説明

剤供給装置

【課題】体毛処理装置の使用時の冷感やべた付き感が少なく、かつ肌滑り性を向上させるとともに、体毛処理効率を高めることができる剤供給装置を提供する。
【解決手段】本発明の剤供給装置1は、体毛処理装置2を着脱自在に支持する支持部11と、この支持部11で支持された体毛処理装置2のヘッド部3に除毛の際に用いられる処理剤を供給する剤供給部12とを備え、ヘッド部3に供給する処理剤は、エタノール、イソプロピルアルコールなどの常温で蒸気圧を有する液体と、粒径が0.5〜50μm程度の多孔質体からなる粉体とを主成分として構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除毛処理として体毛を剃ったり引き抜いたりする体毛処理装置に処理剤を供給する剤供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来電気かみそりや脱毛装置などの体毛処理装置の除毛処理を行うヘッド部に、シェービングローションなどの処理剤を供給する剤供給装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。これにより、除毛処理に於いてヘッド部から肌面に処理剤が塗布されて肌面の滑り性が向上する。また、体毛処理装置の中には除毛処理中に肌面に処理剤を供給する剤供給部を備えるものもある。
【特許文献1】特開2003−210874号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記の特許文献1に記載されているような従来の剤供給装置では、処理剤が全て揮発成分ないし液状成分であり、この液状処理剤を肌に吐出させつつ体毛の処理を行うため、処理剤である液が肌に接触する際に冷感やべた付き感などの不快感が生じる。また、処理剤が低級アルコールと水とを主成分とし、処理剤の成分は全て揮発成分ないし液状成分で構成されていることから、処理すべき体毛が処理前に液状の処理剤を介して皮膚に密着していまい、体毛の処理効率が低下するといった課題や、処理した体毛の一部が液状の処理剤を介して再び皮膚に付着してしまうといった課題を有している。
【0004】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、体毛処理装置の使用時の冷感やべた付き感が少なく、かつ肌滑り性を向上させるとともに、体毛処理効率を高めることができる剤供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、本発明にかかる請求項1記載の剤供給装置は、体毛処理装置を着脱自在に支持する支持部と、この支持部で支持された体毛処理装置のヘッド部に除毛の際に用いられる処理剤を供給する剤供給部とを備え、前記ヘッド部に供給する処理剤が液体と粉体とを主成分として構成されていることを特徴とするものである。
【0006】
また、請求項2記載の剤供給装置は、ヘッド部に供給する処理剤の液体成分は、エタノール、イソプロピルアルコールなどの常温で蒸気圧を有するものであることを特徴とするものである。
【0007】
また、請求項3記載の剤供給装置は、ヘッド部に供給する処理剤に、抗菌剤成分が含まれていることを特徴とするものである。
【0008】
また、請求項4記載の剤供給装置は、ヘッド部に供給する処理剤に保湿成分が含まれていることを特徴とするものである。
【0009】
また、請求項5記載の剤供給装置は、ヘッド部に供給する処理剤の保湿成分が、液体成分に溶解し、かつ乾燥後には粉体又は結晶状になることを特徴とするものである。
【0010】
また、請求項6記載の剤供給装置は、ヘッド部に供給する処理剤に含まれる粉体が、多孔質体であることを特徴とするものである。
【0011】
また、請求項7記載の剤供給装置は、ヘッド部に供給する処理剤に含まれる粉体は、その粒径が0.5〜50μmであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明によれば、処理剤が液体と粉体を主成分として構成されているので、除毛を行うヘッドに塗布された処理剤の液状成分を乾燥させると、ヘッドには粉体を含む固形成分が単独、あるいは主成分として残るため、体毛処理装置の肌滑り性を向上させながら、体毛処理装置のヘッドを肌に当てたときの冷感やべた付き感を低減することできる。
【0013】
また、請求項2記載の発明によれば、ヘッド部に供給する処理剤の液体成分は、エタノール、イソプロピルアルコールなどの常温で蒸気圧を有するものであるので、常温で容易に揮発するため、比較的短時間で冷感やべた付き感が生じなくなるとともに、体毛処理装置で体毛を処理する際に、従来、課題であった液状の処理剤を介して体毛と肌が密着することによる体毛処理効率の低下を抑制することができ、さらに処理した体毛の一部が処理剤を介して再び皮膚に付着することを防止することができる。さらにまた、このような処理剤は万が一、肌に接触しても安全性が高く、安価である上、抗菌性を有しているため、抗菌成分としても兼ねることが可能である。
【0014】
また、請求項3記載の発明によれば、ヘッド部に供給する処理剤に抗菌剤成分が含まれているので、噴霧経路を通じての細菌汚染を防ぐことができ、噴霧する処理剤を衛生的に維持することができると共に、生物膜形成による流路の閉塞を防ぐことができる。
【0015】
また、請求項4記載の発明によれば、処理剤に保湿成分が含まれることにより、体毛処理後に肌のしっとり感を与え、肌荒れを防止し、体毛処理時の刺激を抑制することができる。
【0016】
また、請求項5記載の発明によれば、処理剤に含まれる保湿剤が液体成分に溶解し、かつ乾燥後に粉体又は結晶状になるので、体毛処理時に肌のべた付き感などの不快感をさらに抑制することができ、処理後に徐々に肌のしっとり感を与えることができる。
【0017】
また、請求項6記載の発明によれば、ヘッド部に供給する処理剤に含まれる粉体が、多孔質体であるので、体毛処理後に肌に残存した粉体が、汗等の水分を吸湿して、保湿効果を向上させることができる。
【0018】
また、請求項7記載の体毛処理装置に於ける剤供給装置は、ヘッド部に供給する処理剤に含まれる粉体は、その粒径が0.5〜50μmであるので、肌上に付着した粉体の肌滑り性が高く、また体毛処理後に粉体が肌上に残存しても違和感がなく、また、手で触れた際に於ける肌のなめらかさを高くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳しく説明する。図1は本発明の実施の形態における剤供給装置を体毛処理装置と共に示す断面図、図2は体毛処理装置を示す正面図、図3は体毛処理装置をグリップ側から見た底面図、図4は剤供給装置の支持部を示し、同図(a)は正面図、同図(b)は側面図である。図1に示すように、剤供給装置1は体毛処理装置2を支持し、体毛処理装置2のヘッド部3に対して処理剤に供給を行うものである。
【0020】
まず、体毛処理装置2について説明する。体毛処理装置2は体毛の除去と切断によって行うヘッド部3と、使用者が把持可能なグリップ部4とから構成された電気カミソリである。ヘッド部3は、ケース5とこのケース5に設けられた刃部6とから構成されている。刃部6は、固定刃である外刃6aとこの外刃6aの内側に配設された稼動刃である図示しない内刃とを有しており、内刃が往復動することにより、外刃6aと内刃とによって体毛を切断する構成となっている。グリップ部4には、図示しない制御部や充電池が内蔵されている。ここで、体毛処理装置2は、電気カミソリに限らず、例えば、体毛を脱毛する脱毛装置であっても良い。
【0021】
次に、剤供給装置1の各部について詳しく説明する。図1に示すように、剤供給装置1は、体毛処理装置2を脱着自在に支持する支持部11と、この支持部11に支持された体毛処理装置2のヘッド部3に処理剤を供給する剤供給部12と、処理剤が供給されたヘッド部3を乾燥させる乾燥部13とを備えている。これらの支持部11、剤供給部12、乾燥部13は筐体14に一体的に設けられている。
【0022】
剤供給部12は、処理剤を貯蔵する剤容器15と、この剤容器15にパイプ16を介して吸入側が連通されたポンプ17と、このポンプ17の吐出側にパイプ18を介して連通された剤吐出口19とが順次下から上に配設されて構成されている。ここに、処理剤は、体毛処理装置2による除毛の際に用いられるものであり、例えば肌面の滑り性を向上させるものである。
【0023】
剤容器15は、その上壁に貫通孔15aが形成されており、この貫通孔15aがパイプ16に接続されている。この剤容器15は、筐体に対して着脱自在に設けられている。剤吐出口19は、後方斜め上方に向けて処理剤を吐出するものであり、支持部11に保持された体毛処理装置2のヘッド部3に対向する位置に設けられている。ポンプ17は、例えば、歯車ポンプやダイヤフラムポンプなどを例示することができる。
【0024】
したがって、この剤供給部12は、ポンプ17が動作することにより、剤容器15に貯蔵されている処理剤が剤吐出口19からヘッド部3に向けて吐出され、これにより、ヘッド部3に処理剤が供給される。
【0025】
乾燥部13は、剤供給部12の上方に配置されている。この乾燥部13は、ファンケース23と、このファンケース23に内蔵されたファン24と、ファンケース23に内蔵されてファン24を回転駆動するファンモータ(図示せず)と、ファンケース23に内蔵された熱線(図示せず)とから構成されている。
【0026】
ファンケース23には空気を吸い込む吸込口(図示せず)と、空気を送風する送風口23aとが設けられている。送風口23aは、後方斜め下方に向けて開口しており、支持部11に保持された体毛処理装置2のヘッド部3に対向する位置に設けられている。
【0027】
この乾燥部13では、通電された熱線が発熱した状態で、ファンモータによってファン24が回転駆動されることにより、吸込口から吸い込んだ空気を熱線によって暖められて送風口23aからヘッド部3に送風する。
【0028】
支持部11は、ヘッド部3が体毛処理装置2の下端部となるように体毛処理装置2を支持するものであり、図4に示すように、体毛処理装置2の背面と底面とに沿った形状に形成されてそれらの背面と底面とを支持する支持面11aが設けられている。そして、この支持面11aには、体毛処理装置2の背面に形成された左右2つの嵌合凹部4a(図2参照)、および底面に形成された1つの嵌合凹部4a(図3参照)に取り外し可能に嵌合する嵌合凸部11bがそれぞれ突設されている。
【0029】
したがって、体毛処理装置2の各嵌合凹部4aを嵌合凸部11bに嵌合して支持部11に支持した状態では、体毛処理装置2のヘッド部3の外面が下向きとなるとともに、ヘッド部3が乾燥部13の剤吐出口19及び乾燥部13の送風口23aに対向する。
【0030】
また、体毛処理装置2の底面に設けられた嵌合凹部4aと、この嵌合凹部4aに対応する支持部11の嵌合凸部11bには、それぞれ接続端子(図示せず)が設けられている。そして、支持部11に体毛処理装置2が固定支持されることにより、それら接続端子同士が電気的に接続されて、例えば商用電源に接続された剤供給装置1から体毛処理装置2へ電気が供給されることにより、体毛処理装置2が充電されるようになっている。
【0031】
また、筐体14には、支持部11に支持された体毛処理装置2のヘッド部3の下方に位置する受け部14aが設けられている。この受け部14aは、支持部11に支持された体毛処理装置2のヘッド部3から落下する余分な処理剤を受け取るものである。
【0032】
次に、剤供給装置1が行う処理を説明する。メインスイッチ54がON操作された場合、体毛処理装置2のヘッド部3に処理剤を供給する。具体的には、ポンプ17を駆動して、剤容器15に貯蔵されている処理剤を剤吐出口19からヘッド部3に向けて吐出して、ヘッド部3に供給する。これにより、処理剤がヘッド部3に確実に付着する。
【0033】
続いて、乾燥部13のファンモータを駆動して送風口23aからヘッド部3に温風を吹き付けることにより、ヘッド部3の付着している液体を蒸発させてヘッド部3を乾燥させる。これにより、処理剤の乾燥物がヘッド部3に付着して残る。
【0034】
また、この処理中には、剤供給装置1の接続端子から体毛処理装置2の接続端子へ電気が供給されて、体毛処理装置2が充電される。
【0035】
剤供給装置1において使用される処理剤としては、常温で蒸気圧を有する液体と、粉体とを主成分として構成されるものである。すなわち、処理剤は、常温で蒸気圧を有する液体成分と、粉体とのみで構成される場合の外、これに対して常温で蒸気圧を有さない液体や、乾燥後に結晶化する成分などが含まれていてもよい。
【0036】
ここで、使用される粉体としてはタルクやマイカ、無水珪酸、カオリンなどのシリカや酸化チタンに代表される多孔質体の無機系粉体が好ましいが、ポリエチレン末やナイロン末、ポリアクリル酸アルキルなどに代表される合成高分子粉体、ステアリン酸亜鉛やステアリン酸マグネシウムやステアリン酸カルシウム、ミリスチン酸亜鉛などの金属石鹸なども適用できるが、かかる例示のものに化学組成が限定されるものではない。
【0037】
また、粉体の形状として、肌に付着した際の滑り性を考慮した場合には真球状や楕円球状が好ましく、その大きさに関しては、肌に付着した後に於ける滑り性や異物感などを考慮すると、粒径が0.5〜50μmが好ましい。粉体の粒径が0.5μmを下回る場合には、電気カミソリを肌に当てた場合に於ける滑り感が悪く、また50μmを上回る場合には肌に異物感を感じてしまう。但し、粉体の形状や化学組成が多成分で構成されている場合については、上記の条件に該当する粉体の比率が主体であるならば、該当しない粉体成分が含まれていても構わない。
【0038】
また、常温で蒸気圧を有する液体成分として、自然乾燥や乾燥手段による強制乾燥を想定した場合に、水やエタノールやイソプロピルアルコールなどの低級アルコールが好ましい。但し、常温で蒸気圧を有する液体成分として、単一組成である必要はなく、水と低級アルコールとの混合物であってもよい。
【0039】
抗菌剤成分としては、粉体状・結晶状の固体抗菌剤や液体状抗菌剤があるが、前者の固体抗菌剤としては、イソプロピルメチルフェノールやレゾルシン、パラヒドロキシ安息香酸エステル類、塩化セチルピリジニウム、デヒドロ酢酸、塩化ベンザルコニウムなどを挙げることができるが、本発明はこれらに制約されるものではない。また、後者の液体状抗菌剤としては、エタノールやイソプロピルアルコール、ブチレングリコールなどを挙げることができるが、本発明はこれらの成分に制約されるものではない。なお、エタノールやイソプロピルアルコールは常温で容易に揮発することから、処理剤における常温で蒸気圧を有する液状成分としての機能を兼用させることができる。
【0040】
最後に保湿剤成分については、ポリエチレングリコールやジエチレングリコールヒアルロン酸ナトリウムやコラーゲン、セラミド、乳酸ナトリウム、尿素、アミノ酸などを挙げることができるが、本発明はこれらに制約されるものではない。但し、体毛処理装置1のヘッド部3に処理剤を吹き付けて乾燥後に体毛処理を行う場合に、べた付き感などの不快感が生じ難くするためにも、コラーゲンやヒアルロン酸ナトリウムや尿素などの固形状保湿剤であることが好ましい。
以下に本実施形態に於ける処理剤の具体的な成分例を挙げる。
【0041】
(例1)
成分 (質量%)
・シリカ粉体 30%
・エタノール 40%
・水 20%
・カルボキシメチルセルロース 5%
・尿素 5%
(例2)
成分 (質量%)
・シリカ粉体 40%
・水 40%
・アルギン酸ナトリウム 10%
・塩化セチルピリジニウム 2%
・ヒアルロン酸ナトリウム 8%
上記に示す処理剤はあくまで一例であって、本発明は、この例1,2に示す成分組成に何ら制約を受けるものではない。
【0042】
なお、この剤供給装置1は、剤容器15に洗浄液を貯留しておけば、体毛処理装置2のヘッド部3の洗浄用として兼用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施の形態にかかる剤供給装置を体毛処理装置と共に示す断面図である。
【図2】体毛処理装置を示す正面図である。
【図3】体毛処理装置をグリップ側から見た底面図である。
【図4】体毛処理装置の支持部を示し、同図(a)は正面図、同図(b)は側面図である。
【符号の説明】
【0044】
1 剤供給装置
2 体毛処理装置
11 支持部
12 剤供給部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体毛処理装置を着脱自在に支持する支持部と、この支持部で支持された体毛処理装置のヘッド部に除毛の際に用いられる処理剤を供給する剤供給部とを備え、前記ヘッド部に供給する処理剤が液体と粉体とを主成分として構成されていることを特徴とする剤供給装置。
【請求項2】
ヘッド部に供給する処理剤の液体成分は、エタノール、イソプロピルアルコールなどの常温で蒸気圧を有するものであることを特徴とする請求項1記載の剤供給装置。
【請求項3】
ヘッド部に供給する処理剤に、抗菌剤成分が含まれていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の剤供給装置。
【請求項4】
ヘッド部に供給する処理剤に保湿成分が含まれていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の剤供給装置。
【請求項5】
ヘッド部に供給する処理剤の保湿成分が、液体成分に溶解し、かつ乾燥後には粉体又は結晶状になることを特徴とする請求項4記載の剤供給装置。
【請求項6】
ヘッド部に供給する処理剤に含まれる粉体が、多孔質体であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載の剤供給装置。
【請求項7】
ヘッド部に供給する処理剤に含まれる粉体は、その粒径が0.5〜50μmであることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一項に記載の剤供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−252675(P2007−252675A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−81840(P2006−81840)
【出願日】平成18年3月24日(2006.3.24)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】