説明

制御弁

【課題】 スプールがノーマル位置にあるとき信号圧通路の圧力を確実に抜くとともに、部品点数を少なくする。
【解決手段】 スプール12の両端に連通溝20,21を形成し、これら連通溝20,21はスプールが図示のノーマル位置にあるとき、パイロット室14,15にそれぞれ連通する。そして、スプール12が例えば図面右方向に移動したとき、一方の連通溝20と信号圧通路18とが連通状態を保って、他方の連通溝21が信号圧通路19から離隔する。反対にスプール12が図面左方向に移動すると、他方の連通溝21と信号圧通路19とが連通状態を保って、一方の連通溝20が信号圧通路18から離隔する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、パイロット圧の作用で切り換わるとともに、そのパイロット圧を他の機器に導く構成にした制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のものとして図3に示す制御弁が従来から知られている。
この従来の制御弁は、その弁本体1にスプール2を摺動自在に組み込むとともに、このスプール2にはセンタリングスプリング3のばね力を作用させている。このようにしたスプール2の両端はパイロット室4,5に臨ませ、いずれか一方のパイロット室4あるいは5に導かれたパイロット圧の作用でスプール2が切り換わり、弁本体1に形成した一対のアクチュエータポート6,7のうち、いずれか一方のアクチュエータポートを図示していないポンプに連通させ、他方のアクチュエータポートを図示していないタンクに連通させる構成にしている。
【0003】
上記のようにした弁本体1には、パイロット室4あるいは5のパイロット圧を、図示していない他の機器の信号圧として導く信号圧通路8を形成しているが、この信号圧通路8は、一方のパイロット室4に対してチェック弁9を介して連通している。このチェック弁9は、一方のパイロット室4から信号圧通路8への流通のみを許容する構成にしている。
【0004】
また、他方のパイロット室5は、スプール2に形成した連通孔10およびこの連通孔10に設けたチェック弁11を介して信号圧通路8に連通させているが、このチェック弁11は他方のパイロット室5から信号圧通路8への流通のみを許容するものである。
【0005】
上記のようにした制御弁は、例えば、一方のパイロット室4にパイロット圧が導かれると、スプール2がセンタリングスプリング3のばね力に抗して図面右方向に移動し、他方のアクチュエータポート7を上記ポンプに連通し、一方のアクチュエータポート6を上記タンクに連通させる。
このとき、一方のパイロット室4に導かれたパイロット圧は、チェック弁9を押し開いて信号圧通路8に導かれ、この通路8から他の機器に伝達されて、この制御弁に接続した図示していないアクチュエータと、他の機器とを同期させるようにしている。
【0006】
また、他方のパイロット室5にパイロット圧が導かれると、スプール2がセンタリングスプリング3のばね力に抗して図面左方向に移動し、一方のアクチュエータポート6を上記ポンプに連通し、他方のアクチュエータポート7を上記タンクに連通させる。
このとき、他方のパイロット室5に導かれたパイロット圧は、連通孔10からチェック弁11を押し開いて信号圧通路8に導かれ、この通路8から他の機器に伝達される。
【0007】
なお、上記チェック弁9,11がないと、両パイロット室4、5が信号圧通路8を介して連通してしまう。しかし、いずれか一方のパイロット室にパイロット圧を導くときには、いずれか他方のパイロット室はタンクに連通させるので、上記のように両パイロット室4,5が信号圧通路8を介して連通してしまうと、いずれのパイロット室にもパイロット圧が立たなくなってしまう。そこで、上記のようにチェック弁9,11を設けたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−013753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のようにした従来の制御弁では、いったん切り換えられたスプール2をノーマル位置に復帰させるために、当該パイロット室4あるいは5をタンク圧に保ったとしても、信号圧通路8には2つのチェック弁9,11があるために、この信号圧通路8の圧力が抜ききらないことがあった。そのために、当該制御弁に接続したアクチュエータと同期させた他の機器が誤動作するという問題があった。
しかも、上記従来の制御弁の場合には、パイロット室同士の連通を遮断するために2つのチェック弁を必要とするので、その分、部品点数が多くなるという問題もあった。
【0010】
この発明の目的は、スプールをノーマル位置に復帰させたとき、信号圧通路の圧力が確実に抜けるようにするとともに、部品点数も少なくできる制御弁を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、弁本体に、スプールを摺動自在に設けるとともに、このスプールの両端をパイロット室に臨ませ、これらいずれか一方のパイロット室に導かれたパイロット圧の作用で上記スプールが切り換わる一方、上記パイロット室のパイロット圧を他の機器の信号圧として導く信号圧通路を設けた制御弁に関する。
【0012】
そして、第1の発明は、上記スプールに一対の連通溝を形成し、これら一対の連通溝は、スプールがノーマル位置にあるとき上記パイロット室と上記信号圧通路とを連通させる。また、一方の連通溝は、スプールが一方に移動したとき信号圧通路との連通状態を保って一方のパイロット室と信号圧通路とを連通させ、スプールが他方に移動したとき信号圧通路と離隔して一方のパイロット室と信号圧通路との連通を遮断する一方、他方の連通溝は、スプールが他方に移動したとき信号圧通路との連通状態を保って他方のパイロット室と信号圧通路とを連通させ、スプールが一方に移動したとき信号圧通路と離隔して他方のパイロット室と信号圧通路との連通を遮断する構成にしている。
【0013】
第2の発明は、上記スプールの両端それぞれに上記連通溝を形成し、弁本体にはこれら連通溝に対応させた信号圧通路を形成するとともに、両信号圧通路を下流側において合流させている。
【0014】
第3の発明は、上記スプールの一端に一方の連通溝を形成し、他方の連通溝を一つの信号圧通路を挟んで反対側に形成するとともに、スプールがノーマル位置にあるとき両連通溝が信号圧通路に連通する構成にし、スプールが一方に移動したとき一方の連通溝と信号圧通路と連通状態を保つとともに他方の連通溝が信号圧通路から離隔し、スプールが他方に移動したとき他方の連通溝と信号圧通路との連通状態を保つとともに一方の連通溝が信号圧通路から離隔する構成にする一方、一方の連通溝は一方のパイロット室に開口させ、他方の連通溝はスプールに形成した連通孔を介して他方のパイロット室に連通させている。
【発明の効果】
【0015】
第1の発明によれば、スプールがノーマル位置にあるとき、信号圧通路がパイロット室に連通するので、このときには、信号圧通路はパイロット室を介して必ずタンクに連通する。したがって、信号圧通路に圧力がこもって他の機器を誤動作せることはない。
しかも、スプールがパイロット室の圧力作用でいずれかに移動したときにも、この一方のパイロット室と信号圧通路とは上記連通溝を介して連通し、他方のパイロット室と信号圧通路との連通が遮断されるので、他の機器には信号圧通路を介して確実に信号圧が伝達される。
【0016】
さらに、上記のようにスプールを移動させたときに、両パイロット室が連通しない構成を保つことができるので、従来のようにチェック弁を必要とせず、部品点数を少なくできる。
【0017】
第2の発明によれば、スプールに例えば連通孔を形成する等の特別な加工を施さなくてもよいので、その分、製造コストを低減できる。
第3の発明によれば、連通溝を形成するためにスプールをわざわざ長くしなくてもよいので、全体を小型化できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1実施形態を示す断面図である。
【図2】第2実施形態を示す断面図である。
【図3】従来の制御弁の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1に示した実施形態は、その弁本体Hにスプール12を摺動自在に組み込むとともに、このスプール12にはセンタリングスプリング13のばね力を作用させている。このようにしたスプール12の両端はパイロット室14,15に臨ませ、いずれか一方のパイロット室14あるいは15に導かれたパイロット圧の作用でスプール12が切り換わり、弁本体Hに形成した一対のアクチュエータポート16,17のうち、いずれか一方のアクチュエータポートを図示していないポンプに連通させ、他方のアクチュエータポートを図示していないタンクに連通させる構成にしている。
【0020】
さらに、上記弁本体Hであってスプールの両端にほぼ対応する箇所のそれぞれに信号圧通路18,19を形成し、これら信号圧通路18,19をその下流側において合流させて、パイロット室14あるいは15のパイロット圧を、図示していない他の機器の信号圧として導くようにしている。
【0021】
そして、上記スプール12の両端のそれぞれには連通溝20,21を形成しているが、これら連通溝20,21は、スプール12が図示のノーマル位置にあるとき、上記信号圧通路18,19の外側に位置し、パイロット室14,15をこの連通溝20,12を介して信号圧通路18,19に連通させる。
【0022】
また、スプール12が一方のパイロット室14の圧力作用で図面右方向に移動したときには、連通溝20と信号圧通路18とが連通状態を保ち、この一方のパイロット室14と信号圧通路18とを連通溝20を介して連通させる。しかし、他方の連通溝21は上記スプール12の右方向の移動にともなって信号圧通路19から離隔し、他方のパイロット室15と信号圧通路19との連通を遮断する。
【0023】
さらに、スプール12が他方のパイロット室15の圧力作用で図面左方向に移動したときには、連通溝21が信号圧通路19との連通状態を保ち、この他方のパイロット室15と信号圧通路19とを連通溝21を介して連通させる。しかし、一方の連通溝20は上記スプール12の左方向の移動にともなって信号圧通路18から離隔し、一方のパイロット室14と信号圧通路18との連通を遮断する。
【0024】
次に上記第1実施形態の作用を説明する。
一方のパイロット室14にパイロット圧を導くと、そのパイロット圧の作用でスプール12が図面右方向に移動して、他方のアクチュエータポート17を図示していないポンプに連通し、一方のアクチュエータポート16を図示していないタンクに連通する。
そして、このときには連通溝20と信号圧通路18とが連通状態を保っているので、パイロット室14の圧力は連通溝20を介して信号圧通路18に導かれる。しかし、他方の連通溝21は上記スプール12の右方向の移動にともなって信号圧通路19から離隔するので、一方のパイロット室14の圧力が、他方のパイロット室15からタンクに抜けてしまうことはない。
【0025】
上記のようにスプール12が図面右方向に移動した後、それが図示のノーマル位置に復帰したときには、両パイロット室14,15が連通溝20,21を介して信号圧通路18,19に連通するので、信号圧通路18,19の圧力は、この連通溝20,21を介してパイロット室14,15からタンクに抜けることになる。
したがって、信号圧通路18,19に圧力がこもったりせず、この信号圧通路18,19に接続した他の機器を誤動作させることもない。
【0026】
また、他方のパイロット室15にパイロット圧を導くと、そのパイロット圧の作用でスプール12が図面左方向に移動して、一方のアクチュエータポート16を上記ポンプに連通し、他方のアクチュエータポート17を上記タンクに連通する。
そして、このときには連通溝21が信号圧通路19との連通状態を保っているので、パイロット室15の圧力は連通溝21を介して信号圧通路19に導かれる。しかし、連通溝20は上記スプール12の左方向の移動にともなって信号圧通路18から離隔するので、他方のパイロット室15の圧力が、一方のパイロット室14からタンクに抜けてしまうことはない。
【0027】
上記のようにスプール12が図面左方向に移動した後、それが図示のノーマル位置に復帰したときには、両パイロット室14,15が連通溝20,21を介して信号圧通路18,19に連通するので、信号圧通路18,19の圧力は、この連通溝20,21を介してパイロット室14,15からタンクに抜けることになる。
したがって、信号圧通路18,19に圧力がこもったりせず、この信号圧通路18,19に接続した他の機器を誤動作させることもない。
【0028】
図2に示した第2実施形態は、第1実施形態と同様のスプール12の一端に一方の連通溝22を形成し、他方の連通溝23を一つの信号圧通路24を挟んで反対側に形成しているとともに、スプール12が図示のノーマル位置にあるとき両連通溝22,23が信号圧通路24に連通する構成にしている。
【0029】
そして、スプール12が一方のパイロット室14の圧力作用で図面右方向に移動したとき、一方の連通溝22と信号圧通路24とが連通状態を保つとともに、他方の連通溝23が信号圧通路24から離隔する。
さらに、スプール12が他方のパイロット室15の圧力作用で図面左方向に移動したとき、他方の連通溝23が信号圧通路24との連通状態を保つとともに、一方の連通溝22が信号圧通路24から離隔する。
【0030】
このようにした一方の連通溝22は一方のパイロット室14に開口してこのパイロット室14に常時連通し、他方の連通溝23はスプール12に形成した連通孔25を介して他方のパイロット室15に常時連通させている。
なお、一つの信号圧通路24を挟んでその両側に連通溝22,23を設け、連通溝23をスプール12に形成した連通孔25を介して他方のパイロット室15に連通させた構成以外は第1実施形態と同じである。
【0031】
次に、上記第2実施形態の作用を説明する。
一方のパイロット室14にパイロット圧を導くと、そのパイロット圧の作用でスプール12が図面右方向に移動して、他方のアクチュエータポート17を図示していないポンプに連通し、一方のアクチュエータポート16を図示していないタンクに連通する。
【0032】
そして、このときには連通溝22が信号圧通路24との連通状態を保っているので、パイロット室14の圧力は連通溝22を介して信号圧通路24に導かれる。しかし、他方の連通溝23は上記スプール12の右方向の移動にともなって信号圧通路24から離隔するので、一方のパイロット室14の圧力が、他方のパイロット室15からタンクに抜けてしまうことはない。
【0033】
上記のようにスプール12が図面右方向に移動した後、それが図示のノーマル位置に復帰したときには、両パイロット室14,15が連通溝22,23を介して信号圧通路24に連通するので、信号圧通路24の圧力は、この連通溝22,23を介してパイロット室14,15からタンクに抜けることになる。
したがって、信号圧通路24に圧力がこもったりせず、この信号圧通路24に接続した他の機器を誤動作させることもない。
【0034】
また、他方のパイロット室15にパイロット圧を導くと、そのパイロット圧の作用でスプール12が図面左方向に移動して、一方のアクチュエータポート16を上記ポンプに連通し、他方のアクチュエータポート17を上記タンクに連通する。
【0035】
そして、このときには連通溝23が信号圧通路24と連通状態を保っているので、パイロット室15の圧力は連通孔25および連通溝23を介して信号圧通路24に導かれる。しかし、連通溝22は上記スプール12の左方向の移動にともなって信号圧通路24から離隔するので、他方のパイロット室15の圧力が、一方のパイロット室14からタンクに抜けてしまうことはない。
【0036】
上記のようにスプール12が図面左方向に移動した後、それが図示のノーマル位置に復帰したときには、両パイロット室14,15が連通溝22,23を介して信号圧通路24に連通するので、信号圧通路24の圧力は、この連通溝22,23を介してパイロット室14,15からタンクに抜けることになる。
したがって、信号圧通路24に圧力がこもったりせず、この信号圧通路24に接続した他の機器を誤動作させることもない。
【産業上の利用可能性】
【0037】
パイロット圧で切り換わる方向切換弁に接続したアクチュエータと、他の機器とを同期させる制御装置に最適である。
【符号の説明】
【0038】
H 弁本体
12 スプール
14,15 パイロット室
18,19 信号圧通路
20,21 連通溝
22,23 連通溝
24 信号圧通路
25 連通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁本体に、スプールを摺動自在に設けるとともに、このスプールの両端をパイロット室に臨ませ、これらいずれか一方のパイロット室に導かれたパイロット圧の作用で上記スプールが切り換わる一方、上記パイロット室のパイロット圧を他の機器の信号圧として導く信号圧通路を設けた制御弁において、上記スプールには一対の連通溝を形成し、これら一対の連通溝は、スプールがノーマル位置にあるとき上記パイロット室と上記信号圧通路とを連通させる一方、一方の連通溝は、スプールが一方に移動したとき信号圧通路との連通状態を保って一方のパイロット室と信号圧通路とを連通させ、スプールが他方に移動したとき信号圧通路と離隔して一方のパイロット室と信号圧通路との連通を遮断する一方、他方の連通溝は、スプールが他方に移動したとき信号圧通路との連通状態を保って他方のパイロット室と信号圧通路とを連通させ、スプールが一方に移動したとき信号圧通路と離隔して他方のパイロット室と信号圧通路との連通を遮断する構成にした制御弁。
【請求項2】
上記スプールの両端それぞれに上記連通溝を形成し、弁本体にはこれら連通溝に対応させた信号圧通路を形成するとともに、両信号圧通路を下流側において合流させてなる請求項1記載の制御弁。
【請求項3】
上記スプールの一端に一方の連通溝を形成し、他方の連通溝を一つの信号圧通路を挟んで反対側に形成するとともに、スプールがノーマル位置にあるとき両連通溝が信号圧通路に連通する構成にし、スプールが一方に移動したとき一方の連通溝が信号圧通路と連通状態を保つとともに他方の連通溝が信号圧通路から離隔し、スプールが他方に移動したとき他方の連通溝と信号圧通路との連通状態を保つとともに一方の連通溝が信号圧通路から離隔する構成にする一方、一方の連通溝は一方のパイロット室に開口させ、他方の連通溝はスプールに形成した連通孔を介して他方のパイロット室に連通させた請求項1記載の制御弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−193788(P2012−193788A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−57662(P2011−57662)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】