説明

削孔方法、削孔装置及び回転式削孔機

【課題】
削孔装置の複数のビットが同時に地中または岩石を打撃するのを効果的に防止して、低振動、低騒音での削孔作業を、より効果的に可能にする。
【解決手段】
ケーシング23内に、往復運動をするピストン61を有する複数の削孔ユニット22を配置している削孔装置1であって、複数の削孔ユニット22のピストンは同じ長さに形成され、各削孔ユニットごとに上行程端の位置を異にして各ピストンの行程が異なっており、ピストンの行程が異なることによって一定時間または単位時間あたりのビットを打撃するピストンの往復回数が各削孔ユニットごとに異なっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、削孔方法、削孔装置及び回転式削孔機に関する。更に詳しくは、地中または岩石の削孔にあたり、削孔装置の複数のビットが地中または岩石を本質的に同時に打撃しないようにして低振動、低騒音で削孔作業ができる削孔方法、削孔装置及び回転式削孔機に関する。
【背景技術】
【0002】
土木や建築の分野において、主に岩盤、転石、コンクリート等がある硬質の地盤の削孔に、ダウンザホールハンマ(ダウンザホールドリルとも称される)と称される削孔装置が使用されている。このダウンザホールハンマは、削孔する孔とほぼ同じ径の単一のハンマビットで地盤を打撃するため、ビット一回の打撃ごとに受ける地盤の衝撃が大きい。従ってそれに伴う振動や騒音も大きく、住宅密集地や都市部のオフィス街などでの使用に適している低振動、低騒音で作業ができる削孔装置が望まれていた。
前記課題は、本願出願人が提案した特許文献1記載の削孔装置で一応解決できる。
【0003】
【特許文献1】特許第3721381号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の削孔装置は、小型の複数のビットが互いにタイミングをずらして地盤を打撃するため、従来のダウンザホールハンマと比べるとビット一回の打撃ごとに受ける地盤の衝撃は小さく、低振動、低騒音の削孔作業を可能とした。
ところが、削孔作業中の振動を測定装置で測定したところ、振動の大きさにバラツキがあることががわかった(図8(b)参照)。その原因ははっきりしないが、例えばエアコンプレッサーから送られる空気圧力や空気量の変動など、何らかの要因で複数のビットのうちのいくつかが、同時に地盤を打撃したものと考えられる。
【0005】
また、特許文献1記載の削孔装置は、ビットを打撃するピストンの駆動制御に、回転する円盤状のエア流通制御部材等を使用してしている。このため、エアコンプレッサーから送られる空気圧力や空気量が変動するとエア流通制御部材がその影響を受け、ピストンの制御に支障を来し、ひいてはビットの打撃制御に支障を来す可能性を排除できない。
【0006】
本発明者は、空気圧力や空気量が変動してもピストンの動きを正確に制御し、複数のビットが同時に地盤を打撃することを防止できれば削孔作業における振動のバラツキを少なくできることに着目し、研究を重ね本発明を完成するに至った。
【0007】
(本発明の目的)
そこで本発明の目的は、削孔装置の複数のビットが同時に地中または岩石を打撃するのを効果的に防止して、低振動、低騒音での削孔作業を、より効果的に可能にすることにある。
【0008】
本発明の他の目的は、以下の説明から明らかになろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明が講じた手段は次のとおりである。
本発明は、
ケーシング内に複数の削孔ユニットを有する削孔装置本体と、前記複数の削孔ユニットに圧縮性作動流体を送る流体タンクを有する削孔装置を使用し、当該削孔装置の複数のビットが地中または岩石を同時に打撃しないようにする削孔方法であって、
各削孔ユニットは内部に往復運動する同じ長さのピストンを有し、ピストンは各削孔ユニットごとに行程を異にして一定時間または単位時間あたりにおける往復回数を異にしている、
削孔方法である。
【0010】
本発明は、
ケーシング内に複数の削孔ユニットを有する削孔装置本体と、前記複数の削孔ユニットに圧縮性作動流体を送る流体タンクを有する削孔装置を使用し、当該削孔装置の複数のビットが地中または岩石を同時に打撃しないようにする削孔方法であって、
各削孔ユニットは内部に往復運動する同じ長さのピストンを有し、ピストンは各削孔ユニットごとに上行程端の位置を異にして各削孔ユニットごとに行程が異なっており、これによって一定時間または単位時間あたりにおけるピストンの往復回数を異にして複数のビットが地中または岩石を打撃するタイミングを変えている、
削孔方法である。
【0011】
本発明は、
ケーシング内に、往復運動するピストンを有する複数の削孔ユニットを配置している削孔装置を使用して地中または岩石を削孔する方法であって、
ピストンの上昇に伴って圧縮される圧縮性作動流体が所定の圧力に到るときのピストンの上行程端の位置を各削孔ユニットごとに異ならせて各削孔ユニットのピストンは行程を異にし、
各削孔ユニットのピストンの行程が異なることにより一定時間または単位時間あたりにおける各削孔ユニットのピストンの往復回数を異にし、
これによって複数のビットが地中または岩石を同時に打撃しないようにする、
削孔方法である。
【0012】
本発明は、
ケーシング内に、往復運動をするピストンを有する複数の削孔ユニットを配置している削孔装置であって、
複数の削孔ユニットのピストンは同じ長さに形成され、各削孔ユニットごとに上行程端の位置を異にして各ピストンの行程が異なっており、
ピストンの行程が異なることによって一定時間または単位時間あたりのビットを打撃するピストンの往復回数が各削孔ユニットごとに異なっている、
削孔装置である。
【0013】
本発明は、
ケーシング内に、往復運動をするピストンを有する複数の削孔ユニットを配置している削孔装置であって、
ピストンの上昇によって圧縮性作動流体が所定の圧力に到るときのピストンの上行程端の位置が各削孔ユニットごとに異なっており、
ピストンの上行程端の位置が各削孔ユニットごとに異なることにより各削孔ユニットのピストンの行程が異なっており、
各削孔ユニットのピストンの行程が異なることより一定時間または単位時間あたりにおける各削孔ユニットのピストンの往復回数を異にして各削孔ユニットのビットの打撃数を異にしている、
削孔装置である。
【0014】
本発明は、
ケーシング内に、往復運動をするピストンを有する削孔ユニットを配置しているダウンホール式駆動装置を有する削孔装置であって、
前記削孔ユニットは、
ピストンケース内のピストンの上行程端側に設けられているエアディストリビュータと、
ピストンケース内のピストンの下行程端側に設けられている先端側バルブと、
前記エアディストリビュータと先端側バルブの間を往復運動するピストンと、
を備え、
前記エアディストリビュータは、ピストン側に向けて筒形の弁部材を有し、該弁部材は中に流体通路を有しており、
前記先端側バルブは、ピストン側に向けて筒形の弁部材を有し、該弁部材は中に流体通路を有しており、
前記ピストンは、両端面を貫通している流体通路を内部に有し、
前記ピストンが移動してエアディストリビュータの弁部材がピストンの流体通路内面と摺動状態に接してシール状態になるときに、シリンダー内面側、ピストン頂面側、及び前記弁部材を含むエアディストリビュータの内面側とで囲まれたドライブチャンバーが形成され、
各削孔ユニットは、エアディストリビュータの前記弁部材の長さがそれぞれ異なっている、
削孔装置である。
【0015】
削孔装置本体には、複数の削孔ユニットの周りを囲むようにして防振材または/及び防音材が設けるのが好ましい。「防振材または/及び防音材」は、防振材または防音材のいずれか一方を含む場合もあるし、あるいは防振材及び防音材の両方(防振及び防音の両方の作用を備えたものも含む)を含む場合もある。
【0016】
本発明は、
前記いずれかに記載の削孔装置と、該削孔装置に回転運動を与えることができる回転駆動装置とを備えている、
回転式削孔機である。
【0017】
本発明は、
前記のいずれかに記載の削孔装置を使用した地中または岩石の削孔方法であって、削孔装置に回転運動を与えながら地中または岩石の削孔を行う、
地中または岩石の削孔方法である。
【0018】
本願の明細書、特許請求の範囲および要約書にいう「圧縮性作動流体」としては、気体、例えば空気や、空気に霧化した水を混入したものをあげることができる。また、削孔ユニットのピストンの長さは、基本的には全ての削孔ユニットで同じであるが、各削孔ユニットのピストンの行程を異にできれば、長さを異にしてもよい。
【0019】
(作動原理)
本発明の作動原理は必ずしも明らかではないが一応次のように説明できる。
削孔装置の各削孔ユニットは、公知のダウンホール式駆動装置を有しているが、各削孔ユニットはピストンの行程がそれぞれ異なり、それに伴って一定時間または単位時間におけるピストンの往復回数が異なり、ひいては複数の削孔ユニットのビットの打撃数が全て異なる。
【0020】
具体的には、削孔ユニットのピストンの移動によって圧縮性作動流体が所定の圧力に到るときのピストンの上行程端の位置が各削孔ユニットによって異なることことにより、各削孔ユニットのピストンの行程が異なる。
【0021】
ピストンの行程が長いと一定時間または単位時間あたりにおけるピストンの往復回数は少なくなり、ピストンがビットを打撃する回数は少くなる。逆にピストンの行程が短いと一定時間または単位時間あたりにおけるピストンの往復回数は多くなり、ピストンがビットを打撃する回数は多くなる。
【0022】
このように各削孔ユニットのピストンの行程を異にすることによって一定時間または単位時間における複数の削孔ユニットのビットの打撃数を全て異することができる。これによってピストンがビットに衝撃を与えるタイミングをそれぞれ異ならせてビットが同時に地盤を打撃するのをより確実に防止できるので、低振動、低騒音での削孔作業を、より効果的に可能にする。
【0023】
また、ピストンケース内のピストンの上行程端側に設けられ、ピストン側に向いた筒形の弁部材を有するエアディストリビュータと、ピストンケース内のピストンの下行程端側に設けられ、ピストン側に向いた筒形の弁部材を有する先端側バルブと、エアディストリビュータと先端側バルブの間を往復運動するピストンと、を備えた削孔装置にあっては、ピストンが移動してエアディストリビュータの弁部材がピストンの流体通路内面と摺動状態に接してシール状態になるときに、シリンダー内面側、ピストン頂面側、及び弁部材を含むエアディストリビュータの内面側とで囲まれたドライブチャンバーが形成され、ピストンの移動に伴って圧縮性作動流体が圧縮されて反力(押し戻し力)を生じ、ピストンの移動力と反力が均衡状態または略均衡状態になるとピストンは方向を転換し反対方向に向かうが、この方向転換の位置は、エアディストリビュータの弁部材の長さが変わると変わる。
そしてドライブチャンバーに圧縮性作動流体が流入するとピストンは反対方向に急速に移動し、ビットに衝撃を与える。この動きが繰り返して行われるものと考えられる。
【0024】
本発明の作用を説明する。
(a)圧縮性作動流体が各削孔ユニット内に送られ、各削孔ユニットに内蔵されたピストンが往復運動して削孔のための打撃力を各ビットに与える。
【0025】
この際に、各削孔ユニットのピストンの行程が異なるために、一定時間または単位時間あたりにおけるピストンの往復回数が異なりビットの打撃回数が異なる。これにより、各ビットが地盤を打撃するタイミングをずらすことができ、同時に地盤を打撃することを効果的に防止して、低振動、低騒音での削孔作業を、より効果的に可能にする。
【0026】
(b)回転式削孔機は、回転駆動装置によって削孔装置に回転運動を与えながら削孔作業を行う。回転運動を与えることにより、削孔装置が有するビットの削孔位置が削孔面に対して移動し、各ビットが削孔面全体を満遍なく打撃する。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば次の効果を奏する。
(1)削孔装置の複数のビットが同時に地中または岩石を打撃するのを効果的に防止して、低振動、低騒音での削孔作業を、より効果的に可能にする。
【0028】
(2)削孔装置本体の各削孔ユニットの周りを囲むようにして防振材または/及び防音材が設けてあるものは、各削孔ユニットが発生する振動や音が外に漏れたり伝わることをより効果的に防止できる。
【0029】
(3)本発明に係る回転式削孔機及び削孔方法によれば、上記効果を奏する削孔装置に回転運動を与えながら使用することにより、低振動、低騒音での削孔作業を、より効果的に可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明を図面に示した実施の形態に基づき、さらに詳細に説明する。
【実施例】
【0031】
図1は、実施例に係る削孔装置を先端側から見た斜視説明図、
図2は、図1に示す削孔装置の縦断面説明図、
図3は、図1に示す削孔装置の分解斜視説明図であり、エアタンクと、エアタンクから取り外した削孔装置本体を分解した状態で示している。なお、図3においてはエアタンクの基部側(上方側)は図示を省略している。
図4は、削孔ユニットの一つを縦断面して内部構造を表した側面視説明図であり、内蔵されたピストンが上下の往復運動(進退動)している状態を(a)〜(d)で経時的に示している。
図5は、削孔装置本体に収容されている六基の削孔ユニットのうちから選んだ三基の削孔ユニットのリジッドバルブ近傍を拡大した要部縦断面説明図で、リジッドバルブの長さが異なることによってピストンの上行程端の位置が異なることを示している。
図面を参照して実施例の削孔装置について説明する。
【0032】
[削孔装置]
図1及び図2に示すように、削孔装置1は全体が略円柱状に形成されている。削孔装置1は、先部側に位置する削孔装置本体2と、基部側に位置する、流体タンクであるエアタンク3を備えている。エアタンク3は圧縮性作動流体であるエアを各削孔ユニットに分配する。
【0033】
削孔装置本体2は、ケーシング23内に複数(本実施例では六基)の削孔ユニット22a,22b,22b,22b,22b,22b(以下、全ての削孔ユニットを指すときは「削孔ユニット22」と表記する)を有する。
削孔ユニット22の先端側には、各削孔ユニットに対応してそれぞれビット41,42a,42b,42c,42d,42e(以下、全てのビットを指すときは「ビット41等」表記する。)を備えている。
【0034】
ビット41等は、削孔装置本体2よりも外径が小さい。削孔装置1は、図7に示すように、クレーン(図示省略)により懸吊されることにより、先端のビットが下を向くように吊り下げられて立てた状態で使用される。
なお、以下、説明の便宜上、中央のビット41に対応する削孔ユニット22aを「中央削孔ユニット22a」といい、周辺のビット42に対応する削孔ユニット22bを「周辺削孔ユニット22b」という場合がある。
【0035】
本実施例では、図1に示すような削孔ユニットの配置に伴って、ビット41等は、削孔装置本体2の軸心部に一箇所設けられた中央のビット41と、中央のビット41を中心とする円周上に等間隔でビット41の周り五箇所に設けられた周辺のビット42a,42b,42c,42d,42eで構成されている。中央のビット41はヘッド部が円形状に形成されている。周辺のビット42a,42b,42c,42d,42eはヘッド部が略正三角形状に形成されている。後述するように、ビット41等は、同時でなく互いにタイミングをずらして地盤を打撃する。
【0036】
エアタンク3は、固着具であるボルト31とナット32(図1では隠れて見えず、図2を参照)により削孔装置本体2の基部側に着脱可能に接続されている。エアタンク3には、削孔ユニット22のピストンを駆動する圧縮性作動流体である高圧のエアを貯留できるエア貯留部30を備えている。エア貯留部30があることで削孔ユニット22に均等にエアを送ることができる。
【0037】
次に、削孔装置1の各構成部材について順を追って詳しく説明する。
(削孔装置本体2)
図3に示すように、削孔装置本体2は、上から順に、接続体21を備えると共にピストンを含む駆動手段等を収容した削孔ユニット22の他、各削孔ユニットを収容する円筒形のケーシング23、各削孔ユニットに対応するドライブチャック24、チャックガイド25、およびビット41等ほかを備えている。
【0038】
削孔ユニット22は、金属製で円筒形状のピストンケース220を有している。各ピストンケース220の基端部(図3で上部)には接続体21が螺合されている。各ピストンケース220の先端部(図3で下部)には、ドライブチャック24、チャックガイド25を介してビット41等が接続される。
【0039】
図4を参照する。図4は、削孔ユニット22の一つの中央削孔ユニット22aの内部構造とピストン61の動きを示している。その他の周辺削孔ユニット22bも、後で説明するように、リジッドバルブ67の長さが異なること、及びそれに伴うエアー供給口の位置が異なることを除き同様の構造であり、ピストン61の動きについても同じように往復運動する。
【0040】
図4(a)に示すように、ピストンケース220には、ビット41に衝撃を与えるピストン61を含む駆動手段等が収容されている。即ち、ピストンケース220には、内部に流体通路610を有するピストン61の他、シリンダー62、チェックバルブ63、基端側エアーバルブであるリジッドバルブ67を有するエアディストリビュータ64、バルブスプリング65、先端側エアーバルブであるフートバルブ66、メイクアップリング、O−リング、ピストンリタイナーリング、ビットリティーナリング等が設けてある。この駆動手段については、公知のダウンザホールハンマの駆動機構(例えば特開昭61−92288号公報記載)と同じか大体同じであるので、詳しい説明を省略する。
【0041】
図4(a)〜(d)を参照して、削孔ユニットの駆動機構について簡単に説明する。
まず、図7に示す削孔作業前の削孔装置1を吊り下げた状態では、図4(a)に示すように、先端のビット41はその自重により削孔ユニット22aの先端へ突出した状態となっている。この状態では、ピストン61の先部側周面部がピストンケース220の内周面に接しており、エアホース351から導入されるエアがピストン61の先部側にまわらない。つまりエアが送られない。これにより、ピストン61が上昇することはなく、言い換えればピストンケース220の基部側へ移動することはなく、ビット41は作動停止状態となっている。
【0042】
そして、図4(b)のように、地面または接地面である削孔面Lにビット41が当接するまで、吊り下げた状態の削孔装置1を降ろすと削孔装置1は自重で下がり、相対的にビット41がピストンケース220内部に移動する。これにより、ピストン61の先部側周面部とピストンケース220の内周面の間にできた間隙であるエア流通路224を通じて、エアがピストン61の下部側(先部側)にまわり、図4(c)、更に図4(d)に示すようにピストン61は急速に移動(急上昇)する。
【0043】
その後、ピストン61が所要の位置まで上昇すると、再び、ピストン61の先部側周面部がピストンケース220の内周面に接し、エアがピストン61の先部側にまわらないようになる。これにより、エアがピストン61の上部側にまわり、押し上げられたピストン61が逆方向に急速に移動(急降下)し、先端のビット41を打撃する。なお、フートバルブ66から入ったエアは、ビット41内を通ってビット41先部側から排出される。
この繰り返されるピストン61の往復運動に伴う衝撃力によって、ビット41が(他の削孔ユニット22bのビット42aも同様に)地盤を打撃し削孔する。
【0044】
図5を参照する。図5は削孔ユニット22の中から選んだ三基の削孔ユニットのリジッドバルブ近傍を示している。各削孔ユニットのリジッドバルブ67a,67b,67cは、それぞれ長さを異にしている。(a−1)(a−2)に示すリジッドバルブ67aが一番長く、(c−1)(c−2)に示すリジッドバルブ67cが一番短い、本実施例では各リジッドバルブ67a,67b,67cは、それぞれ長さが2mm単位で長いか又は短く形成されているが、図5では、違いを理解しやすいように長さの差を強調して表している。
【0045】
削孔装置本体2には、中央削孔ユニット22aの他に五基の周辺削孔ユニット22bが設けられているが、これらの削孔ユニット22のリジッドバルブ67の長さは、それぞれ全て異なっている。
【0046】
そして、削孔ユニット22のリジッドバルブの長さが全て異なることによって、削孔ユニット22に収容されているピストン61の行程が全て異なる。これによって各削孔ユニットの各ピストンが、各ビットを順序良く打撃するような設定を可能とし、削孔能率を高めると共に、後で説明するように削孔作業時の騒音及び振動を少なくすることができる。
その原理は必ずしも明らかではないが一応次のように考えられ、図4および図5を参照してその動きを説明する。
【0047】
ピストン61が、図4(b)に示す状態から上昇し、図4(c)に示すようにリジッドバルブ67の先端部分がピストンの流体通路610に挿入し、流体通路内面612と摺動状態に接してシール状態になると、シリンダー62の内面620側と、ピストン頂面614側と、リジッドバルブ67の外面を含むエアディストリビュータ64の先端面670側の間でエアが圧縮されるドライブチャンバー68が形成される。
【0048】
図4(d)に示すようにピストン61が更に上昇してドライブチャンバー68内のエアを圧縮する。ピストン61の上昇に伴ってエアが圧縮されて反力(押し戻し力)を生じ、ピストンの上昇力と反力が均衡状態または略均衡状態になるとピストンは方向を転換し反対方向に向かおうとする。ピストンは高速で往復運動するために、ピストンが方向を転換する直前にエアー供給口からドライブチャンバー68にエアが送り込まれ、ピストンは急降下する。
【0049】
ピストンの方向転換位置は、リジッドバルブの長さによって異なる。
即ち、図5(a−1)に示す長さが長い(下方への突出長が長い)リジッドバルブ67aの場合は、ピストン61はリジッドバルブ67aと上昇行程の低い位置で接し、更にピストン61が上昇してドライブチャンバー68内のエアを圧縮し、圧縮されたエアの反力とピストン61の上昇力が均衡状態または略均衡状態に到ったときのドライブチャンバー68内の容積(圧縮エアの体積)は、図5(a−2)に示すように大きい。つまり、ピストン61は低い位置で反対方向に向かおうとする。この方向転換の位置、つまりピストン61が下行程端から上行程端に到るまでの行程は短い。
【0050】
図5(c−1)に示す長さが短い(下方への突出長が短い)リジッドバルブ67cの場合は、ピストン61はリジッドバルブ67aと上昇行程の高い位置で接し、更にピストン61が上昇してドライブチャンバー68内のエアを圧縮し、圧縮されたエアの反力とピストン61の上昇力が均衡状態または略均衡状態に到ったときのドライブチャンバー68内の容積は、図5(c−2)に示すように小さい。つまり、ピストン61は高い位置で反対方向に向かうが、この方向転換の位置、つまり、ピストン61が下行程端から上行程端に到るまでの行程は長い。
【0051】
図5(b−1)のリジッドバルブ67bの長さは、(a−1)と(c−1)の中間の長さを示しており、圧縮されたエアの反力とピストン61の上昇力が均衡状態または略均衡状態に到ったときのドライブチャンバー68内の容積(b−2)は、(a−2)と(c−2)の中間の大きさである。
【0052】
そうして、ピストン61の行程が短かいと、ピストン61の行程が長い場合に比べて、一定時間または単位時間あたりのピストンの昇降回数は多くなる。
【0053】
このような理由で、リジッドバルブ67の長さを異にすることによって、ピストン61は一定時間または単位時間における往復回数を異にしていると考えられる。
なお、リジッドバルブ67の長さに対応してドライブチャンバー68にエアを送り込むエアー供給口の位置も適宜変更される。
【0054】
なお、上記各リジッドバルブは2mm単位で長いか又は短く形成されているが、当該数値に限定するものではなく、削孔ユニットの長さや大きさ等に応じて適宜設計変更が可能である。
【0055】
本実施例の場合、リジッドバルブの長さとピストンの行程との関係は下記のとおりである。
リジッドバルブの長さ92mm、ピストンの行程 85mm
リジッドバルブの長さ90mm、ピストンの行程 90mm
リジッドバルブの長さ88mm、ピストンの行程 95mm
リジッドバルブの長さ86mm、ピストンの行程100mm
リジッドバルブの長さ84mm、ピストンの行程105mm
リジッドバルブの長さ82mm、ピストンの行程110mm
なお、ピストンケース内を上下するピストンの行程は外部からは測定できず、ピストンの行程は設計値である。
【0056】
このような削孔ユニットの構成により、上記原理によって図5(a−1)(a−2)に示す削孔ユニットの方が、図5(b−1)(b−2)または(c−1)(c−2)に示す削孔ユニットに比べて、一定時間または単位時間におけるピストン61の往復回数が多くなる。同様に、図5(b−1)(b−2)に示す削孔ユニットの方が、図5(c−1)(c−2)に示す削孔ユニットに比べて、一定時間または単位時間におけるピストン61の往復回数が多くなる。
【0057】
例えば図5(a−1)(a−2)に示す削孔ユニットのピストン61がビットを仮に1分間に1600回程度打撃するとすると、図5(b−1)(b−2)に示す削孔ユニットのピストン61がビットを1分間に200回程度少ない1400回打撃し、図5(c−1)(c−2)に示す削孔ユニットのピストン61がビットを1分間に400回程度少ない1200回打撃するといった具合に設定することができる。なお、ピストンを作動するエアコンプレッサーの空気圧や空気量が変わることによって、ピストンの行程や一定時間または単位時間におけるピストン61の往復回数も変わる。
【0058】
また、上記した時間あたりのビット41等の打撃回数は、同じビットでも削孔対象である地層の硬さにより変わる。硬い地層の場合、地盤を打撃した後のビット41等の戻りが速く、これに追従して各ピストン61の上下動が激しくなるため、ビット41等の打撃回数が増加する。
【0059】
図2に示すように、各ピストンケース220の基端部に位置する接続体21は、エアの経路である孔211(図3では見えず)を有し、基端側が断面凸状に形成されている。
その凸状部分が差込部222を構成し、差込部222がエアタンク3の連結体33へ差し入れられて装着される。そうして、エアタンク3から接続体21の差込部222を介して送られるエアによって、削孔ユニット22内の駆動手段が駆動する。
【0060】
削孔ユニット22は、外形が略円柱形状のケーシング23(図3参照)に着脱可能に取り付けられている。ケーシング23は、筒状本体231(図2参照)と、筒状本体231の先部側の開口部に固着されている先部カバー体233と、筒状本体231の基部側の開口部に固着されている基部カバー体234で主に構成されている。
【0061】
ケーシング23の内部には、円筒形状で細長いケーシングであるピストンケースケーシング232(図2参照)が収容されている。このピストンケースケーシング232に、各ピストンケース220が差し入れられた状態で取り付けられる。ピストンケースケーシング232は各ピストンケース220と同じ数設けられており、その軸心方向がケーシング23の長手方向と同じになるように設けてある。
【0062】
先部カバー体233は所要の厚みを有し、削孔ユニット22を挿設するための孔である挿通孔235がそれぞれ設けられている。同じく、基部カバー体234は所要の厚みを有し、削孔ユニット22を挿設するための孔である挿通孔236(図2参照)がそれぞれ設けられている。本実施例では、挿通孔235,236は中央部に一箇所、中央部を中心とする円周上に等間隔で五箇所の、合計で六箇所に設けてある。
【0063】
図2に示すように、この上下二つのカバー体233,234によって挟まれた状態で、上記したピストンケースケーシング232が固着され、筒状本体231内に収容されている。ピストンケースケーシング232の先端側の孔(符号省略)は、先部カバー体233の挿通孔235と連通している。ピストンケースケーシング232の基端側の孔(符号省略)は、基部カバー体234の挿通孔236と連通している。
【0064】
更に、ケーシング23(筒状本体231)内の各ピストンケースケーシング232に形成されている空隙部分には、防振材または/及び防音材として砂230(図2参照)が充填されている。
【0065】
各ピストンケース220の先端部は、先部カバー体233から一部突出している。この突出部分の孔(符号省略)に、図3に示す略筒状のドライブチャック24の基端側がややきつく押し込まれた状態で取り付けられる。ドライブチャック24の先端側の孔241には、チャックガイド25を介しビット41等の基部側が進退自在に収納される。
【0066】
チャックガイド25は平面視略円形状で所要の厚みを有し、ケーシング23の先端(先部カバー体233)に固着されている。チャックガイド25の固着には、固着具であるボルト251と、ケーシング23側から取り付けられるナット252(図3でケーシング23の左側に図示)が使用されている。
【0067】
図1から図3を参照する。チャックガイド25の先部側には、中央に底面視円形の凹部253と、凹部253を取り囲むようにして底面視V字状の溝である所要数の凹部254が放射状に設けてある。凹部253には、底面視円形状のヘッド部411を備えたビット41が配置される。各凹部254には、底面視略三角形状のヘッド部421を備えたビット42が配置される。ビット41等のヘッド部411,421には、超硬合金製のボタンチップ412が多数設けてある。
【0068】
チャックガイド25には、ビット41等と同じ数の孔で構成された取付部である取付孔255が設けてある。取付孔255は上記した凹部253と凹部254内に位置している。この取付孔255の基部側にはドライブチャック24の先端部が嵌め入れられる。ドライブチャック24は六角ナット状の回り止め部242を有し、チャックガイド25の取付孔255には回り止め部242が嵌め入れられる六角状の凹部256(図2参照)が形成されている。
【0069】
ビット41等の基部側はスプライン軸として形成され、この基部側が取付孔255の先端部から嵌め入れられることにより、内周壁に凹凸の係合用の溝条(図示省略)を形成したドライブチャック24の内部に装着されている。ビット41等の基部側は、上記したビットリティーナリングとO−リングにより、ドライブチャック24側から外れないように装着される。
【0070】
また図1に示すように、ケーシング23の外周には軸方向に沿って突条であるフラットバー26が所要数設けられている。本実施例では、フラットバー26は周方向に所要の間隔をおいて複数(合計で6箇所)設けてある。そして、地盤の削孔作業時に削孔した孔の内部に発生する粉砕した岩盤や土砂(スライム)は、削孔装置本体2(チャックガイド25)の先部側から噴射されるエアによって削孔した孔とフラットバー26,26間との隙間を通って地表面へ送り出される。
【0071】
(エアタンク3)
エアタンク3の基端部(図2で上端部)には、エアを導入するための連結ジョイント34が設けてある。連結ジョイント34から導入されたエアは、エアタンク3内のエア貯留部30内に貯留される。符号340は、連結ジョイント34の吹き出し孔を示している。
【0072】
図3に示すように、エアタンク3の先部側には、削孔装置本体2の基端部(各削孔ユニット22の差込部222側)と連結するための連結体33が設けられている。更に図2に示すように、連結体33よりも基部側(図2で上方側)の内部にエア貯留部30が設けてある。エア貯留部30は、平面視円形状の板状体で構成された区画体300によって連結体33側とは区画されている。
【0073】
図3に示すように、連結体33の先部には連結孔331が所要数設けてある。そして、図2に示すように、この各連結孔331に差し込まれた削孔ユニット22の差込部222に、各エアホース351,352の一端部(図2で下端部)がそれぞれ接続されている。
【0074】
各エアホース351,352の他端部(図2で上端部)は、上記区画体300に形成されたエアの流通孔である区画孔3a,3d,3f(図2では3つの区画孔を図示。図示していない残り3つの区画孔3b,3c,3eについては符号を省略)にそれぞれ接続されている。各区画孔3a,・・・及び各エアホース351,352は、削孔ユニット22へエアを送るための流通部を構成している。
【0075】
なお、図2ではすべてのエアホースを図示してないが、エアホースは各削孔ユニットに対応して(本実施例では6本)設けられている。また本実施例では、各エアホース351,352が収容されている連結体33は、全体として中空の略筒状体となっているが、中実状に形成することもできる。
【0076】
本実施例では、各区画孔3a,・・・は円形の孔で構成されている。
また、各区画孔3a,・・・は、各削孔ユニット22a,22bの数に対応して設けてある。即ち、区画体300の中心部に区画孔3f(以下、「中央区画孔3f」という場合がある。)が一箇所設けてあり、この中央区画孔3fを中心とする円周上に区画孔3a,3d,・・・(以下、「各周辺区画孔3a等」という場合がある。)が等間隔で5箇所設けてある。
【0077】
中央区画孔3fには、図1に示す中央ビット41に対応する中央削孔ユニット22aから導出されたエアホース351(図2参照。以下、「中央エアホース351」という)が接続されている。中央区画孔3fを囲む残りの各周辺区画孔3a等は、図1に示す周辺ビット42a,・・・に対応する削孔ユニット22bから導出されたエアホース352(図2参照。以下、「周辺エアホース352」という)がそれぞれ接続されている。この中央エアホース351と各周辺エアホース352は直管状であって、その内径と長さはすべて同じである。
【0078】
(エア分配器8)
図6は、図2に示す削孔装置のエアタンク内に配置されるエア分配器を示す斜視説明図である。
エア貯留部30内には、連結ジョイント34から供給されるエアを区画体300の区画孔3fに本質的に均等に分配するエア分配器8が設けてある。エア分配器8は、図6に示すように、盃(さかずき)のような形をしている。
【0079】
エア分配器8は、連結ジョイント34の吹き出し孔340からエアを受ける半球凹状(ボール状)の受部81と、受部81を支える、外形が截頭円錐形の錐壁部で構成される支持体82を有している。
なお、本実施例では、支持体82の基端部823(図2で下端部)は区画体300に固定されており、該支持体82内には区画孔3fのみが配置され、その他の各区画孔(例えば図2に示す区画孔3a、3dの各周辺区画孔)は支持体82外に配置されている。
【0080】
図6に示す支持体82の錐壁部には、支持体82内部にエアを取り入れる所要数の取入部である取入孔821が設けてある。取入孔821は、支持体82の先部側寄り(図6で上側)と基部側寄り(図6で下側)に、支持体82の周面方向に沿って等間隔で所要数(本実施例では複数、8箇所)設けてある。各取入孔821は、区画体300の区画孔3fに向かって放出されるように、図2で下斜め方向に傾けて設けてある。
【0081】
このような構成により、図2で上方に示す連結ジョイント34の吹き出し孔340から供給されたエアは、エア分配器8の受部81に当たった後、受部81の凹部面に沿って跳ね返り、更に弧を描くようにして支持体82側へ戻って各取入孔821を抜け、区画体300の区画孔3fへ送られる。
一方、各周辺区画孔3a等については支持体82外に配置されているので、吹き出し孔340から供給されたエアのうちエア分配器8の受部81に当たらなかったエアが直接或いはエア貯留部30の内壁に当たった後、各周辺区画孔3a等へ流入する。
以上のような構成によって、連結ジョイント34から供給されるエアを各削孔ユニットにできるだけ均等に分配するようにしている。このように、エア分配器8は各削孔ユニットにできるだけ均等にエアを分配する観点からは有れば好ましいものである。
【0082】
(エアタンク3の外周部分)
図2に示すように、エアタンク3の連結体33よりも基部側(図2で上部側)は、連結体33をほぼ境にして基部側にむかってややすぼまって形成されている。この連結体33よりもやや径小に形成された径小部分36の外径は、後述する回転駆動装置5(図7参照)に設けてある筒状のドライブブッシュ51の内径と合うように作られている。
【0083】
そして、図7に示すように、削孔装置1を立てた状態で、削孔装置1の基端部からドライブブッシュ51を嵌め込んで落とし込むと、ドライブブッシュ51はエアタンク3の径大となっている部分(連結体33付近)で止まり、下に落ちない。これについての詳しい作用は、後述する。
【0084】
更に、図1に示すように、エアタンク3の外周には軸方向に沿って突条であるフラットバー361が所要数設けられている。本実施例では、フラットバー361は複数(合計で6箇所)設けてある。そして、削孔作業時に、このフラットバー361が後述する回転テーブル(ロータリテーブル)を備えた回転駆動装置5(図5参照)のドライブブッシュ51の内壁部に設けてある係合溝に係合し、ドライブブッシュ51の回転駆動力(回転運動)が削孔装置1に伝達される。
【0085】
[回転駆動装置5]
図7は、削孔装置と回転駆動装置で主に構成される回転式削孔機を示す側面視説明図である。
図7に示す回転駆動装置5は、上記したように削孔装置1に回転運動を与えるものである。回転駆動装置5は、回転駆動装置本体50と、回転駆動装置本体50を支えるアウトリガ52を備えている。上記したように、回転駆動装置本体50は、ドライブブッシュ51を介して削孔装置1を装着でき、削孔装置1に回転運動を与える回転テーブル(図7では隠れて表れない)を備えている。
【0086】
(作 用)
地盤に杭用の孔を削孔する場合を例に挙げて削孔装置1を備えた回転式削孔機6の作用について説明する。
【0087】
まず、図7に示すように、回転式削孔機6を構成する回転駆動装置5は、例えばH鋼等で組んだ仮設足場600上に載置される。一方、削孔装置1の基端部に、地盤に削孔する孔の長さに応じてケリーロッド7を所要数(必要数)接続する。本実施例では、ケリーロッド7を一つ繋げているが、二以上(複数)接続しても良い。
【0088】
ケリーロッド7はエア供給管を内蔵している。ケリーロッド7と削孔装置1はピン、ボルト、ナット等からなる固着具(図示省略)で固着される。ケリーロッド7を繋いだ削孔装置1は、クレーン(図面では表れず)によって懸吊支持される。図7で符号73は、クレーンに接続されたワイヤを示している。
【0089】
そして、回転駆動装置5の回転テーブル(図7では隠れて表れず)にドライブブッシュ51をセットする。更にクレーンで懸吊支持しながら、削孔装置1のエアタンク3のフラットバー361をドライブブッシュ51の内壁の溝である係合溝(図面では隠れて表れず)に係合させる。そうして、クレーンにより削孔装置1を吊り降ろしながら削孔を開始する。
【0090】
削孔時において、回転テーブルからドライブブッシュ51に伝達される回転駆動力はエアタンク3に伝達されて削孔装置1が回転する。ケリーロッド7の上端には、クレーンにより懸吊支持するための支持軸71が設けてある。この支持軸71に、削孔装置1にエアを供給する供給管72が接続されている。また支持軸71にはエアスイベル(図示省略)が設けてある。
【0091】
供給管72から送られるエアは、ケリーロッド7のエア供給管を通って削孔装置1に送られる。削孔装置1に送られたエアは、図2に示す連結ジョイント34の吹き出し孔340から放出されエア貯留部30に送られる。
【0092】
吹き出し孔340から供給されたエアは、エア分配器8の受部81に当たった後、受部81の凹部面に沿って跳ね返り、更に弧を描くようにして支持体82側に戻って各取入孔821を抜け、区画体300内の区画孔3fへ送られる。
一方、各周辺区画孔3a等については支持体82外に配置されているので、吹き出し孔340から供給されたエアのうちエア分配器8の受部81に当たらなかったエアが直接各周辺区画孔3a等へ流入する。
【0093】
更に、エアは各区画孔3a,・・・に対応するエアホース351,352を通って削孔ユニット22に導入されて各ピストン61を駆動し、先端のビット41等を打撃する。
【0094】
上記したように、削孔ユニット22では、各ピストンケース220内のリジッドバルブ67の長さがそれぞれ互いに異なっているため、それぞれピストン61の行程も異なる。その結果、単位時間、例えば一分間あたりのピストン61の往復回数が互いに異なり、ピストン61が打撃する各ビットは互いに打撃タイミングをずらして地盤を打撃する。
【0095】
図8は削孔作業中の振動を削孔口から3mで測定装置で測定したグラフであり、(a)は本発明に係る削孔装置を使用した削孔作業中の振動の大きさ、(b)は従来の削孔装置を使用した削孔作業中の振動の大きさを示している。
従来の削孔装置では振動の大きさが40dbから60dbの間であり、その上振動のバラツキも大きいのに対して、本発明に係る削孔装置1は、20dbから40dbの間であり、振動のバラツキも小さい。
【0096】
従って、従来の装置に比べ、更に低騒音、低振動で削孔作業ができるから、住宅密集地や都市部のオフィス街等での使用に、より好適である。
【0097】
更に、回転駆動装置5によって削孔装置1に回転運動が与えられることで、削孔装置1が有する各周辺ビット42a,・・・の削孔位置が削孔面に対して移動する。これにより、各ビット41,42が削孔面全体を満遍なく打撃する。また、削孔装置1が回転することにより、削孔時に発生する粉砕した岩盤や土砂(スライム)が円滑に地表面へ送り出される。
【0098】
また図2に示すように、ビット41等を作動させるピストン61等の駆動手段はピストンケース220a,220b内に収容され、更に筒状のピストンケースケーシング232によって覆われており、更には防振材または/及び防音材である砂230が充填された筒状本体231内に収容されている。これにより、駆動手段の駆動時に発生する音や振動が外部に漏れたり伝わることが防止し、低騒音・低振動化を可能としている。
【0099】
また本実施例では、回転駆動装置5がアウトリガ52を備えているので、アウトリガ52によって回転駆動装置の水平状態を保つことができ削孔作業時の安定性が向上するだけでなく、回転駆動装置本体50を接地面に直接載置して削孔を行う場合に比べ、回転駆動装置本体50から接地面に伝わる振動が緩和される。これにより、より効果的に低振動、低騒音化を図ることができる。
【0100】
更に上記したように、従来のダウンザホールハンマーでは、削孔する孔とほぼ同じ大きな径の単一のハンマビットを駆動させる必要があったため、必然的にハンマビットを上下動させるために必要なエアの消費量が多く、比較的大きなエアコンプレッサーが必要であった。大きなエアコンプレッサーを駆動するためには原動機も大きくなり、燃料消費量も大きくなる。
これに対し、本実施例では、削孔する孔に対して径小のビット41等を駆動させれば良いので、一つのビットを上下動させるためのエアの消費量が小さく、その結果、使用するエアコンプレッサーを小型化できる。
【0101】
よって、エアコンプレッサーの設置面積も小さくて済み、住宅密集地や都市部のオフィス街等といったスペースの限られた場所での施工に好適である。またエアコンプレッサーの小型化により、エアコンプレッサーを駆動させる原動機の小型化も可能になるので、原動機から発生する振動や騒音も低く抑えることができるばかりでなく燃料消費量も小さく、引いては地球温暖化の防止にも貢献できる。
【0102】
なお、本実施例ではビット41等を合計で6箇所設けた削孔装置本体2を使用しているが、特にその数を限定するものではない。本実施例では、削孔装置本体2の直径は例えば450〜700mmである。
【0103】
本実施例とは相違して、例えばビットを5箇所設けて削孔装置本体2を構成した場合(軸心部に1箇所、その周りに4箇所)では、削孔装置本体2の直径を例えば450mm以下とすることができる。更に、例えばビットを6〜7箇所設けて削孔装置本体2を構成した場合(軸心部に1箇所、その周りに5箇所または6箇所)では、削孔装置本体2の直径は例えば700mm以上とすることができる。
【0104】
なお、ケリーロッド7の代わりに、エア供給管を有するスクリュー軸を使用することもできる。スクリュー軸を使用すれば、削孔時に発生する粉砕した岩盤や土砂(スライム)をより円滑に地表面へ送り出す(排土する)ことができる。またエアタンク3の周面部に排土用の螺旋羽根を設けることもできる。
【0105】
また本実施例では、回転テーブルを備えた回転駆動装置5を用いて削孔作業を行った場合について説明したが、削孔装置1に回転運動を与える手段は特に回転テーブルに限定するものではなく、三点式杭打ち機やリーダー等といった公知の回転駆動手段を採用することができる。
【0106】
削孔装置1の各削孔ユニットは、エアディストリビュータの筒形の弁部材の長さがそれぞれ異なっているだけで、その他の構成は同じにできるから、従来より少ない部品点数で、または部品点数を特段増やさなくても各ビットの打撃タイミングをずらすことができる。従って生産性の向上が期待できるだけでなく、従来のように作動流体の制御に回転する円盤状のエア流通制御部材のような可動部品を使用しなくてすむことからメンテナンス性の向上も期待できる。
【0107】
なお、本明細書で使用している用語と表現はあくまで説明上のものであって、限定的なものではなく、上記用語、表現と等価の用語、表現を除外するものではない。また、本発明は図示の実施例に限定されるものではなく、技術思想の範囲内において種々の変形が可能である。
【0108】
更に、特許請求の範囲には、請求項記載の内容の理解を助けるため、図面において使用した符号を括弧を用いて記載しているが、特許請求の範囲を図面記載のものに限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】実施例に係る削孔装置を先端側から見た斜視説明図。
【図2】図1に示す削孔装置の縦断面説明図。
【図3】図1に示す削孔装置の分解斜視説明図であり、エアタンクと、エアタンクから取り外した削孔装置本体を分解した状態で示している。
【図4】削孔ユニットの一つを縦断面して内部構造を表した側面視説明図であり、内蔵されたピストンが上下の往復運動(進退動)している状態を(a)〜(d)で経時的に示している。
【図5】削孔装置本体に収容されている六基の削孔ユニットのうちから選んだ三基の削孔ユニットのリジッドバルブ近傍を拡大した要部縦断面説明図で、リジッドバルブの長さが異なること、及びそれによってピストンの上行程端の位置が異なることを示している。
【図6】図2に示す削孔装置のエアタンク内に配置されるエア分配器を示す斜視説明図。
【図7】削孔装置と回転駆動装置で主に構成される回転式削孔機を示す側面視説明図。
【図8】削孔作業中の振動を測定装置で測定したグラフであり、(a)は本発明に係る削孔装置を使用した削孔作業中の振動の大きさ、(b)は従来の削孔装置を使用した削孔作業中の振動の大きさを示している。
【符号の説明】
【0110】
1 削孔装置
2 削孔装置本体
3 エアタンク
3a,3d,3f 区画孔
5 回転駆動装置
6 回転式削孔機
7 ケリーロッド
8 エア分配器
21 接続体
22,22a,22b 削孔ユニット
23 ケーシング
24 ドライブチャック
25 チャックガイド
26 フラットバー
30 エア貯留部
31 ボルト
32 ナット
33 連結体
34 連結ジョイント
36 径小部分
41〜42e,47 ビット
50 回転駆動装置本体
51 ドライブブッシュ
52 アウトリガ
61 ピストン
62 シリンダー
63 チェックバルブ
64 エアディストリビュータ
65 バルブスプリング
66 フートバルブ
67,67a,67b,67c リジッドバルブ
71 支持軸
72 供給管
73 ワイヤ
81 受部
82 支持体
211 孔
220 ピストンケース
222 差込部
224 エア流通路
230 砂
231 筒状本体
232 ピストンケースケーシング
233 先部カバー体
234 基部カバー体
235,236 挿通孔
241 孔
242 回り止め部
251 ボルト
252 ナット
253 凹部
254 凹部
255 取付孔
256 凹部
300 区画体
304 内壁面
331 連結孔
340 吹き出し孔
351,352a,352b,352c エアホース
361 フラットバー
411,421 ヘッド部
412 ボタンチップ
421 ヘッド部
600 仮設足場
821 取入孔
823 基端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシング内に複数の削孔ユニットを有する削孔装置本体と、前記複数の削孔ユニットに圧縮性作動流体を送る流体タンクを有する削孔装置を使用し、当該削孔装置の複数のビットが地中または岩石を同時に打撃しないようにする削孔方法であって、
各削孔ユニットは内部に往復運動する同じ長さのピストンを有し、ピストンは各削孔ユニットごとに行程を異にして一定時間または単位時間あたりにおける往復回数を異にしている、
削孔方法。
【請求項2】
ケーシング内に複数の削孔ユニットを有する削孔装置本体と、前記複数の削孔ユニットに圧縮性作動流体を送る流体タンクを有する削孔装置を使用し、当該削孔装置の複数のビットが地中または岩石を同時に打撃しないようにする削孔方法であって、
各削孔ユニットは内部に往復運動する同じ長さのピストンを有し、ピストンは各削孔ユニットごとに上行程端の位置を異にして各削孔ユニットごとに行程が異なっており、これによって一定時間または単位時間あたりにおけるピストンの往復回数を異にして複数のビットが地中または岩石を打撃するタイミングを変えている、
削孔方法。
【請求項3】
ケーシング内に、往復運動するピストンを有する複数の削孔ユニットを配置している削孔装置を使用して地中または岩石を削孔する方法であって、
ピストンの上昇に伴って圧縮される圧縮性作動流体が所定の圧力に到るときのピストンの上行程端の位置を各削孔ユニットごとに異ならせて各削孔ユニットのピストンは行程を異にし、
各削孔ユニットのピストンの行程が異なることにより一定時間または単位時間あたりにおける各削孔ユニットのピストンの往復回数を異にし、
これによって複数のビットが地中または岩石を同時に打撃しないようにする、
削孔方法。
【請求項4】
ケーシング内に、往復運動をするピストンを有する複数の削孔ユニットを配置している削孔装置であって、
複数の削孔ユニットのピストンは同じ長さに形成され、各削孔ユニットごとに上行程端の位置を異にして各ピストンの行程が異なっており、
ピストンの行程が異なることによって一定時間または単位時間あたりのビットを打撃するピストンの往復回数が各削孔ユニットごとに異なっている、
削孔装置。
【請求項5】
ケーシング内に、往復運動をするピストンを有する複数の削孔ユニットを配置している削孔装置であって、
ピストンの上昇によって圧縮性作動流体が所定の圧力に到るときのピストンの上行程端の位置が各削孔ユニットごとに異なっており、
ピストンの上行程端の位置が各削孔ユニットごとに異なることにより各削孔ユニットのピストンの行程が異なっており、
各削孔ユニットのピストンの行程が異なることより一定時間または単位時間あたりにおける各削孔ユニットのピストンの往復回数を異にして各削孔ユニットのビットの打撃数を異にしている、
削孔装置。
【請求項6】
ケーシング内に、往復運動をするピストンを有する削孔ユニットを配置しているダウンホール式駆動装置を有する削孔装置であって、
前記削孔ユニットは、
ピストンケース内のピストンの上行程端側に設けられているエアディストリビュータと、
ピストンケース内のピストンの下行程端側に設けられている先端側バルブと、
前記エアディストリビュータと先端側バルブの間を往復運動するピストンと、
を備え、
前記エアディストリビュータは、ピストン側に向けて筒形の弁部材を有し、該弁部材は中に流体通路を有しており、
前記先端側バルブは、ピストン側に向けて筒形の弁部材を有し、該弁部材は中に流体通路を有しており、
前記ピストンは、両端面を貫通している流体通路を内部に有し、
前記ピストンが移動してエアディストリビュータの弁部材がピストンの流体通路内面と摺動状態に接してシール状態になるときに、シリンダー内面側、ピストン頂面側、及び前記弁部材を含むエアディストリビュータの内面側とで囲まれたドライブチャンバーが形成され、
各削孔ユニットは、エアディストリビュータの前記弁部材の長さがそれぞれ異なっている、
削孔装置。
【請求項7】
各削孔ユニットの周りを囲むようにして防振材または/及び防音材が設けてある、
請求項4から6のいずれかに記載の削孔装置。
【請求項8】
請求項4から7のいずれかに記載の削孔装置と、該削孔装置に回転運動を与える回転駆動装置とを備えている、
回転式削孔機。
【請求項9】
請求項4から7のいずれかに記載の削孔装置を使用した地中または岩石の削孔方法であって、
削孔装置に回転運動を与えながら地中または岩石の削孔を行う、
削孔方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−249901(P2009−249901A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−98689(P2008−98689)
【出願日】平成20年4月4日(2008.4.4)
【出願人】(505046282)
【Fターム(参考)】