制振材とこの制振材を用いた制振床構造
【課題】階下に伝わる床衝撃音をできるだけ遮断することのできる軽量且つ安価な床制振材を提供する。
【解決手段】アスファルト中に酸化鉄粉を分散させたアスファルト系制振板の一方の面に密度35〜72.5kg/m3のフェルトを積層した。該アスファルト系制振板の比重は2〜3.3で、厚さT1が2〜12mmが好ましい。該フェルトは、ポリエステル系合成樹脂の繊維、特に荷重によるつぶれを少なくするため、径が太くて曲がりが大きい繊維からなるものが好ましく、厚さT2が2〜6mmのものが好ましい。
【解決手段】アスファルト中に酸化鉄粉を分散させたアスファルト系制振板の一方の面に密度35〜72.5kg/m3のフェルトを積層した。該アスファルト系制振板の比重は2〜3.3で、厚さT1が2〜12mmが好ましい。該フェルトは、ポリエステル系合成樹脂の繊維、特に荷重によるつぶれを少なくするため、径が太くて曲がりが大きい繊維からなるものが好ましく、厚さT2が2〜6mmのものが好ましい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝撃音の遮断性能に優れた制振材とこの制振材を用いた制振床構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
人が床の上を歩くと、床が足で踏みつけられることによって振動し、床から歩行音が発生する。特に、子供が床の上を走ったりすると、床からかなりの歩行音が発生する。また、人が生活していると、歩行音だけでなく、種々の生活音が部屋の中から発生する。また、場合によっては、周囲の迷惑を気にせず、部屋の中でテレビを大音量で聴いたり、ピアノやバイオリンを弾いたり、カラオケで歌ったりして、周囲に騒音をまき散らす人もいる。
【0003】
これらの音は床から梁及び天井を通って階下の部屋に伝わって行く。この天井から階下に伝わってきた音は階下の部屋で生活している住人を頭の上から圧迫するので、階下の住人を非常に不快にさせる。
【0004】
そこで、戸建住宅、共同住宅において、最下階以上の床は下階への音を低減させるために、図2のように、合板等の床下地材10とフローリング等の床仕上材12の間に、制振板14を挿入することが行われている。ここで、制振板14としてはアスファルト系制振板が使用されている。アスファルト系制振板としては、例えばアスファルトに酸化鉄粉を入れてシート状に成形したものが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−18466号公報
【特許文献2】特開平10−259658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
制振板14を上階の床の床下地材10と床仕上材12の間に入れても、上階の部屋から階下の部屋に伝わる音が十分には低減されず、階下の部屋に伝わる音の更なる低減が求められていた。
【0007】
また、制振板14としてアスファルト系制振板を使用する場合は、アスファルト系制振板が非常に重く、その輸送、上階への荷上げ、床への施工が大変なので、軽くて遮音性能の良い制振板が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、比重が2〜3.3で、厚さT1が2〜12mmの、アスファルト中に酸化鉄粉を分散させたものからなるアスファルト系制振板の一方の面に、密度35〜72.5kg/m3で、厚さT2が2〜6mmであるポリエステル系合成樹脂の繊維(荷重によるつぶれを少なくするため、径が太くて曲がりが大きい繊維が望ましい)からなるフェルトを積層してなることを特徴とする。
【0009】
また、上記制振材は、前記フェルトを下側にして床下地材の上に積層し、該制振材の上に床仕上げ材を積層して制振床構造を構成してもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、制振板と床下地材の間にフェルトを介在させ、制振板が床下地材に直接接触しないようにしたので、上階の音が床下地材に伝わり難くなり、上階の音の階下への伝達の更なる低減が図られるという利点がある。
【0011】
また、本発明によれば、制振板の裏面(下面)にフェルトを積層させたので、床衝撃音遮断性能を維持しながら制振板を薄くすることができ、従って、軽くて遮音性能の良い制振材を得ることができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は本発明に係る制振材の断面図である。
【図2】図2は制振材を挿入した従来の床断面の一例の説明図である。
【図3】図3は本発明に係る制振材を挿入した床の断面図である。
【図4】図4は床衝撃音実験室の断面図である。
【図5】図5は床衝撃音実験室の2階の平面図である。
【図6】図6は実施例1の衝撃音遮断実験で得られた軽量床衝撃音レベル(dB)と中心周波数(Hz)との関係を示すグラフである。
【図7】図7は実施例2の衝撃音遮断実験で得られた軽量床衝撃音レベル(dB)と中心周波数(Hz)との関係を示すグラフである。
【図8】図8は実施例3の衝撃音遮断実験で得られた軽量床衝撃音レベル(dB)と中心周波数(Hz)との関係を示すグラフである。
【図9】図9は実施例4及び実施例5で使用した試験体の断面を示す説明図である。
【図10】図10は実施例4の衝撃音遮断実験で得られた軽量床衝撃音レベル(dB)と中心周波数(Hz)との関係を示すグラフである。
【図11】図11は実施例5の衝撃音遮断実験で得られた重量床衝撃音レベル(dB)と中心周波数(Hz)との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
床衝撃音を遮断することのできる軽量な床制振材を提供するという目的を、安価な材料を用いて、床衝撃音遮断性能を損なわずに実現した。
【実施例1】
【0014】
図4に示すように、鉄骨造2階建である床衝撃音実験室の鉄骨梁上に木造在来床を作り、図5に示す試験体設置位置に910×1820mmの範囲で試験体床16を施工し、この試験体床16の上で軽量床衝撃音(椅子の移動音や歩行音などに相当する音)を発生させ、下階でこの軽量床衝撃音の遮断等級(LL)を測定した。
【0015】
ここで、軽量床衝撃音の遮断等級(LL)は、軽量床衝撃源(タッピングマシーン)を試験体床16の上で動作させ、下階で精密騒音計を用いて音圧レベル(dB)を測定して求めた。また、通常は床全面に試験体床16を施工するが、実験すべき試験体床16が多数あったため、小試験体床とすることによって施工時間を短縮させ、効率よく実験を行った。
【0016】
また、軽量床衝撃音の遮断等級(LL)の測定は、床下地材+床仕上材のみからなる、制振板を入れない試験体床(制振板無し試験体床)、床下地材と床仕上材の間にアスファルト系制振板4tを入れた試験体床(制振板4t入り試験体床)、床下地材と床仕上材の間にアスファルト系制振板4t+フェルト(密度35kg/m3)4tを入れた試験体床(制振板4t+フェルト4t入り試験体床)、床下地材と床仕上材の間にアスファルト系制振板8tを入れた試験体床(制振板8t入り試験体床)、の4種類の試験体床について行った。
【0017】
また、上記制振板4t+フェルト4t入り試験体床を施工するために用いた制振材は図1に示すような断面構造のものを使用し、この制振材によって施工された試験体床は図3に示すような断面構造をしている。
【0018】
図1において、14は制振板であり、制振板14の一方の面(下面)にはフェルト18が積層され、制振板14の他方の面(上面)には不織布20が積層されている。制振板14はアスファルトと酸化鉄粉との合材からなり、制振板14とフェルト18の間には不織布22が挿入されているが、不織布22は無くてもよい。
【0019】
なお、制振板無し試験体床は図3から制振板4tとフェルト4tを除いた断面構造をしており、制振板4t入り試験体床は図3からフェルト4tを除いた断面構造をしており、制振板8t入り試験体床は図3からフェルト4tを除き、制振板の厚さを8tとした断面構造をしている。
【0020】
実験の結果は図6に示す通りであり、制振板無し試験体床の場合、軽量床衝撃音の遮断等級(LL)はLL−78、制振板4t入り試験体床の場合、軽量床衝撃音の遮断等級(LL)はLL−76、制振板4t+フェルト4t入り試験体床の場合、軽量床衝撃音の遮断等級(LL)はLL−73、制振板8t入り試験体床の場合、軽量床衝撃音の遮断等級(LL)はLL−73であった。
【0021】
制振板無し試験体床と制振板4t入り試験体床の軽量床衝撃音の遮断等級(LL)を比較してみると、制振板無し試験体床の軽量床衝撃音の遮断等級(LL)はLL−78であるのに対し、制振板4t入り試験体床の軽量床衝撃音の遮断等級(LL)はLL−76であり、制振板4t入り試験体床は制振板無し試験体床より軽量床衝撃音の遮断等級(LL)が2ポイント良かった。
【0022】
また、制振板4t+フェルト4t入り試験体床の軽量床衝撃音の遮断等級と、制振板4t入り試験体床の軽量床衝撃音の遮断等級(LL)とを比較してみると、制振板4t+フェルト4t入り試験体床の軽量床衝撃音の遮断等級(LL)はLL−73であるのに対し、制振板4t入り試験体床の軽量床衝撃音の遮断等級(LL)はLL−76であり、制振板4t+フェルト4t入り試験体床は制振板4t入り試験体床より軽量床衝撃音の遮断等級が3ポイント良かった。
【0023】
また、制振板8t入り試験体床の軽量床衝撃音の遮断等級(LL)はLL−73であり、上述した制振板4t+フェルト4t入り試験体床の軽量床衝撃音の遮断等級(LL)は、制振板の厚さが半分になっているにもかかわらず、制振板8t入り試験体床の軽量床衝撃音の遮断等級(LL)LL−73と同じであった。この結果から、制振板の厚さを半分にして重さを半分に減らしても、フェルトを積層すれば、軽量床衝撃音の遮断等級(LL)を同等に維持できることがわかる。
【実施例2】
【0024】
アスファルト系制振板の下面に緩衝材を積層して制振材を形成し、この制振材を入れた各試験体床を施工し、この各試験体床について実施例1と同様の遮音実験をした。ここで、制振板としては厚さ4tのアスファルト系制振板を使用し、緩衝材としては、厚さ4tのフェルト(密度35kg/m3)、厚さ3tの軟質発泡ウレタンフォーム、厚さ2tの弾性ホットメルト樹脂を使用した。弾性ホットメルト樹脂は制振板に高さ2mm、50mm間隔でビード状に塗布した。
【0025】
実験の結果は図7に示す通りであり、制振板4t+フェルト4t入り試験体床の場合、軽量床衝撃音の遮断等級(LL)はLL−73、制振板4t+軟質発泡ウレタンフォーム3t入り試験体床の場合、軽量床衝撃音の遮断等級(LL)はLL−75、制振板4t+弾性ホットメルト樹脂2t入り試験体床の場合、軽量床衝撃音の遮断等級(LL)はLL−75であった。
【0026】
制振板4t+フェルト4t入り試験体床は、制振板4t+軟質発泡ウレタンフォーム3t入り試験体床や、制振板4t+弾性ホットメルト樹脂2t入り試験体床より軽量床衝撃音の遮断性能が高いことがわかる。
【実施例3】
【0027】
アスファルト系制振板4tに密度の異なるフェルト4tを積層して制振材をそれぞれ形成し、この制振材を入れた各試験体床を施工し、この各試験体床について実施例1と同様の遮音実験をした。ここで、フェルトとしては、密度35kg/m3のフェルト、密度72.5kg/m3のフェルト、密度92.5kg/m3のフェルトを使用した。
【0028】
実験の結果は図8に示す通りであり、密度35kg/m3のフェルトを積層した制振材を入れた試験体床の場合、軽量床衝撃音の遮断等級(LL)はLL−73、密度72.5kg/m3のフェルトを積層した制振材を入れた試験体床の場合、軽量床衝撃音の遮断等級(LL)はLL−74、密度92.5kg/m3のフェルトを積層した制振材を入れた試験体床の場合、軽量床衝撃音の遮断等級(LL)はLL−75であった。
【0029】
これらの結果からみると、フェルトの密度が低いほど軽量床衝撃音の遮断等級(LL)が小さくなっており、フェルトの密度が低いほど軽量床衝撃音に対して高い遮音性能を有することがわかる。そして、フェルトの密度は35〜72.5kg/m3が最適範囲であることがわかる。
【実施例4】
【0030】
図4の木造在来床全面に図9(a),(b),(c)に断面で示す各試験体床を施工し、下階における軽量床衝撃音レベルを測定した。ここで、図9(a)は制振板なしの試験体床、図9(b)はアスファルト系制振板8tのみを入れた試験体床(制振板8tのみ、フェルト無し)、図9(c)はアスファルト系制振板8tに密度72.5kg/m3のフェルト4tを積層した制振材を入れた試験体床(制振板8t+フェルト4t)である。
【0031】
実験の結果は図10に示す通りであり、制振板なしの試験体床の場合、軽量床衝撃音の遮断等級(LL)はLL−81、制振板8tのみ(フェルト無し)を入れた試験体床の場合、軽量床衝撃音の遮断等級(LL)はLL−77、制振板8t+フェルト4tからなる制振材を入れた試験体床の場合、軽量床衝撃音の遮断等級(LL)はLL−73であった。
【0032】
制振板8tのみ(フェルト無し)の試験体床の軽量床衝撃音の遮断等級(LL)がLL−77であるのに対して、制振板8t+フェルト4tからなる制振材を入れた試験体床の軽量床衝撃音の遮断等級(LL)はLL−73と、フェルトを積層した制振材を入れた試験体床の方がフェルト無しの試験体床より軽量床衝撃音の遮断等級(LL)LLが4ポイント良くなることが分かる。
【実施例5】
【0033】
図4の木造在来床全面に図9(a),(b),(c)に断面で示す各試験体床を施工し、重量床衝撃音実験レベルを測定した。ここで、図9(a),(b),(c)は実施例4の説明と同様である。
【0034】
実験の結果は図11に示す通りであり、制振板なしの試験体床の場合、重量床衝撃音の遮断等級(LH)はLH−81、制振板8tのみ(フェルト無し)を入れた試験体床の場合、重量床衝撃音の遮断等級(LH)はLH−79、制振板8t+フェルト4tからなる制振材を入れた試験体床の場合、重量床衝撃音の遮断等級(LH)はLH−78であった。
【0035】
制振板8tのみ(フェルト無し)の試験体床の重量床衝撃音の遮断等級(LH)がLH−79であるのに対して、制振板8t+フェルト4tからなる制振材を入れた試験体床の重量床衝撃音の遮断等級(LH)はLH−78と、フェルトを積層した制振材を入れた試験体床の方がフェルト無しの試験体床より重量床衝撃音の遮断等級(LH)LHが1ポイント良くなることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明制振材は上述したように床の遮音のために使用するものであるが、ピアノ等の大きな音を発生させる機器が置かれた部屋の壁面に本発明制振材を積層して遮音効果を高めてもよいし、水道管や配水管の周囲に本発明制振材を巻き付けてこれらの管から発生する音を遮蔽してもよいし、鉄製の階段の上面に本発明制振材を積層して階段を上り下りするときに発生する音を低減させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0037】
10 床下地材
12 床仕上材
14 制振板
16 試験体床
18 フェルト
20 不織布
22 不織布
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝撃音の遮断性能に優れた制振材とこの制振材を用いた制振床構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
人が床の上を歩くと、床が足で踏みつけられることによって振動し、床から歩行音が発生する。特に、子供が床の上を走ったりすると、床からかなりの歩行音が発生する。また、人が生活していると、歩行音だけでなく、種々の生活音が部屋の中から発生する。また、場合によっては、周囲の迷惑を気にせず、部屋の中でテレビを大音量で聴いたり、ピアノやバイオリンを弾いたり、カラオケで歌ったりして、周囲に騒音をまき散らす人もいる。
【0003】
これらの音は床から梁及び天井を通って階下の部屋に伝わって行く。この天井から階下に伝わってきた音は階下の部屋で生活している住人を頭の上から圧迫するので、階下の住人を非常に不快にさせる。
【0004】
そこで、戸建住宅、共同住宅において、最下階以上の床は下階への音を低減させるために、図2のように、合板等の床下地材10とフローリング等の床仕上材12の間に、制振板14を挿入することが行われている。ここで、制振板14としてはアスファルト系制振板が使用されている。アスファルト系制振板としては、例えばアスファルトに酸化鉄粉を入れてシート状に成形したものが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−18466号公報
【特許文献2】特開平10−259658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
制振板14を上階の床の床下地材10と床仕上材12の間に入れても、上階の部屋から階下の部屋に伝わる音が十分には低減されず、階下の部屋に伝わる音の更なる低減が求められていた。
【0007】
また、制振板14としてアスファルト系制振板を使用する場合は、アスファルト系制振板が非常に重く、その輸送、上階への荷上げ、床への施工が大変なので、軽くて遮音性能の良い制振板が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、比重が2〜3.3で、厚さT1が2〜12mmの、アスファルト中に酸化鉄粉を分散させたものからなるアスファルト系制振板の一方の面に、密度35〜72.5kg/m3で、厚さT2が2〜6mmであるポリエステル系合成樹脂の繊維(荷重によるつぶれを少なくするため、径が太くて曲がりが大きい繊維が望ましい)からなるフェルトを積層してなることを特徴とする。
【0009】
また、上記制振材は、前記フェルトを下側にして床下地材の上に積層し、該制振材の上に床仕上げ材を積層して制振床構造を構成してもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、制振板と床下地材の間にフェルトを介在させ、制振板が床下地材に直接接触しないようにしたので、上階の音が床下地材に伝わり難くなり、上階の音の階下への伝達の更なる低減が図られるという利点がある。
【0011】
また、本発明によれば、制振板の裏面(下面)にフェルトを積層させたので、床衝撃音遮断性能を維持しながら制振板を薄くすることができ、従って、軽くて遮音性能の良い制振材を得ることができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は本発明に係る制振材の断面図である。
【図2】図2は制振材を挿入した従来の床断面の一例の説明図である。
【図3】図3は本発明に係る制振材を挿入した床の断面図である。
【図4】図4は床衝撃音実験室の断面図である。
【図5】図5は床衝撃音実験室の2階の平面図である。
【図6】図6は実施例1の衝撃音遮断実験で得られた軽量床衝撃音レベル(dB)と中心周波数(Hz)との関係を示すグラフである。
【図7】図7は実施例2の衝撃音遮断実験で得られた軽量床衝撃音レベル(dB)と中心周波数(Hz)との関係を示すグラフである。
【図8】図8は実施例3の衝撃音遮断実験で得られた軽量床衝撃音レベル(dB)と中心周波数(Hz)との関係を示すグラフである。
【図9】図9は実施例4及び実施例5で使用した試験体の断面を示す説明図である。
【図10】図10は実施例4の衝撃音遮断実験で得られた軽量床衝撃音レベル(dB)と中心周波数(Hz)との関係を示すグラフである。
【図11】図11は実施例5の衝撃音遮断実験で得られた重量床衝撃音レベル(dB)と中心周波数(Hz)との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
床衝撃音を遮断することのできる軽量な床制振材を提供するという目的を、安価な材料を用いて、床衝撃音遮断性能を損なわずに実現した。
【実施例1】
【0014】
図4に示すように、鉄骨造2階建である床衝撃音実験室の鉄骨梁上に木造在来床を作り、図5に示す試験体設置位置に910×1820mmの範囲で試験体床16を施工し、この試験体床16の上で軽量床衝撃音(椅子の移動音や歩行音などに相当する音)を発生させ、下階でこの軽量床衝撃音の遮断等級(LL)を測定した。
【0015】
ここで、軽量床衝撃音の遮断等級(LL)は、軽量床衝撃源(タッピングマシーン)を試験体床16の上で動作させ、下階で精密騒音計を用いて音圧レベル(dB)を測定して求めた。また、通常は床全面に試験体床16を施工するが、実験すべき試験体床16が多数あったため、小試験体床とすることによって施工時間を短縮させ、効率よく実験を行った。
【0016】
また、軽量床衝撃音の遮断等級(LL)の測定は、床下地材+床仕上材のみからなる、制振板を入れない試験体床(制振板無し試験体床)、床下地材と床仕上材の間にアスファルト系制振板4tを入れた試験体床(制振板4t入り試験体床)、床下地材と床仕上材の間にアスファルト系制振板4t+フェルト(密度35kg/m3)4tを入れた試験体床(制振板4t+フェルト4t入り試験体床)、床下地材と床仕上材の間にアスファルト系制振板8tを入れた試験体床(制振板8t入り試験体床)、の4種類の試験体床について行った。
【0017】
また、上記制振板4t+フェルト4t入り試験体床を施工するために用いた制振材は図1に示すような断面構造のものを使用し、この制振材によって施工された試験体床は図3に示すような断面構造をしている。
【0018】
図1において、14は制振板であり、制振板14の一方の面(下面)にはフェルト18が積層され、制振板14の他方の面(上面)には不織布20が積層されている。制振板14はアスファルトと酸化鉄粉との合材からなり、制振板14とフェルト18の間には不織布22が挿入されているが、不織布22は無くてもよい。
【0019】
なお、制振板無し試験体床は図3から制振板4tとフェルト4tを除いた断面構造をしており、制振板4t入り試験体床は図3からフェルト4tを除いた断面構造をしており、制振板8t入り試験体床は図3からフェルト4tを除き、制振板の厚さを8tとした断面構造をしている。
【0020】
実験の結果は図6に示す通りであり、制振板無し試験体床の場合、軽量床衝撃音の遮断等級(LL)はLL−78、制振板4t入り試験体床の場合、軽量床衝撃音の遮断等級(LL)はLL−76、制振板4t+フェルト4t入り試験体床の場合、軽量床衝撃音の遮断等級(LL)はLL−73、制振板8t入り試験体床の場合、軽量床衝撃音の遮断等級(LL)はLL−73であった。
【0021】
制振板無し試験体床と制振板4t入り試験体床の軽量床衝撃音の遮断等級(LL)を比較してみると、制振板無し試験体床の軽量床衝撃音の遮断等級(LL)はLL−78であるのに対し、制振板4t入り試験体床の軽量床衝撃音の遮断等級(LL)はLL−76であり、制振板4t入り試験体床は制振板無し試験体床より軽量床衝撃音の遮断等級(LL)が2ポイント良かった。
【0022】
また、制振板4t+フェルト4t入り試験体床の軽量床衝撃音の遮断等級と、制振板4t入り試験体床の軽量床衝撃音の遮断等級(LL)とを比較してみると、制振板4t+フェルト4t入り試験体床の軽量床衝撃音の遮断等級(LL)はLL−73であるのに対し、制振板4t入り試験体床の軽量床衝撃音の遮断等級(LL)はLL−76であり、制振板4t+フェルト4t入り試験体床は制振板4t入り試験体床より軽量床衝撃音の遮断等級が3ポイント良かった。
【0023】
また、制振板8t入り試験体床の軽量床衝撃音の遮断等級(LL)はLL−73であり、上述した制振板4t+フェルト4t入り試験体床の軽量床衝撃音の遮断等級(LL)は、制振板の厚さが半分になっているにもかかわらず、制振板8t入り試験体床の軽量床衝撃音の遮断等級(LL)LL−73と同じであった。この結果から、制振板の厚さを半分にして重さを半分に減らしても、フェルトを積層すれば、軽量床衝撃音の遮断等級(LL)を同等に維持できることがわかる。
【実施例2】
【0024】
アスファルト系制振板の下面に緩衝材を積層して制振材を形成し、この制振材を入れた各試験体床を施工し、この各試験体床について実施例1と同様の遮音実験をした。ここで、制振板としては厚さ4tのアスファルト系制振板を使用し、緩衝材としては、厚さ4tのフェルト(密度35kg/m3)、厚さ3tの軟質発泡ウレタンフォーム、厚さ2tの弾性ホットメルト樹脂を使用した。弾性ホットメルト樹脂は制振板に高さ2mm、50mm間隔でビード状に塗布した。
【0025】
実験の結果は図7に示す通りであり、制振板4t+フェルト4t入り試験体床の場合、軽量床衝撃音の遮断等級(LL)はLL−73、制振板4t+軟質発泡ウレタンフォーム3t入り試験体床の場合、軽量床衝撃音の遮断等級(LL)はLL−75、制振板4t+弾性ホットメルト樹脂2t入り試験体床の場合、軽量床衝撃音の遮断等級(LL)はLL−75であった。
【0026】
制振板4t+フェルト4t入り試験体床は、制振板4t+軟質発泡ウレタンフォーム3t入り試験体床や、制振板4t+弾性ホットメルト樹脂2t入り試験体床より軽量床衝撃音の遮断性能が高いことがわかる。
【実施例3】
【0027】
アスファルト系制振板4tに密度の異なるフェルト4tを積層して制振材をそれぞれ形成し、この制振材を入れた各試験体床を施工し、この各試験体床について実施例1と同様の遮音実験をした。ここで、フェルトとしては、密度35kg/m3のフェルト、密度72.5kg/m3のフェルト、密度92.5kg/m3のフェルトを使用した。
【0028】
実験の結果は図8に示す通りであり、密度35kg/m3のフェルトを積層した制振材を入れた試験体床の場合、軽量床衝撃音の遮断等級(LL)はLL−73、密度72.5kg/m3のフェルトを積層した制振材を入れた試験体床の場合、軽量床衝撃音の遮断等級(LL)はLL−74、密度92.5kg/m3のフェルトを積層した制振材を入れた試験体床の場合、軽量床衝撃音の遮断等級(LL)はLL−75であった。
【0029】
これらの結果からみると、フェルトの密度が低いほど軽量床衝撃音の遮断等級(LL)が小さくなっており、フェルトの密度が低いほど軽量床衝撃音に対して高い遮音性能を有することがわかる。そして、フェルトの密度は35〜72.5kg/m3が最適範囲であることがわかる。
【実施例4】
【0030】
図4の木造在来床全面に図9(a),(b),(c)に断面で示す各試験体床を施工し、下階における軽量床衝撃音レベルを測定した。ここで、図9(a)は制振板なしの試験体床、図9(b)はアスファルト系制振板8tのみを入れた試験体床(制振板8tのみ、フェルト無し)、図9(c)はアスファルト系制振板8tに密度72.5kg/m3のフェルト4tを積層した制振材を入れた試験体床(制振板8t+フェルト4t)である。
【0031】
実験の結果は図10に示す通りであり、制振板なしの試験体床の場合、軽量床衝撃音の遮断等級(LL)はLL−81、制振板8tのみ(フェルト無し)を入れた試験体床の場合、軽量床衝撃音の遮断等級(LL)はLL−77、制振板8t+フェルト4tからなる制振材を入れた試験体床の場合、軽量床衝撃音の遮断等級(LL)はLL−73であった。
【0032】
制振板8tのみ(フェルト無し)の試験体床の軽量床衝撃音の遮断等級(LL)がLL−77であるのに対して、制振板8t+フェルト4tからなる制振材を入れた試験体床の軽量床衝撃音の遮断等級(LL)はLL−73と、フェルトを積層した制振材を入れた試験体床の方がフェルト無しの試験体床より軽量床衝撃音の遮断等級(LL)LLが4ポイント良くなることが分かる。
【実施例5】
【0033】
図4の木造在来床全面に図9(a),(b),(c)に断面で示す各試験体床を施工し、重量床衝撃音実験レベルを測定した。ここで、図9(a),(b),(c)は実施例4の説明と同様である。
【0034】
実験の結果は図11に示す通りであり、制振板なしの試験体床の場合、重量床衝撃音の遮断等級(LH)はLH−81、制振板8tのみ(フェルト無し)を入れた試験体床の場合、重量床衝撃音の遮断等級(LH)はLH−79、制振板8t+フェルト4tからなる制振材を入れた試験体床の場合、重量床衝撃音の遮断等級(LH)はLH−78であった。
【0035】
制振板8tのみ(フェルト無し)の試験体床の重量床衝撃音の遮断等級(LH)がLH−79であるのに対して、制振板8t+フェルト4tからなる制振材を入れた試験体床の重量床衝撃音の遮断等級(LH)はLH−78と、フェルトを積層した制振材を入れた試験体床の方がフェルト無しの試験体床より重量床衝撃音の遮断等級(LH)LHが1ポイント良くなることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明制振材は上述したように床の遮音のために使用するものであるが、ピアノ等の大きな音を発生させる機器が置かれた部屋の壁面に本発明制振材を積層して遮音効果を高めてもよいし、水道管や配水管の周囲に本発明制振材を巻き付けてこれらの管から発生する音を遮蔽してもよいし、鉄製の階段の上面に本発明制振材を積層して階段を上り下りするときに発生する音を低減させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0037】
10 床下地材
12 床仕上材
14 制振板
16 試験体床
18 フェルト
20 不織布
22 不織布
【特許請求の範囲】
【請求項1】
比重が2〜3.3で、厚さT1が2〜12mmの、アスファルト中に酸化鉄粉を分散させたものからなるアスファルト系制振板の一方の面に、密度35〜72.5kg/m3で、厚さT2が2〜6mmであるポリエステル系合成樹脂の繊維からなるフェルトを積層してなることを特徴とする制振材。
【請求項2】
床下地材の上に制振材を積層し、該制振材の上に床仕上げ材を積層してなり、該制振材は比重が2〜3.3で、厚さT1が2〜12mmの、アスファルト中に酸化鉄粉を分散させたものからなるアスファルト系制振板の一方の面に、密度35〜72.5kg/m3で、厚さT2が2〜6mmであるポリエステル系合成樹脂の繊維からなるフェルトを積層してなることを特徴とする制振床構造。
【請求項1】
比重が2〜3.3で、厚さT1が2〜12mmの、アスファルト中に酸化鉄粉を分散させたものからなるアスファルト系制振板の一方の面に、密度35〜72.5kg/m3で、厚さT2が2〜6mmであるポリエステル系合成樹脂の繊維からなるフェルトを積層してなることを特徴とする制振材。
【請求項2】
床下地材の上に制振材を積層し、該制振材の上に床仕上げ材を積層してなり、該制振材は比重が2〜3.3で、厚さT1が2〜12mmの、アスファルト中に酸化鉄粉を分散させたものからなるアスファルト系制振板の一方の面に、密度35〜72.5kg/m3で、厚さT2が2〜6mmであるポリエステル系合成樹脂の繊維からなるフェルトを積層してなることを特徴とする制振床構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−87514(P2012−87514A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−234333(P2010−234333)
【出願日】平成22年10月19日(2010.10.19)
【出願人】(000221786)東邦亜鉛株式会社 (14)
【出願人】(397011177)石井商事株式会社 (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月19日(2010.10.19)
【出願人】(000221786)東邦亜鉛株式会社 (14)
【出願人】(397011177)石井商事株式会社 (2)
【Fターム(参考)】
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