制御棒駆動装置ハウジングの溶接治具および溶接装置
【課題】シールドガスを適宜導入し、かつ容易に制御棒駆動装置ハウジングの溶接を行うこと。
【解決手段】円筒状に形成された制御棒駆動装置ハウジングにて円周状に設けられるキャノピーシール166を円周に沿って溶接するための制御棒駆動装置ハウジングの溶接治具1であって、キャノピーシール166の円周に沿って円環状に形成され、内周面をキャノピーシール166の開先部に向けて配置される治具本体2と、治具本体2の円環状の外側に導入口3aを有するとともに治具本体2の内周面側に排出口を有して治具本体2の内部を貫通するガス導入部3と、治具本体2の一部が切り欠かれて形成され当該治具本体2の円環状の外側と内側とを開通する溶接トーチ配置部4と、治具本体2に設けられ制御棒駆動装置ハウジングに接触することで治具本体2の内周面がキャノピーシール166の開先部に対向した位置となるように治具本体2を保持するガイド部5とを備える。
【解決手段】円筒状に形成された制御棒駆動装置ハウジングにて円周状に設けられるキャノピーシール166を円周に沿って溶接するための制御棒駆動装置ハウジングの溶接治具1であって、キャノピーシール166の円周に沿って円環状に形成され、内周面をキャノピーシール166の開先部に向けて配置される治具本体2と、治具本体2の円環状の外側に導入口3aを有するとともに治具本体2の内周面側に排出口を有して治具本体2の内部を貫通するガス導入部3と、治具本体2の一部が切り欠かれて形成され当該治具本体2の円環状の外側と内側とを開通する溶接トーチ配置部4と、治具本体2に設けられ制御棒駆動装置ハウジングに接触することで治具本体2の内周面がキャノピーシール166の開先部に対向した位置となるように治具本体2を保持するガイド部5とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子炉容器の上部に配置されて炉心に対して制御棒を出し入れする制御棒駆動装置の組み立てや補修の際に用いられる、制御棒駆動装置ハウジングの溶接治具および溶接装置に関する。
【背景技術】
【0002】
加圧水型原子炉(PWR:Pressurized Water Reactor)は、炉心内で生成される中性子を制御棒により吸収することで、その中性子数を調整し、原子炉出力を制御している。そのため、この制御棒は、予め炉心を構成する燃料集合体の内部に分散して複数組み込まれており、一括して制御される。各制御棒は、原子炉容器の上部に配置された制御棒駆動装置(CRDM:control rod drive mechanism)により炉心に対して出し入れされる。
【0003】
加圧水型原子炉用の制御棒駆動装置としては、一般に、磁気式ジャッキが多く適用される。この磁気式ジャッキは、制御棒駆動軸を間欠的に把持するラッチを、電磁力を利用して動かして制御棒駆動軸を軸方向に駆動するもので、円筒状の制御棒駆動装置ハウジング内に収納されている。制御棒駆動装置ハウジングは、制御棒駆動軸を内装する駆動軸ハウジング、駆動軸ハウジングの周りを囲むとともに電磁コイルやラッチを内装するラッチハウジング、および駆動軸ハウジングの上端部を塞ぐキャップから構成されている。ラッチハウジングは、その下端が原子炉容器蓋に貫通して溶接された管台に連結されている。駆動軸ハウジングは、ラッチハウジングの上端から挿入されて当該ラッチハウジングに連結されている。キャップは、駆動軸ハウジングの上端に連結されている。そして、制御棒駆動軸が故障した場合を想定し、制御棒駆動軸を取り出すために、管台およびラッチハウジング、ラッチハウジングおよび駆動軸ハウジング、駆動軸ハウジングおよびキャップは、相互にネジ結合により分離自在に連結されている。また、制御棒駆動装置ハウジングの内部は、原子炉容器蓋内の高温高圧の冷却材空間に連通しているため、ネジ面を伝う冷却材の漏れが考えられることから、接合ネジ面の外端側は、キャノピーシールと称する円周シール溶接で閉じられている。このキャノピーシールは、断面がドーム状であり、溶接部の断面形状の変化が少なく、ネジ面を伝う冷却材の高圧を好適にシールし、かつ分解時の切断が容易である(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このような制御棒駆動装置を組み立てる際や補修の際には、制御棒駆動装置ハウジングのキャノピーシールを溶接することになるが、キャノピーシールは、制御棒駆動装置ハウジングの外径に沿って円周状に設けられているために当該円周状に沿って溶接しなければならず、しかも内部が密閉されるためにTIG溶接時のシールドガスを外側から導入しなければならない。このため、従来では、キャノピーシールの開先部にインサートリングを仮付けし、このインサートリングの一部に設けられた切欠穴から注射のようにシールドガスを注入しつつ、周状に溶接していた。このような溶接作業は、非常に手間がかかるとともに、シールドガスがキャノピーシール内に閉じ込められてしまう問題があった。
【0005】
なお、例えば、特許文献2に記載の片面TIG溶接方法は、溶接トーチからシールドガスを噴出させながら移動させることによって被溶接物に溶接ビードを形成することが記載されている。しかしながら、上述したキャノピーシールのような円周状の部分に対し、シールドガスの空間を設けながら溶接を行うことは容易ではなく、上述した問題を解消することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−123276号公報
【特許文献2】特開昭59−24578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するものであり、シールドガスを適宜導入し、かつ容易に溶接を行うことのできる制御棒駆動装置ハウジングの溶接治具および溶接装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するために、本発明の制御棒駆動装置ハウジングの溶接治具は、円筒状に形成された制御棒駆動装置ハウジングにて円周状に設けられるキャノピーシールを円周に沿って溶接するための制御棒駆動装置ハウジングの溶接治具であって、前記キャノピーシールの円周に沿って円環状に形成され、内周面を前記キャノピーシールの開先部に向けて配置される治具本体と、前記治具本体の円環状の外側に導入口を有するとともに前記治具本体の内周面側に排出口を有して前記治具本体の内部を貫通するガス導入部と、前記治具本体の一部が切り欠かれて形成され当該治具本体の円環状の外側と内側とを開通する溶接トーチ配置部と、前記治具本体に設けられ前記制御棒駆動装置ハウジングに接触することで前記治具本体の内周面が前記キャノピーシールの開先部に対向した位置となるように前記治具本体を保持するガイド部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
この制御棒駆動装置ハウジングの溶接治具によれば、ガス導入部の導入口からシールドガスを供給し、キャノピーシールの円周に沿って治具本体を回転させながら、溶接トーチ配置部の位置に配置した溶接トーチでキャノピーシールの開先部を溶接する。これにより、溶接時のシールドガスを開先部に適宜導入し、かつキャノピーシールの円周に沿って容易に溶接を行うことができる。
【0010】
また、本発明の制御棒駆動装置ハウジングの溶接治具は、前記治具本体の円環状を開閉する開閉部をさらに備えることを特徴とする。
【0011】
この制御棒駆動装置ハウジングの溶接治具によれば、開閉部によって治具本体の円環状を開けることで、円筒状の制御棒駆動装置ハウジングの周りに治具本体を容易に装着することができる。
【0012】
上述の目的を達成するために、本発明の制御棒駆動装置ハウジングの溶接装置は、円筒状に形成された制御棒駆動装置ハウジングにて円周状に設けられるキャノピーシールを円周に沿って溶接するための制御棒駆動装置ハウジングの溶接装置であって、前記制御棒駆動装置ハウジングに固定される固定部と、前記制御棒駆動装置ハウジングを中心に回転する態様で前記固定部に設けられた回転部と、前記回転部に設けられており上述の溶接治具を前記キャノピーシールの開先部の位置で支持する溶接治具支持部と、前記回転部に設けられており前記溶接治具の溶接トーチ配置部に溶接トーチを配置する溶接トーチ支持部と、を備えることを特徴とする。
【0013】
この制御棒駆動装置ハウジングの溶接装置によれば、溶接治具を溶接治具支持部に取り付け、固定部によって溶接装置を管台に固定した状態で、溶接治具にシールドガスを供給し、溶接トーチの電極に電圧を印可し、回転部を回転させることで、キャノピーシールの円周に沿ってシールドガスを供給しながらキャノピーシールの開先部を溶接できる。この結果、溶接時のシールドガスを開先部に適宜導入し、かつキャノピーシールの円周に沿って容易に溶接を行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、シールドガスを適宜導入し、かつ容易に制御棒駆動装置ハウジングの溶接を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、制御棒駆動装置を備える原子炉の概略図である。
【図2】図2は、制御棒駆動装置の要部断面図である。
【図3】図3は、制御棒駆動装置ハウジングの一部断面図である。
【図4】図4は、制御棒駆動装置ハウジングの部分拡大断面図である。
【図5】図5は、本発明の実施の形態に係る溶接治具の平面図である。
【図6】図6は、図5のA−A断面拡大図である。
【図7】図7は、図5のB−B断面拡大図である。
【図8】図8は、本発明の実施の形態に係る溶接治具の底面図である。
【図9】図9は、本発明の実施の形態に係る溶接治具の開状態の平面図である。
【図10】図10は、本発明の実施の形態に係る溶接装置の平面図である。
【図11】図11は、本発明の実施の形態に係る溶接装置に溶接治具を取り付けた平面図である。
【図12】図12は、本発明の実施の形態に係る溶接装置に溶接治具を取り付けた正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明に係る実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施の形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0017】
図1は、制御棒駆動装置を備える原子炉の概略図である。なお、以下の説明では、原子炉100の使用時の設置状態における上方を各部においても上方とし、使用時の設置状態における下方を各部においても下方として説明する。図1に示す原子炉100は、エネルギを取り出す際における経路を一次冷却系と二次冷却系とに分離した加圧水型原子炉(PWR:Pressurized Water Reactor)となっている。加圧水型原子炉が使用される原子力発電プラントの概略について説明すると、加圧水型原子炉では、軽水(冷却材)を原子炉冷却材および中性子減速材として使用し、この軽水の循環経路である一次冷却系に加圧器(図示省略)を設けることにより、一次冷却系では軽水を炉心全体にわたって沸騰しない高温高圧水にする。一次冷却系では高温高圧水を、二次冷却系との間で熱交換を行う部分である蒸気発生器(図示省略)に送り、二次冷却系を循環する軽水との間で熱交換を行う。二次冷却系では、この熱交換により蒸気を発生させ、発生した蒸気をタービン発電機(図示省略)へ送ることにより、タービン発電機で発電をする。
【0018】
このように加圧水型原子炉として設けられる本実施の形態に係る原子炉100において、圧力容器として設けられる原子炉容器101は、その内部に炉内構造物が挿入できるように、原子炉容器本体102と、当該原子炉容器本体102の上部に装着されて原子炉容器本体102に対して開閉可能な原子炉容器蓋103と、により構成されている。このうち、原子炉容器本体102は、原子炉100の設置時の上下方向における上部が開口するとともに、下部が球面状に閉塞されたほぼ円筒形の形状で形成されている。また、原子炉容器本体102は、開口側の端部である上端側付近に、一次冷却系で用いる冷却水である一次冷却水としての軽水を給排水する入口ノズル104および出口ノズル105が形成されている。
【0019】
原子炉容器本体102内において、入口ノズル104および出口ノズル105の下方には、ほぼ円筒形の形状で形成される炉心槽110が設けられている。炉心槽110は、ほぼ円筒形の形状で形成され、原子炉容器本体102の内面と所定の隙間を有し、かつ原子炉容器本体102の円筒形に対して中心軸が一致するように設けられている。
【0020】
原子炉容器本体102内において、炉心槽110は、その上部が上部炉心板111に連結されている。上部炉心板111は、円板形状で形成され、かつ多数の連通孔(図示省略)が貫通して形成されており、原子炉容器本体102内に水平に設けられている。また、炉心槽110は、その下部が下部炉心板112に連結されている。下部炉心板112は、上部炉心板111と同様に円板形状で形成され、かつ多数の連通孔(図示省略)が貫通して形成されており、原子炉容器本体102内に水平に設けられている。
【0021】
原子炉容器本体102内において、炉心槽110の上方には、上部炉心支持板113が固定されている。この上部炉心支持板113は、複数の炉心支持ロッド114が吊り下げて設けられ、この炉心支持ロッド114を介して上部炉心板111が吊り下げて支持されている。つまり、上部炉心板111が炉心支持ロッド114を介して上部炉心支持板113に吊り下げ支持されることにより、上部炉心板111に連結される炉心槽110も上部炉心支持板113に吊り下げ支持されている。一方、下部炉心板112は、原子炉容器本体102の内面に対して複数のラジアルキー115により位置決め保持されており、これにより、炉心槽110は、複数のラジアルキー115により原子炉容器本体102の内面に対して位置決め保持されている。
【0022】
そして、このように設けられる炉心槽110と上部炉心板111と下部炉心板112とにより炉心120が形成されている。炉心120は、多数の燃料集合体121が配置される。この燃料集合体121は、多数の燃料棒が支持格子により格子状に束ねられて構成されている。また、燃料集合体121は、制御棒122が挿入可能に構成されている。制御棒122は、複数の上端がまとめられて制御棒クラスタ123とされている。上部炉心板111は、上部炉心支持板113を貫通する多数の制御棒クラスタ案内管124に支持されている。制御棒クラスタ案内管124は、制御棒クラスタ123を案内するもので、原子炉容器蓋103を貫通した上端部が、制御棒駆動装置125まで延出されている。そして、制御棒駆動装置125から延出された後述の制御棒クラスタ駆動軸140が、制御棒クラスタ案内管124内を通って制御棒クラスタ123に繋がり、燃料集合体121まで延出されている。また、図示しないが、上部炉心支持板113には、この上部炉心支持板113を貫通する多数の炉内計装案内管が支持されている。炉内計装案内管は、下端部が燃料集合体121まで延出されており、燃料集合体121に対して中性子束を計測できるセンサを挿入可能に設けられている。
【0023】
また、原子炉容器本体102内において、炉心120の上方に位置して出口ノズル105に連通する部分は、上部プレナム131として形成されている。一方、炉心120の下方に位置し、下部炉心板112と、原子炉容器本体102の下部で球面状の閉塞されている部分の内面とで形成される半球状の空間は、下部プレナム132として形成されている。さらに、原子炉容器本体102と炉心槽110との間に形成され、入口ノズル104と下部プレナム132とに連通する部分は、ダウンカマー部133として形成されている。上部プレナム131は、炉心槽110と上部炉心支持板113と上部炉心板111とで区画されることにより形成され、出口ノズル105に連通するとともに、上部炉心板111に形成された多数の連通孔を介して炉心120に連通している。下部プレナム132は、炉心槽110の底部となる下部炉心板112と原子炉容器本体102とで区画されることにより形成され、下部炉心板112に形成された多数の連通孔を介して炉心120に連通している。ダウンカマー部133は、原子炉容器本体102と炉心槽110の側壁とによって区画されることにより形成され、上部は入口ノズル104に連通しており、下部は下部プレナム132に連通している。
【0024】
このように構成された原子炉100を運転する場合には、冷却材や中性子減速材として用いられる軽水を循環させながら、燃料集合体121を構成する燃料として燃料集合体121に含まれているウラン235やプルトニウムなどの核分裂性物質に対して核分裂反応させる。核分裂性物質に対して核分裂反応をさせる場合には、原子炉容器蓋103に設けられた制御棒駆動装置125によって燃料集合体121への制御棒122の挿入量を調節する。これにより、炉心120内での核分裂反応を制御する。核分裂性物質が核分裂をした場合、熱エネルギが発生するが、燃料集合体121の周囲は循環する軽水が満たされているため、この熱エネルギは燃料集合体121の周囲の軽水に伝達される。これにより、原子炉容器101内に満たされた軽水は加熱される。このように、核分裂反応時に発生する熱エネルギによって加熱された高温の軽水は、出口ノズル105から排出され、蒸気発生器に送られる。
【0025】
つまり、燃料集合体121に含まれている核分裂性物質が核分裂することにより、中性子を放出し、減速材および一次冷却系の冷却水として用いられている軽水が、放出された高速中性子の運動エネルギを低下させて熱中性子にし、新たな核分裂を起こし易くするとともに、発生した熱を奪って冷却する。
【0026】
また、制御棒122は、核分裂性物質の核分裂時に放出される中性子を吸収することにより、炉心120内で生成される中性子数を調節することができるように設けられている。例えば、燃料集合体121への制御棒122の挿入量を増加させた場合には、制御棒122で吸収する中性子の量が増加するため、核分裂性物質を核分裂させる中性子の量が減少する。反対に、制御棒122を引き抜く方向に移動させ、燃料集合体121への制御棒122の挿入量を低減させた場合には、制御棒122で吸収する中性子の量が低減するため、核分裂性物質を核分裂させる中性子の量が増加する。これにより、核分裂性物質が核分裂をする頻度を変化させることができるため、原子炉100の運転時は、制御棒122の挿入量を調節することにより核分裂反応を制御し、核分裂反応によって発生する熱エネルギの量を調節する。
【0027】
また、原子炉100の運転時には、一次冷却系で軽水を循環させるが、この軽水は、入口ノズル104から原子炉容器本体102内に流入し、入口ノズル104と連通するダウンカマー部133を下向きに流れ落ちて下部プレナム132に到達し、流れる向きを下部プレナム132の球面状の内面によって上向きに変える。これにより軽水は下部プレナム132から上昇し、下部炉心板112の連通孔を通過した後、炉心120に流入する。炉心120に流入した軽水は、炉心120に配設される燃料集合体121から発生する熱エネルギを吸収することにより、燃料集合体121を冷却する。一方、高温となって上部炉心板111まで上昇する。上部炉心板111に到達した高温の軽水は、上部炉心板111の連通孔を通過して上部プレナム131まで上昇し、出口ノズル105を通って原子炉容器本体102から排出される。
【0028】
図2は、制御棒駆動装置の要部断面図である。図2に示すように、制御棒駆動装置125の制御棒クラスタ駆動軸140は、後述する駆動軸ハウジング161内で軸方向(長手方向)に移動自在に設けられている。制御棒クラスタ駆動軸140は、その表面に複数の周溝140aが長手方向(上下方向)に等ピッチで形成されている。また、制御棒駆動装置125は、保持機構146が設けられている。保持機構146は、制御棒クラスタ駆動軸140の周溝140aの1つに係合離反可能に設けられた固定つかみラッチ142と、この固定つかみラッチ142をラッチリンク143およびプランジャ144を介して駆動する固定つかみコイル145とを有し、固定つかみラッチ142を周溝140aに係合させることにより制御棒クラスタ駆動軸140を保持するものである。また、制御棒駆動装置125は、駆動機構152が設けられている。駆動機構152は、制御棒クラスタ駆動軸140の周溝140aの1つに係合離反可能に設けられた可動つかみラッチ147と、この可動つかみラッチ147をラッチリンク148およびプランジャ149を介して駆動する可動つかみコイル150と、ラッチリンク148およびプランジャ149を上下方向に移動させる上げコイル151とを有し、制御棒クラスタ駆動軸140を上下動させるものである。
【0029】
なお、図2において、符号153は、固定つかみコイル145に励磁される固定取手磁極、符号154は、可動つかみコイル150に励磁される可動取手磁極、符号155は、上げコイル151に励磁される上げ磁極である。また、符号156a〜156cはリターンスプリングである。
【0030】
固定つかみコイル145により固定取手磁極153が消磁されて固定つかみラッチ142が制御棒クラスタ駆動軸140の周溝140aから離反される。一方、可動つかみコイル150により可動取手磁極154が励磁されて可動つかみラッチ147が制御棒クラスタ駆動軸140の周溝140aに係合された状態から、上げコイル151により上げ磁極155を励磁すると、可動取手磁極154および可動つかみラッチ147が可動つかみコイル150とともにリターンスプリング156aの付勢力に抗して上げ磁極155側に吸引され、制御棒クラスタ駆動軸140を周溝140aの1ピッチ分上昇することができる。
【0031】
次に、固定つかみコイル145により固定取手磁極153が励磁されて固定つかみラッチ142が制御棒クラスタ駆動軸140の周溝140aに係合された後、可動つかみコイル150により可動取手磁極154が消磁されるとともに、上げコイル151により上げ磁極155が消磁されると、可動つかみラッチ147が制御棒クラスタ駆動軸140の周溝140aから離反され、リターンスプリング156aの付勢力で可動取手磁極154および可動つかみラッチ147が可動つかみコイル150とともに下降することができる。
【0032】
そして、可動つかみコイル150により可動取手磁極154が励磁されて可動つかみラッチ147が制御棒クラスタ駆動軸140の周溝140aに係合された後、固定つかみコイル145により固定取手磁極153が消磁されて固定つかみラッチ142が制御棒クラスタ駆動軸140の周溝140aから離反された状態から、上述した動作を繰り返すことで制御棒クラスタ駆動軸140は所定ピッチまで上昇することができる。なお、制御棒クラスタ駆動軸140を下降させるには、上述した動作の逆動作を行えばよい。
【0033】
図3は、制御棒駆動装置ハウジングの一部断面図であり、図4は、制御棒駆動装置ハウジングの部分拡大断面図である。制御棒駆動装置ハウジング160は、円筒状に形成され、図1に示すように、上述した制御棒クラスタ駆動軸140を内装する駆動軸ハウジング161と、駆動軸ハウジング161の外周の一部を囲むように上述した保持機構146や駆動機構152を内装するラッチハウジング162と、駆動軸ハウジング161の上端を閉塞するキャップ163とから構成されている。また、ラッチハウジング162は、その下端が原子炉容器蓋103に貫通して溶接された円筒状の管台164に連結されている。そして、駆動軸ハウジング161は、ラッチハウジング162の上端から挿入されて当該ラッチハウジング162に連結される。そして、制御棒クラスタ駆動軸140が故障した場合を想定し、当該制御棒クラスタ駆動軸140を取り出すため、管台164およびラッチハウジング162、ラッチハウジング162および駆動軸ハウジング161、駆動軸ハウジング161およびキャップ163は、相互にネジ結合により分離自在に連結されている。図3では、管台164およびラッチハウジング162が連結されている部分を示す。また、制御棒駆動装置ハウジング160の内部は、原子炉容器蓋103内の高温高圧の冷却材空間に連通しているため、ネジ面を伝う冷却材の漏れが考えられることから、図3に示すように、ネジ面165の外端側165aは、キャノピーシール166と称する円周シール溶接で閉じられている。図4に示すように、キャノピーシール166は、断面がドーム状であり、溶接部167の断面形状の変化が少なく、ネジ面165(図3参照)を伝う冷却材の高圧を好適にシールし、かつ分解時の切断が容易である。
【0034】
上述した制御棒駆動装置ハウジング160に係り、当該制御棒駆動装置ハウジング160のキャノピーシール166を溶接する際に用いられる溶接治具および溶接装置について以下に説明する。
【0035】
まず、溶接治具について説明する。図5は、本実施の形態に係る溶接治具の平面図であり、図6は、図5のA−A断面拡大図であり、図7は、図5のB−B断面拡大図であり、図8は、溶接治具の底面図であり、図9は、溶接治具の開状態の平面図である。
【0036】
溶接治具1は、図5〜図9に示すように、治具本体2と、ガス導入部3と、溶接トーチ配置部4と、ガイド部5と、取付部6と、開閉部7とを備えている。
【0037】
治具本体2は、図5に示すように、キャノピーシール166の周りを囲むようにキャノピーシール166の円周に沿って円環状に形成されている。この治具本体2は、図6および図7に示すように、内周面にキャノピーシール166の開先部166aに向けて所定の空間をなす凹部2aが形成されている。
【0038】
ガス導入部3は、治具本体2に設けられている。ガス導入部3は、図6に示すように、治具本体2の円環状の外側に導入口3aを有するとともに、治具本体2の凹部2aに排出口3bを有して治具本体2の内部を貫通して設けられている。具体的に、ガス導入部3は、治具本体2の円環状に沿うように凹部2aに嵌め込まれた導入管3cを有している。導入管3cは両端が閉塞して形成されている。そして、導入管3cにおいて、凹部2aに向く側に、治具本体2の円環状に沿って所定間隔で複数の排出口3bが設けられている。また、治具本体2は、円環状の外側から導入管3c内に開通する導入通路3dが形成されている。そして、導入通路3dが治具本体2の円環状の外側に開口する部分が導入口3aとして形成されている。本実施の形態では、導入通路3dが、治具本体2における円環状の外側に溶接固定された延長管3eを介して治具本体2の外側に延長され、当該延長管3eの延出端に取り付けられたカプラ3fの開口する部分が導入口3aとして構成されている。このカプラ3fは、シールドガスを供給するガス供給ホース(図示省略)が接続される。なお、本実施の形態では、治具本体2が2分割されており、ガス導入部3は、治具本体2の分割されたそれぞれに設けられている。
【0039】
溶接トーチ配置部4は、図5に示すように、治具本体2の一部が切り欠かれて、当該治具本体2の円環状の外側と内側とが開通して形成された部分である。すなわち、溶接トーチ配置部4は、後述する溶接装置10の溶接トーチ15が、治具本体2の円環状の外側から円環状の内側に向けて配置され、これにより、溶接トーチ15がキャノピーシール166の開先部166aに接近できるように構成された部分である。
【0040】
ガイド部5は、治具本体2に設けられている。ガイド部5は、図7に示すように、制御棒駆動装置ハウジング160に接触して治具本体2の凹部2aをキャノピーシール166の開先部166aに対面した位置で保持するためのものである。具体的に、ガイド部5は、治具本体2の上面に固定されたベース部材5aに対し、ローラ5bが軸5cを中心として回転可能に取り付けられ、ローラ5dが軸5eを中心として回転可能に取り付けられている。ローラ5bは、治具本体2における環状の放射方向に延在する軸5cを中心に回転可能に設けられている。ローラ5bは、管台164およびラッチハウジング162が連結されるキャノピーシール166部分において、ラッチハウジング162の下方に向く外面に接触することで、キャノピーシール166の開先部166aに対面した上下位置で治具本体2の凹部2aを保持するとともに、キャノピーシール166の円周に沿う治具本体2の移動を案内するように回転する。また、ローラ5dは、治具本体2における環状の放射方向に直交する軸5eを中心に回転可能に設けられている。ローラ5dは、管台164およびラッチハウジング162が連結されるキャノピーシール166部分において、ラッチハウジング162の径外に向く外面に接触することで、キャノピーシール166の開先部166aに対面した径方向位置で治具本体2の凹部2aを保持するとともに、キャノピーシール166の円周に沿う治具本体2の移動を案内するように回転する。このガイド部5は、治具本体2の環状の周りに複数(本実施の形態では4つ)設けられ、治具本体2の分割されたそれぞれに2つずつ設けられている。
【0041】
取付部6は、後述する溶接装置10に治具本体2を支持する後述の溶接治具支持部13としての支持棒13a(図12参照)が取り付けられる部分である。具体的に、取付部6は、図5および図8に示すように、図12に示す支持棒13aの先端(上端)に設けられた雄ネジ部が螺合する雌ネジ穴6aが下方に向けて形成されている。この取付部6は、治具本体2の環状の周りに複数(本実施の形態では2つ)設けられ、治具本体2の分割されたそれぞれに1つずつ設けられている。
【0042】
開閉部7は、治具本体2の円環状を開閉するものである。開閉部7は、図5および図9に示すように、溶接トーチ配置部4をなす切り欠き部分を先端とし、当該溶接トーチ配置部4の直径方向の反対側を基端として治具本体2を2分割している。そして、開閉部7は、治具本体2の分割されたそれぞれの基端を軸7aで連結することで、図9に示すように治具本体2の分割されたそれぞれが溶接トーチ配置部4から円環状を開くように構成されている。治具本体2が開いた場合、その開け口がキャノピーシール166部分の径よりも大きくなる。また、開閉部7は、軸7aの周りに捻りコイルばね7bを設け、当該捻りコイルばね7bの各端部を治具本体2の分割されたそれぞれに固定することで、捻りコイルばね7bの弾性力で、図5に示すように治具本体2の分割されたそれぞれが閉じて円環状を維持するように構成されている。
【0043】
このように、本実施の形態の溶接治具1は、円筒状に形成された制御棒駆動装置ハウジング160にて円周状に設けられるキャノピーシール166を円周に沿って溶接するためのもので、キャノピーシール166の円周に沿って円環状に形成され、内周面をキャノピーシール166の開先部166aに向けて配置される治具本体2と、治具本体2の円環状の外側に導入口3aを有するとともに治具本体2の内周面に排出口3bを有して治具本体2の内部を貫通するガス導入部3と、治具本体2の一部が切り欠かれて形成され治具本体2の円環状の外側と内側とを開通する溶接トーチ配置部4と、治具本体2に設けられ制御棒駆動装置ハウジング160に接触して治具本体2の内周面がキャノピーシール166の開先部166aに対向した位置となるように治具本体2を保持するガイド部5とを備える。
【0044】
この溶接治具1によれば、ガス導入部3の導入口3aからシールドガス(例えば、アルゴンガス)を供給し、キャノピーシール166の円周に沿って治具本体2を回転させながら、溶接トーチ配置部4の位置に配置した溶接トーチ15でキャノピーシール166の開先部166aをTIG溶接する。これにより、TIG溶接時のシールドガスを開先部166aに適宜導入し、かつキャノピーシール166の円周に沿って容易にTIG溶接を行うことが可能になる。
【0045】
また、本実施の形態の溶接治具1は、治具本体2の円環状を開閉する開閉部7をさらに備える。
【0046】
この溶接治具1によれば、開閉部7によって治具本体2の円環状を開けることで、円筒状の制御棒駆動装置ハウジング160の周りに治具本体2を容易に装着することが可能になる。
【0047】
次に、溶接装置について説明する。図10は、本実施の形態に係る溶接装置の平面図であり、図11は、溶接装置に溶接治具を取り付けた平面図であり、図12は、溶接装置に溶接治具を取り付けた正面図である。
【0048】
溶接装置10は、図10〜図12に示すように、固定部11と、回転部12と、溶接治具支持部13と、溶接トーチ支持部14とを備えている。
【0049】
固定部11は、制御棒駆動装置ハウジング160のラッチハウジング162の下端が接続される管台164の円周に沿うように円筒状に形成された固定部本体11aを有している。また、固定部11は、固定部本体11aの円筒状の内側において進退可能に設けられたチャック部11bを有している。チャック部11bは、例えば、エアシリンダ(図示省略)へのエアの供給によって固定部本体11aの内側に進退移動する。そして、チャック部11bは、固定部本体11aの内側に進出した場合に管台164の外周面に当接する。これにより、固定部11は、管台164を抱くようにして当該管台164に固定される。一方、チャック部11bは、固定部本体11aの内側から後退した場合に管台164の外周面から離隔する。これにより、固定部11は、管台164への固定を解かれる。このチャック部11bは、固定部本体11aの円周に沿って複数(本実施の形態では4つ)設けられている。また、固定部11は、固定部本体11aの外周において、円筒状の固定枠11cが、固定部本体11aに対して底部が繋がって一体に設けられている。
【0050】
回転部12は、固定部11における固定部本体11aと固定枠11cとの間にて、固定部本体11aの周りに回転可能に設けられている。この回転部12は、固定部本体11aの周りを囲むように円環状に形成された回転盤12aを上部に有している。回転盤12aは、その下側において固定部本体11aと固定枠11cとの間に設けられた円環状のレール(図示省略)に対して回転可能に支持されている。また、回転部12は、駆動部12bを有している。駆動部12bは、固定枠11cに固定されたモータであり、回転盤12aを回転させる動力を与える。また、駆動部12bは、パルスモータなどを用いることで、回転盤12aの回転角度が制御できる。
【0051】
溶接治具支持部13は、上述した溶接治具1を支持するものである。溶接治具支持部13は、図12に示すように、支持棒13aと、固定基部13bとを有している。支持棒13aは、その先端(上端)に、溶接治具1における取付部6の雌ネジ穴6aに螺合する雄ネジ部が設けられている。固定基部13bは、回転部12の回転盤12aに固定され、支持棒13aの基端(下端)を挿入しネジ13cで固定するものである。すなわち、溶接治具支持部13は、回転部12の回転盤12aに対し、支持棒13aを介して溶接治具1を支持する。また、溶接治具支持部13は、溶接治具1における取付部6の雌ネジ穴6aに螺合する支持棒13aの螺合深さを変えることで、溶接治具1を支持する高さを調整する。これにより、溶接治具支持部13は、溶接治具1をキャノピーシール166の開先部166aの位置で支持する。なお、溶接治具支持部13において、支持棒13a、固定基部13bおよびネジ13cは、溶接治具1の取付部6に対応して複数(本実施の形態では2つ)設けられている。
【0052】
溶接トーチ支持部14は、溶接トーチ15を支持するものである。溶接トーチ支持部14は、溶接トーチ15が固定される固定台14aを有している。また、溶接トーチ支持部14は、回転盤12aの回転中心に向けて延在するように回転盤12aに固定されたレール14bを有している。そして、レール14bの上に、当該レール14bの延在方向に移動可能に移動板14cが設けられている。移動板14cと固定台14aとは、モータ、およびモータの駆動を伝達するギヤボックスを含む駆動機構14dを介して連結されている。この駆動機構14dは、移動板14cをレール14bに沿って移動させる駆動力を与える。すなわち、溶接トーチ支持部14は、回転部12の回転盤12aに対し、固定台14a、レール14b、移動板14cおよび駆動機構14dを介して溶接トーチ15を支持する。また、溶接トーチ支持部14は、駆動機構14dの駆動によって、キャノピーシール166の開先部166aに対して溶接トーチ15を接近または離隔移動する。これにより、溶接トーチ支持部14は、溶接治具支持部13によって支持された溶接治具1の溶接トーチ配置部4に対して溶接トーチ15を配置する。
【0053】
なお、溶接装置10は、固定部11および回転部12が、円環状を開閉できるように構成されている。固定部11および回転部12は、2分割されており、分割されたそれぞれその一端が軸16で連結されている。これにより、分割されたそれぞれの他端が開く。固定部11および回転部12が開いた場合、固定部11の開け口が管台164部分の径よりも大きくなる。これにより、円筒状の制御棒駆動装置ハウジング160の周りに溶接装置10を容易に装着することが可能になる。また、図には明示しないが、固定部11および回転部12が閉じた状態は、ロック機構によって保持される。
【0054】
また、溶接装置10は、図10および図11に示すように、溶接トーチ15に対して溶接ワイヤ18を送るワイヤ送り機構17を有している。ワイヤ送り機構17は、回転部12の回転盤12aに取り付けられており、溶接ワイヤ18が巻き付けられるワイヤリール17aと、ワイヤリール17aに巻き付けられた溶接ワイヤ18を送り出すワイヤフィーダ17bと、ワイヤフィーダ17bにより送り出された溶接ワイヤ18を、溶接トーチ15の位置まで案内するワイヤガイド17cとを有している。また、ワイヤガイド17cと溶接トーチ15との間は、溶接ワイヤ18が折れ曲がることなく円滑に溶接トーチ15まで送れるように、ワイヤガイド17cから溶接トーチ15まで延在する可撓性のチューブ17dが設けられている。このチューブ17dの先端は、上述した溶接トーチ支持部14の移動板14cに対して支持され、溶接トーチ15とともに移動可能に設けられている。
【0055】
また、溶接装置10は、図10および図11に示すように、撮影手段19を有している。撮影手段19は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサであり、溶接トーチ15周辺を撮影するものである。撮影手段19は、上述した溶接トーチ支持部14の移動板14cに対して支持され、溶接トーチ15とともに移動可能に設けられている。
【0056】
また、溶接装置10は、図10および図11に示すように、照明手段20を有している。照明手段20は、溶接トーチ15周辺を照らすものである。照明手段20は、回転部12の回転盤12aに取り付けられ、本実施の形態では、光源部20aと、反射部20bとを有している。光源部20aは、光を照射する。反射部20bは、光源部20aが照射した光を溶接トーチ15周辺に向けて反射する。なお、光源部20aによって光を溶接トーチ15周辺に直接照射できれば、反射部20bを設けなくてもよい。
【0057】
このような溶接装置10は、固定部11におけるチャック部11bの駆動、回転部12における回転盤12aの駆動(駆動部12bの駆動)、溶接トーチ支持部14における移動板14cの駆動(駆動機構14dの駆動)、溶接トーチ15の駆動、ワイヤ送り機構17におけるワイヤフィーダ17bの駆動、撮影手段19の駆動、照明手段20における光源部20aの駆動、および溶接治具1におけるガス導入部3のカプラ3fに接続されるガス供給ホースへのシールドガスの供給は、不図示の制御手段によって一括して制御される。
【0058】
上述した溶接装置10によってキャノピーシール166の溶接を行うには、固定部11および回転部12を開閉させて管台164に対して装着した状態で、開閉部7の開閉によって管台164を通した溶接治具1を、溶接治具支持部13に取り付ける。ここで、溶接治具1の溶接トーチ配置部4と溶接トーチ15との位置を合わせるように、溶接治具支持部13によって溶接治具1の高さ位置を調整する。次に、溶接治具1における治具本体2の内周面がキャノピーシール166の開先部166aに対向した位置となるように、溶接装置10を上方に移動させ、固定部11により溶接装置10を管台164に固定する。次に、溶接治具1にシールドガス(例えば、アルゴンガス)を供給し、溶接トーチ15の電極に電圧を印可し、回転部12を回転させる。これにより、キャノピーシール166の円周に沿ってシールドガスを供給しながらキャノピーシール166の開先部166aをTIG溶接することができる。
【0059】
このように、本実施の形態の溶接装置10は、円筒状に形成された制御棒駆動装置ハウジング160にて円周状に設けられるキャノピーシール166を円周に沿って溶接するためのもので、制御棒駆動装置ハウジング160の管台164に固定される固定部11と、制御棒駆動装置ハウジング160を中心に回転する態様で固定部11に設けられた回転部12と、回転部12に設けられており上述した溶接治具1をキャノピーシール166の開先部166aの位置で支持する溶接治具支持部13と、回転部12に設けられており溶接治具1の溶接トーチ配置部4に溶接トーチ15を配置する溶接トーチ支持部14とを備える。
【0060】
この溶接装置10によれば、溶接治具1を溶接治具支持部13に取り付け、固定部11によって溶接装置10を管台164に固定した状態で、溶接治具1にシールドガス(例えば、アルゴンガス)を供給し、溶接トーチ15の電極に電圧を印可し、回転部12を回転させることで、キャノピーシール166の円周に沿ってシールドガスを供給しながらキャノピーシール166の開先部166aを溶接できる。この結果、TIG溶接時のシールドガスを開先部166aに適宜導入し、かつキャノピーシール166の円周に沿って容易にTIG溶接を行うことが可能になる。
【0061】
なお、上述した溶接治具1および溶接装置10は、管台164およびラッチハウジング162が連結されるキャノピーシール166に対応した形態であるが、その他、ラッチハウジング162および駆動軸ハウジング161が連結されるキャノピーシールや、駆動軸ハウジング161およびキャップ163が連結されるキャノピーシールに対しても、多少の形状の変更を要すものの同様の構成により、シールドガスを適宜導入し、かつ容易にTIG溶接を行うことが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0062】
以上のように、本発明に係る制御棒駆動装置ハウジングの溶接治具および溶接装置は、シールドガスを適宜導入し、かつ容易に制御棒駆動装置ハウジングの溶接を行うことに適している。
【符号の説明】
【0063】
1 溶接治具
2 治具本体
3 ガス導入部
3a 導入口
3b 排出口
4 溶接トーチ配置部
5 ガイド部
6 取付部
7 開閉部
10 溶接装置
11 固定部
12 回転部
13 溶接治具支持部
14 溶接トーチ支持部
15 溶接トーチ
16 軸
17 ワイヤ送り機構
18 溶接ワイヤ
160 制御棒駆動装置ハウジング
166 キャノピーシール
166a 開先部
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子炉容器の上部に配置されて炉心に対して制御棒を出し入れする制御棒駆動装置の組み立てや補修の際に用いられる、制御棒駆動装置ハウジングの溶接治具および溶接装置に関する。
【背景技術】
【0002】
加圧水型原子炉(PWR:Pressurized Water Reactor)は、炉心内で生成される中性子を制御棒により吸収することで、その中性子数を調整し、原子炉出力を制御している。そのため、この制御棒は、予め炉心を構成する燃料集合体の内部に分散して複数組み込まれており、一括して制御される。各制御棒は、原子炉容器の上部に配置された制御棒駆動装置(CRDM:control rod drive mechanism)により炉心に対して出し入れされる。
【0003】
加圧水型原子炉用の制御棒駆動装置としては、一般に、磁気式ジャッキが多く適用される。この磁気式ジャッキは、制御棒駆動軸を間欠的に把持するラッチを、電磁力を利用して動かして制御棒駆動軸を軸方向に駆動するもので、円筒状の制御棒駆動装置ハウジング内に収納されている。制御棒駆動装置ハウジングは、制御棒駆動軸を内装する駆動軸ハウジング、駆動軸ハウジングの周りを囲むとともに電磁コイルやラッチを内装するラッチハウジング、および駆動軸ハウジングの上端部を塞ぐキャップから構成されている。ラッチハウジングは、その下端が原子炉容器蓋に貫通して溶接された管台に連結されている。駆動軸ハウジングは、ラッチハウジングの上端から挿入されて当該ラッチハウジングに連結されている。キャップは、駆動軸ハウジングの上端に連結されている。そして、制御棒駆動軸が故障した場合を想定し、制御棒駆動軸を取り出すために、管台およびラッチハウジング、ラッチハウジングおよび駆動軸ハウジング、駆動軸ハウジングおよびキャップは、相互にネジ結合により分離自在に連結されている。また、制御棒駆動装置ハウジングの内部は、原子炉容器蓋内の高温高圧の冷却材空間に連通しているため、ネジ面を伝う冷却材の漏れが考えられることから、接合ネジ面の外端側は、キャノピーシールと称する円周シール溶接で閉じられている。このキャノピーシールは、断面がドーム状であり、溶接部の断面形状の変化が少なく、ネジ面を伝う冷却材の高圧を好適にシールし、かつ分解時の切断が容易である(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このような制御棒駆動装置を組み立てる際や補修の際には、制御棒駆動装置ハウジングのキャノピーシールを溶接することになるが、キャノピーシールは、制御棒駆動装置ハウジングの外径に沿って円周状に設けられているために当該円周状に沿って溶接しなければならず、しかも内部が密閉されるためにTIG溶接時のシールドガスを外側から導入しなければならない。このため、従来では、キャノピーシールの開先部にインサートリングを仮付けし、このインサートリングの一部に設けられた切欠穴から注射のようにシールドガスを注入しつつ、周状に溶接していた。このような溶接作業は、非常に手間がかかるとともに、シールドガスがキャノピーシール内に閉じ込められてしまう問題があった。
【0005】
なお、例えば、特許文献2に記載の片面TIG溶接方法は、溶接トーチからシールドガスを噴出させながら移動させることによって被溶接物に溶接ビードを形成することが記載されている。しかしながら、上述したキャノピーシールのような円周状の部分に対し、シールドガスの空間を設けながら溶接を行うことは容易ではなく、上述した問題を解消することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−123276号公報
【特許文献2】特開昭59−24578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するものであり、シールドガスを適宜導入し、かつ容易に溶接を行うことのできる制御棒駆動装置ハウジングの溶接治具および溶接装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するために、本発明の制御棒駆動装置ハウジングの溶接治具は、円筒状に形成された制御棒駆動装置ハウジングにて円周状に設けられるキャノピーシールを円周に沿って溶接するための制御棒駆動装置ハウジングの溶接治具であって、前記キャノピーシールの円周に沿って円環状に形成され、内周面を前記キャノピーシールの開先部に向けて配置される治具本体と、前記治具本体の円環状の外側に導入口を有するとともに前記治具本体の内周面側に排出口を有して前記治具本体の内部を貫通するガス導入部と、前記治具本体の一部が切り欠かれて形成され当該治具本体の円環状の外側と内側とを開通する溶接トーチ配置部と、前記治具本体に設けられ前記制御棒駆動装置ハウジングに接触することで前記治具本体の内周面が前記キャノピーシールの開先部に対向した位置となるように前記治具本体を保持するガイド部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
この制御棒駆動装置ハウジングの溶接治具によれば、ガス導入部の導入口からシールドガスを供給し、キャノピーシールの円周に沿って治具本体を回転させながら、溶接トーチ配置部の位置に配置した溶接トーチでキャノピーシールの開先部を溶接する。これにより、溶接時のシールドガスを開先部に適宜導入し、かつキャノピーシールの円周に沿って容易に溶接を行うことができる。
【0010】
また、本発明の制御棒駆動装置ハウジングの溶接治具は、前記治具本体の円環状を開閉する開閉部をさらに備えることを特徴とする。
【0011】
この制御棒駆動装置ハウジングの溶接治具によれば、開閉部によって治具本体の円環状を開けることで、円筒状の制御棒駆動装置ハウジングの周りに治具本体を容易に装着することができる。
【0012】
上述の目的を達成するために、本発明の制御棒駆動装置ハウジングの溶接装置は、円筒状に形成された制御棒駆動装置ハウジングにて円周状に設けられるキャノピーシールを円周に沿って溶接するための制御棒駆動装置ハウジングの溶接装置であって、前記制御棒駆動装置ハウジングに固定される固定部と、前記制御棒駆動装置ハウジングを中心に回転する態様で前記固定部に設けられた回転部と、前記回転部に設けられており上述の溶接治具を前記キャノピーシールの開先部の位置で支持する溶接治具支持部と、前記回転部に設けられており前記溶接治具の溶接トーチ配置部に溶接トーチを配置する溶接トーチ支持部と、を備えることを特徴とする。
【0013】
この制御棒駆動装置ハウジングの溶接装置によれば、溶接治具を溶接治具支持部に取り付け、固定部によって溶接装置を管台に固定した状態で、溶接治具にシールドガスを供給し、溶接トーチの電極に電圧を印可し、回転部を回転させることで、キャノピーシールの円周に沿ってシールドガスを供給しながらキャノピーシールの開先部を溶接できる。この結果、溶接時のシールドガスを開先部に適宜導入し、かつキャノピーシールの円周に沿って容易に溶接を行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、シールドガスを適宜導入し、かつ容易に制御棒駆動装置ハウジングの溶接を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、制御棒駆動装置を備える原子炉の概略図である。
【図2】図2は、制御棒駆動装置の要部断面図である。
【図3】図3は、制御棒駆動装置ハウジングの一部断面図である。
【図4】図4は、制御棒駆動装置ハウジングの部分拡大断面図である。
【図5】図5は、本発明の実施の形態に係る溶接治具の平面図である。
【図6】図6は、図5のA−A断面拡大図である。
【図7】図7は、図5のB−B断面拡大図である。
【図8】図8は、本発明の実施の形態に係る溶接治具の底面図である。
【図9】図9は、本発明の実施の形態に係る溶接治具の開状態の平面図である。
【図10】図10は、本発明の実施の形態に係る溶接装置の平面図である。
【図11】図11は、本発明の実施の形態に係る溶接装置に溶接治具を取り付けた平面図である。
【図12】図12は、本発明の実施の形態に係る溶接装置に溶接治具を取り付けた正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明に係る実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施の形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0017】
図1は、制御棒駆動装置を備える原子炉の概略図である。なお、以下の説明では、原子炉100の使用時の設置状態における上方を各部においても上方とし、使用時の設置状態における下方を各部においても下方として説明する。図1に示す原子炉100は、エネルギを取り出す際における経路を一次冷却系と二次冷却系とに分離した加圧水型原子炉(PWR:Pressurized Water Reactor)となっている。加圧水型原子炉が使用される原子力発電プラントの概略について説明すると、加圧水型原子炉では、軽水(冷却材)を原子炉冷却材および中性子減速材として使用し、この軽水の循環経路である一次冷却系に加圧器(図示省略)を設けることにより、一次冷却系では軽水を炉心全体にわたって沸騰しない高温高圧水にする。一次冷却系では高温高圧水を、二次冷却系との間で熱交換を行う部分である蒸気発生器(図示省略)に送り、二次冷却系を循環する軽水との間で熱交換を行う。二次冷却系では、この熱交換により蒸気を発生させ、発生した蒸気をタービン発電機(図示省略)へ送ることにより、タービン発電機で発電をする。
【0018】
このように加圧水型原子炉として設けられる本実施の形態に係る原子炉100において、圧力容器として設けられる原子炉容器101は、その内部に炉内構造物が挿入できるように、原子炉容器本体102と、当該原子炉容器本体102の上部に装着されて原子炉容器本体102に対して開閉可能な原子炉容器蓋103と、により構成されている。このうち、原子炉容器本体102は、原子炉100の設置時の上下方向における上部が開口するとともに、下部が球面状に閉塞されたほぼ円筒形の形状で形成されている。また、原子炉容器本体102は、開口側の端部である上端側付近に、一次冷却系で用いる冷却水である一次冷却水としての軽水を給排水する入口ノズル104および出口ノズル105が形成されている。
【0019】
原子炉容器本体102内において、入口ノズル104および出口ノズル105の下方には、ほぼ円筒形の形状で形成される炉心槽110が設けられている。炉心槽110は、ほぼ円筒形の形状で形成され、原子炉容器本体102の内面と所定の隙間を有し、かつ原子炉容器本体102の円筒形に対して中心軸が一致するように設けられている。
【0020】
原子炉容器本体102内において、炉心槽110は、その上部が上部炉心板111に連結されている。上部炉心板111は、円板形状で形成され、かつ多数の連通孔(図示省略)が貫通して形成されており、原子炉容器本体102内に水平に設けられている。また、炉心槽110は、その下部が下部炉心板112に連結されている。下部炉心板112は、上部炉心板111と同様に円板形状で形成され、かつ多数の連通孔(図示省略)が貫通して形成されており、原子炉容器本体102内に水平に設けられている。
【0021】
原子炉容器本体102内において、炉心槽110の上方には、上部炉心支持板113が固定されている。この上部炉心支持板113は、複数の炉心支持ロッド114が吊り下げて設けられ、この炉心支持ロッド114を介して上部炉心板111が吊り下げて支持されている。つまり、上部炉心板111が炉心支持ロッド114を介して上部炉心支持板113に吊り下げ支持されることにより、上部炉心板111に連結される炉心槽110も上部炉心支持板113に吊り下げ支持されている。一方、下部炉心板112は、原子炉容器本体102の内面に対して複数のラジアルキー115により位置決め保持されており、これにより、炉心槽110は、複数のラジアルキー115により原子炉容器本体102の内面に対して位置決め保持されている。
【0022】
そして、このように設けられる炉心槽110と上部炉心板111と下部炉心板112とにより炉心120が形成されている。炉心120は、多数の燃料集合体121が配置される。この燃料集合体121は、多数の燃料棒が支持格子により格子状に束ねられて構成されている。また、燃料集合体121は、制御棒122が挿入可能に構成されている。制御棒122は、複数の上端がまとめられて制御棒クラスタ123とされている。上部炉心板111は、上部炉心支持板113を貫通する多数の制御棒クラスタ案内管124に支持されている。制御棒クラスタ案内管124は、制御棒クラスタ123を案内するもので、原子炉容器蓋103を貫通した上端部が、制御棒駆動装置125まで延出されている。そして、制御棒駆動装置125から延出された後述の制御棒クラスタ駆動軸140が、制御棒クラスタ案内管124内を通って制御棒クラスタ123に繋がり、燃料集合体121まで延出されている。また、図示しないが、上部炉心支持板113には、この上部炉心支持板113を貫通する多数の炉内計装案内管が支持されている。炉内計装案内管は、下端部が燃料集合体121まで延出されており、燃料集合体121に対して中性子束を計測できるセンサを挿入可能に設けられている。
【0023】
また、原子炉容器本体102内において、炉心120の上方に位置して出口ノズル105に連通する部分は、上部プレナム131として形成されている。一方、炉心120の下方に位置し、下部炉心板112と、原子炉容器本体102の下部で球面状の閉塞されている部分の内面とで形成される半球状の空間は、下部プレナム132として形成されている。さらに、原子炉容器本体102と炉心槽110との間に形成され、入口ノズル104と下部プレナム132とに連通する部分は、ダウンカマー部133として形成されている。上部プレナム131は、炉心槽110と上部炉心支持板113と上部炉心板111とで区画されることにより形成され、出口ノズル105に連通するとともに、上部炉心板111に形成された多数の連通孔を介して炉心120に連通している。下部プレナム132は、炉心槽110の底部となる下部炉心板112と原子炉容器本体102とで区画されることにより形成され、下部炉心板112に形成された多数の連通孔を介して炉心120に連通している。ダウンカマー部133は、原子炉容器本体102と炉心槽110の側壁とによって区画されることにより形成され、上部は入口ノズル104に連通しており、下部は下部プレナム132に連通している。
【0024】
このように構成された原子炉100を運転する場合には、冷却材や中性子減速材として用いられる軽水を循環させながら、燃料集合体121を構成する燃料として燃料集合体121に含まれているウラン235やプルトニウムなどの核分裂性物質に対して核分裂反応させる。核分裂性物質に対して核分裂反応をさせる場合には、原子炉容器蓋103に設けられた制御棒駆動装置125によって燃料集合体121への制御棒122の挿入量を調節する。これにより、炉心120内での核分裂反応を制御する。核分裂性物質が核分裂をした場合、熱エネルギが発生するが、燃料集合体121の周囲は循環する軽水が満たされているため、この熱エネルギは燃料集合体121の周囲の軽水に伝達される。これにより、原子炉容器101内に満たされた軽水は加熱される。このように、核分裂反応時に発生する熱エネルギによって加熱された高温の軽水は、出口ノズル105から排出され、蒸気発生器に送られる。
【0025】
つまり、燃料集合体121に含まれている核分裂性物質が核分裂することにより、中性子を放出し、減速材および一次冷却系の冷却水として用いられている軽水が、放出された高速中性子の運動エネルギを低下させて熱中性子にし、新たな核分裂を起こし易くするとともに、発生した熱を奪って冷却する。
【0026】
また、制御棒122は、核分裂性物質の核分裂時に放出される中性子を吸収することにより、炉心120内で生成される中性子数を調節することができるように設けられている。例えば、燃料集合体121への制御棒122の挿入量を増加させた場合には、制御棒122で吸収する中性子の量が増加するため、核分裂性物質を核分裂させる中性子の量が減少する。反対に、制御棒122を引き抜く方向に移動させ、燃料集合体121への制御棒122の挿入量を低減させた場合には、制御棒122で吸収する中性子の量が低減するため、核分裂性物質を核分裂させる中性子の量が増加する。これにより、核分裂性物質が核分裂をする頻度を変化させることができるため、原子炉100の運転時は、制御棒122の挿入量を調節することにより核分裂反応を制御し、核分裂反応によって発生する熱エネルギの量を調節する。
【0027】
また、原子炉100の運転時には、一次冷却系で軽水を循環させるが、この軽水は、入口ノズル104から原子炉容器本体102内に流入し、入口ノズル104と連通するダウンカマー部133を下向きに流れ落ちて下部プレナム132に到達し、流れる向きを下部プレナム132の球面状の内面によって上向きに変える。これにより軽水は下部プレナム132から上昇し、下部炉心板112の連通孔を通過した後、炉心120に流入する。炉心120に流入した軽水は、炉心120に配設される燃料集合体121から発生する熱エネルギを吸収することにより、燃料集合体121を冷却する。一方、高温となって上部炉心板111まで上昇する。上部炉心板111に到達した高温の軽水は、上部炉心板111の連通孔を通過して上部プレナム131まで上昇し、出口ノズル105を通って原子炉容器本体102から排出される。
【0028】
図2は、制御棒駆動装置の要部断面図である。図2に示すように、制御棒駆動装置125の制御棒クラスタ駆動軸140は、後述する駆動軸ハウジング161内で軸方向(長手方向)に移動自在に設けられている。制御棒クラスタ駆動軸140は、その表面に複数の周溝140aが長手方向(上下方向)に等ピッチで形成されている。また、制御棒駆動装置125は、保持機構146が設けられている。保持機構146は、制御棒クラスタ駆動軸140の周溝140aの1つに係合離反可能に設けられた固定つかみラッチ142と、この固定つかみラッチ142をラッチリンク143およびプランジャ144を介して駆動する固定つかみコイル145とを有し、固定つかみラッチ142を周溝140aに係合させることにより制御棒クラスタ駆動軸140を保持するものである。また、制御棒駆動装置125は、駆動機構152が設けられている。駆動機構152は、制御棒クラスタ駆動軸140の周溝140aの1つに係合離反可能に設けられた可動つかみラッチ147と、この可動つかみラッチ147をラッチリンク148およびプランジャ149を介して駆動する可動つかみコイル150と、ラッチリンク148およびプランジャ149を上下方向に移動させる上げコイル151とを有し、制御棒クラスタ駆動軸140を上下動させるものである。
【0029】
なお、図2において、符号153は、固定つかみコイル145に励磁される固定取手磁極、符号154は、可動つかみコイル150に励磁される可動取手磁極、符号155は、上げコイル151に励磁される上げ磁極である。また、符号156a〜156cはリターンスプリングである。
【0030】
固定つかみコイル145により固定取手磁極153が消磁されて固定つかみラッチ142が制御棒クラスタ駆動軸140の周溝140aから離反される。一方、可動つかみコイル150により可動取手磁極154が励磁されて可動つかみラッチ147が制御棒クラスタ駆動軸140の周溝140aに係合された状態から、上げコイル151により上げ磁極155を励磁すると、可動取手磁極154および可動つかみラッチ147が可動つかみコイル150とともにリターンスプリング156aの付勢力に抗して上げ磁極155側に吸引され、制御棒クラスタ駆動軸140を周溝140aの1ピッチ分上昇することができる。
【0031】
次に、固定つかみコイル145により固定取手磁極153が励磁されて固定つかみラッチ142が制御棒クラスタ駆動軸140の周溝140aに係合された後、可動つかみコイル150により可動取手磁極154が消磁されるとともに、上げコイル151により上げ磁極155が消磁されると、可動つかみラッチ147が制御棒クラスタ駆動軸140の周溝140aから離反され、リターンスプリング156aの付勢力で可動取手磁極154および可動つかみラッチ147が可動つかみコイル150とともに下降することができる。
【0032】
そして、可動つかみコイル150により可動取手磁極154が励磁されて可動つかみラッチ147が制御棒クラスタ駆動軸140の周溝140aに係合された後、固定つかみコイル145により固定取手磁極153が消磁されて固定つかみラッチ142が制御棒クラスタ駆動軸140の周溝140aから離反された状態から、上述した動作を繰り返すことで制御棒クラスタ駆動軸140は所定ピッチまで上昇することができる。なお、制御棒クラスタ駆動軸140を下降させるには、上述した動作の逆動作を行えばよい。
【0033】
図3は、制御棒駆動装置ハウジングの一部断面図であり、図4は、制御棒駆動装置ハウジングの部分拡大断面図である。制御棒駆動装置ハウジング160は、円筒状に形成され、図1に示すように、上述した制御棒クラスタ駆動軸140を内装する駆動軸ハウジング161と、駆動軸ハウジング161の外周の一部を囲むように上述した保持機構146や駆動機構152を内装するラッチハウジング162と、駆動軸ハウジング161の上端を閉塞するキャップ163とから構成されている。また、ラッチハウジング162は、その下端が原子炉容器蓋103に貫通して溶接された円筒状の管台164に連結されている。そして、駆動軸ハウジング161は、ラッチハウジング162の上端から挿入されて当該ラッチハウジング162に連結される。そして、制御棒クラスタ駆動軸140が故障した場合を想定し、当該制御棒クラスタ駆動軸140を取り出すため、管台164およびラッチハウジング162、ラッチハウジング162および駆動軸ハウジング161、駆動軸ハウジング161およびキャップ163は、相互にネジ結合により分離自在に連結されている。図3では、管台164およびラッチハウジング162が連結されている部分を示す。また、制御棒駆動装置ハウジング160の内部は、原子炉容器蓋103内の高温高圧の冷却材空間に連通しているため、ネジ面を伝う冷却材の漏れが考えられることから、図3に示すように、ネジ面165の外端側165aは、キャノピーシール166と称する円周シール溶接で閉じられている。図4に示すように、キャノピーシール166は、断面がドーム状であり、溶接部167の断面形状の変化が少なく、ネジ面165(図3参照)を伝う冷却材の高圧を好適にシールし、かつ分解時の切断が容易である。
【0034】
上述した制御棒駆動装置ハウジング160に係り、当該制御棒駆動装置ハウジング160のキャノピーシール166を溶接する際に用いられる溶接治具および溶接装置について以下に説明する。
【0035】
まず、溶接治具について説明する。図5は、本実施の形態に係る溶接治具の平面図であり、図6は、図5のA−A断面拡大図であり、図7は、図5のB−B断面拡大図であり、図8は、溶接治具の底面図であり、図9は、溶接治具の開状態の平面図である。
【0036】
溶接治具1は、図5〜図9に示すように、治具本体2と、ガス導入部3と、溶接トーチ配置部4と、ガイド部5と、取付部6と、開閉部7とを備えている。
【0037】
治具本体2は、図5に示すように、キャノピーシール166の周りを囲むようにキャノピーシール166の円周に沿って円環状に形成されている。この治具本体2は、図6および図7に示すように、内周面にキャノピーシール166の開先部166aに向けて所定の空間をなす凹部2aが形成されている。
【0038】
ガス導入部3は、治具本体2に設けられている。ガス導入部3は、図6に示すように、治具本体2の円環状の外側に導入口3aを有するとともに、治具本体2の凹部2aに排出口3bを有して治具本体2の内部を貫通して設けられている。具体的に、ガス導入部3は、治具本体2の円環状に沿うように凹部2aに嵌め込まれた導入管3cを有している。導入管3cは両端が閉塞して形成されている。そして、導入管3cにおいて、凹部2aに向く側に、治具本体2の円環状に沿って所定間隔で複数の排出口3bが設けられている。また、治具本体2は、円環状の外側から導入管3c内に開通する導入通路3dが形成されている。そして、導入通路3dが治具本体2の円環状の外側に開口する部分が導入口3aとして形成されている。本実施の形態では、導入通路3dが、治具本体2における円環状の外側に溶接固定された延長管3eを介して治具本体2の外側に延長され、当該延長管3eの延出端に取り付けられたカプラ3fの開口する部分が導入口3aとして構成されている。このカプラ3fは、シールドガスを供給するガス供給ホース(図示省略)が接続される。なお、本実施の形態では、治具本体2が2分割されており、ガス導入部3は、治具本体2の分割されたそれぞれに設けられている。
【0039】
溶接トーチ配置部4は、図5に示すように、治具本体2の一部が切り欠かれて、当該治具本体2の円環状の外側と内側とが開通して形成された部分である。すなわち、溶接トーチ配置部4は、後述する溶接装置10の溶接トーチ15が、治具本体2の円環状の外側から円環状の内側に向けて配置され、これにより、溶接トーチ15がキャノピーシール166の開先部166aに接近できるように構成された部分である。
【0040】
ガイド部5は、治具本体2に設けられている。ガイド部5は、図7に示すように、制御棒駆動装置ハウジング160に接触して治具本体2の凹部2aをキャノピーシール166の開先部166aに対面した位置で保持するためのものである。具体的に、ガイド部5は、治具本体2の上面に固定されたベース部材5aに対し、ローラ5bが軸5cを中心として回転可能に取り付けられ、ローラ5dが軸5eを中心として回転可能に取り付けられている。ローラ5bは、治具本体2における環状の放射方向に延在する軸5cを中心に回転可能に設けられている。ローラ5bは、管台164およびラッチハウジング162が連結されるキャノピーシール166部分において、ラッチハウジング162の下方に向く外面に接触することで、キャノピーシール166の開先部166aに対面した上下位置で治具本体2の凹部2aを保持するとともに、キャノピーシール166の円周に沿う治具本体2の移動を案内するように回転する。また、ローラ5dは、治具本体2における環状の放射方向に直交する軸5eを中心に回転可能に設けられている。ローラ5dは、管台164およびラッチハウジング162が連結されるキャノピーシール166部分において、ラッチハウジング162の径外に向く外面に接触することで、キャノピーシール166の開先部166aに対面した径方向位置で治具本体2の凹部2aを保持するとともに、キャノピーシール166の円周に沿う治具本体2の移動を案内するように回転する。このガイド部5は、治具本体2の環状の周りに複数(本実施の形態では4つ)設けられ、治具本体2の分割されたそれぞれに2つずつ設けられている。
【0041】
取付部6は、後述する溶接装置10に治具本体2を支持する後述の溶接治具支持部13としての支持棒13a(図12参照)が取り付けられる部分である。具体的に、取付部6は、図5および図8に示すように、図12に示す支持棒13aの先端(上端)に設けられた雄ネジ部が螺合する雌ネジ穴6aが下方に向けて形成されている。この取付部6は、治具本体2の環状の周りに複数(本実施の形態では2つ)設けられ、治具本体2の分割されたそれぞれに1つずつ設けられている。
【0042】
開閉部7は、治具本体2の円環状を開閉するものである。開閉部7は、図5および図9に示すように、溶接トーチ配置部4をなす切り欠き部分を先端とし、当該溶接トーチ配置部4の直径方向の反対側を基端として治具本体2を2分割している。そして、開閉部7は、治具本体2の分割されたそれぞれの基端を軸7aで連結することで、図9に示すように治具本体2の分割されたそれぞれが溶接トーチ配置部4から円環状を開くように構成されている。治具本体2が開いた場合、その開け口がキャノピーシール166部分の径よりも大きくなる。また、開閉部7は、軸7aの周りに捻りコイルばね7bを設け、当該捻りコイルばね7bの各端部を治具本体2の分割されたそれぞれに固定することで、捻りコイルばね7bの弾性力で、図5に示すように治具本体2の分割されたそれぞれが閉じて円環状を維持するように構成されている。
【0043】
このように、本実施の形態の溶接治具1は、円筒状に形成された制御棒駆動装置ハウジング160にて円周状に設けられるキャノピーシール166を円周に沿って溶接するためのもので、キャノピーシール166の円周に沿って円環状に形成され、内周面をキャノピーシール166の開先部166aに向けて配置される治具本体2と、治具本体2の円環状の外側に導入口3aを有するとともに治具本体2の内周面に排出口3bを有して治具本体2の内部を貫通するガス導入部3と、治具本体2の一部が切り欠かれて形成され治具本体2の円環状の外側と内側とを開通する溶接トーチ配置部4と、治具本体2に設けられ制御棒駆動装置ハウジング160に接触して治具本体2の内周面がキャノピーシール166の開先部166aに対向した位置となるように治具本体2を保持するガイド部5とを備える。
【0044】
この溶接治具1によれば、ガス導入部3の導入口3aからシールドガス(例えば、アルゴンガス)を供給し、キャノピーシール166の円周に沿って治具本体2を回転させながら、溶接トーチ配置部4の位置に配置した溶接トーチ15でキャノピーシール166の開先部166aをTIG溶接する。これにより、TIG溶接時のシールドガスを開先部166aに適宜導入し、かつキャノピーシール166の円周に沿って容易にTIG溶接を行うことが可能になる。
【0045】
また、本実施の形態の溶接治具1は、治具本体2の円環状を開閉する開閉部7をさらに備える。
【0046】
この溶接治具1によれば、開閉部7によって治具本体2の円環状を開けることで、円筒状の制御棒駆動装置ハウジング160の周りに治具本体2を容易に装着することが可能になる。
【0047】
次に、溶接装置について説明する。図10は、本実施の形態に係る溶接装置の平面図であり、図11は、溶接装置に溶接治具を取り付けた平面図であり、図12は、溶接装置に溶接治具を取り付けた正面図である。
【0048】
溶接装置10は、図10〜図12に示すように、固定部11と、回転部12と、溶接治具支持部13と、溶接トーチ支持部14とを備えている。
【0049】
固定部11は、制御棒駆動装置ハウジング160のラッチハウジング162の下端が接続される管台164の円周に沿うように円筒状に形成された固定部本体11aを有している。また、固定部11は、固定部本体11aの円筒状の内側において進退可能に設けられたチャック部11bを有している。チャック部11bは、例えば、エアシリンダ(図示省略)へのエアの供給によって固定部本体11aの内側に進退移動する。そして、チャック部11bは、固定部本体11aの内側に進出した場合に管台164の外周面に当接する。これにより、固定部11は、管台164を抱くようにして当該管台164に固定される。一方、チャック部11bは、固定部本体11aの内側から後退した場合に管台164の外周面から離隔する。これにより、固定部11は、管台164への固定を解かれる。このチャック部11bは、固定部本体11aの円周に沿って複数(本実施の形態では4つ)設けられている。また、固定部11は、固定部本体11aの外周において、円筒状の固定枠11cが、固定部本体11aに対して底部が繋がって一体に設けられている。
【0050】
回転部12は、固定部11における固定部本体11aと固定枠11cとの間にて、固定部本体11aの周りに回転可能に設けられている。この回転部12は、固定部本体11aの周りを囲むように円環状に形成された回転盤12aを上部に有している。回転盤12aは、その下側において固定部本体11aと固定枠11cとの間に設けられた円環状のレール(図示省略)に対して回転可能に支持されている。また、回転部12は、駆動部12bを有している。駆動部12bは、固定枠11cに固定されたモータであり、回転盤12aを回転させる動力を与える。また、駆動部12bは、パルスモータなどを用いることで、回転盤12aの回転角度が制御できる。
【0051】
溶接治具支持部13は、上述した溶接治具1を支持するものである。溶接治具支持部13は、図12に示すように、支持棒13aと、固定基部13bとを有している。支持棒13aは、その先端(上端)に、溶接治具1における取付部6の雌ネジ穴6aに螺合する雄ネジ部が設けられている。固定基部13bは、回転部12の回転盤12aに固定され、支持棒13aの基端(下端)を挿入しネジ13cで固定するものである。すなわち、溶接治具支持部13は、回転部12の回転盤12aに対し、支持棒13aを介して溶接治具1を支持する。また、溶接治具支持部13は、溶接治具1における取付部6の雌ネジ穴6aに螺合する支持棒13aの螺合深さを変えることで、溶接治具1を支持する高さを調整する。これにより、溶接治具支持部13は、溶接治具1をキャノピーシール166の開先部166aの位置で支持する。なお、溶接治具支持部13において、支持棒13a、固定基部13bおよびネジ13cは、溶接治具1の取付部6に対応して複数(本実施の形態では2つ)設けられている。
【0052】
溶接トーチ支持部14は、溶接トーチ15を支持するものである。溶接トーチ支持部14は、溶接トーチ15が固定される固定台14aを有している。また、溶接トーチ支持部14は、回転盤12aの回転中心に向けて延在するように回転盤12aに固定されたレール14bを有している。そして、レール14bの上に、当該レール14bの延在方向に移動可能に移動板14cが設けられている。移動板14cと固定台14aとは、モータ、およびモータの駆動を伝達するギヤボックスを含む駆動機構14dを介して連結されている。この駆動機構14dは、移動板14cをレール14bに沿って移動させる駆動力を与える。すなわち、溶接トーチ支持部14は、回転部12の回転盤12aに対し、固定台14a、レール14b、移動板14cおよび駆動機構14dを介して溶接トーチ15を支持する。また、溶接トーチ支持部14は、駆動機構14dの駆動によって、キャノピーシール166の開先部166aに対して溶接トーチ15を接近または離隔移動する。これにより、溶接トーチ支持部14は、溶接治具支持部13によって支持された溶接治具1の溶接トーチ配置部4に対して溶接トーチ15を配置する。
【0053】
なお、溶接装置10は、固定部11および回転部12が、円環状を開閉できるように構成されている。固定部11および回転部12は、2分割されており、分割されたそれぞれその一端が軸16で連結されている。これにより、分割されたそれぞれの他端が開く。固定部11および回転部12が開いた場合、固定部11の開け口が管台164部分の径よりも大きくなる。これにより、円筒状の制御棒駆動装置ハウジング160の周りに溶接装置10を容易に装着することが可能になる。また、図には明示しないが、固定部11および回転部12が閉じた状態は、ロック機構によって保持される。
【0054】
また、溶接装置10は、図10および図11に示すように、溶接トーチ15に対して溶接ワイヤ18を送るワイヤ送り機構17を有している。ワイヤ送り機構17は、回転部12の回転盤12aに取り付けられており、溶接ワイヤ18が巻き付けられるワイヤリール17aと、ワイヤリール17aに巻き付けられた溶接ワイヤ18を送り出すワイヤフィーダ17bと、ワイヤフィーダ17bにより送り出された溶接ワイヤ18を、溶接トーチ15の位置まで案内するワイヤガイド17cとを有している。また、ワイヤガイド17cと溶接トーチ15との間は、溶接ワイヤ18が折れ曲がることなく円滑に溶接トーチ15まで送れるように、ワイヤガイド17cから溶接トーチ15まで延在する可撓性のチューブ17dが設けられている。このチューブ17dの先端は、上述した溶接トーチ支持部14の移動板14cに対して支持され、溶接トーチ15とともに移動可能に設けられている。
【0055】
また、溶接装置10は、図10および図11に示すように、撮影手段19を有している。撮影手段19は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサであり、溶接トーチ15周辺を撮影するものである。撮影手段19は、上述した溶接トーチ支持部14の移動板14cに対して支持され、溶接トーチ15とともに移動可能に設けられている。
【0056】
また、溶接装置10は、図10および図11に示すように、照明手段20を有している。照明手段20は、溶接トーチ15周辺を照らすものである。照明手段20は、回転部12の回転盤12aに取り付けられ、本実施の形態では、光源部20aと、反射部20bとを有している。光源部20aは、光を照射する。反射部20bは、光源部20aが照射した光を溶接トーチ15周辺に向けて反射する。なお、光源部20aによって光を溶接トーチ15周辺に直接照射できれば、反射部20bを設けなくてもよい。
【0057】
このような溶接装置10は、固定部11におけるチャック部11bの駆動、回転部12における回転盤12aの駆動(駆動部12bの駆動)、溶接トーチ支持部14における移動板14cの駆動(駆動機構14dの駆動)、溶接トーチ15の駆動、ワイヤ送り機構17におけるワイヤフィーダ17bの駆動、撮影手段19の駆動、照明手段20における光源部20aの駆動、および溶接治具1におけるガス導入部3のカプラ3fに接続されるガス供給ホースへのシールドガスの供給は、不図示の制御手段によって一括して制御される。
【0058】
上述した溶接装置10によってキャノピーシール166の溶接を行うには、固定部11および回転部12を開閉させて管台164に対して装着した状態で、開閉部7の開閉によって管台164を通した溶接治具1を、溶接治具支持部13に取り付ける。ここで、溶接治具1の溶接トーチ配置部4と溶接トーチ15との位置を合わせるように、溶接治具支持部13によって溶接治具1の高さ位置を調整する。次に、溶接治具1における治具本体2の内周面がキャノピーシール166の開先部166aに対向した位置となるように、溶接装置10を上方に移動させ、固定部11により溶接装置10を管台164に固定する。次に、溶接治具1にシールドガス(例えば、アルゴンガス)を供給し、溶接トーチ15の電極に電圧を印可し、回転部12を回転させる。これにより、キャノピーシール166の円周に沿ってシールドガスを供給しながらキャノピーシール166の開先部166aをTIG溶接することができる。
【0059】
このように、本実施の形態の溶接装置10は、円筒状に形成された制御棒駆動装置ハウジング160にて円周状に設けられるキャノピーシール166を円周に沿って溶接するためのもので、制御棒駆動装置ハウジング160の管台164に固定される固定部11と、制御棒駆動装置ハウジング160を中心に回転する態様で固定部11に設けられた回転部12と、回転部12に設けられており上述した溶接治具1をキャノピーシール166の開先部166aの位置で支持する溶接治具支持部13と、回転部12に設けられており溶接治具1の溶接トーチ配置部4に溶接トーチ15を配置する溶接トーチ支持部14とを備える。
【0060】
この溶接装置10によれば、溶接治具1を溶接治具支持部13に取り付け、固定部11によって溶接装置10を管台164に固定した状態で、溶接治具1にシールドガス(例えば、アルゴンガス)を供給し、溶接トーチ15の電極に電圧を印可し、回転部12を回転させることで、キャノピーシール166の円周に沿ってシールドガスを供給しながらキャノピーシール166の開先部166aを溶接できる。この結果、TIG溶接時のシールドガスを開先部166aに適宜導入し、かつキャノピーシール166の円周に沿って容易にTIG溶接を行うことが可能になる。
【0061】
なお、上述した溶接治具1および溶接装置10は、管台164およびラッチハウジング162が連結されるキャノピーシール166に対応した形態であるが、その他、ラッチハウジング162および駆動軸ハウジング161が連結されるキャノピーシールや、駆動軸ハウジング161およびキャップ163が連結されるキャノピーシールに対しても、多少の形状の変更を要すものの同様の構成により、シールドガスを適宜導入し、かつ容易にTIG溶接を行うことが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0062】
以上のように、本発明に係る制御棒駆動装置ハウジングの溶接治具および溶接装置は、シールドガスを適宜導入し、かつ容易に制御棒駆動装置ハウジングの溶接を行うことに適している。
【符号の説明】
【0063】
1 溶接治具
2 治具本体
3 ガス導入部
3a 導入口
3b 排出口
4 溶接トーチ配置部
5 ガイド部
6 取付部
7 開閉部
10 溶接装置
11 固定部
12 回転部
13 溶接治具支持部
14 溶接トーチ支持部
15 溶接トーチ
16 軸
17 ワイヤ送り機構
18 溶接ワイヤ
160 制御棒駆動装置ハウジング
166 キャノピーシール
166a 開先部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状に形成された制御棒駆動装置ハウジングにて円周状に設けられるキャノピーシールを円周に沿って溶接するための制御棒駆動装置ハウジングの溶接治具であって、
前記キャノピーシールの円周に沿って円環状に形成され、内周面を前記キャノピーシールの開先部に向けて配置される治具本体と、
前記治具本体の円環状の外側に導入口を有するとともに前記治具本体の内周面側に排出口を有して前記治具本体の内部を貫通するガス導入部と、
前記治具本体の一部が切り欠かれて形成され当該治具本体の円環状の外側と内側とを開通する溶接トーチ配置部と、
前記治具本体に設けられ前記制御棒駆動装置ハウジングに接触することで前記治具本体の内周面が前記キャノピーシールの開先部に対向した位置となるように前記治具本体を保持するガイド部と、
を備えることを特徴とする制御棒駆動装置ハウジングの溶接治具。
【請求項2】
前記治具本体の円環状を開閉する開閉部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の制御棒駆動装置ハウジングの溶接治具。
【請求項3】
円筒状に形成された制御棒駆動装置ハウジングにて円周状に設けられるキャノピーシールを円周に沿って溶接するための制御棒駆動装置ハウジングの溶接装置であって、
前記制御棒駆動装置ハウジングに固定される固定部と、
前記制御棒駆動装置ハウジングを中心に回転する態様で前記固定部に設けられた回転部と、
前記回転部に設けられており前記請求項1または2に記載の溶接治具を前記キャノピーシールの開先部の位置で支持する溶接治具支持部と、
前記回転部に設けられており前記溶接治具の溶接トーチ配置部に溶接トーチを配置する溶接トーチ支持部と、
を備えることを特徴とする制御棒駆動装置ハウジングの溶接装置。
【請求項1】
円筒状に形成された制御棒駆動装置ハウジングにて円周状に設けられるキャノピーシールを円周に沿って溶接するための制御棒駆動装置ハウジングの溶接治具であって、
前記キャノピーシールの円周に沿って円環状に形成され、内周面を前記キャノピーシールの開先部に向けて配置される治具本体と、
前記治具本体の円環状の外側に導入口を有するとともに前記治具本体の内周面側に排出口を有して前記治具本体の内部を貫通するガス導入部と、
前記治具本体の一部が切り欠かれて形成され当該治具本体の円環状の外側と内側とを開通する溶接トーチ配置部と、
前記治具本体に設けられ前記制御棒駆動装置ハウジングに接触することで前記治具本体の内周面が前記キャノピーシールの開先部に対向した位置となるように前記治具本体を保持するガイド部と、
を備えることを特徴とする制御棒駆動装置ハウジングの溶接治具。
【請求項2】
前記治具本体の円環状を開閉する開閉部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の制御棒駆動装置ハウジングの溶接治具。
【請求項3】
円筒状に形成された制御棒駆動装置ハウジングにて円周状に設けられるキャノピーシールを円周に沿って溶接するための制御棒駆動装置ハウジングの溶接装置であって、
前記制御棒駆動装置ハウジングに固定される固定部と、
前記制御棒駆動装置ハウジングを中心に回転する態様で前記固定部に設けられた回転部と、
前記回転部に設けられており前記請求項1または2に記載の溶接治具を前記キャノピーシールの開先部の位置で支持する溶接治具支持部と、
前記回転部に設けられており前記溶接治具の溶接トーチ配置部に溶接トーチを配置する溶接トーチ支持部と、
を備えることを特徴とする制御棒駆動装置ハウジングの溶接装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−106255(P2012−106255A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−256281(P2010−256281)
【出願日】平成22年11月16日(2010.11.16)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月16日(2010.11.16)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】
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