説明

制御弁

【課題】作動流体が流れる複数の流体通路の切り替える制御弁に嵩むコストをトータル的に抑制する。
【解決手段】第1制御弁4は、比例弁34,37,38を収容する共用のボディと、比例弁34,37,38の開度を電気的に調整するための共用のモータユニット102と、モータユニット102により軸線方向に駆動される弁作動体134と、第1弁体153、第2弁体155、弁体138のそれぞれと弁作動体134とを一体変位可能に作動連結または相対変位可能に連結解除する作動切替機構と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は制御弁に関し、特に作動流体が流れる複数の流体通路の切り替えに好適な制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、内燃機関を搭載した車両においてはエンジンの燃焼効率が向上したこともあり、熱源として利用してきた冷却水が暖房に必要な温度にまで上昇し難くなっている。一方、内燃機関と電動機を併用したハイブリッド車両においては内燃機関の稼働率が低いため、そのような冷却水の利用がさらに難しい。電気自動車に至っては内燃機関による熱源そのものがない。このため、冷房のみならず暖房にも冷媒を用いたサイクル運転を行い、車室内を除湿暖房可能なヒートポンプ式の車両用冷暖房装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
このような車両用冷暖房装置は、圧縮機、室外熱交換器、蒸発器、室内熱交換器等を含む冷凍サイクルを有し、暖房運転時と冷房運転時とで室外熱交換器の機能が切り替えられる。暖房運転時においては室外熱交換器が蒸発器として機能する。その際、冷凍サイクルを冷媒が循環する過程で室内熱交換器が放熱し、その熱により車室内の空気が加熱される。一方、冷房運転時においては室外熱交換器が凝縮器として機能する。その際、室外熱交換器にて凝縮された冷媒が蒸発器にて蒸発し、その蒸発潜熱により車室内の空気が冷却される。その際、除湿も行われる。そして、このように暖房運転時と冷房運転時とで装置の機能を切り替えるために、冷凍サイクルには複数の冷媒循環通路が設けられ、各冷媒循環通路の冷媒の流れを切り替えるための種々の制御弁が設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−240266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このような車両用冷暖房装置において制御弁が数多く用いられると、当然にコストが嵩み、また設置スペース上の問題も生じる。このため、制御弁のトータルの数や部品コストをできる限り少なくするのが望ましい。一方、そのように制御弁の数やコストを抑えつつも、運転状態に応じた空調性能を良好に確保する必要がある。
【0006】
本発明の目的は、作動流体が流れる複数の流体通路の切り替える制御弁に嵩むコストをトータル的に抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の制御弁は、第1内部通路、第2内部通路および第3内部通路が形成され、第1内部通路の作動流体の流れを調整する第1弁と、第2内部通路の作動流体の流れを調整する第2弁と、第3内部通路の作動流体の流れを調整する第3弁とを収容する共用のボディと、第1弁、第2弁および第3弁の開度を電気的に調整するための共用のアクチュエータと、アクチュエータにより軸線方向に駆動される弁作動体と、第1内部通路に設けられた第1弁孔に接離して第1弁を開閉する第1弁体と、第2内部通路に設けられた第2弁孔に接離して第2弁を開閉する第2弁体と、第3内部通路に設けられた第3弁孔に接離して第3弁を開閉する第3弁体と、第1弁体、第2弁体および第3弁体のそれぞれと弁作動体とを一体変位可能に作動連結または相対変位可能に連結解除する作動切替機構と、を備える。
【0008】
この態様によると、第1内部通路、第2内部通路および第3内部通路の開度をそれぞれ調整するために第1弁、第2弁および第3弁が設けられるところ、それらの弁が共用のボディに収容されて共用のアクチュエータにより開閉駆動される制御弁(複合弁)として構成される。そして、第1弁、第2弁および第3弁と弁作動体との作動連結状態が適宜切り替えられることで、一つのアクチュエータによる3つの弁の駆動が可能とされている。それにより、弁の数に対してボディやアクチュエータの数を抑えることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、作動流体が流れる複数の流体通路の切り替える制御弁に嵩むコストをトータル的に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施形態に係る車両用冷暖房装置のシステム構成を表す図である。
【図2】車両用冷暖房装置の動作を表す説明図である。
【図3】車両用冷暖房装置の動作を表す説明図である。
【図4】第1制御弁の構成および動作を表す断面図である。
【図5】第1制御弁の構成および動作を表す断面図である。
【図6】第1制御弁の構成および動作を表す断面図である。
【図7】第1制御弁の構成および動作を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、実施形態に係る車両用冷暖房装置のシステム構成を表す図である。この車両用冷暖房装置は、電気自動車の冷暖房装置として具体化されたものである。
【0012】
車両用冷暖房装置100は、圧縮機2、補助凝縮器3、室外熱交換器5、蒸発器7およびアキュムレータ8を配管にて接続した冷凍サイクル(冷媒循環回路)を備える。車両用冷暖房装置100は、冷媒としての代替フロン(HFO−1234yf)が冷凍サイクル内を状態変化しながら循環する過程で、その冷媒の熱を利用して車室内の空調を行うヒートポンプ式の冷暖房装置として構成されている。
【0013】
圧縮機2、室外熱交換器5およびアキュムレータ8は、車室外(エンジンルーム)に設けられている。一方、車室内には空気の熱交換が行われるダクトが設けられ、そのダクトにおける空気の流れ方向上流側に蒸発器7が配設され、下流側に補助凝縮器3が配設されている。補助凝縮器3は、室内凝縮器として構成されている。
【0014】
車両用冷暖房装置100は、冷房運転時と暖房運転時とで複数の冷媒循環通路を切り替えるように運転される。この冷凍サイクルは、補助凝縮器3と室外熱交換器5とが凝縮器として直列又は並列に動作可能に構成され、また、蒸発器7と室外熱交換器5とが蒸発器として並列に動作可能に構成されている。この冷凍サイクルでは、冷房運転時に冷媒が循環する第1冷媒循環通路、暖房運転時に冷媒が循環する第2冷媒循環通路、除湿運転時に冷媒が循環する第3冷媒循環通路が形成される。
【0015】
第1冷媒循環通路は、圧縮機2→室外熱交換器5→蒸発器7→アキュムレータ8→圧縮機2のように冷媒が循環する通路である。第2冷媒循環通路は、圧縮機2→補助凝縮器3→室外熱交換器5→アキュムレータ8→圧縮機2のように冷媒が循環する通路である。第3冷媒循環通路は、圧縮機2→補助凝縮器3→蒸発器7→アキュムレータ8→圧縮機2のように冷媒が循環する通路である。室外熱交換器5を流れる冷媒の流れは、第1冷媒循環通路と第2冷媒循環通路とで逆方向となっている。
【0016】
具体的には、圧縮機2の吐出室につながる通路が分岐し、その一方である第1通路21が室外熱交換器5の一方の出入口につながり、他方である第2通路22が補助凝縮器3の入口につながっている。室外熱交換器5の他方の出入口は第3通路23を介して蒸発器7の入口に接続され、蒸発器7の出口は第4通路24(戻り通路)を介してアキュムレータ8の入口に接続されている。第1通路21、第3通路23および第4通路24により第1冷媒循環通路が形成される。
【0017】
補助凝縮器3の出口は第5通路25を介して第3通路23に接続されている。第1通路21は室外熱交換器5の近傍でバイパス通路26に分岐し、バイパス通路26はアキュムレータ8の入口に接続されている。さらに、第5通路25は中間部においてバイパス通路27に分岐し、バイパス通路27は第1通路21に接続されている。第2通路22、第5通路25、第3通路23およびバイパス通路26により第2冷媒循環通路が形成される。一方、第2通路22、第5通路25、第3通路23および第4通路24により第3冷媒循環通路が形成される。
【0018】
第1冷媒循環通路と第3冷媒循環通路とは、冷房運転時において補助凝縮器3と室外熱交換器5を圧縮機2に対して並列につなぐ並列循環通路を形成する。一方、冷房運転時においてバイパス通路27が開放されることにより、補助凝縮器3と室外熱交換器5を圧縮機2に対して直列につなぐ直列循環通路が形成されるようになるが、その詳細については後述する。
【0019】
第4通路24におけるバイパス通路26との合流点よりも下流側は、第1冷媒循環通路、第2冷媒循環通路および第3冷媒循環通路の共用の通路である第1共用通路41となっている。また、第3通路23における第5通路25との合流点よりも下流側は、第1冷媒循環通路と第3冷媒循環通路との共用の通路である第2共用通路42となっている。そして、第1共用通路41と第2共用通路42を部分的に挿通するように内部熱交換器10が配設されている。
【0020】
第1通路21と第2通路22との分岐点および第1通路21とバイパス通路27との合流点を含むように第1制御弁4が設けられている。第3通路23と第5通路25との合流点には第2制御弁6が設けられている。第4通路24とバイパス通路26との合流点には第3制御弁9が設けられている。さらに、第3通路23における内部熱交換器10の下流側には比例弁33が設けられている。
【0021】
圧縮機2は、ハウジング内にモータと圧縮機構を収容する電動圧縮機として構成され、図示しないバッテリからの供給電流により駆動され、モータの回転数に応じて冷媒の吐出容量が変化する。
【0022】
補助凝縮器3は、室外熱交換器5とは別に冷媒を放熱させる補助的な凝縮器として機能する。すなわち、圧縮機2から吐出された高温・高圧の冷媒が補助凝縮器3を通過する際に放熱する。車室内に導入された空気は、補助凝縮器3を通過する過程で温められる。すなわち、ダクトに取り込まれて蒸発器7にて冷却および除湿された空気のうち、図示しないエアミックスドアにて振り分けられた空気が補助凝縮器3を通過することにより適度に加熱される。補助凝縮器3を通過した空気と迂回した空気とが補助凝縮器3の下流側にて混合されて目標の温度に調整される。
【0023】
室外熱交換器5は、冷房運転時に内部を通過する冷媒を放熱させる室外凝縮器として機能する一方、暖房運転時には内部を通過する冷媒を蒸発させる室外蒸発器として機能する。室外熱交換器5が蒸発器として機能する際には、膨張装置(後述の比例弁52)の通過により低温・低圧となった冷媒が、室外熱交換器5を通過する際に蒸発する。
【0024】
蒸発器7は、車室内に配置され、内部を通過する冷媒を蒸発させる室内蒸発器として機能する。すなわち、膨張装置(後述の比例弁33)の通過により低温・低圧となった冷媒は、蒸発器7を通過する際に蒸発する。車室内に導入された空気は、その蒸発潜熱によって冷却され、除湿される。このとき冷却・除湿された空気は、補助凝縮器3の通過過程で加熱される。
【0025】
アキュムレータ8は、蒸発器から送出された冷媒を気液分離して溜めておく装置であり、液相部と気相部とを有する。このため、仮に蒸発器7から想定以上の液冷媒が導出されたとしても、その液冷媒を液相部に溜めおくことができ、気相部の冷媒を圧縮機2に導出することができる。
【0026】
第1制御弁4は、共用のボディに比例弁34,37,38を収容し、それらを1つのアクチュエータにて駆動する複合弁として構成されている。第1制御弁4のボディには、第1通路21を構成する第1内部通路と、第2通路22を構成する第2内部通路と、バイパス通路27を構成する第3内部通路が設けられている。比例弁34は「第1弁」として機能する大口径の弁であり、第1通路21の開度を調整する。比例弁37は「第2弁」として機能する大口径の弁であり、第2通路22の開度を調整する。比例弁38は「第3弁」として機能する大口径の弁であり、バイパス通路27の開度を調整する。本実施形態では、第1制御弁4として、ステッピングモータの駆動により各弁の開度を調整可能な電動弁が用いられるが、ソレノイドへの通電によって各弁の開度を調整可能な電磁弁を用いるようにしてもよい。第1制御弁4の具体的構成については後述する。
【0027】
第2制御弁6は、共用のボディに比例弁51と比例弁52を収容する複合弁として構成されている。比例弁51と比例弁52は共用のアクチュエータにて駆動される。比例弁51は「第4弁」として機能する大口径の弁であり、第5通路25を開閉する。比例弁52は大口径の第1弁と小口径の第2弁とを有する複合弁であり、第3通路23の開度を調整する。比例弁52は膨張装置としても機能する。本実施形態では、第2制御弁6として、ステッピングモータの駆動により各弁の開度を調整可能な電動弁が用いられるが、ソレノイドへの通電によって各弁の開度を調整可能な電磁弁を用いるようにしてもよい。
【0028】
比例弁33は、室外熱交換器5から第3通路23を介して導入された冷媒、または補助凝縮器3から第5通路25を介して導入された冷媒を絞り膨張させて下流側に導出する「膨張装置」としても機能する。本実施形態では、比例弁33として、ステッピングモータの駆動により各弁の開度を調整可能な電動弁が用いられるが、ソレノイドへの通電によって各弁の開度を調整可能な電磁弁を用いるようにしてもよい。なお、変形例においては、比例弁33に代えて、例えば蒸発器7の出口側の温度を感知してその出口側の過熱度が適正となるよう冷媒流量を調整する温度式膨張弁を設けてもよい。あるいは、オリフィスその他の膨張装置を設けてもよい。
【0029】
第3制御弁9は、共用のボディに比例弁35と比例弁36とを収容し、それらを1つのアクチュエータにて駆動する複合弁として構成されている。第3制御弁9のボディには、第4通路24を構成する第1内部通路とバイパス通路26を構成する第2内部通路が設けられている。比例弁35は大口径の弁であり、第2内部通路に設けられてその開度を調整する。比例弁36は大口径の弁であり、第1内部通路に設けられてその開度を調整する。本実施形態では、第3制御弁9として、ステッピングモータの駆動により各弁の開度を調整可能な電動弁が用いられるが、ソレノイドへの通電によって各弁の開度を調整可能な電磁弁を用いるようにしてもよい。
【0030】
内部熱交換器10は、第1共用通路41と第2共用通路42を部分的に挿通して両共用通路を流れる冷媒の熱交換をさせる。これにより、補助凝縮器3または室外熱交換器5から蒸発器7に向かって流れる冷媒が、アキュムレータ8から圧縮機2に向かって流れる冷媒によって冷却される一方、アキュムレータ8から圧縮機2に向かって流れる冷媒が、補助凝縮器3または室外熱交換器5から蒸発器7に向かって流れる冷媒によって加熱され、冷凍サイクルの熱交換率が高められる。なお、図示のように、第3通路23と第5通路25との合流点は、内部熱交換器10の入口の上流側に設けられている。また、比例弁33は、内部熱交換器10の出口の下流側に設けられている。
【0031】
以上のように構成された車両用冷暖房装置100は、図示しない制御部により制御される。制御部は、車両の乗員によりセットされた室温を実現するために各アクチュエータの制御量を演算し、各アクチュエータの駆動回路に制御信号を出力する。制御部は、車室内外の温度、蒸発器7の吹き出し空気温度等、各種センサにて検出された所定の外部情報に基づいて各制御弁の制御量(弁開度や開閉状態)を決定し、その制御量が実現されるようアクチュエータに電流を供給する。本実施例ではアクチュエータとしてステッピングモータを用いるため、制御部は、各制御弁の制御量が実現されるようステッピングモータに制御パルス信号を出力する。このような制御により、圧縮機2は、その吸入室を介して吸入圧力Psの冷媒を導入し、これを圧縮して吐出圧力Pdの冷媒として吐出する。なお、本実施形態ではこのような制御を実現するために、補助凝縮器3の出口、室外熱交換器5の出入口、蒸発器7の入口と出口、内部熱交換器10の入口と出口のそれぞれの温度を検出するための複数の温度センサが設置されている。
【0032】
次に、本実施形態の冷凍サイクルの動作について説明する。図2および図3は、車両用冷暖房装置の動作を表す説明図である。図2は冷房運転時の状態を示し、(A)は通常冷房運転時の状態を示し、(B)は特定冷房運転時の状態を示し、(C)は特殊冷房運転時の状態を示している。なお、「特定冷房運転」は、冷房運転において除湿の機能を高めた運転状態である。「特殊冷房運転」は、冷房運転において除湿の機能を高めるとともに熱交換効率を高めた運転状態である。図3は暖房運転時の状態を示し、(A)は特定暖房運転時の状態を示し、(B)は通常暖房運転時の状態を示し、(C)は特殊暖房運転時の状態を示している。「特定暖房運転」は、暖房運転において除湿の機能を高めた運転状態である。「特殊暖房運転」は、室外熱交換器5を機能させない運転状態である。
【0033】
各図の上段には冷凍サイクルの動作を説明するモリエル線図が示されている。その横軸がエンタルピーを表し、縦軸が各種圧力を表している。各図の下段には、冷凍サイクルの動作状態が示されている。図中の太線および矢印が冷媒の流れを示し、符号a〜hはモリエル線図のそれと対応している。また、図中の「×」は冷媒の流れが遮断されていることを示している。
【0034】
図2(A)に示すように、通常冷房運転時においては、第1制御弁4において比例弁34が開弁状態とされ、比例弁37,38が閉弁状態とされる。また、第2制御弁6において比例弁51が閉弁状態とされ比例弁52が開弁状態とされる。比例弁33は開弁状態とされる。さらに、第3制御弁9において比例弁35が閉弁状態とされ比例弁36が開弁状態とされる。それにより、第1冷媒循環通路のみが開放される。このため、圧縮機2から吐出冷媒は室外熱交換器5および蒸発器7に導かれる。このとき、室外熱交換器5は室外凝縮器として機能する。
【0035】
すなわち、圧縮機2から吐出された高温・高圧のガス冷媒は、室外熱交換器5を経ることで凝縮され、比例弁33にて断熱膨張されて冷温・低圧の気液二相冷媒となり、蒸発器7に導入される。蒸発器7の入口に導入された冷媒は、その蒸発器7を通過する過程で蒸発し、車室内の空気を冷却する。蒸発器7から導出された冷媒は、比例弁36を経てアキュムレータ8に導入される。制御部は、室外熱交換器5の出口側の温度に基づき、その出口側の過冷却度が適正となるよう比例弁33の開度を制御するか、または圧縮機2の入口側の温度に基づき、その入口側の過熱度が適正となるよう比例弁33の開度を制御する。前者の場合、比例弁33の入口または内部熱交換器10の入口の温度に基づいてその過冷却度を調整するようにしてもよい。
【0036】
なお、このとき、内部熱交換器10により、アキュムレータ8から圧縮機2に送られる冷媒と室外熱交換器5から比例弁33に送られる冷媒との熱交換が行われる。その結果、蒸発器7の入口と出口の入口とのエンタルピの差が大きくなり、冷凍サイクルの成績係数を大きくできるため、システムの効率および冷凍能力を向上させることができる。
【0037】
図2(B)に示すように、特定冷房運転時においては、第1制御弁4において比例弁34が閉弁状態とされ、比例弁37,38が開弁状態とされる。また、第2制御弁6において比例弁51が閉弁状態とされ比例弁52が開弁状態とされる。比例弁33は開弁状態とされる。さらに、第3制御弁9において比例弁35が閉弁状態とされ比例弁36が開弁状態とされる。それにより、バイパス通路27が開放されて直列循環通路が形成される。この直列循環通路は、第1冷媒循環通路に対して補助凝縮器3を経由する冷媒通路を追加した構成を有し、補助凝縮器3を室内凝縮器、室外熱交換器5を室外凝縮器として直列につなぐ構成を実現する。このため、圧縮機2から吐出冷媒は、補助凝縮器3および室外熱交換器5を通過して蒸発器7に導かれる。
【0038】
このとき、比例弁38の開度が調整されて差圧制御が実行される。このとき、比例弁38には前後差圧ΔPが発生する。その結果、補助凝縮器3の凝縮圧力(凝縮温度)が、室外熱交換器5の凝縮圧力(凝縮温度)よりも高く維持され、車室内の温度が必要以上に低下することが抑制される。具体的には、ドライバの足元の温度をある程度高く維持することができる。制御部は、室外熱交換器5の出口側の温度に基づき、その出口側の過冷却度が適正となるよう比例弁33の開度を制御するか、または圧縮機2の入口側の温度に基づき、その入口側の過熱度が適正となるよう比例弁33の開度を制御する。
【0039】
図2(C)に示すように、特定冷房運転時においては、第1制御弁4において比例弁34および比例弁37が共に開弁状態とされ、比例弁38が閉弁状態とされる。また、第2制御弁6において比例弁51および比例弁52が共に開弁状態とされる。比例弁33は開弁状態とされる。さらに、第3制御弁9において比例弁35が閉弁状態とされ比例弁36が開弁状態とされる。それにより第1冷媒循環通路および第3冷媒循環通路が開放され、第2冷媒循環通路は遮断される。このため、圧縮機2から吐出された冷媒は、一方で室外熱交換器5を経て蒸発器7に導かれ、他方で補助凝縮器3を経て蒸発器7に導かれる。このとき、室外熱交換器5は室外凝縮器として機能する。
【0040】
すなわち、圧縮機2から吐出された高温・高圧のガス冷媒は、一方で補助凝縮器3を、他方で室外熱交換器5を経ることで凝縮される。そして、補助凝縮器3を経由した冷媒と室外熱交換器5を経由した冷媒とが合流して比例弁33にて断熱膨張され、冷温・低圧の気液二相冷媒となって蒸発器7に導入される。そして、その蒸発器7を通過する過程で蒸発し、車室内の空気を冷却する。このとき、蒸発器7から導出された冷媒は、アキュムレータ8を経て圧縮機2に導入される。制御部は、比例弁33の入口または内部熱交換器10の入口の温度に基づいてその過冷却度が適正となるよう比例弁33の開度を制御するか、または圧縮機2の入口側の温度に基づき、その入口側の過熱度が適正となるよう比例弁33の開度を制御する。
【0041】
ここで、図2(B)に示す特定冷房運転と図2(C)に示す特殊冷房運転とを適宜切り替えることにより、除湿機能を高めた冷房運転の効率を高く維持することができる。すなわち、図2(B)に示す特定冷房運転においては、圧縮機2から吐出された冷媒の全てが補助凝縮器3を経由することになるため、その補助凝縮器3での圧力損失を見越して圧縮機2の動力を大きくする必要がある。しかし、圧縮機2から吐出された高温のガス冷媒を全て補助凝縮器3に供給できるため、その補助凝縮器3のヒータとしての機能を最大限に発揮させることができる。一方、図2(C)に示す特殊冷房運転においては、圧縮機2から吐出された冷媒が室外熱交換器5へ向かうものと補助凝縮器3へ向かうものに所定の比率で振り分けられるため、圧縮機2から吐出された高温のガス冷媒はその比率に応じた流量のみが補助凝縮器3に供給されることになる。このため、補助凝縮器3はそのヒータとしての機能を最大限に発揮させることはできない。しかし、補助凝縮器3へ供給される冷媒がその比率に応じた流量に留まるため、補助凝縮器3での圧力損失は少なくなり、その分、圧縮機2の動力は小さくて済む。
【0042】
すなわち、補助凝縮器3のヒータとしての機能の必要性に応じて特定冷房運転と特殊冷房運転とを適宜切り替えることにより、その機能を担保しつつ、冷凍サイクルの効率(成績係数)を高く維持できるようになる。しかも、特定冷房運転による凝縮器の直列運転と、特殊冷房運転による凝縮器の並列運転とが、バイパス通路27を設けるという簡易な構成と、第1制御弁4の開閉状態を切り替えるという簡易な制御により実現されている。
【0043】
図3(A)に示すように、特定暖房運転時においては、第1制御弁4の比例弁34,38が閉弁状態とされ比例弁37が開弁状態とされる。また、第2制御弁6において比例弁51および比例弁52が共に開弁状態とされる。比例弁33は開弁状態とされる。このとき、比例弁52は、小口径の第2弁が開弁状態となる。さらに、第3制御弁9において比例弁35および比例弁36が共に開弁状態とされる。このとき、比例弁52が膨張装置として機能する。それにより、第1冷媒循環通路が遮断され、第2冷媒循環通路および第3冷媒循環通路が開放される。このため、補助凝縮器3から導出された冷媒は、一方で室外熱交換器5に導かれ、他方で蒸発器7に導かれる。このとき、室外熱交換器5は室外蒸発器として機能する。
【0044】
すなわち、圧縮機2から吐出された高温・高圧のガス冷媒は、補助凝縮器3を経て凝縮される。補助凝縮器3から導出された冷媒は、一方で比例弁52にて断熱膨張されて冷温・低圧の気液二相冷媒となり、室外熱交換器5を通過する際に蒸発される。室外熱交換器5から導出された冷媒は、比例弁35を経てアキュムレータ8に導入される。また、補助凝縮器3から導出された冷媒は、他方で比例弁33にて断熱膨張されて冷温・低圧の気液二相冷媒となり、蒸発器7を通過する際に蒸発される。蒸発器7から導出された冷媒は、比例弁36を経てアキュムレータ8に導入される。
【0045】
このとき、制御部は、室外熱交換器5による熱吸収と蒸発器7による除湿とを適正に行うべく、室外熱交換器5における冷媒の蒸発量と蒸発器7における冷媒の蒸発量との比率を適正に調整する。室外熱交換器5および蒸発器7の両蒸発器にて蒸発される比率は、比例弁52と比例弁33の弁開度の比率により制御される。制御部は、比例弁52の開度と比例弁33の開度との比率を調整することにより両蒸発器における蒸発量を調整する。その際、制御部は、蒸発器7が凍結することがないよう、蒸発器7の出口側の温度が適正範囲に保たれるように制御する。
【0046】
また、制御部は、比例弁35および比例弁36の一方の全開状態を維持したまま他方の開度を調整する。本実施形態では、図3(A)の左上段のモリエル線図に示すように、室外熱交換器5よりも蒸発器7の温度が低い場合には比例弁36を全開状態にして比例弁35の開度を制御する。一方、図3(A)の右上段のモリエル線図に示すように、蒸発器7よりも室外熱交換器5の温度が低い場合には比例弁35を全開状態にして比例弁36の開度を制御する。
【0047】
例えば、前者のように室外熱交換器5よりも蒸発器7の温度が低く、室外熱交換器5の出口側に過熱度(スーパーヒート)が発生している場合、比例弁35の開度を絞ることによりその過熱度が設定値(ゼロまたは小さな適正値)に近づくように制御する。このとき、室外熱交換器5における外部からの熱吸収量は、その比例弁35の絞り量により調整される。すなわち、比例弁36を全開状態に維持しつつ比例弁35の開度を絞ることで、室外熱交換器5の蒸発圧力Poと蒸発器7の出口の圧力Peとの差圧ΔP=Po−Peが適正となり、循環する冷媒を室外熱交換器5と蒸発器7とで蒸発させる比率を調整することができる。すなわち、差圧ΔPが大きくなると、室外熱交換器5における蒸発量が相対的に小さくなる(蒸発器7における蒸発量が相対的に大きくなる)。逆に、差圧ΔPが小さくなると、室外熱交換器5における蒸発量が相対的に大きくなる(蒸発器7における蒸発量が相対的に小さくなる)。制御部は、室外熱交換器5の出口側に過熱度に応じて比例弁35の開度を制御して差圧ΔPを適正に調整することで、特定暖房運転時における除湿機能を確保する。なお、室外熱交換器5の出口側の過熱度の有無およびその大きさは、室外熱交換器5の入口側の温度と出口側の温度を検出することで特定することができる。
【0048】
逆に、後者のように蒸発器7よりも室外熱交換器5の温度が低く、蒸発器7の出口側に過熱度が発生している場合、比例弁36の開度を絞ることによりその過熱度が設定過熱度(ゼロまたは小さな適正値)に近づくように制御する。すなわち、比例弁35を全開状態に維持しつつ比例弁36の開度を絞ることで、蒸発器7の出口の圧力Peと室外熱交換器5の蒸発圧力Poとの差圧ΔP=Pe−Poが適正となり、特定暖房運転時における除湿機能を確保することができる。なお、蒸発器7の出口側の過熱度の有無およびその大きさは、蒸発器7の入口側の温度と出口側の温度を検出することで特定することができる。
【0049】
図3(B)に示すように、通常暖房運転時においては、第1制御弁4の比例弁34,38が閉弁状態とされ比例弁37が開弁状態とされる。また、第2制御弁6において比例弁51,52が開弁状態とされる。比例弁33は閉弁状態とされる。このとき、比例弁52が膨張装置として機能する。さらに、第3制御弁9において比例弁35が開弁状態とされ、比例弁36が閉弁状態とされる。それにより第2冷媒循環通路のみが開放される。このため、補助凝縮器3から導出された冷媒は第3通路23を介して室外熱交換器5に導かれる。このとき、蒸発器7には冷媒が供給されないため、蒸発器7は実質的に機能しなくなり、室外熱交換器5のみが蒸発器として機能するようになる。制御部は、補助凝縮器3の出口側の温度に基づき、その出口側の過冷却度が適正となるよう比例弁52の開度を制御する。
【0050】
図3(C)に示すように、特殊暖房運転時においては、第1制御弁4の比例弁34,38が閉弁状態とされ、比例弁37が開弁状態とされる。また、第2制御弁6において比例弁51が開弁状態とされ、比例弁52が閉弁状態とされる。比例弁33は開弁状態とされる。さらに、第3制御弁9において比例弁35が閉弁状態とされ、比例弁36が開弁状態とされる。それにより第3冷媒循環通路のみが開放される。このため、補助凝縮器3から導出された冷媒は第2通路22を介して蒸発器7に導かれる。室外熱交換器5は実質的に機能しなくなる。蒸発器7に導入された冷媒は、その蒸発器7を通過する過程で蒸発し、車室内の空気を除湿する。このような特殊冷暖房運転は、外部からの吸熱が困難な場合、例えば車両が極寒状況におかれた場合などに有効に機能する。制御部は、補助凝縮器3の出口側の温度に基づき、その出口側の過冷却度が適正となるよう比例弁33の開度を制御するか、または圧縮機2の入口側の温度に基づき、その入口側の過熱度が適正となるよう比例弁33の開度を制御する。
【0051】
次に、本実施形態の制御弁の具体的構成について説明する。
図4〜図7は、第1制御弁4の構成および動作を表す断面図である。図4に示すように、第1制御弁4は、ステッピングモータ駆動式の電動弁として構成され、弁本体101とモータユニット102とを組み付けて構成されている。弁本体101は、有底筒状のボディ104に大口径の比例弁34,37,38を同軸状に収容して構成されている。
【0052】
ボディ104の一方の側部には第1導入ポート110と第2導入ポート112が設けられ、他方の側部には第1導出ポート114と第2導出ポート116が設けられている。ボディ104の上方から順に第2導入ポート112、第1導出ポート114、第1導入ポート110、第2導出ポート116が配置されている。第1導入ポート110は圧縮機2の吐出室に連通し、第2導入ポート112はバイパス通路27に連通し、第1導出ポート114は第1通路21に連通し、第2導出ポート116は第2通路22に連通する。第1導入ポート110と第1導出ポート114とをつなぐ通路により第1内部通路が構成され、第1導入ポート110と第2導出ポート116とをつなぐ通路により第2内部通路が構成され、第2導入ポート112と第1導出ポート114とをつなぐ通路により第3内部通路が構成されている。
【0053】
ボディ104の上半部には、円筒状の区画部材118が配設されている。区画部材118は、シール部材を介してボディ104に同心状に組み付けられている。区画部材118の下部の内径が縮径されて弁孔120が形成され、その下端開口端縁により弁座122が形成されている。また、区画部材118の中央部の内径も縮径されて弁孔124が形成され、その上端開口端縁により弁座126が形成されている。区画部材118における第2導入ポート112との対向面および第1導出ポート114との対向面には、それぞれ内外を連通する連通孔が設けられている。区画部材118の下端開口部は第1導入ポート110に連通している。
【0054】
区画部材118とボディ104との間(2つのOリングの間)には所定の間隙119が形成され、第3内部通路の温度が第2内部通路に伝達され難くなっている。また、ボディ104における第1導入ポート110と第2導入ポート112との間、および第1導出ポート114と第2導出ポート116との間には、比較的大きな切り欠きによる肉盗みがなされている。これにより、図2(B)に示したように直列循環通路が形成された際(図7参照)、圧縮機2から第2内部通路を介して補助凝縮器3に供給される高温の冷媒と、補助凝縮器3から第3内部通路を介して室外熱交換器5へ供給される冷媒との間で熱交換がなされることを抑制している。それにより、第1導出ポート114から補助凝縮器3へ導出される冷媒が冷却されて補助凝縮器3での凝縮効率が低下することを抑制している。
【0055】
ボディ104の下半部は内径が縮径された小径部となっており、その上端部には弁孔128が形成され、その上端開口端縁により弁座130が形成されている。ボディ104の下部にはガイド孔132が形成されている。
【0056】
ボディ104の上端部には、段付円筒状の区画部材125が配設されている。区画部材125は、弁本体101の内部とモータユニット102の内部とを区画する。区画部材125の上端中央部には、円ボス状の軸受部127が設けられている。軸受部127の内周面には雌ねじ部が設けられ、外周面は滑り軸受として機能する。区画部材125の内方にはガイド孔129が形成されている。弁孔120,124,128およびガイド孔129,132は、モータユニット102の軸線に沿って同軸状に配置されている。
【0057】
ボディ104の内方には、弁作動体134、伝達部材136、弁体138、弁駆動体140が同軸状に配設されている。弁体138は、弁孔124と第2導入ポート112との間の圧力室に配置され、弁孔124に接離して比例弁38の開度を調整する。弁体138は、有底円筒状をなし、その下端部の外周面にはリング状の弾性体(例えばゴム)が嵌着されており、その弾性体が弁座126に着座することにより、比例弁38を完全に閉じることが可能になる。
【0058】
弁体138は、その上端部がガイド孔129に摺動可能に支持されている。弁体138の摺動面には、シール部材としてのOリング142が嵌着されている。弁体138の下端部には、弁孔124に摺動しつつ支持される複数の脚部(同図にはその1つのみ表示)が延設されている。弁体138は、その下端部の複数の脚部が弁孔124に沿って摺動し、上端部がガイド孔129に沿って摺動することにより、軸線方向に安定に動作することができる。区画部材125と弁体138とに囲まれた空間により背圧室144(「第2背圧室」として機能する)が形成されている。伝達部材136と弁体138との間に所定のクリアランスが存在するため、弁孔124の下流側の下流側圧力Pout1がそのクリアランスを介して背圧室144に導入される。区画部材125と弁体138との間には、弁体138を閉弁方向に付勢するスプリング146(「付勢部材」として機能する)が介装されている。
【0059】
弁作動体134の下端部には、伝達部材136が連結されている。伝達部材136は、長尺状をなし、弁体138の中央部を軸線方向に貫通している。伝達部材136の上端部は弁作動体134の底部に固定されている。なお、本実施形態においては、弁作動体134と伝達部材136とがモータユニット102により軸線方向に駆動される「弁作動体」として機能する。すなわち、伝達部材136は、弁作動体134の「伝達部」として機能する。伝達部材136は、弁駆動体140の側に延在し、その軸線方向中間部には半径方向外向きに突出した係止部148が設けられている。伝達部材136は、弁体138に対して相対変位可能であるが、係止部148が弁体138に係止されることによりその上方への相対変位が規制される。
【0060】
弁体138の内方には緩衝部材150がスプリング151(「付勢部材」として機能する)を介して支持されている。緩衝部材150は、スプリング151の付勢力によりその上端部が弁作動体134の側に突出する。弁作動体134が弁体138に当接する際には、まず緩衝部材150が弁作動体134に当接してスプリング151の反力を伝達することにより、弁作動体134が弁体138に過度な負荷を与えることを防止する。
【0061】
弁駆動体140は段付円筒状をなし、その軸線方向中央の縮径部が弁孔128を貫通するように配設されている。弁駆動体140の上端部には共用弁体154(「弁体部」を構成する)が設けられ、下端部には区画部156が設けられている。共用弁体154は、縮径部を介して区画部156に連設されている。すなわち、共用弁体154は、弁孔120および弁孔128の上流側にて第1導入ポート110に連通する圧力室に配置されている。一方、区画部156は、弁孔128の下流側にて第2導出ポート116に連通する圧力室に配置され、ガイド孔132に摺動可能に支持されている。
【0062】
共用弁体154は段付円柱状をなし、その上端部に第1弁体153が嵌着され、下端部に第2弁体155が嵌着されている。第1弁体153および第2弁体155は、ともに環状の弾性体(本実施形態ではゴム)からなる。第1弁体153は、弁座122に接離して比例弁34の開度を調整する。一方、第2弁体155は、弁座130に接離して比例弁37の開度を調整する。
【0063】
共用弁体154の上端部には、弁孔120に摺動しつつ支持される複数の脚部(同図にはその1つのみ表示)が延設されている。区画部156の外周面にはシール部材としてのOリング157が嵌着されている。弁駆動体140は、その上端部の複数の脚部が弁孔120に沿って摺動し、下端部の区画部156がガイド孔132に沿って摺動することにより、軸線方向に安定に動作することができる。ボディ104の底部と区画部156との間には背圧室158(「第1背圧室」として機能する)が形成されている。また、共用弁体154および縮径部を軸線方向に貫通する連通路159(管路部)が形成されている。この連通路159は、第1導出ポート114と背圧室158とを連通させる。このため、背圧室158には常に、第1導出ポート114から導出される下流側圧力Pout1が満たされる。ボディ104の底部と区画部156との間には、スプリング160(「付勢部材」として機能する)が介装されている。
【0064】
また、共用弁体154の脚部の内方には有蓋状のストッパ162が設けられ、そのストッパ162に囲まれる空間に円板状のばね受け164が配設されている。ストッパ162は、ばね受け164を上方から係止可能であり、その外部への脱落を阻止する。共用弁体154の上端部とばね受け164との間には、スプリング166(「付勢部材」として機能する)が介装されている。伝達部材136は、その下端部がストッパ162を貫通してばね受け164に当接可能となっている。
【0065】
弁作動体134と弁駆動体140とが伝達部材136を介して作動連結可能に構成されている。すなわち、図示のように伝達部材136がばね受け164に当接した状態となることで、モータユニット102の駆動力が弁作動体134、伝達部材136、ばね受け164、スプリング166を介して弁駆動体140に伝達される。弁駆動体140と弁作動体134とは、比例弁34と比例弁37がともに開弁状態であるときはスプリング166の付勢力により突っ張った状態で一体変位するが、いずれか一方が閉弁状態になれば軸線方向に相対変位可能となる。
【0066】
なお、スプリング166の荷重は、Oリング157とガイド孔132との間の摺動抵抗(弁駆動体140の摺動力)とスプリング160の荷重との合力よりも大きくなるように設定されている。それにより、弁作動体134と弁駆動体140とが一体動作しているときにスプリング166が縮むことなく、比例弁34および比例弁37の弁開度を正確に制御できるようになっている。
【0067】
弁作動体134は、段付円筒状をなし、その外周部に雄ねじ部が形成されている。雄ねじ部は、軸受部127の雌ねじ部に螺合する。弁作動体134の上端部には半径方向外向きに延出する複数(本実施形態では4つ)の脚部152が設けられており、モータユニット102のロータに嵌合している。弁作動体134は、モータユニット102の回転駆動力を受けて回転し、その回転力を並進力に変換する。すなわち、弁作動体134が回転すると、ねじ機構(「作動変換機構」として機能する)によって弁作動体134が軸線方向に変位し、伝達部材136を介して共用弁体154を軸線方向(比例弁34、比例弁37の開閉方向)に駆動する。また、弁作動体134が回転して伝達部材136が引き上げられることにより、係止部148を介して弁体138に開弁方向の駆動力を付与することができる。
【0068】
本実施形態においては、弁孔120の有効径Aと弁孔128の有効径Bとガイド孔132の有効径Cとが等しく設定されている。また、弁孔124の有効径Dとガイド孔129の有効径Eとが等しく設定されている。このため、弁駆動体140、弁体138に作用する冷媒圧力の影響がキャンセルされる。なお、本実施形態では、有効径A〜Eが等しく設定されている。
【0069】
一方、モータユニット102は、ロータ172とステータ173とを含むステッピングモータとして構成されている。モータユニット102は、有底円筒状のスリーブ170の内方にロータ172を回転自在に支持するようにして構成されている。スリーブ170の外周には、励磁コイル171を収容したステータ173が設けられている。スリーブ170は、その下端開口部がボディ104に組み付けられており、ボディ104とともに第1制御弁4のボディを構成する。
【0070】
ロータ172は、円筒状に形成された回転軸174と、その回転軸174の外周に配設されたマグネット176を備える。本実施形態では、マグネット176は24極に磁化されている。回転軸174の内方にはモータユニット102のほぼ全長にわたる内部空間が形成されている。回転軸174の内周面の特定箇所には、軸線に平行に延びるガイド部178が設けられている。ガイド部178は、後述する回転ストッパと係合するための突部を形成するものであり、軸線に平行に延びる一つの突条により構成されている。
【0071】
回転軸174の下端部はやや縮径され、その内周面に軸線に平行に延びる4つのガイド部180が設けられている。ガイド部180は、軸線に平行に延びる一対の突条により構成され、回転軸174の内周面に90度おきに設けられている。この4つのガイド部180には、上述した弁作動体134の4つの脚部152が嵌合し、ロータ172と弁作動体134とが一体に回転できるようになっている。ただし、弁作動体134は、ロータ172に対する回転方向の相対変位は規制されるものの、そのガイド部180にそった軸線方向の変位は許容される。すなわち、弁作動体134は、ロータ172とともに回転しつつ各弁体の開閉方向に駆動される。
【0072】
ロータ172の内方には、その軸線に沿って長尺状のシャフト182が配設されている。シャフト182は、その上端部がスリーブ170の底部中央に圧入されることにより片持ち状に固定され、ガイド部178に平行に内部空間に延在している。シャフト182は、弁作動体134と同一軸線上に配置されている。シャフト182には、そのほぼ全長にわたって延在する螺旋状のガイド部184が設けられている。ガイド部184は、コイル状の部材からなり、シャフト182の外面に嵌着されている。ガイド部184の上端部は折り返されて係止部186となっている。
【0073】
ガイド部184には、螺旋状の回転ストッパ188が回転可能に係合している。回転ストッパ188は、ガイド部184に係合する螺旋状の係合部190と、回転軸174に支持される動力伝達部192とを有する。係合部190は一巻きコイルの形状をなし、その下端部に半径方向外向きに延出する動力伝達部192が連設されている。動力伝達部192の先端部がガイド部178に係合している。すなわち、動力伝達部192は、ガイド部178の一つの突条に当接して係止される。このため、回転ストッパ188は、回転軸174により回転方向の相対変位は規制されるが、ガイド部178に摺動しつつその軸線方向の変位が許容される。
【0074】
すなわち、回転ストッパ188は、ロータ172と一体に回転し、その係合部190がガイド部184にそってガイドされることで、軸線方向に駆動される。ただし、回転ストッパ188の軸線方向の駆動範囲はガイド部178の両端に形成された係止部により規制される。同図には、回転ストッパ188が中間位置にある状態が示されている。回転ストッパ188が上方へ変位して係止部186に係止されると、その位置が上死点となる。回転ストッパ188が下方へ変位すると、その下死点にて係止される。
【0075】
ロータ172は、その上端部がシャフト182に回転自在に支持され、下端部が軸受部127に回転自在に支持されている。具体的には、回転軸174の上端開口部を封止するように有底円筒状の端部部材194が設けられている。そして、その端部部材194の中央に設けられた円筒軸196の部分が、スリーブ170の底部に突設された円ボス部に支持されている。すなわち、軸受部127が一端側の軸受部となり、スリーブ170における円筒軸196との摺動部が他端側の軸受部となっている。
【0076】
以上のように構成された第1制御弁4は、モータユニット102の駆動制御によってその弁開度を調整可能なステッピングモータ作動式の制御弁として機能する。すなわち、第1制御弁4による流量制御に際し、車両用冷暖房装置の図示しない制御部は、設定開度に応じたステッピングモータの駆動ステップ数を演算し、励磁コイル171に駆動電流(駆動パルス)を供給する。それによりロータ172が回転し、弁作動体134が回転駆動されて比例弁34,37,38の開閉状態および開度が調整される。一方、回転ストッパ188がガイド部184にそって駆動されることにより、各弁体の動作範囲が規制される。
【0077】
図4は、比例弁34が全開状態となり、比例弁37,38が閉弁状態となる場合を示している。第1制御弁4は、例えば図2(A)に示した通常冷房運転時においてこのような状態をとる。
【0078】
図5は、比例弁34,37が開弁状態となり、比例弁38が閉弁状態となる場合を示している。第1制御弁4は、例えば図2(C)に示した特殊冷房運転時においてこのような状態をとり得る。すなわち、図4の状態からロータ172が一方向に回転駆動(正転)されると、伝達部材136が引き上げられる。その結果、スプリング160の付勢力によって弁駆動体140が押し上げられ、比例弁37が開弁するとともに比例弁34が閉弁方向に動作する。その動作過程において比例弁34および比例弁37のそれぞれの開度が調整される。
【0079】
図6は、比例弁34,38が閉弁状態となり、比例弁37が全開状態となる場合を示している。第1制御弁4は、例えば図3(A)〜(C)に示した暖房運転時においてこのような状態をとり得る。すなわち、図5の状態からロータ172が一方向にさらに回転駆動されると、スプリング160の付勢力によって弁駆動体140がさらに押し上げられ、比例弁34が閉弁する。
【0080】
図7は、比例弁34が閉弁状態となり、比例弁37,38が全開状態となる場合を示している。第1制御弁4は、例えば図2(B)に示した特定冷房運転時においてこのような状態をとり得る。すなわち、図6の状態からロータ172が一方向にさらに回転駆動されると、係止部148が弁体138に当接する。その後、弁体138が伝達部材136を介して吊り上げられるようにして比例弁38が開弁し、その開度が調整される。
【0081】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はその特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で種々の変形が可能であることはいうまでもない。
【0082】
上記実施形態では、ポート110,112を作動流体としての冷媒が導入される導入ポートとし、ポート114,116を作動流体が導出される導出ポートとする例を示した。また、ポート114をポート110またはポート112から導入された作動流体を導出する共用の導出ポートとする例を示した。変形例においては、例えばポート114を作動流体が導入される共用の導入ポートとし、ポート112,114をそれぞれ作動流体が導出される導出ポートとしてもよい。また、ポート110をポート114またはポート116から導入された作動流体を導出する共用の導出ポートとしてもよい。
【0083】
上記実施形態では、弁体138を弁孔124の上流側に配置する例を示したが、下流側に配置してもよい。また、共用弁体154を弁孔120,128の上流側に配置する例を示したが、下流側に配置する構成としてもよい。
【0084】
上記実施形態では、第1弁体153と第2弁体155とを共用弁体154として一体に構成する例を示したが、これらを接離可能に別体に構成してもよい。
【0085】
なお、上記実施形態では特に述べなかったが、図5のように第1弁体153と第2弁体155とが中間位置(中立位置)に開弁されたときに、両弁体が共に全開状態となるものであってもよい。すなわち、作動切替機構は、弁作動体と作動連結した弁体の駆動状態において他の弁体を閉弁状態または全開状態に維持するものであってもよい。作動切替機構は、第1弁または第2弁の開度の制御状態において弁作動体と弁駆動体とを作動連結し、第1弁および第2弁の一方の開度の制御状態において他方を全開状態に維持し、第3弁の開度の制御状態において、弁作動体と第3弁体とを作動連結するとともに弁作動体と弁駆動体との作動連結を解除し、第1弁および第2弁の一方を閉弁状態に維持し、他方を全開状態に維持するものであってもよい。
【0086】
上記実施形態では、本発明の制御弁を電気自動車の車両用冷暖房装置に適用した例を示したが、内燃機関を搭載した自動車や、内燃機関と電動機を同載したハイブリッド式の自動車の車両用冷暖房装置に提供することが可能であることは言うまでもない。さらに、車両以外の冷暖房装置に適用することも可能である。
【0087】
上記実施形態では、複合弁のアクチュエータとしてステッピングモータを採用する例を示したが、ソレノイド等により構成してもよい。
【符号の説明】
【0088】
2 圧縮機、 3 補助凝縮器、 4 第1制御弁、 5 室外熱交換器、 6 第2制御弁、 7 蒸発器、 8 アキュムレータ、 9 第3制御弁、 10 内部熱交換器、 33,34,35,36,37,38,51,52 比例弁、 100 車両用冷暖房装置、 101 弁本体、 102 モータユニット、 104 ボディ、 120,124,128 弁孔、 134 弁作動体、 136 伝達部材、 138 弁体、 140 弁駆動体、 144 背圧室、 148 係止部、 153 第1弁体、 154 共用弁体、 155 第2弁体、 156 区画部、 158 背圧室、 172 ロータ、 173 ステータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1内部通路、第2内部通路および第3内部通路が形成され、前記第1内部通路の作動流体の流れを調整する第1弁と、前記第2内部通路の作動流体の流れを調整する第2弁と、前記第3内部通路の作動流体の流れを調整する第3弁とを収容する共用のボディと、
前記第1弁、前記第2弁および前記第3弁の開度を電気的に調整するための共用のアクチュエータと、
前記アクチュエータにより軸線方向に駆動される弁作動体と、
前記第1内部通路に設けられた第1弁孔に接離して前記第1弁を開閉する第1弁体と、
前記第2内部通路に設けられた第2弁孔に接離して前記第2弁を開閉する第2弁体と、
前記第3内部通路に設けられた第3弁孔に接離して前記第3弁を開閉する第3弁体と、
前記第1弁体、前記第2弁体および前記第3弁体のそれぞれと前記弁作動体とを一体変位可能に作動連結または相対変位可能に連結解除する作動切替機構と、
を備えることを特徴とする制御弁。
【請求項2】
前記第1弁体および前記第2弁体を一体に含み、前記弁作動体と作動連結されることにより前記第1弁および前記第2弁の開閉方向に駆動される弁駆動体を備え、
前記作動切替機構は、
前記第1弁または前記第2弁の開度の制御状態において前記弁作動体と前記弁駆動体とを作動連結する一方、前記弁作動体と前記第3弁体との作動連結を解除し、
前記第3弁の開度の制御状態において、前記弁作動体と前記第3弁体とを作動連結する一方、前記弁作動体と前記弁駆動体との作動連結を解除することを特徴とする請求項1に記載の制御弁。
【請求項3】
前記弁作動体は、
前記第3弁体を貫通して前記弁駆動体と軸線方向に対向配置される伝達部を有し、
前記伝達部の先端部が前記弁駆動体に接離することにより前記弁駆動体に作動連結または連結解除され、
前記伝達部の中間部が前記第3弁体に係止または係止解除されることにより前記第3弁体に作動連結または連結解除されることを特徴とする請求項2に記載の制御弁。
【請求項4】
前記ボディの一端部と前記弁駆動体との間に第1背圧室を形成し、前記第1内部通路の作動流体を前記第1背圧室に導入することにより、前記第1弁体および前記第2弁体に作用する流体圧力の影響をキャンセルする第1背圧キャンセル構造と、
前記ボディの他端部と前記第3弁体との間に第2背圧室を形成し、前記第3内部通路の作動流体を前記第2背圧室に導入することにより、前記第3弁体に作用する流体圧力の影響をキャンセルする第2背圧キャンセル構造と、
を備えることを特徴とする請求項3に記載の制御弁。
【請求項5】
前記弁駆動体は、
前記第1弁孔と前記第2弁孔との間に配置され、前記第1弁孔に接離して前記第1弁の開度を調整する前記第1弁体と、前記第2弁孔に接離して前記第2弁の開度を調整する前記第2弁体とが一体に設けられた弁体部と、
前記弁体部を貫通するように連設され、軸線方向の一方の側に延出する管路部と、
前記管路部の前記弁体部と反対側端部に連設され、前記ボディとの間に前記第1背圧室を形成する区画部と、
を備えることを特徴とする請求項4に記載の制御弁。
【請求項6】
前記アクチュエータとして、回転駆動されるロータを含むステッピングモータと、
前記ロータとともに回転し、その軸線周りの回転運動を前記弁作動体の軸線方向の並進運動に変換する作動変換機構と、
を備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の制御弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−225366(P2012−225366A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−91300(P2011−91300)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(000133652)株式会社テージーケー (280)
【Fターム(参考)】