説明

制御された離脱を伴う血液ポンプシステム

血液ポンプシステムに関連する材料、及び方法を記載する。例えば、これらを患者の身体内で使用して、動脈圧を監視し、血流量を測定し、左心室圧を特定の範囲内に維持し、左心室虚脱を回避し、血液ポンプ(10)を有する対象の大動脈弁の癒着を防ぎ、患者を血液ポンプ(10)から離脱させる手段を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2009年2月27日に出願された米国特許出願第12/394,205号の優先権を主張するものである。
【0002】
(技術分野)
本書は血液ポンプに関し、より詳細には、血液ポンプの速度を調整して、患者のポンプからの離脱を容易にするための材料、及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(背景)
血液ポンプを使用して、心臓に機械的援助を与えることができる。左心室は血液を心臓の外に大動脈を通して身体内に押し出し、右心室は血液を身体から肺に押し出す。左心室は心臓の負荷の大部分を負うため、援助を必要とする心臓の第1の部分であることが多い。心室の援助は、例えば、腹部に心血管系と平行に植え込まれるポンプで行うことができる。多くの場合、流入導管が左心室に取り付けられ、流出導管が大動脈に取り付けられる。一部の血液は左心室から大動脈内に正常な経路で流れることができるが、他の血液はポンプを通過し、推進力を受け、大動脈を通って身体内に押し込まれ得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
(要旨)
回転血液ポンプのモータ速度は、ポンプによって行われる援助のレベルに直接影響を与える可能性があり、通常、慎重な制御が必要である。一般に、血液ポンプは、例えば、対象が運動する場合、ポンプの速度を上昇させて、確実に心臓が十分な血液を身体に送ることができるように、血液需要の変化に対応することができる。しかし、血液ポンプの速度にはバランスが必要である。例えば、ポンプは、血液が心臓から流れ出ないほど低速度で作動すべきではなく、心室虚脱を招く恐れがある心室の吸い込みを起こすほど高速度で作動すべきでもない。しかし通常、回転ポンプは、ポンプの範囲の上限で作動する場合に最も効果的である。
【0005】
本書は、一部には、流入導管、流出導管、又はその両方上に、或いはその中に位置付けられた1つ以上のセンサを有する血液ポンプの開発に基づくものである。こうしたセンサを使用して、左心室の血圧、及び/又は動脈の血圧を評価することができる。本明細書に記載するように、流入導管で感知される血圧は概ね左心室圧であり得、流出導管で感知される血圧は概ね動脈圧であり得る。血液ポンプの速度を左心室圧、及び/又は動脈圧に関する情報に基づいて調整して、例えば、左心室圧が心室虚脱が回避されるレベルに維持され、患者からのポンプの取外しが容易になり、大動脈弁の癒着が回避されるようにすることができる。さらに、流入導管、及び/又は流出導管に配置されたセンサを、連続的、定期的、又は要求に応じた血流量の監視、及び動脈圧の長期間の測定に使用することができる。
【0006】
回転血液ポンプは、拍動性の流れではなく、一定の流れを生成する。生物学的拍動性心機能が欠如、又は低下すると、患者の血流が拍動性から一定の流れに変換される。患者に脈拍がなくなり、標準血圧監視デバイスが役に立たなくなる。流出導管に取り付けられた圧力変換器を有するポンプは、動脈圧の正確な決定を、連続的、又は断続的に行うものである。正確な動脈測定値を確立し、その情報を主治医に伝えることによって、例えば、患者の管理、及びポンプの動作を大幅に簡素化することができる。
【0007】
一態様では、本書は、心臓の左心室から血液を受けるための流入導管、及び循環系に血液を戻すための流出導管を有する血液ポンプと、血液ポンプに機能的に接続された制御装置とを備える、血液ポンプシステムであって、流入導管が、左心室圧と実質的に同じである導管圧を検出するように配置されたセンサを備え、該センサが導管圧に関する信号を制御装置に送信するように適合され、制御装置が信号を血液ポンプに送信して、導管圧が下限閾値未満の場合は血液ポンプの速度を低下させ、導管圧が上限閾値よりも高い場合は血液ポンプの速度を維持し、又は上昇させるように適合される、血液ポンプシステムを特徴とする。
【0008】
上限閾値は80mmHgでもよく、下限閾値は10mmHgでもよい。このシステムを、該システムが対象に与える補助の程度を計画的に低減するように構成することができる。このシステムを、前記ポンプの速度を連続的に調整して、陽圧の左心室収縮期圧を10mmHgから40mmHgの範囲内に維持するように構成することができる。
【0009】
他の態様では、本書は、血液ポンプシステムを有する対象の一定の左心室圧を維持する方法であって、血液ポンプシステムの流入導管に存在するセンサによって対象の左心室圧を検出し、及び検出された左心室圧に基づいて血液ポンプの速度を上昇、維持、又は低下させることを含み、検出された左心室圧が上限閾値よりも高い場合は速度を上昇させ、検出された左心室圧が下限閾値未満の場合は速度を維持、又は低下させる方法を特徴とする。
【0010】
他の態様では、本書は、血液ポンプシステムを有する対象の一定の左心室収縮期圧を維持する方法であって、血液ポンプシステムの流入導管に存在するセンサによって対象の左心室圧を検出すること、及び検出された左心室圧が上昇する場合は血液ポンプの速度を上昇させ、検出された左心室圧が低下する場合は血液ポンプの速度を低下させ、又は検出された左心室圧が大幅に変化しない場合は血液ポンプの速度を維持することを含む方法を特徴とする。
【0011】
他の態様では、本書は、対象を血液ポンプシステムから離脱させる方法を特徴とし、血液ポンプシステムは、心臓の左心室から血液を受けるための流入導管、及び循環系に血液を戻すための流出導管を有する血液ポンプ、並びに血液ポンプに機能的に接続された制御装置を備え、流入導管は、左心室圧と実質的に同じである導管圧を検出するように配置されたセンサを備え、センサは導管圧に関する信号を制御装置に送信するように適合される。この方法は:a)ポンプのモータ速度を調整して、選択された左心室収縮期圧が動脈圧と動脈圧より約20mmHg低い圧力の間で維持されるようにすること、b)第1の選択された拍動数にわたりポンプのモータ速度を低下させ、左心室拡張末期圧の評価によって心臓の回復程度を決定すること、c)ポンプを動脈圧と動脈圧より約20mmHg低い圧力の間のポンプの前の機能レベルに戻すこと、d)少なくとも心臓の回復が許容レベルになるまで、工程(b)と(c)を繰り返すこと、e)第1の選択された拍動数よりも多い第2の選択された拍動数にわたりポンプのモータ速度を低下させて、心臓の回復程度を決定すること、f)ポンプを動脈圧と動脈圧より約20mmHg低い圧力の間のポンプの前の機能レベルに戻すこと、g)少なくとも心臓の回復が許容レベルになるまで、工程(e)と(f)を繰り返すこと、及びh)対象を血液ポンプシステムから離脱させることができるまで、ポンプのモータ速度を低下させる期間として、拍動数を徐々に増加させることを含むことができる。
【0012】
他の態様では、本書は、対象を血液ポンプシステムから離脱させる方法を特徴とし、血液ポンプシステムは、心臓の左心室から血液を受けるための流入導管、及び循環系に血液を戻すための流出導管を有する血液ポンプ、並びに血液ポンプに機能的に接続された制御装置を備え、流出導管は、動脈圧と実質的に同じである導管圧を検出するように配置されたセンサを備え、センサは導管圧に関する信号を制御装置に送信するように適合される。この方法は:a)ポンプのモータ速度を調整して、選択された血液ポンプ流量が維持されるようにすること、b)第1の選択された期間にわたりポンプのモータ速度を低下させて、血液ポンプ流量を低下させ、流出導管のセンサを使用して動脈圧を測定すること、c)ポンプをポンプの前の機能レベルに戻すこと、d)少なくとも動脈圧が工程(b)中に評価可能なほど低下しないと決定されるまで、工程(b)と(c)を繰り返すこと、e)第1の選択された期間よりも長い第2の選択された期間にわたりポンプのモータ速度を低下させて、血液ポンプ流量を低下させ、流出導管のセンサを使用して動脈圧を測定すること、f)ポンプをポンプの前の機能レベルに戻すこと、g)少なくとも動脈圧が工程(e)中に評価可能なほど低下せず、左心室拡張末期圧が許容レベルで維持されると決定されるまで、工程(e)と(f)を繰り返すこと、及びh)対象を血液ポンプシステムから離脱させることができるまで、ポンプのモータ速度を低下させる期間を徐々に延長することを含むことができる。工程(b)及び(e)では、ポンプのモータ速度を低下させて、血液ポンプ流量が約1lpm低下されるようにすることができる。この方法は、拡張末期圧が閾値(例えば20mmHg)を超える場合にポンプのモータ速度を上昇させることを含むことができる。
【0013】
本書は、また、心臓の右心室から血液を受けるための流入導管、及び肺循環に血液を戻すための流出導管を有する血液ポンプと、血液ポンプに機能的に接続された制御装置とを備える、血液ポンプシステムであって、流入導管が、右心室圧と実質的に同じである導管圧を検出するように配置されたセンサを備え、センサが導管圧に関する信号を制御装置に送信するように適合され、制御装置が信号を血液ポンプに送信して、導管圧が下限閾値未満の場合は血液ポンプの速度を低下させ、導管圧が上限閾値よりも高い場合は血液ポンプの速度を維持し、又は上昇させるように適合される血液ポンプシステムを特徴とする。上限閾値は約60mmHgでもよく、下限閾値は約20mmHgでもよい。このシステムを、システムが対象に与える補助の程度を計画的に低減するように構成することができる。このシステムを、ポンプの速度を連続的に調整して、陽圧の右心室圧が5mmHgから20mmHgの範囲内に維持されるように構成することができる。
【0014】
他の態様では、本書は、血液ポンプシステムを有する対象の一定の右心室圧を維持する方法であって、血液ポンプシステムの流入導管に存在するセンサによって対象の右心室圧を検出すること、検出された右心室圧に基づいて血液ポンプの速度を上昇、維持、又は低下させることを含み、検出された右心室圧が上限閾値よりも高い場合は速度を上昇させ、検出された右心室圧が下限閾値未満の場合は速度を維持、又は低下させる方法を特徴とする。
【0015】
他の態様では、本書は、血液ポンプシステムを有する対象の一定の血圧を維持する方法であって、血液ポンプシステムの流入導管に存在するセンサによって対象の右心室圧を検出すること、及び検出された右心室圧が上昇する場合は血液ポンプの速度を上昇させ、検出された右心室圧が低下する場合は血液ポンプの速度を低下させ、又は検出された右心室圧が大幅に変化しない場合は血液ポンプの速度を維持することを含むことを特徴とする。
【0016】
他の態様では、本書は、対象を血液ポンプシステムから離脱させる方法を特徴とし、血液ポンプシステムは、心臓の右心室から血液を受けるための流入導管、及び循環系に血液を戻すための流出導管を有する血液ポンプ、並びに血液ポンプに機能的に接続された制御装置を備え、流入導管は、右心室圧と実質的に同じである導管圧を検出するように配置されたセンサを備え、センサは導管圧に関する信号を制御装置に送信するように適合される。この方法は:a)ポンプのモータ速度を調整して、選択された右心室圧が約5mmHgから約20mmHgに維持されるようにすること、b)第1の選択された拍動数にわたりポンプのモータ速度を低下させ、心臓の回復程度を決定すること、c)ポンプをポンプの前の機能レベルに戻すこと、d)少なくとも心臓の回復が許容レベルになるまで、工程(b)と(c)を繰り返すこと、e)第1の選択された拍動数よりも多い第2の選択された拍動数にわたりポンプのモータ速度を低下させて、心臓の回復程度を決定すること、f)ポンプをポンプの前の機能レベルに戻すこと、g)少なくとも心臓の回復が許容レベルになるまで、工程(e)と(f)を繰り返すこと、及びh)対象を血液ポンプシステムから離脱させることができるまで、ポンプのモータ速度を低下させる期間として、拍動数を徐々に増加させることを含むことができる。
【0017】
他の態様では、本書は、対象を血液ポンプシステムから離脱させる方法を特徴とし、血液ポンプシステムは、心臓の右心室から血液を受けるための流入導管、及び循環系に血液を戻すための流出導管を有する血液ポンプ、並びに血液ポンプに機能的に接続された制御装置を備え、流出導管は、右心室圧と実質的に同じである導管圧を検出するように配置されたセンサを備え、センサは導管圧に関する信号を制御装置に送信するように適合される。この方法は:a)ポンプのモータ速度を調整して、選択された血液ポンプ流量が維持されるようにすること、b)第1の選択された期間にわたりポンプのモータ速度を低下させて、血液ポンプ流量を低下させ、流出導管のセンサを使用して肺動脈圧を測定すること、c)ポンプをポンプの前の機能レベルに戻すこと、d)少なくとも肺動脈圧が工程(b)中に評価可能なほど低下しないと決定されるまで、工程(b)と(c)を繰り返すこと、e)第1の選択された期間よりも長い第2の選択された期間にわたりポンプのモータ速度を低下させて、血液ポンプ流量を低下させ、流出導管のセンサを使用して肺動脈圧を測定すること、f)ポンプをポンプの前の機能レベルに戻すこと、g)少なくとも肺動脈圧が工程(e)中に評価可能なほど低下しないと決定されるまで、工程(e)と(f)を繰り返すこと、及びh)対象を血液ポンプシステムから離脱することができるまで、ポンプのモータ速度を低下させる期間を徐々に延長することを含むことができる。工程(b)、及び(e)で、ポンプのモータ速度を低下させて、血液ポンプ流量が約1lpm低下されるようにすることができる。この方法は、対象の拡張末期圧を監視することをさらに含むことができる。この方法は、拡張末期圧、又は中心静脈圧(CVP)が閾値(例えば約10mmHg)を超えた場合に、ポンプのモータ速度を上昇させることを含むことができる。
【0018】
他の態様では、本書は、心臓の左心室から血液を受けるための第1の流入導管、及び循環系に血液を戻すための第1の流出導管を有する第1の血液ポンプ、心臓の右心室から血液を受けるための第2の流入導管、及び肺循環に血液を戻すための第2の流出導管を有する第2の血液ポンプ、並びに第1、及び第2の血液ポンプに機能的に接続された制御装置を備える血液ポンプシステムであって、第1の流入導管が、左心室圧と実質的に同じである第1の導管圧を検出するように配置された第1の流入センサを備え、第1の流入センサが第1の導管圧に関する信号を制御装置に送信するように適合され、第2の流入導管が、右心室圧と実質的に同じである第2の導管圧を検出するように配置された第2の流入センサを備え、第2の流入センサが第2の導管圧に関する信号を制御装置に送信するように適合され、制御装置が、信号を第1の血液ポンプに送信して、第1の導管圧が第1の下限閾値未満の場合は第1の血液ポンプの速度を低下させ、第1の導管圧が第1の上限閾値よりも高い場合は第1の血液ポンプの速度を維持、又は上昇させるように適合され、制御装置が、信号を第2の血液ポンプに送信して、第2の導管圧が第2の下限閾値未満の場合は第2の血液ポンプの速度を低下させ、第2の導管圧が第2の上限閾値よりも高い場合は第2の血液ポンプの速度を維持し、又は上昇させるように適合される、血液ポンプシステムを特徴とする。第1の上限閾値は、約100mmHgの左心室収縮期圧でもよく、第1の下限閾値は約30mmHgでもよい。第2の上限閾値は約60mmHgの右心室収縮期圧でもよく、第2の下限閾値は約10mmHgでもよい。このシステムを、システムが対象に与える補助の程度を計画的に低減するように構成することができる。このシステムを、第1の血液ポンプの速度を連続的に調整して、陽圧の左心室収縮期圧を10mmHgから40mmHgの範囲内に維持するように構成することができる。
【0019】
さらに、本書は、血液ポンプを有する閉ループ液体循環系内の一定の圧力を維持する方法であって、前記血液ポンプの流入導管にあるセンサによって血圧を検出すること(ここで該検出された圧力は左心室圧に相当する)、及び前記検出された圧力に基づいて前記血液ポンプの速度を上昇、維持、又は低下させることを含み、前記検出された圧力が最高左心室圧に相当する上限閾値よりも高い場合は前記速度を上昇させ、前記検出された圧力が最低左心室圧に相当する下限閾値未満の場合は、前記速度を維持、又は低下させる方法を特徴とする。
【0020】
本書は、また、血液ポンプを有する閉ループ液体循環系内の一定の圧力を維持する方法であって、前記血液ポンプの流入導管にあるセンサによって血圧を繰り返し検出すること(ここで該検出された圧力は左心室圧に相当する)を含み、前記検出された圧力が上昇する場合は前記血液ポンプの速度を上昇させ、前記検出された圧力が低下する場合は前記血液ポンプの速度を低下させ、又は前記検出された圧力が大幅に変化しない場合は前記血液ポンプの速度を維持することを含む方法を特徴とする。
【0021】
さらに、本書は、血液ポンプを有する閉ループ液体循環系内の流量を制御する方法を特徴とし、該血液ポンプは、左心室から血液を受けるための流入導管、及び循環系に血液を戻すための流出導管を有し、前記血液ポンプには制御装置が機能的に接続され、前記流出導管は、動脈圧と実質的に同じである導管圧を検出するように配置されたセンサを備え、前記センサは前記導管圧に関する信号を前記制御装置に送信するように適合される。この方法は:a)ポンプのモータ速度を調整して、選択された血液ポンプ流量が維持されるようにすること、b)第1の選択された期間にわたりポンプのモータ速度を低下させて、血液ポンプ流量を低下させ、前記流出導管のセンサを使用して圧力を測定すること、c)ポンプをポンプの前の機能レベルに戻すこと、d)少なくとも前記圧力が工程(b)中に評価可能なほど低下しないと決定されるまで、工程(b)と(c)を繰り返すこと、e)前記第1の選択された期間よりも長い第2の選択された期間にわたりポンプのモータ速度を低下させて、血液ポンプ流量を低下させ、前記流出導管のセンサを使用して前記圧力を測定すること、f)ポンプをポンプの前の機能レベルに戻すこと、g)少なくとも前記圧力が工程(e)中に評価可能なほど低下しないと決定されるまで、工程(e)と(f)を繰り返すこと、及びh)ポンプのモータ速度を低下させる期間を徐々に延長することを含むことができる。工程(b)、及び(e)で、ポンプのモータ速度を低下させて、血液ポンプ流量が約1lpm低下されるようにすることができる。
【0022】
他の態様では、本書は、血液ポンプを有する閉ループ液体循環系内の一定の圧力を維持する方法であって、前記血液ポンプの流入導管に存在するセンサによって血圧を検出し(前記検出された圧力は右心室圧に相当する)、及び前記検出された右心室圧に基づいて前記血液ポンプの速度を上昇、維持、又は低下させることを含み、前記検出された圧力が最高右心室圧に相当する上限閾値よりも高い場合は前記速度を上昇させ、前記検出された圧力が最低右心室圧に相当する下限閾値未満の場合は前記速度を維持し、又は低下させる方法を特徴とする。
【0023】
他の態様では、本書は、血液ポンプを有する閉ループ液体循環系内の一定の圧力を維持する方法であって、前記血液ポンプの流入導管に存在するセンサによって血圧を繰り返し検出し(前記検出された圧力が右心室圧に相当する)、及び前記検出された圧力が上昇する場合は前記血液ポンプの速度を上昇させ、前記検出された圧力が低下する場合は前記血液ポンプの速度を低下させ、又は前記検出された圧力が大幅に変化しない場合は前記血液ポンプの速度を維持することを含む方法を特徴とする。
【0024】
他の態様では、本書は、血液ポンプを有する閉ループ液体循環系内の流量を制御する方法を特徴とし、前記血液ポンプは、右心室から血液を受けるための流入導管、及び循環系に血液を戻すための流出導管を有し、前記血液ポンプは制御装置が機能的に接続され、前記流出導管は、右心室圧と実質的に同じである導管圧を検出するように配置されたセンサを備え、前記センサは前記導管圧に関する信号を前記制御装置に送信するように適合される。この方法は:a)ポンプのモータ速度を調整して、選択された血液ポンプ流量が維持されるようにすること、b)第1の選択された期間にわたりポンプのモータ速度を低下させて、血液ポンプ流量を低下させ、前記流出導管のセンサを使用して圧力を測定すること、c)ポンプをポンプの前の機能レベルに戻すこと、d)少なくとも前記圧力が工程(b)中に評価可能なほど低下しないと決定されるまで、工程(b)と(c)を繰り返すこと、e)前記第1の選択された期間よりも長い第2の選択された期間にわたりポンプのモータ速度を低下させて、血液ポンプ流量を低下させ、前記流出導管のセンサを使用して前記圧力を測定すること、f)ポンプをポンプの前の機能レベルに戻すこと、g)少なくとも前記圧力が工程(e)中に評価可能なほど低下しないと決定されるまで、工程(e)と(f)を繰り返すこと、及びh)ポンプのモータ速度を低下させる期間を徐々に延長することを含むことができる。
【0025】
別段の記載がない限り、本明細書で使用される全ての専門用語、及び科学用語は、本発明が関連する当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載したものと同様、又は等価の方法、及び材料を使用して、本発明を実施することができるが、適した方法、及び材料を以下に記載する。本明細書に記載した全ての出版物、特許出願、特許、及び他の参照文書は、引用によりその全体が本明細書に組み込まれている。矛盾する場合、定義を含めて、本明細書が優先される。さらに、材料、方法、及び例は単に例示であり、限定しないものとする。
【図面の簡単な説明】
【0026】
本発明の1つ以上の実施態様の詳細を添付の図面、及び以下の説明で述べる。本発明の他の特徴、目的、及び利点は、その説明、図面、及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【0027】
(図面の説明)
【図1】本明細書に記載する血液ポンプシステムの一実施態様を示す図である。
【図2】左心室圧を特定の範囲内に維持する方法の一実施態様を示す流れ図である。
【図3】閾値を超える左心室圧を維持する方法の一実施態様を示す流れ図である。
【図4】血液ポンプシステムから対象を徐々に離脱させる方法の一実施態様を示す流れ図である。
【図5】血液ポンプシステムを有する対象の動脈弁の癒着を防ぐための方法の一実施態様を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(詳細な説明)
本書は、個人に植え込まれた血液ポンプの速度の調整に関連する材料、及び方法、並びに植込型血液ポンプを有する対象の圧力、及び/又は血流量を長期間監視するための材料、及び方法を提供するものである。図1で示したように、本明細書に記載する血液ポンプ10は、ポンプハウジング50、流入導管60、及び流出導管70を含むことができる。流入導管60を、患者の心臓から(例えば、体循環の補助を行うポンプに左心室圧から、又は肺循環の補助を行うポンプに右心室から)血液を受けるように構成し、流出導管70を(例えば、体循環の補助を行うポンプに大動脈を通して、又は肺循環の補助を行うポンプに肺動脈を通して)患者の循環系に血液を戻すように構成することができる。さらに、流入導管60、或いは流出導管70のいずれか、又は流入導管60と流出導管70の両方が、血圧、及び/又は血流量を測定するように構成することができる1つ以上のセンサを有することができる。一部の実施態様では、図1で示したように、例えば、センサ65を流入導管60の内面上に位置付け、センサ75を流出導管70の内面上に位置付けることができる。センサ65、及び75を導管60、及び70の任意の適した位置(例えば、図1で示したように、ポンプハウジング50の近位に、又はポンプハウジング50の遠位に)配置することができる。一部の実施態様では、センサは、ポンプハウジング50から約1から約2cm以内(例えば、約0.75、約1、約1.25、約1.5、約1.75、約2、又は約2.25cm以内)のところに存在してもよく、例えば血液ポンプ10のどの可撓性部材より前に存在してもよい。場合によっては、センサを流入、又は流出導管(例えば、可撓性の流入導管、又は流出導管)の外面上に位置付けることもできる。センサは、例えば、微小電子機械システム(MEMS)、又はMEMS型変換器でもよい。
【0029】
血液ポンプ10を対象の循環系に接続して、血液が対象の心臓から(例えば左心室から)流入導管60、及び流出導管70によって血液ポンプ10を通り、対象の循環系に(例えば大動脈を通って)戻るようにすることができる。一部の実施態様では、センサ65は流入導管60の血圧を測定することができる。センサ65の流入導管60上の配置(例えば、ポンプハウジング50に近位、又は遠位の配置)に応じて、流入導管60で測定される圧力は対象の心臓内の血圧の近似値であり得る(例えば、ポンプが左心室に連結される場合は左心室圧の近似値であり得る)。センサ75は流出導管70の血圧を測定することができる。センサ75の流出導管70上の配置(例えば、ポンプハウジング50に近位、又は遠位の配置)に応じて、流出導管70で測定される圧力は動脈圧の近似値であり得る。
【0030】
センサ65、及び75は、様々な目的に役立つことができる。血液ポンプ上の1つ以上のセンサによって測定される血圧、及び/又は血流量に関する情報を、(例えば、リード82、及び84など1つ以上のリードによって)1つ以上のセンサに接続することができる制御装置80に送信することができ、又は、他の実施態様では、無線構成によって電気的に伝送することができる。一部の実施態様では、制御装置は検出される血圧を長期間監視することができる。例えば、流出導管に位置付けられたセンサは、検出された血圧に関する情報を制御装置に連続的、定期的、又は要求に応じて送信することができ、上記のように、流出導管で測定される血圧は動脈圧の近似値であり得るため、動脈圧を長期間にわたり監視することができるようになる。一部の実施態様では、流入導管、流出導管、又はその両方に位置付けられた1つ以上のセンサは、検出された圧力に関する情報を制御装置に(例えば、1つ以上のリード、又は無線伝送によって)送信することができる。制御装置は、信号をポンプに送信して、流入導管、流出導管、又は両方の血圧によって、ポンプの速度が調整される(例えば、上昇、又は低下される)ようにすることができる。こうした実施態様では、例えば、左心室圧を所望の範囲内に維持し、左心室虚脱を回避し、血液ポンプ流量を決定し、動脈弁の癒着を防止しながら、制御下でポンプから離脱することができるようになる。
【0031】
(1つの流入導管に少なくとも1つのセンサを有するシステム)
一部の実施態様では、本明細書に記載するように、血液ポンプシステムを流入導管の血圧、又は血流量に関する情報に基づいて制御することができる。例えば、血液ポンプシステムは、血液を心臓から(例えば、心臓の左、又は右の心室から)受けるための流入導管、及び血液を大動脈、又は肺循環に戻すための流出導管を有する血液ポンプ、並びに血液ポンプに機能的に接続された制御装置を含むことができる。流入導管は、流入導管が左心室から血液を受ける場合は左心室圧と実質的に同じであり得、流入導管が右心室から血液を受ける場合は右心室圧と実質的に同じであり得る導管圧を検出するセンサを有することができる。センサを、導管圧に関する信号を制御装置に送信するように適合させることができる。検出された導管圧が下限閾値よりも低い場合、例えば、制御装置は信号を血液ポンプに送信して、ポンプの速度を低下させることができる。下限閾値圧力レベルは、例えば、約10mmHgから約100mmHg(例えば、約10mmHg、約15mmHg、約20mmHg、約25mmHg、約30mmHg、約35mmHg、約40mmHg、約45mmHg、約50mmHg、約55mmHg、約60mmHg、約65mmHg、約70mmHg、約75mmHg、約80mmHg、約85mmHg、約90mmHg、約95mmHg、或いは約100mmHg)、又はその間の任意の値でもよい。場合によっては、検出された導管圧が上限閾値よりも高い場合、制御装置は信号を血液ポンプに送信して、ポンプの速度を上昇させることができる。上限閾値圧力レベルは、例えば、下限閾値よりも約10mmHgから約45mmHg高くてもよい。場合によっては、上限閾値圧力は、約55mmHgから約150mmHg(例えば、約55mmHg、約60mmHg、約65mmHg、約70mmHg、約75mmHg、約80mmHg、約85mmHg、約90mmHg、約95mmHg、約100mmHg、約110mmHg、約120mmHg、約130mmHg、約140mmHg、或いは約150mmHg)、又はその間の任意の値でもよい。臨床医が制御装置を調整して、閾値を設定することができ、閾値を要望通りに変えることもできる。
【0032】
こうした血液ポンプシステムは、例えば、左心室圧を事前に選択した範囲内に維持し、左心室虚脱を回避し、又は防止するのに有用である。例えば、この方法は、血液ポンプシステムを有する対象の左心室圧を血液ポンプの流入導管のセンサによって検出し、検出された流入導管圧に基づいて血液ポンプの速度を上昇させ、維持し、又は低下させることを含むことができる。左心室圧を特定の範囲内に維持するため、検出された左心室圧が下限閾値よりも低い場合は速度を低下させる(したがって、左心室圧を上昇させる)ことができ、検出された左心室圧が上限閾値よりも高い場合は速度を上昇させる(したがって、左心室圧を低下させる)ことができる。こうすると、左心室圧を選択した上限と下限の閾値の間で維持することができる。こうした方法を示す流れ図が図2に示されている。やはり、臨床医が患者によって上限、及び下限の閾値を設定し、それに応じて血液ポンプシステムをプログラミングすることができる。左心室圧を特定のレベル(例えば下限閾値)より上に維持することによって、左心室内の圧力が負になるのを防止し、したがって、左心室虚脱を回避することができる。
【0033】
同様に、血液ポンプシステムは、右心室圧を事前に選択した範囲内に維持するのに有用であり得る。例えば、肺循環を補助するための血液ポンプシステムを、ポンプの速度が流入導管のセンサによって検出される右心室圧に基づいて連続的に監視され調整される(例えば、上昇、低下、又は維持される)ように構成して、陽圧の右心室圧が維持されるようにすることができる。右心室圧を特定の範囲内(例えば、約5mmHgから約20mmHg)に維持するため、検出された右心室圧が下限閾値よりも低い場合はポンプの速度を低下させる(したがって、右心室圧を上昇させる)ことができ、検出された右心室圧が上限閾値よりも高い場合は速度を上昇させる(したがって、右心室圧を低下させる)ことができる。やはり、臨床医が患者によって上限、及び下限の閾値を設定し、それに応じて血液ポンプシステムをプログラミングすることができる。
【0034】
一部の実施態様では、(例えば、図3で示した流れ図で示したように)流入導管で測定された圧力が下限閾値よりも低いかどうかのみに基づいて血液ポンプの速度を調整することができる。こうした実施態様では、検出された圧力が特定の閾値よりも低い場合は、ポンプの速度を低下させることができ、検出された圧力が閾値よりも低くない場合は、維持、又は上昇させることができる。
【0035】
こうした血液ポンプシステムは、対象の血流量の制御にも有用であり得る。例えば、対象の血流量を流入導管、及び流出導管のセンサによって検出することができる。ポンプの速度に対するポンプ中の圧力低下の測定によって、流量を決定することができる。検出された血流量に基づいて、ポンプの速度を上昇、維持、又は低下させることができる。検出された血流量が下限閾値よりも低い場合、例えば、制御装置は信号を血液ポンプに送信して、ポンプの速度を上昇させることができる。例えば、下限閾値圧力レベルは、約1lpmから約8lpm、又はその間の任意の値でもよい。場合によっては、検出された血流量が上限閾値よりも高い場合、制御装置は信号を血液ポンプに送信して、ポンプの速度を低下させ、又は維持することができる。上限閾値圧力レベルは、例えば、約2lpmから約10lpm(例えば、約5lpmから約10lpm)、又はその間の任意の値でもよい。
【0036】
一部の実施態様では、患者をポンプから容易に徐々に離脱させるように、血液ポンプシステムを構成することができる。例えば、血液ポンプシステムは、血液を心臓から(例えば、心臓の左心室から、又は心臓の右心室から)受けるための流入導管、及び血液を循環系に(例えば、大動脈、又は肺動脈に)戻すための流出導管を有する血液ポンプ、並びに、例えば有線によって、或いは無線伝送によって血液ポンプに機能的に接続された制御装置を含むことができる。流入導管は、システムが体循環、又は肺循環の補助を行うように配置されるかどうかによって、左心室圧、又は右心室圧と実質的に同じであり得る流入導管圧を検出することができるセンサを有することができる。センサは流入導管圧に関する信号を制御装置に送信し、制御装置は信号を血液ポンプに送信して、導管圧が下限閾値よりも低い場合はポンプの速度を低下させ、又は維持し、或いは導管圧が上限閾値よりも高い場合は上昇、又は維持するようにすることができる。したがって、血液ポンプの速度を連続的に調整して、陽圧の左心室収縮期圧が維持される、及び/又は左心室拡張末期圧が許容レベル内に維持されるように、体循環の補助を行うシステムを構成することができる。
【0037】
体循環を補助するシステムでは、例えば、下限閾値は、約10mmHgから約40mmHg(例えば、約10mmHg、約15mmHg、約20mmHg、約25mmHg、約30mmHg、約35mmHg、或いは約40mmHg)まで、又はその間の任意の値でもよく、上限閾値は、約65mmHgから概ね動脈圧(例えば、約65mmHg、約70mmHg、約75mmHg、約80mmHg、約85mmHg、約90mmHg、或いは概ね動脈圧)まで、又はその間の任意の値でもよい。肺循環を補助するシステムでは、例えば、下限閾値は、約5mmHgから約20mmHg、又はその間の任意の値でもよく、上限閾値は約20mmHgから約60mmHg、或いはその間の任意の値でもよい。
【0038】
一部の実施態様では、血液ポンプシステムは、心臓の左心室から血液を受けるための第1の流入導管、及び循環系に血液を戻すための第1の流出導管を有する第1の血液ポンプ、心臓の右心室、又は右心房から血液を受けるための第2の流入導管、及び肺系統に血液を戻すための第2の流出導管を有する第2の血液ポンプ、並びに第1、及び第2の血液ポンプに機能的に接続された制御装置を含むことができる。第1の流入導管は、左心室圧と実質的に同じである第1の導管圧を検出するように配置された第1の流入センサを有することができ、第1の流入センサを第1の導管圧に関する信号を制御装置に送信するように適合させることができる。第2の流入導管は、右心室圧、又は右心房圧と実質的に同じである第2の導管圧を検出するように配置された第2の流入センサを有することができ、第2の流入センサを第2の導管圧に関する信号を制御装置に送信するように適合させることができる。
【0039】
制御装置は、信号を第1の血液ポンプに送信して、第1の導管圧が第1の下限閾値(例えば左心室収縮期の下限閾値)よりも低い場合は第1の血液ポンプの速度を低下させ、或いは第1の導管圧が第1の上限閾値(例えば左心室収縮期の上限閾値)よりも高い場合に維持、又は上昇させることができる。第1の下限閾値は、例えば、約10mmHgから約100mmHg(例えば、10mmHg、20mmHg、30mmHg、40mmHg、50mmHg、60mmHg、70mmHg、80mmHg、90mmHg、或いは100mmHg)、又はその間の任意の値でもよく、第1の上限閾値は、約20mmHgから約150mmHg(例えば、20mmHg、30mmHg、40mmHg、50mmHg、60mmHg、70mmHg、80mmHg、90mmHg、100mmHg、110mmHg、120mmHg、130mmHg、140mmHg、或いは150mmHg)、又はその間の任意の値でもよい。こうしたシステムを、第1の血液ポンプの速度を連続的に調整して、陽圧の左心室圧が(例えば、左心室収縮期圧が5mmHgから50mmHg、又は10mmHgから40mmHgに)維持されるように構成することができる。
【0040】
制御装置は、信号を第2の血液ポンプに送信して、第2の導管圧が第2の下限閾値(例えば、右心室収縮期の下限閾値)よりも低い場合に第2の血液ポンプの速度を低下させ、或いは第2の導管圧が第2の上限閾値(例えば、右心室収縮期の上限閾値)よりも高い場合は維持、又は上昇させることもできる。第2の下限閾値は約5mmHgから約20mmHg(例えば、5mmHg、10mmHg、15mmHg、或いは20mmHg)、又はその間の任意の値でもよく、第2の上限閾値は約20mmHgから約60mmHg(例えば、20mmHg、30mmHg、40mmHg、50mmHg、或いは60mmHg)、又はその間の任意の値でもよい。
【0041】
こうした血液ポンプシステムは、例えば、血液ポンプの速度を連続的に調整して、左心室収縮期圧を狭い範囲内に維持し、また、対象をシステムから離脱させる助けをするのにも有用であり得る。血液ポンプを有する対象の心臓が強くなるに従って、心臓は心臓自体のより高い圧力を生成するであろう。対象の心臓が強くなるに従ってポンプの速度を低下させることによって、対象の血圧全体を維持することができるようになるが、それは心臓によって生成される圧力の結果である。血液ポンプシステムが体循環を補助するように配置される実施態様では、血液ポンプの速度は血流量ではなく左心室自体によって生成される圧力の変化によって決定される。血液ポンプシステムが肺循環を補助するように配置される実施態様では、血液ポンプの速度は右心室によって生成される圧力の変化によって決定される。
【0042】
こうした血液ポンプシステムを使用する方法は、1つ以上の流入導管センサによって、左、又は右の心室圧、或いは左と右の両方の心室圧を検出し、検出された1つ以上の心室圧に基づいて、血液ポンプの速度を上昇、維持、又は低下させることを含むことができる。例えば、検出された流入導管圧が上限閾値よりも高い場合は、ポンプの速度を上昇させ、検出された流入導管圧が下限閾値よりも低い場合は、ポンプの速度を低下させることができる。臨床医は制御装置で上限、及び下限の閾値を設定することができ、閾値を要望通りに調整することができる。
【0043】
一部の実施態様では、測定された流入導管圧が選択された範囲内の場合、本明細書に記載したように、血液ポンプシステムを、例えば、特定の期間、又は心拍数にわたり停止させ、次いで再び開始させる(例えば、前に設定された速度に戻す)ことによって、離脱を容易にすることができる。システムが対象に与える補助の程度のこうした計画的な低減によって、対象自身の心臓が回復することができ、その後に対象から血液ポンプを取り外すことができるようになる。例えば、左心室虚脱を起こさずに、最大血液量が左心室から外にポンプで送られる場合、全面的な心臓の補助を行うことができる。これは、左心室内の陽圧の収縮期圧を0から動脈圧の間で選択可能な比較的狭い範囲内(例えば約20mmHgの範囲)に維持し、この圧力が維持されるようにポンプの速度を連続的に調整することによって行うことができる。左心室内の収縮期圧が収縮期の心周期にわたり概ね動脈圧に維持される場合、部分的補助を得ることができる。ポンプの速度を低下させて、この比較的低いレベルの補助を行うことができる。
【0044】
患者を血液ポンプから離脱させる方法は、ポンプを通る血流量の段階的低下を含むことができる。しかし、心臓は、心臓がポンピング機能を完全に引き継ぐことができるようになる前に、休息して、回復することができるようにしなければならない。これは、生物学的心臓が部分的補助を受ける時間を徐々に延長し、血液ポンプが補助を与える時間を徐々に縮小することによって行うことができる。最初に、生物学的心臓による部分的補助を(例えば、臨床医によって選択されるように)短期間にわたり可能にし、その後、ポンプの速度を上昇させて、第2の期間にわたり完全な補助を行うことができるようにする。こうした交互の低流量と高流量のサイクルを任意の回数だけ所望の頻度で繰り返して、生物学的心臓が部分的補助を行う期間中に確実に動脈圧が評価可能なほど低下しないようにすることができる。これは、動脈圧の低下は生物学的心臓が生物学的要求に応答して十分な血流量を生成することができないことを示す可能性があるために重要である。圧力低下が起きた場合は、モータ速度を十分な流量状況になるまで自動的に上昇させることができる。圧力低下が起きない場合は、動脈圧が安定したままであれば、部分的補助の期間の長さを(例えば徐々に)延長することができる。動脈圧、及び低い左心室拡張末期圧が十分な状態で次第に延長される生物学的心臓によって行われる部分的補助の期間は、心臓の回復を示す可能性がある。対照的に、高い拡張末期圧は心不全を示す可能性がある。
【0045】
図4で示したように、例えば、対象の血液ポンプからの離脱を容易にする例示の方法は、以下の工程を含むことができる:
(1)選択された左心室収縮期圧が動脈圧と動脈圧より約20mmHg低い圧力の間で所望の心拍数、又は期間(例えば5分間)にわたり維持されるように、ポンプのモータ速度を調整する工程;
(2)ポンプの速度を所望の期間(例えば5分間)にわたり大幅に低下させ、(例えば、左心室拡張末期圧など、左心室圧に近似し得る流入導管圧に基づいて)心臓の回復程度を決定する工程;
(3)ポンプを動脈圧と動脈圧より約20mmHg低い圧力の間のポンプの前の機能レベルに戻す工程;
(4)工程(2)と(3)を要望通りに繰り返す工程;
(5)ポンプの速度をより長い期間(例えば、20分間)にわたり大幅に低下させ、心臓の回復程度を決定する工程;
(6)ポンプを動脈圧と動脈圧より約20mmHg低い圧力の間のポンプの前の機能レベルに戻す工程;
(7)少なくとも工程(5)中に動脈圧が評価可能なほど低下せず、左心室末期圧が許容レベルで維持されると決定されるまで、工程(5)と(6)を要望通りに繰り返す工程;
(8)対象がポンプから完全に離脱することができるまで、ポンプの速度を低下させる期間を徐々に延長し、要望通りに継続する工程。拡張末期圧が閾値(例えば20mmHg)を超えた場合は、ポンプのモータ速度を上昇させることができる。
【0046】
工程(2)の開始時点(例えば、ポンプの速度を最初に低下させる時点)を変えることができることに留意されたい。例えば、血液ポンプの速度を最初に1から5分間(例えば、1、2、3、4、又は5分間)にわたり低下させ、次いでその時間を方法の後続のサイクルで延長することができる。例えば、適切な開始時点を臨床医が決定することができる。
【0047】
肺循環への補助を行う血液ポンプからの対象の離脱を容易にする他の例示の方法は以下の工程を含むことができる:
(1)選択された右心室圧が約5mmHgから約20mmHgの間で維持されるように、ポンプのモータ速度を調整する工程;
(2)ポンプのモータ速度を第1の選択された心拍数にわたり低下させ、心臓の回復程度を決定する工程;
(3)ポンプをポンプの前の機能レベルに戻す工程;
(4)少なくとも心臓の回復が許容レベルになるまで、工程(b)と(c)を繰り返す工程;
(5)ポンプのモータ速度を第1の選択された心拍数よりも徐々に多くした第2の選択された心拍数にわたり低下させ、心臓の回復程度を決定する工程;
(6)ポンプをポンプの前の機能レベルに戻す工程;
(7)少なくとも心臓の回復が許容レベルになるまで、工程(5)と(6)を繰り返す工程;
(8)対象が血液ポンプシステムから離脱することができるまで、ポンプのモータ速度を低下させる期間として、心拍数を徐々に増加させる工程。
【0048】
一部の実施態様では、圧力測定値ではなく、血流量測定値を制御パラメータとして使用することができる。血液ポンプを全面的補助レベルで作動させることができ、血液ポンプ流量を確立することができる。次いで、ポンプの速度を低下させて、流量を約0.5lpmから約1.5lpm(例えば、約0.75lpm、約1lpm、又は約1.5lpm)減少させることによって、離脱を開始することができる。例えば、臨床医が選択した期間を使用して、こうした手順を段階的に実行することができる。通常、ポンプ流量は、長期間(例えば、30分間)にわたり1.0lpm未満に低減されない。体循環を補助する血液ポンプシステムでは、動脈圧を各レベルで監視して、動脈圧が評価可能なほど低下していないこと、又は左心室拡張末期圧が評価可能なほど上昇していないことを確認することができる。圧力低下が起きる場合、動脈圧を維持することができるレベルまでモータ速度を上昇させることができる。肺循環を補助する血液ポンプシステムでは、肺動脈圧、及び/又は中心静脈圧(CVP)を各レベルで監視して、肺動脈圧、及び/又は中心静脈圧が評価可能なほど低下していないこと、又は右心室拡張末期圧が評価可能なほど上昇していないことを確認することができる。拡張末期圧、又はCVPが閾値(例えば、10mmHgから20mmHg)を超えて上昇した場合、この方法はポンプのモータ速度を上昇させることを含むことができる。
【0049】
(1つの流出導管に少なくとも1つのセンサを有するシステム)
一部の実施態様では、本明細書に記載したシステムを使用して、流出導管の血圧、及び/又は流量に基づくデータを提供することができる。例えば、血液ポンプシステムを使用して、流出導管で検出される圧力に基づいて、動脈圧(すなわち動脈の循環血圧)を、連続的、定期的、或いは要求に応じて監視し、又は肺動脈圧を監視することができる。場合によっては、血液ポンプシステムは、心臓から(例えば、左心室、又は右心室から)血液を受けるための流入導管、及び(例えば、大動脈によって)循環系、又は肺循環に血液を戻すための流出導管を有する血液ポンプ、並びに血液ポンプに機能的に接続された制御装置を含むことができ、流出導管は流出導管圧を検出することができるセンサを有する。流出導管圧は、例えば、流出導管が大動脈を介して循環系に血液を戻す場合は動脈圧と実質的に同じであり得、流出導管が肺循環に血液を戻す場合は肺動脈圧と実質的に同じであり得る。
【0050】
センサは、連続的、又は定期的に(例えば、1秒毎、2秒毎、10秒毎、30秒毎、1分毎、2分毎、5分毎、10分毎、1時間毎、又はそれより少ない頻度で)流出導管圧を検出することができる。場合によっては、センサを、例えば、ユーザ、又は臨床医からの要求に応じて流出導管圧を検出するように構成することができる。センサを、流出導管圧に関する信号を制御装置、及び/又はディスプレイに送信するように適合させることができる。一部の実施態様では、ディスプレイは制御装置の一部でもよい。
【0051】
一部の実施態様では、血液ポンプシステムは、導管圧が事前設定レベル未満に低下した場合に作動するように適合された警報器を含むことができる。こうした低下は心不全、又はポンプの故障を示している可能性がある。警報器は、ユーザ、又は臨床医に圧力低下を警報する任意の適したタイプの信号(例えば、聴覚信号、視覚信号、或いは振動信号)を与えることができる。
【0052】
本明細書で提供する血液ポンプシステムを対象の動脈圧、又は肺動脈圧を監視する方法で使用することができる。例えば、この方法は、血液ポンプシステムの流出導管内に配置されて対象の動脈圧を繰り返し検出し、検出した動脈圧をディスプレイに出力するセンサを使用することを含むことができる。他の例では、方法は、血液ポンプシステムの流出導管内に配置されて対象の肺動脈圧を繰り返し検出し、検出した肺動脈圧をディスプレイに出力するセンサを使用することを含むことができる。センサは、例えば、連続的、又は定期的に(例えば、1秒毎、2秒毎、10秒毎、30秒毎、1分毎、2分毎、5分毎、10分毎、1時間毎、又はそれより少ない頻度で)導管圧を検出することができる。場合によっては、対象(例えば、ユーザ、又は臨床医)からの要求に応じて流出導管圧を検出するようにセンサを構成することができる。
【0053】
方法は、また、検出された動脈圧、又は肺動脈圧に関するデータを制御装置に伝送することを含むこともでき、制御装置はデータをディスプレイ用にフォーマットすることができる。制御装置は、動脈圧、又は肺動脈圧のデータを処理して、流出導管内の圧力と実際の動脈圧、又は肺動脈圧との差を全て計上することもできる。例えば、制御装置は、所定の量を加算、又は減算することによって導管圧を調整することができる。さらに、場合によっては、例えば、制御装置による、或いは制御装置に機能的に接続されたディスプレイによるユーザからの動作に応答して、検出された(又は計算された)動脈圧、又は肺動脈圧を表示することができる。
【0054】
(流入導管と流出導管の両方にセンサを有するシステム)
一部の実施態様では、血液ポンプシステムを、流入導管と流出導管の両方の血圧、及び/又は血流量についての情報に基づいて制御することができる。例えば、血液ポンプシステムは、心臓から(例えば、左心室から)血液を受けるための流入導管、及び循環系に(例えば、大動脈によって)血液を戻すための流出導管を有する血液ポンプ、並びに血液ポンプに機能的に接続された制御装置を含むことができ、流入導管は左心室圧と実質的に同じである流入導管圧を検出するための第1のセンサを有し、流出導管は動脈圧と実質的に同じである流出導管圧を検出するための第2のセンサを有する。第1のセンサを、流入導管圧に関する信号を制御装置に送信するように適合させることができ、第2のセンサを流出導管圧に関する信号を制御装置に送信するように適合させることができる。
【0055】
一部の実施態様では、信号を血液ポンプに送信して、血液ポンプの速度(例えば、血液ポンプ内のモータの速度)を定期的且つ一時的に調整し(例えば、低下させ)、左心室圧を上昇させるように、制御装置を適合させることができる。こうした実施態様は、例えば、大動脈弁を迂回して、大動脈弁が規則的に開閉しないようにする血液ポンプシステムを有する対象に有用である。ポンプの速度を低下させて(したがって、ポンプを通る血流量を低下させて)左心室圧を上昇させることによって、心臓が大動脈弁を通して血液をポンピングするように強制することができ、したがって大動脈弁が強制的に開放され、ポンプが対象の身体内で使用されている間に弁が癒着して閉じる可能性が低減される。左心室圧が動脈圧と同じ場合は、通常、弁を開放することができるため、大動脈弁を開放させるために必ずしも左心室圧が動脈圧を超える必要がないことに留意されたい。場合によっては、ポンプの速度を低下させて、左心室圧と動脈圧が実質的に等しくなるようにするだけでよいが、一部の実施態様では、速度を低下させて、左心室圧が動脈圧を超えるようにすることができる。特定の機構に縛られることなく、左心室が収縮するときに大動脈弁が開放されるように、左心室圧は収縮期中に動脈圧と等しくてもよく、又はそれを超えてもよい。
【0056】
本書は、本明細書に記載したように、血液ポンプを有する対象の大動脈弁の癒着を防ぐ方法も提供する。この方法は、血液ポンプの流入導管に存在するセンサによって左心室圧を検出すること、血液ポンプの流出導管に存在するセンサによって動脈圧を検出すること、及び動脈圧と比較して左心室圧が高くなる程度まで(例えば、血液ポンプのモータによって)血液ポンプの速度を定期的且つ一時的に調整し(例えば低下させ)、それによって大動脈弁を開放できるようにすることを含むことができる。ポンプの速度を、例えば時間に基づいて、又は心拍数に基づいて調整することができる。例えば、ポンプの速度を特定の期間(例えば、5から30秒間)にわたり特定の時間間隔で(例えば、5から20分毎に)低下させることができ、又は特定の心拍数(例えば、5から30拍)にわたり特定の間隔で(例えば、300から1200拍毎に)低下させることができる。場合によっては、大動脈弁洞を洗浄することができるように十分な長さの時間にわたりポンプの速度の低下を行うことができる。各サイクルの終わりに、ポンプの速度を上昇させて(例えば、前に設定したレベルに戻して)、左心室圧が動脈圧よりも低下するようにしてもよい。こうした方法の一例を示す流れ図が図5に表されている。
【0057】
一部の実施態様では、流入導管と流出導管の両方にセンサを有する血液ポンプシステムを血流量メータとして使用することができる。こうしたシステムを使用して、ポンプを通る血流量を、連続的、定期的、又は要求に応じて監視することができる。血液ポンプシステムは、例えば、血液を心臓から(例えば、左心室から)受けるための流入導管、及び(例えば、大動脈によって)循環系に血液を戻すための流出導管を有する血液ポンプ、並びに血液ポンプに機能的に接続された制御装置を含むことができ、流入導管は流入導管圧を検出するための第1のセンサを有し、流出導管は流出導管圧を検出するための第2のセンサを有する。流入導管圧は左心室圧と実質的に同じであり得、第1のセンサを、流入導管圧に関する信号を制御装置に送信するように適合させることができる。同様に、流出導管圧は動脈圧と実質的に同じであり得、このセンサを流出導管圧に関する信号を制御装置に送信するように適合させることができる。制御装置を、流入導管圧、及び流出導管圧に基づいてポンプを通る血流量を計算するように適合させることができる。血流量の計算は、例えば、血液ポンプのモータ速度、及び血液ポンプ内の圧力変化(例えば、ポンプ中の圧力低下)に基づいてもよい。場合によっては、計算された血流量に関する情報を(例えば、連続的、定期的、又は要求に応じて)ディスプレイに出力するように制御装置を適合させることができる。
【0058】
本書では、対象の血液ポンプを通る血流量を測定する方法も提供する。この方法は、血液ポンプの流入導管に存在するセンサによって左心室圧を検出すること、血液ポンプの流出導管に存在するセンサによって動脈圧を検出すること、及び左心室圧と動脈圧の差に基づいて血流量を計算することを含むことができる。したがって、血流量の計算はポンプ中の圧力低下、並びにモータ速度に基づいてもよい。血流量に関する情報をディスプレイに出力することができる。左心室圧、及び動脈圧を、連続的、定期的、又は要求に応じて検出することができる。さらに、この方法は、血液ポンプ内の圧力変化に関する格納された情報を検索することを含むことができる。
【0059】
こうした血液ポンプを対象に配置する前に、血液ポンプを血流量の計算に使用するための定数を決定する際に使用することができる。例えば、技術者はポンプ中の流量を測定して、圧力低下を決定することができ、ポンプの特定の構成に基づいて定数を導き出すことができる。ポンプを較正して、血液ポンプが対象に接続されてポンプシステムが使用中になった後に、血流量の計算に使用することができる係数(乗数)を決定することができる。血液ポンプ流量を以下の式を使用して制御装置によって計算することができる:
流量=(ポンプの出口圧-ポンプの入口圧)×C、式中、C=ポンプの幾何形状、表面状態、及び粘度を表す定数から経験的に導き出されたもの
【0060】
場合によっては、モータ速度と組み合わせて、ポンプ中の圧力低下の関数として流量の「参照表」を使用することによって、流量を決定することができる。
【0061】
(他の実施態様)
理解されるように、本発明の詳細な説明と併せて本発明を記載したが、上記の説明は例示であって、本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によって規定される。例えば、血液ポンプは、回転ポンプ、渦巻血液ポンプ、又は任意の他のタイプの血液ポンプでもよい。
【0062】
また、一実施態様によれば、前述の任意のコンピュータ実施方法と関連して、血液ポンプの制御装置(例えば、制御装置80)を植え込み、又は身体外で使用することができる。制御装置80は、マイクロコントローラ、カスタマイズされた専用集積回路(ASIC)、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)、分散制御系(DCS)、遠隔端末ユニット(RTU)、ラップトップ、及び任意の他の適したコンピュータなど、様々な形のディジタルコンピュータを含むことができる。
【0063】
制御装置80など制御装置は、例えば、プロセッサ、メモリ、ストレージデバイス、及び入力/出力デバイスを含むことができる。各構成要素をシステムバスを使用して相互接続することができる。プロセッサは、制御装置内で命令を処理して実行することができるものでもよい。幾つかのアーキテクチャの任意のものを使用して、プロセッサを設計することができる。例えば、プロセッサは、CISC(Complex Instruction Set Computers)プロセッサ、RISC(Reduced Instruction Set Computer)プロセッサ、又はMISC(Minimal Instruction Set Computer)プロセッサでもよい。
【0064】
一部の実施態様では、プロセッサはシングルスレッドプロセッサでもよい。一部の実施態様では、プロセッサはマルチスレッドプロセッサでもよい。プロセッサは、メモリ、又はストレージデバイスに格納された命令を処理して、入力/出力デバイス上のユーザインターフェースに図形情報を表示することができるものでもよい。
【0065】
メモリは制御装置80内で情報を格納することができる。一部の実施態様では、メモリはコンピュータ可読媒体でもよい。場合によっては、メモリは揮発性メモリユニットでもよい。他の場合は、メモリは不揮発性メモリユニットでもよい。
【0066】
ストレージデバイスは、制御装置80に大容量記憶を提供することができるものでもよい。一部の実施態様では、ストレージデバイスはコンピュータ可読媒体でもよい。様々な場合、ストレージデバイスはハードディスクデバイス、又は光ディスクデバイスでもよい。
【0067】
入力/出力デバイスは制御装置80の入力/出力動作を可能にするものである。一部の実施態様では、入力/出力デバイスはグラフィカルユーザインターフェースを表示するためのディスプレイユニットを含むことができる。ディスプレイは、ユーザからの入力を受信するためのタッチスクリーンインターフェースを有することができる。さらに、入力/出力デバイスはユーザから情報を受信するための制御装置上のボタン、ダイアル、及び/又はスイッチを含むことができる。
【0068】
記載した特徴をディジタル電子回路、又はコンピュータのハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、或いはその組み合わせで実装することができる。プログラマブルプロセッサによって実行するための、例えば機械可読ストレージデバイスなど、情報担体に有形に具体化されたコンピュータプログラム製品でこの装置を実施することができ;入力データを作動させ、出力を生成することによって、命令のプログラムを実行して、記載した実施態様の機能を行うプログラマブルプロセッサによって方法の工程を実行することができる。データストレージシステム、少なくとも1つの入力デバイス、及び少なくとも1つの出力デバイスからデータ、及び命令を受信し、データ、及び命令をそれらに伝送するように結合された少なくとも1つのプログラマブルプロセッサを含むプログラマブルシステム上で実行可能な1つ以上のコンピュータプログラムで記載の特徴を有利に実施することができる。コンピュータプログラムは、コンピュータで直接、又は間接的に使用して、あるアクティビティを実行し、又はある結果をもたらすことができる1組の命令である。コンピュータプログラムをコンパイルされた言語、又は解釈された言語を含む任意の形のプログラミング言語で書き込むことができ、独立型プログラム、又はモジュール、構成要素、サブルーチン、或いは計算環境での使用に適した他のユニットを含む任意の形で展開することができる。
【0069】
命令のプログラムの実行に適したプロセッサには、一例として、限定的ではないが、汎用と専用の両方のマイクロプロセッサ、及び単独のプロセッサ、又は任意の種類のコンピュータの複数のプロセッサの1つが含まれる。一般に、プロセッサは、読出し専用メモリ、又はランダムアクセスメモリ、或いはその両方から、命令、及びデータを受信することができる。コンピュータの必須要素は、命令を実行するためのプロセッサ、並びに、命令、及びデータを格納するための1つ以上のメモリである。コンピュータは、通常、データファイルを格納する1つ以上の大容量ストレージデバイスも含み、又はそれらと通信するために機能的に結合される。こうしたデバイスの例には、内部ハードディスク、取外し可能ディスク、光磁気ディスク、及び光ディスクなど磁気ディスクが含まれる。コンピュータプログラム命令、及びデータを有形に具体化するのに適したストレージデバイスには、一例として、半導体メモリデバイス(例えば、EPROM、EEPROM、及びフラッシュメモリデバイス)、内部ハードディスク、及び取外し可能ディスク、並びに磁気光ディスクなど、磁気ディスクを含む、全ての形態の不揮発性メモリが含まれる。プロセッサ、及びメモリをASICで補足し、又はそれと一体にすることができる。
【0070】
ユーザとの対話を提供するため、情報をユーザに表示するための液晶ディスプレイ(LCD)モニタなどディスプレイデバイスを有するコンピュータで特徴を実装することができる。
【0071】
やはり理解されるように、本明細書に記載した本発明は左心室を助けるための血液ポンプに関するものであるが、他の実施態様も企図される。例えば、入口、及び/又は出口に圧力変換器を有する血液ポンプを使用して、右心室からの流れを補足することができる。入口導管を右心房、又は大静脈に取り付けて、中心静脈圧を示すことができ、ポンプ出口導管を肺動脈(PA)に取り付けて、PA圧を示すことができる。こうした実施態様では、静脈還流からの血液を左心室に肺を通して押し込むことができる。
【0072】
一部の実施態様では、1つのポンプを右側で使用することができ、他方のポンプを左側で使用することができ、それによって、全体の人工心臓、又は両側のシステムが生成される。全体血流量を各ポンプの圧力レベルの適切な調整によって制御することができる。一部の実施態様では、経皮的リードによるデータ伝送により、又は電気信号による無線伝送により、制御装置を患者に植え込むことができる。
【0073】
他の態様、利点、及び修正態様は以下の特許請求の範囲内に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
心臓の左心室から血液を受けるための流入導管、及び循環系に血液を戻すための流出導管を有する血液ポンプと、
該血液ポンプに機能的に接続された制御装置とを備える、血液ポンプシステムであって、
該流入導管が、左心室圧と実質的に同じである導管圧を検出するように配置されたセンサを備え、該センサが該導管圧に関する信号を該制御装置に送信するように適合され、該制御装置が信号を該血液ポンプに送信して、該導管圧が下限閾値未満の場合は該血液ポンプの速度を低下させ、該導管圧が上限閾値よりも高い場合は該血液ポンプの速度を維持し、又は上昇させるように適合される、前記血液ポンプシステム。
【請求項2】
前記上限閾値が80mmHgであり、前記下限閾値が10mmHgである、請求項1記載の血液ポンプシステム。
【請求項3】
前記システムが対象に与える補助の程度を計画的に低減するように該システムが構成される、請求項1記載の血液ポンプシステム。
【請求項4】
前記システムが前記ポンプの速度を連続的に調整して陽圧の左心室収縮期圧を10mmHgから40mmHgの範囲内に維持するように構成される、請求項1記載の血液ポンプシステム。
【請求項5】
血液ポンプを有する閉ループ液体循環系内の一定の圧力を維持する方法であって、
該血液ポンプの流入導管にあるセンサによって血圧を検出すること、ここで該検出された圧力は左心室圧に相当する;及び
該検出された圧力に基づいて該血液ポンプの速度を上昇、維持、又は低下させることを含み、
該検出された圧力が最高左心室圧に相当する上限閾値よりも高い場合は該速度を上昇させ、該検出された圧力が最低左心室圧に相当する下限閾値未満の場合は該速度を維持、又は低下させる、前記方法。
【請求項6】
血液ポンプを有する閉ループ液体循環系内の一定の圧力を維持する方法であって、
該血液ポンプの流入導管にあるセンサによって血圧を繰り返し検出すること、ここで該検出された圧力は左心室圧に相当する;及び
該検出された圧力が上昇する場合は該血液ポンプの速度を上昇させ、該検出された圧力が低下する場合は該血液ポンプの速度を低下させ、又は該検出された圧力が大幅に変化しない場合は該血液ポンプの速度を維持することを含む、前記方法。
【請求項7】
血液ポンプを有する閉ループ液体循環系内の流量を制御する方法であって、該血液ポンプが左心室から血液を受けるための流入導管、及び循環系に血液を戻すための流出導管、並びに該血液ポンプに機能的に接続された制御装置を有し、該流出導管が動脈圧と実質的に同じである導管圧を検出するように配置されたセンサを備え、該センサが該導管圧に関する信号を該制御装置に送信するように適合され、該方法が、
a)該ポンプのモータ速度を調整して、選択された血液ポンプ流量が維持されるようにすること、
b)第1の選択された期間にわたり該ポンプのモータ速度を低下させて、血液ポンプ流量を低下させ、該流出導管のセンサを使用して圧力を測定すること、
c)該ポンプを該ポンプの前の機能レベルに戻すこと、
d)少なくとも該圧力が工程(b)中に評価可能なほど低下しないと決定されるまで、工程(b)と(c)を繰り返すこと、
e)該第1の選択された期間よりも長い第2の選択された期間にわたり該ポンプのモータ速度を低下させて、血液ポンプ流量を低下させ、該流出導管のセンサを使用して該圧力を測定すること、
f)該ポンプを該ポンプの前の機能レベルに戻すこと、
g)少なくとも該圧力が工程(e)中に評価可能なほど低下しないと決定されるまで、工程(e)と(f)を繰り返すこと、並びに
h)該ポンプのモータ速度を低下させる期間を徐々に延長することを含む、前記方法。
【請求項8】
工程(b)、及び(e)で前記ポンプのモータ速度を低下させて、血液ポンプ流量が約1lpm低下されるようにする、請求項7記載の方法。
【請求項9】
心臓の右心室から血液を受けるための流入導管、及び肺循環に血液を戻すための流出導管を有する血液ポンプと、
該血液ポンプに機能的に接続された制御装置とを備える、血液ポンプシステムであって、
該流入導管が右心室圧と実質的に同じである導管圧を検出するように配置されたセンサを備え、該センサが該導管圧に関する信号を該制御装置に送信するように適合され、該制御装置が信号を該血液ポンプに送信して、該導管圧が下限閾値未満の場合は該血液ポンプの速度を低下させ、該導管圧が上限閾値よりも高い場合は該血液ポンプの速度を維持し、又は上昇させるように適合される、前記血液ポンプシステム。
【請求項10】
前記上限閾値が約60mmHgであり、前記下限閾値が約20mmHgである、請求項9記載の血液ポンプシステム。
【請求項11】
前記システムが対象に与える補助の程度を計画的に低減するように該システムが構成される、請求項9記載の血液ポンプシステム。
【請求項12】
前記システムが前記ポンプの速度を連続的に調整して、陽圧の右心圧を5mmHgから20mmHgの範囲内に維持するように構成される、請求項9記載の血液ポンプシステム。
【請求項13】
血液ポンプを有する閉ループ液体循環系内の一定の圧力を維持する方法であって、
該血液ポンプの流入導管に存在するセンサによって血圧を検出すること、ここで該検出された圧力は右心室圧に相当する;及び
該検出された右心室圧に基づいて該血液ポンプの速度を上昇、維持、又は低下させることを含み、
該検出された圧力が最高右心室圧に相当する上限閾値よりも高い場合は該速度を上昇させ、該検出された圧力が最低右心室圧に相当する下限閾値未満の場合は該速度を維持、又は低下させる、前記方法。
【請求項14】
血液ポンプを有する閉ループ液体循環系内の一定の圧力を維持する方法であって、
該血液ポンプの流入導管に存在するセンサによって血圧を繰り返し検出すること、ここで該検出された圧力は右心室圧に相当する;及び
該検出された圧力が上昇する場合は該血液ポンプの速度を上昇させ、該検出された圧力が低下する場合は該血液ポンプの速度を低下させ、又は該検出された圧力が大幅に変化しない場合は該血液ポンプの速度を維持することを含む、前記方法。
【請求項15】
右心室から血液を受けるための流入導管、及び循環系に血液を戻すための流出導管を有する血液ポンプと、該血液ポンプに機能的に接続された制御装置とを有し、該流出導管が右心室圧と実質的に同じである導管圧を検出するように配置されたセンサを備え、該センサが該導管圧に関する信号を該制御装置に送信するように適合されている閉ループ液体循環系内の流量を制御する方法であって、
a)該ポンプのモータ速度を調整して、選択された血液ポンプ流量が維持されるようにすること、
b)第1の選択された期間にわたり該ポンプのモータ速度を低下させて、血液ポンプ流量を低下させ、該流出導管のセンサを使用して圧力を測定すること、
c)該ポンプを該ポンプの前の機能レベルに戻すこと、
d)少なくとも該圧力が工程(b)中に評価可能なほど低下しないと決定されるまで、工程(b)と(c)を繰り返すこと、
e)該第1の選択された期間よりも長い第2の選択された期間にわたり該ポンプのモータ速度を低下させて、血液ポンプ流量を低下させ、該流出導管のセンサを使用して該圧力を測定すること、
f)該ポンプを該ポンプの前の機能レベルに戻すこと、
g)少なくとも該圧力が工程(e)中に評価可能なほど低下しないと決定されるまで、工程(e)と(f)を繰り返すこと、並びに
h)該ポンプのモータ速度を低下させる期間を徐々に延長することを含む、前記方法。
【請求項16】
心臓の左心室から血液を受けるための第1の流入導管、及び循環系に血液を戻すための第1の流出導管を有する第1の血液ポンプと、
心臓の右心室から血液を受けるための第2の流入導管、及び肺循環に血液を戻すための第2の流出導管を有する第2の血液ポンプと、
該第1、及び第2の血液ポンプに機能的に接続された制御装置とを備える、血液ポンプシステムであって、
該第1の流入導管が左心室圧と実質的に同じである第1の導管圧を検出するように配置された第1の流入センサを備え、
該第1の流入センサが該第1の導管圧に関する信号を該制御装置に送信するように適合され、
該第2の流入導管が右心室圧と実質的に同じである第2の導管圧を検出するように配置された第2の流入センサを備え、
該第2の流入センサが該第2の導管圧に関する信号を該制御装置に送信するように適合され、
該制御装置が信号を該第1の血液ポンプに送信して、該第1の導管圧が第1の下限閾値未満の場合は該第1の血液ポンプの速度を低下させ、該第1の導管圧が第1の上限閾値よりも高い場合は該第1の血液ポンプの速度を維持し、又は上昇させるように適合され、
該制御装置が信号を該第2の血液ポンプに送信して、該第2の導管圧が第2の下限閾値未満の場合は該第2の血液ポンプの速度を低下させ、該第2の導管圧が第2の上限閾値よりも高い場合は該第2の血液ポンプの速度を維持し、又は上昇させるように適合される、前記血液ポンプシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−519034(P2012−519034A)
【公表日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−552182(P2011−552182)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【国際出願番号】PCT/US2010/025531
【国際公開番号】WO2010/099403
【国際公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(510286835)ソラテック コーポレーション (4)
【氏名又は名称原語表記】Thoratec Corporation
【住所又は居所原語表記】6035 Stoneridge Drive Pleasanton, California 94588 United States of America
【Fターム(参考)】