説明

前立腺癌に対する新規活性物

本発明は、前立腺癌の予防およびコアジュバント治療におけるリコペンおよびゲニステインを含む組成物の使用に関する。本発明は、また、前立腺癌の予防およびコアジュバント治療におけるリコペンおよびエピガロカテキンガレートを含む組成物の使用に関する。より詳しくは、本発明は、これらの組成物の1種の、前立腺癌発症の一次予防(すなわち、健常者の予防のためのサプリメンテーション)、コアジュバント治療(すなわち、前立腺癌の現行治療に加えるサプリメンテーション)、および前立腺癌の二次予防(すなわち、治療が成功した後の再発防止のためのサプリメンテーション)における使用に関する。さらに、本発明は、また、リコペンおよびゲニステインを含む組成物またはリコペンおよびエピガロカテキンガレートを含む組成物を投与する対象の血液中の血漿PSA濃度を減少/低下させることに関する。本発明の組成物中に存在することが好ましい他の化合物は、ビタミンE、レスベラトロールおよびポリ不飽和脂肪酸(誘導体)である。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、前立腺癌の予防およびコアジュバント治療におけるリコペンおよびゲニステインを含む組成物の使用に関する。本発明は、また、前立腺癌の予防およびコアジュバント治療におけるリコペンおよびエピガロカテキンガレートを含む組成物の使用に関する。より詳しくは、本発明は、これらの組成物の1種の、前立腺癌発症の一次予防(すなわち、健常者の予防のためのサプリメンテーション)、コアジュバント治療(すなわち、前立腺癌の現行治療に加えるサプリメンテーション)、および前立腺癌の二次予防(すなわち、治療が成功した後の再発防止のためのサプリメンテーション)における使用に関する。
【0002】
本発明は、また、リコペンおよびゲニステインを含む組成物またはリコペンおよびエピガロカテキンガレートを含む組成物を投与する対象の血液中の血漿PSA濃度を減少/低下させることに関し、好ましくは、本発明は、30%以下まで、より好ましくは20〜30%まで減少/低下させることに関する。血漿PSA濃度は前立腺癌スクリーニングの標準マーカーであり、前立腺の大きさおよび/または前立腺炎の指標となる。特に、PSA速度、すなわち、PSA濃度が増加する速さは、新生前立腺癌の強力な指標である。全血清PSAは、Microparticle Enzyme Immunoassay(Abbot Laboratories、イリノイ州アボットパーク(Abbot Park,IL)を用いて測定することができる。測定値の変化は、完全なデータセットと対になったtテストによって評価し得る。白血球と前立腺DNAの80HdG/dG比、並びにアポトーシス指数およびPSA濃度は、平方根または対数変換して歪みをなくすことができる。
【0003】
前立腺癌は、特に西欧諸国において深刻な健康問題となっている。2000年には、世界で前立腺癌と診断された542,990人の患者のうち415,568人は、先進国で診断されており、そのうちの211,950人は北アメリカの患者である(フェアレイ,J.(Ferelay,J.)、ブレイ,F.(Bray,F.)、ピサニ,P.(Pisani,P.)およびパーキン,D.M.(Parkin,D.M.)グロボキャン(GROBOCAN)2000:キャンサー・インシデンス、モータリティ・アンド・プレバレンス・ワールドワイド(Cancer Incidence,Mortality and Prevalence Worldwide)、第1.0版、IARC キャンサーベース(IARC CancerBase)、No.5.リヨン(Lyon)、IARCプレス(IARCPress)、2001.http://www−dep.iarc.fr/globocan/globocan.htmlを参照)。2003年には、米国で220,900人の前立腺癌患者(アメリカン・キャンサー・ソサイエティ(American Cancer Society)(2004)、キャンサー・ファクツ・アンド・フィギュアーズ・2003(Cancer Facts&Figures 2003)、http://www.cancer.org/downloads/STT/CAFF2003PWSecured.pdfを参照)が診断されると予想される。
【0004】
前立腺癌は、PINまたは前立腺上皮内腫瘍と呼ばれる、前立腺内部で生じる前癌状態の増殖である前癌病変を経て進行する。PINは、経直腸超音波ガイド前立腺生検を受けた男性の16%までの人に確認される。PINは辺縁部で最も多く発生する。PINでは、間質の浸潤を起こさずに、PINの悪性度の増加とともに基底細胞層の崩壊が進行する一方、管および腺の構造は維持されることが、細胞配列により示される。これまでに報告されている他の組織学的もしくは生物学的な変化としては、神経内分泌分化および分泌分化の消失、核および核小体異常、新生血管、増殖能の増加、並びにDNA含量の変化を伴う遺伝的不安定性が挙げられる。PINの悪性度が高くなると、基底細胞の崩壊が増大すると共に核異常の程度が大きくなるのが見られる。PINでは、無傷の、または崩壊した基底細胞層が存在するが、癌(PC)では基底細胞層は存在しない。基底細胞に特異的なサイトケラチンの免疫染色は、PINには存在するが、PC部位には存在しない。
【0005】
PINは、病変が最小である最低グレード(グレードI)から病変が最も重い最高グレード(グレードIII)にグレード分けされる。殆どの医学論文は、PINを高グレードかまたは低グレードに分類している。高グレードPINとグレードIIIのPINとは同義語として使用される。PCは低グレードより高グレードのPINを伴う。PINはPCの発現より5年超遡って発現する。
(Pinの定義は、http://www.prostate−cancer.org/education/preclin/pin.htmlから)
【0006】
本発明においては、前立腺癌および前癌病変「前立腺上皮内腫瘍」(PIN、高グレードPIN(HG−PIN))が、リコペンおよびゲニステインを含む組成物またはリコペンおよびエピガロカテキンガレートを含む組成物の投与によって、抑制または阻害されることがわかった。
【0007】
したがって、本発明は、前立腺癌の一次および二次予防、並びにそのコアジュバント治療のための組成物の製造における、リコペンおよびゲニステインを含む組成物の使用に関する。あるいは、リコペンおよびエピガロカテキンガレートを含む組成物を使用してもよい。
【0008】
本発明との関連において、「前立腺癌および前癌病変PIN/HG−PINの予防」は、前立腺癌または前癌病変PIN/HG−PINに罹患するリスク、および前立腺癌または前癌病変PIN/HG−PINを発症するリスクを低減することも包含する。
【0009】
さらに、本発明は、前立腺癌を予防または治療する方法であって、そのような治療または予防の処置を必要とする対象者に、リコペンおよびゲニステインを含む組成物の有効量、または、リコペンおよびエピガロカテキンガレートを含む組成物の有効量を投与することを含む方法に関する。さらに、本発明は、対象の血液中の血漿PSA濃度を減少/低下させる方法であって、そのような処置を必要とする前記対象に有効量のリコペンおよびゲニステイン、または、有効量のリコペンおよびエピガロカテキンガレートを投与することを含む方法に関する。本発明は、また、そのような組成物を含むある新規な固形生薬製剤に関する。
【0010】
本発明のさらに別の好ましい実施形態では、使用組成物はビタミンEおよび/またはレスベラトロールを含有してもよい。ビタミンEおよびレスベラトロールを共に含有することが最も好ましい。
【0011】
本発明の別の実施形態では、使用組成物は、また、ポリ不飽和脂肪酸(PUFA))およびそれらのエステル、特にそれらのトリグリセリドを含有してもよい。
【0012】
本発明のさらに別の実施形態では、使用組成物は、また、ビタミンD2もしくはビタミンD3、または、それらの誘導体(1α,25−ジヒドロキシビタミンD3または25−ヒドロキシビタミンD3または1α,24R,25−トリヒドロキシビタミンD3など)を含有してもよい。
【0013】
本発明の別の実施形態では、また、ビタミンCを含有してもよい。用語「ビタミンC」は、本明細書で使用される場合、生物学的ビタミンC活性を有するその誘導体、例えば、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビルリン酸ナトリウムおよびパルミチン酸アスコルビルなどのエステル類および塩類などを含む。
【0014】
本発明のさらに別の実施形態では、使用組成物中に、以下の成分を実質的に含有しない。
(a)アスタキサンチン((3S,3’S)−3,3’−ジヒドロキシ−β,β−カロテン−4,4’−ジオン)、および/または、1種以上の異性体、および/または、モノエステル、および/または、ジエステル、好ましくは、酢酸、プロピオン酸、パルミチン酸、ステアリン酸およびコハク酸などの飽和アルカン酸、オレイン酸などのモノ不飽和脂肪酸、並びに、リノール酸、リノール酸、ドコサヘキサエン酸およびアラキドン酸などのポリ不飽和脂肪酸のエステル;
(b)β−カロテン、および/または、その1種以上の異性体;
(c)β−クリプトキサンチン((3R)−β,β−カロテン−3−オール)、および/または、その1種以上の異性体もしくはエステル、好ましくは、酢酸、プロピオン酸、パルミチン酸、ステアリン酸およびコハク酸などの飽和アルカン酸、オレイン酸などのモノ不飽和脂肪酸、並びに、リノール酸、リノール酸、ドコサヘキサエン酸およびアラキドン酸などのポリ不飽和脂肪酸のエステル;
(d)ルテイン((3R,3’R,6’R)−β,ε,カロテン−3,3’−ジオール)、および/または、その1種以上の異性体、および/または、そのモノエステル、および/または、そのジエステル、好ましくは、酢酸、プロピオン酸、パルミチン酸、ステアリン酸およびコハク酸などの飽和アルカン酸、オレイン酸などのモノ不飽和脂肪酸、並びに、リノール酸、リノール酸、ドコサヘキサエン酸およびアラキドン酸などのポリ不飽和脂肪酸のエステル;
(e)ケルセチン(2−(3,4−ジヒドロキシフェニル))−3,5,7−トリヒドロキシ−4H−1−ベンゾピラノ−4−オン)、および/または、ジヒドロケルセチン、および/または、それらの1種以上の誘導体(ケルセチングルコシド、ケルセチングルクロニド、硫酸ケルセチン、メチルケルセチン(イソハムネチン(3’−O−メチルケルセチン)、タマリキセチン(4’−O−メチルケルセチン));
(f)ミリセチン、および/または、その1種以上の誘導体;
(g)リゾキシン、および/または、その1種以上の誘導体(パルミトイルリゾキシン);
(h)シリマリン(マリアアザミ(Silybum marianum)からの抽出物)、および/または、その1種以上の誘導体(シリマリンジヘミスクシネートナトリウム塩)、および/または、その主要4成分の1種以上(シリビン[シリビニン(silibinin)と同義語であり、時にシリビニン(silybinin)と誤って称される]、および/または、イソシリビン、および/または、シリジアニン、および/または、シリクリスチン)、および/または、その1種以上の誘導体(シリビン−ジヘミスクシネート、ジシリビン、シリビン−ホスファチジルコリン錯体、シリビン−ホスフェート);
(i)ビタミンA、および/または、その1種以上の誘導体(オール−トランスレチノールまたはオール−トランスレチニルアセテートまたはオール−トランスレチニルパルミテート);
(j)ゼアキサンチン((3R,3’R)−β,β−カロテン−3,3’−ジオール)、および/または、その1種以上の異性体および立体異性体(好ましくは、メソゼアキサンチン、3R,3’S−ゼアキサンチン)、および/または、そのモノエステルおよび/またはジエステル、好ましくは、酢酸、プロピオン酸、パルミチン酸、ステアリン酸およびコハク酸などの飽和アルカン酸、オレイン酸などのモノ不飽和脂肪酸、並びに、リノール酸、リノール酸、ドコサヘキサエン酸およびアラキドン酸などのポリ不飽和脂肪酸のエステル;
(k)アピゲニン、および/または、その1種以上の誘導体;
(l)カルノシン酸、および/または、その1種以上の誘導体;
(m)カルノソール、および/または、その1種以上の誘導体;
(n)デプデシン、および/または、その1種以上の誘導体;
(o)エポネマイシン、および/または、その1種以上の誘導体;
(p)ジヒドロエポネマイシン、および/または、その1種以上の誘導体;
(q)エポキソマイシン、および/または、その1種以上の誘導体;
(r)エルゴステロール、および/または、その1種以上の誘導体;
(s)フィセチン、および/または、その1種以上の誘導体;
(t)フマギリン、および/または、その1種以上の誘導体;
(u)ラクタシスチン、および/または、その1種以上の誘導体;
(v)ルテオリン、および/または、その1種以上の誘導体;
(w)モツポラミンC、および/または、その1種以上の誘導体;
(x)オバリシン、および/または、その1種以上の誘導体;
(y)ラジシコール、および/または、その1種以上の誘導体;
(z)クルクミン、および/または、その1種以上の誘導体(デメトキシ−クルクミン、ビスデメトキシクルクミン、クルクミン酸ナトリウム(sodium curcumionate)、ビス−デメチルクルクミン、テトラヒドロクルクミン、ジアセチルクルクミン、トリエチルクルクミン);
(aa)スクアラミン、および/または、その1種以上の誘導体;
(bb)イソリクイリチン、イソリクイリチゲニン、リクイリチゲニン、および/または、それらの1種以上の誘導体;
(cc)鮫軟骨抽出物
(dd)グルコシノレート誘導体(メチルスルフィニルアルキルグルコシノレート[1−メチルスルフィニルメチルグルコシノレート、2−メチルスルフィニルエチルグルコシノレート、3−メチルスルフィニルプロピルグルコシノレート(グルコイベリン)、4−メチルスルフィニルブチルグルコシノレート(グルコラファニン)、5−メチルスルフィニルペンチルグルコシノレート(グルコアリシン)、6−メチルスルフィニルヘキシルグルコシノレート、7−メチルスルフィニルヘプチルグルコシノレート、8−メチルスルフィニルオクチルグルコシノレート、9−メチルスルフィニルノニルグルコシノレート、10−メチルスルフィニルドデシルグルコシノレート]、またはアリルグルコシノレート(シニグリン)、またはフェニルエチルグルコシノレート(グルコナスツルチン)、または3−ブテニルグルコシノレート(グルコナピン)、またはインドール−3−イルメチルグルコシノレート(グルコブラシシン)もしくはその誘導体[N−メトキシインドール−3−イルメチルグルコシノレート(ネオグルコブラシシン)、4−ヒドロキシインドール−3−イルメチルグルコシノレート(4−OHグルコブラシシン)、4−メトキシインドール−3−イルメチルグルコシノレート(4−CHOグルコブラシシン)]
(ee)イソチオシアネート誘導体(メチルスルフィニルアルキルイソチオシアネート[1−メチルスルフィニルメチルイソチオシアネート、2−メチルスルフィニルエチルイソチオシアネート、3−メチルスルフィニルプロピルイソチオシアネート、4−メチルスルフィニルブチルイソチオシアネート(スルフォラファン)、5−メチルスルフィニルペンチルイソチオシアネート、6−メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネート(6−HITC)、7−メチルスルフィニルヘプチルイソチオシアネート、8−メチルスルフィニルオクチルイソチオシアネート、9−メチルスルフィニルノニルイソチオシアネート、10−メチルスルフィニルドデシルイソチオシアネート]、またはアリルイソチオシアネート、またはフェニルエチルイソチオシアネート(PEITC)、または3−ブテニルイソチオシアネート、またはインドール−3−イルメチルイソチオシアネートもしくはその誘導体(N−メトキシインドール−3−イルメチルイソチオシアネート、4−ヒドロキシインドール−3−イルメチルイソチオシアネート、4−メトキシインドール−3−イルメチルイソチオシアネート)、あるいは3−インドールメタノール(インドール−3−カルビノール、I3C)。
【0015】
本発明との関連において、「実質的に含まない」とは、本発明で使用される組成物中の量が、その組成物中に含まれる活性成分の全重量を基準にして、≦2重量%、好ましくは≦1重量%、より好ましくは≦0.5重量%であることを意味する。これは、リコペンおよびゲニステインまたはエピガロカテキンガレート、並びに任意にレスベラトロール、ビタミンE、PUFA、ビタミンD2、ビタミンD3(誘導体)およびビタミンCの外には、使用する組成物中に他の活性な成分が含まれていないことを意味する。
【0016】
[リコペン]
用語「リコペン」には全てのEおよびZ−立体異性体が含まれる。あるいは、リコペンに豊富に含むトマト抽出物もまた使用することができよう。
【0017】
[ゲニステイン]
ゲニステインアグリコン(4’,5,7−トリヒドロキシイソフラボン)および/またはその1種以上の誘導体(ゲニステイングルコシド、ゲニステインスルフェート、ゲニステイングルクロニド)。
【0018】
[エピガロカテキンガレート]
用語「エピガロカテキンガレート」(EGCG)は、(−)−EGCGおよび医薬品として許容される塩などの(−)−EGCG誘導体を含む緑茶抽出物も包含する。
【0019】
特に適切な(−)−EGCGは、例えば、スイス(Switzerland)、カイザーアウグスト(Kaiseraugst)のDMS Nutritional Products Ltdから商業的に入手可能なTeavigo(≧94%のEGCGを含有する緑茶抽出物)およびTeavigo TG(Tablet Grade)(約3%のペクチンが混合された約88%のEGCGを含有する緑茶抽出物)である。
【0020】
(−)−エピガロカテキンガレートの好ましい代替物は、少なくとも91.7重量%の(−)−エピガロカテキンガレート(EGCG)および1.43重量%以下のカフェインを含む緑茶フラクション、特には91.7〜97.13重量%のEGCG、0〜3.15重量%のエピカテキン(EC)、0〜3.1重量%のカテキン、0.2〜1.52重量%のガロカテキンガレート(GCG)、0.38〜4.62重量%のエピカテキンガレート(ECG)および0〜1.43重量%のカフェインを含む緑茶フラクションである。
【0021】
[ビタミンE]
用語ビタミンEには、本明細書で使用される場合、ラセミ体ビタミンE(D,L−α−トコフェロール)または天然ビタモンE、および、生物学的ビタミンE活性を有するそれらの誘導体、例えば、ビタミンEアセテート、ビタミンEプロピオネート、ビタミンEブチレートまたはビタミンEスクシネートなどのカルボン酸エステルが含まれる。
【0022】
[レスベラトロール]
用語レスベラトロールには、本明細書で使用される場合、レスベラトロール(シス−3,4’,5−トリヒドロキシスチルベンおよび/またはトランス−3,4’,5−トリヒドロキシスチルベン)、および/または、生物学的レスベラトロール活性を有するそれらの誘導体、例えば、レスベラトロールグルコシド、レスベラトロールスルフェート、レスベラトロールグルクロニドなどが含まれる。
【0023】
[ポリ不飽和脂肪酸(PUFA)]
用語「PUFA」は、これらの酸のエチルエステル、および、これらの酸のモノ−、ジ−およびトリ−グリセリドなどの適切な誘導体も包含する。n−3ポリ不飽和脂肪酸のトリグリセリドが特に好ましい。ここでは、主として3つの異なるn−3ポリ不飽和脂肪酸をグリセリンでエステル化する。これらのトリグリセリドは部分飽和脂肪酸を含んでいてもよい。そのようなn−3ポリ不飽和脂肪酸(PUFA)の例としては、エイコサペンタ−5,8,11,14,17−エン酸(EPA)、ドコサヘキサ−4,7,10,13,16,19−エン酸(DHA)がある。本発明の一実施形態では、30%の脂肪酸部がn−3脂肪酸であり、これらの25%が長鎖ポリ不飽和脂肪酸であるトリグルセリドが使用される。さらに別の実施形態では、商業的に入手可能なROPUFA(登録商標)‘30’n−3 Food Oil(DSM Nutritional Products Ltd、カイザーアウグスト、スイス)が使用される。
【0024】
あるいは、他のポリ不飽和脂肪酸(オメガ−3脂肪酸;オメガ−6脂肪酸)および/またはそれらの誘導体を使用してもよい。
【0025】
本発明による、PINを含む前立腺癌の一次および二次予防、並びにコアジュバント治療では、そのような治療を必要とする対象、すなわちヒトおよびペットに、リコペンを1日当たり0.0005mg/kg体重〜5mg/kg体重投与する。そのような治療を必要とする対象、すなわちヒトおよびペットに、リコペンと共に投与するゲニステインの1日の投与量は、0.17mg/kg体重〜1.7mg/kg体重である。そのような治療を必要とする対象、すなわちヒトおよびペットに、リコペンと共に投与するエピガロカテキンガレートの1日の投与量は、0.8mg/kg体重〜5mg/kg体重である。
【0026】
ゲニステインまたはエピガロカテキンガレートは、リコペンと同時に投与してもよく、あるいは予めまたは後で投与してもよい。
【0027】
本発明との関連において、「ヒト」とは、男性であり、特に40〜80歳の男性である。彼らは本発明の組成物の投与に好適な対象者である。
【0028】
本発明との関連において、「ペット」とは、例えば、猫および犬を包含する。ペットは(雄の)犬であることが好ましい。
【0029】
ビタミンEまたはその誘導体を共投与する場合、1日の投与量はトコフェロール基準で0.1mg/kg体重〜15mg/kg体重である。レスベラトロールまたはその誘導体を共投与する場合、1日の投与量はレスベラトロール基準で0.08mg/kg体重〜1.7mg/kg体重である。ポリ不飽和脂肪酸(誘導体)を共投与する場合、1日の投与量はポリ不飽和脂肪酸基準で1mg/kg体重〜50mg/kg体重である。
【0030】
リコペンおよびゲニステインまたはエピガロカテキンガレートは、好ましくは経腸用の組成物(固形生薬製剤であっても液状生薬製剤であってもよい)、食品組成物、または動物飼料組成物における活性成分として提供することができる。固形生薬製剤の例としては、活性成分を従来の生薬担体と共に含有する、錠剤、カプセル(例えば、硬質または軟質のシェルのゼラチンカプセル)、丸薬、分包(sachet)、粉末、顆粒などが挙げられる。従来の任意の担体材料を使用することができる。担体材料は経口投与に適した有機または無機の不活性担体材料とすることができる。適切な担体としては、水、ゼラチン、アラビアゴム、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、タルク、植物油などが挙げられる。さらに、医薬品調合の慣例に従って、香味剤、保存料、安定剤、乳化剤、緩衝剤などの添加剤を添加することができる。それらは、食品、食品プレミックスもしくは強化食品または飲料などの食品組成物にも使用することができる。個々の活性成分は単一の組成物として投与されることが適切であるが、個別の投与単位で投与することもできる。
【0031】
活性成分は以下の量を投与することが特に好ましい。
成人の1日の消費量が0.25mg/日〜50mg/日、好ましくは1mg/日〜30mg/日の範囲となるような濃度のリコペン;および
成人の1日の消費量が10mg/日〜100mg/日の範囲となるような濃度のゲニステイン;または、
成人の1日の消費量が50mg/日〜300mg/日の範囲となるような濃度のエピガロカテキンガレート(EGCG);および/または
成人の1日の消費量が15mg/日〜600mg/日の範囲となるような濃度のビタミンEもしくはその誘導体;および/または、
成人の1日の消費量が5mg/日〜100mg/日の範囲となるような濃度のレスベラトロールもしくはその誘導体;および/または、
成人の1日の消費量が100mg/日〜4000mg/日、好ましくは100mg/日〜1000mg/日の範囲となるような濃度のPUFA。
【0032】
ビタミンCまたはその誘導体を投与する場合には、成人の1日の消費量が50mg/日〜1000mg/日の範囲となるような濃度である。
【0033】
ビタミンD2またはビタミンD3(誘導体)は、下記の投与量の範囲で共投与することができる。
【0034】
【表1】

【0035】
本発明において使用される生薬製剤の代表的な例を以下に示す。これらの実施例は発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定することを決して意図するものではない。
【0036】
[実施例]
[実施例1]
リコペン5mg、ゲニステイン15mg、並びに、任意にビタミンE200mg、レスベラトロール10mgおよびPUFA200mgを含有するように、前立腺癌のコアジュバント治療用カプセルを調合する。1日の投与量は、そのようなカプセル2個に相当する。PSA濃度の高い68歳の男性に、サプリメンテーションを3週間、毎日行うと、血漿PSA値は低下する。PSA血漿濃度は前立腺癌スクリーニングの標準マーカーであり、前立腺の大きさおよび/または前立腺炎の指標となる。特に、PSA速度、すなわち、PSA濃度が増加する速さは、新生前立腺癌種の強力な指標である。
【0037】
[実施例2]
体重70kgで、従来の前立腺癌治療を受けている患者に、癌治療の期間中、1日当たり10mgのリコペンおよび30mgのゲニステインを、単一の投与単位または成分の個々の投与単位で投与する。1日の投与量は、そのようなカプセル2個に相当する。サプリメンテーションを3週間、毎日行うと、血漿PSA値は減少する。
【0038】
[実施例3]
体重70kgで、従来の前立腺癌治療を受けている患者に、癌治療の期間中、1日当たり10mgのリコペンおよび300mgのエピガロカテキンガレートを、単一の投与単位または成分の個々の投与単位で投与する。サプリメンテーションを3週間、毎日行うと、血漿PSA値は低下する。
【0039】
[実施例4]
体重70kgで、従来の前立腺癌治療を受けている患者に、癌治療の期間中、1日当たり10mgのリコペン、30mgのゲニステイン、200mgのビタミンEおよび37.5mgのレスベラトロールを、単一の投与単位または成分の個々の投与単位で投与する。サプリメンテーションを3週間、毎日行うと、血漿PSA値は低下する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前立腺癌の一次および二次予防用並びにそのコアジュバント治療用組成物を製造するための、リコペンおよびゲニステイン、またはリコペンおよびエピガロカテキンガレートの使用。
【請求項2】
ビタミンE、レスベラトロールおよびポリ不飽和脂肪酸(誘導体)からなる群から選択される少なくとも1種の化合物と組み合わされる、リコペンおよびゲニステイン、またはリコペンおよびエピガロカテキンガレートの請求項1に記載の使用。
【請求項3】
ビタミンEおよび/またはレスベラトロールと組み合わされる、リコペンおよびゲニステイン、またはリコペンおよびエピガロカテキンガレートの請求項1に記載の使用。
【請求項4】
前記組成物中に次の化合物:アスタキサンチン、β−カロテン、β−クリプトキサンチン、ルテイン、ケルセチン、ミリセチン、リゾキシン、パルミトイルリゾキシン、シリマリン、シリビンまたは等モル量の誘導体、イソシリビンまたは等モル量の誘導体、シリジアニンまたは等モル量の誘導体、シリクリスチンまたは等モル量の誘導体、オール−トランスレチノール、オール−トランスレチニルアセテート、オール−トランスレチニルパルミテート、ゼアキサンチン、アピゲニン、カルノシン酸、カルノソール、デプデシン、エポネマイシン、ジヒドロエポネマイシン、エポキソマイシン、エルゴステロール、フィセチン、フマギリン、ラクタシスチン、ルテオリン、モツポラミンC、オバリシン、ラジシコール、クルクミンまたは等モル量の誘導体、スクアラミン、イソリクイリチン、イソリクイリチゲニン、鮫軟骨抽出物、グルコシノレート誘導体:メチルスルフィニルアルキルグルコシノレート(1−メチルスルフィニルメチルグルコシノレート、2−メチルスルフィニルエチルグルコシノレート、3−メチルスルフィニルプロピルグルコシノレート(グルコイベリン)、4−メチルスルフィニルブチルグルコシノレート(グルコラファニン)、5−メチルスルフィニルペンチルグルコシノレート(グルコアリシン)、6−メチルスルフィニルヘキシルグルコシノレート、7−メチルスルフィニルヘプチルグルコシノレート、8−メチルスルフィニルオクチルグルコシノレート、9−メチルスルフィニルノニルグルコシノレート、10−メチルスルフィニルドデシルグルコシノレート)、またはアリルグルコシノレート(シニグリン)、またはインドール−3−イルメチルグルコシノレート(グルコブラシシン)もしくはその誘導体、(N−メトキシインドール−3−イルメチルグルコシノレート(ネオグルコブラシシン)、4−ヒドロキシインドール−3−イルメチルグルコシノレート(4−OHグルコブラシシン)、4−メトキシインドール−3−イルメチルグルコシノレート(4−CHOグルコブラシシン))、またはフェニルエチルグルコシノレート(グルコナスツルチン)、または3−ブテニルグルコシノレート(グルコナピン))、イソチオシアネート誘導体:メチルスルフィニルアルキルイソチオシアネート(1−メチルスルフィニルメチルイソチオシアネート、2−メチルスルフィニルエチルイソチオシアネート、3−メチルスルフィニルプロピルイソチオシアネート、4−メチルスルフィニルブチルイソチオシアネート(スルフォラファン)、5−メチルスルフィニルペンチルイソチオシアネート、6−メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネート(6−HITC)、7−メチルスルフィニルヘプチルイソチオシアネート、8−メチルスルフィニルオクチルイソチオシアネート、9−メチルスルフィニルノニルイソチオシアネート、10−メチルスルフィニルドデシルイソチオシアネート)、またはアリルイソチオシアネート、インドール−3−イルメチルイソチオシアネート、N−メトキシインドール−3−イルメチルイソチオシアネート、4−ヒドロキシインドール−3−イルメチルイソチオシアネート、4−メトキシインドール−3−イルメチルイソチオシアネート、3−インドールメタノール、フェニルエチルイソチオシアネート(PEITC)、および3−ブテニルイソチオシアネート、を実質的に含まない請求項1〜3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
前記組成物が、固形または液状生薬製剤、食品組成物、または動物飼料組成物である請求項1〜4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
前記固形生薬製剤の1日投与単位が、5mg〜30mgのリコペンと、10〜100mgのゲニステインまたは50〜300mgのエピガロカテキンガレートとを含む請求項5に記載の使用。
【請求項7】
前記液状生薬製剤は、1回分当たり、0.1mg〜100mgのリコペンと、1〜100mgのゲニステインまたは20〜300mgのエピガロカテキンガレートとを含む請求項5に記載の使用。
【請求項8】
前記食品組成物または動物飼料組成物は、1回分の分量当たり、0.025mg〜10mgのリコペンと、1〜100mgのゲニステインまたは20〜300mgのエピガロカテキンガレートとを含む請求項5に記載の使用。
【請求項9】
前記固形生薬製剤の1日投与単位が、15mg〜500mgのビタミンEをさらに含む請求項6に記載の使用。
【請求項10】
前記液状生薬製剤は、1回分当たり、10mg〜300mgのビタミンEをさらに含む請求項7に記載の使用。
【請求項11】
前記食品組成物または動物飼料組成物は、1回分の分量当たり、1.5mg〜30mgのビタミンEをさらに含む請求項8に記載の使用。
【請求項12】
前記固形生薬製剤の1投与単位が、50mg〜500mgのビタミンCをさらに含む請求項6または9に記載の使用。
【請求項13】
前記液状生薬製剤は、1回分当たり、50mg〜100mgのビタミンCをさらに含む請求項7または10に記載の使用。
【請求項14】
前記食品組成物または動物飼料用組成物は、1回分の分量当たり、5mg〜50mgのビタミンCをさらに含む請求項8または11に記載の使用。
【請求項15】
ビタミンE、レスベラトロールおよびポリ不飽和脂肪酸と共に、リコペンと、ゲニステインまたはエピガロカテキンガレートとを1投与単位中に含む前立腺癌のコアジュバント治療用固形生薬製剤の製造における請求項1〜14のいずれか一項に記載の使用。
【請求項16】
1投与単位当たり(1日当たり2用量単位で)、5mgのリコペン、15mgのゲニステインまたは150mgのエピガロカテキンガレート、並びに、任意に、200mgのビタミンE、10mgのレスベラトロールおよび200mgのポリ不飽和脂肪酸を含有する固形生薬製剤。
【請求項17】
前立腺癌を予防または治療する方法であって、そのような治療または予防のための処置を必要とする対象に、有効量のリコペンおよびゲニステイン、またはリコペンおよびエピガロカテキンガレートを投与することを含む方法。
【請求項18】
成人に、1日当たり、5mg〜30mgのリコペンと、10〜100mgのゲニステインまたは50〜300mgのエピガロカテキンガレートとを投与する請求項17に記載の方法。
【請求項19】
成人に、1日当たり、15mg〜600mgのビタミンEをさらに投与する請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
成人に、1日当たり、5〜100mgのレスベラトロールをさらに投与する請求項17〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前立腺癌のコアジュバント治療方法であって、成人に、リコペンと、ゲニステインまたはエピガロカテキンガレートとを、ビタミンE、レスベラトロールおよびポリ不飽和脂肪酸と共に投与することを含む方法。
【請求項22】
成人に、1日当たり、10mgのリコペンと、30mgのゲニステインまたは300mgのエピガロカテキンガレートと、20〜37.5mgのレスベラトロールと、200〜400mgのビタミンEと、400mgのポリ不飽和脂肪酸とを投与する請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前立腺癌のコアジュバント治療方法であって、成人に、リコペンおよびゲニステイン、またはリコペンおよびエピガロカテキンガレートを、ビタミンE、レスベラトロールおよびポリ不飽和脂肪酸(誘導体)からなる群から選択される少なくとも1種の化合物と共に投与することを含む方法。
【請求項24】
対象の血液中の血漿PSA濃度を減少/低下させるための組成物を製造するための、リコペンおよびゲニステイン、またはリコペンおよびエピガロカテキンガレートの使用であって、その対象にリコペンおよびゲニステインを含む前記組成物を投与するか、またはリコペンおよびエピガロカテキンガレートを含む前記組成物を投与する使用。
【請求項25】
対象の血液中の血漿PSA濃度を減少/低下させる方法であって、そのような治療を必要とする前記対象に、有効量のリコペンおよびゲニステイン、または有効量のリコペンおよびエピガロカテキンガレートを投与することを含む方法。
【請求項26】
前立腺癌の一次および二次予防用並びに/またはそのコアジュバント治療用組成物を製造するためのリコペンおよびゲニステインの使用。
【請求項27】
前立腺癌の一次および二次予防用並びに/またはそのコアジュバント治療用組成物を製造するためのリコペンおよびエピガロカテキンガレートの使用。
【請求項28】
前立腺癌を予防または治療する方法であって、治療または予防のためにそのような処置を必要とする対象に、有効量のリコペンおよびゲニステインを投与することを含む方法。
【請求項29】
前立腺癌を予防または治療する方法であって、治療または予防のためにそのような処置を必要とする対象に、有効量のリコペンおよびエピガロカテキンガレートを投与することを含む方法。
【請求項30】
前立腺癌のコアジュバント治療方法であって、成人に、リコペンおよびゲニステインを、ビタミンE、レスベラトロールおよびポリ不飽和脂肪酸(誘導体)からなる群から選択される少なくとも1種の化合物と共に投与することを含む方法。
【請求項31】
前立腺癌のコアジュバント治療方法であって、成人に、リコペンおよびエピガロカテキンガレートを、ビタミンE、レスベラトロールおよびポリ不飽和脂肪酸(誘導体)からなる群から選択される少なくとも1種の化合物と共に投与することを含む方法。

【公表番号】特表2009−537467(P2009−537467A)
【公表日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−510341(P2009−510341)
【出願日】平成19年5月15日(2007.5.15)
【国際出願番号】PCT/EP2007/004302
【国際公開番号】WO2007/131767
【国際公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】