説明

剛性ランダムコイル及びそれを含む組成物

本発明に係る剛性ランダムコイルは、輪郭長さが直径より大きく、平均曲げ比(D)が0.1〜0.8で、重量平均分子量が1×10〜9×10g/molである剛性ランダムコイル及びそれを含む樹脂組成物または有機溶媒組成物に関するものである。剛性ランダムコイルは、高分子と剛性棒状粒子の中間性質を有し、様々な樹脂、水溶液または有機溶媒のフィラーとして使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剛性ランダムコイル及びそれを含む組成物に関する。さらに詳細には、輪郭長さ(contour length)が直径より大きく、平均曲げ比(D)が0.1〜0.8で、重量平均分子量が1×10〜9×10g/molの剛性ランダムコイル及びそれを含む樹脂組成物または有機溶媒組成物に関するものである。
【0002】
上記本発明に係る分子量及び形状がよく定義された剛性ランダムコイルは、有機溶媒または高分子と混合し、電気導電性を示すコーティング剤として使用でき、既存の棒状導電性フィラーの異方性による問題を改善し、種々の有機溶媒及び高分子の添加剤またはフィラーとして使用することができる。
【背景技術】
【0003】
一般に、電気導電性のない樹脂に電気導電性を付与する方法は、導電性カーボンブラック、カーボン繊維、セラミック繊維または金属繊維を含む樹脂組成物が広く使用されている。また、樹脂の強度を補強する目的としてもカーボンブラック、カーボン繊維、セラミック繊維または金属繊維を使用している。最近には、カーボン繊維の直径が500nm以下のナノ繊維を含む樹脂組成物に対する試みがなされてきた。
【0004】
カーボンナノチューブは、非特許文献1(Nature,354,56−58,1991)で見出され、特許文献1(日本国公開特許平6−280116号公報、公開日:1994年10月4日)で大量に合成しうる製造方法について開示している。
【0005】
特許文献2(日本国公開特許平8−231210号公報、公開日:1996年9月10日公開)は、カーボンナノチューブの分子量、サイズ及び電気導電率の差を利用し、カーボンナノチューブを分離及び精製する方法を開示している。
【0006】
また、特許文献3(日本国公開特許第2004−244490号公報、公開日:2004年9月2日)では、カーボンナノチューブの0.01重量%以上1重量%以下を含む樹脂合成物を開示している。これらは、カーボンナノチューブと樹脂との相溶性を向上させる化学的方法を提供している。
【0007】
通常、カーボンナノチューブはチューブ形態の炭素であり、直径が数nmから数十nmのサイズを有し、グラフェン層数によって、単一壁、二重壁、多重壁カーボンナノチューブに区分される。また、グラフェンのキラリティー(chirality)に従って電気的な性質が変わる。
【0008】
しかし、炭素(カーボン)は、非常に様々な形態で存在し、その構造に応じて様々な特徴が現れる。例えば、ナノ繊維の場合にも、炭素ナノコイルの場合、直径が数nmサイズでありながら、螺旋状の構造を有する場合が見つかっている(非特許文献2、Nano letters,3,1299−1304,2003)。
【0009】
このように、従来のカーボンナノチューブは、直径のサイズに関する研究が数多く行われており、その形態においても剛性棒状あるいは螺旋状が主を成しているが、剛性棒状の場合などは、特定の濃度で液晶状態を示し、相分離が発生するか、方向による強度の差が、大きく発生される問題があった。
【0010】
従って、フレキシブルチェーン形態を有する高分子(flexible chain polymer)と剛性棒状粒子(rigid rod particle)の中間性質を有する曲げられた形態、即ち、剛性ランダムコイル(rigid random coil)形態を有する粒子が、上記のような点を改善することができるものと判断されるが、これに対する研究は未だ行われていない。
【特許文献1】日本国公開特許平6−280116号公報
【特許文献2】日本国公開特許平8−231210号公報
【特許文献3】日本国公開特許第2004−244490号公報
【非特許文献1】Nature,354,56−58,1991
【非特許文献2】Nano letters,3,1299−1304,2003
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明の目的は、フレキシブルチェーン形態を有する高分子と剛性棒状粒子の中間性質を有する剛性ランダムコイル形態とを有する粒子、より好ましくは、剛性ランダムコイル形態を有する炭素粒子を提供することにある。
【0012】
本発明の別の目的は、本発明に係る剛性ランダムコイルの製造方法を提供することにある。
【0013】
本発明のさらに別の目的は、本発明に係る剛性ランダムコイルを含む樹脂組成物、有機溶液または水溶性溶液を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によって、輪郭長さが直径より大きく、下記方程式(1)で示される平均曲げ比(D)が0.1〜0.8で、重量平均分子量が1×10〜9×10g/molの剛性ランダムコイルが提供される。
【発明の効果】
【0015】
以上で説明するように、本発明は、剛性ランダムコイル及びそれを含む樹脂組成物を提供する。本発明に係る剛性ランダムコイルは、有機溶媒及び高分子と混合し、電気導電性を示すコーティング剤、プラスチックなどに用いる場合、既存の棒状導電性フィラーに比べて、等方性を示す材料を形成することができる。またプラスチックの強化剤に用いる場合にも、既存の棒状強化フィラーの異方性による問題を除去することができ、様々な有機溶媒及び高分子の添加剤またはフィラーとして用いられるなど、関連分野への利用及び応用が期待される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
上記した目的を達成するために本発明は、輪郭長さが直径より大きく、下記方程式(数2)で示される平均曲げ比(D)が0.1〜0.8で、重量平均分子量が1×10〜9×10g/molの剛性ランダムコイルに関するものである。
【0017】
【数2】

(式中、Rは末端間距離ベクトルを表し、Nはセグメントの個数を表し、bはセグメントの長さを表し、及びNbは輪郭長さを表す。)
【0018】
曲げ比が0.1以下のとき、欠損率(defect rate)が高いので、電気導電率を示すのが難しい。また、重量平均分子量が1×10g/mol以下の場合、樹脂と混合をする時、電気導電性及び剛性を示すことが難しい。一方、曲げ比が0.8以上のとき、異方性が強く現れ、等方性材料を形成することが難しく、重量平均分子量が9×10g/mol以上のとき、粒子が互いに絡ませ、均一な分散状態を得ることが難しい。
【0019】
本発明に係る剛性ランダムコイルは、特有の形状及び分子量を有し、フレキシブルチェーン形態を有する高分子と剛性棒状粒子の中間性質を有することを特徴とする。
【0020】
即ち、本発明に係る剛性ランダムコイルは、永久変形により曲がり、且つ曲げ点(bending point)の分布がよく定義されたものであり、螺旋状のコイルとは違って、また柔軟に曲げることができる繊維形態または高分子とは違った新しい形態の粒子である。本発明では、このような剛性ランダムコイルを提供し、方向に伴う物性の差を大いに改善しながら、個々に区分及び分散できる技術を提供する。
【0021】
本発明では上記した目的を達成するために剛性ランダムコイルの水力学的半径、平均直径、分子量、曲げ比、及び見掛け密度を統計的に定義して分析した。
【0022】
本発明に係る剛性ランダムコイルは、その形状がフレキシブルコイルと剛性棒状粒子の中間性質を有する。より具体的に、輪郭長さは直径より大きく、好ましくは10倍以上であり、平均曲げ比が1未満、好ましくは0.8以下である。
【0023】
ここで、上記輪郭長さが直径と同一であるか、またはその未満の場合、本発明のコイルと見られないので、輪郭長さは直径より大きくしなければならなく、平均曲げ比は曲げられた形状を実現するためには、1未満にしなければならない。
【0024】
フレキシブルコイルは、大部分の高分子が溶液状態または溶融状態のときに示される特性であり、つまり、末端間距離ベクトル(end−to−end distance vector)の自乗のアンサンブル平均(ensemble average)は方程式(数3)の通りである。
【0025】
【数3】

(式中、Rは末端間距離ベクトルを表し、rは単量体距離ベクトルを表し、Nは高分子の重合度を表し、及びbは統計的に定義された単量体の長さである。)
【0026】
一方、剛性ランダムコイル群の末端間距離ベクトル自乗の空間平均は下記方程式(数4)の通りである。
【数4】

(式中、Dは曲げ比で、Nはセグメントの個数を表し、rは長さがbで、方向がiであるベクトルを表し、及びbはセグメントの統計的長さを示す。従って、bNは輪郭長さLを表す。)
【0027】
ここで曲げ比Dは、下記方程式(数4B)に示す通りであり、φはi方向セグメントの分率(φ=N/N)を表す。
【数4B】

【0028】
上記方程式(数4)で、剛性ランダムコイルのDは、1/Nより大きく、1より小さい。Dが1/Nの場合、方程式(数4)は方程式(数3)と同様になり、フレキシブルコイルと類似の特性を示し、Dが1の場合、末端間距離が輪郭長さと同様になり剛性棒状粒子の特性を有する。
【0029】
上記平均曲げ比Dは、上記方程式(数4)により誘導された下記方程式(数1)によって輪郭長さと末端間距離を実験的に測定して決定しうる。輪郭長さ及び末端間距離はSEM、TEMまたはAFM等を通じて測定でき、平均末端間距離は静的光散乱装置(static light scattering)を介して測定することができる。
【0030】
【数1】

(式中、Rは末端間距離ベクトルを表し、Lは輪郭長さを示す。)
【0031】
また、旋回半径(radius of gyration)は、対相関関数(pair correlation function)から求めることができ、方程式(数5)の通りである。
【0032】
【数5】

(式中、aは長さが剛性ランダムコイルの末端間距離と同様の剛性棒の軸長さを表す。)
【0033】
剛性ランダムコイルが若干の柔軟性を有しているのでれば、旋回半径(R)は方程式(数6)と同じである。
【0034】
【数6】

(式中、aは方程式(数5)で定義されるように末端間距離と長さが同じ剛性棒の軸長さであり、Dは柔軟性比で、持続長さ(persistence length)の2倍を長さaで割った値である。)
【0035】
柔軟性比は、材料の曲げ係数(bending modulus)、外径及び内径、そして外径及び内径の軸方向への変化などによって決定することができる。例えば、外径が18nmの多重壁カーボンナノチューブの場合、約0.21の値を有する。旋回半径は静的光散乱、x−ray散乱、中性子小角(small angle neutron)散乱の方法から求めることができる。
【0036】
一方、剛性ランダムコイルの固有粘度は方程式(数7)で示される。
【数7】

(式中、Navoはアボガドロ数であり、VはStokes−Einsteinの拡散係数関係式から求めることができる等価の水力学的容積(V)であり、動的光散乱などの方法で並進(translational)拡散係数を測定し、求めることができる。υは、Shimha係数で、軸長さと水平方向(equatorial)半径の比であり、軸長さは末端間距離と同様であり、水平方向(equatorial)半径は測定された等価の水力学的容積から求めることができる。Shimha係数はJ.Chem.Phys.Vol23,1526−1532(1955)によく示されており、下記方程式(数8)から計算することができる。
【0037】
【数8】

【0038】
ここで、J、K、L、M、N、α、β、α′、β′、α″、β″およびAは、数8B〜数8Mに示す通りである。
【数8B】

【数8C】

【数8D】

【数8E】

【数8F】

【数8G】

【数8H】

【数8I】

【数8J】

【数8K】

【数8L】

【数8M】

【0039】
本発明に係る剛性ランダムコイルの形状は、方程式(数1)のような曲げ比として定義されうる。剛性ランダムコイルの形状及びサイズはSEM、TEMまたはAMFを使用して決定する方法の外に次ぎのような水力学的方法を用いて決定され得る。方程式(数1)で、上記末端間距離は静的光散乱法で測定した旋回半径(R)を方程式(数5)または(数6)に代入して計算することができる。また、動的光散乱法で測定された等価の水力学的半径を用いて長楕円体(prolate ellipsoid)の水平方向の容積(V=4πaR/3)を求め、水平方向半径(R)を計算し、計算された水平方向半径と方程式(数5)の軸長さaを用いて軸比(p=a/R)を計算し、これより、Shimha係数を求める。剛性ランダムコイルの固有粘度を測定し、上記計算されたShimha係数を用いて方程式(数7)から重量平均分子量を求める。輪郭長さは、上記重量平均分子量、TEMから得た層間空間(inter layer spacing)値である0.35nmとC−C結合長さ(bonding distance)である0.142nm、TEMから得た平均内径及び平均外径データから原子シミュレーション(Materials studio v4.0,Accerlrys,USA)から求めることができる。上記のように、水力学的方法により決定された輪郭長さと末端間距離の比から曲げ比を求めることができ、このように決定された剛性ランダムコイルの分子量及び曲げ比は、走査電子顕微鏡から得た映像(image)を計数(count)して求めた分子量と曲げ比と一致する。
【0040】
本発明に係る剛性ランダムコイルは、上記のような特有な形状及び動的挙動を示すものであれば、その素材に制限がないが、炭素または炭素ナノチューブで形成されたものが好ましい。
【0041】
また、本発明は上記剛性ランダムコイルの製造方法に関するものである。上記剛性ランダムコイルの製造方法は、多重壁カーボンナノチューブ凝集体または炭素繊維を超音波処理する第1工程と、第1工程の生成物に強酸を添加し、超音波処理する第2工程と、第2工程の生成物に溶媒を添加し、超音波処理する第3工程と、を含むことを特徴とする。
【0042】
上記第1工程は、多重壁カーボンナノチューブまたは炭素繊維を超音波処理し、第2工程で添加される強酸との反応を高めるための工程である。上記多重壁カーボンナノチューブは、セラミック粉末に金属触媒を担持し、化学気相蒸着装置で製造することが好ましい。セラミック粉末はアルミニウム酸化物系あるいはシリコン酸化物系を用いることができ、金属触媒としてはFe系触媒が好ましい。このような多重壁カーボンナノチューブまたは炭素繊維を超音波処理する工程は、乳化剤が添加された水溶液または精製水を用いて、20〜60Wで40〜200分間、処理することが好ましい。
【0043】
上記第2工程は、カーボンナノチューブ凝集体を切断及び分離し、セラミック粉末を溶解処理するためのものであり、第1工程の生成物に強酸を添加し、再び超音波処理する工程である。上記で、強酸は硝酸、塩酸、または硫酸を使用することができるが、これに制限されなく、超音波処理は20〜60Wで40〜200分間、処理することが好ましい。
【0044】
また、上記第3工程は、溶媒に分散するためのものであり、第2工程生成物に再び溶媒を添加し、超音波処理する工程である。上記溶媒には、テトラヒドロフラン(THF)、CHCl、またはジメチルホルムアミドなどが好ましいが、これに制限されなく、超音波処理は20〜60Wで40〜200分間、処理することが好ましい。
【0045】
一方、本発明に係る剛性ランダムコイルを製造方法は、第3工程の生成物を遠心分離し、溶液に均一に分散された部分を抽出する第4工程を含むことが好ましい。上記第4工程は、第3工程の生成物中で剛性ランダムコイルを分離するための方法として遠心分離を10〜60分間遂行した後、溶液に分散されている部分のみを収得することができる。
【0046】
また、本発明は、上記製造方法によって得られた剛性ランダムコイルを濾過し、得られる剛性ランダムコイル薄フィルムに関するものである。上記ランダムコイル薄フィルムは、上記第3工程で、溶媒または水溶液に均一に分散された剛性ランダムコイルを、気孔20〜200nmの範囲を有するセラミックまたは高分子フィルタを利用して濾過して収得することができる。ランダムコイル薄フィルムの厚さは、30nm〜10μmであり、剛性ランダムコイルのファン・デル・ワールス力によりフィルムの形態が保持されるか、別の高分子薄フィルムがコーティングされ、フィルムの形態が保持されていてもよい。本発明に係るランダムコイル薄フィルムは燃料電池の気体拡散層(gas diffusion layer)として用いられる。また、透明性、電気導電性または電磁波遮蔽特性を有するので、このような性質が要求されるタッチパネル、スイッチ、またはLCDまたはPDPなどのディスプレー装置の電磁波遮蔽透明素材として使用することができる。
【0047】
また、本発明は剛性ランダムコイルを含む樹脂組成物、有機溶液または水溶性溶液に関するものである。上記剛性ランダムコイルは、樹脂組成物、有機溶液または水溶性溶液に0.0001wt%〜30wt%含まれることが好ましい。その含量が0.0001wt%未満のとき、添加の効果が現れない。反対に、30wt%を超えると、成形が難しく、強度の低下が発生することがある。
【0048】
上記本発明の剛性ランダムコイルを含む樹脂は、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂の両方を含む。好ましい樹脂は、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタラート、ポリエチレンテレフタラート、芳香族ポリアミド、ポリアマイド、ポリスチレン、ポリフェニレンスルフィド、サーモトロピック液晶高分子、ポリスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリレート、ポリメチルメチルアクリレート、ポリビニルアルコール、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体、ポリテトラメチレンオキサイド−1,4−ブタンジオール共重合体、スチレンを含む共重合体、フッ素系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、シンジオタクチックポリスチレン、ポリノルボルネン、エポキシ系樹脂、及びフェノール樹脂よりなる群から選択された一つ以上が挙げられるが、これに制限されない。
【0049】
有機溶液の有機溶媒としてはジメチルホルムアミド(DMF)、トルエン、キシレン、メチレンクロライド、n−ヘキサン、ジメチルスルホキシド、クロロホルム、テトラヒドロフラン(THF)及び炭化水素系有機溶媒などが好ましく、水溶性溶液は各種乳化剤を含む水溶性溶液が好ましい。
【0050】
上記本発明に係る分子量及び形状がよく定義された剛性ランダムコイルは、有機溶媒または高分子と混合し、電気導電性を示すコーティング剤として使用することができる。
【0051】
また、プラスチックの強化剤として使用する場合にも、既存の棒状強化フィラーの異方性による問題、例えば、機械的強度、電気/熱導電率、線膨張係数、または収縮率問題を改善することができ、種々の有機溶媒及び高分子の添加剤またはフィラーとして使用することができる。
【0052】
以下、下記実施例及び比較例に基づいてさらに詳細に説明する。
[実施例1](剛性ランダムコイル及び薄フィルム製造)
セラミック粉末(アルミニウム酸化物系)に、金属(Fe系)触媒を担持した後、化学気相蒸着装置で製造した多重壁カーボンナノチューブ凝集体(株式会社ジェイソ社製)5gを精製水100gに入れ、40Wで180分間、超音波処理した。60%強硝酸50gを入れ、再び40Wで60分間、超音波処理し、凝集体を切断、分離し、セラミック粉末を溶解処理した。その後、精製水で洗浄し、ジメチルホルムアミド100gに入れ、40Wで180分間、超音波処理した。超音波処理された溶液を遠心分離し、得られた均一な溶液に含まれた剛性ランダムコイルの曲げ比は0.32であり、重量平均分子量は3.43×10g/molであった。このように製造された剛性ランダムコイルをフィルタリングして得られた薄いフィルムの表面抵抗は50Ohm以下と測定された。
【0053】
[実施例2]
実施例1と同じ方法によって得られたジメチルホルムアミド及び剛性ランダムコイルの均一な溶液とTHFに溶解したポリカーボネートとを混合し、剛性ランダムコイルの含量が0.5wt%含まれるようにした後、フィルムキャスティングした。このように製造された剛性ランダムコイルをフィルタリングして得られた1μm厚さの薄いフィルムの表面抵抗は104〜8Ohm/sqと測定された。
【0054】
[実施例3](炭素繊維剛性ランダムコイル)
チューブ形態でない炭素繊維を用いたことを除いては、実施例1と同じ方法で実験を行った。輪郭長さは直径の20倍、曲げ比は0.4と剛性ランダムコイルの特性を示し、剛性ランダムコイルは実施例1と同様にチューブ形態に制限されない。
【0055】
[実施例4](剛性ランダムコイル含有樹脂組成物の製造)
熱可塑性樹脂であるポリカーボネート481.3gと上記実施例1で製造された剛性ランダムコイル15g及び酸化防止剤0.2g、滑剤2.5g、ホスフェート系難燃剤15gを二軸押出機に入れ、260℃で混合し、剛性ランダムコイルを含有した樹脂組成物を製造した。
【0056】
得られた剛性ランダムコイル含有樹脂組成物の表面抵抗は104〜8Ohm/sqであり、射出成形した試片の射出流れ方向(Mold Direction)に直角方向(Transverse Direction)の曲げ強度は、射出流れ方向の曲げ強度(ASTMD790)1200kg/cmの80〜90%水準で、方向による物性の差が非常に小さく現れた。金型収縮率(ASTMD955)は射出流れ方向0.5%、直角方向0.6%と示され、方向によって、1.2倍の収縮率差により非常に優れた等方性を示した。
【0057】
[比較例1]
剛性棒状カーボンナノチューブを5g使用したことを除いては、実施例1と同じ過程でジメチルホルムアミドの均一な溶液を製造した。直径0.36mmのウベロード粘度計で濃度に応じて粘度を測定した。
上記比較例1では、輪郭長さが3000nm、測定された固有粘度は14であり、永久変形のない典型的な棒状カーボンナノチューブであることを確認することができた。
【0058】
[比較例2]
熱可塑性樹脂であるポリカーボネート481.3gと剛性棒状カーボン繊維15g及び酸化防止剤0.2g、滑剤2.5g、ホスフェート系難燃剤15gを二軸押出機に入れ、260℃で混合し、剛性棒状カーボン繊維を含有した樹脂組成物を製造した。
得られた剛性棒状カーボン繊維含有樹脂組成物の表面抵抗は109〜12Ohm/sqであった。射出成形した試片の射出流れ方向に直角方向の曲げ強度は、射出流れ方向の曲げ強度(ASTMD790)1300kg/cmの50〜60%水準で、方向による物性の差が大きく現れた。金型収縮率(ASTMD955)は射出流れ方向0.3%、直角方向0.6%と示され、方向によって、2.0倍の収縮率差が現れた。
【産業上の利用可能性】
【0059】
以上で説明するように、本発明は、剛性ランダムコイル及びそれを含む樹脂組成物を提供する。本発明に係る剛性ランダムコイルは、有機溶媒及び高分子と混合し、電気導電性を示すコーティング剤、プラスチックなどに用いる場合、既存の棒状導電性フィラーに比べて、等方性を示す材料を形成することができる。またプラスチックの強化剤に用いる場合にも、既存の棒状強化フィラーの異方性による問題を除去することができ、様々な有機溶媒及び高分子の添加剤またはフィラーとして用いられるなど、関連分野への利用及び応用が期待される。
【0060】
以上で、本発明に記載された具体例を中心にして詳細に説明したが、本発明の範疇及び技術思想範囲内で様々な変更及び修正が可能であることは当業者にとって自明なことであって、このような変形及び修正が、添付された特許請求の範囲に属することも当然のことである。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の実施例1から得られた剛性ランダムコイルのSEM写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記方程式(数1)で示される平均曲げ比(D)が0.1〜0.8で、重量平均分子量が1×10〜9×10g/molである剛性ランダムコイル。
【数1】

(式中、Rは末端間距離ベクトルを表し、Lは輪郭長さを表す。)
【請求項2】
輪郭長さが直径の10倍以上であることを特徴とする請求項1に記載の剛性ランダムコイル。
【請求項3】
上記剛性ランダムコイルは、炭素または炭素ナノチューブで形成されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の剛性ランダムコイル。
【請求項4】
剛性ランダムコイルの製造方法であって、
多重壁炭素ナノチューブ凝集体または炭素繊維を超音波処理する第1工程と、
前記第1工程の生成物に強酸を添加し、超音波処理する第2工程と、
前記第2工程の生成物に溶媒を添加し、超音波処理する第3工程と、を含むことを特徴とする剛性ランダムコイルの製造方法。
【請求項5】
前記第1工程、前記第2工程または前記第3工程の超音波処理は、20〜60Wで40〜200分間、処理することを特徴とする請求項4に記載の剛性ランダムコイルの製造方法。
【請求項6】
前記強酸は硝酸、塩酸、または硫酸であることを特徴とする請求項4に記載の剛性ランダムコイルの製造方法。
【請求項7】
前記溶媒はテトラヒドロフラン(THF)、CHCl、またはジメチルホルムアミドであることを特徴とする請求項4に記載の剛性ランダムコイルの製造方法。
【請求項8】
さらに、前記第3工程の生成物を遠心分離する第4工程を含むことを特徴とする請求項4に記載の剛性ランダムコイルの製造方法。
【請求項9】
請求項4に記載の方法によって得られた剛性ランダムコイルを濾過し、得られることを特徴とする剛性ランダムコイル薄フィルム。
【請求項10】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の剛性ランダムコイルを0.0001wt%〜30wt%含む樹脂組成物。
【請求項11】
前記樹脂組成物の樹脂は、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタラート、ポリエチレンテレフタラート、芳香族ポリアミド、ポリアマイド、ポリスチレン、ポリフェニレンスルフィド、サーモトロピック液晶高分子、ポリスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリレート、ポリメチルメチルアクリレート、ポリビニルアルコール、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体、ポリテトラメチレンオキサイド−1,4−ブタンジオール共重合体、スチレンを含む共重合体、フッ素系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、シンジオタクチックポリスチレン、ポリノルボルネン、エポキシ系樹脂、及びフェノール樹脂よりなる群から選択された一つ以上であることを特徴とする請求項10に記載の樹脂組成物。
【請求項12】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の剛性ランダムコイルを0.0001wt%〜30wt%含む有機溶液。
【請求項13】
前記有機溶液の溶媒はジメチルホルムアミド(DMF)、トルエン、キシレン、メチレンクロライド、n−ヘキサン、ジメチルスルホキシド、クロロホルム、テトラヒドロフラン(THF)及び炭化水素系有機溶媒よりなる群から選択された一つ以上を含むことを特徴とする請求項12に記載の有機溶液。
【請求項14】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の剛性ランダムコイルを0.0001wt%〜30wt%含む水溶性溶液。
【請求項15】
さらに、前記水溶性溶液は乳化剤を含むことを特徴とする請求項14に記載の水溶性溶液。

【図1】
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【公表番号】特表2009−526733(P2009−526733A)
【公表日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−555137(P2008−555137)
【出願日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際出願番号】PCT/KR2007/000434
【国際公開番号】WO2007/094573
【国際公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(500239823)エルジー・ケム・リミテッド (1,221)
【Fターム(参考)】