0247】
結果
赤色光+グルコースでは、暗下での従属栄養培養(暗+グルコース)と比較して、UTEX2441の成長速度が35%上昇した(図5)。脂質レベルも、赤色光条件下では、コントロールと比較して52%上昇した(図6)。
【0248】
実施例6.コナミドリムシ:制御照明による発酵
物質および方法
株および培地
コナミドリムシ株UTEX2243は、テキサス大学(オースチン,テキサス州 米国)の藻類培養収集物から入手した。ストック培養物の成長は、120ml TAP培地を含む250mlエルレンマイヤーフラスコ中、25℃の室温にて、薄明下(4〜5μmol/m−1光子)、130rpmのオービタルシェーカー上にて別々に行った。薄明照明は、2つの異なるランプから構成した(40W自然太陽光蛍光灯ランプ(392316,フィリップス)および40W植物アクアリウム用蛍光灯ランプ(392282,フィリップス))。1Lの培地(TAP)は、以下を含有していた:2.42g Tris、25ml TAP塩溶液(15g NHCl、4g MgSO・7HO、2g CaCl・2HO)、0.375ml リン酸溶液(100mlの水に28.8g KHPO、14.4g KHPO)、1ml ハンター微量元素溶液(Hutner’s trace elements solution)(1Lの微量元素溶液中に、50g EDTA二ナトリウム塩、22g ZnSO・7HO、11.4g HBO、5.06g MnCl・4HO、1.61g CoCl・6HO、1.57g CuSO・5HO、1.10(NHMo24・4HO、4.99g FeSO・7HOを含有し、KOHまたはHClを用いてpH7.0とした)、および1ml 氷酢酸。培地の最終pHは、氷酢酸で7.0に調節する。Tris最少培地(TP)を、酢酸を除く上記に挙げたすべての成分を用いて作製した。この培地のpHは、HClで7.0に調節した。
【0249】
実験手順および成長測定
LED照明は、スーパーブライトLED社から購入した(RL5−W3030)。2つの反復サンプルにて以下のような4つの異なる条件を設定した:
1−2. TP(酢酸なし) + 暗
3−4. TP(酢酸なし) + 薄明
5−6. TAP(酢酸あり) + 暗
7−8. TAP(酢酸あり) + 薄明
【0250】
最終体積120mlの細胞培養物を入れた合計で8つの250mlエルレンマイヤーフラスコを、各々の条件について1.0×10細胞/mlの初期細胞濃度で準備した。光の強度は、3〜5μmol/m−1光子に設定した。オービタルシェーカーの速度は、140rpmに設定した。実験は、室温にて1週間行った。各フラスコから500ulの細胞培養物を毎日採取し、細胞数を計数することによって細胞成長の評価を行った。細胞は、計数前に、ルゴール液(1:20)を用いて鞭毛消失(deflagellated)を行った。比成長速度は、細胞数を時間に対してプロットすることによって決定した。低放射照度白色光とTAPとの組み合わせにより、コントロールと比較した成長速度の上昇が見られた(図7)。
【0251】
実施例7:低放射照度光による微小藻類の培養
物質および方法
株および培地
微小藻類株(例:クラミドモナス、ボツリオコッカス、ネオクロリス、藍藻植物門、緑藻植物門、紅藻植物門、クリプト植物門、クロララクニオン植物門、ハプト植物門、ユーグレナ植物門、不等毛植物門、珪藻類、および/または上記の説明で述べたもの)は、例えば、テキサス大学(オースチン,テキサス州 米国)の藻類培養収集物から入手する。ストック培養物の成長は、例えば、適切な培地(例えば、製造元の説明書を参照)を含む250mlエルレンマイヤーフラスコ中、約25℃の室温にて、薄明下(例:4〜5μmol/m−1光子)、約130rpmのオービタルシェーカー上にて行う。グルコースを例とする適切な炭素源を培地に用いる。薄明照明は、2つの異なるランプから構成してよく、例えば、40W自然太陽光蛍光灯ランプ(392316,フィリップス)および40W植物アクアリウム用蛍光灯ランプ(392282,フィリップス)である。培地の最終pHは、特定の株に対して適切に調節する。例えば製造元の説明書を参照されたい。
【0252】
実験手順および成長測定
3つの異なる波長の光(白色、青色、および赤色)を試験する。LED照明は、スーパーブライトLED社から購入する(白色:RL5−W3030、青色:RL5−B2430、赤色:RL5−R1330)。各々の光波長に対して、2つの反復サンプルにて以下のような4つの異なる条件を設定する:
1−2 炭素なし + 暗
3−4 炭素なし + 薄明
5−6 炭素あり + 暗
7−8 炭素あり + 薄明
【0253】
最終体積120mlの細胞培養物を入れた合計で8つの250mlエルレンマイヤーフラスコを、例えば、各々の条件に対して750nmでのO.D0.1の初期細胞濃度(およそ1.1×10細胞/ml)で準備する。最適な光強度(例:0.01〜300μmol光子m−2−1)および種々の光スペクトル(例:360〜700nm)、ならびに種々の明時間(例:9〜16時間の明)を試験する。光の強度は、例えば、白色に対しては3〜4μmol/m−1光子、青色に対しては2〜3μmol/m−1光子、および赤色に対しては1〜2μmol/m−1光子に設定する。種々の炭素源を、種々の濃度で試験し、例えば培地の1%、2%、または3%の濃度の、例えばグルコース、スクロース、フルクトースである。オービタルシェーカーの速度は、例えば150rpmに設定する。実験は、室温にて、1週間未満、1、2、3週間、またはそれを超える期間行う。1から2日おきに各フラスコから各細胞培養物のアリコートを採取し、例えば乾燥細胞重量(DCW)によって細胞成長の評価を行う。比成長速度は、培養物のDCWを時間に対してプロットすることによって決定する。
【0254】
対象物質の測定
培地中の対象物質(炭化水素、脂質など)の量を、上述のGC−MSまたはナイルレッドを例とする本技術分野で公知の標準的な手段を用いて測定する。例えば、藻類懸濁液1mlに、アセトン中のナイルレッド溶液(250ug/ml)の4ulを添加する。この混合物を、室温でのインキュベーションの間にボルテックス攪拌する。インキュベーション後、染色した藻類サンプルの100〜200ulを、96−ウェルプレートの個々のウェルに移す。例えばモレキュラーデバイスの96ウェルプレート分光蛍光光度計上、励起波長490nm、発光波長585nm、530の発光カットオフフィルターを用いて蛍光測定する。藻類サンプルの相対蛍光強度を決定するために、蛍光強度からブランク(媒体中ナイルレッドのみ)を差し引く。
【0255】
結果
炭素源と組み合わせた赤色光、白色光、および/または青色光では、コントロールと比較して微小藻類の成長速度が上昇する。実験した微小藻類株によって産生された対象物質(例:炭化水素または脂質)のレベル(炭素源と組み合わせた赤色光、白色光、および/または青色光)は、コントロールと比較して上昇する。
【0256】
本発明を好ましい態様および種々の別の選択肢としての態様を参照して特に示し、説明してきたが、当該技術分野の当業者であれば、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、その中で形態および詳細事項の様々な変形が可能であることは理解されるであろう。
【0257】
本明細書の本文中に引用した参考文献、発行特許、および特許出願はすべて、あらゆる点においてその全体が参照することで本明細書に組み入れられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
従属栄養成長する能力を有する微小藻類を培養するための方法であって:従属栄養条件下にて、前記微小藻類を成長させるのに十分な時間、前記微小藻類をインキュベートすることを含み、ここで、前記従属栄養成長条件は、炭素源を含有する培地を含み、およびここで、前記従属栄養成長条件はさらに、低放射照度光も含む、方法。
【請求項2】
前記微小藻類が、ボツリオコッカス(Botryococcus)株であり、前記炭素源が、グルコースであり、前記低放射照度光が、1〜10μmol光子m−2−1である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記微小藻類が、ボツリオコッカススデチクス(Botryococcus sudeticus)株である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記微小藻類が、ボツリオコッカス株である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記微小藻類が、UTEX2629株である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記微小藻類が、ボツリオコッカスブラウニー(Botryococcus braunii)株である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記微小藻類が、UTEX2441株である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記微小藻類が、ネオクロリスオレアブンダンス(Neochloris oleabundans)株である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記微小藻類が、ネオクロリス株である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記微小藻類が、UTEX1185株である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記微小藻類が、コナミドリムシ(Chlamydomonas reinhardtii)株である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記微小藻類が、クラミドモナス(Chlamydomonas)株である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記微小藻類が、UTEX2243株である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記微小藻類が、光受容体を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記炭素源が、グルコースである、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記炭素源が、固定炭素源、グルコース、フルクトース、スクロース、ガラクトース、キシロース、マンノース、ラムノース、N−アセチルグルコサミン、グリセロール、フロリドシド、グルクロン酸、トウモロコシデンプン、解重合セルロース系物質、サトウキビ、テンサイ、ラクトース、乳清、およびモラセスから成る群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記光が、天然の光源から発生される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記光が、天然の太陽光である、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記光が、全スペクトル光、または特定波長光を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記光が、人工光源から発生される、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記光が、人工光である、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記低放射照度光の強度が、0.01〜1μmol光子m−2−1である、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記低放射照度光の強度が、1〜10μmol光子m−2−1である、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記低放射照度光の強度が、10〜100μmol光子m−2−1である、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記低放射照度光の強度が、100〜300μmol光子m−2−1である、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記低放射照度光の強度が、100〜300μmol光子m−2−1である、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
前記低放射照度光の強度が、3〜4μmol/m−1光子、2〜3μmol/m−1光子、1〜2μmol/m−1光子、または3〜5μmol/m−1光子である、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記微小藻類から物質を生産することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
前記物質が、ポリサッカリド、色素、脂質、または炭化水素である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記物質が、炭化水素である、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記物質を回収することをさらに含む、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
前記物質を抽出することをさらに含む、請求項28に記載の方法。
【請求項33】
前記物質を処理することをさらに含む、請求項28に記載の方法。
【請求項34】
前記物質を処理することをさらに含む、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
前記物質の前記処理により、処理された物質が生産される、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記処理された物質が、燃料、バイオディーゼル、ジェット燃料、美容品、医薬剤、界面活性剤、および再生可能ディーゼルから成る群より選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記微小藻類の前記成長速度が、第二の従属栄養成長条件下にて第二の微小藻類を該微小藻類を成長させるのに十分な時間インキュベートした場合よりも速く、ここで、前記第二の従属栄養成長条件は、炭素源を含む成長培地を含み、およびここで、前記第二の従属栄養成長条件は、低放射照度光を含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項38】
炭素源および低放射照度光の存在下にて、複数の微小藻類細胞を配置することを含む、微小藻類を培養する方法。
【請求項39】
物質を製造する方法であって:
前記物質を産生する能力を有する微小藻類の提供;
培地中での前記微小藻類の培養であって、前記培地は炭素源を含む、培養;
前記微小藻類への低放射照度光の適用;および、
前記微小藻類にその乾燥細胞重量の少なくとも10%を前記物質として蓄積させること、
を含む、方法。
【請求項40】
前記物質の回収をさらに含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
バイオリアクターシステムであって:
バイオリアクター;
炭素源を含有する培地であって、ここで、前記培地は前記バイオリアクター内部に配置される、培地;
従属栄養成長に適応した微小藻類であって、ここで、前記微小藻類は前記培地中に位置する、微小藻類;および、
光源であって、ここで、前記光源は低放射照度光を発生させ、およびここで、前記光源は前記バイオリアクターに操作可能に取り付けられる、光源、
を含む、バイオリアクターシステム。
【請求項42】
前記光源からの光が、全スペクトル光または特定波長光を含む、請求項41に記載のシステム。
【請求項43】
前記光源からの光が、前記バイオリアクターに操作可能に取り付けられた太陽熱集熱器によって集められた天然の太陽光を含み、および前記光が、前記太陽熱集熱器および前記バイオリアクターに操作可能に取り付けられた光ファイバーを通して前記バイオリアクターの内部に送られる、請求項41に記載のシステム。
【請求項44】
前記光源からの光が、人工光を含み、前記人工光は、発光ダイオード(LED)または蛍光灯によって発生される、請求項41に記載のシステム。
【請求項45】
前記LEDまたは蛍光灯に十分な電力供給を行う電源であって、ここで前記電源は前記バイオリアクターに操作可能に取り付けられる、電源;ならびに、前記電源に操作可能に取り付けられる調光器であって、ここで前記調光器は、前記LEDまたは蛍光灯による発光の強度および波長を調節するように適合された、調光器、をさらに含む、請求項44に記載のシステム。
【請求項46】
前記光ファイバーが、透明な光保護構造で搭載される、請求項43に記載のシステム。
【請求項47】
前記LEDが、透明な光保護構造で搭載される、請求項44に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2013−505024(P2013−505024A)
【公表日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−529939(P2012−529939)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【国際出願番号】PCT/US2010/049347
【国際公開番号】WO2011/035166
【国際公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(512065605)フィコイル バイオテクノロジー インターナショナル,インコーポレイテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】PHYCOIL BIOTECHNOLOGY INTERNATIONAL,INC.
【Fターム(参考)】