説明

制御装置、制御方法および制御プログラム

【課題】バリデーション失敗時におけるソフトウェア設定処理の簡略化を可能にする制御装置、制御方法および制御プログラムを提供すること。
【解決手段】本発明は、ソフトウェアを更新した場合に、更新後のソフトウェアを用いて実際に測定機構2および制御機構3の各構成部位を動作させた動作結果をもとに更新後のソフトウェアを選択するか否かを判断する更新制御部32を備え、更新制御部32は、動作結果が所定の許容範囲を満たさない場合、使用するソフトウェアを更新前のソフトウェアに戻すことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ソフトウェアを用いて被制御装置の動作処理を制御する制御装置、制御方法および制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、血液や体液等の検体を自動的に分析する装置として、試薬が分注された反応容器に検体を加え、反応容器内の検体と試薬との間で生じた反応を光学的に検出する分析装置が知られている。このような分析装置では、反応容器内の反応を測定する測定機構にコンピュータシステムを接続し、このコンピュータシステムが分析装置の各処理にかかわる各種ソフトウェアを用いて、測定機構の駆動制御を行うとともに測定機構における測定結果の分析を行う。そして、コンピュータシステムにおいては、ネットワーク回線を介してまたは更新ソフトウェアを格納した記録媒体を介して、使用する各種ソフトウェアのバージョンアップなどの更新を行っている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平11−95989号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、分析装置については、ソフトウェアの更新に起因して各機構の処理動作が狂わないように、分析装置の保守点検を専門に行うサービスマンが、分析装置が配置されている施設に出向きソフトウェアのセットアップおよび更新などを行っていた。具体的には、サービスマンは、ソフトウェアのセットアップや更新を行った後に、既知の結果を有する標準検体を用いて実際に分析を行い、この分析結果が標準検体における既知の結果と一致するか否かを検討するバリデーションを行う。そして、サービスマンは、分析結果が標準検体における既知の結果と一致した場合は所定の分析精度を維持できる場合であるため、バリデーションが成功したものと考え、新しくセットアップしたソフトウェアまたは更新後のソフトウェアを分析装置の次回起動時から使用できるように設定する。
【0005】
しかしながら、分析結果が標準検体における既知の結果と一致しない場合は、新しく更新後のソフトウェアによって、分析装置の各機構の処理動作に狂いが生じ、所定の分析精度が確保できない場合である。この場合、サービスマンは、バリデーションが失敗し、所定の分析精度確保のためには新しく更新後のソフトウェアではなく更新前のソフトウェアの使用が好ましいと判断する場合が多い。このため、サービスマンは、バリデーションが失敗した場合には、更新後のソフトウェアをアンインストールして、更新前のソフトウェアを再度インストールするという煩雑な処理を行わざるを得ないという問題があった。そして、サービスマンによる更新後のソフトウェアのアンインストールおよび更新前のソフトウェアのインストール処理の間、分析装置は分析処理を停止せざるを得ず、分析処理が停滞するという問題があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、バリデーション失敗時におけるソフトウェア設定処理の簡易化を可能にする制御装置、制御方法および制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、この発明にかかる制御装置は、ソフトウェアを用いて被制御装置の動作処理を制御する制御装置において、前記ソフトウェアを更新した場合に、更新後の前記ソフトウェアを用いて実際に前記被制御装置を動作させた動作結果をもとに前記更新後のソフトウェアを選択するか否かを判断する更新制御手段を備え、前記更新制御手段は、前記動作結果が所定の許容範囲を満たさない場合、使用する前記ソフトウェアを更新前の前記ソフトウェアに戻すことを特徴とする。
【0008】
また、この発明にかかる制御装置は、前記更新制御手段は、前記更新後のソフトウェアとともに前記更新前のソフトウェアをそのまま保持した状態で、前記更新後のソフトウェアを用いて実際に前記被制御装置を動作させることを特徴とする。
【0009】
また、この発明にかかる制御装置は、前記更新制御手段は、前記更新前のソフトウェアにパッチ処理を施さずにそのまま前記更新前のソフトウェアを保持することを特徴とする。
【0010】
また、この発明にかかる制御装置は、前記更新制御手段は、前記更新後のソフトウェアを取得した後であっても前記更新前のソフトウェアをアンインストールすることなくそのまま保持することを特徴とする。
【0011】
また、この発明にかかる制御装置は、前記更新制御手段は、前記動作結果が所定の許容範囲を満たさない場合、前記更新後のソフトウェアをアンインストールし、前記使用するソフトウェアとして前記更新前のソフトウェアを選択することを特徴とする。
【0012】
また、この発明にかかる制御装置は、当該制御装置は、試料を分析する分析装置を制御し、前記更新制御手段は、前記更新後のソフトウェアを用いて既知の結果を有する標準試料を分析させた分析結果が、前記既知の結果に一致するか否かをもとに前記更新後のソフトウェアを選択するか否かを判断することを特徴とする。
【0013】
また、この発明にかかる制御方法は、ソフトウェアを用いて被制御装置の動作処理を制御する制御方法において、前記ソフトウェアを更新した場合に、更新後の前記ソフトウェアを用いて実際に前記被制御装置を動作させた動作結果をもとに前記更新後のソフトウェアを選択するか否かを判断する更新制御ステップを含み、前記更新制御ステップにおいては、前記動作結果が所定の許容範囲を満たさない場合、使用する前記ソフトウェアを更新前の前記ソフトウェアに戻すことを特徴とする。
【0014】
また、この発明にかかる制御プログラムは、ソフトウェアを用いて被制御装置の動作処理を制御する制御プログラムにおいて、前記ソフトウェアを更新した場合に、更新後の前記ソフトウェアを用いて実際に前記被制御装置を動作させた動作結果をもとに前記更新後のソフトウェアを選択するか否かを判断する更新制御手順を含み、前記更新制御手順においては、前記動作結果が所定の許容範囲を満たさない場合、使用する前記ソフトウェアを更新前の前記ソフトウェアに戻すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、ソフトウェア更新処理において、更新後のソフトウェアを用いて実際に被制御装置を動作させた動作結果が所定の許容範囲を満たさないときに、使用するソフトウェアを更新前のソフトウェアに戻すことによって、バリデーション失敗時におけるソフトウェア設定処理の簡易化を可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して、この発明の実施の形態について説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付している。
【0017】
図1は、本実施の形態にかかる分析システムの全体構成を示す図である。図1に示すように、本実施の形態にかかる分析システムは、複数の分析装置1と、ネットワークNを介して各分析装置1に接続して各分析装置1を管理する管理サーバ41とを備える。管理サーバ41は、各種情報を記憶するデータベース42を有する。
【0018】
分析装置1は、検体等の試料の成分を生化学的または免疫学的に分析する。分析装置1は、反応容器内で生じる反応を光学的に測定する測定機構2と、測定機構2の駆動制御を行うとともに測定機構2における測定結果の分析を行う制御機構3とを有する。
【0019】
測定機構2は、搬送される反応容器に、検体等の試料および試薬を順次分注し、攪拌した後、検体と試薬が反応した反応液を光学的に測定する。光学的測定が終了した反応容器は、そのまま廃棄される場合もあり、洗浄後に再度検体の分析に使用される場合もある。
【0020】
制御機構3は、一または複数のコンピュータシステムを用いて実現され、反応容器内の反応を光学的に測定する測定機構2に接続する。制御機構3は、分析装置1の各処理にかかわる各種ソフトウェアを用いて、測定機構2の動作処理の制御を行うとともに測定機構2における測定結果の分析を行う。制御機構3は、制御部31、入力部33、分析部34、記憶部35、表示部36および送受信部37を備える。
【0021】
制御部31は、制御機能を有するCPU等を用いて構成され、分析装置1の各部の処理および動作を制御する。制御部31は、これらの各構成部位に入出力される情報について所定の入出力制御を行い、かつ、この情報に対して所定の情報処理を行う。制御部31は、更新制御部32を有する。
【0022】
入力部33は、種々の情報を入力するためのキーボード、表示部36の表示画面上における任意の位置を指定するためのマウス等を用いて構成され、検体の分析に必要な諸情報や分析動作の指示情報等を外部から取得する。分析部34は、測定機構2から取得した測定結果に基づいて試料の成分分析等を行う。記憶部35は、情報を磁気的に記憶するハードディスクと、分析装置1が処理を実行する際にその処理にかかわる各種ソフトウェアをハードディスクからロードして電気的に記憶するメモリとを用いて構成され、検体の分析結果等を含む諸情報を記憶する。記憶部35は、CD−ROM、DVD−ROM、PCカード等の記憶媒体に記憶された情報を読み取ることができる補助記憶装置を備えてもよい。表示部36は、ディスプレイ等を用いて構成され、検体の分析結果を含む諸情報を表示出力する。送受信部37は、ネットワークNを介して所定の形式にしたがった情報の送受信を行うインターフェースとしての機能を有する。なお、制御機構3は、プリンタやスピーカーなどを備え、印刷情報および音声情報を出力してもよい。
【0023】
制御部31は、記憶部35が記憶するソフトウェアをメモリから読み出すことにより分析装置1の制御を実行する。更新制御部32は、送受信部37からネットワークNを介して管理サーバ41に接続し、管理サーバ41からソフトウェアの更新に必要な更新ソフトウェアおよびソフトウェアの更新に必要な情報をダウンロードして、管理サーバ41によって更新を指示されたソフトウェアの更新を行う。
【0024】
そして、更新制御部32は、ソフトウェアを更新した場合に、更新後のソフトウェアを用いて実際に分析装置1を動作させた動作結果をもとに更新後のソフトウェアを選択するか否かを判断する。更新制御部32は、更新後のソフトウェアを用いて既知の結果を有する標準検体を分析装置1に分析させた分析結果が、既知の結果と一致するか否かをもとに更新後のソフトウェアを選択するか否かを判断する。言い換えると、更新制御部32は、更新後のソフトウェアを使用した場合の標準検体に対する分析結果が既知の結果と一致するか否かを検討するバリデーションの結果に応じて、更新後のソフトウェアあるいは更新前のソフトウェアのいずれを選択するかを判断する。そして、更新後のソフトウェアを使用した場合の標準検体に対する分析結果が既知の結果と一致しないバリデーション失敗時には、使用するソフトウェアを更新前のソフトウェアに戻す。なお、更新制御部32は、ソフトウェアを更新するときに、更新後のソフトウェアとともに更新前のソフトウェアをそのまま保持した状態で、更新後のソフトウェアを用いて実際に分析装置1を動作させる。この場合、更新制御部32は、更新前のソフトウェアにパッチ処理を施さずにそのまま保持してもよい。また、更新制御部32は、更新後のソフトウェアを取得した後であっても更新前のソフトウェアをアンインストールすることなくそのまま保持してもよい。
【0025】
更新制御部32は、図2に示すように、バリデーションが失敗したことを示す情報Snを受信した場合、矢印Y1に示すように更新後ソフトウェアWnではなく、矢印Y2に示すように更新前ソフトウェアWpを選択する。そして、更新制御部32は、更新後ソフトウェアWnをアンインストールする。バリデーションが失敗しているため、更新後のソフトウェアを維持し続けた場合、更新後のソフトウェアに起因して分析装置1の各機構の処理動作に狂いが生じて所定の分析精度を確保できないからである。更新制御部32は、所定の分析精度を確保する更新前のソフトウェアを選択することによって、分析装置1の分析精度を確保する。
【0026】
一方、更新制御部32は、図3に示すように、バリデーションが成功したことを示す情報Siを受信した場合、矢印Y3に示すように更新前ソフトウェアWpではなく、矢印Y4に示すように更新後ソフトウェアWnを選択する。バリデーションが成功したため、ソフトウェアの更新を行った場合であっても所定の分析精度を維持できる場合であるからである。そして、更新制御部32は、更新前ソフトウェアWpをアンインストールする。
【0027】
つぎに、図4を参照して、分析装置1におけるソフトウェア更新およびソフトウェア選択の処理手順を説明する。まず、分析装置1のシャットダウン時には、更新制御部32は、ネットワークNを介して管理サーバ41に、ソフトウェアの更新の要否を問い合わせ(ステップS2)、管理サーバ41の応答をもとにソフトウェアの更新が必要であるか否かを判断する(ステップS4)。更新制御部32は、ソフトウェアの更新が必要でないと判断した場合(ステップS4:No)、そのまま終了する。一方、更新制御部32は、ソフトウェアの更新が必要であると判断した場合(ステップS4:Yes)、入力部33から入力される指示情報をもとにソフトウェアの更新を実行するか否かを判断する(ステップS6)。更新制御部32は、ソフトウェアの更新を実行しないと判断した場合(ステップS6:No)、そのまま終了する。これに対し、更新制御部32は、ソフトウェアの更新を実行すると判断した場合(ステップS6:Yes)、ネットワークNを介して接続した管理サーバ41から更新に必要なソフトウェアなどを取得し、更新が必要であるソフトウェアを更新する(ステップS8)。なお、前述したように、更新制御部32は、更新前のソフトウェアをアンインストールすることなく、そのまま保持している。
【0028】
また、分析装置1におけるソフトウェア更新時には、表示部36は、ソフトウェアの更新を行うことを示すオペレーションメニューを表示した後(ステップS10)、更新制御部32は、更新が必要であるソフトウェアを更新する(ステップS8)。
【0029】
また、ソフトウェア更新後のバリデーションが未実施である場合には、表示部37は、更新後のソフトウェアあるいは更新前のソフトウェアのいずれかの選択を入力できるソフトウェア選択オペレーションメニューを表示する(ステップS12)。そして、更新制御部32は、入力部33から入力される情報であって更新後のソフトウェアあるいは更新前のソフトウェアのいずれかの選択を指示する指示情報をもとに、更新後のソフトウェアを使用するか否かを判断する(ステップS14)。更新制御部32は、更新後のソフトウェアを使用しないと判断した場合(ステップS14:No)、更新前のソフトウェアを使用ソフトウェアとして選択し(ステップS16)、ソフトウェアの選択処理を終了する。
【0030】
ソフトウェア更新処理が終了した場合(ステップS8)、または、更新制御部32が更新後のソフトウェアを使用すると判断した場合(ステップS14:Yes)、ステップS18に進み、表示部36は、バリデーション実行の有無を入力できる入力メニューを表示する(ステップS18)。この入力メニューには、たとえば、バリデーションの実行を選択できる欄とバリデーションの不実行を選択できる欄とが設けられ、操作者は、入力部33を構成するマウスなどの操作によって、バリデーションの実行を選択できる欄とバリデーションの不実行を選択できる欄とのいずれかを選択する。
【0031】
次いで、更新制御部32は、バリデーション実行を指示する情報が入力部33から入力されたか否かを判断する(ステップS20)。操作者の操作によって、入力部33を介してバリデーションを実行しない旨の情報が入力された場合(ステップS20:No)、そのまま終了する。
【0032】
これに対し、更新制御部32は、バリデーションを実行する旨の情報が入力された場合(ステップS20:Yes)、操作者は、標準検体を分析装置1に配置し、標準検体に対する所定の分析処理を分析装置1に対して指示する。分析装置1は、分析処理の指示情報にしたがって、更新後のソフトウェアを用いて実際に標準検体に対する分析処理を行い(ステップS21)、標準検体に対する分析結果を表示部36から表示出力する。その後、表示部36は、バリデーション結果を入力できる入力メニューを表示する(ステップS22)。この入力メニューには、たとえば、バリデーション成功の入力を選択できる欄とバリデーション失敗の入力を選択できる欄とが設けられ、操作者は、入力部33を構成するマウスなどの操作によって、バリデーション成功の入力欄とバリデーション失敗の入力欄とのいずれかを選択する。次いで、更新制御部32は、バリデーション成功を示す情報が入力部33から入力されたか否かを判断する(ステップS24)。
【0033】
標準検体に対する分析結果が既知の結果と一致する場合はバリデーションが成功した場合であるため、操作者は、マウスを操作し、バリデーション成功の入力欄を選択する。この結果、更新制御部32は、バリデーションが成功したことを示す情報を入力部33から受信し、バリデーションが成功したと判断する(ステップS24:Yes)。この場合、更新制御部32は、更新後のソフトウェアを使用ソフトウェアとして選択し(ステップS26)、更新前のソフトウェアをアンインストールして、ソフトウェアの選択処理を終了する。ソフトウェアの更新を行った場合であっても、分析装置1の各機構は正確に動作でき、分析装置1において所定の分析精度を維持できるためである。
【0034】
これに対し、標準検体に対する分析結果が既知の結果と一致しない場合はバリデーションが失敗した場合である。言い換えると、更新後のソフトウェアを使用することによって、更新後のソフトウェアに起因して分析装置1の各機構の処理動作に狂いが生じ分析精度を確保することができない場合である。この場合、操作者は、マウスを操作し、バリデーション失敗の入力欄を選択する。この結果、更新制御部32は、バリデーションが失敗したことを示す情報を入力部33から受信し、バリデーションが失敗したと判断する(ステップS24:No)。次いで、表示部36は、更新前のソフトウェアの選択の有無を入力できる入力メニューを表示する(ステップS28)。この入力メニューには、更新前のソフトウェアの選択を入力できる欄と、更新前のソフトウェアの不選択を入力できる欄とが設けられる。そして、更新制御部32は、入力部33から入力された情報をもとに、更新前のソフトウェアを選択するか否かを判断する(ステップS30)。
【0035】
更新制御部32が更新前のソフトウェアの不選択を指示する指示情報が入力され更新前のソフトウェアを選択しないと判断した場合(ステップS30:No)、ステップS18に進む。そして、表示部36は、バリデーション実行の有無を入力できる入力メニューを表示する(ステップS18)。そして、バリデーションの再実施について判断し(ステップS20)、バリデーション再実施が指示された場合にはバリデーション再実施のために標準検体に対する分析処理を行う(ステップS21)。
【0036】
これに対し、更新制御部32は、更新前のソフトウェアの選択を指示する指示情報が入力され更新前のソフトウェアを選択すると判断した場合(ステップS30:Yes)、更新前のソフトウェアを使用ソフトウェアとして選択し(ステップS32)、更新後のソフトウェアをアンインストールして、ソフトウェアの選択処理を終了する。更新後のソフトウェアを使用した場合、更新後のソフトウェアに起因して分析装置1の各機構の処理動作に狂いが生じ分析装置1における所定の分析精度を確保できないため、更新制御部32は、所定の分析精度を維持できる更新前のソフトウェアを選択する。
【0037】
このように、本実施の形態1にかかる分析装置1は、ソフトウェアを更新したときに更新後のソフトウェアを用いて実際に標準検体に対して分析処理を行い、更新後のソフトウェアを用いた分析結果が標準検体における既知の結果と一致しない場合、すなわち、バリデーションが失敗した場合、更新後のソフトウェアではなく更新前のソフトウェアを選択し、更新後のソフトウェアをアンインストールする。言い換えると、分析装置1においては、バリデーションの失敗時であって分析精度確保のため更新前のソフトウェアの使用が好ましい場合には、自動的に、使用するソフトウェアを更新前のソフトウェアに設定するとともに更新後のソフトウェアをアンインストールしている。このため、分析装置1においては、バリデーション失敗時であっても、煩雑な処理を行うことなく迅速かつ簡易に更新前のソフトウェアに戻すことができる。
【0038】
また、分析装置1は、バリデーション失敗時であっても、使用するソフトウェアを迅速かつ簡易に更新前のソフトウェアに戻すことができるため、分析装置における装置停止時間を短縮でき、ソフトウェア更新処理による分析処理の停滞を低減することができる。
【0039】
さらに、分析装置1は、バリデーション失敗時であっても、自動的に更新後のソフトウェアをアンインストールするため、ソフトウェア更新のために必ずしも分析装置1近傍にサービスマンが駐在する必要はない。この結果、分析装置1によれば、サービスマンの出張費用等を含む分析装置1の保守点検費用を低減することができる。
【0040】
なお、本実施の形態1においては、更新制御部32は、バリデーションの成功または失敗を示す情報を受信することによってバリデーション結果を取得しソフトウェアを選択したが、これに限らない。図5に示すように、更新制御部32自身が標準検体に対する実際の分析結果と標準検体における既知の結果とを比較してバリデーションの成功または失敗を判断してもよい。図5は、分析装置におけるソフトウェア更新およびソフトウェア選択の他の処理手順を示すフローチャートである。図5に示すように、分析装置1は、図4に示すステップS2〜ステップS20と同様に、更新ソフトウェア問い合わせ処理(ステップS42)、ソフトウェア更新要否判断処理(ステップS44)、ソフトウェア更新有無判断処理(ステップS46)、ソフトウェア更新処理(ステップS48)、ソフトウェア更新オペレーション表示処理(ステップS50)、ソフトウェア選択オペレーション表示処理(ステップS52)、更新後ソフトウェア使用判断処理(ステップS54)、更新前ソフトウェア選択処理(ステップS56)、バリデーション実行の入力メニュー表示処理(ステップS58)、バリデーション実行判断処理(ステップS60)を行う。そして、更新制御部32がバリデーションを実行する旨の情報が入力されたと判断した場合(ステップS60:Yes)、分析装置1は、更新後のソフトウェアを用いて実際に標準検体に対する分析処理を行い(ステップS61)、分析結果を出力する。
【0041】
つぎに、更新制御部32は、ステップS61において分析された標準検体の既知の結果を取得する(ステップS62)。この既知の結果は、記憶部35に記憶されるほか、入力部33を介して外部から入力されてもよい。更新制御部32は、更新後のソフトウェアを用いた実際の分析結果と、取得した標準検体の既知の結果とが一致するか否かを判断する(ステップS64)。更新制御部32は、更新後のソフトウェアを用いた実際の分析結果と、取得した標準検体の既知の結果とが一致すると判断した場合(ステップS64:Yes)、バリデーションは成功したと判断し(ステップS66)、図3に示すステップS26と同様の処理手順を行って、更新後のソフトウェアを選択する(ステップS68)。一方、更新制御部32は、更新後のソフトウェアを用いた実際の分析結果と、取得した標準検体の既知の結果とが一致しないと判断した場合(ステップS64:No)、バリデーションは失敗したと判断し(ステップS70)、図3に示すステップS32と同様の処理手順を行って、更新前のソフトウェアを選択し、更新後のソフトウェアをアンインストールする。
【0042】
図5に示すように、標準検体に対する更新後のソフトウェアを用いた実際の分析結果と標準検体における既知の結果とを比較してバリデーションの成功または失敗を判断して自動的に適切なソフトウェアを選択することによって、ソフトウェアの選択をさらに迅速かつ簡易に行うことが可能になる。
【0043】
また、本実施の形態においては、標準検体に対する更新後のソフトウェアを用いた実際の分析処理と標準検体における既知の結果とが完全に一致するか否かをもとに、バリデーションの成功または失敗を判断したが、標準検体に対する実際の分析結果が、分析装置1に要求される分析精度を確保可能とする所定の許容範囲を満たすか否かをもとに、バリデーションの成功または失敗を判断してもよい。
【0044】
また、本実施の形態においては、ネットワークNを介して、管理サーバ41から、ソフトウェアの更新に要する情報等を取得した場合について説明したが、これに限らず、図6に示すように、フレキシブルディスク(FD)108、CD−ROM109、MOディスク、DVDディスク、光磁気ディスク、ICカードなどの可搬用の物理媒体からソフトウェアの更新に要する情報等を取得してもよく、ネットワークNを介して接続した他のコンピュータシステム111からソフトウェアの更新に要する情報等を取得してもよい。なお、図6に示す本体部101は、制御機構3における制御部31、入力部33、分析部34、記憶部35および送受信部37に対応し、ディスプレイ102は、表示部36に対応し、キーボード103とマウス104とは、入力部33に対応する。
【0045】
また、上記実施の形態で説明した分析装置は、あらかじめ用意されたプログラムをパーソナル・コンピュータやワークステーションなどの図6に示すようなコンピュータシステムで実行することによって実現することができる。このコンピュータシステムは、所定の記録媒体に記録されたプログラムを読み出して実行することで分析装置1の処理動作を実現する。ここで、所定の記録媒体とは、フレキシブルディスク(FD)108、CD−ROM109、MOディスク、DVDディスク、光磁気ディスク、ICカードなどの「可搬用の物理媒体」の他に、コンピュータシステム100の内外に備えられるハードディスクドライブ(HDD)などのように、プログラムの送信に際して短期にプログラムを保持する「通信媒体」など、コンピュータシステム100によって読み取り可能なプログラムを記録する、あらゆる記録媒体を含むものである。また、このコンピュータシステム100は、ネットワークNを介して接続した管理サーバ41、他のコンピュータシステム111からプログラムを取得し、取得したプログラムを実行することで分析装置1の処理動作を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】実施の形態1にかかる分析システムの全体構成を示す図である。
【図2】図1に示す更新制御部について説明する図である。
【図3】図1に示す更新制御部について説明する図である。
【図4】図1に示す分析装置におけるソフトウェア更新およびソフトウェア選択の処理手順を示すフローチャートである。
【図5】図1に示す分析装置におけるソフトウェア更新およびソフトウェア選択の他の処理手順を示すフローチャートである。
【図6】実施の形態を用いたコンピュータシステムの構成を示す構成図である。
【符号の説明】
【0047】
1 分析装置
2 測定機構
3 制御機構
31 制御部
32 更新制御部
33 入力部
34 分析部
35 記憶部
36 表示部
37 送受信部
41 管理サーバ
42 データベース
101 本体部
102 ディスプレイ
103 キーボード
104 マウス
108 フレキシブルディスク(FD)
109 CD−ROM
111 他のコンピュータシステム
N ネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソフトウェアを用いて被制御装置の動作処理を制御する制御装置において、
前記ソフトウェアを更新した場合に、更新後の前記ソフトウェアを用いて実際に前記被制御装置を動作させた動作結果をもとに前記更新後のソフトウェアを選択するか否かを判断する更新制御手段を備え、
前記更新制御手段は、前記動作結果が所定の許容範囲を満たさない場合、使用する前記ソフトウェアを更新前の前記ソフトウェアに戻すことを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記更新制御手段は、前記更新後のソフトウェアとともに前記更新前のソフトウェアをそのまま保持した状態で、前記更新後のソフトウェアを用いて実際に前記被制御装置を動作させることを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記更新制御手段は、前記更新前のソフトウェアにパッチ処理を施さずにそのまま前記更新前のソフトウェアを保持することを特徴とする請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記更新制御手段は、前記更新後のソフトウェアを取得した後であっても前記更新前のソフトウェアをアンインストールすることなくそのまま保持することを特徴とする請求項2に記載の制御装置。
【請求項5】
前記更新制御手段は、前記動作結果が所定の許容範囲を満たさない場合、前記更新後のソフトウェアをアンインストールし、前記使用するソフトウェアとして前記更新前のソフトウェアを選択することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の制御装置。
【請求項6】
当該制御装置は、試料を分析する分析装置を制御し、
前記更新制御手段は、前記更新後のソフトウェアを用いて既知の結果を有する標準試料を分析させた分析結果が、前記既知の結果に一致するか否かをもとに前記更新後のソフトウェアを選択するか否かを判断することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の制御装置。
【請求項7】
ソフトウェアを用いて被制御装置の動作処理を制御する制御方法において、
前記ソフトウェアを更新した場合に、更新後の前記ソフトウェアを用いて実際に前記被制御装置を動作させた動作結果をもとに前記更新後のソフトウェアを選択するか否かを判断する更新制御ステップを含み、
前記更新制御ステップにおいては、前記動作結果が所定の許容範囲を満たさない場合、使用する前記ソフトウェアを更新前の前記ソフトウェアに戻すことを特徴とする制御方法。
【請求項8】
ソフトウェアを用いて被制御装置の動作処理を制御する制御プログラムにおいて、
前記ソフトウェアを更新した場合に、更新後の前記ソフトウェアを用いて実際に前記被制御装置を動作させた動作結果をもとに前記更新後のソフトウェアを選択するか否かを判断する更新制御手順を含み、
前記更新制御手順においては、前記動作結果が所定の許容範囲を満たさない場合、使用する前記ソフトウェアを更新前の前記ソフトウェアに戻すことを特徴とする制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−21114(P2008−21114A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−192092(P2006−192092)
【出願日】平成18年7月12日(2006.7.12)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】