説明

制御冷却による滅菌方法

本発明は、オートクレーブチャンバ(1)内の充填済み容器の滅菌方法(100)に関し、滅菌段階(102)および冷却段階(103)を含む。滅菌段階(102)は、前記容器の中身を滅菌するのに十分な時間にわたり、105〜140℃の範囲の温度で充填済み容器を滅菌することを含む。冷却段階(103)は、前記チャンバ(1)内に存在するすべての容器の最高温度を有すると予測される前記充填済み容器のうちの1つの容器温度Tcont,maxを監視することと、前記チャンバ(1)内の所与の位置におけるチャンバ温度Tchを監視することと、温度差ΔT=Tcont−Tchが前記冷却段階(103)中に所定値未満に維持されるようにチャンバ温度Tchを制御することとを含む。さらに、本発明は、充填済み容器の滅菌方法に用いられるオートクレーブに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、滅菌段階および冷却段階を含む、オートクレーブチャンバ内の充填済み容器の滅菌方法に関する。さらに、本発明は、充填済み容器の滅菌用のオートクレーブに関する。
【背景技術】
【0002】
注射可能な薬物および静脈注射用の溶液の調製には、人および動物が細菌およびウイルス等の微生物に晒される危険を低減するかまたはなくすために、高い滅菌レベルが必要である。充填済み容器の滅菌のために広く用いられている方法は、オートクレーブ、たとえば蒸気/空気式オートクレーブおよび循環水式オートクレーブである。
【0003】
液体、ゲル状またはペースト状の医薬製品または生物学的製剤を含む、充填済みプラスチック製注射器、容器およびバイアルは、通常、オートクレーブ内に配置され、温度が約121℃に達するまで、蒸気または過熱水に晒される。この温度は、中身を滅菌するのに十分な時間にわたって維持される。
【0004】
充填済み容器が加熱される際、その中に収容されている流体または製剤は、飽和圧力、すなわち、流体または製剤の一部が蒸発する、所与の温度の最大圧力まで蒸発する。温度が上昇するに従い、容器の内圧、すなわち容器内の初期圧力と飽和圧力との和が増大する。
【0005】
このような内圧によってもたらされる変形を回避するために、通常、支持圧力が導入される。
【0006】
滅菌に続き、充填済み容器には冷却ステップが施される。冷却中、オートクレーブチャンバ内の温度は、容器内の温度がチャンバ温度より実質的に高くなるように低下する。結果として、個々の容器とオートクレーブチャンバとの圧力差が生成される。
【0007】
たとえばガラス製の容器はこうした圧力差に耐えることができるが、プラスチック製の充填済み注射器および容器は著しい圧力差に耐えることができない。
【0008】
オートクレーブにおける滅菌の前に、必要な滅菌時間、最高温度および最大圧力とともに、オートクレーブ内の充填済み容器の配置等、いくつかのパラメータを広範囲に確認しなければならない。
【0009】
通常、チャンバ内の最も温度が高い位置が特定され、この位置に配置される容器内に温度センサが配置される。
【0010】
しかしながら、チャンバ内の個々の容器は異なる温度に晒される可能性があり、冷却中、個々の容器とチャンバとの間に生成される圧力差は著しく変化する可能性がある。結果として、いくつかの容器は、他の容器より変形しやすくなる。さらに、個々の容器間の温度差により、F値、すなわち個々の容器間の微生物不活性化能力が変動することになる可能性がある。熱への露出過度に影響を受けやすい活性剤を含む製品は、注意深く監視されなければならず、個々の容器のF値を一貫して、すなわち特定の範囲内に維持することが重要である。
【0011】
これまで、滅菌方法の冷却段階は、多くの場合、適切な温度勾配、すなわち、滅菌されている液体、充填体積および容器材料によって決まる可能性がある単位時間当たりの所定温度低下を選択することによって確定される。
【0012】
しかしながら、温度および圧力は、オートクレーブ内の個々の容器間で依然として著しく変化する可能性がある。結果として、F値は異なる可能性があり、冷却中、いくつかの容器が依然として変形しやすくなる可能性がある。
【発明の概要】
【0013】
本発明の1つの目的は、冷却中の変形を防止することができると同時に、個々の充填済み容器間のF値の変動を低減する、滅菌方法を提供することである。
【0014】
この目的は、添付の特許請求の範囲による滅菌方法によって達成される。
【0015】
したがって、一態様では、本発明は、滅菌段階および冷却段階を含むオートクレーブチャンバ内の充填済み容器の滅菌方法に関する。滅菌段階は、容器の中身を滅菌するのに十分な時間にわたって、105〜140℃の範囲の温度で充填済み容器を滅菌するステップを含む。
【0016】
冷却段階は、
チャンバ内に存在するすべての容器の最高温度を有すると予測される充填済み容器の容器温度Tcont,maxを監視するステップと、
チャンバ内の所与の位置におけるチャンバ温度Tchを監視するステップと、
温度差ΔT=Tcont−Tchが冷却段階中に所定値未満に維持されるように、チャンバ温度Tchを制御するステップと
を含む。
【0017】
オートクレーブ内での充填済み容器の滅菌は、通常、加熱するステップ、滅菌するステップおよび冷却するステップを含む。
【0018】
加熱および滅菌中、蒸気/空気混合物または過熱水等の滅菌媒体を、滅菌対象の物品全体にわたって循環させることができる。蒸気/空気混合物である滅菌媒体の場合、循環を、たとえば、オートクレーブ内に取り付けられた1つまたは複数のファンによって達成することができる。
【0019】
温度が、通常、室温から105〜140℃、通常は121℃の滅菌温度まで上昇するに従い、容器の中身の一部が飽和圧力に対して蒸発する。
【0020】
容器内圧によってもたらされる容器の破裂/変形を回避するために、通常、支持圧力が加えられる。飽和蒸気圧は、容器内の温度によって決まり、所望のレベルを、たとえば蒸気テーブルを使用することによって計算することができる。
【0021】
通常は10〜20分間に発生する滅菌段階の完了後、容器は冷却段階におかれる。これを、加熱手段、たとえば滅菌媒体を冷却するためにオートクレーブ内に存在する熱交換器に冷却水を加えることによって達成することができる。
【0022】
本発明によるプロセスでは、チャンバ内に存在するすべての容器の最高温度を有するものと予測される充填済み容器の温度Tcont,maxが監視される。
【0023】
所与の滅菌方法に対してオートクレーブを用いる前にオートクレーブに対して通常実行される確認プロセス中、チャンバ内の最も温度が高い位置が特定され、この位置に配置される容器の温度を検知するように、温度検知手段が設けられる。
【0024】
同時に、チャンバ内の所与の位置におけるチャンバ温度Tchを監視することができ、温度差ΔT=Tcont,max−Tchを計算することができる。
【0025】
本発明者らは、冷却段階中にΔTが所定値未満に維持されるように温度を制御することによって、より制御された冷却を達成することができることを発見した。
【0026】
冷却段階中、温度が低下する時、チャンバ温度は充填済み容器の内部温度より高速に低下する。したがって、チャンバ温度は、常に、容器内の温度より低くなる。
【0027】
チャンバと最高温度を有すると予測される容器との温度差を所定値未満で維持するように、チャンバ内の滅菌媒体の温度を制御することによって、残りの容器の間のいかなる温度差も、特定の範囲内かつ所定の値未満に維持される。
【0028】
これには、個々の容器とチャンバとの温度差がより一貫して維持されるという利点がある。
【0029】
結果として、個々の容器とチャンバとの間に生成される圧力差をより正確に制御することができ、容器の変形を防止することができる。さらに、F値、すなわち個々の容器間の微生物不活性化能力を調和させることができ、それを特定の範囲内に維持することができる。これは、特に、熱の露出過度の影響を受けやすくかつF値の大幅な変動を許容しない敏感な製品の滅菌中に非常に有利である。
【0030】
本発明の方法により、冷却中に容器の変形を防止する安全かつ頑強な方法が可能となる。
【0031】
実施形態では、ΔTを30℃未満、たとえば10℃未満とすることができる。
【0032】
実施形態では、チャンバ温度Tchを制御するステップは、
chを第1の所定閾値温度と比較するステップと、
chが第1の閾値温度より高い場合は、温度差が第1の所定値未満に維持されるようにTchを制御するステップと、
chが第1の閾値温度より低い場合は、温度差が第1の所定値より高い第2の所定値未満に維持されるようにTchを制御するステップと
を含む。
【0033】
滅菌段階の完了後、すなわち冷却段階の開始時、加熱された容器は、冷却段階の終了時より温度および圧力の変動の影響を受けやすい。
【0034】
第1の所定閾値温度を、上述した確認プロセス中に確定することができる。滅菌される製品ならびに使用される容器および容器装填材料に応じて、この第1の閾値温度を変更することができる。
【0035】
実施形態では、第1の所定閾値温度を80〜110℃の範囲とすることができる。
【0036】
チャンバ温度が第1の閾値温度を上回る場合、すなわち冷却段階の第1の部分の間、温度差は第1の所定値未満に維持されるべきである。この第1の部分の間、容器は変形およびF値の変動により影響を受けやすいため、温度差は比較的小さく維持されるべきである。
【0037】
しかしながら、チャンバ温度が第1の閾値温度を下回る場合、すなわち冷却段階の第2の部分の間、容器は、温度変動および圧力変動の影響を受けにくく、したがって、温度差を、第1の所定値より高い第2の所定値未満に維持することができる。したがって、冷却段階の第2の部分を加速させることができる。これにより、より高速な冷却段階、したがってより高速な滅菌方法が可能になる。
【0038】
実施形態では、Tchを制御するステップは、
chを、第1の所定閾値温度より低い第2の所定閾値温度と比較するステップと、
chが第2の閾値温度より低い場合は、温度差が第2の所定値より高い第3の所定値未満に維持されるようにTchを制御するステップと
をさらに含むことができる。
【0039】
第2の所定閾値温度を、確認プロセス中に確定することも可能である。
【0040】
したがって、第2の所定閾値温度未満では、すなわち冷却段階の第3の部分の間は、最高温度を有することが予期される容器とチャンバとの間の温度差を実質的により大きくすることができる。したがって、冷却段階をさらに加速させることができ、それにより、より高速な滅菌方法を達成することができる。
【0041】
別の態様では、本発明は、充填済み容器の滅菌で使用されるオートクレーブに関する。オートクレーブは、滅菌される充填済み容器を受け入れるチャンバとともに、充填済み容器を加熱し冷却する加熱および冷却手段を備える。
【0042】
こうした加熱および冷却手段は、たとえば、滅菌方法の段階に応じて加熱流体または冷却流体のいずれかを供給する熱交換器であり得る。
【0043】
オートクレーブは、第1の温度検知手段から温度データを取得するように構成された制御ユニットをさらに備え、第1の温度検知手段は、チャンバ内のすべての充填済み容器の最高温度を有するように予期される1つの充填済み容器の容器温度Tcont,maxを検知する。
【0044】
制御ユニットは、チャンバ内の所与の位置におけるチャンバ温度Tchを検知する第2の温度検知手段から温度データを取得するようにさらに構成される。
【0045】
制御ユニットは、温度差ΔT=Tcont−Tchが滅菌方法の冷却段階中に所定値未満に維持されるように、Tchを制御するように構成される。
【0046】
本発明によるオートクレーブにより、個々の容器間のF値がより一貫して維持される、制御された冷却段階が可能になる。さらに、チャンバ内に存在する、圧力の影響を受けやすい容器の変形を、防止し回避することができる。
【0047】
実施形態では、制御ユニットを、ΔTが30℃未満、たとえば10℃未満であるようにTchを制御するように適合させることができる。
【0048】
これにより、チャンバ内の個々の容器間の内圧、したがってF値の一貫性を向上させることができる。
【0049】
実施形態では、制御ユニットを、
chを第1の所定閾値温度と比較し、
chが第1の閾値温度より高い場合は、温度差が第1の所定値未満に維持されるようにTchを制御し、
chが第1の閾値温度より低い場合は、温度差が第1の所定値より高い第2の所定値未満に維持されるようにTchを制御する
ことによって、Tchを制御するように構成することができる。
【0050】
したがって、チャンバ温度が第1の所定閾値温度を下回る時に、冷却段階を加速させることができる。
【0051】
この実施形態により、より高速な滅菌方法が可能になる。
【0052】
したがって、この第2の部分における温度差を、第1の部分の温度差より大きくすることができ、第1の部分は大きい温度差、したがって圧力差により影響を受けやすい。
【0053】
実施形態では、第1の所定閾値温度を80〜110℃の範囲とすることができる。
【0054】
滅菌方法をさらに高速化するために、制御ユニットを、
chを、第1の所定閾値温度より低い第2の所定閾値温度と比較し、
chが第2の閾値温度より低い場合は、温度差が第2の所定値より高い第3の所定値未満に維持されるようにTchを制御する
ことによって、Tchをさらに制御するように適合させることができる。
【0055】
したがって、チャンバ温度が第2の所定閾値温度を下回る場合、すなわち冷却段階の第3の部分の間、温度差を冷却段階の最初の2つの部分よりはるかに大きくすることができるため、冷却を加速させることができる。
【0056】
さらなる態様によれば、上述した目的および他の目的はまた、本発明によるオートクレーブに含まれる制御ユニットで実行されると、本発明による方法のステップを実行するように構成されたコンピュータプログラムによっても達成される。
【0057】
本発明のこれらの態様および他の態様は、以下に説明する実施形態(複数可)から明らかとなり、それらを参照して解明されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施形態による蒸気/空気式オートクレーブを示す図である。
【図2】図1のオートクレーブで実施することができる、本発明の実施形態による滅菌方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
本発明による方法を使用する滅菌を、たとえば、図1に示すように蒸気/空気式オートクレーブ(またはベンチレータオートクレーブ)内で達成することができる。
【0060】
蒸気/空気式オートクレーブは、滅菌チャンバ1とチャンバ1内で蒸気/空気を循環させるファン2とを備えている。オートクレーブには、チャンバ1に蒸気を供給するパイプ7とチャンバ1に空気を供給するパイプ8とが設けられている。チャンバ1の底部には排水路9が配置されている。オートクレーブは、頂部に安全弁6もまた設けられている。
【0061】
チャンバ1内には仕切り壁またはライナ4が取り付けられており、これらは、滅菌される物品18に対する空間5を形成する。仕切り壁は、チャンバ1の外部側壁10の各々と仕切り壁4との間に、空間12の形態のダクトが形成されるように配置されている。仕切り壁4は、オートクレーブの床に近接している開口部を残す。ダクト12の各々には、第1の熱交換器11が設けられている。第1の熱交換器は、冷却流体かまたは加熱流体であり得る流体の供給および排出用のパイプ13、14に接続されている。
【0062】
この設計により、空気/蒸気は確実に、上部から側部を下って(熱交換器を越えてかつチャンバ壁に接触して)、負荷を通って上昇しファン入口に戻るように循環パターンで送られる。この循環パターンにより、最適化された高速プロセスと合わせて、温度分散の均一性および一様性が確保される。
【0063】
ファン2を、電気モータ3によって駆動することができ、オートクレーブの上壁から距離をおいて設けられる仕切り壁上部15の後方において、チャンバ天井24に取り付けることができる。仕切り壁上部15は少なくとも1つの格子またはネットを備え、それは、空間5内の流体がファン2によって空間5からネットを通るように引き出されることを可能にする。
【0064】
ファン2は、蒸気/空気を第1の熱交換器11に向け、第1の熱交換器11は、滅菌方法の段階に応じて蒸気/空気を加熱または冷却する役割を果たす。
【0065】
実施形態では、オートクレーブは、ファン2に隣接しその周りを囲むように配置されている第2の熱交換器19を備えることができる。第2の熱交換器19は、渦巻き型の相互接続され水平に設けられた複数のパイプを備えることができる。加熱液または冷却液を、チャンバ内を循環している蒸気/空気を冷却または加熱するために、パイプ25、26を通して外部供給源からパイプ内を循環させることができる。
【0066】
オートクレーブを、例示的な実施形態に関連して説明したが、いくつかの変更および適合が可能である。
【0067】
上述したオートクレーブは、本発明による滅菌方法で使用するのに適しているが、本発明はそれに限定されないことが留意されるべきである。任意の蒸気/空気式オートクレーブ、ベンチレータオートクレーブまたは循環水式オートクレーブを使用することができる。
【0068】
滅菌される物品が、液体、ゲル状またはペースト状医薬品、注射流体、培地等、生物学的製剤または医薬製品である場合、これらは、通常、容器内に予め充填され、最終的な容器内で滅菌される。
【0069】
容器は、たとえば注射器、バイアル、カートリッジ、ブリスターパックであってもよく、通常、ポリエチレンまたはポリプロピレンもしくはそれらのコポリマー類等、プラスチックまたはポリマー材料からなる。
【0070】
滅菌が開始される前、必要な滅菌時間、最高温度および最大圧力とともに、オートクレーブ内の充填済み容器の配置等のパラメータは、注意深く確認される。チャンバ内の最も温度が高い位置が特定され、この位置に配置された容器内に温度センサが配置される。
【0071】
しかしながら、チャンバ内の個々の容器は異なる内部温度に晒される可能性があり、これにより圧力差がもたらされる可能性があり、すなわち、チャンバと個々の容器との間の圧力差が著しく変化する。
【0072】
結果として、いくつかの容器は他の容器より変形しやすく、F値は容器によって大幅に変化する可能性がある。
【0073】
本発明による方法により、冷却段階中の変形を防止することができ、個々の容器間のF値の一貫性が提供される。
【0074】
ここで、図2を参照して、本発明の例示的な実施形態による滅菌方法について説明する。
【0075】
図2は、図1に示すベンチレータオートクレーブで実行される例示的な滅菌方法100を概略的に示す図である。図2の滅菌方法100は、図2において概略的に示すように、加熱段階101、滅菌段階102および冷却段階103を含む。
【0076】
加熱段階101中、チャンバ1内の滅菌媒体の温度は、周囲温度から所望の滅菌温度Tsterまで上昇する。図1のベンチレータオートクレーブでは、加熱を、通常、チャンバ1内に蒸気を放出することによって行うことができ、したがって、ベンチレータオートクレーブ内の滅菌媒体は蒸気/空気混合物である。チャンバ1内の蒸気/空気混合物の温度Tchが、チャンバ1内の容器18をより迅速に所望の滅菌温度Tsterにするように、場合によっては幾分かの「行過ぎ量」で、所望の滅菌温度Tsterに達すると、チャンバ1内の温度は、滅菌段階102中一定で維持される。
【0077】
それぞれ最高温度および最低温度を有すると予測される容器の温度を表すTcont,maxおよびTcont,minと付された曲線によって概略的に示すように、容器18の加熱に遅延があり、加熱段階101の間の所与の時点において、容器間に温度の開きがある。この温度の開きは、図2においてTcont,maxおよびTcont,minと付された曲線の間の網掛け領域によって示される。
【0078】
滅菌段階102中、充填済み容器18は、容器の中身を滅菌するのに十分な時間にわたって、105〜140℃の範囲の滅菌温度Tsterで維持される。
【0079】
通常、滅菌段階は、たとえば10〜20分間、121℃で行われる。したがって、容器内に存在するあり得る病原体が死滅する。
【0080】
容器内圧によってもたらされる変形/破裂を回避するために、通常、支持圧力が用いられる。
【0081】
滅菌方法100の次の段階は、冷却段階103である。冷却段階103では、最高温度を有すると予測される充填済み容器18の温度Tcont,maxが測定され、チャンバ1内の滅菌媒体の温度Tchが、第1の温度差ΔTを維持するように制御される。第1の温度差ΔTは、冷却段階中に「最も温度が高い」容器18の変形を回避することができるように十分小さいように選択される。第1の温度差ΔTを、容器材料と、容器18の壁厚さ、容器材料の材料特性、特に材料の軟化温度等、さまざまな他のパラメータとに応じて選択することができる。容器変形の回避を可能にすることに加えて、本発明のさまざまな実施形態による方法は、チャンバ内の最も温度が高い容器と最も温度の低い容器との相対的に小さい温度の開き(すなわち、ΔT未満)に維持するのを可能にする。これにより、重要なパラメータFを制御し続けることができ、滅菌の品質を向上させ確実にすることができる。
【0082】
通常、冷却は、熱交換器11に冷水を供給し、それによりチャンバ1内の蒸気/空気混合物が冷却されることによって達成され、その冷却の間、チャンバ1内の滅菌媒体の温度Tchを、閾値温度Tthと比較することができる。閾値温度を、容器材料の材料特性に応じて有利に選択することができ、それにより、閾値温度Tth未満で容器18の内側と外側とのより大きい圧力差が許容可能となる。
【0083】
チャンバ1内の滅菌媒体の温度Tchが閾値温度Tth未満に低下すると、滅菌媒体の温度Tch(本明細書では、チャンバ1内の温度とも呼ぶ)は、チャンバ1内の温度Tchと「最も温度が高い」容器18の温度Tcont,maxとの第2の温度差△Tを維持するように制御される。これにより、滅菌品質を危うくすることなく、または容器18の変形の危険を冒すことなく、滅菌方法100の合計時間が短縮される。
【0084】
上述したように、チャンバ内に存在するすべての容器の最高温度を有することが予測される充填済み容器の温度Tcont,maxが監視される。確認プロセス中にチャンバ内の最も温度が高い位置が特定されるため、この位置に位置が特定された容器に温度検知手段が設けられる。
【0085】
同時に、チャンバ内の温度Tchを監視することができ、これは通常、オートクレーブチャンバ内の所与の位置に設けられた温度検知手段によって達成される。
【0086】
再び図1を参照すると、オートクレーブは、第1の温度センサ(図示せず)から温度データを取得するように構成された制御ユニット27をさらに備え、第2の温度センサは、チャンバ1内のすべての充填済み容器の最高温度を有すると予測される充填済み容器の容器温度Tcont,maxを検知する。
【0087】
制御ユニット27は、チャンバ温度Tchを検知する第2の温度センサ(図示せず)から温度データを取得するようにさらに構成される。
【0088】
図2に関連して上述した滅菌方法100の間、制御ユニット27は、ファンモータ3、熱交換器1への冷却水の供給、蒸気および/空気のそれぞれの入口7、8からの供給等、ベンチレータオートクレーブのさまざまな部分を制御することによって、チャンバ温度を制御する。
【0089】
本発明を、図面および上述した説明において詳細に例示し説明したが、こうした例示および説明は、限定するものではなく例示するものとみなされるべきであり、本発明は開示した実施形態に限定されない。
【0090】
開示した実施形態に対する他の変形を、当業者は、図面、明細書および添付の特許請求の範囲を検討することにより、請求項に記載の発明を実施する際に理解しかつ達成することができる。たとえば、本発明は、特定のオートクレーブの使用に限定されず、たとえば蒸気/空気式オートクレーブまたは循環水式オートクレーブで使用することができる。本発明は、特定のタイプの容器または製剤に限定されず、圧力の影響を受けやすい容器および敏感な生物製剤または医薬製剤が、本発明の方法によって有利に滅菌される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オートクレーブチャンバ(1)内の充填済み容器(18)の滅菌方法(100)であって、滅菌段階(102)および冷却段階(103)を含み、前記滅菌段階(102)が、前記容器の中身を滅菌するのに十分な時間にわたって、105〜140℃の範囲の滅菌温度Tsterで前記充填済み容器(18)を滅菌することを含み、前記冷却段階(103)が、
− 前記チャンバ(1)内に存在するすべての容器の最高温度を有すると予測される前記充填済み容器のうちの1つの容器の温度Tcont,maxを監視するステップと、
− 前記チャンバ(1)内の所与の位置におけるチャンバ温度Tchを監視するステップと、
− 温度差ΔT=Tcont−Tchが前記冷却段階(103)中に所定値未満に維持されるように、前記チャンバ温度Tchを制御するステップと
を含む方法。
【請求項2】
ΔTが30℃未満である、請求項1に記載の方法(100)。
【請求項3】
ΔTが10℃未満である、請求項2に記載の方法(100)。
【請求項4】
前記チャンバ温度Tchを制御するステップが、
chを第1の所定閾値温度と比較するステップと、
chが前記第1の閾値温度より高い場合は、前記温度差ΔTが第1の所定値未満に維持されるようにTchを制御するステップと、
chが前記第1の閾値温度より低い場合は、前記温度差ΔTが前記第1の所定値より高い第2の所定値未満に維持されるようにTchを制御するステップと
を含む、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項5】
前記第1の所定閾値温度が80〜110℃の範囲である、請求項4に記載の方法(100)。
【請求項6】
前記チャンバ温度Tchを制御するステップが、
chを、前記第1の所定閾値温度より低い第2の所定閾値温度と比較するステップと、
chが前記第2の閾値温度より低い場合は、前記温度差ΔTが前記第2の所定値より高い第3の所定値未満に維持されるようにTchを制御するステップと
をさらに含む、請求項4または請求項5に記載の方法(100)。
【請求項7】
充填済み容器の滅菌方法で使用されるオートクレーブであって、滅菌される充填済み容器(18)を受け入れるチャンバ(1)と、前記充填済み容器(18)を加熱および冷却する加熱および冷却手段(11)とを具備し、前記チャンバ(1)内のすべての充填済み容器の最高温度を有すると予測された前記充填済み容器のうちの1つの容器温度Tcont,maxを検知する第1の温度センサから温度データを取得するように構成された制御ユニット(27)と、前記チャンバ(1)内の所与の位置におけるチャンバ温度Tchを検知する第2の温度センサとをさらに具備し、前記制御ユニットが、温度差ΔT=Tcont,max−Tchが、前記滅菌方法(100)の冷却段階(103)中に所定値未満に維持されるようにTchを制御するように構成されている、オートクレーブ。
【請求項8】
前記制御ユニット(27)が、ΔTが30℃未満であるようにTchを制御するように構成されている、請求項7に記載のオートクレーブ。
【請求項9】
前記制御ユニット(27)が、ΔTが10℃未満であるようにTchを制御するように構成されている、請求項8に記載のオートクレーブ。
【請求項10】
前記制御ユニット(27)が、
chを第1の所定閾値温度と比較し、
chが前記第1の閾値温度より高い場合は、前記温度差ΔTが第1の所定値未満に維持されるようにTchを制御し、
chが前記第1の閾値温度より低い場合は、前記温度差ΔTが前記第1の所定値より高い第2の所定値未満に維持されるようにTchを制御する
ように構成されている、請求項7ないし9のいずれか一項に記載のオートクレーブ。
【請求項11】
前記第1の所定閾値温度が80〜110℃の範囲である、請求項10に記載のオートクレーブ。
【請求項12】
前記制御ユニット(27)が、さらに、
chを、前記第1の所定閾値温度より低い第2の所定閾値温度と比較し、
chが前記第2の閾値温度より低い場合は、前記温度差が前記第2の所定値より高い第3の所定値未満に維持されるようにTchを制御する
ように構成されている、請求項10または請求項11に記載のオートクレーブ。
【請求項13】
請求項7ないし12のいずれか一項に記載のオートクレーブに含まれる前記制御ユニット(27)で実行されると、請求項1ないし6のいずれか一項に記載の方法(100)のステップを実行するように構成されているコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−526023(P2012−526023A)
【公表日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−509757(P2012−509757)
【出願日】平成21年5月8日(2009.5.8)
【国際出願番号】PCT/SE2009/050507
【国際公開番号】WO2010/128911
【国際公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(509050373)ゲティンゲ ステラリゼイション アクチボラゲット (4)
【Fターム(参考)】