説明

制振装置及び制振性に優れた立設部材

【課題】広範囲に振動数が変動する振動にも、より高い減衰性能を有し、かつ振動の方向にも左右されない制振装置及び制振性に優れた立設部材を提供する。
【解決手段】内部に液体を封入してなる柔軟性を有する袋体の寸法の異なる複数個が1個又は複数個の容器内を移動自在に収容されている袋体ダンパーからなる制振装置。底面の内面が曲面形状を有する容器内を複数個の粒状体が移動自在に収容されている粒状体ダンパーと併用してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制振装置及び制振性に優れた立設部材に関する。特に、道路や橋梁などに立設される、照明柱、標識柱、信号柱などの立設部材に用いられる制振装置及び制振性に優れた立設部材に関する。
【背景技術】
【0002】
道路や橋梁などに立設された、照明柱、標識柱、信号柱などの立設部材は、風、地震や車両走行に伴う路面振動などに起因する共振現象によって、揺れが生じることがある。これらの立設部材に揺れが生じると、揺れによって立設部材の損傷が起きやすく、また、その損傷が促進される。また、発生する振動により、立設部材に取り付けられた器具の寿命が短くなる問題があり、さらに、照明柱の場合には、照明光が揺れて人に違和感を与える問題もある。
【0003】
このような共振現象に起因する立設部材の揺れを防止するために、
(a)立設部材の重量、形状及び剛性を変更して、その固有振動数を変更する方法、
(b)立設部材の内部に物理振り子及び当接具を設けて、振動時に物理振り子を当接具に衝突させることによって制振効果を持たせる方法、
が、それぞれ、すでに提案されている。
【0004】
しかしながら、上記(a)の方法では、特定の振動数に対しては制振効果があるものの、風による揺れのように、励振周期や振動数が様々に変動する揺れには対応できないだけでなく、立設部材の材料設計の自由度を減じることになる。また、上記(b)の方法では、励振周期や振動数が様々に変動する揺れには対応できないことに加えて、制振効果を上げるためには、物理振り子及び当接具を一定以上の大きさにする必要がある。そのために収納スペースが必要となるが、これも、立設部材の装置設計の自由度を減じる結果となる。
【0005】
特許文献1には、このような従来技術の問題点を踏まえて、底面の内壁が曲面形状を有する容器に複数個の粒状体を収容し、容器内の各粒状体が容器内を移動自在となるように収容した制振装置(以下、「粒状体ダンパー」という。)が記載されている。この制振装置を垂直立設部材の外部又は内部に取り付けると、垂直立設部材に加えられた揺れによる振動を減衰させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−69861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
照明柱、標識柱、信号柱などの立設部材に、粒状体ダンパーを組み込んでも、風、地震や車両走行に伴う路面振動などに起因する共振現象によって立設部材に揺れが生じることがあった。そして、これらの立設部材に揺れが生じると、発生する振動により、立設部材に取り付けられた器具の寿命が短くなり、さらに、照明柱の場合には、照明光が揺れて人に違和感を与える。
【0008】
この原因は、風、地震や車両走行に伴う路面振動などに起因する振動は、その振動数範囲が広いためである。
【0009】
すなわち、容器内の各粒状体が容器内を移動自在となるように収容してなる粒状体ダンパーは、1〜2Hzの低振動数の振動に対する制振効果を有するが、3Hz以上の振動数の振動に対する制振効果は不充分であることが判明した。したがって、全振動数範囲の振動に対応できないために、照明柱、標識柱、信号柱などの立設部材に、粒状体ダンパーを組み込んでも、風、地震や車両走行に伴う路面振動などに起因する共振現象によって立設部材に揺れが生じることがあったのである。
【0010】
本発明の目的は、このような状況に鑑み、広範囲に振動数が変動する振動にも、より高い減衰性能を有し、かつ振動の方向にも左右されない制振装置及び制振性に優れた立設部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、種々に実験と検討を重ねた結果、次の(a)〜(h)に示す知見を得た。
【0012】
(a) 3Hz以上の振動数の振動に対する制振作用を有するものをさらに検討したところ、複数個の粒状体を容器内に収容する代わりに、内部に水などの液体を封入してなる柔軟性を有する袋体の1個又は複数個を、容器内に移動自在に収容すると、4Hz以上の振動数の振動に対する制振効果に優れた制振装置(以下、「袋体ダンパー」という。)として用いることができることを見出した。このとき、液体を封入してなる袋体を収容する容器の形状としては、底面の内面が曲面形状を有する容器だけでなく、底面の内面が平面であってもよいことも分かった。また、この袋体ダンパーは全方位の振動に対して円滑な制振効果を発揮するという利点もあることも分かった。
【0013】
(b) この袋体ダンパーを立設部材等の構造物に取り付けた場合、構造物が振動を開始すると、袋体内の液体が構造物の振動とは位相差をもって移動するだけでなく、内部に水などの液体を封入してなる柔軟性を有する袋体自体が容器内を移動自在であるから、容器の内壁に衝突することによって、構造物の振動を減衰せしめ、もって構造物の振動を抑えることができる。すなわち、袋体ダンパーによる制振効果は、袋体内の液体の質量移動によるエネルギー消費と、袋体内の液体自体の粘性抵抗によるエネルギー消費、袋体内の液体と袋体との界面での摩擦抵抗によるエネルギー消費、内部に水などの液体を封入してなる柔軟性を有する袋体自体の容器の内面への衝突によるエネルギー消費など、複数の要因が組み合わされたものであると考えられる。
【0014】
(c) 袋体ダンパーに用いられる袋体の材質としては、袋体内に封入された液体が袋体内から漏れることなく、袋体内を自由に移動できるとともに、液体が袋体内を移動する際にあるいは内部に液体を封入した袋体が容器内を自由に移動する際に、自由に袋体の形状を変えることができる程度の柔軟性を有するものであればよく、たとえば、ポリエチレンやゴムなどの柔軟性を有する高分子物質の薄膜を挙げることができる。そして、袋体内に封入する液体としては、減衰させたい振動の振動数に応じて、水を始めとして、高粘性の液体、高密度の液体など、適宜、選択することができる。袋体の形状としては、たとえば、ポリエチレン製の球状体であってもよいし、筒状のジップロップを適宜、正方形もしくは長方形または円形に熱シールし、液体を封入した枕形状の袋体にしたものであってもよい。ジップロップを用いると、袋体の容積を容易に所望値にすることができる。
【0015】
(d) 袋体内の容積に対する袋体内に封入する液体の容量の容量比は、格別に限定するものでない。また、容器内に収容する袋体の寸法は、格別に限定するものでなく、容器内に収容することができる寸法であればよい。1個の容器内に収容する袋体の数は、1個であってもよいし複数個であってもよい。そして、袋体を収容する容器の数は、1個であってもよいし複数個であってもよい。
【0016】
(e) 内部に液体を封入してなる袋体を移動自在に収容する容器の形状としては、例えば、矩形又は球形の形状のものでよい。容器からその袋体が振動によって跳び出さなければ容器に上蓋を設けなくてもよいが、平面状又は半球状の上蓋を設けてもよい。容器に上蓋を設けるとその上蓋に袋体が衝突することによってエネルギーが消費されるから、容器に上蓋を設けるのが好ましい。なお、容器の上蓋の内面には、液体を封入してなる袋体が容器内でより移動しやすくなるように、フッ素樹脂膜や油膜を張ってもよい。
【0017】
容器の底面の内面は半円球状であってもよいし、底面の内面がフラットであって側壁を有する直方体形状であってもよい。液体を封入してなる袋体が容器内で移動して容器の内面に衝突すると、その分だけエネルギーが消費されるから、袋体が容器内を自由に移動できる容器形状が好ましい。そして、容器の材料としては、特に限定されるものではなく、たとえば、鉄、ステンレス鋼、プラスチックを挙げることができる。
【0018】
(f) ところが、本発明者等は、容器内に収容する袋体の個数を変化させたところ、次のとおり、興味深い実験結果が得られた。
【0019】
上述したとおり、1個の容器内に収容する袋体の数は1個であってもよいし複数個であってもよく、また、袋体を収容する容器の数は1個であってもよいし複数個であってもよい。そして、1個の容器内に移動自在に収容する袋体の寸法は袋体の個数に応じて適宜選択すればよい。
【0020】
そして、おなじ寸法の袋体であれば、容器内に収容する袋体の個数に関わりなく、また、袋体内への最大封入量に対する袋体内に封入する液体の容量の容量比が10〜90%の範囲内であれば、袋体内に封入する重量の大小に関わりなく、減衰する振動数に変化はなかった。
【0021】
また、袋体内への最大封入量に対する袋体内に封入する液体の容量の容量比が10〜90%の範囲内であれば、袋体内に封入する重量の大小に関わりなく、減衰する振動数に変化はなかった。
【0022】
ところが、寸法の異なる袋体の複数個を容器内に収容した場合には、容器の個数にかかわらず、減衰する振動数に変化がみられた。すなわち、1個の容器内に寸法の異なる袋体の複数個を収容した場合だけでなく、寸法の異なる袋体の複数個をそれぞれ1個の容器内に収容した場合にも、減衰する振動数に変化がみられた。この現象は、袋体内への最大封入量に対する袋体内に封入する液体の容量の容量比が10〜90%の範囲内であれば、袋体内に封入する重量の大小に関わりなく、寸法の異なる袋体の複数個を容器内に収容すれば、減衰する振動数に変化がみられた。
【0023】
(g) 袋体ダンパーだけでなく、これに粒状体ダンパーを併用して、制振装置を構成してもよい。この場合、粒状体ダンパーは袋体ダンパーの下に縦に重ねても良いし、袋体ダンパーの上に縦に重ねても良い。あるいは、粒状体ダンパーと袋体ダンパーを横に並列させてもよい。袋体ダンパーは3Hz以上の振動数の振動に対する制振効果に優れた制振装置であるが、1〜2Hzの低振動数の振動に対する制振効果を有する粒状体ダンパーを組み合わせることによって、3Hz以上の振動数の振動に対する制振効果だけでなく、1〜2Hzの低振動数の振動に対する制振効果を期待することができるからである。
【0024】
(h) 上述したとおり、袋体の寸法の異なる複数個を容器内に移動自在に収容してなる袋体ダンパーあるいはさらに粒状体ダンパーを組み合わせてなる制振装置は、広範囲に振動数が変動する振動にも、より高い減衰性能を有し、かつ振動の方向にも左右されない。したがって、道路や橋梁などに立設される、照明柱、標識柱、信号柱などの立設部材に取り付けることによって、広範囲に振動数が変動する振動にも、より高い減衰性能を有し、かつ振動の方向にも左右されない制振性を付与することができる。
【0025】
本発明にかかる制振装置および制振性に優れた立設部材は、これらの知見に基づいて完成したものである。そして、その要旨は、次の(1)〜(5)の制振装置及び(6)の制振性に優れた立設部材である。以下、これらを総称して本発明ということもある。
【0026】
(1) 内部に液体を封入してなる柔軟性を有する袋体の寸法の異なる複数個が1個又は複数個の容器内を移動自在に収容されている袋体ダンパーからなる制振装置。
【0027】
(2) 袋体ダンパーの容器は、底面の内面がフラットであって側壁を有する直方体形状であることを特徴とする、上記(1)の制振装置。
【0028】
(3) 袋体ダンパーの容器は、底面の内面が半円球状であることを特徴とする、上記(1)又は(2)の制振装置。
【0029】
(4) 袋体ダンパーの容器は上蓋を有することを特徴とする、上記(1)又は(2)の制振装置。
【0030】
(5) 上記(1)〜(4)のいずれかの袋体ダンパーと、底面の内面が曲面形状を有する容器内を複数個の粒状体が移動自在に収容されている粒状体ダンパーとからなる制振装置。
【0031】
(6) 上記(1)〜(5)のいずれかの制振装置が取り付けられていることを特徴とする立設部材。
【発明の効果】
【0032】
本発明により、広範囲に振動数が変動する振動にも、より高い減衰性能を有し、かつ振動の方向にも左右されない制振装置及び制振性に優れた立設部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】比較例に係る袋体ダンパーからなる制振装置の一例を示す。(a)が全体図(斜視図)、そして、(b)が袋体ダンパー周辺の拡大図(側面図)である。
【図2】図1に示す袋体ダンパーにおいて、種々の袋体の寸法について振動数(Hz)と減衰定数(%)をプロットしたものである。
【図3】参考例に係る袋体ダンパーからなる制振装置の一例を示す。(a)が全体図(斜視図)、そして、(b)が袋体ダンパー周辺の拡大図(側面図)である。
【図4】図3に示す袋体ダンパーにおいて、袋体に入れる水量の上下の比率を変えた場合について振動数(Hz)と減衰定数(%)をプロットしたものである。
【図5】本発明例に係る袋体ダンパーからなる制振装置の一例を示す。(a)が全体図(斜視図)、そして、(b)が袋体ダンパー周辺の拡大図(側面図)である。
【図6】図5に示す袋体ダンパーにおける振動数(Hz)と減衰定数(%)をプロットしたものである(●)。比較のために、図3の参考例に係る袋体ダンパーについても振動数(Hz)と減衰定数(%)をプロットした(◆、■)。
【図7】本発明例に係る、袋体ダンパーと粒状体ダンパーを併用してなる制振装置の一例を示す。(a)が全体図(斜視図)、そして、(b)が袋体ダンパー周辺の拡大図(側面図)である。
【図8】図7に示す袋体ダンパーと粒状体ダンパーを併用してなる制振装置における振動数(Hz)と減衰定数(%)をプロットしたものである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下に、図面に基づいて、本発明を説明する。ここでは、小型の実験装置を用いて本発明の制振効果を実証した。なお、本発明は次の本発明例に限定されるものではない。
【0035】
(実験例1)
図1に、比較例に係る袋体ダンパーからなる制振装置の一例を示す。(a)が全体図(斜視図)、そして、(b)が袋体ダンパー周辺の拡大図(側面図)である。
【0036】
照明柱等の立設部材2は、基礎3の上に断面円形の鋼管柱4が立設されてなるものである。そして、袋体ダンパー11からなる制振装置は、鋼管柱4の最上部に取り付けられている。袋体ダンパー11は、1個の容器21と、この1個の容器内に移動自在に収容されている1個の袋体23からなる。この容器21は底面の内面がフラットであって側壁を有し、かつ平面状の上蓋を有する。そして、この容器内に、水を封入してなる柔軟性を有する袋体23の1個が移動自在に収容されている。
【0037】
袋体を収容する容器は、内面寸法として、幅164mm×奥行き164mm×高さ38mmである。そして、内部に液体を封入してなる袋体23は、(a)幅135mm×奥行き135mmの筒状のジップロップ、(b)幅140mm×奥行き140mmの筒状のジップロップ、そして、(c)幅160mm×奥行き160mmの筒状のジップロップの3種類を用いた。いずれのジップロップにも、水を385g封入して、3種の袋体を製作した。順に、袋体ダンパーA、袋体ダンパーB、そして、袋体ダンパーCという。
【0038】
袋体ダンパーA、袋体ダンパーBおよび袋体ダンパーCの諸元(袋体の数、袋体寸法、封入水量)をまとめて、表1に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
そして、これらの袋体ダンパーA、BおよびCのそれぞれを、下端が固定された外径34mmの鋼管柱の上部に取り付け、固有振動数が2〜14Hzになるように、鋼管の長さを4.0、3.2、2.8、2.5、2.1、1.8および1.5mとして、それぞれ自由振動実験を行った。
【0041】
図2は、これらの袋体ダンパーのそれぞれについて、振動数(Hz)と減衰定数(%)をプロットしたものである。袋体ダンパーA、BおよびCが3Hz以上の振動数の振動に対する制振効果を有することと、袋体の寸法が小さくなるほどその制振効果は高振動数へとシフトすることが分かる。
【0042】
(実験例2)
図3に、参考例に係る袋体ダンパーからなる制振装置の一例を示す。(a)が全体図(斜視図)、そして、(b)が袋体ダンパー周辺の拡大図(側面図)である。
【0043】
照明柱等の立設部材2は、基礎3の上に断面円形の鋼管柱4が立設されてなるものである。そして、袋体ダンパー11からなる制振装置は、鋼管柱4の最上部に取り付けられている。袋体ダンパー11は、2個の容器21と2個の袋体23からなり、それぞれの容器内に1個の袋体23が移動自在に収容されている。この容器21は、それぞれ、底面の内面がフラットであって側壁を有し、かつ平面状の上蓋を有する。そして、水を封入してなる柔軟性を有する袋体23は、それぞれの容器内に移動自在に収容されている。
【0044】
袋体を収容する各容器は、それぞれ、内面寸法として、幅164mm×奥行き164mm×高さ38mmである。この容器が縦に積み上げられていて、全体の高さは109mmである。そして、内部に液体を封入してなる袋体23は、幅160mm×奥行き160mmの筒状のジップロップを4個用意し、それぞれのジップロップに水を封入することによって製作した。すなわち、(1)96.25gの水を封入した袋体を1個、(2)192.5gの水を封入した袋体を2個、(3)288.75gの水を封入した袋体を1個、それぞれ製作した。
【0045】
そして、(1)の袋体1個と(3)の袋体1個を上下に積み上げて袋体ダンパーDを、(2)の袋体を上下に1個ずつ積み上げて袋体ダンパーEを、(3)の袋体1個と(1)の袋体1個を上下に積み上げて袋体ダンパーFを、それぞれ製作した。
【0046】
袋体ダンパーD、袋体ダンパーEおよび袋体ダンパーFの諸元(袋体の数、袋体寸法、封入水量)をまとめて、表2に示す。
【0047】
【表2】

【0048】
そして、これらの袋体ダンパーD、EおよびFのそれぞれを、下端が固定された外径34mmの鋼管柱の上部に取り付け、固有振動数が2〜14Hzになるように、鋼管の長さを4.0、3.2、2.8、2.5、2.1、1.8および1.5mとして、それぞれ自由振動実験を行った。
【0049】
図4は、これらの袋体ダンパーのそれぞれについて、振動数(Hz)と減衰定数(%)をプロットしたものである。袋体ダンパーD、EおよびFとも、同じ振動数(3Hz)の振動に対する制振効果を有しており、おなじ寸法の袋体であれば、袋体内に封入する重量の大小に関わりなく、減衰する振動数に変化はないことが分かる。
【0050】
(実験例3)
図5に、本発明例に係る袋体ダンパーからなる制振装置の一例を示す。(a)が全体図(斜視図)、そして、(b)が袋体ダンパー周辺の拡大図(側面図)である。
【0051】
照明柱等の立設部材2は、基礎3の上に断面円形の鋼管柱4が立設されてなるものである。そして、袋体ダンパー11からなる制振装置は、鋼管柱4の最上部に取り付けられている。袋体ダンパー11は、2個の容器21と2個の袋体23からなり、それぞれの容器内に1個の袋体23が移動自在に収容されている。この容器21は、それぞれ、底面の内面がフラットであって側壁を有し、かつ平面状の上蓋を有する。そして、水を封入してなる柔軟性を有する袋体23は、それぞれの容器内に移動自在に収容されている。
【0052】
袋体を収容する各容器は、それぞれ、内面寸法として、幅164mm×奥行き164mm×高さ38mmである。この容器が縦に積み上げられていて、全体の高さは109mmである。そして、内部に液体を封入してなる袋体23は、(i)幅135mm×奥行き135mmの筒状のジップロップ、および、(ii)幅160mm×奥行き160mmの筒状のジップロップの2種類を用いた。いずれのジップロップにも、水を192.5g封入して、2種の袋体をそれぞれ2個製作した。
【0053】
そして、(i)の袋体1個が収容された容器と(ii)の袋体1個が収容された容器を上下に積み上げて袋体ダンパーGを製作した。カッコ内の符号は、図6に示した符号である。
【0054】
袋体ダンパーGの諸元(袋体の数、袋体寸法、封入水量)を、表3に示す。
【0055】
【表3】

【0056】
そして、これらの袋体ダンパーGを、下端が固定された外径34mmの鋼管柱の上部に取り付け、固有振動数が2〜14Hzになるように、鋼管の長さを4.0、3.2、2.8、2.5、2.1、1.8および1.5mとして、それぞれ自由振動実験を行った。
【0057】
図6は、この袋体ダンパーGについて、振動数(Hz)と減衰定数(%)をプロットしたものである。この袋体ダンパーGのプロットから分かるように、異なる寸法の袋体が収納されてなる袋体ダンパーGは、3〜10Hzという広い範囲の振動数の振動に対する制振効果を有していることが分かる。なお、ここでは、2個の容器にそれぞれ異なる寸法の袋体が1個ずつ収納されているが、1個の容器に異なる寸法の袋体が2個収納されている袋体ダンパーも、この袋体ダンパーGと同じ傾向を示した。
【0058】
なお、参考までに、(i)の袋体1個が収容された容器を2個上下に積み上げて袋体ダンパーHを、そして、(ii)の袋体1個が収容された容器を2個上下に積み上げて袋体ダンパーIを製作した。カッコ内の符号は、図6に対応している。
【0059】
袋体ダンパーHおよび袋体ダンパーIの諸元(袋体の数、袋体寸法、封入水量)は、表3に示したとおりである。
【0060】
そして、これらの袋体ダンパーHおよびIを、袋体ダンパーGと同様に、下端が固定された外径34mmの鋼管柱の上部に取り付け、固有振動数が2〜14Hzになるように、鋼管の長さを4.0、3.2、2.8、2.5、2.1、1.8および1.5mとして、それぞれ自由振動実験を行った。
【0061】
図6には、これらの袋体ダンパーHおよびIについて、振動数(Hz)と減衰定数(%)をプロットしたものも示す。これらの袋体ダンパーHおよびIのプロットから分かるように、同じ寸法の袋体が2個収納されてなる袋体ダンパーの制振効果は、狭い範囲の振動数に留まることが分かる。
【0062】
(実験例4)
図7に、本発明例に係る、袋体ダンパーと粒状体ダンパーとを併用してなる制振装置を立設部材の柱頭部に取り付けたときの一例を示す。(a)が全体図(斜視図)、そして、(b)が袋体ダンパー周辺の拡大図(側面図)である。
【0063】
照明柱等の立設部材2は、基礎3の上に断面円形の鋼管柱4が立設されてなるものである。そして、袋体ダンパー11と粒状体ダンパー12を上下に積み上げてなる制振装置は、鋼管柱4の最上部に取り付けられている。
【0064】
そのうち、袋体ダンパー11は、図5に示した袋体ダンパーGと同じである。すなわち、2個の容器21と2個の袋体23からなり、それぞれの容器内に1個の袋体23が移動自在に収容されている。この容器21は、それぞれ、底面の内面がフラットであって側壁を有し、かつ平面状の上蓋を有する。そして、水を封入してなる柔軟性を有する袋体23は、それぞれの容器内に移動自在に収容されている。そして、袋体を収容する容器は、内面寸法として、幅164mm×奥行き164mm×高さ38mmである。この容器が縦に積み上げられていて、全体の高さは109mmである。そして、内部に液体を封入してなる袋体23は、それぞれ、(i)幅135mm×奥行き135mmの筒状のジップロップに水を385g封入したものと、(ii)幅160mm×奥行き160mmの筒状のジップロップに水を385g封入したものであり、(i)の袋体1個が収容された容器と(ii)の袋体1個が収容された容器を上下に積み上げることによって、製作される。
【0065】
次に、粒状体ダンパー12は、底面の内外面が半球形を有する容器(内面寸法は、内径197mm×高さ100mmである。)に粒径4mmの粒状体22が複数個(合計重量385g)、容器内を移動自在となるように収容した上で、平面形状の上蓋(袋体を収容する容器21の底面)が被せられている。
【0066】
そして、この袋体ダンパーGと粒状体ダンパーからなる制振装置を、下端が固定された外径34mmの鋼管柱の上部に取り付け、固有振動数が2〜14Hzになるように、鋼管の長さを4.0、3.2、2.8、2.5、2.1、1.8および1.5mとして、それぞれ自由振動実験を行った。
【0067】
図8は、この袋体ダンパーGと粒状体ダンパーからなる制振装置について、振動数(Hz)と減衰定数(%)をプロットしたものである。このプロットから分かるように、異なる寸法の袋体が収納されてなる袋体ダンパーGにさらに粒状体ダンパーを併用してなる制振装置は、さらに広い範囲(2〜9Hz)の振動数の振動に対する制振効果が顕著であることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
以上のとおり、本発明により、広範囲に振動数が変動する振動にも、より高い減衰性能を有し、かつ振動の方向にも左右されない制振装置及び制振性に優れた立設部材を提供することができる。
【符号の説明】
【0069】
2 立設部材
3 基礎
4 鋼管柱
11 袋体ダンパー
12 粒状体ダンパー
21 容器
22 粒状体
23 袋体
24 取付器具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に液体を封入してなる柔軟性を有する袋体の寸法の異なる複数個が1個又は複数個の容器内を移動自在に収容されている袋体ダンパーからなる制振装置。
【請求項2】
袋体ダンパーの容器は、底面の内面がフラットであって側壁を有する直方体形状であることを特徴とする、請求項1に記載の制振装置。
【請求項3】
袋体ダンパーの容器は、底面の内面が半円球状であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の制振装置。
【請求項4】
袋体ダンパーの容器は上蓋を有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれかに記載の制振装置。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれかに記載の袋体ダンパーと、底面の内面が曲面形状を有する容器内を複数個の粒状体が移動自在に収容されている粒状体ダンパーとからなる制振装置。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれかの制振装置が取り付けられていることを特徴とする立設部材。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−19498(P2013−19498A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−154429(P2011−154429)
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【出願人】(591141784)学校法人大阪産業大学 (49)
【出願人】(000006839)日鐵住金建材株式会社 (371)
【Fターム(参考)】