説明

制御装置および制御方法

【課題】発電ロスを低減する。
【解決手段】制御装置100は、複数のユーザサイトのそれぞれでの電気使用量を予測するための予測情報を保持する予測情報保持部101と、予測情報に基づいて各ユーザサイトでの電気使用量の予測値を演算し、その予測値を複数のユーザサイトに亘って合計して合計予測値とする予測部116と、供給予定電力量を取得する供給電力取得部118と、供給予定電力量と合計予測値との差が所定のしきい値よりも小さくなる逼迫期間において蓄電装置を放電させるための指令情報を当該蓄電装置を備えるユーザサイトに送信する指令送信部120と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置および制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電力会社は、自己が運営する原子力発電所、水力発電所、火力発電所等において発電された電力をユーザサイトに供給する。電力会社は通常、円滑な電力供給を目指して、発電所にユーザサイトでの最終需要量以上に発電させている。この発電量は一般には最終需要量の3〜4割増しと言われている。平時ではこの約3割分が発電ロスとなっている。
【0003】
現在、我が国電力会社において発電/配電/給電にかかる年間総コストはおよそ13兆円と見積もることができる。この約3割すなわち約4兆円分が上記の発電ロスに相当する。見方を変えると、約4兆円分の発電ロス・マーケットが存在する。
【0004】
一方、ラミネート型リチウムイオンバッテリなどの蓄電装置や太陽光発電装置、風力発電装置などの発電装置のユーザサイトへの普及が進んでいる。このような蓄電装置や発電装置を効率的に利用しようとする試みが提案されている(例えば、特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第02/029952号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発電ロスを減らすための取り組みのひとつとして、電力需要を予測し、その予測に基づいて発電計画を立てることが考えられる。この発電計画においては発電量平準化の要請を考慮することが重要である。すなわち、発電量は需要量よりも時間的に緩やかに変化する前提で発電計画を立てる必要がある。例えば主な電力会社の主力となっている原子力発電所は、一端稼働するとその発電量を適応的に変えることは基本的に困難である。他の火力発電所や水力発電所等も、ある程度の適応性は有するものの基本的には需要量の変化について行けるほどの適応性は有していない。したがって、原則として発電量を需要量にぴったり追従させることは難しい。
【0007】
発電計画においてもう一つ重要な点は、停電リスクを回避するために常に発電量が需要量をいくらか上回るように計画することである。そのため、予測される需要量が最大となる時間帯に対してその最大値に安全のためのマージンを加えた値を発電量として設定することが考えられる。
【0008】
需要量の時間変化よりも緩やかに時間変化するように発電量が決定される場合、予測される需要量が少ない時間帯における発電ロスは、予測される需要量が最大となる時間帯における発電ロスよりも一般的に大きくなる。特に、予測される需要量が最大となる時間帯に近い時間帯では、発電量を思うように低く設定し難い。これは発電ロス低減の足かせとなりうる。
【0009】
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、発電ロスをより低減できる制御技術の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のある態様は制御装置に関する。この制御装置は、複数のユーザサイトのそれぞれでの電力の使用量の予測値を演算し、その予測値を前記複数のユーザサイトに亘って合計して合計予測値とする予測部と、複数のユーザサイトに対して実際に供給される予定の電力量を取得する供給電力取得部と、複数のユーザサイトのうち自家発電によって充電される蓄電装置を備えたユーザサイトに対して、供給電力取得部によって取得された電力量と合計予測値との差が所定のしきい値よりも小さくなる逼迫期間において当該蓄電装置を放電させるための指令情報を送信する指令送信部と、を備える。
【0011】
この態様によると、逼迫期間においてユーザサイト側の蓄電装置を放電させることができる。
【0012】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を装置、方法、システム、コンピュータプログラム、コンピュータプログラムを格納した記録媒体などの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、発電ロスをより低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】電力供給システムの構成を示す模式図である。
【図2】実施の形態に係る制御装置の機能および構成を示すブロック図である。
【図3】図2のユーザテーブルの一例を示すデータ構造図である。
【図4】図2の状況テーブルの一例を示すデータ構造図である。
【図5】図2のパターン保持部の一例を示すデータ構造図である。
【図6】図2の設備能力保持部の一例を示すデータ構造図である。
【図7】図2の中間データ保持部の一例を示すデータ構造図である。
【図8】図2の放電予定情報保持部の一例を示すデータ構造図である。
【図9】予約入力画面の代表画面図である。
【図10】図2の制御装置における一連の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。
【0016】
通常、蓄電装置や発電装置を導入したユーザサイトでは、自家発電によって得られる電力量分だけ発電所/電力会社から購入する電力量を減らすことで電気料金の低減を図る場合が多い。しかしながら、発電所/電力会社がその分発電量を減らせるかというとそうではない。現状では、各ユーザサイトは個々ばらばらのタイミングで自家発電の電力を使用しており、そのような不確定な要素を発電計画に組み込むことは難しいからである。
【0017】
そこで本実施の形態では、自家発電により得られる電力量の利用を主に電力会社側がコントロールできる構成とした。すなわち、発電計画にユーザサイトの蓄電装置/発電装置を秩序立てて巻き込むことを可能とした。これにより、電力の需要と供給が逼迫する期間に集中的に自家発電分の電力を使用する等の対策が可能となる。その結果、電力会社は総発電量を低減することができ、また発電量をより平準化できる。
なお、電力会社は、自家発電のコントロールを電力会社に託す代償として、ユーザサイトにポイントや電気料金の値引き等を提供してもよい。
【0018】
図1は、電力供給システム2の構成を示す模式図である。電力供給システム2は、データセンタ4と、発電所6と、第1ユーザサイト8と、第2ユーザサイト10と、第3ユーザサイト12と、第4ユーザサイト14と、インターネットなどのネットワーク16と、配電網18と、を備える。
【0019】
発電所6は電力会社によって運営され、原子力発電、火力発電、水力発電等により発電した電力を配電網18を介して各ユーザサイト8、10、12、14に供給する。
ユーザサイトは、標準家庭、共働き家庭、家内工業、オフィス、工場などの属性で分類される、電力供給の契約の1単位である。図1の例では、属性「標準家庭」に属する第1ユーザサイト8、属性「共働き家庭」に属する第2ユーザサイト10、属性「標準家庭」に属する第3ユーザサイト12、属性「家内工業」に属する第4ユーザサイト14、が示されている。各ユーザサイト8、10、12、14は電力会社との契約に基づき発電所6から電力の供給を受けている。ユーザサイトの属性や数は図1に示される例に限られないことは当業者には理解される。
【0020】
以下、4つのユーザサイト8、10、12、14が含まれるブロックを電力供給対象ブロックと称する。
【0021】
データセンタ4は実施の形態に係る制御装置(図1では不図示)を有する。データセンタ4は制御装置を使用して、電力供給対象ブロックに対して実際に供給される予定の電力量(以下、供給予定電力量と称す)を定期的に、例えば日ごとに決定し、それをネットワーク16を介して発電所6に通知する。供給予定電力量を決定する対象となる期間を予測期間と称す。
【0022】
制御装置は、各ユーザサイトから収集した予測期間における電気使用量の予定または予約を基に、電力供給対象ブロック全体で合計した電力需要の合計予測値を演算する。制御装置またはデータセンタ4の担当者は、電力供給対象ブロックに含まれるユーザサイトのうちの少なくともひとつに備えられている蓄電装置を補助的に利用する前提で、合計予測値から供給予定電力量を決定する。
【0023】
ユーザサイト8、10、12、14はそれぞれ、太陽光発電装置8a、10a、12a、14aと蓄電装置8b、10b、12b、14bとを有する。太陽光発電装置8a、10a、12a、14aは、公知の太陽光発電技術により構成される発電装置である。蓄電装置8b、10b、12b、14bはそれぞれ、太陽光発電装置8a、10a、12a、14aから連続的に充電される。すなわち蓄電装置8b、10b、12b、14bは自家発電によって充電される。蓄電装置8b、10b、12b、14b自体またはそれに接続される不図示のホームサーバは、データセンタ4に設置された制御装置とネットワーク16を介して接続される。
【0024】
蓄電装置8b、10b、12b、14bはそれぞれ配電網18と接続され、放電の指示があると、蓄えられた電力を自己が属するユーザサイトおよびそのユーザサイトと配電網18で接続される他のユーザサイトに供給する。また蓄電装置8b、10b、12b、14bは、放電禁止の指示があると、指示された期間中放電を行わない。蓄電装置8b、10b、12b、14bまたはホームサーバは、制御装置からネットワーク16を介して受信する指令情報に基づいて蓄電装置8b、10b、12b、14bに放電または放電禁止の指示を出す。
【0025】
図2は、実施の形態に係る制御装置100の機能および構成を示すブロック図である。ここに示す各ブロックは、ハードウエア的には、コンピュータのCPU(central processing unit)をはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウエア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウエア、ソフトウエアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、本明細書に触れた当業者には理解されるところである。
【0026】
制御装置100は、予測情報保持部101と、中間データ保持部112と、パターン保持部110と、設備能力保持部104と、放電予定情報保持部106と、予測情報取得部114と、予測部116と、供給電力取得部118と、指令送信部120と、を備える。
【0027】
予測情報保持部101は、電力供給対象ブロックに含まれる各ユーザサイトでの電気使用量を予測するための予測情報を保持する。予測情報保持部101は状況テーブル102とユーザテーブル108とを含み、予測情報は状況テーブル102に保持される情報とユーザテーブル108に保持される情報とを含む。
【0028】
図3は、ユーザテーブル108の一例を示すデータ構造図である。ユーザテーブル108は、ユーザサイトを特定するユーザサイトID202と、そのユーザサイトが備えるホームサーバまたは蓄電装置のIPアドレス204と、そのユーザサイトが備える太陽光発電装置や蓄電装置などの蓄電・発電設備の種類を特定する蓄電・発電設備種別ID206と、そのユーザサイトの属性を特定する属性ID208と、を対応付けて保持する。
【0029】
以下では、電力量、蓄電量、発電量および電気使用量の単位として共通の単位を使用する。この共通の単位としては例えばkWhやWh等が考えられるが、以下では任意の適切な単位とし単位の表示は省略する。
【0030】
図4は、状況テーブル102の一例を示すデータ構造図である。状況テーブル102は、ユーザサイトID221と、そのユーザサイトが備える蓄電装置の残量223と、差分225(後述)と、を対応付けて保持する。
【0031】
図5は、パターン保持部110の一例を示すデータ構造図である。パターン保持部110は、ユーザサイトの属性ごとにそのユーザサイトでの電気使用量のパターン(以下、電力使用パターンと称す)を保持する。電力使用パターンは、例えばユーザサイトの属性ごとに規定された電気使用量の代表的な時間的推移である。
【0032】
パターン保持部110は、属性ID210と、電気使用量の代表的な値212と、を対応付けて保持する。ここでの電気使用量の代表的な値は、予測期間を所定数に分割したそれぞれの期間における電気使用量の代表的な値であり、この場合は1日を24分割したそれぞれの期間における電気使用量の代表的な値である。
以下、1日を24分割したそれぞれの期間を分割期間と称す。
【0033】
図6は、設備能力保持部104の一例を示すデータ構造図である。設備能力保持部104は、蓄電・発電設備の種類ごとに、蓄電装置の最大蓄電量と、予測期間を所定数に分割したそれぞれの期間における発電量の代表的な値、この場合は各分割期間における発電量の代表的な値と、を対応付けて記憶する。設備能力保持部104は、蓄電・発電設備種別ID214と、最大蓄電量216と、発電量の代表的な値218と、を対応付けて保持する。
【0034】
図2に戻る。
予測情報取得部114は、残量情報取得部130と、差分情報抽出部132と、属性情報抽出部134と、質問情報送信部136と、を含む。
質問情報送信部136は、ユーザサイトでの電力の使用予定に関する情報の入力を受け付けるための質問情報を、ユーザテーブル108に登録されているユーザサイトごとに生成する。質問情報は、例えば予約入力画面302(図9で後述)を蓄電装置のディスプレイまたはホームサーバに接続されたディスプレイに表示させるための情報である。
【0035】
質問情報送信部136は、生成された質問情報を予測期間が始まる前にネットワーク16を介して各ユーザサイトに送信する。この際、質問情報送信部136はユーザテーブル108を参照し、送信対象のユーザサイトのユーザサイトIDに対応するIPアドレスを質問情報の送信先として使用する。
【0036】
各ユーザサイトでは、質問情報が受信されると、ディスプレイに予約入力画面302が表示される。ユーザサイトのユーザは、予約入力画面302に対して、電力使用パターンすなわち属性の変更の有無および変更するのであればどの属性に変更するかを示す属性情報を入力する。またユーザは、予約入力画面302に対して、予測期間において電力使用パターンで規定される電気使用量とは異なる電気使用量が見込まれる場合、その見込まれる電気使用量を示す差分情報を入力する。すなわちユーザは、この差分情報を使用して電気使用量を「予約」することができる。
【0037】
蓄電装置またはホームサーバは、予約入力画面302に対して入力された属性情報および差分情報をネットワーク16を介して制御装置100に送信する。
属性情報抽出部134は、蓄電装置またはホームサーバから受信した情報から属性情報を抽出する。属性情報抽出部134は、抽出された属性情報が属性の変更が有ることを示す場合、その変更をユーザテーブル108に登録する。
【0038】
属性情報抽出部134はまた、新たなユーザサイトのユーザ登録の際、ネットワーク16を介してそのユーザサイトの属性を示す情報を取得する。属性情報抽出部134は取得した情報に示される属性の属性IDを、その新たなユーザサイトのユーザサイトIDに対応付けてユーザテーブル108に登録する。
【0039】
差分情報抽出部132は、蓄電装置またはホームサーバから受信した情報から差分情報を抽出する。差分情報抽出部132は、抽出された差分情報に示される見込み電気使用量と電力使用パターンで規定される電気使用量との差分を状況テーブル102に登録する。特に差分は、予測期間を所定数に分割したそれぞれの期間における差分、この場合は各分割期間における差分として状況テーブル102に保持される。
【0040】
蓄電装置またはホームサーバは、予測期間が始まる前に蓄電装置の蓄電量を計測し、計測された蓄電量を示す蓄電量情報をネットワーク16を介して制御装置100に送信する。
残量情報取得部130は、ネットワーク16を介して蓄電量情報を取得し、それに示される蓄電量を蓄電装置の残量として状況テーブル102に登録する。
【0041】
予測部116は、予測情報保持部101によって保持された予測情報に基づいて電力供給対象ブロックに含まれる各ユーザサイトでの電気使用量の予測値を演算し、その予測値を電力供給対象ブロックに含まれるユーザサイトに亘って合計して合計予測値とする。予測部116は、属性抽出部138と、パターン抽出部140と、第1演算部142と、第2演算部144と、を含む。
【0042】
属性抽出部138は、電力供給対象ブロックに含まれるユーザサイトのそれぞれについてユーザテーブル108から属性IDを抽出する。
パターン抽出部140は、属性抽出部138によって抽出された属性IDに対応する電力使用パターンをパターン保持部110から抽出する。これにより、電力供給対象ブロックに含まれるユーザサイトのそれぞれについて、対応する電力使用パターンが抽出される。
【0043】
第1演算部142は、所定のユーザサイトについて状況テーブル102から差分を抽出する。第1演算部142は、抽出された差分を、パターン抽出部140によって抽出された所定のユーザサイトの電力使用パターンに加え、所定のユーザサイトでの電気使用量の予測値とする。第1演算部142は、電力供給対象ブロックに含まれるユーザサイトのそれぞれについて上記処理を行い、得られる電気使用量の予測値を中間データ保持部112に登録する。
【0044】
図7は、中間データ保持部112の一例を示すデータ構造図である。中間データ保持部112は、ユーザサイトIDと、各分割期間における電気使用量の予測値と、を対応付けて保持する(図7のエントリ220)。
なお、図7には、図3に示されるユーザテーブル108および図5に示されるパターン保持部110に対応し差分がない場合の電気使用量の予測値が示されている。
以下、図2および図7を参照して説明する。
【0045】
第2演算部144は、第1演算部142における演算で得られる電気使用量の予測値を電力供給対象ブロックに含まれる全てのユーザサイトに亘って合計して電気使用量の合計予測値とする。第2演算部144は合計予測値を中間データ保持部112に登録する。中間データ保持部112は、各分割期間における合計予測値を保持する(図7のエントリ222)。
【0046】
供給電力取得部118は、発電量平準化の要請にしたがうように、すなわち電力供給対象ブロックに対して供給可能な電力量は合計予測値よりも時間的に緩やかに変化する前提(以下、平準化前提と称す)で決定された供給予定電力量を取得する。供給電力取得部118は、供給電力受付部146と、仮残量演算部148と、放電量決定部149と、放電量割当部150と、放電予定登録部152と、を含む。
【0047】
仮残量演算部148は、電力供給対象ブロックに含まれるユーザサイトのそれぞれについてユーザテーブル108からそのユーザサイトの蓄電・発電設備種別IDを抽出する。仮残量演算部148は、抽出された蓄電・発電設備種別IDに対応する発電量の代表的な値を設備能力保持部104から抽出する。これにより、電力供給対象ブロックに含まれるユーザサイトのそれぞれについて、各分割期間における発電量の代表的な値が抽出される。
【0048】
仮残量演算部148は、電力供給対象ブロックに含まれるユーザサイトのそれぞれについて、予測期間が始まる前の蓄電装置の残量を開始前残量として状況テーブル102から抽出する。
仮残量演算部148は、抽出された発電量の代表的な値および抽出された開始前残量に基づいて、予測期間において蓄電装置を放電しないと仮定した場合の仮の蓄電装置の残量(以下、蓄電池仮残量と称す)を、各分割期間について演算する。仮残量演算部148はその演算結果を中間データ保持部112に登録する。中間データ保持部112は、ユーザサイトIDと、各分割期間における蓄電池仮残量と、を対応付けて保持する(図7のエントリ224)。また、仮残量演算部148は、蓄電池仮残量を電力供給対象ブロックに含まれるユーザサイトに亘って合計してトータルの蓄電池仮残量とし、中間データ保持部112に登録する(図7のエントリ226)。
【0049】
例えばある分割期間における蓄電池仮残量は、(開始前残量)+(その分割期間より前の全ての分割期間における発電量の代表的な値の和)として算出される。
【0050】
供給電力受付部146は、平準化前提のもとでデータセンタ4の担当者によって決定された供給予定電力量の情報を不図示の入力装置を介して受け付ける。供給電力受付部146は、受け付けた各分割期間における供給予定電力量を中間データ保持部112に登録する(図7のエントリ228)。また、供給電力受付部146は、各分割期間における供給予定電力量と合計予測値との差を余剰電力量として中間データ保持部112に登録する(図7のエントリ230)。
【0051】
データセンタ4の担当者が供給予定電力量を決定する際、供給電力取得部118は中間データ保持部112に保持されている合計予測値および蓄電池仮残量の情報を担当者に提供してもよい。この場合担当者は、各ユーザサイトの蓄電装置の残量も考慮に入れて供給予定電力量を決定することができる。これは発電量を平準化し、総発電量を低減する方向に寄与する。
【0052】
あるいはまた供給電力受付部146は、平準化前提のもとで不図示の供給電力演算部によって演算された供給予定電力量の情報を受け付けてもよい。この場合、供給電力演算部は、各分割期間において供給予定電力量が合計予測値を上回るように供給予定電力量を決定してもよい。この際、平準化前提のもと、分割期間とその次の分割期間との間での供給予定電力量の差には所定の上限値が設定される。例えばこの上限値は、分割期間とその次の分割期間との間での合計予測値の変化量の最大値よりも小さい値である。
【0053】
例えば供給電力演算部は、合計予測値が最大となる分割期間において、供給予定電力量をその合計予測値の最大値と等しい値に設定してもよい。次に供給電力演算部は、その合計予測値が最大となる分割期間を起点として、供給予定電力量の変化量に上限値を課しつつ、供給予定電力量の変化を合計予測値の変化に合わせるように供給予定電力量を決定してもよい。
【0054】
放電量決定部149は、分割期間のなかから余剰電力量が所定の安全マージン値よりも小さくなる逼迫期間を決定する。この安全マージン値は、電気使用量の予測値と実測値との乖離の度合いを考慮して決定され、特に過去の電気使用量のデータを解析することで決定される。この安全マージン値は図7の例では「15」に設定されている。図7の例では逼迫期間は「8〜9」、「11〜12」、「13〜14」である。
【0055】
放電量決定部149は、決定された逼迫期間において電力供給対象ブロックの蓄電装置から当該電力供給対象ブロックに放電すべき総電力量(以下、合計放電量と称す)を決定する。特に放電量決定部149は、逼迫期間における合計放電量と余剰電力量との和が安全マージン値よりも大きくなるように合計放電量を決定する。放電量決定部149は決定された合計放電量を中間データ保持部112に登録する(図7のエントリ232)。
【0056】
放電量割当部150は、中間データ保持部112に保持されている蓄電池仮残量を参照し、電力供給対象ブロックに含まれるユーザサイトの蓄電装置のなかから逼迫期間において合計放電量に対応する電力量を放電すべきひとつまたは複数の蓄電装置を選択する。放電量割当部150は、そのように選択された蓄電装置のそれぞれが放電すべき電力量(以下、蓄電池放電量と称す)を決定する。各逼迫期間において、蓄電池放電量を選択された蓄電装置に亘って合計した値は、その逼迫期間における合計放電量と等しい。放電量割当部150は、決定された蓄電池放電量を中間データ保持部112に登録する(図7のエントリ234)。また放電量割当部150は、蓄電池仮残量と蓄電池放電量とから得られる、蓄電装置の残量の予測値を中間データ保持部112に登録する(図7のエントリ236)。
【0057】
放電量割当部150は、逼迫期間において各蓄電装置の残量に偏りが生じないように蓄電装置を選択し蓄電池放電量を決定する。例えば放電量割当部150は、逼迫期間における合計放電量を複数の単位放電量に分割し、その逼迫期間において残量が多い方の蓄電装置から順に単位放電量を割り当てる。
この場合、蓄電装置の利用の偏りを抑制してユーザサイトをより平等に扱うことができる。したがって、制御装置100を使用したサービスに参加しているユーザに、平等に扱われているという安心感を与えることができる。
【0058】
放電量割当部150は、ユーザテーブル108および設備能力保持部104を参照し、各ユーザサイトの蓄電装置の最大蓄電量を取得する。放電量割当部150はこの最大蓄電量に基づいて蓄電装置を選択し蓄電池放電量を決定してもよい。例えば放電量割当部150は、逼迫期間において残量が最大蓄電量に達しているか達する見込みの蓄電装置が存在する場合、その蓄電装置を優先的に選択し、またはその蓄電装置により多くの蓄電池放電量を割り当ててもよい。
この場合、各ユーザサイトの蓄電・発電設備をより有効に使用することができる。
【0059】
放電予定登録部152は、各逼迫期間について、放電量割当部150によって選択された蓄電装置の情報と、その蓄電装置に対して決定された蓄電池放電量と、を中間データ保持部112から抽出する。蓄電装置の情報はここではその蓄電装置を備えるユーザサイトのユーザサイトIDである。放電予定登録部152は、逼迫期間の情報とその逼迫期間に対して抽出されたユーザサイトIDおよび蓄電池放電量とから放電予定情報を生成し、放電予定情報保持部106に登録する。放電予定情報は、例えば、どのユーザサイトの蓄電装置が、いつからいつまでの間、どれだけ放電すればよいか、を示す情報である。
【0060】
図8は、放電予定情報保持部106の一例を示すデータ構造図である。放電予定情報保持部106は、放電する予定の蓄電装置を備えるユーザサイトのユーザサイトIDである対象ユーザサイトID240と、放電する予定の期間である放電期間242と、その放電期間において蓄電装置が放電すべき電力量すなわち放電装置がその放電期間が到来するまでに最低限蓄えておかなければならない残量である必要残量244と、を対応付けて保持する。
【0061】
放電予定情報保持部106と放電予定登録部152との関係では、逼迫期間は放電期間に対応し、その逼迫期間に対して放電予定登録部152によって抽出された蓄電装置の情報、蓄電池放電量はそれぞれ対象ユーザサイトID、必要残量に対応する。
【0062】
図2に戻る。
指令送信部120は、放電予定情報保持部106に保持される放電予定情報に基づいて蓄電装置またはホームサーバに適した形式の指令情報を生成し、ネットワーク16を介してその蓄電装置またはホームサーバに送信する。指令情報は、逼迫期間において蓄電装置を放電させるための情報である。
【0063】
指令送信部120は、対象ユーザサイトID、放電期間、必要残量の組を放電予定情報保持部106から抽出する。指令送信部120は抽出された対象ユーザサイトIDに対応するIPアドレスをユーザテーブル108から抽出する。指令送信部120は、抽出された放電期間および必要残量を示す指令情報を生成し、抽出されたIPアドレス宛にネットワーク16を介して送信する。
【0064】
蓄電装置またはホームサーバは、受信した指令情報に示される放電期間の到来前の所定の期間蓄電装置からの放電を禁止する等により、放電期間の開始時に指令情報に示される必要残量が蓄電装置に蓄えられているよう構成される。この意味で、指令情報は、逼迫期間に入る前に蓄電装置に必要な電力量を確保させるための確保情報であるとも言える。
そして蓄電装置は、指令情報に示される放電期間中、指令情報に示される必要残量分の電力量をその蓄電装置を備えるユーザサイトおよび場合によっては他のユーザサイトに供給する。
【0065】
具体的には蓄電装置またはホームサーバは、蓄電装置の放電を制御する放電制御部(不図示)を備えていてもよい。この放電制御部は、蓄電装置の出力端子とユーザサイトへ電力を供給するための電力供給ラインとの間に設けられたスイッチと、受信した指令情報に示される放電期間の到来前の所定の期間前記スイッチをオフに固定し、放電期間中は前記スイッチをオンに固定するタイマ部と、を含んでもよい。
【0066】
なお、指令情報と確保情報とは別々に生成され、送信されてもよい。この場合、例えば確保情報は放電期間の到来前の所定の期間の開始時に指令送信部からユーザサイトに送信され、ユーザサイト側では当該確保情報を受信すると次に指令情報を受信するまで蓄電装置からの放電が禁止される。指令情報は、放電期間の開始時に指令送信部からユーザサイトに送信される情報であり、放電期間の長さを示す情報を含む。ユーザサイト側では指令情報の受信時からその情報に示される長さだけ蓄電装置を放電させる。
【0067】
図9は、予約入力画面302の代表画面図である。予約入力画面302は、属性情報の入力を促す属性情報入力領域304と、差分情報の入力を促す差分情報入力領域306と、を有する。
【0068】
以上の構成による制御装置100の動作を説明する。
図10は、制御装置100における一連の処理を示すフローチャートである。予測情報取得部114は、各ユーザサイトから予測情報を取得する(S402)。予測部116は、取得された予測情報に基づき各ユーザサイトでの電気使用量の予測値を演算する(S404)。予測部116は、演算された予測値を合計して合計予測値を得る(S406)。供給電力取得部118は、発電量平準化の要請にしたがい合計予測値から決定された供給予定電力量を取得する(S408)。供給電力取得部118は逼迫期間を決定する(S410)。供給電力取得部118は、逼迫期間において蓄電装置から供給すべき合計放電量を決定する(S412)。供給電力取得部118は、逼迫期間において放電すべき蓄電装置を選択する(S414)。供給電力取得部118は、選択された蓄電装置の放電量を決定する(S416)。指令送信部120は、選択された蓄電装置に、その蓄電装置がいつどれだけ放電すればよいかを示す指令情報を送信する(S418)。
【0069】
上述の実施の形態において、保持部の例は、ハードディスクや半導体メモリである。また、本明細書の記載に基づき、各部を、図示しないCPUや、インストールされたアプリケーションプログラムのモジュールや、システムプログラムのモジュールや、ハードディスクから読み出したデータの内容を一時的に記憶する半導体メモリなどにより実現できることは本明細書に触れた当業者には理解されるところである。
【0070】
ユーザサイトでの電気使用量はユーザの活動に依存して1日の中でも大きく変動する。供給予定電力量を決定する際には、常に供給量が需要量よりも多くなるように、合計予測値が最も大きくなる分割期間での供給予定電力量をその合計予測値に安全のためのマージンを加えた値程度とする。発電所/電力会社の信頼を保つために従来ではこのマージンを十分大きくとっていた。しかしながら、発電量平準化の要請があるため、このマージンを大きく取るとその分予測期間内の他の分割期間における供給予定電力量と合計予測値との差も大きくなる。供給予定電力量は時間的に緩やかに変化することが求められるからである。したがって、予測期間全体にわたって多くの余剰(=無駄)が発生しうる。
【0071】
そこで本実施の形態に係る制御装置100は、需要と供給が逼迫することが予測される逼迫期間において、ユーザサイト側に設けられた蓄電装置を稼働させそこからユーザサイトに補助的に電力を供給するための指令情報をそのユーザサイトに送信する。したがって、逼迫期間において電力会社側が設定する安全のためのマージンをより低く抑えることができる。その結果、予測期間の他の分割期間における供給予定電力量を低減し、総供給予定電力量すなわち総発電量を低減できる。
【0072】
あるいはまた、ユーザサイトでの電気使用量の急な変化やピークが蓄電装置からの放電量によって抑えられることとなるので、発電量が一層平準化される。
【0073】
また、本実施の形態に係る制御装置100では、ユーザサイトに送信される確保情報は、逼迫期間に入る前にそのユーザサイトの蓄電装置に必要残量を確保させるための情報である。したがって、制御装置100で生成された稼働スケジュールに反してユーザが勝手に蓄電装置を稼働させることを防止できる。これにより、電力供給の信頼性が向上する。
【0074】
また、本実施の形態に係る制御装置100では、電力使用パターンが保持され、その電力使用パターンに基づいて合計予測値が演算される。したがって、ユーザサイト側は自己の電気使用量の予定を逐一報告する必要がないので、ユーザにとってよりストレスの少ないサービスが実現されうる。
【0075】
以上、実施の形態に係る制御装置100の構成と動作について説明した。この実施の形態は例示であり、その各構成要素や各処理の組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0076】
実施の形態では、予測期間の長さを24時間(1日)としたが、これに限られず、例えば1週や1月などの任意の長さの期間が使用されてもよい。
【0077】
実施の形態では、蓄電装置は太陽光発電装置から連続的に充電される場合について説明したが、これに限られず、例えばユーザサイトは太陽光発電装置で発電された電力を蓄電装置に充電するモードと充電せずにそのまま使用するモードとを選択可能とされてもよい。
【0078】
予測情報取得部は、ユーザサイトから蓄電装置の使用予定を示す情報を取得してもよい。仮残量演算部は取得された情報に示される使用予定に基づいて蓄電池仮残量を演算してもよい。この場合、制御装置による統一的な蓄電装置の制御を維持しつつ、ユーザサイトにも蓄電装置利用の自由度をいくらか提供することができる。
【符号の説明】
【0079】
2 電力供給システム、 4 データセンタ、 6 発電所、 16 ネットワーク、 18 配電網、 100 制御装置、 101 予測情報保持部、 102 状況テーブル、 104 設備能力保持部、 106 放電予定情報保持部、 108 ユーザテーブル、 110 パターン保持部、 112 中間データ保持部、 114 予測情報取得部、 116 予測部、 118 供給電力取得部、 120 指令送信部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のユーザサイトのそれぞれでの電力の使用量の予測値を演算し、その予測値を前記複数のユーザサイトに亘って合計して合計予測値とする予測部と、
前記複数のユーザサイトに対して実際に供給される予定の電力量を取得する供給電力取得部と、
前記複数のユーザサイトのうち自家発電によって充電される蓄電装置を備えたユーザサイトに対して、前記供給電力取得部によって取得された電力量と前記合計予測値との差が所定のしきい値よりも小さくなる逼迫期間において当該蓄電装置を放電させるための指令情報を送信する指令送信部と、を備えることを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記指令送信部は、前記複数のユーザサイトのうち自家発電によって充電される蓄電装置を備えたユーザサイトに対して、前記逼迫期間に入る前に当該蓄電装置に必要な電力量を確保させるための確保情報を送信することを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
各ユーザサイトの属性を示す予測情報を保持する予測情報保持部と、
ユーザサイトの属性ごとにそのユーザサイトでの電力の使用量のパターンを保持するパターン保持部と、をさらに備え、
前記予測部は、
各ユーザサイトについて前記予測情報保持部に保持された予測情報からそのユーザサイトの属性を示す情報を抽出する属性抽出部と、
前記属性抽出部によって抽出された情報に示される属性に対応するパターンを前記パターン保持部から抽出するパターン抽出部と、
前記パターン抽出部によって抽出されたパターンに基づいて各ユーザサイトでの電力の使用量の予測値を演算する第1演算部と、
前記第1演算部における演算で得られる予測値を前記複数のユーザサイトに亘って合計して前記合計予測値とする第2演算部と、を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の制御装置。
【請求項4】
複数のユーザサイトのそれぞれでの電力の使用量の予測値を演算し、その予測値を前記複数のユーザサイトに亘って合計して合計予測値とするステップと、
前記複数のユーザサイトに対して実際に供給される予定の電力量を取得するステップと、
前記複数のユーザサイトのうち自家発電によって充電される蓄電装置を備えたユーザサイトに対して、取得された電力量と前記合計予測値との差が所定のしきい値よりも小さくなる逼迫期間において当該蓄電装置を放電させるための指令情報を送信するステップと、を含むことを特徴とする制御方法。
【請求項5】
複数のユーザサイトのそれぞれでの電力の使用量の予測値を演算し、その予測値を前記複数のユーザサイトに亘って合計して合計予測値とする機能と、
前記複数のユーザサイトに対して実際に供給される予定の電力量を取得する機能と、
前記複数のユーザサイトのうち自家発電によって充電される蓄電装置を備えたユーザサイトに対して、取得された電力量と前記合計予測値との差が所定のしきい値よりも小さくなる逼迫期間において当該蓄電装置を放電させるための指令情報を送信する機能と、をコンピュータに実現させることを特徴とするコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−95455(P2012−95455A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−240781(P2010−240781)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(000155469)株式会社野村総合研究所 (1,067)
【Fターム(参考)】