説明

剛性部と関節状部分とから成るプラスチック射出成形部品およびその用途

本発明は、少なくとも1つの剛性領域(11)および少なくとも1つの可撓性弾性関節状領域(12)を有するプラスチック射出成形部品(10)に関する。前記射出成形部品は、剛性領域の近傍にある少なくとも1つの射出点(1)からコインジェクション成形される様々なプラスチック組成物から、1つのキャビティ内で生産され、一方の構成要素が剛性領域を過ぎて突出し、関節状領域を形成することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの剛性部と少なくとも1つの曲げ及び/又は捩り関節状部分可撓性弾性関節状部分があるプラスチック射出成形部品およびその用途に関する。
【0002】
2つの剛性レバー及びそれを接続する可撓性区間があるプライア様工具が例として示され、レバーは剛性部分を形成し、可撓性区間は曲げ荷重を加えることができる関節状部分を形成する。
【0003】
本発明の範囲内で、剛性部分という用語は、部品に必須の形状を有する射出成形部品の特定の限界決定可能な区域を指すものと理解されたい。確立された規則に従って射出成形部品を使用する場合、および予想される力が射出成形部品に作用する場合は、この形状が基本的に維持されていなければならず、これはこの部分の特定の剛性を前提条件とする。これに対して、射出成形部品の形状の変化は、確立された規則によると、関節状部分の形成を可能にしなければならない。本発明の範囲内で、この部分を射出成形部品の特定の限界決定可能区域に割り当てることも可能であり、射出成形部品の使用および予想有効寿命の規則に関して、これに必要な十分に多数の動作を可能にしなければならない。
【背景技術】
【0004】
ハロゲン・ランプを外すためにプラスチック射出成形部品として一体部片で製造される前述のタイプのクランプが、ドイツ特許第4001135A1号で開示されている。フランス特許第2815238A1号も、着脱式端部片で補われた台所用品として、2つの把持アームおよび関節状可撓性曲げ区間を有するクランプを開示している。原則として、米国特許第4,092,776A1号で開示された切削工具は同様に設計され、2本の切削アームの自由端に金属刃を追加的に設けることができる。これらの設計全部で、射出成形部品は、一様な材料特性を有する1つのプラスチック材料で構成される。把持または切削アームに必要な相対的剛性は、これを接続する関節状曲げ部分に必要な相対的可撓性と比較すると、専ら個々の部分の断面を適切に成形することによって提供される。
【0005】
幾つかの異なるプラスチック組成物から射出成形部品を製造できる射出成形プロセスも、先行技術である。
【0006】
これに関して、第1プラスチック材料から第1段階で射出成形した部品を、第2段階で第2金型キャビティに挿入し、第2プラスチック材料を吹き付けるか、再吹き付けする2段階プロセスについて、言及しなければならない。この場合、大抵は2つの構成要素の接続部に加重することができない。手の中に快く入る軟質材料を部分的に再吹き付けした柄を有する歯ブラシを、この方法で製造した射出成形部品の例として言及することができる。
【0007】
さらに、例えばドイツ特許第19722551A1号で開示されているように、少なくとも2つのプラスチック組成物を、1つのプロセスの異なる点または時間で、同じ射出成形用金型(キャビティ)に射出する複数構成要素の射出成形プロセスが知られている。
【0008】
プラスチック組成物を異なる射出点から同じ金型キャビティに同時に射出する場合、これをバイインジェクションと呼ぶ。この場合は、キャビティ内で2つの溶融構成要素が合う接続継ぎ目が形成される。接続継ぎ目は、常に射出成形部品に特定の弱体化を引き起こし、これはF. Johannaber、W. Michaeliの「Handbuch Spritzgiessen」(Carl Hanser Verlag、ミュンヘン、2002年、367ページ中央)から当業者には知られている。
【0009】
したがって、射出成形の成形において、接続継ぎ目を射出成形部品の負荷を受けない区域に配置するように試みられる。
【0010】
プラスチック組成物(装入材料)を同じ射出点から同じ金型中へと次々に射出する場合は、これをコインジェクションと呼ぶ。この場合は、最初に射出されたプラスチック組成物が、射出成形用金型の壁に最初に落ち着き、次に流れおよび冷却状態のせいで、射出成形部品の表面に落ち着き、したがって、芯および外部コーティングがある部品は通常、このプロセス中に形成される。
【特許文献1】ドイツ特許第4001135A1号
【特許文献2】フランス特許第2815238A1号
【特許文献3】米国特許第4092776A1号
【特許文献4】ドイツ特許第19722551A1号
【非特許文献1】F. Johannaber、W. Michaeliの論文「Handbuch Spritzgiessen」(Carl Hanser Verlag、ミュンヘン、2002年、367ページ中央)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記で説明した最新技術を鑑みて、本発明の目的は、上記でまさに言及したタイプのプラスチック射出成形部品を示すことであり、製造プロセスによって決定される設計および材料により、使用する際に更なる利点を有するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的は、請求項1で示した特徴の結果として、少なくとも1つの剛性部分および少なくとも1つの可撓性弾性関節状部分があるプラスチック射出成形部品の場合で達成される。
【0013】
したがって、本発明によるプラスチック射出成形部品は、1つのキャビティ中で剛性部分の領域にある少なくとも1つの射出成形点でコインジェクション成形される異なるプラスチック組成物から製造され、1つの構成要素のみが剛性部分から突出し、関節状部分を形成することを特徴とする。
【0014】
最も単純なケースでは、プラスチック射出成形部品の製造中に、キャビティは変化しないままである。しかし、本発明の範囲内で、例えば2次キャビティで内部気圧法を適用するために、スライド付きの拡張可能なキャビティを使用することも可能である。
【0015】
この射出成形の範囲内で、「コインジェクション成形した」、「コインジェクション成形」または「コインジェクション・プロセス」という用語は、例えばF. Johannaber、W. MichaeliのHandbuch Spritzgiessen(Carl Hanser Verlag、ミュンヘン、2002年、490ページ図6.64および505ページ最上部)で言及されているような比較的狭い意味の先行技術のコインジェクションのみではなく、ノズルまたは射出成形点を通して2つ以上のプラスチック組成物が連続的に射出成形される同様または同等の全てのプロセスも指すことが理解される。これに関しては、例えばドイツ特許第3932416A1号で開示されているような単サンドイッチ・プロセスに言及しておかねばならない。
【0016】
したがって、本発明の結果、上述したコインジェクション・プロセスは、剛性および関節状部分がある部品の製造に、新しい方法で使用される。使用するプラスチック組成物のうち1つのみで十分な量を射出して、射出成形用金型内で製造すべき部品の関節状部分の区域に実際に到達し、充填可能であることを保証する。
【0017】
他方で、射出点が配置構成された剛性部分の区域に留まるように、少なくとも1つのさらなるプラスチック組成物を、量に関して必要な大きさにする。したがって、剛性部分の区域にはコア・シェル構造のみが形成され、関節状部分は、1つのプラスチック組成物のみで形成され、これが剛性部分の先まで流れている。適切な材料を選択すると、これは関節状部分の可撓性を改善し、剛性部分の剛性を向上させることが明白である。
【0018】
個々のプラスチック組成物を関節状部分関節状部分の区域に駆動するか、および一様に同心のコア・シェル構造を形成するかの決定は、溶融状態の様々なプラスチック組成物の粘度の選択または調節によって影響され、制御される。外部コートを形成するためには、コアを形成する構成要素より溶融粘度が低いものを、プラスチック組成物に選択すると有利である。
【0019】
好ましい設計によれば、関節状部分を形成するプラスチック組成物を最初に射出し、その後にのみ少なくとも1つの更なる構成要素を射出する。関節状部分を形成するプラスチック組成物は、剛性部分の外部コートを形成し、残りのプラスチック組成物は補強コアを形成する。この場合、プラスチック成形部品の全表面は、関節状部分に使用する材料で決定されるので、その表面特性を考慮せずに、使用する残りの構成要素を選択することができる。これによって、繊維強化または鉱物強化プラスチックを優先的に使用することができる。
【0020】
この設計では、プロセスによって、仕上げた部品では補強コアの剛性部分の幅が減少する。関節状部分へと流れ出てしまうからである。これによって、曲げ剛性および応力に関して負荷を受けることが好ましい連続的遷移部を、剛性部分と関節状部分の間に形成することができる。したがって、臨界応力ピークが低下する。
【0021】
代替設計では、関節状部分を形成するプラスチック組成物は、少なくとも1つのさらなるプラスチック組成物が射出されるまで射出されず、その結果、剛性部分の内側に落ち着き、例えば剛性部分のさらなるコアを形成する。最初に射出されるプラスチック組成物は、ここでは剛性部分のさらに剛性の外部コートを形成する。この設計を達成するために、その後に射出されるプラスチック組成物は、関節状部分に貫入するために、以前に射出したプラスチック組成物を通り抜けねばならない。
【0022】
本発明のさらなる設計では、規則に従って射出成形部品を使用する場合に、剛性部分を変形せずに力を加えることができるレバーとして、剛性部分を設計することができる。
【0023】
関節状部分を形成するプラスチック組成物には、熱可塑性エラストマ、ポリアミド、ポリエーテルアミド、ポリエステルアミド、ポリカーボネート、ポリウレタンおよびイオノマーが適切である。本明細書では、ホモポリアミド、コポリアミドおよびホモおよび/またはコポリアミドの混合物の一般的用語として、ポリアミドを提示する。
【0024】
好ましいポリアミドはポリアミド(11)、ポリアミド(12)、ポリアミド(6)、ポリアミド66、部分芳香族ポリアミド、およびポリアミドPACM12およびポリアミドMACM12のような脂環式モノマ成分があるポリアミド、さらにこれらのプラスチックの混合体である。名称については、S. Schaafの「Polyamide, Werkstoffe fur die High-Technologie und das moderne Leben(ポリアミド、ハイテクおよび現代生活の材料)」(Verlag Moderne Industrie、Landsberg、1977)を参照されたい。
【0025】
特に好ましいのは、ポリアミドMACM12という透明なポリアミドで、GrilamidX TR 90という名前でEMS-CHEMIE AG(CH-7013Domat/Ems)から入手可能である。
【0026】
ポリブチレンテレフタレートは、一般的にはこれもポリアミドであり、剛性部分のプラスチック組成物と見なすことができる。3つの繊維または鉱物で補強されたプラスチックが好ましい。特に好ましいのは、ポリアミド66とポリアミド61/6Tのガラス繊維で強化した混合物の材料Grivory E GVで、EMS-CHEMIE AG(CH-7013Domat/Ems)から入手可能である。
【0027】
上述したポリアミドは据えて、通常の補助材料、充填剤および添加剤、例えば染料、安定剤、切り欠き棒靱性変性剤、接着性変性剤、可塑剤、顔料などを含むことは明白である。
【0028】
最新技術に属するものとして言及したばかりの部品は、剛性部分を関節状部分の両側に設け、両方の剛性部分を可動状態で関節状部分によって相互に接続するクランプなどである。
【0029】
このような射出成形部品は、本発明によると、上述したバイインジェクション・プロセスの性質に応じて、少なくとも1つの射出点から両方の剛性部分の区域に同時に射出することによって製造することができる。しかし、この場合は射出点の少なくとも1つでコインジェクションを実行することができる。
【0030】
しかし、この場合は、各射出点で異なるプラスチック組成物をコインジェクション成形することが好ましく、従って、例えばクランプの場合は、両方の把持アームに補強コアを設ける。
【0031】
幾つかの射出点から同時に射出するので、既に説明したように接続継ぎ目が必然的に形成される。しかし、驚くべきことに、適切な材料、特に既に言及したポリアミドMACM12を選択すると、関節状部分の接続継ぎ目を、この部分を大幅に弱体化させることなく容易に装入できることが判明し、これは対称形部品の製造では非常に有利である。
【0032】
本発明の範囲内で、関節状部分を形成するプラスチック組成物が、残りのプラスチック組成物のうち少なくとも1つより可撓性であることが好ましく、4000MPa未満、好ましくは2500MPa未満、特に約1600MPaの引っ張り弾性率を有することが好ましい。後者は、ポリアミドMACM12の材料に当てはまる。しかし、残りのプラスチック組成物のうち少なくとも1つは、4000MPaを超える、好ましくは88000MPaを超える引っ張り弾性率を有するか、繊維及び/又は鉱物で補強する、あるいはその両方でなければならない。これは、例えば剛性部分について言及したプラスチック組成物にも当てはまる。いずれの場合も、剛性部分の材料は、可撓性部分の材料より高い引っ張り弾性率を有する。
【0033】
既に言及したように、関節状部分を形成するプラスチック組成物は、射出成形部品の所期の用途に鑑みて、十分な交互屈曲強さを有していなければならない。既に言及したポリアミドMACM12の材料は、他の全てのアミドと比較した場合に、非常に優れた交互屈曲強さを有する。
【0034】
本発明の目的は、請求項17および18に示す用途も含む。
本発明について、図面に関連して実施形態に関して以下でさらに詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
図1に示す射出成形部品は、例えば剛性部分として取っ手11を有するドア取っ手10であり、その一方端では可撓性関節状部分12に、これに接続された係留部品13を設ける。係留部品13により、ドア取っ手10をドア(図示せず)にしっかり接続することができる。可撓性関節状部分12があるので、ある種のレバーとして働く取っ手11が、係留部分13に対して動作することができ、したがって例えばドア、およびドア・ロックのロックを、他方端に形成したフック14で解放することができる。自転車のブレーキ・レバーの場合は、フック14が省略されるのは明白である。他方で、ブレーキ・レバーの係留部品13は、この場合では、ハンドル・バーとして直接設計することができ、さらなる変形では、コインジェクション成形した警笛(警笛ハンドル・バー)でもよい。ドア取っ手10は、矢印で指示した射出点1から2つの異なるプラスチック組成物15および16をコインジェクション成形することによって製造され、図1では明るい部分で指示したプラスチック組成物15を最初に金型に射出し、図1では影で表したプラスチック組成物16を、2番目に金型に射出する。この場合、両方のプラスチック組成物は、一方が他方の内側に落ち着き、最初に射出したプラスチック組成物15が外側になり、その後に射出したプラスチック組成物16が内側になる。図1b)を理解するために、例えば外部のプラスチック組成物15が透明であり、プラスチック組成物16が不透明であるか、少なくとも外部構成要素15とは異なる色であると仮定することができ、したがって内部プラスチック組成物16を外部構成要素15の中で識別することができる。実際には、言うまでもなくこのような必要はなく、例えば好ましいポリアミドMACM12のような透明プラスチックを外部プラスチック組成物15として使用する場合は、特に真珠層の光沢顔料または金属顔料などの効果顔料を使用すると、外部プラスチック組成物15で3次元の深さ効果がある装飾的な特殊効果を達成することができる。このような顔料は、プラスチック組成物に直接送られる液体分散染料として、射出成形用押出機の入口に直接投与することが最も簡単である。以下で説明する例にも同じことが当てはまり、この状況にはさらには言及しない。
【0036】
以上を鑑みて、プラスチック組成物15は、射出点とは別のドア取っ手10(または自転車のハンドル・バー、または他のレバー)の全表面を覆う。しかし、2つのプラスチック組成物の射出条件および量の比率、さらに粘度は、最初に射出したプラスチック組成物15のみが、ドア取っ手11の区域を越えて可撓性関節状部分12の区域および係留部品13の区域へと射出成形用金型内に貫入できるように選択された。
【0037】
他方で、プラスチック組成物16は、射出後に取っ手の区域を越えて貫入することができず、可撓性関節状部分12の方向に流れ続け、断面が収縮する。したがって、両方のプラスチック組成物によって取っ手11のみが形成される。図1のドア取っ手の製造方法および所期の使用法に鑑みて、プラスチック組成物15には、溶融状態で射出した場合に、可撓性関節状部分12によって、十分に高い交互屈曲強さが設けられた構成要素16より低い粘度であることを特徴とし、ドア取っ手10の表面コーティングとして、把持するのに都合が良い滑らかな表面を生成するものを選択することが好ましい。既に言及した製品ポリアミドMACM12は、この目的にとって理想的である。他方で、プラスチック組成物16の場合は、取っ手11の十分に高い剛性および強度により、溶融状態で比較的高い粘度を有し、固化した状態では高い曲げ剛性および強度を有するような構成要素を優先的に選択する。プラスチック組成物16は、特に繊維強化した塊でよく、必要に応じてリサイクル材料で構成してもよい。既に言及した製品Grivory Q3 GV、つまりポリアミド66とポリアミド61/6Tのガラス繊維で強化した混合物が、この目的にとって理想的である。言及した製品も、上述した射出成形部品に使用することができる。
【0038】
プラスチック組成物16は、コア材料として形成することもできる。
【0039】
図2は、ドア取っ手20、剛性部分としての取っ手21、および一体の取っ手プレート24に関して、複雑な設計の部品でも本発明を利用できることを示す。取っ手21を取っ手プレート24に接続する可撓性関節状部分を、22で示す。
【0040】
図3は、(a)として、剛性部分としてのある種のカバー31、その上に成形された可撓性関節状部分32、および係留部品33を有する密封フラップ30の形態で、本発明によるさらなる射出成形部品を斜視図で示す。カバー31は2つのプラスチック組成物35および36で構築され、外部プラスチック組成物35が、可撓性関節状部分32および係留部品33も形成するカバー31内になる。この基本的構造のために、フラップを単純なレバーと見なすと、図1のドア取っ手に対応する。図3は、(b)として、パイプ・システム37に設置された密封フラップ30を示し、係留部品33がパイプ壁に係留され、カバーが一方向弁または逆止め弁の方法でパイプ開口を密封する。
【0041】
図4(a)は、本発明による完全に異なる射出成形部品として眼鏡のフレーム40を示し、2つの可撓性関節状部分が設けられている。眼鏡フレーム40では、両方の眼鏡つる41および42がコインジェクション成形され、それぞれ本発明による可撓性関節状部分43および44によって、剛性部分としてグラスを保持する前部フレーム区間45に接続され、したがって眼鏡つるの連結に使用する通常の機械的蝶番がなくて済む。眼鏡を着用すると、つるが快いほど小さい圧力で頭部に載る。眼鏡フレーム40は、2つの異なるプラスチック組成物47および48を射出点1から矢印で指示する鼻橋へとコインジェクション成形され、明るい色で示したプラスチック組成物47を最初に金型に射出し、暗い色で示したプラスチック組成物48を2番目に射出する。プラスチック組成物47は、フレーム部品45の外部エンベロープ、2つの眼鏡つる41および42、および両方の可撓性関節状部分43および44を形成する。他方で、プラスチック組成物48は、補剛芯45のみを形成する。グラスは、付随的に従来の方法で好ましくはクリップ方法でフレーム部品45に挿入する。あるいは、透明プラスチックのグラスまたはレンズをフレーム部品45に直接射出することも可能である。
【0042】
既に言及したポリアミドMACM12は、この目的にとっても理想的である。この材料は、光学用途でもEMS-Chemie AG(CH-7012 Domat-Ems)から商品名CrilamideS TR90で販売されている。
【0043】
中実の眼鏡フレームのさらに開発した変形が図4(b)に図示されている。ここでは、2つのつる41および42が、端部にある2つの追加的射出口1からコインジェクション成形することによって、端部から補強されている。
【0044】
図5(a)は、本発明による射出成形部品の基本的実施形態をプライア様工具50aの形態で示し、これが関節状部分の両側に設けられ、その部分によって相互に可動状態で接続される。プライア様工具50aは手工具として設計され、剛性部分に寸法が安定した2つの作動用柄51および52を有し、これは可撓性の弾性可撓性関節状部分53によって相互に接続される。
【0045】
プライア様工具50aは、各作動用柄51および52の自由端にある射出点から同時射出によって製造され、2つの異なるプラスチック組成物55および56が、上述した例と同様にこれら2つの射出点1それぞれでコインジェクション成形される。製造プロセスは、相応して2つのプロセス、つまりバイインジェクションとコインジェクションの組み合わせを特徴とする。
【0046】
プライア様工具50aおよび可撓性関節状部分53の表面を形成するプラスチック組成物55は、常に最初に射出される。常に次に射出されるプラスチック組成物56は、両方の作動用柄51および52の剛化芯を形成する。
【0047】
2つの射出点1からの同時射出は、必然的にプライア様工具50aに接続継ぎ目を生じさせ、ここで2つの射出点を介して射出された装入材料が金型キャビティ内で合流する。対称性の理由で、57で示すこの接続継ぎ目は、プライア様工具50a内の関節状部分53に落ち着く。既に述べたように、接続継ぎ目は常に射出成形部品の弱点を構成するが、驚くことに、プラスチック組成物55に関して既に数回言及したポリアミドMACM12の製品を最初に射出すると、この場合は接続継ぎ目の領域に認識できるほどの弱化が生じず、機械的欠点もない状態で、高い引っ張りおよび曲げ負荷を受ける曲げ加熱状部分の中心に挿入することができる。
【0048】
図5(a)で概略的に示すプライア式工具50aは、多種多様な異なる手工具を表す。例えば、ピンセット、連結箸(通常の箸より保持し易い)、台所用サラダ・サーバ、ニンニク潰し、ねじ式缶蓋のオープナ、切断および締め付け用機械工具(様々なクランプ)、またはフィットネス装置(例えばハンド・スプリング)である。ピンセット様手工具の場合、2つの脚部の内側は、相互に押しつけると、2つの作動用柄が可撓性部分付近では接触せず、端部のみで接触するように、図5(a)で示すより細い設計にしなければならないことが明白である。
【0049】
本発明によるプライアの特殊設計の変形が、クルミ割り50bである。このような装置は、人間工学的設計を考慮して、図5(b)の外部輪郭で図示され、それと同時に優雅な美学によっても強化されている。クルミ割りではよくあるように、作動用柄51および52には、関節状部分に接続する区域にクルミを保持して割るための窪み54が設けられる。両方の作動用柄が高い剛性および強度も有することが論理的である。
【0050】
図5(c)は、細長い二重レバー50cを概略的に示す。対応する関節状部分58は、可撓性接合部および捩り接合部の両方を組み込んでよい。このような部品には、(インプラントまたは人工装具として)医療分野の用途も想定される。
【0051】
図6は、本発明による細長い二重レバーについて、歯ブラシ60の形態のボディ・ケアの分野からの例を示し、ここでは剛性部分が関節状部分の両側に設けられ、この部分によって相互に可動状態で接続される。剛性部分の一方は柄61で、他方は歯ブラシの頭部62で形成される。これは可撓性首部分63によって接続される。この射出成形部品は、2つの異なるプラスチック組成物65および66のバイインジェクションおよびコインジェクションによって製造され、プラスチック組成物65は歯ブラシ60の外部外被を形成し、可撓性首部分およびプラスチック組成物66がそれぞれ、柄61および頭部62の剛化芯を形成する。
【0052】
図7は、剛性部分および関節状部分がまだ射出成形用金型キャビティ内にある射出成形部品70を示し、関節状部分62を形成するプラスチック組成物75が部分71の内側に配置構成され、さらなるプラスチック組成物76が剛性部分61の硬質外部コーティングを形成する。
【0053】
これは、製造中に最初にプラスチック組成物76を金型キャビティ内に射出し、プラスチック組成物75がそれに続くことによって達成される。その後に射出されるプラスチック組成物75は、この場合は関節状部分72に貫入するために、先に射出したプラスチック組成物76を通り抜けねばならない。
【0054】
図8は、剛性部分81および関節状部分82がまだ射出成形用金型内にある射出成形部品80の更なる設計を示し、剛性部分81が3つのプラスチック組成物83、86および87で形成され、これは86、85および87の順番で射出されている。これは、剛性部分81内に追加の剛化芯がある図7による構造を生成する。
【0055】
上記の例は、本発明の多数の異なる物体に使用できることを示す。これは、剛性部分が、レバーなどのように高い曲げおよび/または捩り負荷を受けることができ、規則に従って力を加えることができる部品であることも示す。しかし、本発明による設計には、スナップ・ホックおよび(例えばボールペンの)クリップのような中位に負荷がかかる部品にも有用な利点がある。最後に、これらの例は、関節状部分が、交互曲げおよび捩りに抵抗力があり、少なくとも他の機能的部分からは基本的に独立して、規則に従って限界を決定できるように設計され、別の機能的部分のランダムな突出部又はこのような部分の一帯部品を形成するばかりでなく、複数の機械的接合部又は別個の再調節ばねがある蝶番によって実行されるような機械的関節ばね機能も実行する射出成形部品の部分であることを示す。
【0056】
従来通りの機械的解決法と比較すると、本発明は以下の利点を有する。つまり、アクセスできない隅部がある蝶番がなく、潤滑剤がなく、付着物がなく、効果的な洗浄が可能であることである(衛生分野の要求も満たす)。
【0057】
さらに、その有効寿命を通して摩耗せず、保守不要であり、一様な精度を維持する。UV安定剤を含むプラスチックは、(外部コーティング用に)屋外での用途にも使用することができる。好ましいポリアミドMACM12(Grilamide TR90)は、耐化学物質性であり、(UV安定剤があるので)劣悪な天候条件でも安定している。洗濯機にも耐え、食品用途にも認可されている。
【0058】
本発明による射出成形部品の有利な用途は、特に台所、家庭用電化製品、オフィス、産業、自動車、自転車、機械的および電化製品エンジニアリング、スポーツ、レジャー、食品加工、ボディ・ケアおよび医学の分野で可能である。
【0059】
本発明の範囲内で、必要に応じて本発明による射出成形部品を再機械加工することも可能であることに留意されたい。再機械加工とは、例えば同じ(しかし広げた)キャビティまたは別のキャビティ内に再射出または射出することによって、他のプラスチックに片手接続するという意味に理解される。しかし、再機械加工は、研磨、ラッカ塗りおよびめっきなどの全ての表面仕上げも含むことは明白である。他の材料との組み合わせも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】例えばドアの取っ手または自転車のブレーキ・レバーとして使用することができる可撓性接合部が一方側に接続されたレバーの形態である本発明による射出成形部品を、a)射出成形用金型中の断面図及びb)一方のみの側面図として2つの図で示す。
【図2】一体の取っ手プレートがあるドアの取っ手として設計され、特に自動車のドアとして使用できるが、部屋または家のドアにも使用可能である本発明による射出成形部品の更なる設計を示す図。
【図3】(a)一方側に可撓性接合部を設けたフラップの形態、および(b)パイプ・システムの密封フラップとして設置された本発明による射出成形部品を斜視図。
【図4】(a)および(b)として、本発明による射出成形部品を形成するフレームを有し、両方のつるが本発明による可撓性関節状部分によって射出成形され、寸法的に安定した前部フレーム区間に着脱式に接続され、前部フレーム区間のみが補強された眼鏡、およびb)つるも端部から補強されている変形を示す斜視図。
【図5a】可撓性弾性関節状部分によって相互に接続された2つの剛性部分を有する二重レバーの形態の本発明による射出成形部品を示し、寸法が安定した2つの作動用柄を有し、原則的にプライアおよびピンセットの両方であるプライア様工具50aを示す図。
【図5b】本発明によるクルミ割り50bの外部輪郭を示す図。
【図5c】可撓性及び/又は捩り接合部がある細長い二重レバー50cを示す図。
【図6】寸法が安定した頭部、寸法が安定した柄、及びこれら部品の両方を接続する可撓性首部分がある歯ブラシの形態の本発明による射出成形部品を示す。
【図7】剛性および関節状部分を有し、まだ射出成形用金型の中にあり、関節状部分を形成するプラスチック組成物が剛性部分の内側に配置構成され、更なるプラスチック組成物が剛性部分の硬質外部コーティングを形成する射出成形部品を示す断面図。
【図8】剛性および関節状部分を有し、まだ射出成形用金型の中にあり、剛性部分が3つのプラスチック組成物によって形成された射出成形部品を示す断面図。
【符号の説明】
【0061】
1 射出点
10 ドア取っ手
11 取っ手
12 可撓性関節状部分
13 係留部品
14 フック
15 プラスチック組成物
16 プラスチック組成物
20 ドア取っ手
21 取っ手
22 可撓性関節状部分
24 取っ手プレート
30 密封フラップ
31 蓋
32 可撓性関節状部分
33 係留部品
35 プラスチック組成物
36 プラスチック組成物
37 パイプ・システム
40 眼鏡フレーム
41 眼鏡つる
52 眼鏡つる
43 可撓性関節状部分
44 可撓性関節状部分
45 フレーム部品
47 プラスチック組成物
48 プラスチック組成物
50a プライア様工具
50b クルミ割り
50c 細長い二重レバー
51 作動用柄
52 作動用柄
53 可撓性関節状部分
54 クルミを割る窪み
55 プラスチック組成物
56 プラスチック組成物
57 接続継ぎ目
58 可撓性および/または捩り関節状部分
60 歯ブラシ
61 柄
62 頭部
63 可撓性首部分
65 プラスチック組成物
66 プラスチック組成物
70 射出成形部品
71 剛性部分
72 関節状部分
75 プラスチック組成物
76 プラスチック組成物
80 射出成形部品
81 剛性部分
82 関節状部分
85 プラスチック組成物
86 プラスチック組成物
87 プラスチック組成物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの剛性部分と少なくとも1つの可撓性弾性関節状部分を有するプラスチック射出成形部品であって、単一のキャビティ内で剛性部分の領域にある少なくとも1つの射出点にて共に射出成形される異なるプラスチック組成物から製造され、一方の組成物のみが剛性部分から突出し、関節状部分を形成することを特徴とする射出成形部品。
【請求項2】
関節状部分を形成するプラスチック組成物が、剛性部分を包む外被を形成し、剛性部分の同一射出点から共に射出成形され他方のプラスチック組成物が、剛性部分の剛化芯を形成する、請求項1に記載の射出成形部品。
【請求項3】
剛化芯が剛性部分内で収縮して、関節状部分に向かって流れることを特徴とする請求項2に記載の射出成形部品。
【請求項4】
関節状部分を形成するプラスチック組成物が、剛性部分の内側に配置され、剛性部分の同一射出点で共に射出成形される別のプラスチック組成物の少なくとも1つが、剛性部分のさらに剛性な外被を形成することを特徴とする、請求項1に記載の射出成形部品。
【請求項5】
剛性部分がレバーとして形成されることを特徴とする請求項1から4いずれかに記載の射出成形部品。
【請求項6】
関節状部分の両側に、その部分によって相互に可動状態で接続された剛性部分を有することを特徴とする、請求項1から4いずれか1つに記載の射出成形部品。
【請求項7】
両方の剛性部分の領域にある少なくとも1つの射出点から同時に射出して製造されることを特徴とする、請求項6に記載の射出成形部品。
【請求項8】
異なるプラスチック組成物が、これらの射出点それぞれで共に射出成形されていることを特徴とする、請求項7に記載の射出成形部品。
【請求項9】
関節状部分に接合継ぎ目を設けることを特徴とする、請求項1から8いずれかに記載の射出成形部品。
【請求項10】
関節状部分を形成するプラスチック組成物が、他のプラスチック組成物の少なくとも1つより曲げおよび/または捩り軟度が高く、好ましくは20%、さらに好ましくは50%も軟らかく、これらプラスチック組成物の引っ張り弾性率が絶対値で好ましくは4000MPa未満、さらに好ましくは約1600MPaであることを特徴とする、請求項1から9いずかに記載の射出成形部品。
【請求項11】
他のプラスチック組成物のうちの少なくとも1つが、4000MPaを超える、好ましくは8000MPaさえも超える引っ張り弾性率を有するか、繊維および/または鉱物で強化することを特徴とする、請求項10に記載の射出成形部品。
【請求項12】
関節状部分を形成するプラスチック組成物が熱可塑性エラストマであるか、ポリアミド、ポリエーテルアミド、ポリエステルアミド、ポリカーボネート、ポリウレタンおよびイオノマーのグループから選択される、あるいはその両方であることを特徴とする請求項1から11いずれかに記載の射出成形部品。
【請求項13】
関節状部分を形成するプラスチック組成物がポリアミドであり、ポリアミド(11)、ポリアミド(12)、ポリアミド(6)、ポリアミド(66)、部分的芳香族ポリアミド、脂環式モノマ成分があるポリアミド、およびこれらのプラスチックの混合体が好ましいことを特徴とする請求項12に記載の射出成形部品。
【請求項14】
循環式モノマ成分があるポリアミドがポリアミドPACM12、ポリアミドMACM12またはコポリアミドまたはこれらのプラスチックの混合物であり、ポリアミドMACM12が好ましいことを特徴とする、請求項13に記載の射出成形部品。
【請求項15】
関節状部分を形成するために使用するさらなるプラスチック組成物が、ポリブチレンテレフタレートまたはポリアミドであり、このプラスチック組成物を繊維および/または鉱物で強化することが好ましいことを特徴とする、請求項1から14いずれかに記載の射出成形部品。
【請求項16】
繊維強化ポリアミドが、ポリアミド66およびポリアミド61/6Tのガラス強化混合体であることを特徴とする請求項15に記載の射出成形部品。
【請求項17】
台所、家庭用電化製品、オフィス、産業、自動車、自転車、機械的および電化製品エンジニアリング、スポーツ、レジャー、食品加工、ボディ・ケアおよび医学の分野において使用する請求項1から16いずれかによる射出成形部品。
【請求項18】
ドア取っ手、自転車のブレーキ・レバー、スナップ・ホック、クリップ、密封フラップ、眼鏡フレーム、歯ブラシ、プライア、ピンセット、機械工具、箸、サラダ・サーバ、ニンニク潰し、缶オープナ、クランプ、クルミ割り、フィットネス器具、インプラントまたは人工装具として使用する請求項1から16いずれかによる射出成形部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2007−506570(P2007−506570A)
【公表日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−515627(P2006−515627)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【国際出願番号】PCT/CH2004/000412
【国際公開番号】WO2005/002826
【国際公開日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(505477383)エムス−ヒエミーアーゲー (1)
【Fターム(参考)】