説明

制御可能な治療システム

本発明は、ラミネートとして設計され、そして少なくとも一つの接着性ラミネート層を含む治療システム、及びそのような治療システムを有する治療デバイスに関する。この目的のために、少なくとも一つのラミネート層又は一つの中間層、及び/又は二つのラミネート層の間に配置された中間層は超常磁性ナノ粒子を含む。該治療システムを有する治療デバイスは、治療システムに取り外し可能なように接続された少なくとも一つの電気的に作動可能なシステムを含む。電気的に制御可能なシステムは周波数依存性の電気抵抗を有する。治療デバイスの作動中に、電気的に制御可能なシステムは、向き及び大きさが経時的に変化することができ、そして超常磁性ナノ粒子を通る電場又は磁場を発生する。本発明を用いて、接触表面に無関係な治療システム、及び制御可能な治療システムを有する治療デバイスが開発された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラミネート設計を有し、そして少なくとも一つの接着性ラミネート層を含む治療システム、更にそのような治療システムを有する治療デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
積層された治療システムは、使用時に患者の皮膚上に張り付けられる、例えば、パッチを含む。これらのパッチは薬学的な活性成分を含むことができ、又は活性成分なしで具体化することができる。活性成分含有治療システムの場合、使用時に、活性成分は患者の皮膚内に又はそれを通して浸透する。その中に活性成分が皮膚を浸透するパッチは、例えば、経皮治療システムと称される。
【0003】
治療システムが使用される際、治療システムの温度及び/又は受け入れる体の温度は治療の効果に影響を及ぼす。例として、システムにおける温度上昇は、製剤中の活性成分の拡散係数の増大、従って活性成分の改善された送達に繋がる。更に、システムの温度が上がると、製剤中の活性成分の溶解度を改善することができる。このように、未溶解活性成分である成分を有する処方の場合、温度上昇によって活性成分の更なる部分が溶解され得る。その処方における活性成分の濃度はそれによって上昇する。これはシステムの熱力学的な力、従って活性成分の皮膚への送達への努力を増大させる。
【0004】
皮膚表面の温度上昇によって同様に皮膚内への及び皮膚を通した活性成分の吸収を促進することができる。両方の手段によって医薬の増大された効果をもたらすことができる。
【0005】
特許文献1には、その温度が変えることができる、治療システムを有する治療デバイスが開示されている。治療システム又は皮膚への熱伝達が接触熱及び/又は放射熱を用いてもたらされる。接触による熱伝達の場合、全領域に亘る熱源及び治療システムの間の密な、かつ完全な接触が必要となる。接触表面の不均一又は中断は熱伝達における破壊に繋がりかねない。
【0006】
例えば、赤外線放射を用いた、熱放射による熱伝達の場合、伝達された熱の量は、放射源及び治療システムの間の距離に依存する。更に、放射源及びシステム表面の間の角度が熱伝達の質に影響を及ぼす。反射効果、不均一に起因する距離の変動、折り畳み、及び体の曲がった形状は、不均一な従って制御性の悪い熱供給に繋がる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO02/100386A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って本発明は、接触面積に無関係の、そして温度変化によって制御することができる治療システム、及びそのような制御可能な治療システムを有する治療デバイスを開発する課題に基づくものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は、主要請求の範囲の特徴によって解決される。この目的のために、治療システムの少なくとも一つのラミネート層及び/又は二つのラミネート層の間に配置された中間層は超常磁性ナノ粒子を含有する。この治療システムを有する治療デバイスは、時間的に変わる状態で電気的に作動することができて、そして治療システムに取り外し可能なように接続される少なくとも一つのシステムを含む。電気的に作動可能なシステムは周波数依存性の電気抵抗を有する。治療デバイスの操作中に、電気的に作動可能なシステムは、向き及び大きさが経時的に変化し、そして超常磁性ナノ粒子を通る電場又は磁場を発生する。
【0010】
本発明の更なる詳細は、従属請求項及び概略的に説明される実施態様の以下の記述から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】操作中の治療デバイスを示す図である。
【図2】図1を通る部分縦断面を示す図である。
【図3】図1からの治療デバイスの詳細を示す図である。
【図4】統合された誘導コイル及び取り外し可能な誘導システムを備えた治療システムを備えた治療デバイスを通る部分縦断面を示す図である。
【図5】円筒状コイルを有する治療デバイスを示す図である。
【図6】誘導システムを示す図である。
【図7】容量システム有する治療デバイスを示す図である。
【図8】容量システムの平面図を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1及び2は、二等角投影で、例えば患者の腕(1)上で使用中の治療デバイス(10)の縦断面を示す。この典型的実施態様では、治療デバイス(10)は治療システム(20)及び時変様式で電気的に作動することができるシステム(50)を含む。電気的に作動可能なシステム(50)は、例えば誘導システム(60)である。後者は、圧力ばめ及び/又はインターロックの方法で治療システム(20)に取り外し可能なように接続されている。
【0013】
治療システム(20)は、例えば、複数の互いに合同であるラミネート層(21、22)でできたラミネート設計を有する。典型的実施態様において、それは、例えば、患者の皮膚(2)に面する接着性ラミネート層(21)、及び活性成分含有上方ラミネート層(22)(これは、前者のラミネート層(21)に対して合同である)を含む。患者の皮膚(2)から離れて面する側で、治療システム(20)は例えば治療システム(20)を保護するカバーフィルム(26)によって覆われる。
【0014】
治療システム(20)は、場合により単一のラミネート層のみから構成され得る。その場合該層は、接着性の、感圧自己接着性の層、及び活性成分含有層の両者である。
【0015】
接着性の、感圧自己接着性のラミネート層(21)は、例えば親油性の半固体接着剤である。それは、例えば感圧性である。これは、皮膚(2)に対するラミネート層(21)の接着効果が外部圧力の影響を受けると増大することを意味する。
【0016】
この経皮治療システム(20)の活性成分含有ラミネート層(22)では、活性成分(23)が、例えばゲル様の稠度を有する化合物塊(25)内に組み込まれる。
【0017】
医薬活性成分製剤(23)も接着性ラミネート層(21)内に埋め込むことができる。例えば、一方が他方の上に配置された複数の層(22)を備えた経皮治療システム(20)も実施可能である。場合により、治療システム(20)は活性成分含有層(22)なしで具現化することができる。例として、その場合それは温熱療法による痛みを低減するための活性成分なしのパッチとして機能する。
【0018】
この典型的実施態様において、経皮治療システム(20)は70ミリメーターのエッジ長さを持つ四角い表面領域を有する。しかしながら、表面領域は矩形、円形等であってもよい。ここで、システム(20)は、例えば50から300ミクロンの間の厚みを有する。
【0019】
例として、超常磁性ナノ粒子(40)が活性成分含有層(22)内に組み込まれる。該ナノ粒子は、例えば磁鉄鉱(Fe34)又は磁赤鉄鉱(γ−Fe23)を素材とするフェリ磁性粒子である。しかしながら、粒子はフェライトのオキサイドセラミックグループからの材料から成っていてもよい。個々の結晶の粒度は5ナノメーターから30ナノメーターの間にある。場合により、超常磁性ナノ粒子(40)は棒又はワイヤ状に設計することもできる。単一層の経皮治療システム(20)の場合、超常磁性ナノ粒子(40)もこの層内に組み込まれる。
【0020】
最初は、これらの結晶は磁気中性である。しかしながら、それらは外部磁場中で磁気的に配向される。それらのサイズが小さいため、結晶は通常、同じ磁気配向の一つの所謂ワイス(Weiss)分域のみを有する。この分域の配向は外部磁場の磁場線に従う。この場合ヒステリシスはないので、従って残留磁束密度もない。外部磁場のスイッチが切れると、結晶はもう一度磁気中性になる。
【0021】
各ラミネート層(21、22)中における超常磁性ナノ粒子(40)の濃度は0.5質量パーセントから25質量パーセントの間にあってよい。例として、それは1から15質量パーセントの間にある。典型的実施態様において、超常磁性ナノ粒子(40)の濃度は上方ラミネート層(22)の2から10質量パーセントの間にある。ここで、超常磁性ナノ粒子(40)の濃度は、治療システム(20)全体くまなく一様であってよく、又は個々のラミネート層(21、22)は同じでない濃度を有する。
【0022】
例として、カバーフィルム(26)は機械的に耐引裂性(tearproof)であり、そして活性成分、芳香及び水蒸気について不透過性である。従って、経皮治療システム(20)は、長期使用中でさえ、損傷及び望まれない活性成分の損失に対して保護される。
【0023】
誘導システム(60)は、治療システム(20)のカバーフィルム(26)の上に置かれ、そして図1のイラストにおいては、二つの固定バンド(62)によって患者の腕(1)の上に固定されている。後者は、取り外し可能なファスナー(76)によって各々閉じられている。治療システム(20)に対する誘導システム(60)の位置は、例えば互いに対向して筋違いに配置された二つの固定クランプ(61)によって固定されている(図3を参照)。
【0024】
図示した典型的実施態様において、誘導システム(60)は、例えばフィルム状のコイル形成材(63)、及びコイル形成材(63)中に埋め込まれた誘導コイル(64)を含む。例として、誘導コイル(64)は一巻線の導体ループとして具現化される。誘導コイル(64)の端面は、例えば患者の皮膚(2)から一定の距離にある。誘導コイル(64)は、一つより多くの巻線数及び/又はコイルコアを有することができる。
【0025】
二つの電線(65、66)は、直列抵抗(101)を介して誘導システム(60)を交流電源(100)に接続する。しかしながら、下流インバーターを備える直流電源を、電源として使用することもできる。該インバーターは、例えば、誘導システム(60)内に集積する(integrated into)ことができる。
【0026】
治療システム(20)を使用するために、後者は、例えば保護フィルムを接着性ラミネート層(21)から取り除いた後、患者の腕(1)上に貼付される。引き続いて活性成分含有層(22)からの活性成分(23)が、活性成分分子のタイプに依存して、例えば接着層(21)を通して、患者の皮膚(2)中に、そして後者の皮膚も通過する。最初は、超常磁性ナノ粒子(40)はこの手順に影響を及ぼさない。
【0027】
皮膚(2)内への活性成分の送達、又は後者を通した活性成分輸送の増加を意図する場合、誘導システム(60)は、最初に治療システム(20)上に、例えば固定クランプ(61)によって固定され、そしてそれは固定バンド(62)によって患者の腕(1)に取り外し可能なように取り付けられる。ここで、例えば一定周波数で一定値の実効交流を供給する電源(100)のスイッチが入れられる。電圧の実効値は、時変電圧値の平均値の二乗である。この結果生じる電流、電圧及び周波数は、電気的に導電性である部材に不注意で接触した場合、人体にとって危険となる又は副作用を引き起こすことになる閾値よりも下にある。
【0028】
誘導システム(60)が操作中であるとき、コイル(64)を通って流れる電流によって、電流が流れる導電体の周りに磁場の増大をもたらす。磁場中の全ての双極子は磁場線の方向に配向しようとする。磁界の強さは、電流と共に、そしてコイル長さに対する巻線数の比が増すと共に大きくなる。交流回路において、誘導コイル(64)におけるインピーダンス及び磁束の時間微分、及び磁束密度は周波数が増えるとともに増大する。
【0029】
交流が印加されると、磁場は時間とともに変化する。磁場は大きさ及び方向の両方に関して変化する。それは超常磁性ナノ粒子(40)を通る。これによって、化合物塊(25)中に固定的に組み込まれる超常磁性ナノ粒子(40)の分極方向が変わる。分極における変化の頻度は、電源(100)によって発せられた交流の周波数に対応する。超常磁性ナノ粒子(40)によってそのプロセス中で吸収されるエネルギーの幾らかは熱としてそのごく近辺に放出される。
【0030】
典型的実施態様において、活性成分含有ラミネート層(22)中に放出された熱エネルギーによって、該層の加熱がもたらされる。例として、これによって、システム内の及び皮膚に向かう、溶解した活性成分(23)の拡散の増大がもたらされる。最初は未溶解形態で存在する活性成分も、例えば溶解することができる。これによって治療システム(20)の拡散速度が増大し、そして、例えば活性成分(23)をより有効に使用することができる。
【0031】
熱の発生、従って拡散速度の上昇は、供給されるエネルギー及び誘導システム(60)の磁束密度に依存する。供給エネルギーを変えるためには、例えば交流の周波数、実効電圧、実効電流、又は電源(100)スイッチオン期間の変更があり得る。例として、超常磁性ナノ粒子(40)によって発せられる単位時間当たりのエネルギー量は、誘導システム(60)における電流が増すにつれ、そして交流の周波数が増すにつれ増大する。電源(100)に結合された回路における実効電流強度を増すためには、例えば一定実効電圧で、直列抵抗体及び/又はリアクタンスの減少があり得る。
【0032】
例として、誘導システムの磁束密度はコイルコアによって増大させることができる。磁束密度ベクトルは、常に励起電流の方向及び大きさに依存するから、磁束密度は印加した交流と共に変化する。従って、患者の皮膚(2)内への活性成分の送達及び/又は後者の皮膚(2)を通る活性成分の輸送は、電源(100)によって及び誘導システム(60)によって制御することができる。
【0033】
電源がスイッチオフされると直ちに、熱発生が止まる。活性成分(23)の拡散速度は、それがもう一度その初期値に達するまで減少する。固定バンド(62)を取り外してしまえば、誘導システム(60)は、治療システム(20)からそして患者の腕(1)から除去することができる。
【0034】
超常磁性ナノ粒子(40)を含有する皮膚接触ラミネート層(21)を備えた治療システム(20)の場合、該層を加熱することにより、標的化した様式で接触領域の近くにおける皮膚(2)を加熱することが可能になる。これによって、皮膚(2)中への及び後者を通しての活性成分の輸送が促進される。皮膚接触層を標的化した加熱はまた、例えば活性成分不含熱パッチとして使用される場合、治療的に使用することもできる。例として、これによってリウマチ性疾患、例えば坐骨神経痛、腰痛、頸部硬直、肩/腕の痛み等を治療することができる。
【0035】
誘導システム(60)をスイッチオフにし、そして場合により取り外してしまえば、治療システム(20)は腕(1)に残すことができ、そして除去する必要はない。誘導システム(60)を再び取り付けたら、熱供給及び/又は活性成分供給を再び増大させることができる。従って、必要な場合、温熱療法、又は活性成分含有システムの場合においては、用量の時限増加を、例えば一日当たり数回適用することができる。ここで、温度は個別に制御することができる。
【0036】
例として、複数の治療システム(20)を体上に配置する場合、それらを同じ誘導システム(60)に連続して接続することができる。それぞれ異なって設計された誘導システム(60)を一つの治療システム(20)に接続することも実行可能である。これによって、要求に応じて、例えば治療システム(20)の異なる領域を応答させる可能性が与えられる。治療デバイス(10)を異なるエネルギーレベルで操作することも可能である。
【0037】
図4は、二つの誘導システム(30、60)を備えた治療デバイス(10)を示す。治療システム(20)から取り外すことができる第一の誘導システム(60)は、キャップ様の形で治療システム(20)上に置かれている。この典型的実施態様において、この誘導システム(60)は三つのコイル(73〜75)を含む。三つのうず状に配置された巻線を有する第一のコイル(73)は、例えば治療システム(20)の上に配置される。この典型的実施態様において、他の二つのコイル(74、75)は、例えば一方が他方の上に、治療システム(20)の端面の周りに配置される。例として、この場合、上方誘導コイル(74)は上方ラミネート層(22)の周りに配置され、そして下方誘導コイル(75)は接着層(21)の周りに配置される。例として、これらのコイル(73〜75)は、例えば、個々のラミネート層(21、22)を標的化するように使用して個々のラミネート層(21、22)における活性成分の拡散を増大させることができる。
【0038】
第二の誘導システム(30)は治療システム(20)内に統合される。この典型的実施態様において、この誘導システム(30)は中央に配置されたコイル(31)を含む。例として、図4のイラストにおいて、コイルの断面領域は皮膚(2)に対して平行に配置される。コイル(31)は、例えばバネ荷重接触接続(ここでは図示されていない)によって、第一の誘導システム(60)に電気的に接続される。例として、それはスイッチによってスイッチオン又はオフすることができる。回路内に接続した場合、それはそれ自体で又は一つ又はそれ以上の他のコイル(73〜75)と並列に動作することができる。
【0039】
第一の誘導システム(60)がスイッチオンにされた場合で、第二の誘導システム(30)のコイル(31)がスイッチオフにされるとき、又は電気的に分離されるとき、第一の誘導システム(60)による磁場の増大は、第二の誘導システム(30)に影響を及ぼす。第一の誘導システム(60)の時変磁場は、治療システム(20)内に統合されたコイル(31)を通る。交流がこのコイル(31)で誘導される。その結果、コイルは熱を発する。コイル(31)の周囲が加熱される。該コイルは超常磁性ナノ粒子(40)と共に、ここで活性成分の拡散における変化に及び/又は治療目的のための温度上昇に寄与する。
【0040】
図4において図示された典型的実施態様において、二つの活性成分(23、24)は異なる濃度で組み込まれる。例えば、活性成分含有ラミネート層(22)及び接着性ラミネート層(21)を別個に製造後濃度は、個々の層(21、22)における溶解度に従って設定されている。超常磁性ナノ粒子(40)はラミネート層(21、22)の双方で異なる濃度で埋め込まれる。場合により、超常磁性ナノ粒子(40)は二つの層(21、22)の一方のみに組み込むことができる。
【0041】
二つの誘導システム(60、30)は、例えば部分的に未溶解の活性成分(23,24)が存在する場合、治療システム(20)による活性成分送達の標的制御のために使用することができる。これによって、互いに対する活性成分(23、24)の濃度比を変えることができ、又は活性成分(23、24)の一方の拡散速度を増加させることができる。
【0042】
例として、活性成分(23;24)の一方又は活性成分(23、24)の両方が主として未溶解状態で存在する場合、一つ又は複数の未溶解部分は、濃度の同等化のため又は受動拡散のためには利用できない。超常磁性ナノ粒子(40)は、二つのラミネート層(21;22)の一方に、又は両方のラミネート層(21;22)に、例えば異なる濃度で配置される。
【0043】
経皮治療システム(20)が皮膚上に貼付された後、皮膚に送達されるのは、例えば溶解した第一の活性成分だけである。
【0044】
電気的に作動可能なシステム(50)がスイッチオンされた後、例えば体温をはるかに超える温度までの温度上昇は、最初は未溶解形態で存在する第二の活性成分の溶解に繋がる。ここでこの活性成分は同様に拡散のために利用できる。
【0045】
二つのラミネート層(21、22)の間の濃度同等化も、例えば中間層として具現化され、そして例えば半透過性である制御膜を用いて影響を及ぼすことができる。超常磁性ナノ粒子(40)は、ラミネート層(21、22)に加えて、又はその代替として、この制御膜内に組み込むことができる。
【0046】
図5は治療デバイス(10)を図示しており、その誘導システム(60)は円筒状コイル(72)を含む。例として、この長手方向のコイル(72)は200巻線を含む。個々の超常磁性ナノ粒子(40)の磁気的再配向は、磁束密度における迅速な変化故にほとんど瞬間的である。その結果、超常磁性ナノ粒子(40)は大量のエネルギーを放出することができる。例として、誘導システム(60)は、治療システム(20)の差し込みガイド(27)中に着座し、そして停止部(図示されていない)に対して隣接する(butts against)横方向のガイドレール(77)を含む。円筒状コイル(72)はまたコイルコアを有することもできる。
【0047】
図6は、例えば三つの誘導コイル(67〜69)及びスイッチ(71)を備えた誘導システム(60)を図示している。例として、コイル(67〜69)は互いの内に箱状に配置され、そして例えば異なる断面積を有する。例として、外側コイル(67)の断面積は治療システム(20)の表面のサイズに対応する。この誘導コイル(67)が動作中であるとき、例えば治療システム(20)中に配置された全ての超常磁性ナノ粒子(40)は応答するように作られる。
【0048】
中央コイル(68)は、この外側の外側コイル(67)内に置かれる。例として、該中央コイルの断面積は外側コイルの断面積の半分である。この中央コイル(68)を使用して治療システム(20)の中央領域にエネルギー送達を集中することができる。
【0049】
図6の平面図においては、内側コイル(69)は、例えば中央コイル(68)の右手側領域中に置かれている。該内部コイルの断面積は外側コイル(67)の断面積の、例えば15パーセントである。この内側コイル(69)が電気的に作動される場合、励起されるのは、主として治療システム(20)の右手側領域中の超常磁性ナノ粒子(40)である。この場合この領域中に熱の発生が起こり、この熱の発生によって活性成分の拡散が加速され、又は温熱療法が可能となる。
【0050】
個々に描かれたコイル(67〜69)は、各々一回を超える巻線数を有することができる。一回以上のコイルコアの使用も可能である。
【0051】
例として、超常磁性ナノ粒子(40)の濃度が治療システム(20)の右手側領域において治療システム(20)の他の領域においてよりも高い場合、図示された内側コイル(69)は、例えば一時的に集中した熱供給を可能にする。治療システム(20)はこの目的のために、該右手側領域中に別のラミネート層を含むことができる。
【0052】
また、二つのコイル(67、68;67、69;68、69)又は全てのコイル(67〜69)を、図6に図示された誘導システム(60)において同時に作動させることも実行可能である。コイル(67〜69)の磁場は相互作用する。一定の領域において、誘導システム(60)全体の磁場は増幅され;他の領域においてそれは減衰される。各コイル(67;68;69)を、同時に、例えば異なる周波数を用いて個々に作動させることも実行可能である。励起周波数において生ずるうなり及び共鳴に起因して、治療システム(20)の個々の領域の温度が治療の期間中に振れる。場合により、これによって、例えば循環する又は不連続な温度極大(temperature maximum)を発生させることができる。
【0053】
図7は治療システム(20)を有する治療デバイス(10)、及び容量システム(80)として設計された電気的に作動可能なシステム(50)を図示している。
【0054】
例として、治療システム(20)は、図1〜6に関連して述べられた通りに具現化される。活性成分(23)及び超常磁性ナノ粒子(40)は、図7の断面に亘って一定でない異なる濃度を有する上方ラミネート層(22)及び接着性ラミネート層(21)の両方中に組み込まれる。
【0055】
容量システム(80)は、例えばその間に治療システム(20)が配置される、二つの互いに対向するコンデンサ板(capacitor plate)(81、82)を含む。例として、容量システム(80)は、取り外し可能な圧力ばめ及び/又はインターロック結合によって、例えば吸引カップを用いて治療システム(20)に接続される。
【0056】
図8はそのような容量システム(80)の平面図を示す。コンデンサ板(81、82)はコンデンサキャリア(capacitor carrier)(83)中に埋め込まれる。それらは接続
線(84)によって、交流電源(100)に接続することができる。
【0057】
交流回路内に組み込まれた容量システム(80)の電気インピーダンスは、交流電源(100)周波数が増すにつれて落ちる。コンデンサ板(81、82)の電荷の時間微分、及び電気的変位場の時間微分は周波数が増すとともに増大する。
【0058】
時変電場は、容量システム(80)が交流電源(100)に接続された後、コンデンサ板(81、82)の間で発生する。超常磁性ナノ粒子(40)を組み込んだ治療システム(20)は誘電体を形成する。交流電場は超常磁性ナノ粒子(40)の反転する極性をもたらす。超常磁性ナノ粒子(40)は、それらが電場から熱として吸収していたエネルギーの幾分かを放出する。例として、システム中の温度上昇は、製剤中の活性成分の拡散係数の増大に繋がり、それ故、それは活性成分の改善された送達に繋がる。
【0059】
超常磁性ナノ粒子(40)によって発せられる熱を更に増加させるために、例えば、容量システム(80)に印加される電圧を上げることが可能である。例えば容量システム(80)における、及び/又は治療システム(20)における熱放出を変化させるために、追加の誘電体を配置すること又は交流電源(100)の周波数を変えることも可能である。
【0060】
交流電源(100)をスイッチオフすると、電場がスイッチオフされる。超常磁性ナノ粒子(40)はそれらの最もエネルギー的に好ましい状態を呈する。それらはもはや熱を発しない。治療システム(20)中の活性成分(23、24)の拡散速度はその初期値まで低下する。
【0061】
治療デバイス(10)の電気的に作動可能なデバイス(50)が容量システム(80)及び誘導システム(60)の両者で構成することも実行可能である。例として、例えば治療システムの異なる領域が応答させるようにこれらを交互にスイッチオンすることができる。
【0062】
その種々の実施態様の組合せも実行可能である。
【符号の説明】
【0063】
1 腕
2 皮膚

10 治療デバイス

20 治療システム、経皮治療システム

21 接着性ラミネート層、ラミネート層
22 上方ラミネート層、ラミネート層
23 活性成分、第一の活性成分、医薬活性成分製剤
24 第二の活性成分
25 化合物塊
26 カバーフィルム
27 差し込みガイド

30 第二の誘導システム
31 コイル、内部

40 超常磁性ナノ粒子

50 電気的に作動可能なシステム

60 誘導システム
61 固定クランプ、クロージャー部分
62 固定バンド、クロージャー部分
63 コイル形成材
64 誘導コイル、コイル
65、66 線
67 外側誘導コイル
68 中央誘導コイル
69 内側誘導コイル

71 スイッチ
72 円筒状コイル、長手方向コイル
73 誘導コイル
74 誘導コイル、上部
75 誘導コイル、底部
76 ファスナー
77 ガイドレール

80 容量システム
81 コンデンサ板
82 コンデンサ板
83 コンデンサキャリア
84 接続線

100 交流電源
101 直列抵抗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラミネート設計を有し、そして少なくとも一つの接着性ラミネート層(21)を含む治療システム(20)であって、
少なくとも一つのラミネート層(21;22)及び/又は二つのラミネート層(21;22)の間に配置された中間層が、超常磁性ナノ粒子(40)を含むことを特徴とする治療システム(20)。
【請求項2】
超常磁性ナノ粒子(40)が5から30ナノメーターの間の最大広がりを有することを特徴とする、請求項1に記載の治療システム(20)。
【請求項3】
ラミネート層(21;22)に組み込まれた全ての超常磁性ナノ粒子(40)の質量が、このラミネート層(21;22)の質量の0.5パーセントから25パーセントの間であることを特徴とする、請求項1に記載の治療システム(20)。
【請求項4】
活性成分含有層(22)を含むことを特徴とする、請求項1に記載の治療システム(20)。
【請求項5】
超常磁性ナノ粒子(40)が活性成分含有層(22)に埋め込まれることを特徴とする、請求項4に記載の治療システム(20)。
【請求項6】
統合された誘導システム(30)を含むことを特徴とする、請求項1に記載の治療システム(20)。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか一項に記載の治療システム(20)を有し、そして治療システム(20)に取り外し可能に接続された少なくとも一つの電気的に作動可能なシステム(50)を有する治療デバイス(10)であって、
−ここで、電気的に作動可能なシステム(50)が周波数依存性の電気インピーダンスを有し、そして
−ここで、治療装置(10)の操作中に、電気的に作動可能なシステム(50)は、向き及び大きさが経時的に変化し、そして超常磁性ナノ粒子(40)を通る電場又は磁場を発生する、上記治療デバイス(10)。
【請求項8】
電気的に作動可能なシステム(50)が誘導システム(60)であることを特徴とする、請求項7に記載の治療装置(10)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−506880(P2012−506880A)
【公表日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−533576(P2011−533576)
【出願日】平成21年10月14日(2009.10.14)
【国際出願番号】PCT/EP2009/007362
【国際公開番号】WO2010/049062
【国際公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(300005035)エルテーエス ローマン テラピー−ジステーメ アーゲー (128)
【Fターム(参考)】