説明

制御システム

【課題】スマートキーシステムにおいて、WAKE信号に対するキーからの応答信号が、最初に送信したWAKE信号に対する応答なのか、2番目以降のWAKE信号に対する応答なのか、が判別できる仕組みを有することにより、リレーアタックによる被害を効果的に抑制できる制御システムを提供する。
【解決手段】車両からスマートキーへの通信開始時のWAKE信号を、最初に送信するWAKE1信号と、それ以降に送信するWAKE2信号とで異なる信号とし、キー側ではWAKE1信号を受信した場合の応答信号とWAKE2信号を受信した場合の応答信号とを異なる信号とする。車両側がWAKE1信号への応答信号を受信していない場合には、リレーアタックが行われていると判断して車両のドア開錠やエンジン始動を許可しない。車両側がWAKE1信号への応答信号を受信している場合は、IDの照合が成功したら、車両のドア開錠やエンジン始動を許可する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両のスマートキーシステム(スマートエントリーシステム、スマートスタートシステム)が普及している。現状のスマートキーシステムにおいては、例えばユーザがドアハンドル接触やエンジンスタートスイッチの押下といった操作を行うと、ポーリング信号(リクエスト信号)が送信され、スマートキーから返信されたIDとマスターIDとで照合がとれた時点でドア開錠やエンジン始動が実行される。
【0003】
例えば下記特許文献1には、スマートキーシステムにおいて、乗員に運転継続の意思があるか否かを判定する手段を装備して、携帯機が車両から離間し、携帯機の不所持者に運転継続の意思がある場合には内燃機関の再始動を許可し、車両の盗難をより確実に防止するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−153190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スマートキーシステムにはリレーアタックと呼ばれる盗難の手法が知られている。それは図6に示されている。この手法では、車両から所有者が離れている状況において、車両と所有者との間に犯罪者A、Bが位置する。所有者はスマートキーを携帯しているとする。犯罪者A、Bは電波中継器を所持している。
【0006】
この状態で、まず車両から発信されたポーリング信号(リクエスト信号)を犯罪者A、Bが中継して所有者の場所まで伝達する。通常ポーリング信号の到達範囲は車両周辺に限定されているが、犯罪者A、Bの中継により所有者の所までポーリング信号を届かせることができる。車両の所有者が携帯するマスターキーは、ポーリング信号を受信したら、自身が記憶しているマスターキー固有のIDコードをRF信号として返信する。
【0007】
返信されたRF信号は車両まで到達する。車両は受信したRF信号に対してマスターIDとの間で照合処理を実行する。RF信号は所有者の持つスマートキーから送信された信号なので、当然照合は成功となる。これにより車両はドアの開錠許可状態となる。こうして犯罪者は車両に侵入することが可能となる。
【0008】
さらに、犯罪者Aが車両に搭乗した後に、同様の手順を繰り返すと、車室内照合が成功して、車両はエンジン始動が許可される。こうして犯罪者が車両を走行させることが可能となる。以上がリレーアタックの概要である。
【0009】
こうしたリレーアタックに対する効果的な対策が当然必要である。スマートキーシステムにおける車両とキーとの間の無線通信では、通常、通信の最初に車両からキーへ、キーを起動させる(あるいは通信開始を伝達する)WAKE信号を複数送信し、キーからその応答信号を返信するが、発明者は、犯罪者の中継器は、複数のWAKE信号のうちの最初のものをキーまで中継できないとの知見を得た。
【0010】
したがってWAKE信号に対するキーからの応答信号が、最初に送信したWAKE信号に対する応答なのか、2番目以降のWAKE信号に対する応答なのか、が判別できる仕組みをスマートキーシステムに組み込めば、リレーアタックが行われているか否かを判別できることとなり、リレーアタックによる被害を抑制する有効な方策となると考えられる。こうした手法によるリレーアタック対策は従来技術では行われていない。
【0011】
そこで本発明が解決しようとする課題は、上記問題点に鑑み、スマートキーシステムにおいて、WAKE信号に対するキーからの応答信号が、最初に送信したWAKE信号に対する応答なのか、2番目以降のWAKE信号に対する応答なのか、が判別できる仕組みを有することにより、リレーアタックによる被害を効果的に抑制できる制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0012】
上記課題を達成するために、本発明に係る制御システムは、使用者が携帯可能であり、無線通信機能を有する第1通信部を備えた携帯機と、車両に備えられて、前記第1通信部との無線通信機能を有する第2通信部と、前記第2通信部から前記第1通信部へ向けて、前記第2通信部と前記第1通信部の間の通信開始を伝達する第1開始信号と、その第1開始信号と異なる第2開始信号と、をこの順序で送信する第1送信手段と、前記第1通信部が前記第1開始信号を受信したら第1応答信号を、前記第1通信部が前記第2開始信号を受信したら前記第1応答信号と異なる第2応答信号を、前記第1通信部が識別信号の返信を要求する指令信号を受信したら識別信号を、前記第1通信部から送信させる返信手段と、前記第2通信部が受信した信号が第1応答信号か第2応答信号かを検出する検出手段と、その検出手段が前記第1応答信号の受信を検出した場合に、前記指令信号を前記第2通信部から送信する第2送信手段と、前記第2通信部が受信した信号と前記携帯機固有の識別信号とを照合して一致したら、前記車両に対する所定の操作を許可する許可手段と、を備えたことを特徴とする。
【0013】
これにより本発明に係る制御システムでは、いわゆるスマートキーシステムにおいて、車両と携帯機との間の通信開始を伝達する信号(いわゆるWAKE信号)を最初に送信する第1開始信号と、それ以降の第2開始信号とで異なる内容とし、携帯機の側では第1開始信号に対する応答信号と、第2開始信号に対する応答信号とを異なる信号として返信するので、リレーアタックが行われており犯罪者の携帯機の性質によって第1開始信号が携帯機まで中継されず、第1開始信号に対する応答信号がない場合が車両の側で検出できる。したがって第1開始信号に対する応答信号がない場合には車両の所定操作を許可しないことにより、リレーアタックによる被害が抑制できる。
【0014】
また前記第2送信手段は、前記検出手段が前記第1応答信号の受信を検出しない場合には、前記第2通信部から前記指令信号を送信しないとしてもよい。
【0015】
これにより第1応答信号の受信を検出しない場合には、第2通信部から指令信号を送信しないので、リレーアタックが行われていると考えられる場合には、いわゆるIDの照合処理に関する信号の送受信も省略する。したがって必要性の低い信号の送受信を省略したシステムとできる。
【0016】
また前記第1送信手段が、前記第2通信部から前記第1通信部へ向けて、前記第1開始信号のみを送信して、前記第2開始信号は送信しない第3送信手段に置き換えられたとしてもよい。
【0017】
これにより車両から携帯機への通信開始を伝達する開始信号(いわゆるWAKE信号)は1個のみ送信して、それに対する携帯機からの応答があるかないかでリレーアタックが行われているか否かを判別する形態とするので、送受信する信号の数を必要最小限にした簡素なシステムとできる。
【0018】
また前記所定の操作は前記車両のドアの開錠操作であるとしてもよい。
【0019】
これによりいわゆるスマートキーシステムにおいて、車両と携帯機との間の通信開始を伝達する信号(いわゆるWAKE信号)を、最初に送信する第1開始信号と、それ以降の第2開始信号とで異なる内容とし、携帯機の側では第1開始信号に対する応答信号と、第2開始信号に対する応答信号とを異なる信号として返信することにより、第1開始信号に対する応答信号がない場合にリレーアタックが行われていることが車両の側で検出できることとなって、車両のドア開錠を許可しないシステムが実現できる。したがっていわゆるWAKE信号に工夫を加えることによりリレーアタックを精度よく検出できて、リレーアタックによる車両のドア開錠が効果的に抑制できる。
【0020】
また前記所定の操作は前記車両の走行のための駆動部の始動操作であるとしてもよい。
【0021】
これによりいわゆるスマートキーシステムにおいて、車両と携帯機との間の通信開始を伝達する信号(いわゆるWAKE信号)を、最初に送信する第1開始信号と、それ以降の第2開始信号とで異なる内容とし、携帯機の側では第1開始信号に対する応答信号と、第2開始信号に対する応答信号とを異なる信号として返信することにより、第1開始信号に対する応答信号がない場合にリレーアタックが行われていることが車両の側で検出できることとなって、車両の駆動部始動を許可しないシステムが実現できる。したがっていわゆるWAKE信号に工夫を加えることによりリレーアタックを精度よく検出できて、リレーアタックによる車両の駆動部の始動が効果的に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の制御システムの1実施例における構成図。
【図2】スマートエントリーシステムの場合の処理手順を示すフローチャート。
【図3】スマートスタートシステムの場合の処理手順を示すフローチャート。
【図4】リレーアタックではない場合の送受信信号の例を示す図。
【図5】リレーアタックの場合の送受信信号の例を示す図。
【図6】リレーアタックの概要を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しつつ説明する。まず図1は、本発明に係る車両の制御システム1(システム、制御装置)の装置構成の概略図である。図1に示されたシステム1は、車両2に備えられた制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)4、及びユーザが携帯可能なキー3(スマートキー、電子キー、携帯機)を備える。車両2は自動車であれば何ら限定されず、例えばガソリンエンジン車、ディーゼルエンジン車や、電気自動車、ハイブリッド車でもよい。
【0024】
ECU4は、車室外LF送信部40、車室内LF送信部41、RF受信部42を備える。車室外LF送信部40は、例えば車両2のドアハンドルの部位に装備されて、LF(長波)帯域の電磁波によって車両2の車室外に、キー3の起動を要求する(あるいは車両2とキー3間の通信開始を伝達する)WAKE信号、及び車両2のコード情報を含む信号(以下、車両コード)を送信する。
【0025】
車室内LF送信部41は、車室内に装備されて、LF(長波)帯域の電磁波によって車両2の車室内にWAKE信号、車両コードを送信する。RF受信部42は、例えば車室内に装備されて、車外、車室内から送信されたRF信号を受信する。
【0026】
ECU4は通常のコンピュータの構造を有するとし、各種演算や情報処理を司るCPU、CPUの作業領域としての一時記憶部であるRAM、各種情報を記憶するための不揮発性のメモリ43を備える。メモリ43には、後述するマスターID44が記憶されているとする。
【0027】
車両2のドア5には、ロック機構50、タッチセンサ51、ロックボタン52が装備されている。ロック機構50により、ドアが施錠あるいは開錠される。タッチセンサ51は、車両2のドアハンドルに装備されて、ユーザがドアハンドルを握ったことを検出するセンサである。ロックボタン52は、スマートキーシステムにおけるドアの施錠ボタンであり、ドアハンドル付近に備えられて、車室外照合が成功の場合にユーザが押下するとドアが施錠されるボタンである。
【0028】
なおドア5は車両2に装備された複数のドア(運転席側ドア、助手席側ドア、後部座席右側、左側ドアなど)を指すとし、その個々のドアにロック機構50、タッチセンサ51、ロックボタン52が装備されているとすればよい。
【0029】
また車両2は、車室内の運転席近傍にエンジンスタートスイッチ61を備える。エンジンスタートスイッチ61はスマートスタートシステムにおけるエンジン始動のためのスイッチであり、車室内照合が成功の状態でユーザが押下するとエンジンが始動するスイッチである。以上の各部は車内通信(CAN通信)により接続されて情報の受け渡しが可能となっている。
【0030】
キー3はスマートキーシステムに関わる電子キーであり、ユーザが携帯可能で、LF受信部30、RF送信部31、制御部32、メモリ33を備える。メモリ33には、当該キー3に固有の識別信号34(IDコード、ID)が記憶されている。
【0031】
LF受信部30は、上述のWAKE信号、車両コードを受信する。RF送信部31は、WAKE信号、車両コードの受信を受けて、WAKE信号に対する応答信号や当該キー3固有のIDコード36をRF信号として送信する。制御部32は、通常のコンピュータと同様の構造を有するとし、各種情報処理のためのCPUや、CPUの作業領域としての一時記憶部のRAMなどを備えるとする。制御部32によってLF送信部30、RF送信部31などを含むキー3の装備が制御される。
【0032】
以上のとおり本システムは、車両のドアの開錠方法としていわゆるスマートエントリーシステムを備える。従来のスマートエントリーシステムでは、ユーザによるドアハンドルを握るドア開錠のための操作をタッチセンサ51が検出すると、車室外LF送信部40からキー3へ向けて、まずWAKE信号を送信する。例えば1回のドアハンドルの接触検出につき所定個数(例えば3、4個)のWAKE信号が送信されるとすればよい。
【0033】
キー3は、WAKE信号をLF受信部30で受信したら、キー3がWAKE信号を受信して起動したことを伝達する応答信号を車両2へ向けてRF送信部31から返信する。その応答信号を車両2がRF受信部42で受信したら、キー3に向けて、識別信号(ID34)の返信を指令するLF波によるリクエスト信号を車室外LF送信部40から送信する。
【0034】
キー3はリクエスト信号をLF受信部30で受信すると、ID34を含むRF波の信号をRF送信部31から返信する。ECU4は、RF受信部42で受信した信号とキー3固有のマスターID44とを照合して、照合成功(両者が一致)ならば、車両のドア5を開錠する、あるいは開錠許可状態とする。本発明は、以上のスマートエントリーシステムにおいて、WAKE信号及び、それへの応答信号の送受信の部分にリレーアタック対策のための改良を施す。
【0035】
上記構成のもとで、システム1は、車両2におけるスマートエントリーシステムにおけるリレーアタックによるドア開錠を防止する処理を実行する。その処理手順は図2に示されている。図2(及び後述の図3)の処理手順は予めプログラム化して例えばメモリ43、メモリ33に記憶しておき、ECU4、制御部32が呼び出して自動的に実行するとすればよい。図2における右側の処理は、リレーアタックが行われていない場合の処理の例である。
【0036】
図2の処理では、まずS10でECU4は、ユーザによるドアハンドルへの接触をタッチセンサ51が検出したか否かを判定する。タッチセンサ51が接触を検出した場合(S10:YES)はS20に進み、接触を検出していない場合(S10:NO)はS10を繰り返して待ち状態となる。
【0037】
S20に進んだらECU4は、複数のWAKE信号の送信を開始するが、本発明では、複数のWAKE信号のうちで最初に送信されるWAKE信号と2番目以降に送信されるWAKE信号とを(情報内容が)異なる信号とする。まずS20では最初のWAKE信号(WAKE1信号、第1開始信号)を車室外LF送信部40から送信する。続いてS30では、2番目(あるいは2番目以降)のWAKE信号(WAKE2信号、第2開始信号)を車室外LF送信部40から送信する。なおS20におけるWAKE1信号は1個送信するのに対して、S30におけるWAKE2信号の送信は複数個送信してもよい(1個でもよい)。
【0038】
上述のとおり図2における右側(キー3側)の処理は、リレーアタックが行われていない場合の例であり、この場合、キー3はS200でWAKE1信号をLF受信部30で受信し、それに続けて、WAKE1信号を受信したことを示す信号(WAKE1応答信号、第1応答信号)をRF送信部31から車両2へ送信する。
【0039】
さらにキー3はS220でWAKE2信号をLF受信部30で受信し、それに続けて、WAKE2信号を受信したことを示す信号(WAKE2応答信号、第2応答信号)をRF送信部31から車両2へ送信する。WAKE1応答信号とWAKE2応答信号とは情報内容が異なる信号とする。
【0040】
ECU4は、S40でRF受信部42における信号の受信処理を行う。S40ではRF受信部42によって受信した(1個の、あるいは複数の)信号がそれぞれ、WAKE1応答信号であるか、WAKE2応答信号であるかの判別がECU4によって実行されるとすればよい。
【0041】
そしてECU4は、S50とS70とで受信した信号に応じて場合分けを行う。まずS50ではRF受信部42がWAKE1応答信号を受信したか否かを判定する。ECU4は、WAKE1応答信号を受信した場合(S50:YES)はS60へ進み、WAKE1応答信号を受信していない場合(S50:NO)はS70へ進む。
【0042】
そしてS70ではRF受信部42がWAKE2応答信号を受信したか否かを判定する。ECU4は、WAKE2応答信号を受信した場合(S70:YES)はS120へ進み、WAKE2応答信号を受信していない場合(S70:NO)はS110へ進む。
【0043】
S110に進んだらECU4は、WAKE1信号に対する応答もWAKE2信号に対する応答もないので、車両2の近くにキー3が存在せずリレーアタックも行われていないと判断する。S120に進んだらECU4は、WAKE1信号に対する応答はないが、WAKE2信号に対する応答はあったので、上述のとおり犯罪者のもつ中継器の特性によってWAKE1信号はキー3まで中継できず、WAKE2信号で初めて中継できたのであり、リレーアタックが行われていると判断する。以上の2つの場合は図2の処理を終了する。
【0044】
S60に進んだらECU4は、リレーアタックがなされておらず、車両2近くにキー3があると判断して、ドア開錠に向けた照合処理を実行する。具体的にはまずS60でECU4は、車両コード(指令信号)を車室外LF送信部40から送信する。
【0045】
キー3は、S60で送信された車両コードをS240でLF受信部30により受信する。そして、キー3はS250で、車両コードへの応答として、キー3固有のID34を含むRF信号(識別信号)をRF送信部31から送信する。
【0046】
続いてS80でECU4は、RF受信部42でID34を受信したか否かを判定する。ID34を受信した場合(S80:YES)はS90に進み、ID34を受信していない場合(S80:NO)は図2の処理を終了する。
【0047】
S90に進んだらECU4は、S80で受信が確認されたID34とマスターID44との間で照合を行い、照合が成功(すなわちID34とマスターID44とが一致)したか否かを判定する。照合が成功した場合(S90:YES)はS100に進み、照合が不成功であった場合(S90:NO)は車両2の正規のキー3ではないことにより図2の処理を終了する。S100でECU4は、ロック機構50にドアの開錠を指令する。
【0048】
以上のとおり図2の処理では、車両2からキーへのWAKE信号を最初に送信するもの(WAKE1信号)と2番目以降に送信するもの(WAKE2信号)とを異なる信号として、それぞれに対するキー3からの応答信号(WAKE1応答信号、WAKE2応答信号)も異なった信号とするので、車両2の側でキー3がWAKE1信号に対して応答したのか、WAKE2信号に対して応答したのか、が判別できる。そしてキー3がWAKE1信号に対して応答しておらず、WAKE2信号に対して応答した場合は、リレーアタックが行われていると判断して車両のドアを開錠しない。
【0049】
したがって、もし車両の正規の所有者がドアを開錠しようとしている場合(つまりS10によるドアへの接触が車両2の正規の所有者による接触である場合)には、WAKE1信号に対する応答がある(S50:YES)ので、ID34の照合が行われて、照合が成功(S90:YES)となってドアは開錠される(S100)。
【0050】
一方、もしリレーアタックが行われている場合(つまりS10によるドアへの接触が犯罪者による接触である場合)には、犯罪者の中継器の性質によりWAKE1信号がキー3まで中継されず、WAKE1信号に対する応答信号がない(S50:NO)ので、ドアは開錠されない。したがってリレーアタックによる車両ドアの開錠は抑制される。以上が図2の処理である。図2の処理によるリレーアタックが行われていない場合と行われている場合とでの送受信される信号の例が図4、図5(a)に示されている。
【0051】
なおリレーアタックの影響でなく、通信の不調によってWAKE1信号がキー3まで到達しない、あるいはWAKE1信号の応答信号が車両へ到達しない場合が考えられるが、その場合はユーザがS10のドアハンドルへの接触を複数回行えば、何回目かでWAKE1信号の応答信号が車両へ到達することとなって車両のドアが開錠できる。一方リレーアタックが原因でWAKE1信号の応答信号が車両へ到達しない場合は、犯罪者の中継器の性質によるので、何度犯罪者がドアハンドルへ接触してもWAKE1信号の応答信号が車両へ到達することがなく車両のドアは開錠されない。したがって図2の処理は、リレーアタックによるドア開錠は抑制しつつ、通信不調によってドア開錠できない不具合の可能性は最小限に抑えられる。
【0052】
次に図3を説明する。図2がスマートエントリー(スマートキーを用いたドア開錠)におけるリレーアタック対策の処理手順であったのに対して、図3はスマートスタート(スマートキーを用いたエンジン始動)におけるリレーアタック対策の処理手順である。図3の各処理のうちで図2と同じ符号の部分は、図2と同じ処理を行う。以下で図2と異なる部分を説明する。
【0053】
図3の処理では、図2のS10がS5に置き換えられる。S5でECU4は、エンジンスタートスイッチ61に対するユーザによるオン操作が行われたか否かを判定する。エンジンスタートスイッチ61に対するオン操作が行われた場合(S5:YES)はS20へ進み、エンジンスタートスイッチ61に対するオン操作が行われていない場合(S5:NO)はS5を繰り返してオン操作を待つ。
【0054】
また図3では、図2のS100がS105に置き換えられる。S105でECU4は、エンジン(モータ、車両2の走行のための駆動部)を始動する。
【0055】
図3の処理においても、図2と同様の原理が働いて、リレーアタックによるエンジン始動は抑制される。すなわちもし車両の正規の所有者がエンジンを始動しようとしている場合(つまりS5によるエンジンスタートスイッチのオン操作が車両2の正規の所有者による操作である場合)には、WAKE1信号に対する応答がある(S50:YES)ので、ID34の照合が行われて、照合が成功(S40:YES)となってエンジンは始動される(S105)。
【0056】
一方、もしリレーアタックが行われている場合(つまりS5によるエンジンスタートスイッチのオン操作が犯罪者による操作である場合)には、犯罪者の中継器の性質によりWAKE1信号がキー3まで中継されず、WAKE1信号に対する応答信号がない(S50:NO)ので、エンジンは始動しない。したがってリレーアタックによるエンジンの始動は抑制される。以上が図3の処理である。
【0057】
上記実施例では、車両側からWAKE1信号とWAKE2信号とを送信し、キー3からWAKE1応答信号とWAKE2応答信号とを返信しているが、このうちWAKE2信号の送信を省略する(したがってWAKE2応答信号の返信も省略される)ように変更してもよい。この場合当然、図2、3でS70、S110、S120の処理も省略される。この変更により、より簡素な構成とできる。
【0058】
図5は、リレーアタックの影響でWAKE1応答信号が車両側で受信されていない場合の送受信信号の例が示されている。図2、図3の処理を実行した場合、図5(a)のように車両コード等の送信や車両コード等応答の返信の部分がない。これを、図5(b)のように、リレーアタックがおこなわれている場合でも車両コード等の送信や車両コード等応答の返信が行われるように変更してもよい。
【0059】
この場合、例えばS60の処理をS50よりも図示上側に移動させ、S50で肯定判断(YES)ならばS80に進むように図2、図3を変更すればよい。そして、車両2側でWAKE1応答信号の受信を待つ期間を引き延ばす(例えば車両コード等応答の受信を開始する時間まで引き延ばす)としてもよい。この場合、WAKE1応答信号を受信したか否かの確認がより確実にできる。一方図5(a)のようにWAKE1応答信号が車両2側で受信されないときは車両コードや車両コード等応答の送受信を行わない形態とする場合は、必要性の低い信号の送受信を省略できる利点がある。
【0060】
S20、S30の手順とECU4とが第1送信手段を構成する。S210、S230、S250の手順と制御部32とが返信手段を構成する。S40の手順とECU4とが検出手段を構成する。S60の手順とECU4とが第2送信手段を構成する。S100、S105の手順とECU4とが許可手段を構成する。
【符号の説明】
【0061】
1 制御システム
2 車両
3 キー(携帯機)
4 ECU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者が携帯可能であり、無線通信機能を有する第1通信部を備えた携帯機と、
車両に備えられて、前記第1通信部との無線通信機能を有する第2通信部と、
前記第2通信部から前記第1通信部へ向けて、前記第2通信部と前記第1通信部の間の通信開始を伝達する第1開始信号と、その第1開始信号と異なる第2開始信号と、をこの順序で送信する第1送信手段と、
前記第1通信部が前記第1開始信号を受信したら第1応答信号を、前記第1通信部が前記第2開始信号を受信したら前記第1応答信号と異なる第2応答信号を、前記第1通信部が識別信号の返信を要求する指令信号を受信したら識別信号を、前記第1通信部から送信させる返信手段と、
前記第2通信部が受信した信号が第1応答信号か第2応答信号かを検出する検出手段と、
その検出手段が前記第1応答信号の受信を検出した場合に、前記指令信号を前記第2通信部から送信する第2送信手段と、
前記第2通信部が受信した信号と前記携帯機固有の識別信号とを照合して一致したら、前記車両に対する所定の操作を許可する許可手段と、
を備えたことを特徴とする制御システム。
【請求項2】
前記第2送信手段は、前記検出手段が前記第1応答信号の受信を検出しない場合には、前記第2通信部から前記指令信号を送信しない請求項1に記載の制御システム。
【請求項3】
前記第1送信手段が、前記第2通信部から前記第1通信部へ向けて、前記第1開始信号のみを送信して、前記第2開始信号は送信しない第3送信手段に置き換えられた請求項1又は2に記載の制御システム。
【請求項4】
前記所定の操作は前記車両のドアの開錠操作である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の制御システム。
【請求項5】
前記所定の操作は前記車両の走行のための駆動部の始動操作である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−62651(P2012−62651A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−206278(P2010−206278)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】