説明

制御放出される被覆された過酸素化合物、その製造方法及びその用途

本発明は、活性酸素の遅延放出(=溶解時間の増加)のある被覆された過酸素化合物、特に被覆された過炭酸ナトリウム粒子に関するものである。
本発明による粒子は、1つ以上の水和可能な形態の無機塩を含有する最内層シェル及び係数が2.5以上、特に3〜5である0.2〜3重量%のアルカリ金属ケイ酸塩を含有する外層シェル層を含み、前記外層はアルカリ金属ケイ酸塩の濃度が2〜20重量%の範囲であるアルカリ金属ケイ酸塩溶液を用いて製造される。
用いられる溶液中のアルカリ金属ケイ酸塩の濃度を下げることにより、溶解時間は同一のシェル量に対して増加し得る。溶解時間は、低含量のアルカリ金属ケイ酸塩において、層の順序及び溶解の濃度に応じて大きく増加し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つ以上のシェル層を有する被覆された過酸素化合物、特に被覆された過炭酸ナトリウム粒子に関するものであって、これは洗剤の内容物の存在下においても高活性酸素の安定性及び制御放出性、特に水性相における過炭酸ナトリウムの遅延放出性を全て有する。
【0002】
さらに、本発明は、被覆された過炭酸ナトリウム粒子のような総括的である被覆された粒子の製造方法を提供し、ここでシェル量が一定に維持され、異なる溶解時間を有する被覆された粒子を得ることが可能である。
【0003】
さらに、本発明は、洗剤、漂白組成物及び洗滌組成物、特に水性相において活性酸素(O)の遅延放出を必要とするものの中における漂白成分としての被覆された過酸素化合物、特に被覆された過炭酸ナトリウム粒子の用途を提供する。
【0004】
本出願における“過酸素化合物”は水性相中に活性酸素を放出する微粒子性物質を意味するものと理解される。その例としては、過炭酸塩、過ホウ酸塩、過硫酸塩、過リン酸塩、過ケイ酸塩及び個体過酸化カルボン酸が挙げられる。
【0005】
微粒子性過酸素化合物の中で特に過炭酸ナトリウムは、現在注目されている位置を占めており、このような理由で下記の文献は実質的に過炭酸ナトリウムを志向している。
【0006】
過炭酸ナトリウム(2NaCO・3H)は、洗剤、漂白組成物及び洗滌組成物における活性酸素成分として用いられる。暖かくて湿った環境及び各種の洗浄及び洗滌成分、特にケイ酸系石鹸混和剤(builder)の存在下における過炭酸ナトリウムの不適合な貯蔵安定性のために、過炭酸ナトリウムが活性酸素(O)の損失に備えて安定化していなければならない。安定化のための核心的な主要成分には、各々のシェル層が1つ以上の無機性及び/または有機性シェル成分を含む単一−または多重層シェルから囲まれた過炭酸ナトリウム粒子が含まれる。
【0007】
上記のような個体洗剤は、家庭及び工業において織物の漂白用として用いられ、多くの場合、界面活性剤及び無機性及び/または有機性石鹸混和剤、並びに特に過炭酸ナトリウムのような漂白剤に加えてさらに酵素を含有する。酵素は、普通の洗剤においてはほとんど使われていないが、これは、これらの補助により織物にある各種の保護成分の除去が低温においてさえ極めて迅速かつ容易に達成され得るからである。タンパク質含有の染みを除去するためにプロテアーゼの使用が特に広く普及されてきたが、各々の場合に対して、その他の特異的な目的が定められたリパーゼ、アミラーゼ、セルラーゼ及びクチナーゼ等のその他の酵素の使用もまた増加の傾向にある。
【0008】
酵素含有の洗剤の場合、過炭酸ナトリウムの優れた溶解度がしばしば短所として作用するが、これは特にプロテアーゼを含む大多数の酵素作用を妨げられる高濃度の活性酸素が洗浄の過程を開始した直後に洗浄用の液体中に既に利用可能であるためである。従って、活性酸素の遅延放出がある過炭酸ナトリウムは、酵素含有系に必要である。
【0009】
GB 174,891によると、活性酸素化合物のO安定性の増加のために、これらはやはり過炭酸ナトリウムを含み、水ガラス(water−glass)溶液と共に噴射されて乾燥させる。水ガラス、すなわち、アルカリ金属ケイ酸塩の混合物は、またDE−OS 26 22 610による工程における比較例のシェル成分である。係数(SiO対NaO)が3.3であり、個体の濃度が27.5%である水ガラス溶液がここで用いられる。しかしながら、厚いシェル層が過炭酸ナトリウム粒子に適用される場合にも、アルカリ金属ケイ酸塩は十分な量であっても安定化作用を有していないという点が発見された。
【0010】
DE−OS 24 17 572によると、よりよい安定化は、硫酸ナトリウムと炭酸ナトリウムの組合せのような混合無機塩を用いて達成される。DE−OS 26 22 610によると、追加の改善は、被覆物に第3成分としてアルカリ金属ケイ酸塩をさらに用いることにより達成される。記載された産物は、速やかに溶解することが証明された。
【0011】
US特許4,325,933によると、硫酸マグネシウムがまたシェル成分として適合する。WO 95/02555及びEP−A 0 623 553からわかるように、単独的なシェル成分としての硫酸マグネシウムは、当時の過炭酸ナトリウムに対する安定性の必要条件を満たせなかった。従って、言及された上記両文献に記載された過炭酸ナトリウム粒子の被覆物は、硫酸マグネシウムまたはカルボン酸のマグネシウム塩に加えて、さらにアルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属重炭酸塩及びアルカリ金属硫酸塩からなる系列からのアルカリ金属塩、並びに第3成分としてのアルカリ金属ケイ酸塩を含有し、これは1つ以上の層に配列されるシェル成分になり得る。
【0012】
WO 95/02555による方法において、係数が3.5であり、高濃度、すなわち37°Beである水ガラス溶液が別途のアルカリ金属ケイ酸塩層の製造に用いられた。ケイ酸ナトリウムに加えて炭酸ナトリウムがさらに含有されたシェル層を製造するために、アルカリ金属ケイ酸塩の含量がより低い溶液を用いた。噴射される溶液のアルカリ金属ケイ酸塩の濃度が、これにより被覆される過炭酸ナトリウムの溶解時間に影響を与えることができるという提案は、上記文献またはそこに引用された文献からは見出せない。
【0013】
EP 0 623 553 A1においては、ケイ酸ナトリウムの量が増加すると、被覆される過炭酸ナトリウム溶液の比率が減少するということを記載した−シェル層のケイ酸ナトリウムが1.5重量%である場合、溶解時間は3.5分と記載されており、シェル層のケイ酸ナトリウムが12.5重量%であり、その上に薄い硫酸マグネシウム層(1.5重量%)がある場合、溶解時間は9.0分と記載されている。2%のSiOがある水ガラス溶液が上記文献において最初の製造層に、すなわち最内層の製造のために用いられているが、係数は開示されていない。
【0014】
WO 97/19890の理論は、実質的に硫酸ナトリウムの単一シェル層を有する過炭酸ナトリウムが、中心の材料が流動層の噴射顆粒化により製造される場合、適合した活性酸素の安定性を有するということである。密集した粒子の蓄積(build−up)は、もちろん若干更に低い溶解速度を導くものの、これは既に知られているように、酵素の不活性化を適切に防止するため十分ではない。
【0015】
酵素において、漂白剤の不活性化作用を減少させるために、WO 92/23354においては、標準条件下で洗剤の80重量%を超過するが、70重量%未満の過炭酸ナトリウムが溶解するように洗剤を混合することを提案した。被覆された過炭酸ナトリウムでとして、例えば、被覆が低融点有機物質であるか、または過炭酸ナトリウムが流動層噴射顆粒化により製造されたか、あるいは通常の結晶化により製造された過炭酸ナトリウムのものよりさらに低い溶解速度を有するものが利用される。実際に、上記系はOの放出の際に不適合な遅延及び/またはその他の問題点のため完全には満足するものではないと明らかになった。
【0016】
WO 97/45524による洗剤においては、界面活性カチオン性エステル及びアルカリ性系を含むが、アルカリ性系が水性相において遅延方式で放出されることが重要である。アルカリ性作用を有する物質がまた、過炭酸ナトリウムのような漂白剤を意味するものと理解される。それ自体が水における低い溶解度を有する材料への被覆は、その結果、過炭酸ナトリウムの遅延放出が可能となるようにし、溶解時間の減少のための手段と見なされる。有機性シェル成分に加えて、アルカリ金属及びアルカリ土類金属硫酸塩が上記文献において溶解時間を延長するために適合したシェル成分として見なされる。本出願の発明者が発見したところでは、単独のシェル成分として言及された硫酸塩では、溶解時間が効率的な方式で減少し得ない。
【0017】
WO 97/45524において、SiO対NaOの係数が1.6:1〜3.4:1の範囲、特に2.8:1であるケイ酸ナトリウムへの被覆は、過炭酸ナトリウムの遅延放出を目的とした好ましい被覆と見なされる。ケイ酸ナトリウムは水溶液の形態で用いられ、それにより被覆される過炭酸ナトリウムは被覆される過炭酸ナトリウムを基準として2〜10重量%、特に3〜5重量%のケイ酸ナトリウムを含有する。ケイ酸ナトリウムの代わりに、マグネシウムケイ酸塩がまた活性酸素の放出遅延のために適合したシェル成分と見なされる。ケイ酸ナトリウムまたはマグネシウムケイ酸塩が過炭酸ナトリウムに適用される方式の指示は、上記文献に示されていない。特に、過炭酸ナトリウムの被覆のために用いられるアルカリ金属ケイ酸塩溶液の特別な濃度の表示はない。導入部において既に言及したように、過炭酸ナトリウムはまた十分に高活性酸素の安定性を有しなければならず、これはアルカリ金属ケイ酸塩単独で被覆して達成される場合はない。
【0018】
EP 0 992 575 A1はまた、アルカリ金属ケイ酸塩による過炭酸ナトリウムの溶解時間の延長可能性の原則を含む:ここで、0.5〜30重量%の、3超過5未満の係数を有するアルカリ金属ケイ酸塩が過炭酸ナトリウムと混合されるか、あるいはシェル層の形態でこれに適用される。その例として、シェル層は9重量%のケイ酸ナトリウムを含有する。活性酸素の安定性を改善するために、特別なヒドロキシカルボン酸またはジカルボン酸が単数または複数のシェル層に追加して配列され得る。硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム及び重炭酸ナトリウムからなる系列以外の公知の安定化剤が被覆物中にさらに存在できる。溶解時間は被覆の組成によって約2分〜300分の範囲である。3未満の係数を有する水ガラス溶液を用いる例示から、溶液の速度はただ若干更に低くなり得ることが明白である。上記文献には、十分に長い溶解時間を有する被覆された過炭酸ナトリウムを得るために利用される水ガラス溶液の濃度の表示がない。
【0019】
溶解時間は当然多量のアルカリ金属ケイ酸塩がシェル材料として用いられれば、過炭酸ナトリウムにアルカリ金属ケイ酸塩層を適用して延長され得る。しかし、上記方式で被覆された過炭酸ナトリウムの短所は、必要なアルカリ金属ケイ酸塩の使用量が多く、被覆から所望のアルカリ金属ケイ酸塩が洗滌溶液に満足するほどに溶解せず、従って、上記“シェル”が洗濯物に染みとして沈殿し得る点である。また、上記非溶解性内容物は、洗濯機に好ましくない沈殿を誘導することがある。
【0020】
本発明の目的は、ただ薄いシェル層であるにも拘わらず、水中において遅延した方式で活性酸素を放出する被覆された微粒子性過酸素化合物を提供することである。
【0021】
上記目的は、特に被覆中にできるだけ最少量のアルカリ金属ケイ酸塩を用いながら、水性相中に過炭酸ナトリウムを放出する時にできるだけ最大の遅延を誘導する改善されて被覆された過炭酸ナトリウム粒子を提供することである。
【0022】
また別の目的によると、過炭酸ナトリウム粒子のように、暖かくて湿った環境において活性酸素が失われ易い被覆された粒子が、遅延した放出性に追加して貯蔵庫内における洗剤内容物の存在下の貯蔵中に高活性酸素の安定性を十分に備えなければならない。
【0023】
本発明のまた別の目的によると、特に過炭酸ナトリウム粒子のような本発明による被覆された粒子が単純な方式で接近可能なものと見なされる方法が提供される。
【0024】
また別の目的によると、過炭酸ナトリウム粒子の被覆の間に工程パラメータを調整することにより、溶解時間については用いられるシェル材料の増量なしに特定の“時間窓(time window)”で信頼できるように調整することが可能でなければならない。
【0025】
また別の目的は、過酸素化合物の被覆された粒子、特に被覆された過炭酸ナトリウム粒子であって、酵素がその課題を完遂したときにのみ酵素含有洗剤中に比較的多量に活性酸素を放出する粒子を提供することを志向する。
【0026】
驚いたことに、過炭酸ナトリウムの被覆に用いられる水ガラス溶液の係数及び被覆物のうちアルカリ金属ケイ酸塩の量は、被覆された過炭酸ナトリウムの溶解速度にとって重要であるだけでなく、適用される水ガラス溶液のうちアルカリ金属ケイ酸塩の濃度及び追加的に2つ以上のシェル層において、1つは活性酸素の安定性に対する原因を提供し、もう1つは溶解時間の制御に原因を提供する2つ以上のシェル成分の配置も被覆された過炭酸ナトリウムの溶解速度にとって重要であることが見出された。
【0027】
さらに、用いられる水ガラス溶液のうちアルカリ金属ケイ酸塩の濃度を選択することにより、溶解時間はシェル層のうち同量のアルカリ金属ケイ酸塩に対して広範囲に可変的であり得ることを見出した。被覆物のうち固定量のアルカリ金属ケイ酸塩における溶解時間は、20重量%のアルカリ金属ケイ酸塩の濃度の代わりに、例えばただ5重量%であるアルカリ金属ケイ酸塩水溶液を用いて過炭酸ナトリウムが被覆される場合、大きく増加し得ることを見出した。上記驚くべき効果を利用して、上記言及された目的及び以降の発明の詳細な説明及び実施例から分かる追加的な目的が達成され得る。
【0028】
本発明は、過酸素化合物の中心上に2つ以上のシェル層を含む、水性相における活性酸素の放出が遅延する、被覆された微粒子性過酸素化合物、特に被覆された過炭酸ナトリウム粒子を提供し、ここで最内層は、被覆された粒子を基準として2〜20重量%を占め、1つ以上の水和物形成の無機塩を含有し、外層はSiO対MO(M=アルカリ金属)の係数が2.5超過、特に3超過であるアルカリ金属ケイ酸塩を含有し、外層が被覆された粒子を基準として主成分としてのアルカリ金属ケイ酸塩を0.2〜3重量%含有し、2〜20重量%の範囲の濃度でアルカリ金属ケイ酸塩を有するアルカリ金属ケイ酸塩を含有する水溶液を用いて製造されることを特徴とする。
【0029】
被覆された粒子の下位の請求の範囲は、好ましい具現例、特に被覆された過炭酸ナトリウム粒子に関するものである。
【0030】
本発明の被覆された過炭酸ナトリウム粒子は、任意の所望の製造方法により製造された、自体公知の安定化剤、例えばマグネシウム塩、ケイ酸塩及びリン酸塩を含有し得る過炭酸ナトリウムの中心を有することができる。実際における通常の製造方法は、特にいわゆる結晶化工程及び流動層噴射顆粒化工程である。結晶化工程において、過酸化水素及び炭酸ナトリウムは水性相において反応して過炭酸ナトリウムを提供し、結晶化後には後者の物質が水性母液から分離除去される。さらに初期の工程において、過炭酸ナトリウムは、比較的高濃度の不活性塩、例えば塩化ナトリウムの存在下に結晶化され、塩析試薬の不在下に起こり得る結晶化工程が開示された−例えば、EP−A 0 703 190を参照。
【0031】
過炭酸ナトリウムを製造するための流動層噴射顆粒化において、過酸化水素水溶液及びソーダ水溶液を流動層にある過炭酸ナトリウムシード上に噴射し、同時に水を蒸発させる。流動層において成長する顆粒を全部または漸次流動層から除去する。WO 95/06615が流動層噴射顆粒化の例示として参照される。
【0032】
最終的に、固体ソーダまたはその水和物を過酸化水素水溶液に接触させ、乾燥させることを含む方法により製造された過炭酸ナトリウムがまた本発明の粒子の中心となり得る。
【0033】
洗剤内容物の存在下に過炭酸ナトリウム中心の高い内部安定性の側面において、平均粒径が0.5mm超過、特に好ましくは0.5〜1mmの範囲であれば特に有利である。粒子スペクトルは0.2mm未満の粒子は実質的に含まないことが有利である。
【0034】
好ましくは、直径が0.4mm未満である粒子の分画は10重量%未満、特に好ましくは5重量%未満である。
【0035】
2つ以上の層で被覆された過炭酸ナトリウム粒子の直径は、過炭酸ナトリウムの中心のものよりただ若干更に大きいだけである。一般的に、過炭酸ナトリウムの中心における全体被覆の厚さは20μm未満である。2つ以上がある層の層厚さは、好ましくは2〜15μm、更に好ましくは4〜10μmの範囲である。本発明による被覆された過炭酸ナトリウム粒子の最内層シェルの量は、一般的にアルカリ金属ケイ酸塩を含有する外層のものより遥かに多い比率を占めるため、最内層の厚さはまたアルカリ金属ケイ酸塩を含有する外層のものよりさらに大きい。
【0036】
用語“アルカリ金属ケイ酸塩を含有する外層シェル”は、2つ以上の層を含む被覆の最外層シェルまたは交互に被覆され得るか、または1つ以上の層を被覆できるシェル層を意味する。
【0037】
以下の発明の詳細な説明において、個々の層は、先行技術におけるのと同様に言及され得るが、各層の上部にある成分は少なくとも境界領域において互いに透過することができる点に留意しなければならない。上記の少なくとも部分的な浸透は、最内層シェルを有する過炭酸ナトリウムが被覆される間、第2シェル層のシェル成分を含有する溶液が噴射されるとき、上記シェル層が少なくとも部分的に表面に溶解するという事実に起因する。
【0038】
過炭酸ナトリウムの被覆物は、自体公知の方法により行われる。原則的に、被覆される粒子はできるだけ均一になるように1つ以上のシェル成分を含有する溶液と1回以上接触させ、同時にまたは後続的に乾燥させる。例えば、接触させることは、顆粒化プレート上においてまたはミキサー、例えばタンブラーミキサー内において有効であり得る。被覆物は、特に好ましくは流動層被覆物で行われるが、ここで先ず最内層を形成するためのシェル成分(等)を含有する第1溶液及び引き続き外層形成のためのシェル成分(等)を含有する第2溶液が過炭酸ナトリウムまたは流動層内にある1つ以上の層で被覆された過炭酸ナトリウム上に噴射され、流動層気体と同時に乾燥される。流動層気体は、任意の所望の気体、特に空気、燃焼気体で直接加熱された、CO含量が例えば0.1〜約15%の範囲である空気、純粋なCO、窒素及び不活性気体であり得る。流動層被覆物の詳細な説明のために導入部において言及した文献が参考となる。
【0039】
本発明による過炭酸ナトリウム粒子は、最内層シェルに水和物の形成が可能な1つ以上の無機塩を含有する。これに加えて、最内層シェルはまた安定化作用を有するその他の無機塩及び/または有機化合物、例えばカルボン酸またはヒドロカルボン酸のアルカリ金属塩を含有することができる。最内層シェルは、特に好ましくはアルカリ金属硫酸塩、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属重炭酸塩、アルカリ金属ホウ酸塩及びアルカリ金属過ホウ酸塩からなる系列由来の1つ以上の塩を含有する。上記塩はリチウム塩、ナトリウム塩及びカリウム塩であり得るが、ナトリウム塩が好ましい。
【0040】
代案としての具現例によると、最内層はまたマグネシウム硫酸塩をそれ自体でまたは1つ以上の上記言及された塩との混合物として含有することができる。
【0041】
特に好ましい具現例によると、最内層シェルは実質的に硫酸ナトリウムを含有し、これはまた水和された形態のうちの一部として存在できる。用語“実質的に”は、セスキカーボネートまたはウェークシャンダー(Wegscheider)塩のような重炭酸ナトリウムの二重塩または重炭酸ナトリウムが少なくとも過炭酸ナトリウムの中心及び最内層間の境界層に含まれ得ることを意味する。
【0042】
本発明による被覆された過炭酸ナトリウム粒子の最内層シェルは、一般的に被覆された過炭酸ナトリウムを基準として2〜20重量%まで占める。言及されたシェル量は、水和されない形態のシェルである。最内層シェルは、好ましくは被覆された過炭酸ナトリウムを基準として非水和形態として計算して3〜10重量%、特に好ましくは4〜8重量%を占める。最内層シェルは水和可能な無機塩を含有するため、水和物の形成による湿った雰囲気における保管によりシェル量が増加し得る。
【0043】
本発明による被覆された過炭酸ナトリウム粒子は最内層上に1つ以上の外層を含有する。最内層シェル上に直接配列された上記外層のうちの1つは、好ましくはアルカリ金属ケイ酸塩を含有する本発明による層である。上記層を作るために用いられるアルカリ金属ケイ酸塩を含有する溶液中のアルカリ金属ケイ酸塩の係数は2.5超過、好ましくは3〜5、特に好ましくは3.2〜4.2の範囲である。係数はSiO対MOのモル比(ここで、Mはアルカリ金属を示し、これによりリチウム、ナトリウムまたはカリウムあるいはアルカリ金属の混合物を示す)である。ケイ酸ナトリウムが好ましい。
【0044】
本発明の特に好ましい具現例によると、アルカリ金属ケイ酸塩を含有する外層は、実質的にアルカリ金属ケイ酸塩を含有する層であり、ケイ酸ナトリウムが特に好ましい。用語“アルカリ金属ケイ酸塩”は係数を考慮することによって分かるように、言及された平均係数を提供する全てのアルカリ金属ケイ酸塩を意味するものと理解される。噴射溶液として用いられるアルカリ金属ケイ酸塩溶液は、好ましくはいわゆる水ガラス溶液であり、特にナトリウム水ガラス溶液である。
【0045】
最内層シェルがアルカリ性作用を有する成分、例えば炭酸ナトリウムを含有する場合、最内層シェル上のアルカリ金属ケイ酸塩層上の係数が多少低くなることがあり、これにより溶解時間を短縮できるが、これは、シェル層の内容物間の相互作用が少なくとも境界領域を外れることができないからである。
【0046】
アルカリ金属ケイ酸塩を含有するシェル層を製造するために、流動層気体としてまたはアルカリ金属ケイ酸塩を含有する噴射用液体の推進気体として、COが豊富な気体または純粋なCOを用いることができる。これにより、アルカリ金属ケイ酸塩溶液のpHは被覆する間にさらに低くなり、その結果、被覆された過炭酸ナトリウムの係数及び結果的に溶解時間が増加する。
【0047】
本発明の特に好ましい具現例によると、最内層シェルは実質的に硫酸ナトリウムを含有し、それに近接した外層は実質的にケイ酸ナトリウムを含有し、その係数は3〜5、好ましくは3.2〜4.2の範囲である。特に好ましくは、最内層シェルは2〜10重量%の硫酸ナトリウム(水和物がない形態として計算)を含有し、外層は0.3〜1重量%未満の上記係数を有するケイ酸ナトリウムを含有し、それぞれの場合、被覆された過炭酸ナトリウムを基準とする。
【0048】
2つ以上のシェル層を有する過炭酸ナトリウム粒子であっても、ケイ酸ナトリウムを含有するか、または実質的にケイ酸ナトリウムを含有する1つのシェル層は当業界に公知になっており、本出願の発明者らは、最初に層配列順序が被覆された過炭酸ナトリウム粒子の溶解速度に相当の影響を及ぼすことを見出した。従って、本発明によると、アルカリ金属ケイ酸塩を含有する層は、過炭酸ナトリウムの中心上に直接置かれてはいないが、外層として好ましくは第2層として配列される。本発明による層の配列により、当業界に既に公知になっているような、本発明のものと反対方向の層配列を有する産物に比して水性相に過炭酸ナトリウムをかなり遅く放出する産物が、同量のアルカリ金属ケイ酸塩及びアルカリ金属ケイ酸塩を含有した噴射組成物の同一の係数及び同一の濃度で得られる。本発明による層の配列により、シェル層に極めて少量のアルカリ金属ケイ酸塩で既に得られた生成物が長い溶解時間を有することが可能となる。先行技術において、同一の溶解時間を達成するためには、かなり多くの量のケイ酸塩が必要であった。過炭酸ナトリウムの放出における長い遅延と同時に、さらに少量のアルカリ金属ケイ酸塩により洗濯物の汚染問題を避けることが可能である。
【0049】
低含量のケイ酸塩シェルによる追加の長所は、極めて薄いアルカリ金属ケイ酸塩のシェル層により、流動層被覆物と関連してアルカリ金属ケイ酸塩を含有するただ比較的少ない量のダストしかを発生し得ない。上記少量のダストは、過炭酸ナトリウムの特性を悪化させないことから、流動層噴射顆粒化により過炭酸ナトリウムの製造のための連続工程に導入され得る。
【0050】
通常の品質の水ガラス溶液が、本発明による方法、すなわち、特別な精製なしに、例えば鉄−除去させずに用いられることができ、これは、アルカリ金属ケイ酸塩を含有するシェル層が過炭酸ナトリウムの中心に直接あるのではなく、ただ微量のダストしか得られないからである。
【0051】
本発明による層の配列が、ただ少量のアルカリ金属ケイ酸塩のみが必要な理由のうちの1つであることが明らかである。最内層を適用して過炭酸ナトリウムの中心の表面に比して遥かに柔らかい表面が明らかに生成され、閉鎖された有効シェル層が少量のアルカリ金属ケイ酸塩で製造され得る。
【0052】
本発明に核心的な被覆された過炭酸ナトリウム粒子の追加の特徴は、2〜20重量%、好ましくは3〜15重量%、特に好ましくは5〜10重量%の範囲のアルカリ金属ケイ酸塩の濃度でアルカリ金属ケイ酸塩を含有する水溶液がアルカリ金属ケイ酸塩を含有する外層シェルの製造に用いられることである。特に好ましい具現例によると、本発明による被覆された過炭酸ナトリウム粒子は2〜20重量%、特に5〜10重量%の濃度及び3〜5、好ましくは3.2〜4.2の係数を有するナトリウム水ガラス溶液を用いて製造される。
【0053】
最終的に、噴射速度、すなわち、予定された量のアルカリ金属ケイ酸塩を適用するための噴射時間は溶解時間に影響を与える:噴射時間を増加させることにより、溶解時間を増加させることが可能である。
【0054】
被覆された過炭酸ナトリウム粒子は、外層に0.2〜3重量%の、2.5超過、好ましくは3超過の係数を有するアルカリ金属ケイ酸塩を含有する。アルカリ金属ケイ酸塩の量をさらに減らすことは原則的に可能であるが、このとき、溶解時間の増加による有効効果は単に少ない。同一の方式により、特に長い溶解時間が特別な使用目的のために要望される場合、約3重量%超過、例えば3超過〜5重量%のアルカリ金属ケイ酸塩の増加が可能である。
【0055】
好ましい具現例において、被覆された過炭酸ナトリウム粒子は0.2〜1重量%、好ましくは0.3〜1重量%未満のアルカリ金属ケイ酸塩、好ましくはケイ酸ナトリウムを外層シェルに含有する。上記生成物は、特に酵素含有の固体洗剤における用途に適合する。アルカリ金属ケイ酸塩を含有する外層のただ薄い層厚さにも拘わらず、非常に有効な溶解時間の延長及びこれに伴う過炭酸ナトリウムの放出遅延がある。例えば、平均粒径が0.8mmであり、ケイ酸ナトリウム層が0.5〜1重量%である場合、層厚さは1μm以下である。
【0056】
特に好ましい被覆された過炭酸ナトリウム粒子、例えば特に最内層シェルとして硫酸ナトリウムを含み、外層シェルとして0.3〜1重量%未満のケイ酸ナトリウムを含有することは、溶解時間が5分超過、特に10分超過である。本願における溶解時間は、2g/lの濃度、15℃の水中で95%溶解に対する伝導測定モニタリングにより決められた時間を意味する。
【0057】
最内層シェル及びケイ酸ナトリウムを含有する外層シェルに追加して、被覆された粒子が1つ以上の追加的なシェル層を有し、これは閉鎖されたり、または閉鎖されないこともあり、外層がアルカリ金属ケイ酸塩を含有し、これが好ましくは純粋なケイ酸ナトリウム層である場合に有利である。
【0058】
好ましい具現例によると、最外層シェルのシェル成分は、粒子の表面を全部または一部被覆する、微細分割された無機性または有機性の非流動性補助物質である。最内層シェル上に実質的にアルカリ金属ケイ酸塩の層を有する過炭酸ナトリウム粒子が凝固する危険性は、非流動性補助物質の存在により回避できる。特に、適合する非流動性補助物質は、酸化物、混合酸化物及びケイ酸塩からなる系列由来の微細分割された無機性化合物であり;これらの物質は、天然または合成起源であり得る。
【0059】
ナノ規模の物質、例えば沈殿した発熱シリカ、アルミニウム酸化物及び二酸化チタンは、親水性または疎水性であり得、特に適合する。無水ケイ酸物質のうち、特に発熱性で製造されたアルミニウムケイ酸塩及び珪藻土が例として言及される。上記物質は、BET比表面積が好ましくは20〜500m/gであり、上記物質の極めて少ない使用量だけでも有効シェル層の形成に十分である。
【0060】
被覆された粒子、特に被覆された過炭酸ナトリウム粒子の製造は、好ましくは2つ以上のシェル層を製造する自体公知の被覆工程、好ましくは流動層被覆工程が含まれる。上記工程は、主成分としてのアルカリ金属ケイ酸塩を含有する外層シェルの製造においてアルカリ金属ケイ酸塩の濃度が2〜20重量%の範囲であり、SiO対MO(M=アルカリ金属)の係数が2.5超過であるアルカリ金属ケイ酸塩を含有する水溶液が用いられ、上記溶液が、流動層内に1つ以上の水和物形態のシェル成分における1つ以上の最内層シェルを有すると同時に、外層が0.2〜3重量%のアルカリ金属ケイ酸塩を含有するまで水を蒸発させる過炭酸ナトリウム粒子上に噴射されることを特徴とする。
【0061】
好ましい具現例によると、係数が3〜5の範囲であり、アルカリ金属ケイ酸塩の含量が2〜15重量%、特に5〜10重量%であるアルカリ金属ケイ酸塩溶液が用いられてアルカリ金属ケイ酸塩を含有するシェル層を形成する。好ましくは、上記溶液は、特に本願においてナトリウム水ガラス溶液であるが、外層シェルが0.3〜2重量%、好ましくは0.3〜1重量%未満のアルカリ金属ケイ酸塩、特にケイ酸ナトリウムを含有するようにする量で、1つ以上の最内層シェルを含む過炭酸ナトリウム粒子上に噴射される。
【0062】
流動層被覆物のための単位体の容量が希アルカリ金属ケイ酸塩溶液の使用により減少しすぎないようにするために、流動層気体の温度及び/またはその流速を増加させることにより噴射時間を一定に維持することが可能である。それにも拘わらず、溶解時間の増加は、上記測定により最適とならないことがある。
【0063】
一具現例によると、閉鎖または非閉鎖シェル層は、通常の流動層被覆により主成分としてアルカリ金属ケイ酸塩を含有する外層シェルに適用され得る。
【0064】
代案としての好ましい具現例によると、非流動性補助物質は、過炭酸ナトリウム粒子を極めて微細分割された非流動性補助物質に接触させて2つ以上の層で被覆された過炭酸ナトリウム粒子に適用することができる。用いられる非流動性補助物質の量は、好ましくは1重量%より著しく少なく、特に好ましくは、0.5重量%未満である。例えば、被覆物単位体から離れた被覆された過炭酸ナトリウムを落下パイプ(fall pipe)または気体輸送用パイプあるいは混合気中の微粉性の非流動性補助物質と接触させることが可能であり、上記補助物質は、被覆された過炭酸ナトリウム粒子の表面に吸収される。
【0065】
本発明の方法として、被覆された過炭酸ナトリウム粒子が過炭酸ナトリウムを放出し、これにより制御される方式で水性相中の活性酸素を信頼できる方式で得ることができる。これにより、被覆された過炭酸ナトリウムの溶解時間は、酵素含有洗剤の使用条件に対する目的とする方式に対応できる。
【0066】
本発明は、さらに、洗剤、漂白組成物及び洗滌組成物における漂白剤としての本発明による粒子、特に被覆された過炭酸ナトリウム粒子の用途を提供する。洗剤、漂白組成物及び洗滌組成物は、特に1つ以上の酵素を含むものである。上記組成物は、2〜50重量%、好ましくは10〜40重量%、特に15〜25重量%の本発明による被覆された過炭酸ナトリウムを含有する。本発明により被覆された漂白作用のある粒子は、任意の所望の組成で洗剤、漂白組成物及び洗滌組成物において用いることができる。上記組成物は、漂白成分に加えて主成分として下記を含有する:
◆カチオン性、アニオン性、ノニオン性、両性イオン性(amphoteric)及び両性(ampholytic)界面活性剤からなる系列の界面活性剤。
◆無機性及び/または有機性の石鹸混和剤(builder)であり、その主な作用は、水の硬化に原因を提供する金属イオンの隔離または錯化を含む。例としては:ゼオライト、ラミナーケイ酸塩、ポリフォスフェート、アミノポリ酢酸、アミノポリホスホン酸及びポリオキシカルボン酸。
◆アルカリ性作用を有する成分、例えばアルカノールアミン;無機性電解質、例えばケイ酸塩、炭酸塩及び硫酸塩。
◆N−アシル化合物及びO−アシル化合物からなる系列の漂白活性化剤、例えばテトラアセチルエチレンジアミン(TAED)及びノナノイルオキシベンゼンスルホネート(NOBS)。
◆酵素、例えば、特にリパーゼ、クチナーゼ、アミラーゼ、中性及びアルカリ性プロテアーゼ、エステラーゼ、セルラーゼ、ペクチナーゼ、ラクターゼ及びパーオキシダーゼ。
◆組成物の追加の内容物が過酸化物の安定化剤であり得、例えば特にマグネシウム塩、再析出防止剤、光学漂白剤(optical brightener)、発泡防止剤、殺菌消毒剤(disinfectant)、防腐剤、香料、染料物質及びpH調節剤。
【0067】
本発明は、下記の実施例によりさらに詳しく説明される。実験は、外層シェルを形成するためのナトリウム水ガラス溶液の使用濃度が全く予想できない効果、同様に予想できなかった極めて薄いケイ酸ナトリウム層による高い効果及び係数、並びに層配列の影響を示す。
【0068】
実施例(一般的な指示事項)
特に断らない限り、平均粒径が750μmであり、微粒子(200μm未満)含量が実質的に0%である過炭酸ナトリウムは、WO 95/19890による流動層のうち実質的に硫酸ナトリウムである第1シェル層で被覆される。それぞれの場合、1,000gの過炭酸ナトリウムで被覆された産物を基準として、水和物のない形態として計算された6重量%の硫酸ナトリウムのシェル層を有するものが被覆された。上記方式で被覆された産物は、流動層被覆物単位体(Strea 1−芳香族)中の水ガラス溶液で被覆され、これは第2シェル層を提供する。噴射は約60℃の流動層温度で行われた。空気が約100℃の領域内における吸収温度で流動性気体として提供された。噴射後、供給気体の温度はやや低くなり、事後乾燥が75℃の流動層温度で行われた。
【0069】
使用量、係数及びナトリウム水ガラスの濃度だけでなく、分単位の溶解速度(2gの産物/水1L、15℃、伝導測定で測定された95%の溶解)が下記の表で分かる。
【0070】
実施例1〜3
水で希釈し、係数が3.35であるナトリウム水ガラス溶液(Na−WG)を被覆物に用いた。噴射される溶液の濃度は多様であった。市販されていて入手可能な、固体含量が36重量%であるNa水ガラス溶液が噴射溶液の製造に用いられた。1層で被覆された過炭酸ナトリウムは、それぞれの場合0.75重量%のケイ酸ナトリウム(係数3.35)で被覆された。
【0071】
実施例1〜3における噴射時間は、それぞれの場合約20分であった。噴射溶液における濃度の関数としての溶解時間は、表1に示した。溶解時間は、噴射溶液中のNa−WG濃度の減少と共に顕著に増加するものと示されており、すなわち過炭酸ナトリウムは増加傾向に遅延する方式で、水性相中の被覆された産物から放出される。
【0072】
【表1】

【0073】
実施例4〜8
第1段階において、粒子の範囲が0.4mm超過である過炭酸ナトリウムが3〜6重量%の範囲のシェル量により硫酸ナトリウムで被覆された。上記方式で被覆された産物は、それぞれの場合第2段階において10重量%のナトリウム水ガラス溶液を用いて被覆されており、これを製造するためには、係数が3.34であり、固体濃度が36.6重量%である、市販されていて入手可能なNa−WG溶液(実施例1〜3と異なる)が用いられた。シェル層中のケイ酸ナトリウムの量は、それぞれの場合0.75重量%であった。結果を表2に示した。
【0074】
【表2】

【0075】
実施例9及び10
6重量%のNaSOで被覆された過炭酸ナトリウム(最内層)をそれぞれ1.5及び3.0重量%のケイ酸ナトリウムで被覆した。固体含量が10重量%になるように希釈し、係数が3.34で濃度が35.4重量%である、市販されていて入手可能なナトリウム水ガラス溶液が用いられた。結果を表3に示した。
【0076】
【表3】

【0077】
実施例11及び12
過炭酸ナトリウムは、係数が3.4である水ガラス溶液からの0.75重量%ケイ酸ナトリウム(第1層)で被覆させた後、6重量%の硫酸ナトリウム(第2層)で被覆させた。ケイ酸ナトリウム層は、10重量%のケイ酸ナトリウム(係数3.4)が含まれた噴射溶液を用いて製造した。実施例E11の層の配列は、本発明によるものではない。
【0078】
2つの層で被覆された本発明による実施例E12の過炭酸ナトリウムは、同一の噴射溶液及び同一の過炭酸ナトリウムを用いて製造されたが、層の配列は逆順であり、すなわち本発明によるものであった。表4は結果を示す。本発明によらない実施例の溶解時間は、本発明による実施例のものに比して相当短かった。
【0079】
【表4】

【0080】
実施例13:
6重量%のNaSOで被覆された重炭酸ナトリウム(実施例4に該当)は、係数が4.1であり、濃度が28.5重量%である、市販されていて入手可能なNa水ガラスで製造された10重量%のNa水ガラス溶液を用いて流動層に噴射して第2層を製造した。第2層のシェル量は0.75重量%のケイ酸ナトリウムである。
【0081】
実施例13の産物の溶解時間は21分であった。類似するように製造されたが、係数が3.34であるNa水ガラス溶液(実施例5と同等)を使用した産物の溶解時間は11分であった。これにより、溶解時間は係数増加につれて増加する。
【0082】
実施例14及び15:
6重量%のNaSO(Degussa製造のQ35)で被覆された、市販されていて入手可能な過炭酸ナトリウムを、係数が3.2であり、固体(NaO+SiO)濃度が32.9重量%である、市販されていて入手可能なNa−WG溶液で製造された5重量%のナトリウム水ガラス溶液を用いて被覆させた。シェル量及び溶解時間を表5に示した。
【0083】
【表5】

【0084】
実施例16〜18
6重量%のNaSO(本出願人製造のQ30及びQ35)で被覆された、市販されていて入手可能な過炭酸ナトリウムを、係数が3.2である10重量%のナトリウム水ガラス溶液を用いて150kg規模のパイロットプラントにおいて被覆した。被覆は、US特許明細書6,239,095の方法と類似するように行われた。ケイ酸ナトリウムのシェル量、粒子の範囲及び溶解速度を表6に示した。
【0085】
【表6】

【0086】
本発明による実施例はまた、実質的に最内層により決められる貯蔵の間の高活性酸素の安定性による活性酸素の遅延放出(溶解時間)で区分される。
【0087】
表7は、2つの層及びE2洗剤包装内において35℃及び80%の相対大気圧湿度で貯蔵されたQ35を用いて被覆された実施例17及び18の産物のゼオライト含有強性洗剤(heavy−duty detergent)における貯蔵安定性を示す。少量が用いられることによって厚さが薄いにも拘わらず、第2層のケイ酸ナトリウムにより安定性において予想外の高い増加が得られた。実施例E17及びE18の相対的残留Oの差は、試験の可変領域内にあり、従って2種の生成物がほぼ同一の安定性を有する。
【0088】
【表7】

【0089】
TAM値(TAM=erminal ctivity onitor:末端活性モニタリング)は、硫酸ナトリウムで被覆されたNaPcに対する極めて薄いケイ酸ナトリウム層の適用により、TAM値が予測不可能な方式で極めて顕著に減少することを示す。従って、被覆された粒子の内部安定性は顕著に増加する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
過酸素化合物の中心上に2つ以上のシェル層を含む、水性相における活性酸素の放出が遅延する被覆された微粒子性過酸素化合物、特に被覆された過炭酸ナトリウム粒子であって、被覆された粒子を基準として2〜20重量%を占める最内層が1つ以上の水和物形成の無機塩を含有し、外層は2.5を超過するSiO対MO(M=アルカリ金属)の係数を有するアルカリ金属ケイ酸塩を含有し、
外層が被覆された粒子を基準として0.2〜3重量%の量でアルカリ金属ケイ酸塩を主成分として含み、アルカリ金属ケイ酸塩の濃度が2〜20重量%の範囲であるアルカリ金属ケイ酸塩を含有する水溶液を用いて製造されることを特徴とする被覆された粒子。
【請求項2】
3〜5、特に3.2〜4.2の範囲の係数及び3〜15重量%、特に5〜10重量%の濃度を有するアルカリ金属ケイ酸塩溶液を用いて外層が製造されることを特徴とする請求項1に記載の被覆された粒子。
【請求項3】
2〜20重量%、特に5〜10重量%のケイ酸ナトリウムからなるように希釈されたナトリウム水ガラス溶液を用いて外層が製造されることを特徴とする請求項1または2に記載の被覆された粒子。
【請求項4】
アルカリ金属ケイ酸塩を含有する外層シェルが被覆された粒子を基準として0.3〜1重量%未満のアルカリ金属ケイ酸塩を含有し、溶解時間(15℃、2g/lで水に95%溶解する時間)が5分超過、特に10分を超過することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の被覆された粒子。
【請求項5】
最内層シェルは被覆された粒子を基準として水和物のない形態として計算して2〜10重量%を占め、実質的にアルカリ金属硫酸塩、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属重炭酸塩、重炭酸ナトリウムの混合塩、アルカリ金属ホウ酸塩及びアルカリ金属過ホウ酸塩からなる系列からの1つ以上の塩を含有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の被覆された粒子。
【請求項6】
2または3つのシェル層を有し、最内層が硫酸ナトリウム及び3〜5の範囲の係数を有するケイ酸ナトリウムをその上に実質的に含有する層を実質的に含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の被覆された粒子。
【請求項7】
各々の場合の被覆された粒子を基準として、最内層が実質的に2〜10重量%の硫酸ナトリウムからなり、実質的にケイ酸ナトリウムを含有する外層は0.3〜1重量%未満のケイ酸ナトリウムを含有することを特徴とする請求項6に記載の被覆された粒子。
【請求項8】
金属ケイ酸塩を含有するか、または好ましくは実質的にこれよりなる外層に1つ以上の追加的な閉鎖または部分的に開放されたシェル層を有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の被覆された粒子。
【請求項9】
微細粒子化された無機性または有機性の非流動性補助物質、特に親水性または疎水性であり得る沈殿及び発熱シリカ、アルミニウム酸化物、チタン二酸化物、アルミニウムケイ酸塩及び珪藻土からなる系列からの非流動性補助物質をその表面に有することを特徴とする請求項8に記載の被覆された粒子。
【請求項10】
平均粒子直径が0.5〜1mmであり、0.2mm未満の粒子を実質的に含んでおらず、流動層被覆物により被覆されることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の被覆された粒子。
【請求項11】
10値が0.35mm以上、特に0.5mm以上であることを特徴とする請求項10に記載の被覆された粒子。
【請求項12】
0.4mm未満の直径を有する粒子の分画が10重量%未満、特に5重量%未満であることを特徴とする請求項10に記載の被覆された粒子。
【請求項13】
請求項1乃至11のいずれか1項に記載の被覆された微粒子性過酸素化合物、特に被覆された過炭酸ナトリウム粒子の製造方法であって、
特に過炭酸ナトリウム粒子のような被覆される粒子を被覆することを含み、
前記粒子を1つ以上のシェル成分を含有する水溶液に接触させて乾燥させ、2つ以上のシェル層が形成され、
アルカリ金属ケイ酸塩を主成分として含有する外層シェルの製造のために、アルカリ金属ケイ酸塩の濃度が2〜20重量%の範囲であり、SiO対MOの係数(M=アルカリ金属)が2.5超過であるアルカリ金属ケイ酸塩を含有する水溶液を用い、前記溶液を1つ以上の水和物形成シェル成分の1つ以上の最内層シェルを有する粒子に噴射すると同時に、またはその後に、外層が0.2〜3重量%のアルカリ金属ケイ酸塩を含有するまで水を蒸発させることを特徴とする方法。
【請求項14】
3〜15重量%、特に5〜10重量%のアルカリ金属ケイ酸塩の含量を有するアルカリ金属ケイ酸塩溶液、特にナトリウム水ガラス溶液を噴射することを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
被覆された過炭酸ナトリウムを基準として水和物のない形態として計算された、実質的に硫酸ナトリウムである3〜10重量%の最内層を過炭酸ナトリウム粒子に適用した後、ケイ酸ナトリウムの濃度が5〜10重量%の範囲であり、係数が3〜5の範囲であるケイ酸ナトリウムを実質的に含有するナトリウム水ガラス溶液をその上に噴射し、0.2〜3重量%、特に0.3〜1重量%未満のケイ酸ナトリウムを適用した後、噴射を終了することを特徴とする請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
アルカリ金属ケイ酸塩を含有する外層を、1つ以上の最内層シェルを有する粒子に対する流動層コーティングにより適用することを特徴とする請求項13乃至15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
1つ以上の水和可能な塩の最内層及び主成分としてのアルカリ金属ケイ酸塩の外層で被覆された過炭酸ナトリウムを有効量の微粉性であり無機性である非流動性の補助物質と接触させることを特徴とする請求項13乃至16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
請求項1乃至11のいずれか1項、または請求項13乃至17のいずれか1項により製造された被覆された過酸素化合物、特に被覆された過炭酸ナトリウム粒子の、漂白組成物、洗剤及び洗滌用組成物、特に過炭酸ナトリウムが水性相において遅延した方式で放出されるものにおける漂白成分としての用途。

【公表番号】特表2006−511438(P2006−511438A)
【公表日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−502531(P2005−502531)
【出願日】平成15年12月2日(2003.12.2)
【国際出願番号】PCT/EP2003/013535
【国際公開番号】WO2004/056954
【国際公開日】平成16年7月8日(2004.7.8)
【出願人】(501073862)デグサ アクチエンゲゼルシャフト (837)
【Fターム(参考)】