説明

制御弁および車両用冷暖房装置

【課題】暖房運転時の除湿性能等を良好に確保可能な車両用冷暖房装置、およびその車両用冷暖房装置に好適な制御弁を提供する。
【解決手段】制御弁6は、上流側通路と下流側通路とを直接つなぐ主通路を、主弁孔120に接離して開閉する主弁体124を有し、その主弁体124が、上流側通路と下流側通路と背圧室132とを区画するように設けられる主弁105と、上流側通路と下流側通路とを背圧室132を介してつなぐ副通路の開度を、副弁孔140に接離して調整可能な電磁駆動のパイロット弁体144を有し、そのパイロット弁体144が、主弁105の開弁時には主弁105の上流側の圧力を供給電流値に応じた設定圧力に近づけるよう動作するパイロット弁106と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上流側から下流側への冷媒の流れを制御可能な制御弁に関し、特に、車両用冷暖房装置に好適に適用可能な制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、内燃機関を搭載した車両においてはエンジンの燃焼効率が向上したこともあり、熱源として利用してきた冷却水が暖房に必要な温度にまで上昇し難くなっている。一方、内燃機関と電動機を併用したハイブリッド車両においては内燃機関の稼働率が低いため、そのような冷却水の利用がさらに難しい。電気自動車に至っては内燃機関による熱源そのものがない。このため、冷房のみならず暖房にも冷媒を用いたサイクル運転を行い、車室内を除湿暖房可能なヒートポンプ式の車両用冷暖房装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
このような車両用冷暖房装置は、圧縮機、室外熱交換器、蒸発器、室内熱交換器等を含む冷凍サイクルを有し、暖房運転時と冷房運転時とで室外熱交換器の機能が切り替えられる。暖房運転時においては室外熱交換器が蒸発器として機能する。その際、冷媒が冷凍サイクルを循環する過程で室内熱交換器が放熱し、その熱により車室内の空気が加熱される。一方、冷房運転時においては室外熱交換器が凝縮器として機能する。その際、室外熱交換器にて凝縮された冷媒が蒸発器にて蒸発し、その蒸発潜熱により車室内の空気が冷却される。その際、除湿も行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−240266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような車両用冷暖房装置においては、暖房運転時に室外熱交換器を蒸発器として機能させたときにその蒸発量が必要以上に大きくなると、車室内の蒸発器に十分な液冷媒が供給されない事態が生じる可能性がある。そうなると、実質的に蒸発器での熱交換がなされなくなるため、車室内の除湿機能を適正に維持できなくなり、窓ガラスの曇り等の問題を発生させる可能性がある。一方、例えば極低温下において蒸発器に必要以上に低温の冷媒を流すと、蒸発器を凍結させてしまう可能性もある。そこで、発明者は、このように室外熱交換器を蒸発器として機能させるときにも車室内の蒸発器に適正量の液冷媒が供給されるように調整できれば、こうした問題を解決できると考えた。
【0006】
本発明の目的の一つは、暖房運転時の除湿性能等を良好に確保可能な車両用冷暖房装置、およびその車両用冷暖房装置に好適な制御弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様は、上流側から下流側への冷媒の流れを制御可能なパイロット作動式の制御弁において、上流側通路と下流側通路とを直接つなぐ主通路を、主弁孔に接離して開閉する主弁体を有し、その主弁体が、上流側通路と下流側通路と背圧室とを区画するように設けられる主弁と、上流側通路と下流側通路とを背圧室を介してつなぐ副通路の開度を、副弁孔に接離して調整可能な電磁駆動のパイロット弁体を有し、そのパイロット弁体が、主弁の開弁時には主弁の上流側の圧力を供給電流値に応じた設定圧力に近づけるよう動作するパイロット弁と、を備える。
【0008】
この態様によると、電磁駆動によりパイロット弁が作動し、副通路の開度を調整することで、主弁の開度を調整可能となる。そして、上流側の圧力が供給電流値に応じた設定圧力となるよう制御することができるため、その設定圧力を適正に設定すれば、上流側の圧力を適正に調整することが可能となる。このため、当該制御弁を車両用冷暖房装置の熱交換器と蒸発器との間に設ければ、暖房運転時においても蒸発器に導入される冷媒の流量を確保することができる。その結果、車室内の湿度機能を適正に維持できるようになる。
【0009】
本発明の別の態様は、車両用冷暖房装置である。この車両用冷暖房装置は、冷媒を圧縮して吐出する圧縮機と、車室外に配置され、冷房運転時に冷媒を放熱させる室外凝縮器として機能する一方、暖房運転時には冷媒を蒸発させる室外蒸発器として機能する室外熱交換器と、車室内に配置されて冷媒を蒸発させる室内蒸発器と、室内蒸発器が機能するとともに室外熱交換器が室外蒸発器として機能するときに室外熱交換器の下流側となる位置に設けられ、上流側から下流側への冷媒の流れを制御する電動の制御弁と、制御弁への供給電流を制御して制御弁の上流側の圧力を調整する制御部と、を備える。制御弁は、上流側通路と下流側通路とを直接つなぐ主通路を、主弁孔に接離して開閉する主弁体を有し、その主弁体が、上流側通路と下流側通路と背圧室とを区画するように設けられる主弁と、上流側通路と下流側通路とを背圧室を介してつなぐ副通路の開度を、副弁孔に接離して調整可能な電磁駆動のパイロット弁体を有し、そのパイロット弁体が、主弁の開弁時には主弁の上流側の圧力を供給電流値に応じた設定圧力に近づけるよう動作するパイロット弁と、を備える。
【0010】
この態様によると、暖房運転時において室内蒸発器が機能するとともに室外熱交換器が室外蒸発器として機能するときに、制御弁の上流側の圧力を適正に調整でき、室外熱交換器における冷媒の蒸発温度ひいては蒸発量を調整することができる。その結果、室内蒸発器における冷媒の蒸発量を調整することができる。すなわち、その室内蒸発器の蒸発量を確保することで、暖房運転時においても室内蒸発器に導入される冷媒の流量を確保することができ、それにより車室内の湿度機能を適正に維持することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、暖房運転時の除湿性能等を良好に確保可能な車両用冷暖房装置、およびその車両用冷暖房装置に好適な制御弁を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1実施形態に係る車両用冷暖房装置の概略構成を表すシステム構成図である。
【図2】車両用冷暖房装置の動作を表す説明図である。
【図3】第2制御弁の具体的構成を表す断面図である。
【図4】第2制御弁の動作状態を表す説明図である。
【図5】差圧オリフィスの構成および動作を表す断面図である。
【図6】第2実施形態に係る第2制御弁の具体的構成を表す断面図である。
【図7】第2制御弁の動作状態を表す説明図である。
【図8】第3実施形態に係る第2制御弁の具体的構成を表す断面図である。
【図9】第2制御弁の動作状態を表す説明図である。
【図10】第4実施形態に係る第2制御弁の具体的構成を表す断面図である。
【図11】第2制御弁の動作状態を表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。
[第1実施形態]
まず、本発明の第1実施形態について説明する。図1は、第1実施形態に係る車両用冷暖房装置の概略構成を表すシステム構成図である。本実施形態は、本発明の車両用冷暖房装置を電気自動車の冷暖房装置として具体化したものである。
【0014】
車両用冷暖房装置1は、圧縮機2、室内凝縮器3、第1制御弁4、室外熱交換器5、第2制御弁6、蒸発器7およびアキュムレータ8を配管にて順次接続した冷凍サイクル(冷媒循環回路)を備える。車両用冷暖房装置1は、冷媒としての代替フロン(HFC−134a)が冷凍サイクル内を状態変化しながら循環する過程で、その冷媒の熱を利用して車室内の空調を行うヒートポンプ式の冷暖房装置として構成されている。なお、本実施形態においては、室外熱交換器5と第2制御弁6とをつなぐ通路と、蒸発器7とアキュムレータ8とをつなぐ通路とを接続するバイパス通路9が設けられ、そのバイパス通路9に切替弁11が配設されている。
【0015】
車両用冷暖房装置1は、空気の熱交換が行われるダクト10を有し、そのダクト10における空気の流れ方向上流側から室内送風機12、蒸発器7、室内凝縮器3が配設されている。室内凝縮器3の上流側には、エアミックスドア14が回動自在に設けられ、室内凝縮器3を通過する風量と室内凝縮器3を迂回する風量との比率が調節される。また、室外熱交換器5に対向するように室外送風機16が配置されている。
【0016】
圧縮機2は、ハウジング内にモータと圧縮機構を収容する電動圧縮機として構成され、図示しないバッテリからの供給電流により駆動され、モータの回転数に応じて冷媒の吐出容量が変化する。この圧縮機2としては、レシプロ式、ロータリ式、スクロール式など、様々な形式の圧縮機を採用することができるが、電動圧縮機そのものは公知であるため、その説明については省略する。
【0017】
室内凝縮器3は、車室内に設けられ、室外熱交換器5とは別に冷媒を放熱させる補助凝縮器として機能する。すなわち、圧縮機2から吐出された高温・高圧の冷媒が室内凝縮器3を通過する際に放熱する。エアミックスドア14の開度に応じて振り分けられた空気は、室内凝縮器3を通過する過程でその熱交換が行われる。
【0018】
第1制御弁4は、室内凝縮器3と室外熱交換器5とをつなぐ主通路の開度を調整する。第1制御弁4は、その主通路を開閉する弁部と、その弁部を駆動するソレノイドを備え、供給電流の有無によって弁部を開閉する。また、主通路を第1制御弁4の前後で迂回するバイパス通路が設けられ、そのバイパス通路にオリフィス18が設けられている。オリフィス18の開口面積は、第1制御弁4の開弁時の開口面積よりも十分に小さいが、このように第1制御弁4と並列にオリフィス18が設けられることで、第1制御弁4の閉弁時においても所定流量の冷媒の流れが許容される。
【0019】
室外熱交換器5は、車室外に配置され、冷房運転時に内部を通過する冷媒を放熱させる室外凝縮器として機能する一方、暖房運転時には内部を通過する冷媒を蒸発させる室外蒸発器として機能する。室外送風機16は、吸い込み式の送風機であり、軸流ファンをモータにより回転駆動することにより外気を導入する。室外熱交換器5は、その外気と冷媒との間で熱交換をさせる。
【0020】
第2制御弁6は、室外熱交換器5と蒸発器7とをつなぐ主通路の開度を調整する。第2制御弁6は、その主通路を開閉する弁部と、その弁部を駆動するソレノイドを備え、供給電流値に応じて弁部の開度を調整する。第2制御弁6は、その上流側圧力が供給電流値に応じた一定の値(設定圧力)となるように動作する定圧弁として機能可能に構成されている。すなわち、第2制御弁6の弁部は、上流側圧力がソレノイドへの供給電流値に対応づけられた値となるよう自律的に動作する。
【0021】
また、第2制御弁6の前後を迂回するようにバイパス通路13が設けられ、そのバイパス通路13に差圧オリフィス20が設けられている。すなわち、差圧オリフィス20が、第2制御弁6と並列に設けられ、第2制御弁6の閉弁時においても前後差圧が予め設定された差圧(設定差圧)よりも高くなると、所定流量の冷媒の流れを許容する。差圧オリフィス20は、差圧弁とオリフィスとを一体に形成したものであり、そのオリフィスの開口面積は、第2制御弁6の全開時の開口面積よりも十分に小さい。なお、第2制御弁6および差圧オリフィス20の構造については後に詳述する。
【0022】
蒸発器7は、車室内に配置され、内部を通過する冷媒を蒸発させる室内蒸発器として機能する。すなわち、第2制御弁6の通過により低温・低圧となった冷媒は、蒸発器7を通過する際に蒸発する。ダクト10の上流側から導入された空気は、その蒸発潜熱によって冷却される。このとき冷却・除湿された空気は、エアミックスドア14の開度に応じて室内凝縮器3を通過するものと、室内凝縮器3を迂回するものとに振り分けられる。室内凝縮器3を通過する空気は、その通過過程で加熱される。室内凝縮器3を通過した空気と迂回した空気とが室内凝縮器3の下流側にて混合されて目標の温度に調整され、図示しない吹出口から車内に供給される。例えば、ベント吹出口、フット吹出口、デフ吹出口等から車室内所定場所に向かって吹き出される。
【0023】
アキュムレータ8は、蒸発器から送出された冷媒を気液分離して溜めておく装置であり、液相部と気相部とを有する。このため、仮に蒸発器7から想定以上の液冷媒が導出されたとしても、その液冷媒を液相部に溜めおくことができ、気相部の冷媒を圧縮機2に導出することができる。その結果、圧縮機2の圧縮動作に支障をきたすこともない。一方、本実施形態では、その液相部の冷媒の一部を圧縮機2に供給できるようにされており、圧縮機2に必要量の潤滑オイルを戻すことができるようになっている。
【0024】
切替弁11は、室外熱交換器5から導出された冷媒をバイパス通路9を経由するように流すか否かを切り替える。本実施形態において、切替弁11は通電により開弁する電磁駆動の開閉弁からなり、特に外部温度が低くなり、蒸発器7の凍結が予測される状況下にある場合には、適宜、第2制御弁6を閉弁させて蒸発器7へつながる通路を遮断するとともに、切替弁11を開弁させて蒸発器7を迂回させるバイパス通路9を開放する。その間にダクト10を通過する空気により蒸発器7が温められ、凍結防止を図ることができる。なお、このような開閉弁そのものについては公知のものを用いることができるため、その詳細な説明については省略する。
【0025】
以上のように構成された車両用冷暖房装置1は、制御部100により制御される。制御部100は、各種演算処理を実行するCPU、各種制御プログラムを格納するROM、データ格納やプログラム実行のためのワークエリアとして利用されるRAM、入出力インターフェース等を備える。制御部100には、車両用冷暖房装置1に設置された図示しない各種センサ・スイッチ類からの信号が入力される。制御部100は、車両の乗員によりセットされた室温を実現するために各アクチュエータの制御量を演算し、各アクチュエータの駆動回路に制御信号を出力する。図示の例では、制御部100は、第1制御弁4の開閉制御、第2制御弁6の開閉制御、切替弁11の開閉切替制御のほか、圧縮機2,室内送風機12,室外送風機16およびエアミックスドア14の駆動制御も実行する。
【0026】
制御部100は、第2制御弁6の駆動回路に設定したデューティ比のパルス信号を出力するPWM出力部を有するが、その構成自体には公知のものが採用されるため、詳細な説明を省略する。制御部100は、特に暖房運転時において、車室内外の温度、蒸発器7の吹き出し空気温度等、各種センサにて検出された所定の外部情報に基づいて設定圧力を決定し、第2制御弁6の上流側圧力がその設定圧力となるよう通電制御を行う。
【0027】
本実施形態では、圧縮機2の吸入圧力(第2制御弁6の下流側圧力)が目標圧力となるよう制御されるため、結果的に第2制御弁6の下流側圧力が調整されることになる。一方、第2制御弁6によりその上流側圧力を独立に制御することで、後述のように蒸発器7に確実に液冷媒を導入できるようになり、除湿性能を確保することができる。制御部100は、外部情報に基づいて第2制御弁6の上流側圧力の適正値を設定圧力として設定し、その設定圧力を実現するための電流を第2制御弁6に供給する。第2制御弁6の弁部は、供給電流値に対応した上流側圧力が得られるよう自律的に動作し、その開度を調整する。
【0028】
次に、本実施形態の冷凍サイクルの動作について説明する。図2は、車両用冷暖房装置の動作を表す説明図である。(A)は冷房運転時の状態を示し、(B)は暖房運転時の状態を示し、(C)は特定暖房運転時の状態を示している。なお、ここでいう「冷房運転」は、冷房機能が暖房機能よりも大きく機能する運転状態であり、「暖房運転」は、暖房機能が冷房機能よりも大きく機能する運転状態であり、「特定暖房運転」は、蒸発器7を実質的に機能させない暖房運転であり、外部環境等に応じて暖房運転時に適宜実行される。
【0029】
各図の上段には冷凍サイクルの動作を説明するモリエル線図が示されている。その横軸がエンタルピーを表し、縦軸が各種圧力を表している。各図の下段には、冷凍サイクルの動作状態が示されている。図中の太線および矢印が冷媒の流れを示し、符号a〜fはモリエル線図のそれと対応している。また、図中の「×」は冷媒の流れが遮断されていることを示している。なお、同図の下段は図1に対応するが、エアミックスドア14等の図示を省略するなど便宜上簡略表記されている。
【0030】
図2(A)に示すように、冷房運転時においては、第1制御弁4が開弁される一方、第2制御弁6の主弁(後述する)は閉弁される。切替弁11は、バイパス通路9を遮断する。このとき、室外熱交換器5は室外凝縮器として機能する。すなわち、圧縮機2から吐出された冷媒は、室内凝縮器3、第1制御弁4、室外熱交換器5、差圧オリフィス20、蒸発器7、アキュムレータ8の順に経由するように循環して圧縮機2に戻る。室内凝縮器3から導出された冷媒の一部は、オリフィス18を通過するが、その流量は第1制御弁4を通過する流量に比べて相当少ない。
【0031】
すなわち、圧縮機2から吐出された高温・高圧のガス冷媒は、室内凝縮器3および室外熱交換器5を経ることで凝縮され、差圧オリフィス20にて断熱膨張され、冷温・低圧の気液二相冷媒となって蒸発器7に導入される。そして、その蒸発器7を通過する過程で蒸発し、車室内の空気を冷却・除湿する。このとき、エアミックスドア14の開度が適度に調整され、その空気の温度調整が行われる。
【0032】
一方、図2(B)に示すように、暖房運転時においては、第1制御弁4が閉弁される一方、第2制御弁6が開弁される。切替弁11は、バイパス通路9を遮断する。このとき、エアミックスドア14は温度設定に応じた適切な開度となるよう駆動される。このとき、室外熱交換器5は室外蒸発器として機能する。すなわち、圧縮機2から吐出された冷媒は、室内凝縮器3、オリフィス18、室外熱交換器5、第2制御弁6、蒸発器7、アキュムレータ8の順に経由するように循環して圧縮機2に戻る。
【0033】
すなわち、圧縮機2から吐出された高温・高圧のガス冷媒は、室内凝縮器3を経て凝縮され、オリフィス18にて断熱膨張され、室外熱交換器5にて蒸発され、さらに第2制御弁6にて断熱膨張され、冷温・低圧の気液二相冷媒となって蒸発器7を通過する。すなわち、冷媒は、室外熱交換器5および蒸発器7を通過する過程で順次蒸発するが、後段の蒸発器7における蒸発潜熱により車室内の空気が冷却され、除湿される。すなわち、蒸発器7によって冷却・除湿された空気は、室内凝縮器3を経由することで加熱され、適度に温められて車内に供給される。
【0034】
図2(B)の上段に示すように、このとき室外熱交換器5での蒸発量が第2制御弁6の上流側圧力P1を制御することにより調整される。図示のように、上流側圧力P1の設定値(設定圧力Pset)が比較的高く設定されると、実線部分にて示されるように、室外熱交換器5における蒸発量が相対的に小さくなる(蒸発器7における蒸発量が相対的に大きくなる)。逆に、設定圧力Psetが比較的低く設定されると、二点鎖線部分にて示されるように、室外熱交換器5における蒸発量が相対的に大きくなる(蒸発器7における蒸発量が相対的に小さくなる)。
【0035】
制御部100は、設定温度を実現する過程で蒸発器7における熱交換量を制御するが、その際、設定圧力Psetを適切に設定することで、循環する冷媒の室外熱交換器5における蒸発量を調整する。すなわち、制御部100は、外部情報に基づいて第2制御弁6の上流側圧力P1を演算して設定圧力Psetとして設定し、その設定圧力Psetを実現するための電流を第2制御弁6に供給する。それにより、室外熱交換器5と蒸発器7との蒸発量の比率を調整でき、蒸発器7での蒸発量を確保して除湿機能を確保することができる。
【0036】
また、図2(C)に示すように、特定暖房運転時においては、暖房運転時と同様に第1制御弁4が閉弁される。このとき、第2制御弁6が閉弁されるとともに切替弁11が開弁され、冷媒通路がバイパス通路9に切り替えられる。その結果、第2制御弁6の前後差圧が小さくなり(ほぼゼロとなり)、差圧オリフィス20の閉弁状態も維持される。すなわち、蒸発器7へつながる通路が遮断されるとともに、バイパス通路9が開放される。このため、冷媒は蒸発器7を通過せずに迂回する。それにより、一時的に蒸発器7に低温・低圧の液冷媒が供給されなくなるため、蒸発器7の温度が極低温となって凍結するのを抑制できる。このとき、ダクト10を通過する空気により蒸発器7が温められる。
【0037】
本実施形態において、制御部100は、外気温が予め設定する極低温(例えば−10℃以下)となっている場合、図2(B)に示す暖房運転と図2(C)に示す特定暖房運転とを併用し、これらを交互に切り替えるように制御する。これにより、暖房運転により除湿性能を確保するとともに、特定暖房運転により蒸発器7の凍結を防止することができる。
【0038】
次に、第2制御弁6の具体的構成について説明する。
図3は、第2制御弁の具体的構成を表す断面図である。なお、以下の説明においては便宜上、図示の状態を基準に各構造の位置関係を表現することがある。
第2制御弁6は、その上流側圧力が供給電流値に応じた設定圧力となるよう流体の流れを制御可能なパイロット作動式の制御弁として構成されている。第2制御弁6は、弁本体101とソレノイド102とを組み付けて構成される。
【0039】
弁本体101は、有底円筒状のボディ103に主弁105とパイロット弁106とを同軸状に収容して構成される。ボディ103の一方の側部には、冷凍サイクルの上流側通路に連通する入口ポート110が設けられ、他方の側部には、冷凍サイクルの下流側通路に連通する出口ポート112が設けられている。ボディ103の内部中央には、半径方向内向きに延出した区画壁114が設けられている。区画壁114は、ボディ103内を高圧側の圧力室116と低圧側の圧力室118とに区画している。圧力室116は入口ポート110に連通し、圧力室118は出口ポート112に連通している。
【0040】
区画壁114の環状の内周部により主弁孔120が形成され、その上流側開口端部により主弁座122が形成されている。圧力室116には主弁体124が配設されている。主弁体124は、有底円筒状の本体を有し、その本体の底部周縁部が主弁座122に着脱して主弁105を開閉する。その底部周縁部の内側近傍からは下方に向けて複数の脚部131が延設されており(同図には1つのみ表示)、主弁孔120の内周面によって摺動可能に支持されている。
【0041】
一方、主弁体124の上端開口部には半径方向外向きに延出するフランジ部126が設けられ、ボディ103の内周面に摺動可能に支持されている。フランジ部126の外周面にはシール用のOリング128が嵌着されている。フランジ部126は、圧力室116を高圧室130と背圧室132とに区画する。また、主弁体124の上端開口部におけるフランジ部126の内方には環状のストッパ134が圧入嵌合されている。また、ストッパ134の内周縁部から上方に向けて複数の脚部136が延設されており(同図には1つのみ表示)、ソレノイド102の内部まで延出している。
【0042】
また、主弁体124の側部には、内外を連通する小断面のリーク通路138が形成されている。すなわち、入口ポート110に導入された冷媒の一部は、リーク通路138を経て主弁体124の内部空間Sに導入され、ストッパ134の内方を通過して背圧室132に導入される。主弁体124の底部中央には、その軸線方向に内外を連通させる副弁孔140が形成されている。そして、その副弁孔140の上流側開口縁部により副弁座142が形成されている。後述のように、パイロット弁106を構成するパイロット弁体144が、制御状態に応じて副弁座142に着脱して副弁孔140を開閉する。なお、高圧室130と圧力室118とを主弁105を介してつなぐ通路が第2制御弁6における「主通路」を構成し、高圧室130と圧力室118とをパイロット弁106を介してつなぐ通路が第2制御弁6における「副通路」を構成する。
【0043】
パイロット弁体144は、中空のハウジング146と、ハウジング146内を密閉空間S1と開放空間S2とに仕切るように配設されたダイヤフラム148(可撓性部材)と、密閉空間S1に配設されたスプリング150(付勢部材)と、開放空間S2に収容される反力伝達部材151とを備えている。反力伝達部材151は、ハウジング146を貫通して上方に延びる複数の脚部152(同図には1つのみ表示)を有する。開放空間S2は、主弁体124の内部空間Sを介して背圧室132に連通している。
【0044】
ハウジング146は、ともにステンレスからなる有底段付円筒状の第1ハウジング153および第2ハウジング154からなり、これらの開口部を突き合わせてその外縁部に金属薄板からなるダイヤフラム148の外縁部を挟むようにして組み付けられる。このハウジング146は、第1ハウジング153と第2ハウジング154との間にダイヤフラム148を挟んだ状態でその接合部に沿って外周溶接が施されることにより、容器状に形成されている。この溶接は真空雰囲気内で行われるため、密閉空間S1は真空状態となっているが、密閉空間S1内に大気等を満たすようにしてもよい。
【0045】
第1ハウジング153は、その上底部においてソレノイド102の第1プランジャ171に固定されている。第1ハウジング153には、反力伝達部材151の複数の脚部152のそれぞれを貫通させる貫通孔155が設けられている。第1ハウジング153の内部は、その貫通孔155を介して内部空間Sと連通しており、中間圧力Ppが導入される。ダイヤフラム148は、この中間圧力Ppを感知してパイロット弁106の開閉方向に変位する。一方、第2ハウジング154の底部中央は下方に向けて円錐状に突設されており、そのテーパ部が副弁座142に着脱する弁体部156を構成している。
【0046】
ダイヤフラム148の第2ハウジング154側の端面には、ステンレスからなるディスク157が当接し、ディスク157と第2ハウジング154との間に、設定荷重調整用のスプリング150が介装されている。ディスク157の周縁部が第2ハウジング154に係止されることにより、ダイヤフラム148の下方への変位が規制される。
【0047】
ダイヤフラム148の第1ハウジング153側の面の中央部には、ステンレスからなる円板状の反力伝達部材151が当接している。この反力伝達部材151の外周部の複数カ所には、上方(つまりダイヤフラム148と反対側)に延出して第1ハウジング153の貫通孔155から突出する脚部152が設けられている。これらの脚部152は、ダイヤフラム148の動作により、ストッパ134の下面に着脱可能になっている。
【0048】
以上のような構成において、上流側の高圧室130の圧力P1(「上流側圧力P1」という)は、リーク通路138を経ることで内部空間Sにて中間圧力Ppとなり、背圧室132に導入される一方、主弁105を経て減圧されて圧力P2(「下流側圧力P2」という)となる。中間圧力Ppは、パイロット弁106の開閉状態によって変化する。
【0049】
一方、ソレノイド102は、ボディ103の上端開口部を封止するように取り付けられた有底円筒状のスリーブ170を有する。スリーブ170内には、第1プランジャ171(「第1の可動鉄心」に該当する)および第2プランジャ172(「第2の可動鉄心」に該当する)が軸線方向に対向配置されるように収容されている。スリーブ170の外周部にはボビン173が設けられ、そのボビン173に電磁コイル174が巻回されている。そして、電磁コイル174を外部から覆うようにケース176が設けられている。スリーブ170は、ケース176を軸線方向に貫通している。電磁コイル174からは通電用のハーネス178が引き出されている。
【0050】
第1プランジャ171は、円柱状をなし、その外周部には軸線方向に延びる複数のスリット180(同図にはその1つを表示)が設けられている。前述の主弁体124の脚部136は、このスリット180を介して上方に延出している。パイロット弁体144は、第1ハウジング153の上端部において第1プランジャ171の下端部に接合されている。すなわち、パイロット弁体144は、第1プランジャ171と一体的に動作する。
【0051】
第2プランジャ172は、円筒状をなし、その内部中央に隔壁182が設けられている。隔壁182の中央には通気用の孔が形成されている。第2プランジャ172は、その下端面にて脚部136の上端面に当接してこれを支持する。第1プランジャ171と第2プランジャ172との間には、第1プランジャ171を介してパイロット弁体144を閉弁方向に付勢するスプリング184(「付勢部材」に該当する)が介装されている。第2プランジャ172とスリーブ170との間には、第2プランジャ172を介して主弁体124を閉弁方向に付勢するスプリング186が介装されている。すなわち、主弁体124は、第2プランジャ172と一体的に動作可能となっている。
【0052】
以上のように構成された第2制御弁6は、上流側圧力が供給電流値に応じた設定圧力となるよう流体の流れを制御可能なパイロット作動式の制御弁として機能する。以下、その動作について詳細に説明する。
図4は、第2制御弁の動作状態を表す説明図である。図4は、ソレノイド102がオン(通電状態)にされた制御状態を表している(図2(B)に対応)。なお、既に説明した図3は、ソレノイド102がオフにされた状態を表している(図2(A)に対応)。
【0053】
図3に示すように、第2制御弁6は、ソレノイド102がオフにされた状態では定圧制御は行わず、閉弁状態を維持する。このとき、後述のように差圧オリフィス20が膨張装置として機能する。すなわち、第2制御弁6においてソレノイド力が作用しないため、スプリング184によってパイロット弁体144が閉弁方向に付勢され、パイロット弁106が閉弁状態となる。一方、スプリング186によって第2プランジャ172を介して主弁体124が閉弁方向に付勢され、主弁105も閉弁状態となる。このとき、背圧室132には上流側からリーク通路138を介して冷媒が導入されるため、中間圧力Ppは、上流側圧力P1に等しくなる。
【0054】
一方、図4に示すように、第2制御弁6は、ソレノイド102がオンにされると、その上流側圧力P1が供給電流値に応じた設定圧力Psetとなるよう動作する定圧弁として機能する。すなわち、第2制御弁6は、ソレノイド力によって第1プランジャ171と第2プランジャ172との間に吸引力が作用するため、パイロット弁体144が開弁方向に付勢され、パイロット弁106が開弁状態となる。それにより、中間圧力Ppが低下するため、主弁体124が上流側圧力P1と中間圧力Ppとの差圧(P1−Pp)の影響を受けて開弁方向に動作し、主弁105が開弁する。
【0055】
このとき、上流側から入口ポート110を介して導入された冷媒は、開弁された主弁105を介して減圧膨張され、出口ポート112を介して下流側へ導出される。また、入口ポート110を介して導入された冷媒の一部は、リーク通路138を介して背圧室132に導入され、パイロット弁106を介して圧力室118に導出され、出口ポート112を介して下流側へ導出される。このとき、上流側圧力P1が設定圧力Psetとなるよう主弁105の開度が調整される。
【0056】
この定圧制御状態において、上流側圧力P1が設定差圧Psetよりも大きくなると、中間圧力Ppが大きくなるため、ダイヤフラム148が密閉空間S1を縮小させる方向に変位する。このとき、ソレノイド力によって反力伝達部材151がストッパ134に係止された状態にあるため、ハウジング146が相対的に上方に動作し、パイロット弁106の開度を拡大する。その結果、中間圧力Ppが低下するため、主弁体124が開弁方向に動作し、上流側圧力P1が低下する方向に変化する。
【0057】
逆に、上流側圧力P1が設定差圧Psetよりも小さくなると、ダイヤフラム148が密閉空間S1を拡大させる方向に変位する。このとき、ソレノイド力によって反力伝達部材151がストッパ134に係止された状態にあるため、ハウジング146が相対的に下方に動作し、パイロット弁106の開度を縮小する。その結果、中間圧力Ppが上昇するため、主弁体124が閉弁方向に動作し、上流側圧力P1が上昇する方向に変化する。このようにして、上流側圧力P1が設定圧力Psetに維持される。
【0058】
図5は、差圧オリフィスの構成および動作を表す断面図である。(A)は閉弁開始状態を示し、(B)は開弁状態を示し、(C)は全開状態を示している。
差圧オリフィス20は、円筒状のボディ322と、そのボディ322内に配設された有底段付円筒状の弁体363とを含んで構成される。ボディ322の上流側端部には上流側通路に連通するポート324が設けられ、下流側端部には下流側通路に連通するポート326が設けられている。ボディ322の長手方向中央部には、段付円筒状のガイド部材328が同軸状に配設されている。ガイド部材328は、その上流側半部に半径方向外向きに延出するフランジ部330を有し、そのフランジ部330を介してボディ322に圧入されている。ガイド部材328の内方にはガイド孔329が形成されている。
【0059】
また、ボディ322におけるガイド部材328の上流側位置には、半径方向内向きに延出した区画壁332が設けられている。区画壁332の環状の内周部により弁孔333が形成されている。弁孔333の下流側開口縁により弁座335が形成されている。そして、区画壁332の上流側に高圧室336、区画壁332とガイド部材328との間に中間圧力室338、ガイド部材328の下流側に低圧室340が、それぞれ形成されている。
【0060】
弁体363は、弁体部364とオリフィス部365とが一体に形成されたものであり、そのオリフィス部365がガイド孔329を貫通するように配置され、ガイド部材328に摺動可能に支持されている。弁体部364は、中間圧力室338に配置され、オリフィス部365の上流側に連設されている。弁体部364の先端部には、弾性材(本実施形態ではゴム)からなる弁部材342が嵌着されている。弁体363は、この弁部材342が弁座335に着脱することにより連通路159を開閉する。
【0061】
オリフィス部365は、その上流側端部が中間圧力室338にて開口し、下流側端部が低圧室340にて開口している。すなわち、オリフィス部365の内部には、中間圧力室338と低圧室340とを連通する小断面のオリフィス通路366が形成されている。図示のように、オリフィス通路366は、弁体363の開閉方向に延びるように形成されている。オリフィス部365は、弁体部364との接続部において外径がやや拡径されており、その拡径部がフランジ部330に係止されることにより、下流側への変位が規制される。弁体部364とフランジ部330との間には、弁体363を閉弁方向に付勢するスプリング169(「付勢部材」として機能する)が介装されている。
【0062】
このような構成により、上流側通路からポート324を介して導入された上流側圧力P1は、弁部を経て減圧されることで中間圧力室338にて中間圧力Pp3となり、さらにオリフィス通路366を経て減圧されることで下流側圧力P2となる。ただし、弁孔333の内径Aとガイド孔329の内径Bとが等しくされているため、弁体363に作用する中間圧力Pp3の影響はキャンセルされる。すなわち、差圧オリフィス20は、その前後差圧(P1−P2)が設定値(第2設定差圧)を超えると開弁する差圧弁として機能するとともに、冷媒の逆流を防止する逆止弁として機能する。この設定値は、スプリング169の荷重により設定されている。
【0063】
すなわち、差圧オリフィス20は、前後差圧(P1−P2)が設定値よりも小さい状態においては、図5(A)に示すように閉弁状態となる。このとき、連通路159における冷媒の流れが遮断される。前後差圧(P1−P2)が設定値よりも大きくなると、差圧オリフィス20が図5(B)および(C)に示すように開弁し、連通路159における冷媒の流れが許容される。
【0064】
以上のような構成において、図5(A)に示すように、弁体363が弁座335に着座した状態においては、中間圧力室338にも下流側圧力P2(中間圧力Pp3=下流側圧力P2)が満たされ、オリフィス通路366の内部にはその全長にわたって下流側圧力P2が作用する。そして、図5(B)に示すように、弁体363が弁座335から離間を開始すると同時に中間圧力Pp3が上流側圧力P1に近づき、オリフィス通路366の上流部に上流側圧力P1が作用するようになる。オリフィス通路366の圧力損失もあることから、その上流端から下流端に向けて圧力勾配が形成され、オリフィス通路366の内部を通過する冷媒により弁体363に開弁方向の流体摩擦が作用するようになる。この結果、弁体363の開弁開始と同時にその開弁が促進され、弁体363が速やかに図5(C)に示すような全開状態に落ち着くことができる。つまり、弁体363が図5(B)に示すような微小開度に留まることを防止でき、オリフィスとしての機能(オリフィスに設定された特性)を良好に発揮することができる。
【0065】
本実施形態では、図2(C)に示したように第2制御弁6が閉弁された状態で切替弁11が開弁されると、差圧オリフィス20の前後差圧(P1−P2)が実質的にゼロに近づく。このため、主弁105、パイロット弁106および差圧オリフィス20の全てを閉弁状態とすることができる。その結果、冷媒は蒸発器7を通過せずに迂回する。それにより、一時的に蒸発器7に低温・低圧の液冷媒が供給されなくなるため、蒸発器7の温度が極低温となって凍結するのが防止される。
【0066】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態に係る車両用冷暖房装置は、第2制御弁の構造が異なる点を除き、第1実施形態と同様である。このため、第1実施形態とほぼ同様の構成部分については同一の符号を付す等して適宜その説明を省略する。図6は、第2実施形態に係る第2制御弁の具体的構成を表す断面図である。
【0067】
第2制御弁26は、弁本体201とソレノイド202とを組み付けて構成され、その上流側圧力が供給電流値に応じた設定圧力となるよう流体の流れを制御可能なパイロット作動式の制御弁として構成されている。
【0068】
弁本体201は、ボディ203に主弁205とパイロット弁206とを同軸状に収容して構成される。ボディ203の一方の側部には入口ポート110が設けられ、他方の側部には出口ポート112が設けられているが、そのボディ203に対する各ポートの位置関係は、第1実施形態のボディ103とは逆となっている。ボディ103の内部中央には環状の区画部材220が圧入されている。区画部材220は、ボディ203内を高圧側の圧力室216と低圧側の圧力室218とに区画している。圧力室216は入口ポート110に連通し、圧力室218は出口ポート112に連通している。区画部材220の環状の内周部により主弁孔120が形成されている。圧力室216と圧力室218とを跨ぐように主弁体224が配設されている。主弁体224は、その下端部に設けられた弁体部225が主弁孔120に挿抜されることにより、主弁205を開閉する。
【0069】
一方、主弁体224の上端部には、半径方向外向きに延出するフランジ部226が設けられ、ボディ203の内周面に摺動可能に支持されている。フランジ部226の外周面にはOリング128が嵌着されている。フランジ部226は、圧力室218を背圧室132と低圧室230とに区画する。また、フランジ部226には、背圧室132と低圧室230とを連通させる小断面のリーク通路138が設けられており、背圧室132から低圧室230への所定流量の冷媒の流れを許容する。なお、圧力室216と低圧室230とを主弁205を介してつなぐ通路が第2制御弁26における「主通路」を構成し、圧力室216と低圧室230とをパイロット弁206を介してつなぐ通路が第2制御弁26における「副通路」を構成する。
【0070】
主弁体224には、その本体を軸線方向に貫通する挿通孔232が設けられており、その下端開口部(上流側端部)により副弁孔240が形成され、その開口端縁により副弁座242が形成されている。挿通孔232には、ソレノイド202から延びるシャフト260が摺動可能に挿通され、そのシャフト260の下端部にパイロット弁体244が接合されている。パイロット弁体244は、制御状態に応じて副弁座242に上流側(下方)から着脱してパイロット弁206を開閉する。また、挿通孔232には長手方向に延びる連通溝246が設けられ、その連通溝246とシャフト260との間にパイロット通路262が形成されている。パイロット通路262は、副弁孔240と背圧室132とを連通させる。
【0071】
パイロット弁体244は、副弁座242に着脱するテーパ状の弁体部を有し、その弁体部から上方に延びる縮径部の先端がシャフト260の下端面に当接されている。パイロット弁体244の下端部には、半径方向外向きに延びる係止部248が設けられている。係止部248は、後述する感圧部材による閉弁方向の付勢力を受圧する受圧部として機能する。パイロット弁体244と主弁体224との間には、パイロット弁体244を閉弁方向に付勢するスプリング249が介装されている。
【0072】
パイロット弁体244の下端部には、感圧部材としてのベローズ251を含むパワーエレメント250が設けられている。すなわち、パワーエレメント250は、パイロット弁体244の下端開口部に外挿されるように圧入された有底円筒状のケース252と、その内部に配設されて軸線方向に伸縮動作するベローズ251とを含んで構成される。
【0073】
ベローズ251は、可撓性を有する本体253の内部に密閉空間S1を有している。本体253は有底筒状をなし、その下端開口部がケース252の底部に溶接されることで封止されている。この溶接は真空雰囲気内で行われるため、密閉空間S1は真空状態となっているが、密閉空間S1内に大気等を満たすようにしてもよい。本体253の内部には段付柱状の心材254が配設され、心材254の底部が本体253の上底部に沿う形状を有している。ケース252の底部と心材254との間には、心材254を介して本体253を伸長方向に付勢するスプリング256が介装されている。ケース252の側部には、内外を連通させる連通孔258が形成されている。
【0074】
すなわち、本体253は、内外の圧力差によって伸縮し、所定量伸張すると心材254がパイロット弁体244に嵌合する。それにより、パワーエレメント250による閉弁方向の付勢力がパイロット弁体244に付与される。一方、本体253が縮小することによりパワーエレメント250による付勢力を解除することができるが、所定量縮小すると、心材254の下端面がケース252に係止されるため、その縮小量も規制される。
【0075】
以上のような構成において、上流側圧力P1は、パイロット弁206を経ることで中間圧力Ppとなって背圧室132に導入される一方、主弁205を経て減圧されて下流側圧力P2となる。中間圧力Ppは、パイロット弁106の開閉状態によって変化する。
【0076】
一方、ソレノイド202は、ボディ203の上端開口部を封止するように取り付けられた有底円筒状のスリーブ270を有する。スリーブ270は、Oリング265を介してボディ203に取り付けられている。スリーブ170内には、第1プランジャ271および第2プランジャ272が軸線方向に対向配置されるように収容されている。スリーブ270の外周部にはボビン273が設けられ、そのボビン273に電磁コイル274が巻回されている。そして、電磁コイル274を外部から覆うように金属製のケース275が設けられ、ケース275およびスリーブ270等の構造体は、樹脂モールドにて形成されたボディ276により外部から覆われて保護されている。ボディ276には、ケース275とともに磁気回路を構成する磁性部材からなるカラー277が埋設されている。ボディ276の一部は、電磁コイル274につながる端子279の一端を露出させるコネクタ部としても機能する。
【0077】
第1プランジャ271は、円筒状をなし、その下端面が主弁体224の上面(フランジ部226の中央上面)に当接可能に配置されている。第1プランジャ271とスリーブ270との間には、第1プランジャ271を主弁体224の開弁方向に付勢するスプリング278(「付勢部材」として機能する)が介装されている。すなわち、主弁体224は、第1プランジャ271と一体的に動作可能となっている。シャフト260は、第1プランジャ271をその軸線にそって貫通し、その上端が第2プランジャ272に当接している。すなわち、パイロット弁体244は、第2プランジャ272と一体的に動作可能となっている。
【0078】
図7は、第2制御弁の動作状態を表す説明図である。図7は、ソレノイド202がオン(通電状態)にされた制御状態を表している。なお、既に説明した図6は、ソレノイド202がオフにされた状態を表している。
図6に示すように、第2制御弁26は、ソレノイド202がオフにされた状態では定圧制御は行わず、閉弁状態を維持する。すなわち、第2制御弁26においてソレノイド力が作用しないため、スプリング249によってパイロット弁体244が閉弁方向に付勢され、パイロット弁206が閉弁状態となる。このため、中間圧力Ppが低くなり、主弁体224が閉弁方向に付勢され、主弁205も閉弁状態となる。
【0079】
一方、図7に示すように、第2制御弁26は、ソレノイド202がオンにされると、その上流側圧力P1が供給電流値に応じた設定圧力Psetとなるよう動作する定圧弁として機能する。すなわち、第2制御弁26は、ソレノイド力によって第1プランジャ271と第2プランジャ272との間に吸引力が作用するため、パイロット弁体244が開弁方向に付勢され、パイロット弁206が開弁状態となる。それにより、中間圧力Ppが上昇するため、主弁体224が中間圧力Ppと下流側圧力P2との差圧(Pp−P2)の影響を受けて開弁方向に動作し、主弁205が開弁する。
【0080】
このとき、上流側から入口ポート110を介して導入された冷媒は、開弁された主弁205を介して減圧膨張され、出口ポート112を介して下流側へ導出される。また、入口ポート110を介して導入された冷媒の一部は、パイロット弁206を介して背圧室132に導入され、リーク通路138および出口ポート112を介して下流側へ導出される。このとき、上流側圧力P1が設定圧力Psetとなるよう主弁205の開度が調整される。
【0081】
この定圧制御状態において、上流側圧力P1が設定差圧Psetよりも大きくなると、ベローズ251が密閉空間S1を縮小させる方向に変形する。その結果、パイロット弁体244が開弁方向に動作し、パイロット弁206の開度を拡大する。その結果、中間圧力Ppが上昇するため、主弁体224が開弁方向に動作し、上流側圧力P1が低下する方向に変化する。逆に、上流側圧力P1が設定差圧Psetよりも小さくなると、ベローズ251が密閉空間S1を拡大させる方向に変形する。その結果、パイロット弁体244が閉弁方向に動作し、パイロット弁206の開度を縮小する。その結果、中間圧力Ppが低下するため、主弁体224が閉弁方向に動作し、上流側圧力P1が上昇する方向に変化する。このようにして、上流側圧力P1が設定圧力Psetに維持される。
【0082】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態に係る車両用冷暖房装置は、第2制御弁の構造が若干異なる点を除き、第2実施形態と同様である。このため、第2実施形態とほぼ同様の構成部分については同一の符号を付す等して適宜その説明を省略する。図8は、第3実施形態に係る第2制御弁の具体的構成を表す断面図である。
【0083】
第2制御弁36は、弁本体301とソレノイド202とを組み付けて構成され、その上流側圧力が供給電流値に応じた設定圧力となるよう流体の流れを制御可能なパイロット作動式の制御弁として構成されている。
【0084】
弁本体301は、その主弁体323の下端部に感温部が設けられている点で、第2実施形態の弁本体201とは異なる。すなわち、主弁体323の下端部からは円筒状の隔壁325が下方に延びるように設けられ、その隔壁325の内部空間により副弁室327が形成されている。隔壁325の下端開口部にはばね受け部材331が圧入されている。パイロット弁体344の下端部には円板状のばね受け部材346が接離可能に配設されており、主弁体323の底部とばね受け部材346との間にスプリング356(感温ばね)が介装され、ばね受け部材346とばね受け部材331との間にスプリング358が介装されている。また、パイロット弁体344とばね受け部材346との間には、パイロット弁体344を閉弁方向に付勢するスプリング359が介装されている。
【0085】
スプリング356は、いわゆる形状記憶合金からなり、副弁室327の温度(つまり、上流側通路の冷媒温度)を感知してそのばね荷重が変化する。すなわち、スプリング356は、その上流側温度が高くなるほどばね剛性(ばね荷重)が大きくなり、上流側温度が低くなるほどばね剛性(ばね荷重)が小さくなるように変化するものである。なお、このような形状記憶合金ばねそのものは公知であるため、その詳細な説明については省略する。なお、変形例においては、スプリング356として形状記憶合金ばねに代わり、バイメタル等の感温素子を用いることもできる。
【0086】
図9は、第2制御弁の動作状態を表す説明図である。図9は、ソレノイド202がオンにされた制御状態を表している。なお、既に説明した図8は、ソレノイド202がオフにされた状態を表している。
【0087】
図8に示すように、第2制御弁36は、ソレノイド202がオフにされた状態では定圧制御は行わず、閉弁状態を維持する。すなわち、第2制御弁36においてソレノイド力が作用しないため、スプリング359によってパイロット弁体344が閉弁方向に付勢され、パイロット弁306が閉弁状態となる。このため、中間圧力Ppが低下し、主弁体323が閉弁方向に付勢され、主弁305も閉弁状態となる。
【0088】
一方、図9に示すように、ソレノイド202がオンにされると、第2プランジャ272が第1プランジャ271に吸引されるため、シャフト260を介してパイロット弁体344が開弁方向に付勢され、パイロット弁306が開弁する。このとき、パイロット弁体344は、図示のようにばね受け部材346に当接して一体動作する。そして、第2制御弁36は、その上流側圧力P1が供給電流値に応じた設定圧力Psetとなるよう動作する定圧弁として機能する。ただし、本実施形態では、スプリング356が圧力室216の冷媒の温度(上流側温度T1)を感知してそのばね荷重を変化させることにより、結果的に上流側圧力P1が設定圧力Psetとなるようパイロット弁体344が動作する。
【0089】
すなわち、上流側圧力P1が設定差圧Psetとなった定圧制御状態において、圧力室216の冷媒は飽和状態にあり、上流側圧力P1が設定差圧Psetよりも大きくなると、上流側温度T1もこれに対応するように上昇する。その結果、スプリング356のばね荷重(ばね剛性)が大きくなる。このため、パイロット弁体344に負荷される開弁方向の付勢力が相対的に大きくなる。その結果、パイロット弁体344が開弁方向に動作し、パイロット弁306の開度を拡大する。その結果、中間圧力Ppが上昇するため、主弁体323が開弁方向に動作し、上流側圧力P1が低下する方向に変化する。
【0090】
逆に、上流側圧力P1が設定差圧Psetよりも小さくなると、上流側温度T1もこれにほぼ比例して低下する。その結果、スプリング356のばね荷重(ばね剛性)が小さくなる。このため、パイロット弁体344に負荷される閉弁方向の付勢力が相対的に大きくなる。その結果、パイロット弁体344が閉弁方向に動作し、パイロット弁306の開度を縮小する。その結果、中間圧力Ppが低下するため、主弁体323が閉弁方向に動作し、上流側圧力P1が上昇する方向に変化する。このようにして、上流側圧力P1が設定圧力Psetに維持される。
【0091】
なお、本実施形態では、スプリング356を感温素子としての形状記憶合金にて構成する例を示したが、変形例においては、スプリング358についても形状記憶合金等の感温素子にて構成してもよい。また、スプリング356および358の少なくとも一方を形状記憶合金やバイメタル等の感温素子にて構成し、同様の機能を実現できるようにしてもよい。
【0092】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態について説明する。本実施形態に係る車両用冷暖房装置は、第2制御弁およびその周辺構造を除き、第1実施形態と同様である。このため、第1実施形態と同様の構成部分についてはその説明を省略する。図10は、第4実施形態に係る第2制御弁の具体的構成を表す断面図である。
【0093】
第2制御弁46は、弁本体401とソレノイド402とを組み付けて構成され、その上流側圧力が供給電流値に応じた設定圧力となるよう流体の流れを制御可能なパイロット作動式の制御弁として構成されている。第2制御弁46は、第1実施形態の第2制御弁6と差圧オリフィス20とを組み合わせた機能を有する。すなわち、本実施形態においても差圧オリフィス460が設けられているが、その差圧オリフィス460は第2制御弁46に並設されてはおらず、第2制御弁46の一部として組み込まれている。
【0094】
弁本体401は、ボディ403に主弁405とパイロット弁406とを同軸状に収容して構成される。ボディ403の内部中央には有底段付円筒状の区画部材410が圧入されている。ボディ403と区画部材410との間には、シール用のOリング412が介装されている。区画部材410は、ボディ403内を圧力室116と圧力室118とに区画している。区画部材410の底面に設けられた環状開口部の内周部により主弁孔120が形成され、その下流側開口縁により主弁座122が形成されている。主弁体424は、圧力室116と圧力室118とを跨ぐように配設されている。主弁体424の下端部には、弾性体(本実施形態ではゴム)からなる環状の弁部材425が嵌着されており、その弁部材425が下流側から主弁座122に着脱することにより主弁405を開閉する。
【0095】
一方、主弁体424の上端部にはフランジ部426が設けられ、ボディ403の内周面に摺動可能に支持されている。ボディ403の上端部には、有底円筒状の区画部材430が圧入されている。区画部材430の下端部は、区画部材410の上端部に内挿されるように圧入されている。区画部材430と区画部材410との間には、シール用のOリング432が介装されている。主弁体424は、区画部材430との間に背圧室132を形成する。区画部材430の底部中央には、内外を連通させる副弁孔140が設けられ、その上流側開口縁により副弁座142が形成されている。
【0096】
パイロット弁体444は、ソレノイド402に連結され、電磁的に駆動される。区画部材430とソレノイド402との間には副弁室438が形成され、パイロット弁体444は、その副弁室438側から副弁座142に着脱する。区画部材430の側部には、内外を連通させる連通孔434が設けられ、区画部材410の外周面の一部には、軸線に平行な連通溝436が形成されている。そして、連通孔434、連通溝436およびボディ403の内周面により、入口ポート110と副弁室438とを連通させる連通路440が形成されている。このため、副弁室438およびソレノイド402の内部には、上流側圧力P1が導入されるようになる。
【0097】
主弁体424は、背圧室132と圧力室118とを個別に連通させるように、第1連通路451と第2連通路452とが並設されている。第1連通路451および第2連通路452は、それぞれ主弁体424の軸線に平行に形成されている。第1連通路451の中間部が縮径されてオリフィス454を形成しており、背圧室132の中間圧力Ppの冷媒は、オリフィス454を経ることで減圧され、下流側圧力P2となって導出される。一方、第2連通路452には、差圧オリフィス460が設けられている。差圧オリフィス460の開弁により、主弁405およびパイロット弁406が閉弁状態にあっても所定流量の冷媒の流れが許容される。
【0098】
第2連通路452における背圧室132との接続部には弁座形成部材462が嵌合されている。弁座形成部材462は、弾性材(ゴム等)からなり、その第2連通路452側の面にはテーパ状の弁座455が突設されている。一方、主弁体424の側部には、内外を連通させる連通孔453が設けられている。このような構成により、第2連通路452による背圧室132と圧力室118との連通状態が事実上遮断される一方、高圧室130と圧力室118とが第2連通路452を介して連通している。
【0099】
差圧オリフィス460は、その前後差圧が所定値以上になると開弁する差圧弁(逆止弁)として機能するとともに、その開弁時の冷媒流量を制限するオリフィスとしても機能する。すなわち、差圧オリフィス460は、弁体部464とオリフィス部465とが一体に形成された段付円筒状の弁体463を有する。そして、弁体部464が弁座455に着脱することにより第2連通路452を開閉する。
【0100】
オリフィス部465は、その長手方向中央部に外径がやや拡径されたガイド部466を有し、そのガイド部466にて主弁体424に支持されている。オリフィス部465の下半部は、主弁体424の下端部を貫通して下方に延びている。オリフィス部465を弁体463の軸線に沿って貫通するようにオリフィス通路457が設けられ、その上端が第2連通路452にて開口し、下端が圧力室118にて開口している。すなわち、オリフィス通路457は、弁体463の開閉方向に延びるように形成されている。
【0101】
主弁体424において第2連通路452を構成する部分は、その内径が下方に向けて段階的に縮径され、その下端部がガイド部466を下方から係止する係止部467となっている。また、係止部467の上部にガイド孔468が設けられ、ガイド部466を摺動可能に支持している。弁体部464と主弁体424との間には、弁体463を閉弁方向に付勢するスプリング469が介装されている。
【0102】
以上のような構成において、上流側圧力P1は、連通路440を通って副弁室438に導入された後、パイロット弁406を経ることで背圧室132にて中間圧力Ppとなる一方、主弁405または差圧オリフィス460を経て減圧されて下流側圧力P2となる。中間圧力Ppは、パイロット弁406の開閉状態によって変化する。
【0103】
一方、ソレノイド402は、ボディ403の上端開口部を封止するように取り付けられている。ソレノイド402とボディ403との間には、シールリング439が介装されている。ソレノイド402は、円筒状のスリーブ470と、スリーブ470の上半部に固定された円筒状のコア472(「固定鉄芯」として機能する)と、スリーブ470内でコア472と軸線方向に対向配置されたプランジャ471(「可動鉄芯」として機能する)とを有する。スリーブ470の外周部にはボビン473が設けられ、そのボビン473に電磁コイル474が巻回されている。そして、電磁コイル474を外部から覆うように金属製のケース475が設けられ、ケース475の内部構造体は、樹脂モールドにて形成されたボディ476により外部から覆われて保護されている。ボディ476には、ケース475とともに磁気回路を構成する磁性部材からなるカラー477が埋設されている。ボディ476の一部は、電磁コイル474につながる端子279の一端を露出させるコネクタ部としても機能する。
【0104】
プランジャ471は、円筒状をなし、シャフト447の下半部を内挿するように圧入している。シャフト447の上半部は、コア472を貫通し、その上端部が後述するパワーエレメント480に接続されている。シャフト447の下端部にパイロット弁体444が一体に形成されている。プランジャ471とコア472との間には、プランジャ471を介してパイロット弁体444を閉弁方向に付勢するスプリング478が介装されている。
【0105】
コア472の上端部には、ソレノイド402を上方から封止するようにパワーエレメント480が取り付けられている。パワーエレメント480は、中空のハウジング482と、ハウジング482内を密閉空間S1と開放空間S2とに仕切るように配設されたダイアフラム484(「感圧部材」に該当する)とを含んで構成されている。ハウジング482は、ともにステンレスからなる有蓋状のアッパーハウジング486および段付円筒状のロアハウジング488からなり、これらの開口部を突き合わせてその外縁部にステンレス等の金属薄板からなるダイアフラム484の外縁部を挟むようにして組み付けられる。
【0106】
ハウジング482は、アッパーハウジング486とロアハウジング488との間にダイアフラム484を挟んだ状態でその接合部の外周に沿ってTIG溶接等が施されることにより、容器状に形成されている。密閉空間S1は感温室を構成し、アッパーハウジング486内に基準圧力を保持するための冷媒ガスなどが充填された後、その上面中央に設けられた孔をボール状の封体490にて封止することにより密閉されている。本実施形態では、冷凍サイクルを循環する冷媒と同種の冷媒が充填されている。封体490は、例えばステンレス等から構成される。
【0107】
ロアハウジング488の内周面には、コア472の先端部に形成された雄ネジ部に螺合する雌ネジ部が形成されている。そして、ロアハウジング488の下半部がコア472の上端部に螺合されることにより、パワーエレメント480がソレノイド402に固定されるように構成されている。開放空間S2は感圧室を構成し、副弁室438に導入された冷媒の一部がソレノイド402内の間隙を介して導入される。
【0108】
ダイアフラム484の下面中央には有底円筒状のディスク492が当接配置されている。シャフト447の先端面はロアハウジング488内に露出し、ディスク492は、ダイアフラム484とシャフト447との間に設けられている。ディスク492の開口端がロアハウジング488の底部に係止されるとにより、ダイアフラム484の下死点位置(閉弁方向への変位量)が規制される。
【0109】
図11は、第2制御弁の動作状態を表す説明図である。図11は、ソレノイド402がオンにされた制御状態を表している。なお、既に説明した図10は、ソレノイド402がオフにされた状態を表している。
【0110】
図10に示すように、ソレノイド402がオフの状態においては、第2制御弁46は、定圧制御は行わず、膨張装置としてのみ機能する。すなわち、ソレノイド力が作用しないため、スプリング478によってパイロット弁体444が閉弁方向に付勢され、パイロット弁406が閉弁状態となる。このため、背圧室132に高圧の冷媒が導入されないため、中間圧力Ppが低下して差圧(P1−Pp)が大きくなり、主弁体424が閉弁方向へ動作し、主弁405も閉弁状態となる。
【0111】
このとき、差圧オリフィス460においては、弁体463の前後差圧(P1−P2)が設定差圧(開弁差圧)よりも大きくなると、弁体463がスプリング469の付勢力に抗して開弁方向に動作する。その結果、差圧オリフィス460が開弁状態となる。その結果、上流側から入口ポート110を介して導入された冷媒は、オリフィス通路457を通過することにより減圧膨張され、出口ポート112を介して下流側へ導出される。このとき、弁体463が弁座455から離間するとともに、オリフィス通路457内に差圧が発生する。
【0112】
すなわち、弁体463が弁座455に着座した状態においては、オリフィス通路457の内部にはその全長にわたって下流側圧力P2が作用していたところ、弁体463が弁座455から離間を開始すると同時にオリフィス通路457の上流部に上流側圧力P1が作用するようになる。オリフィス通路457の圧力損失もあることから、その上流端から下流端に向けて圧力勾配が形成され、オリフィス通路457の内部を通過する冷媒により弁体463に開弁方向の流体摩擦が作用するようになる。この結果、弁体463の開弁開始と同時にその開弁が促進され、弁体463が速やかに図示のような全開状態に落ち着くことができる。その結果、弁体463が微小開度に留まることを防止でき、オリフィスとしての機能(オリフィスに設定された特性)を良好に発揮することができる。
【0113】
一方、ソレノイド402がオンにされると、第2制御弁46は、その上流側圧力P1が外部温度と供給電流値に応じた設定圧力となるよう動作する定圧弁として機能するとともに、膨張装置としても機能する。すなわち、ソレノイド力によってプランジャ471とコア472との間に吸引力が作用するため、パイロット弁体444が開弁方向に付勢され、パイロット弁406が開弁状態となる。それにより、中間圧力Ppが上昇するため、主弁体424が中間圧力Ppと下流側圧力P2との差圧(Pp−P2)の影響を受けて開弁する。
【0114】
このとき、上流側から入口ポート110を介して導入された冷媒は、開弁された主弁405を介して減圧膨張され、出口ポート112を介して下流側へ導出される。また、入口ポート110を介して導入された冷媒の一部は、パイロット弁406を介して背圧室132に導入され、オリフィス454を経ることで減圧膨張されて圧力室118に導出され、出口ポート112を介して下流側へ導出される。
【0115】
この定圧制御状態において、上流側圧力P1が設定差圧Psetよりも大きくなると、ダイアフラム484が密閉空間S1を縮小させる方向(パイロット弁体444の開弁方向)に変位するため、パイロット弁406の開度が大きくなる。その結果、中間圧力Ppが上昇するため、主弁体424が開弁方向に動作し、上流側圧力P1が低下する方向に変化する。逆に、上流側圧力P1が設定差圧Psetよりも小さくなると、ダイアフラム484が密閉空間S1を拡大させる方向(パイロット弁体444の閉弁方向)に変位する。その結果、中間圧力Ppが低下するため、主弁体424が閉弁方向に動作し、上流側圧力P1が上昇する方向に変化する。その結果、上流側圧力P1が設定圧力Psetに維持される。
【0116】
なお、この設定圧力Psetは、外部温度によって変化する。すなわち、外部温度が高くなると、密閉空間S1の圧力が冷媒温度に相当する飽和圧力となるよう上昇するため、パイロット弁406を閉弁させる方向の付勢力が大きくなる。つまり、供給電流値が同じであっても、外部温度が高いほど、上流側圧力P1の設定圧力は高くなる。
【0117】
また、第2制御弁46が閉弁された状態で切替弁11が開弁されると、差圧オリフィス460の前後差圧(P1−P2)が実質的にゼロに近づく。このため、主弁405、パイロット弁406および差圧オリフィス460の全てを閉弁状態とすることができる。その結果、冷媒は蒸発器7を通過せずに迂回する。それにより、一時的に蒸発器7に低温・低圧の冷媒が供給されなくなるため、蒸発器7の温度が極低温となって凍結するのが防止される。
【0118】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はその特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で種々の変形が可能であることはいうまでもない。
【0119】
上記実施形態では、本発明の車両用冷暖房装置を電気自動車に適用した例を示したが、内燃機関を搭載した自動車や、内燃機関と電動機を同載したハイブリッド式の自動車に提供することが可能であることは言うまでもない。上記実施形態では、圧縮機2として電動圧縮機を採用した例を示したが、エンジンの回転を利用して容量可変を行う可変容量圧縮機を採用することもできる。
【符号の説明】
【0120】
1 車両用冷暖房装置、 2 圧縮機、 3 室内凝縮器、 4 第1制御弁、 5 室外熱交換器、 6 第2制御弁、 7 蒸発器、 8 アキュムレータ、 9 バイパス通路、 11 切替弁、 13 バイパス通路、 18 オリフィス、 20 差圧オリフィス、 26,36,46 第2制御弁、 100 制御部、 101 弁本体、 102 ソレノイド、 103 ボディ、 105 主弁、 106 パイロット弁、 110 入口ポート、 112 出口ポート、 120 主弁孔、 122 主弁座、 124 主弁体、 130 高圧室、 132 背圧室、 138 リーク通路、 140 副弁孔、 142 副弁座、 144 パイロット弁体、 148 ダイヤフラム、 151 反力伝達部材、 171 第1プランジャ、 172 第2プランジャ、 201 弁本体、 202 ソレノイド、 203 ボディ、 205 主弁、 206 パイロット弁、 224 主弁体、 230 低圧室、 240 副弁孔、 242 副弁座、 244 パイロット弁体、 250 パワーエレメント、 251 ベローズ、 252 ケース、 262 パイロット通路、 271 第1プランジャ、 272 第2プランジャ、 301 弁本体、 305 主弁、 306 パイロット弁、 322 ボディ、 323 主弁体、 333 弁孔、 335 弁座、 336 高圧室、 338 中間圧力室、 340 低圧室、 342 弁部材、 344 パイロット弁体、 363 弁体、 365 オリフィス部、 366 オリフィス通路、 401 弁本体、 402 ソレノイド、 403 ボディ、 405 主弁、 406 パイロット弁、 424 主弁体、 425 弁部材、 444 パイロット弁体、 455 弁座、 457 オリフィス通路、 460 差圧オリフィス、 462 弁座形成部材、 463 弁体、 464 弁体部、 465 オリフィス部、 471 プランジャ、 472 コア、 480 パワーエレメント、 484 ダイアフラム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流側から下流側への冷媒の流れを制御可能なパイロット作動式の制御弁において、
上流側通路と下流側通路とを直接つなぐ主通路を、主弁孔に接離して開閉する主弁体を有し、その主弁体が、前記上流側通路と前記下流側通路と背圧室とを区画するように設けられる主弁と、
前記上流側通路と前記下流側通路とを前記背圧室を介してつなぐ副通路の開度を、副弁孔に接離して調整可能な電磁駆動のパイロット弁体を有し、そのパイロット弁体が、前記主弁の開弁時には前記主弁の上流側の圧力を供給電流値に応じた設定圧力に近づけるよう動作するパイロット弁と、
を備えることを特徴とする制御弁。
【請求項2】
前記主弁孔の上流側の温度を感知し、その温度に応じて前記パイロット弁体に負荷される前記パイロット弁の開閉方向の荷重を変化させる感温部をさらに備え、
前記パイロット弁は、前記主弁の開弁時には前記主弁の上流側の温度が供給電流値に応じた温度に近づくように動作することを特徴とする請求項1に記載の制御弁。
【請求項3】
外部の温度を感知し、その温度に応じて前記パイロット弁体に負荷される前記パイロット弁の開閉方向の荷重を変化させる感温部をさらに備え、
前記感温部は、前記外部の温度に応じて前記設定圧力を変化させることを特徴とする請求項1に記載の制御弁。
【請求項4】
冷媒を圧縮して吐出する圧縮機と、
車室外に配置され、冷房運転時に冷媒を放熱させる室外凝縮器として機能する一方、暖房運転時には冷媒を蒸発させる室外蒸発器として機能する室外熱交換器と、
車室内に配置されて冷媒を蒸発させる室内蒸発器と、
前記室内蒸発器が機能するとともに前記室外熱交換器が室外蒸発器として機能するときに前記室外熱交換器の下流側となる位置に設けられ、上流側から下流側への冷媒の流れを制御する電動の制御弁と、
前記制御弁への供給電流を制御して前記制御弁の上流側の圧力を調整する制御部と、
を備える車両用冷暖房装置であって、
前記制御弁は、
上流側通路と下流側通路とを直接つなぐ主通路を、主弁孔に接離して開閉する主弁体を有し、その主弁体が、前記上流側通路と前記下流側通路と背圧室とを区画するように設けられる主弁と、
前記上流側通路と前記下流側通路とを前記背圧室を介してつなぐ副通路の開度を、副弁孔に接離して調整可能な電磁駆動のパイロット弁体を有し、そのパイロット弁体が、前記主弁の開弁時には前記主弁の上流側の圧力を供給電流値に応じた設定圧力に近づけるよう動作するパイロット弁と、
を備えることを特徴とする車両用冷暖房装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−235722(P2011−235722A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−107991(P2010−107991)
【出願日】平成22年5月10日(2010.5.10)
【出願人】(000133652)株式会社テージーケー (280)
【Fターム(参考)】