説明

前癌性病変の診断のための光学生体組織検査方法およびその内視鏡の装置

悪性腫瘍の場所を見つけ出しかつそのレベルを決定するための光学生体組織検査の方法および装置が前癌性病変の診断において用いられる。この装置は、光源(1,10)の光チャネルシステム、内視鏡(21)および回路システムを含む。光源は、励起光(1)および冷光源(10)を含む。光チャネルシステムにおける冷光源および励起光は、光ファイバの束を介して内視鏡の光導波路の端部を通過し、検査される生体組織(22)を照射する。検査される生体組織(22)から反射された白色光の画像信号および固有蛍光画像信号は、内視鏡(21)の端部に固く接続される弱い蛍光CCD(6)によって受信され、次に信号線(9)を介して回路システムに送信されて、ディスプレイ(17)で画像を生成する。検査される生体組織(22)から反射される弱い蛍光信号は、内視鏡の鉗子孔から突出する弱い蛍光ファイバの束(4)を介して回路システムに送信され、スペクトル画像(16)を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、前癌性病変の診断のための方法およびその装置に関する。特に、本発明は、前癌性病変の診断のための光学生体組織検査方法およびその医療用内視鏡装置を提供する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
現在、悪性腫瘍の発生率および死亡率が非常に高くなっている。この原因は、腫瘍の診断において、特に粘膜腫瘍の診断において飛躍的な進歩がないことにある。これらの腫瘍の診断は、依然として形態学の原理および方法、すなわち医師の視診、超音波診断、内視鏡、CT、MRIに依存している。しかしながら、これらは、場所をとるような病変があるかどうかを確認することができるだけで、その病変が良性かまたは悪性かを見分けることはできない。形態学的診断では、早期および中程度から重度の異型過形成を見分けることができない。なぜなら、病変の起源が、超音波診断、内視鏡、CTまたはMRIでは検出することのできない、粘膜における軽微な生化学的変化のみであるからである。
【0003】
胃癌を例にとってみる。胃癌の発生方法から、侵襲性の癌からの血液系およびリンパ系を通した転移は、初期の浸潤性の段階でも生じるため、一旦転移が起こると病気を治療するのがますます難しくなることがわかる。これは、胃癌の低い治癒率および高い死亡率の主な原因である。
【0004】
医療従事者は、悪性腫瘍の早期診断のための装置の研究および発明に多くの注意を払っている。上海医療機器有限会社(The Medical Instrument Company of Shanghai, Co. Ltd.)の特許、「悪性腫瘍の診断のために固有蛍光画像およびスペクトルを用いる装置」(“Apparatus using intrinsic fluorescence image and spectrum for the diagnosis of
malignant tumor”)では、冷光源は、光ファイバの束を通って内視鏡に入った後で、電子システムを通過することによって白色光の画像となり得る信号を反射することができ、励起光は、光ファイバの束を通って内視鏡に入った後で、電子システムを通過することによって表示され得る信号を反射することができると記載されている。したがって、医師は多数の方法で腫瘍の位置および性質を迅速に識別することができるため、悪性腫瘍の診断の敏感度および特異度を向上させることができる。しかしながら、この装置では前癌性病変を診断することはできない。すなわち、この装置は、癌が形成される数年前に、その病変が良性または悪性になるかを見分けることができない。病変の早期における診断が不確実であるために、患者は、病変が悪性腫瘍になるのを防ぐための可能な治療を受けることができないため、病気を治療するのがますます難しくなり、結果として癌の発生率および死亡率が上昇し得る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明の概要
本発明の1つの目的は、(本明細書において、検査される点、または検査される生体組織と呼ばれる)前癌性病変の位置を比較的高い精度で見つけ出すことができ、かつ上記検査される生体組織を迅速にスキャンし、かつ正確な蛍光スペクトルの曲線および画像を生成することができる、前癌性病変を診断するための光学生体組織検査方法を設計することである。
【0006】
本発明の別の目的は、(本明細書において、検査される点、または検査される生体組織と呼ばれる)前癌性病変の位置を比較的高い精度で見つけ出すことができ、かつ上記検査される生体組織を迅速にスキャンし、かつ正確な蛍光スペクトルの曲線および画像を生成することができる、便利で安全に操作される前癌性病変のための内視鏡診断装置を設計することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は以下のように実施される。
【0008】
前癌性病変の診断のための光学生体組織検査方法であって、
検査される生体組織を照射するために冷光源によって生成された光を用いるステップであって、検査される生体組織は、検査される白色照射光の画像信号を反射するステップと、
検査される生体組織を照射するために集束した後で励起光によって生成された紫色に近い光を用いるステップであって、上記検査される生体組織は、検査される固有蛍光の画像信号を反射するステップと、
検査される生体組織を照射するために励起光によって生成された紫色に近い光を用いるステップであって、上記検査される生体組織は、検査される弱い蛍光の信号を反射するステップと、
前癌性病変の場所の画像を生成し、結果として前癌性病変の等級分けをするために、上記検査される白色光の画像信号および上記検査される固有蛍光画像信号を組合わせるステップと、
上記検査される弱い蛍光から生成された上記固有蛍光スペクトル信号に基づいて、前癌性病変の位置を見つけ出しかつ前癌性病変を等級分けするステップとを含む。
【0009】
上記の光チャネルシステムは3つのチャネルを含む。第1のチャネルにおいて、冷光源は、光ファイバの束を通過した後で内視鏡の光導波路のポートに入る。内視鏡の対象のポートは、検査される生体組織を目指すが、これに物理的に接触しない。冷光源は、検査される生体組織を照射する。検査される生体組織から反射された白色光の画像信号は、内視鏡のポートに固く接続される弱い蛍光CCDによって受信され、次に信号線を通してインターフェイス回路に送信される。第2のチャネルにおいて、励起光によって生成される紫色に近い光は、焦点板を通過し、光ファイバの束を介して内視鏡のポートに到達する。内視鏡の対象のポートは、検査される生体組織を目指すが、これに物理的に接触しない。励起光が検査される生体組織を照射した後で、検査される生体組織から反射される固有蛍光画像信号が、内視鏡のポートに固く接続される弱い蛍光CCDによって受信され、次に信号線を介してインターフェイス回路に送信される。第3のチャネルにおいて、上記の第2のチャネルとしての励起光は、光ファイバの束を介して内視鏡のポートに入り、検査される生体組織を目指し、これを照射する。検査される生体組織から反射された弱い蛍光信号は、内視鏡の鉗子孔から突出した弱い蛍光ファイバの束を介してOMAシステムに送信される。
【0010】
上記電子システムは、内視鏡のポートに固く接続される弱い光のCCDを含む。この弱い光CCDは、検査される白色光信号およびそれによって捕えられた検査される固有蛍光信号を、インターフェイス回路を通してコンピュータに送信し、次に信号は画像処理装置および画像ディスプレイに送信される。この画像を用いて、前癌性病変の位置を見つけ出し、かつ前癌性病変の等級分けをし、弱い蛍光の光ファイバから送信された検査される弱い蛍光信号は、迅速で弱い光のスペクトル分析構成要素、すなわちOMAシステムを通過し、このOMAシステムから固有蛍光スペクトル信号が転送される。固有蛍光スペクトル信号は次に、並列ポートを通ってコンピュータに送信される。その後で、それは、圧縮機
を通過することによってスペクトル表示装置に入る。このスペクトルを用いて、前癌性病変の位置を見つけ出し、前癌性病変を等級分けする。したがって、前癌性病変は、多数の方法で迅速にその位置を見つけ出し、かつ正確におよび即座に等級分けすることができる。励起光の電力スイッチおよび冷光源は、ペダルスイッチによって制御される光送信機に接続される。このペダルスイッチは、並列ポートおよび画像処理装置にも接続される。
【発明の効果】
【0011】
検査された細胞の病変を診断するために本発明の方法および装置を用いる際に、医師は、必要に応じて検査された場所の、白色光の画像、固有蛍光画像、および固有蛍光スペクトル曲線を選択的に観察することができる。コンピュータがこれらの画像およびスペクトル曲線を処理するため、前癌性の病変の場所および前癌性の病変の性質を多数の方法で明瞭かつ迅速に識別することができ、これは前癌性病変の検出の敏感度および特異度を向上させる。これによって、患者は、実際の状況に応じてできるだけ早く関連の治療を受けかつ前癌性の病変から癌への変化の可能性を減じることができるため、癌の発生率および死亡率が低下する。この装置は、大きな社会的な恩恵をもたらし、病院の間で推薦されるのに好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
上述した本発明の目的、構造上の特徴および効果をさらに説明するために、添付の図面と組合わせて本発明をより詳細に示す。
【0013】
以下に続く実施例の添付の図面を参照して、本発明の構造および使用法を詳細に説明する。
【0014】
本発明は、生化学に基づくものであり、スペクトラム技術を人体組織のスペクトル検出に応用する。光学生体組織検査(LIF、レーザ誘起蛍光)を用いる診断装置、すなわち世界的に認められる前癌性検出技術が発明される。LIFの診断方法および診断基準は国際的に周知であり承認されている。
【0015】
関連する光学生体組織検査の原理
最初に、図1を参照すると、癌性細胞の基本的な生物学的特徴は、悪性の増殖、分化の不良、浸潤および転移である。これらは公知の形態学的変化である。正常細胞が癌性の細胞に形質転換する生化学的な変化の見地から、この形質転換は発癌性の要因によって誘発された遺伝子の突然変異によって始まり、次にこれらの遺伝子の突然変異は、異常な遺伝子の発現のために生じるパターンを表わすタンパク質および酵素における細胞内の変化をもたらし得る。酵素は、物質代謝の触媒である。したがって、酵素の活性が激変するときに、それに応じて物質代謝は確実に変化する(図1を参照)。したがって、核酸、タンパク質および炭水化物の変化は、酵素の活性の変化に密接に関係している。
【0016】
図2を参照すると、上皮性癌性病変は人間に最も大きな影響を与える。悪性腫瘍の大半は、(被覆上皮および腺上皮を含む)上皮組織から生じる。たとえば、胃癌は、粘液腺上皮の突然変異、異型過形成およびCISから形成される。癌性病変のこれらの3つの初期段階の間の事象は、すべて腺性上皮性粘膜内に限定される(図2を参照)。実際に胃癌がなければ、リンパ転移もない。しかしながら、これらの3つの段階の間に、粘膜内部における生化学的な性質は既に変化している。異常な増殖および正常な増殖の環境および条件は異なる。したがって、宿主によって与えられる特定の環境および条件なしに、異常な増殖細胞は、生存および発展することはできない。早期の癌性病変のこれらの事象は、被覆腺上皮に含まれ、科学者によって発見および利用されることはない。粘膜の小さな領域からの前癌性病変の特徴的情報を検出することができれば、内視鏡による理学療法を用いて、それが浸潤性癌に転移するのを防ぐのが容易になる。
【0017】
本発明は、光学生体組織検査の技術を用いて、粘膜内部の前癌性情報および正常な粘膜の情報の間の明らかな違いを見出すことができる。その敏感度、特異度および検出率は、従来の診断方法よりも3倍から5倍高い。これは、権威ある雑誌「ライトラボ」(“Light Lab”)によって記載された、X線、超音波、CTおよびMRIに続く5番目の腫瘍診断方法である。
【0018】
電子の規則を用いて生物学を研究する科学は量子生化学と呼ばれる。これは生物学的調査の道具として量子力学を用いる。すなわち、電子フィールドからの分子下生物学の研究である。(腫瘍の生化学的な環境を含む)すべての種類の種の分子構造および環境は異なり、これらは独自の特別のスペクトル率を有する。或る周波数の光が種を照射するときに、或る状況下で、電子は、エネルギを吸収し、かつ高いエネルギレベル(励起状態)に遷移し得る。大半の電子は単一の励起状態にある。電子が、照射によって単一の励起状態から基底状態に直接遷移する場合、これは対応する光量子を発してエネルギを放出する。このプロセスは蛍光放射と呼ばれる。上述のこのような機構から、蛍光の生成は、分子構造における量子状態の変化によるものであることがわかる。異なる分子構造は、異なる蛍光の波長を生じる。癌組織およびそのまわりの環境はまだ明らかではないが、癌組織および正常組織を励起するのに十分なエネルギを有する光がある場合に、2つの異なる組織を識別することができる。なぜならその各々は、その吸収能力によって独自の光量子を吸収することができるのみであり、これによって吸収された異なる光量子が異なるエネルギを放出するからである。これらの方法は、前癌性病変を診断するための光学生体組織検査方法を用いることによって、2つの種類に分けることができ、これは図3に示されている。一方はスペクトル法であり、他方は画像法である。これらの2つの方法の双方は、検査される粘膜が正常であるか、良性の病変であるか、または癌性の病変であるかを識別することができる。図4を参照すると、これはスペクトル法を用いた固有蛍光スペクトルの診断報告である。
【0019】
光学生体組織検査によって「実際の」異型過形成を区別して診断するための方法である。
【0020】
光学生体組織技術は、粘膜の上皮性の異型過形成の検出において一意の利点を有する。その敏感度および特異度は、従来の検出よりも平均3倍から5倍高い。上皮性の異型過形成は病理学上の概念である。その敏感度のために、異型過形成は3つのレベル、すなわち軽度、中程度および重度に分割することができる。しかしながら、異型過形成は連続的な発達順序であるため、厳密に識別することが難しい。この種類の異型過形成は、組織学および形態学における変化であるだけでなく、癌性細胞の観点から一般的である、生物学(すなわち細胞の癌性遺伝子)における変化である。
【0021】
軽度、中程度および重度の異型過形成は、病理学によって厳密に規定され、これは異型過形成が、組織学および分子生物学の視点から何らかの形で癌と類似していることを示している。しかしながら、臨床統計からの長期の追跡結果によると、軽度の異型過形成が癌に形質転換することは滅多になく、一方で中程度および重度の異型過形成は臨床上、癌に形質転換することが多い。軽度、中程度および重度の異型過形成の境界線を設けるために光学生態組織検査の技術が必要とされ、これは、即座の解決を必要とする問題でもある。発明者による実行および調査の後で、表1および表2それぞれに要約されたような軽度、中程度および重度の異型過形成を区別するためのスペクトル法および画像法が確立された。
【0022】
【表1】

【0023】
上述の診断の本質的な基準は、検査された粘膜組織の蛍光スペクトルのピークが680nmまたは400nmのいずれに現れるかである。これらの2つのピークが出た場合、検査された組織は、癌性の病変、または中程度/重度の異型過形成であるはずである。そうでなければ、470nmでのピークが正常の<50%であるが、680nmまたは400nmにおいてピークが現れないと、この組織は軽度の異型過形成と識別される。
【0024】
上述の理論に従って、前癌性病変のための内視鏡診断装置が発明される。
【0025】
本発明の実施形態の構造は図5に示されている。これは、光源、光学システム、内視鏡および電気回路システムを含む。
【0026】
記載したような2つの光源が存在する。
【0027】
1つは励起光1である。励起光1は、波長が330nm−420nmのレーザである。これは、窒素分子レーザ、もしくは3倍の周波数のYAGレーザ、もしくは半導体レーザ、またはHg光によって放出される励起光とすることができる。本発明では、337nmの窒素分子レーザが用いられる。その他に冷光源10があり、これは本発明ではハロゲン光である。
【0028】
上述の光学チャネルシステムは以下のものを含む。
【0029】
第1のチャネルにおいて、冷光源10は光ファイバの束5を介して内視鏡の導光銃21のポートに入る。内視鏡21の対象ポートは、検査される生体組織22を目指すが、これに物理的に接触しない。冷光源10は、検査される生体組織22を照射する。検査される生体組織22から反射した白色光の画像信号は、内視鏡21のポートに固く接続される弱い蛍光CCDによって受信され、弱い光CCDによって受信された信号は信号線を介してインターフェイス回路8に送信される。第2のチャネルにおいて、励起光1によって生成された紫色に近い光は、焦点板2を通過し、光ファイバの束3を介して内視鏡21の導光銃のポートに入る。内視鏡21の対象ポートは、検査される生体組織22を目指すが、これに物理的に接触しない。励起光は検査される生体組織22を照射する。検査される生体組織22から反射された固有蛍光画像信号は、内視鏡21の端部に固く接続される弱い蛍光CCDによって受信され、弱い光CCDによって受信された信号は、信号線を介してインターフェイス回路8に送信される。第3のチャネルにおいて、上述の励起光は、光ファイバの束3を介して内視鏡21のポートを通過し、検査される生体組織22を直接照射する。検査された生体組織22から反射した検査された弱い蛍光信号は、内視鏡21の鉗子孔から突出している弱い蛍光ファイバの束4を介してOMAシステムに送信される。励起光の光ファイバの束3および冷光源の光ファイバの束5は、消耗性の低い石英の光ファイバからなる単一の束に含まれる。
【0030】
上述の電子システムは以下のものを含む。
【0031】
弱い光CCD6は、(検査される生体組織22の近くで)内視鏡21のポートに固く接続される。弱い光CCD6は、検査された白色光の信号およびそれによって受信された検査された固有蛍光信号を、インターフェイス回路8に接続される信号接続線9を介して、コンピュータ15および画像処理装置14に送信し、さらに処理される。処理された信号は、画像ディスプレイ17に送信されて、検査された白色光の画像または検査された固有蛍光画像が表示される。同時に、画像処理装置14からの信号は、圧縮機23によって圧縮され、ディスク19に保存されるか、またはプリンタ20によって印刷される。この画像を用いて、前癌性病変の位置を見出しかつ前癌性病変を等級分けすることができる。弱い蛍光の光ファイバ4から送信される検査された弱い蛍光信号は、迅速な弱い光のスペクトル分析構成要素、すなわちOMAシステム7を通過し、検査された組織によって反射される<0.1LUXほどの弱さの蛍光信号が検出され得る。OMAシステムによって処理される蛍光信号は、並列ポート13を通してさらに処理するために、コンピュータ15に送信される。その後で、それは、圧縮するために圧縮機18を通過し、次にスペクトルディスプレイ16に入って固有蛍光のスペクトル曲線を表示し、ディスク19に保存されるか、またはプリンタ20によって固有蛍光のスペクトル曲線が印刷される。これらのスペクトルを用いて、前癌性病変の位置を見出しかつ前癌性病変を等級分けすることができる。したがって、前癌性病変は、多数の方法で迅速に位置を見出しかつ等級分けすることができる。すなわち、励起光1および冷光源10のスイッチは、ペダルスイッチ12によって制御される光学送信機11に接続される。さらに、ペダルスイッチ12は、並列ポート13およびコンピュータ15に接続される。
【0032】
この診断装置によって用いられる方法は、内視鏡21のポートで検査される生体組織2
2を目指すが、それに直接接触しない。したがって、ペダルスイッチ12を用いて光送信機11を制御して冷光源10を動作させ、ペダルスイッチ12を用いてコンピュータ15を動作させる。冷光源10は、内視鏡の光ファイバ5を通って、内視鏡21のポートに入って、検査される生体組織22を照射する。反射される検査された白色光の画像は、弱い光CCD6によって受信され、この弱い光CCDは内視鏡21に固く接続されている。弱い光CCDは信号を記録し、かつこの信号をコンピュータ15および画像処理装置14に送信し、このはインターフェイス回路8と接続された信号送信線9を介して処理される。検査された白色光の画像は、画像ディスプレイ17に表示され、ディスクに保存するか、または印刷することができる。同時に、内視鏡21のポートは、検査される生体組織22を目指すが、これに接触しない。ペダルスイッチ12を用いて光送信機11を制御して、冷光源10または励起光1を交替でまたは個別に動作させる。同様にペダルスイッチ12を用いて、コンピュータ15および並列ポート13を動作させる。励起光1は、焦点板2を通過した後で光ファイバの束3に入る。それは、内視鏡21のポートを通して、検査される生体組織22を照射する。反射された検査される固有蛍光画像信号は、弱い光CCD6によって受信され、この弱い光CCDは内視鏡21のポートに固く接続される。弱い光CCD6によって記録された信号は、コンピュータ15および画像処理装置14に送信されることにより、インターフェイス回路8に接続された信号送信線9を介して処理される。検査された固有蛍光画像および/または検査された白色光の画像が画像ディスプレイ17に表示される。検査された白色光の画像および検査された固有蛍光画像を比較して、固有蛍光画像におけるいかなる怪しいと思われる色彩に富んだ異常な領域も裸眼で観察される場合、励起光1は焦点板2を介して内視鏡21のポートに入り、次に検査される正常組織および疑わしい組織を目指して、それを直接照射する。正常のおよび疑わしい組織の検査された弱い蛍光信号は、内視鏡21の鉗子孔を通って弱い蛍光の光ファイバ4によって送信され、迅速で弱い光のスペクトル分析の構成要素すなわちOMAシステム7に入る。迅速で弱い光のスペクトル分析の構成要素OMAシステム7は、検査される対象物の正常組織および疑わしい組織それぞれの固有蛍光スペクトル信号を検出する。次に、信号は、並列ポート13を通過してコンピュータ15によって処理された後で、スペクトルディスプレイ16上で表示される。検査された正常組織の固有蛍光スペクトル曲線および/または検査された疑わしい細胞の固有蛍光スペクトル曲線、ならびにこれら2つのスペクトルの比率曲線をスペクトルディスプレイ16に表示することができる。記録されたスペクトル曲線(比率強度Eおよび波長nmの図)が図6から9に示されている。並列ポート13を介して処理されるためにコンピュータ15に送信される上述の検査される生体組織のスペクトル信号を、ディスクに保存し、かつ圧縮機18によって圧縮された後で印刷することができる。
【0033】
3つの波長(ほぼ400nm、ほぼ470nm、およびほぼ680nm)での固有蛍光スペクトル曲線のピークは、診断のための基準である。図において、より高いピークを有する曲線(実線)が正常な曲線である。より低いピークを有する曲線(点線)は異常な曲線である。検査された組織は460−480nmでピークを有し、この組織はピーク値に従って正常または異常を識別することができる。検査された正常領域のピーク値が100%と規定される場合、正常のピーク値の<50%と検出された疑わしい領域のピーク値は異常である。以下のものは、本発明の装置のスペクトル法によって識別され、表は、軽度、中程度および重度の異型過形成(1期,2期および3期の異型過形成)をリストしたものであり、この過形成は癌性病変が形成される前(5−6年前)に生じる。
【0034】
【表2】

【0035】
固有蛍光画像に見られる疑わしい領域は前癌性病変である。
【0036】
上述の多数の方法からの診断は、前癌性の組織の検出の敏感度および特異度を向上させる。これによって、患者は実際の状態に応じてできるだけ早く関連する治療を受け、かつ前癌性病変から癌への形質転換の発生率を減じることができる。
【0037】
本明細書に記載された例は、例示の目的のために与えられたもので、本発明の範囲を制限することは意図していないことが当業者に理解されるべきである。上述の例の或る変更および修正は、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲に含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】正常細胞の癌性細胞への形質転換およびその宿主の環境への関係を示す図である。
【図2】3つの段階の癌性の変化、すなわち突然変異、異型過形成、上皮内癌(CIS)の段階からの初期情報を示す図である。
【図3】前癌性病変の診断のための光学生体組織検査方法の原理の概略図である。
【図4】固有蛍光スペクトルの診断報告を示す図である。
【図5】本発明の前癌性病変のための内視鏡診断装置の構造の実施例を示す図である。
【図6】本発明の装置を用いたスペクトル法によって表示された3期の前癌性の異型過形成のスペクトル曲線である。
【図7】本発明の装置を用いたスペクトル法によって表示された2期の前癌性の異型過形成の第1のスペクトル曲線である。
【図8】本発明の装置を用いたスペクトル法によって表示された2期の前癌性の異型過形成の第2のスペクトル曲線である。
【図9】本発明の装置を用いたスペクトル法によって表示された1期の前癌性の異型過形成のスペクトル曲線である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前癌性病変の診断のための光学生体組織検査方法であって、
検査される白色光の画像信号が反射される、検査される生体組織を照射するために、冷光源によって生成された光を用いるステップと、
検査される固有蛍光画像信号が反射される、検査される生体組織を照射するために、励起光によって生成された集束した紫色に近い光を用いるステップと、
検査される弱い蛍光信号が反射される、検査される生体組織を照射するために、励起光によって生成された集束した紫色に近い光を用いるステップと、
前癌性病変の等級分けをするのに前癌性病変の場所の画像を生成するために、前記検査される白色光の画像信号および前記検査される固有蛍光画像信号を組合わせるステップと、
前癌性病変の位置を見つけ出しかつ等級分けすることのできる前記検査される弱い蛍光から固有蛍光スペクトル信号を生成するステップとを含む、方法。
【請求項2】
軽度、中程度および重度の異型過形成を識別する際に、470nm,680nmおよび400nmの前記固有蛍光スペクトル信号の波形を検出するステップを含み、
検査される組織の470nmでのピーク値が正常組織のピーク値の70%を超え、かつ680nmおよび400nmでピークがない場合、病変は良性と考えられ、
検査される組織の470nmでのピーク値が正常組織のピーク値の50%未満であり、かつ680nmおよび400nmでピークがある場合、病変は重度の異型過形成と考えられ、
検査される組織の470nmでのピーク値が正常組織のピーク値の50%未満であり、かつ680nmまたは400nmで1つのみのピーク値がある場合、病変は中程度の異型過形成と考えられ、
検査される組織の470nmでのピーク値が正常組織のピーク値の50%未満であり、かつ680nmまたは400nmのいずれかでピークがない場合、病変は軽度の異型過形成と考えられる、請求項1に記載の光学生体組織検査方法。
【請求項3】
前記前癌性病変の画像によって示される色は、軽度、中程度および重度の異型過形成を識別する際に以下のようになる、すなわち、
正常組織については青および白、
良性の病変については橙色または橙赤色、
重度の異型過形成については赤紫、
中程度の異型過形成については暗い紫または暗い赤、
軽度の異型過形成については暗い色となる、請求項1に記載の光学生体組織検査方法。
【請求項4】
1期、2期および3期の異型過形成を識別する際に、460nm−480nm、390−410nmおよび670nm−690nmでの前記固有蛍光スペクトル信号の波形を検出するステップを含み、
460nm−480nmでのピーク値が正常組織のピーク値の50%未満であり、かつ390nm−420nmおよび670nm−690nmでピークがない場合に、病変は1期の異型過形成であると考えられ、前記前癌性病変の画像によって示された蛍光色は暗い色であり、病変は癌に発展しにくく、
460nm−480nmでのピーク値が正常組織のピーク値の50%未満であり、かつ390nm−420nmまたは670nm−690nmで1つのみのピークがある場合に、病変は2期の異型過形成と考えられ、前記前癌性病変の画像によって示された蛍光色は、暗い紫または暗い赤であり、病変は癌に発展するおそれがあり、
460nm−480nmでのピーク値が正常組織のピーク値の50%未満であり、かつ390nm−420nmおよび670nm−690nmの双方でピークがある場合に、病
変は3期の異型過形成であると考えられ、前記前癌性の病変の画像によって示された蛍光色は、暗い赤紫であり、病変は癌に発展しやすい、請求項1に記載の光学生体組織検査方法。
【請求項5】
装置は、光源、光学チャネルシステム、内視鏡および電子システムを含み、前記光源は、励起光および冷光源を含み、
前記光学チャネルシステムは、第1のチャネルにおいて、冷光源は光ファイバの束を通過することによって、内視鏡の光導波路のポートに入り、内視鏡の対象ポートは、検査される生体組織を目指すが、これに物理的に接触せず、冷光源は、検査される生体組織を照射し、検査される生体組織から反射した白色光の画像信号は、内視鏡のポートに固く接続される弱い蛍光CCDによって受信され、次に信号線を介してインターフェイス回路に送信され、第2のチャネルにおいて、励起光によって生成された紫色に近い光は、焦点板を通過し、光ファイバの束を介して内視鏡のポートに到達し、内視鏡の対象ポートは、検査される生体組織を目指すが、これに物理的に接触せず、励起光が、検査される生体組織を照射した後で、検査される生体組織から反射した固有蛍光画像信号は、内視鏡のポートに固く接続される弱い蛍光CCDによって受信され、次に信号線を介してインターフェイス回路に送信され、第3のチャネルにおいて、上述した第2のチャネルとしての励起光は、光ファイバの束を介して内視鏡のポートに入り、検査される生体組織を目指してこれを照射して、検査される生体組織から反射した弱い蛍光信号は、内視鏡の鉗子孔から突出した弱い蛍光ファイバの束を介してOMAシステムに送信され、
前記電子システムは、内視鏡のポートに固く接続される弱い光CCDを含み、弱い光CCDは、検査された白色光の信号およびそれによって捕えられた検査された固有蛍光信号を、インターフェイス回路を通してコンピュータに送信し、次に信号は、画像処理装置および画像ディスプレイに送信され、画像は、前癌性病変の位置を見つけ出しかつ前癌性病変を等級分けするために用いられ、弱い蛍光の光ファイバから送信される検査された弱い蛍光信号は、迅速で弱い光のスペクトル分析の構成要素、すなわちOMAシステムを通過し、OMAシステムから固有蛍光スペクトル信号が伝えられ、次に固有蛍光スペクトル信号が並列ポートを通ってコンピュータに送信され、その後で圧縮機を通過することによってスペクトルディスプレイに入り、スペクトルは、前癌性病変の位置を見出し、かつ前癌性病変の等級分けをするために用いられ、したがって、前癌性病変を多数の方法で迅速に見つけ出しかつ正確におよび即座に等級分けすることができ、励起光および冷光源の電力スイッチは、ペダルスイッチによって制御される光送信機に接続され、ペダルスイッチは、並列ポートおよび画像処理装置にも接続されることを特徴とする、請求項1に記載の光学生体組織検査方法を用いた前癌性病変の内視鏡診断の装置。
【請求項6】
前記励起光の波長が330nm−420nmであることを特徴とする、請求項5に記載の前癌性病変の内視鏡診断の装置。
【請求項7】
前記励起光の光ファイバの束および冷光源の光ファイバの束が、多数の消耗性の低い石英の光ファイバからなる単一の束に含まれることを特徴とする、請求項5に記載の前癌性病変の内視鏡診断のための装置。
【請求項8】
画像処理装置からの検査された生体組織の前記画像信号が画像ディスプレイに送信されることを特徴とする、請求項5に記載の前癌性病変の内視鏡診断の装置。
【請求項9】
画像処理装置からの検査された生体組織の前記画像信号は、圧縮機によって圧縮された後で、ディスクに記憶されるか、またはプリンタによって印刷されることを特徴とする、請求項5に記載の前癌性病変の内視鏡診断の装置。
【請求項10】
並列ポートによってコンピュータに送信され、かつコンピュータによって処理される、
検査される生体組織のスペクトル信号は、圧縮機によって圧縮された後で、ディスクに保存されるか、またはプリンタによって印刷されることを特徴とする、請求項5に記載の前癌性病変の内視鏡診断の装置。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2006−504458(P2006−504458A)
【公表日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−547352(P2004−547352)
【出願日】平成15年10月29日(2003.10.29)
【国際出願番号】PCT/CN2003/000917
【国際公開番号】WO2004/039254
【国際公開日】平成16年5月13日(2004.5.13)
【出願人】(505164380)上海生▲標▼科技有限公司 (1)
【Fターム(参考)】