説明

剥離ライナーおよび該ライナーを備える感圧接着シート

【課題】凹凸形状を有する剥離面を備え且つ安定した剥離力を示す剥離ライナーとその製造方法、ならびに該ライナーを備えた剥離ライナー付き感圧接着シートを提供すること。
【解決手段】本発明に係る剥離ライナー付き感圧接着シート1は、凹凸形状を有する剥離面10Aを備えた剥離ライナー10と、その剥離面10A上に配置された感圧接着剤層24を有する感圧接着シート20と、を備える。剥離ライナー10の少なくとも剥離面10A側の部分は剥離層12により構成され、その背面側に積層された支持層14をさらに備えることができる。ここで、剥離層12は、オレフィン系ポリマーにシリコーンが化学結合したシリコーン変性ポリオレフィン系樹脂を含む剥離層成形材料を押出成形してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感圧接着シート用の剥離ライナーに関し、詳しくは、表面(剥離面)に凹凸形状を有する剥離ライナーに関する。また本発明は、かかる剥離ライナーを備える感圧接着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
感圧接着シート貼付時の気泡抜け性等の目的から、剥離ライナーの表面(剥離面)に凹凸形状を付与して該凹凸形状が感圧接着剤層に転写されるように構成された剥離ライナー付き感圧接着シートが開発されている。このような凹凸形状を有する剥離ライナーまたは該ライナーを備える感圧接着シートに関する従来技術文献として特許文献1および2が挙げられる。
【0003】
【特許文献1】実開平4−28976号公報
【特許文献2】特表2004−506777号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように凹凸形状の剥離面を有する従来の剥離ライナー(以下、単に「ライナー」ということもある。)では、平滑な(すなわち、凹凸形状が付与されていない)剥離面を有する通常のライナーと同様に、公知の剥離剤(例えばシリコーン系剥離剤)を塗布する表面処理を行うことによって該剥離面に所望の剥離性を付与していた(特許文献1の第0028項、特許文献2の第0022項)。
【0005】
しかし、平滑な表面に剥離剤を塗布する場合に比べて、凹凸を有する表面では剥離剤を均一に塗布することが困難であり、該剥離剤の塗布量(付着量)が場所によってばらつきやすい。かかる塗布量のばらつきは、この剥離ライナーを用いて構成されたライナー付き感圧接着シートの使用時(感圧接着シートから剥離ライナーを除去する際)の剥離力を不安定にする要因となり得るので好ましくない。また、剥離剤の塗布量が不均一であると、該剥離剤が部分的に硬化不良を起こしやすくなり、その未硬化の剥離剤が感圧接着層に移行する等の不具合が生じることがある。
【0006】
凹凸形状を有する剥離面に剥離性を付与する他の手法として、まず表面が平滑なシート(ライナー基材)に剥離剤を塗布し、その後、表面に凹凸を有する成形型を加熱下で押し付ける熱プレス方式によって上記剥離剤塗布面に凹凸を形成することも考えられる。しかし、この方式では成形型の凹凸形状の剥離剤塗布面(剥離面)への転写性が不足しがちであり、剥離面の凹凸形状を精度よく形成することは困難である。また、剥離剤の塗布量が少ないと熱プレスによって剥離力が不安定となることがあり、かかる事態を防ぐために剥離剤を過剰に使用すると感圧接着剤層への剥離剤の移行が生じやすくなってしまう。
【0007】
そこで本発明は、凹凸形状を有する剥離面を備え且つ安定した剥離力を示す剥離ライナーおよびその製造方法を提供することを目的とする。また本発明は、かかる剥離ライナーを備えた剥離ライナー付き感圧接着シートの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によると、凹凸形状を有する剥離面を備えた剥離ライナー(典型的には、感圧接着シートの感圧接着剤層上に配置して用いられる剥離ライナー)が提供される。該剥離ライナーは、その少なくとも前記剥離面側の部分を構成する剥離層を有する。この剥離層は、オレフィン系ポリマーにシリコーンが化学結合したシリコーン変性ポリオレフィン系樹脂を含む剥離層成形材料を成形(典型的には押出成形)して形成されたものである。
かかる構成の剥離ライナーは、所定のシリコーン変性ポリオレフィン系樹脂を含む成形材料によって上記凹凸形状が形成されているので、別途剥離剤を塗布する表面処理(後処理)等を必要とすることなく、良好な剥離性を発揮することができる。ここに開示される剥離ライナーによると、このように凹凸形状を形成する材料(剥離層成形材料)自体の有する特性(離型性)を利用することにより、該凹凸形状を有する剥離面の各部に均一な剥離性を付与することができる。したがって、該ライナーを備えるライナー付き感圧接着シートにおいて、より安定した(均一性の高い)剥離力を実現することができる。また、オレフィン系ポリマーにシリコーンが化学結合したシリコーン変性ポリオレフィン系樹脂を用いるので、例えばポリオレフィン系樹脂にシリコーンオイル等の添加剤(シリコーン成分)を単にブレンドした材料を用いる場合とは異なり、シリコーン成分のブリードが起こり難い。このことは、該ライナーを備えるライナー付き感圧接着シートにおいて、感圧接着剤層へのシリコーン成分の移行防止に寄与するので好ましい。
【0009】
前記剥離層のシリコーン含有量は凡そ10質量%〜30質量%の範囲にあることが好ましい。かかる組成を有する剥離層(典型的には、上記好ましいシリコーン含有量を有する剥離層成形材料から形成された剥離層)を備えるライナーによると、剥離層を形成する際における良好な成形性(例えば、凹凸形状の精度)と、該ライナーを用いて構築された感圧接着シートにおける感圧接着シートからの均一かつ良好な剥離性(離型性)とを、バランスよく実現することができる。
【0010】
ここに開示されるライナーの好ましい一態様では、前記剥離面の凹凸形状が、高さ5μm〜50μm、幅30μm〜150μmの凸部を有する形状である。このように比較的微細な凹凸形状を有する剥離面では、剥離剤を均一に塗布することが特に困難であった。したがって、かかる凹凸形状の剥離面を備えるライナーでは、本発明の構成を採用することによる効果がよりよく発揮され得る。
【0011】
ここに開示されるライナーの他の好ましい一態様では、前記凸部(例えば、高さ5μm〜50μm、幅30μm〜150μmの凸部)が格子状に形成されている。このような格子状の凸部を有する剥離面では、該凸部が交差する部分(格子の交点の部分)に剥離剤が滞りやすい等の理由により、剥離剤を均一に塗布することが特に困難であった。したがって、かかる凹凸形状の剥離面を備えるライナーでは、本発明の構成を採用することによる効果がよりよく発揮され得る。
【0012】
上記剥離層成形材料の構成成分として用いられるシリコーン変性オレフィン系樹脂の好適例としては、プロピレン系ポリマーにシリコーンが化学結合したシリコーン変性ポリプロピレン系樹脂が挙げられる。例えば、該シリコーン変性ポリプロピレン系樹脂と、シリコーン変性されていない(シリコーン鎖を有しない)ポリプロピレン系樹脂とを含む剥離層成形材料を好ましく使用することができる。シリコーン含有量が例えば凡そ10質量%〜30質量%となるようにこれらの樹脂をブレンドしてなる剥離層成形材料が好ましい。
【0013】
ここに開示されるライナーは、前記剥離層の背面側(すなわち、剥離面とは反対側)に積層された支持層をさらに有することができる。かかる構成のライナーによると、上記支持層と上記剥離層との組み合わせによって、該ライナーの全体としての特性(例えば強度、耐熱性等)をより幅広い範囲で調節することができる。また、支持層の構成材料を適切に選択することにより、ライナーの原料コストを低減し得る。
【0014】
このように剥離層と支持層とが積層された構成のライナーは、例えば、上記支持層を形成する支持層成形材料と上記剥離層成形材料とを共押出成形して得られたものであり得る。したがって、本発明の他の側面として、上記剥離層成形材料と上記支持層成形材料とを共押出成形することを含む剥離ライナー製造方法が提供される。かかる共押出成形法によると、剥離層と支持層との接合強度(密着性)の高い剥離ライナーが効率よく製造され得るので好ましい。
【0015】
本発明によると、また、凹凸形状を有する剥離面を備え、該剥離ライナーの少なくとも前記剥離面側の部分を構成する剥離層を有する剥離ライナーを製造する方法が提供される。該製造方法は、オレフィン系ポリマーにシリコーンが化学結合したシリコーン変性ポリオレフィン系樹脂を含む剥離層成形材料を用意することを含む。また、該成形材料を加熱溶融させて押し出すことを含む。さらに、その加熱溶融状態で押し出された成形材料を層状に冷却固化させて、表面に凹凸形状を有する剥離層を形成することを含む。かかる製造方法は、ここに開示されるいずれかの剥離ライナーを製造する方法として好適に採用され得る。
【0016】
好ましい一つの態様では、前記剥離層成形材料を冷却固化させる際、前記加熱溶融状態で押し出された剥離層成形材料を、表面に凹凸形状を有する冷却部材に接触させて加圧しつつ冷却する。このことによって、該冷却部材表面の凹凸形状が転写された剥離層を形成する。かかる方法によると、所定の凹凸形状が精度よく形成された剥離面を備え且つ安定した剥離力を示す剥離層(剥離ライナー)を効率よく製造することができる。
【0017】
さらに、本発明によると、ここに開示されるいずれかの剥離ライナー(ここに開示されるいずれかの方法により製造された剥離ライナーであり得る。)と、該ライナーの剥離面上に配置された感圧接着剤層(典型的には、上記剥離面の凹凸に対応する凹凸形状を表面に有する感圧接着剤層)と、を有する剥離ライナー付感圧接着シートが提供される。かかる構成のライナー付感圧接着シートは、ここに開示されるいずれかのライナーを用いて構築されていることから、より安定した剥離力を発揮するものであり得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0019】
ここに開示される剥離ライナーは、典型的には、感圧接着剤層を有する感圧接着シートと前記感圧接着剤層上に配置されたライナーとを備える剥離ライナー付き感圧接着シートの構成要素として用いられる。以下、感圧接着剤を「粘着剤」、感圧接着シートを「粘着シート」ということがある。
かかるライナー付き粘着シートを構成する粘着シートは、典型的には、支持体と該支持体に保持された粘着剤層とを有する。かかる形態の粘着シートは、例えばシート状の支持体(基材)の片面に粘着剤層を有する形態であってもよく、支持体の両面に粘着剤層を有する形態であってもよい。また、上記粘着シートは、粘着剤層のみからなり支持体を有しない(すなわち基材レスの)ものであってもよい。ここでいう粘着シートの概念には、粘着テープ、粘着ラベル、粘着フィルム等と称されるものが包含され得る。なお、上記粘着剤層は連続的に形成されたものに限定されず、例えば点状、ストライプ状等の規則的あるいはランダムなパターンに形成された粘着剤層であってもよい。
【0020】
上記ライナー付き粘着シートを構成する剥離ライナーは、その少なくとも剥離面側の部分が、所定の剥離層成形材料から形成された剥離層により構成されている。この剥離層によって剥離ライナーの全体が構成されていてもよく、該剥離層の背面側(すなわち、凹凸形状が付された剥離面とは反対側)に支持層が積層されていてもよい。
剥離層を構成する剥離層成形材料は、オレフィン系ポリマーにシリコーンが化学結合したシリコーン変性ポリオレフィン系樹脂を含む。ここでオレフィン系ポリマーとは、エチレン、プロピレン等のオレフィン類を主モノマー(主構成単量体)とする重合体をいう。また、ここでシリコーンとは、シロキサン結合を主骨格とするポリマー(ポリシロキサン)を指し、ポリオルガノシロキサン(例えばポリジメチルシロキサン)を主骨格とするシリコーンが好ましく使用される。
【0021】
上記シリコーン変性ポリオレフィン系樹脂の好適例は、オレフィン(例えばプロピレン)を主モノマーとするポリマー鎖にシロキサン結合を主骨格とするポリマー鎖が導入(グラフト化)されたシリコーングラフトポリオレフィン系樹脂である。かかるシリコーングラフトポリオレフィン系樹脂は、例えば、反応性官能基を有するシリコーン(好ましくは、少なくともシリコーン鎖の片末端または両末端にあるケイ素原子にアルケニル基等の反応性官能基が結合したシリコーン)とポリオレフィン系樹脂とを加熱混練することにより得ることができる。上記反応性官能基を有するシリコーンとしては、両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたポリジメチルシロキサン、ポリジメチルシロキサンとメチルビニルシロキサンとの共重合体の両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたもの、等を例示することができる。上記シリコーングラフトポリオレフィン系樹脂を構成するポリオレフィン系樹脂(ポリオレフィン成分)の好適例として、ポリプロピレン系樹脂(以下、「PP樹脂」ということもある。)が挙げられる。
【0022】
かかるシリコーングラフトポリオレフィン系樹脂としては、通常はシリコーン含有量が凡そ5質量%以上のものが好ましく用いられる。該シリコーン含有量が凡そ10質量%以上のものがより好ましい。シリコーン含有量が低すぎると、該シリコーングラフトポリオレフィン系樹脂を含む剥離層成形材料から形成された剥離層において、剥離面の離型性が不足傾向となる(ライナー剥離力が高めとなる)ことがある。シリコーングラフトポリオレフィン系樹脂のシリコーン含有量の上限は特に限定されないが、該樹脂の製造容易性または入手容易性の観点等からは、シリコーン含有量が凡そ70質量%以下(典型的には凡そ5質量%〜70質量%)のものが好ましい。例えば、シリコーン含有量が凡そ50質量%以下(典型的には凡そ10質量%〜50質量%、例えば40質量%程度)のシリコーングラフトポリオレフィン系樹脂を好ましく使用することができる。なお、ここでシリコーングラフトポリオレフィン系樹脂のシリコーン含有量[質量%]とは、シリコーングラフトポリオレフィン系樹脂全体の質量に対して、シリコーン構造を有する部分(シリコーン鎖)の質量の割合をいう。
【0023】
このようなシリコーングラフトポリオレフィン系樹脂(典型的にはシリコーングラフトポリプロピレン系樹脂)は、公知文献(例えば、特開平8−127660号公報、特開2000−232950号公報等)および技術常識に基づいて容易に製造することができ、あるいは市販品を容易に入手することができる。本発明において好ましく使用し得るシリコーン変性ポリプロピレン系樹脂の市販品として、例えば、東レ・ダウコーニング株式会社製品の商品名「BY−201」、同「BY27−201C」等が挙げられる。また、本発明に使用し得る他のシリコーン変性ポリオレフィン系樹脂の市販品として、例えば、東レ・ダウコーニング株式会社製品のシリコーン変性ポリエチレン系樹脂、商品名「BY27−202H」、同「BY27−213」等が挙げられる。
【0024】
ここに開示される技術において剥離層の形成に用いられる剥離層成形材料は、ポリマー成分(樹脂成分)として実質的に上記シリコーン変性ポリオレフィン系樹脂のみを含む組成であってもよく、該シリコーン変性ポリオレフィン系樹脂に加えて他の樹脂を含む組成であってもよい。かかる「他の樹脂」としては、これと組み合わせて用いられるシリコーン変性ポリオレフィン系樹脂との相溶性のよい樹脂を選択することが好ましい。かかる樹脂として、例えば、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、エチレン−プロピレン共重合体(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)等のポリオレフィン系樹脂が挙げられる。シリコーン変性ポリオレフィン系樹脂のポリオレフィン成分を形成する主モノマー(オレフィン)と同種のオレフィンを主モノマーとするポリオレフィン系樹脂を好ましく採用し得る。例えば、シリコーン変性ポリプロピレン系樹脂とポリプロピレン系樹脂との組み合わせが好ましい。
【0025】
なお、本明細書中において「ポリプロピレン系樹脂(PP樹脂)」(シリコーン変性ポリプロピレン系樹脂の製造原料(変性対象)として用いられるポリプロピレン系樹脂を含む。)とは、プロピレンを主モノマー(主構成単量体)とするプロピレン系重合体をベースポリマー(ポリマー成分のなかの主成分)とする樹脂組成物をいう。上記「プロピレン系重合体」の概念には、プロピレンの単独重合体(ホモポリプロピレン、典型的にはアイソタクチックポリプロピレン)およびプロピレンと他のモノマー(例えば、炭素原子数が2,4〜10のα−オレフィンから選択される一種または二種以上)との共重合体のいずれもが包含され得る。該共重合体は、ランダム共重合体(ランダムポリプロピレン)であってもよくブロック共重合体であってもよい。また、二種以上のプロピレン系重合体(例えば、ホモポリプロピレンとランダムポリプロピレンとの組み合わせ、共重合組成の異なる二種類のランダムポリプロピレンの組み合わせ等)を任意の割合で含有するポリプロピレン系樹脂であってもよい。
【0026】
上記剥離層成形材料のシリコーン含有量および剥離層のシリコーン含有量は、凡そ5%以上であることが好ましく、凡そ10%以上であることがより好ましい。このシリコーン含有量が低すぎると、剥離面の離型性が不足傾向となる(ライナー剥離力が高めとなる)ことがある。該シリコーン含有量の上限は特に限定されないが、剥離層の製造容易性(例えば、凹凸形状の精度)や原料コスト等の観点からは、シリコーン含有量が凡そ50質量%以下(典型的には凡そ5質量%〜50質量%)である剥離層成形材料および剥離層が好ましい。例えば、該シリコーン含有量が凡そ30質量%以下(典型的には凡そ10質量%〜30質量%)の剥離層成形材料を好ましく使用することができる。ここで、剥離層成形材料のシリコーン含有量[質量%]とは、使用する剥離層成形材料の全体質量に対して、該成形材料を構成するシリコーン変性ポリオレフィン系樹脂のシリコーン構造を有する部分(シリコーン鎖)の質量の割合をいう。したがって、シリコーン変性ポリオレフィン系樹脂のみからなる剥離層成形材料では、剥離層成形材料のシリコーン含有量とシリコーン変性ポリオレフィン系樹脂のシリコーン含有量とは一致する。ここに開示される好ましいシリコーン含有量の剥離層成形材料となるように(換言すれば、該シリコーン含有量の剥離層が形成されるように)、シリコーン変性ポリオレフィン系樹脂と他の樹脂(典型的には、シリコーン鎖を有しない樹脂)との使用割合を設定するか、あるいは上記好ましいシリコーン含有量を有するシリコーン変性ポリオレフィン系樹脂を単独で使用することが好ましい。また、剥離層のシリコーン含有量[質量%]とは、剥離層の質量に占めるシリコーン構造を有する部分(シリコーン鎖)の質量の割合をいい、典型的には剥離層成形材料のシリコーン含有量と概ね一致する。
【0027】
上記剥離層成形材料は、本発明の効果を顕著に損なわない範囲で、一般に樹脂成形材料用の添加剤として知られている各種成分を必要に応じて含有することができる。かかる成分としては、酸化防止剤、中和剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、着色剤(顔料、染料等)等が例示される。
【0028】
ここに開示される剥離ライナーを構成する剥離層の表面(すなわち、該剥離ライナーがライナー付き粘着シートの構成要素として用いられる場合に粘着剤層と重ねあわされる側の表面)は、規則的なあるいは不規則な(典型的には規則的な)凹凸形状を有する剥離面として構成されている。該凹凸形状を有する範囲は、剥離面の実質的に全範囲であってもよく一部範囲(例えば、幅方向および/または長手方向の一部範囲)であってもよい。
【0029】
上記剥離面の凹凸形状は、例えば、互いに平行に延びる複数の畝状の凸部(畝群)が所定のピッチ(隣接する畝同士の間隔)で設けられた形状であり得る。一の方向に互いに平行に延びる第一の畝群と、前記一の方向と交差する(典型的には直交する)方向に互いに平行に延びる第二の畝部とを有する形状であってもよい。さらに第三、第四・・・の畝群を有してもよい。このような凹凸形状が剥離面に付与された剥離ライナーは、剥離ライナー付き粘着シートの構成要素として用いられて該粘着シートの粘着剤層に上記凹凸形状を転写することで、空気抜け性のよい粘着シートを提供することができる。あるいは、該凹凸形状の剥離ライナー表面に形成した粘着剤層を支持体に転写することにより、空気抜け性のよい粘着シートが形成され得る。
【0030】
上記畝群を構成する各畝状凸部の断面(畝の延びる方向に対して垂直な断面)の形状は、例えば長方形状、台形状(典型的には、下辺よりも上辺が短い台形状)、逆V字状、逆U字状、半円状等の各種形状であり得る。該凸部の高さは、例えば凡そ5μm〜50μm(好ましくは凡そ10μm〜35μm)程度であり得る。該凸部の幅(典型的には底部における幅)は、例えば凡そ30μm〜150μm程度であり、好ましくは凡そ50μm〜100μm程度である。このような凹凸形状(畝状凸部)を有する剥離面を備えた剥離ライナーでは、本発明の適用効果(剥離力を安定させる効果)が特によく発揮され得る。各凸部の断面形状(高さ、幅等)は同一であっても異なってもよい。例えば、各凸部の断面形状を略同一とすることができる。また、互いに異なる断面形状の凸部が規則的にあるいはランダムに設けられていてもよい。上記畝群を構成する凸部(畝)の間に形成される凹部の幅は、例えば凡そ200μm〜800μm(好ましくは凡そ400μm〜600μm)程度であり得る。互いに交差する方向に延びる複数の畝群を有する構成の場合、各畝群に属する個々の凸部の断面形状は同一であってもよく異なってもよい。また、各畝群に属する凸部のピッチは同一であってもよく異なってもよい。
【0031】
好ましい一つの態様では、上記剥離面の実質的に全範囲に、互いに直交する第一の畝群および第二の畝群が設けられている。それらの畝群を構成する各凸部は同じ断面形状を有し、また第一の畝群を構成する凸部の断面形状と第二の畝群を構成する凸部の断面形状も同じである。該断面形状は、大まかにいって、下辺よりも上辺が短い台形状である。より詳しくは、例えば、高さが凡そ5μm〜50μm、下辺の長さが凡そ30μm〜150μm、上辺の長さが凡そ10μm〜100μm(ただし下辺よりも短い)の台形状であり得る。第一の畝群および第二の畝群における凸部のピッチは同程度(典型的には同じ)であって、いずれも凡そ200μm〜800μm(例えば凡そ400μm〜600μm)程度であることが好ましい。このような凹凸形状(格子状の凸部)を有する剥離面を備えた剥離ライナーでは、本発明の適用効果(剥離力を安定させる効果)が特によく発揮され得る。しかも、かかる凹凸形状が剥離面に設けられた剥離ライナーは、ライナー付き粘着シートの構成要素として用いられて、特に空気抜け性のよい粘着シートを提供するものであり得る。また、該形状の剥離ライナー上に形成した粘着剤層を支持体に転写することにより、特に空気抜け性のよい粘着シートが形成され得る。
【0032】
ここに開示される剥離ライナーは、剥離層の背面側に積層された支持層をさらに有する構成の剥離ライナーであり得る。該支持層の構成材料は、剥離層との間に実用上十分な接合強度(密着性)を実現し得るものであればよく、特に限定されない。例えば、各種樹脂材料から形成されたフィルム状(層状)、フォーム状、織布または不織布状等の支持層であり得る。また、上記支持層として金属箔、紙等を利用することも可能である。
上記支持層の構成材料としては、押出成形によって層状に成形可能な支持層成形材料を好ましく用いることができる。剥離層成形材料と共押出成形することによって剥離層と支持層とが積層された構成の剥離ライナーを成形するのに適した組成の支持層成形材料を使用することが特に好ましい。例えば、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、エチレン−プロピレン共重合体等のポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂;ポリスチレン等の芳香族ビニル樹脂;ナイロン等のポリイミド樹脂;ポリテトラフルオロエチレン等の含フッ素樹脂;その他、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、セルロース、等から選択される材料をベースポリマーとする支持層成形材料を用いることができる。
【0033】
特に限定するものではないが、本発明に係る剥離ライナーの厚さ(総厚さ)は、例えば凡そ10μm〜500μm程度であり得る。該厚さが凡そ50μm〜300μm程度である剥離ライナーが好ましく、凡そ50μm〜200μm程度であることがより好ましい。剥離ライナーの厚さが小さすぎると強度が不足しがちとなることがあり、該厚さが大きすぎると剥離作業性や取扱性が低下傾向となることがある。なお、ここでいう剥離ライナーの厚さは、剥離面の凹凸形状における凸部の先端から測定した厚さ(換言すれば、凸部込みの厚さ)をいう。実質的に剥離層から構成される剥離ライナー(すなわち、全体が剥離層からなる剥離ライナー)では、該ライナーの厚さは剥離層の厚さと一致する。また、剥離層の背面に支持層が積層された構成の剥離ライナーでは、そのうち剥離層の厚さを例えば5μm〜500μm程度とすることができ、10μm〜300μm程度とすることが好ましく、50μm〜200μm程度とすることがより好ましい。一方、支持層の厚さは例えば10μm〜300μm程度とすることができ、通常は50μm〜200μm程度とすることが好ましい。
【0034】
剥離層成形材料から剥離層を形成する方法としては、溶融状態にある剥離層成形材料を押し出し、その押出物を冷却ロール等の冷却部材の間に挟みこんで押圧しつつ冷却して層状に成形する押出成形(溶融押出成形)による方法を好ましく採用することができる。
例えば、全体が剥離層からなる剥離ライナーを製造する場合には、溶融状態で押し出された剥離層成形材料を上記のように押圧しつつ冷却することにより、該押出物を目的とする剥離ライナーの厚みに応じたシート形状に成形するとよい。この押出成形の際に、押し出された剥離層成形材料の剥離面側に凹凸形状の表面を有する冷却部材(ロール等)を押圧しつつ冷却することにより、該部材表面の凹凸形状に対応する凹凸形状が付与された(換言すれば、該部材表面の凹凸形状が転写された)剥離面を有する剥離層(剥離ライナー)を成形することが好ましい。
かかる剥離ライナー製造方法によると、剥離層成形材料に含まれるシリコーン成分(シリコーン変性ポリオレフィン系樹脂の有するシリコーン鎖)により提供される離型性を利用して、別途剥離剤の塗布等の剥離処理を必要とすることなく、該成形材料自体の有する特性によって十分な剥離性を示す剥離層(剥離ライナー)を形成することができる。また、剥離層成形材料を押出成形すると同時にその表面(剥離面)に凹凸形状を付与することにより、形状精度のよい凹凸形状を有する剥離面を備えた剥離層(剥離ライナー)を効率よく形成することができる。
【0035】
また、剥離層とその背面に設けられた支持層とを備える剥離ライナーを製造する場合には、例えば、溶融状態にある剥離層成形材料と支持層成形材料とを隣接してそれぞれ帯状に押し出し、その押出物を冷却部材(ロール等の)の間に挟みこんで押圧しつつ冷却してシート形状に成形する「共押出成形」による方法を好ましく採用することができる。
【0036】
図3を参照しつつ、上記共押出成形によって剥離層と支持層とを備える剥離ライナーを成形する典型的な態様を説明する。図3に示すライナー成形装置(シート成形装置)40は、大まかにいって、Tダイ42を有する押出成形機と、対向配置された一対の冷却ロール、すなわち加工ロール44および加圧ロール46とからなる。Tダイ42は、剥離層成形材料を押し出す押出口と、支持層成形材料を押し出す押出口とを近接して備える。これらの成形材料を上記押出成形機内に別々に投入し、所定の温度に加熱して溶融させる。この溶融状態の剥離層成形材料および支持層成形材料をTダイ42の上記押出口から並行して帯状(層状)に押し出し、冷却ロール44,46の間に導入する。
ここで、押出物のうち剥離層成形材料側に当接する加工ロール44の表面には凹凸が設けられている。この加工ロール44と加圧ロール46との間に上記押出物を挟んで押圧しつつ冷却することにより、該押出物を、加工ロール44および加圧ロール46の表面形状を反映(転写)した表面形状を有するシート状に固化させる。これにより、加工ロール44表面の凹凸形状が転写された凹凸形状の剥離面を有する剥離層12と、該剥離層の背面に積層された支持層14とからなる二層構造の剥離ライナー10が形成される。冷却ロール44,46の間から排出された剥離ライナー10は、引取りロール48を経て巻取りロール(図示せず)へと導かれる。このようにして、剥離層成形材料と支持層成形材料とを共押出成形してなる長尺シート状の剥離ライナー10を作製することができる。
かかる剥離ライナー製造方法によると、剥離層成形材料に含まれるシリコーン成分(シリコーン変性ポリオレフィン系樹脂の有するシリコーン鎖)により提供される離型性を利用して、別途剥離剤の塗布等の剥離処理を必要とすることなく、該成形材料自体の有する特性によって十分な剥離性を示す剥離層(ひいては該剥離層を剥離面側に有する剥離ライナー)を形成することができる。また、剥離層成形材料を押出成形すると同時にその表面(剥離面)に凹凸形状を付与することにより、形状精度のよい凹凸形状を有する剥離面を備える剥離層を効率よく形成することができる。さらに、剥離層成形材料と支持層成形材料とを共押出成形することにより、剥離層と支持層とが積層された構成の剥離ライナーを効率よく製造することができる。この共押出成形法は、剥離層と支持層との接合強度(密着性)の高い剥離ライナーが得られやすいという点からも有利である。
【0037】
なお、剥離層の背面に支持層を積層する他の方法としては、例えば、剥離層成形材料を単独で押出成形することによりシート状の剥離層(剥離層シート)を作製し、この剥離層シートの背面に溶融状態の支持層成形材料を層状に付与して冷却固化させる方法、支持層成形材料を単独で押出成形することにより作製したシート状の支持層(支持層シート)を上記剥離剤シートの背面に接合する方法、等が挙げられる。
また、凹凸形状を有する剥離面を備えた剥離層を形成する方法としては、上述のように加熱溶融状態の成形材料を表面に凹凸形状を有する冷却部材により加圧しつつ冷却することにより該成形材料を層状(シート状)に成形するとともに剥離面に凹凸形状を付与する方法の他、例えば、加熱溶融状態で押し出した剥離剤成形材料を表面が平滑な一対の冷却ロール等の間に挟んで加圧しつつ冷却することによって平滑な剥離面を有する剥離層をまず形成し、次いで、該剥離層を加熱しつつ凹凸形状を有する型を押し付ける(型押しする)ことにより該型表面の凹凸形状を剥離面に転写して該剥離面に凹凸形状を付与する方法を挙げることができる。
【0038】
ここに開示されるライナーおよび該ライナー付き粘着シートは、例えば、図1または図2に模式的に示される断面構造を有するものであり得る。なお、図1および図2に示すライナーおよびライナー付き粘着シートにおいて、同様の機能を果たす部分には同じ符号を付している。
【0039】
図1に示すライナー付き粘着シート1は、支持体22と該支持体の片面に設けられた粘着剤層24とを有する粘着シート20と、その粘着剤層24上に配置された剥離ライナー10とを備える。ライナー10は、シリコーン変性ポリオレフィン系樹脂を含む剥離層成形材料から形成された剥離層12と、支持層成形材料から形成された支持層14とからなる二層構造に形成されている。ライナー10の剥離面10Aは凹凸形状を有する。すなわち、この剥離面10Aには、一の方向に延びる複数の畝状の凸部112が互いに平行に所定のピッチで設けられ、さらに上記一の方向とは直交する方向に延びる複数の畝状の凸部(図示せず)が互いに平行に所定のピッチで(典型的には、凸部112と同じピッチで)設けられている。このことによって、剥離面10Aには、全体として格子状の凸部110が形成されている。該凸部110に縦横を囲まれた部分は、相対的に凹んだ正方形状の平面部102となっている。凸部110およびその下方部分は剥離層12により構成され、その背面側に支持層14が積層されている。この支持層14の表面(粘着剤層とは反対側の表面、すなわち背面)10Bは平滑な形状に形成されている。
【0040】
一方、剥離面10Aに面する粘着剤層24の表面には、剥離面10Aの凹凸形状を反映して、溝状の凹部252および該凹部と直交して延びる溝状の凹部(図示せず)が形成されている。それらの凹部が交点で連絡することにより、粘着剤層24の表面には全体として格子状の凹部250が形成されている。該凹部250に縦横を囲まれた部分は、相対的に突出した正方形状の平面部242となっている。粘着シート20からライナー10を剥離すると、剥離面10Aの凹凸形状(格子状の凸部)を反映した格子状の凹部を有する粘着剤層24が露出する。その粘着剤層24を適当な圧力で被着体に圧着すると、まず平面部242が被着体に密着する一方、格子状凹部250と被着体表面との間には縦横に延びる間隙が維持される。その間隙を通じて、粘着シート20の貼付時に混入した気泡を外部に押し出すことができる。
【0041】
また、図2に示すライナー付き粘着シート2は、シリコーン変性ポリオレフィン系樹脂を含む剥離層成形材料から形成された剥離層12からなる単層構造の剥離ライナー10を備える。その他の部分の構造は図1に示すライナー付き粘着シート1と同様である。
【0042】
粘着シートを構成する支持体としては、例えば、ポリプロピレンフィルム、エチレン−プロピレン共重合体フィルム、ポリエステルフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム等のプラスチックフィルム;ポリウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム等のフォーム基材;クラフト紙、クレープ紙、和紙等の紙;綿布、スフ布等の布;ポリエステル不織布、ビニロン不織布等の不織布;アルミニウム箔、銅箔等の金属箔;等を、粘着シートの用途に応じて適宜選択して用いることができる。上記プラスチックフィルムとしては、無延伸フィルムおよび延伸(一軸延伸または二軸延伸)フィルムのいずれも使用可能である。また、支持体のうち粘着剤層が設けられる面には、下塗剤の塗布、コロナ放電処理等の表面処理が施されていてもよい。支持体の厚みは目的に応じて適宜選択できるが、一般的には概ね10μm〜500μm(典型的には10μm〜200μm)程度である。
【0043】
粘着剤層を構成する粘着剤の種類は特に限定されない。例えば、アクリル系、ポリエステル系、ウレタン系、ポリエーテル系、ゴム系、シリコーン系、ポリアミド系、フッ素系等の公知の各種粘着剤から選択される一種または二種以上の粘着剤を含んで構成された粘着剤層であり得る。該粘着剤の形態も特に限定されず、例えば、溶剤型粘着剤、エマルジョン型粘着剤、水溶性粘着剤、紫外線硬化型粘着剤等の、種々の形態の粘着剤であり得る。かかる粘着剤は、粘着付与剤、粘度調整剤、レベリング剤、可塑剤、充填剤、顔料・染料等の着色剤、安定剤、防腐剤、老化防止剤、帯電防止剤等の一般的な添加剤の一種または二種以上を含むことができる。
【0044】
好ましい一つの態様では、該粘着剤層を構成する粘着剤が、アクリル系ポリマーをベースポリマー(該粘着剤に含まれるポリマーの主成分)とするアクリル系粘着剤である。上記アクリル系ポリマーは、典型的には、アルキル(メタ)アクリレート、すなわちアルキルアルコールの(メタ)アクリル酸エステルを主モノマーとする(共)重合体である。ここで「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸およびメタクリル酸を包含する概念である。例えば、炭素原子数2〜14(より好ましくは炭素原子数4〜10)のアルキルアルコール(メタ)アクリル酸エステルを主モノマーとするアクリル系ポリマーを主体とするアクリル系粘着剤を含んで構成された粘着剤層が好ましい。かかる粘着剤層は、例えば、上記(共)重合組成のアクリル系ポリマーに、必要に応じて粘着付与剤、架橋剤、溶媒等が配合されたアクリル系粘着剤組成物を用いて形成され得る。
【0045】
特に限定するものではないが、上記粘着剤層の厚さは、例えば凡そ5μm〜150μm(典型的には凡そ10μm〜100μm)の範囲であり得る。該粘着シートの有する粘着剤層の厚さをライナー表面の凹凸の程度(凸部の先端から凹部の底までの高さ)と同程度とするか、あるいは該凹凸の程度よりも粘着剤層の厚さを大きくすることが好ましい。
【0046】
上記粘着剤層は、例えば、適当な粘着剤組成物を支持体に直接付与(典型的には塗布)し、該組成物を必要に応じて乾燥および/または硬化させることにより形成され得る(直接法)。その後、該粘着剤層に剥離ライナーの剥離面を重ね合わせ、必要に応じてプレスすることにより、該剥離面の凹凸形状を粘着剤層に反映させることができる。あるいは、上記粘着剤組成物を剥離ライナーの剥離面に付与して該剥離面上に粘着剤層を形成し、その粘着剤層付きライナーに支持体を重ね合わせて該支持体に粘着剤層を転写することによってライナー付き粘着シートを形成してもよい(転写法)。
【0047】
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる具体的実施例に示すものに限定することを意図したものではない。なお、以下の説明において「部」および「%」は、特に断りがない限り質量基準である。
【0048】
また、以下の説明における評価項目は、それぞれ次のようにして測定または評価した。
[厚さおよび形状]
サンプルの総厚さ[μm]は、最小読み取り値1/1000mmのダイヤルゲージを用いて測定した。
該サンプルを構成する支持層の厚さは、サンプルを厚み方向に切断した断面を電界放出型走査電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製品のFE−SEM、商品名「S−4800」)にて300倍の倍率で観察することにより測定した。
サンプル表面の凹凸形状は、該表面をレーザ顕微鏡(オリンパス株式会社製品、商品名「LEXT OLS3000」)で観察することにより測定した。
【0049】
[ライナー剥離力]
粘着シートの支持体として、厚さ100μmのポリプロピレン系樹脂シートを用意した。該支持体の片面にアクリル系粘着剤組成物(日東電工株式会社製品)を塗布して100℃で1分間乾燥させることにより厚さ約30μm(乾燥後)の粘着剤層を形成した。なお、上記粘着剤組成物は、2−エチルヘキシルアクリレート系の溶剤型粘着剤組成物に、架橋剤として1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン(三菱瓦斯化学株式会社製品、商品名「TETRAD−C」)を配合して調製した。
このようにして得られた粘着シートの粘着剤層に、ラミネーター(ロール圧0.25MPa、移動速度0.37m/分)を用いて剥離ライナー(サンプル)を貼り合わせて、剥離ライナー付き粘着シートを作製した。これを23℃、65%RHの環境下に30分間放置した後、幅50mmの帯状にカットして試験片を用意した。該試験片につき、高速剥離試験機(株式会社工研製品)を用いて、剥離角度90°、引張速度48m/分の条件で、剥離ライナーの長手方向の剥離力[N/50mm]を測定した。測定温度(環境温度)5℃、23℃および35℃の各条件で上記剥離力測定を行った。
【0050】
[シリコーン存在量]
蛍光X線回折装置(株式会社リガク製品、商品名「ZSX100e」を使用した。)を用いて、サンプルの剥離面に存在するシリコン(Si)元素量を測定した。そのSi元素量からジメチルシロキサン換算の質量を求め、これを剥離面におけるシリコーン存在量[g/m]とした。
【0051】
[Siの分布状態]
X線マイクロアナライザー(株式会社堀場製作所製品、エネルギー分散型X線分析装置、商品名「EMAX ENERGY EX−250」)を用いて、加速電圧15kVの条件で、サンプルの剥離面におけるシリコン(Si)の分布状態を分析した。
【0052】
<例1:剥離ライナー(サンプル1)の作製>
本例では、剥離層成形材料として、シリコーン含有量40%のシリコーングラフトPP樹脂(東レ・ダウコーニング社製品、商品名「BY27−201」;以下、「Gr−PP」と表記することがある。)とPP樹脂(日本ポリプロ株式会社製品、商品名「ノバテックPP FL6CK」;以下、「PP」と表記することがある。)とを、Gr−PP:PPの質量比が25:75となる割合でドライブレンドした成形材料(A1)を使用した。この剥離層成形材料(A1)のシリコーン含有量は10%である。
また、支持層成形材料としては、上記PP樹脂(ノバテックPP FL6CK)と線状低密度ポリエチレン(LDPE)(住友化学株式会社製品、商品名「スミカセンG201」;以下、「LDPE」と表記することがある。)とを、PP:LDPEの質量比が100:10となる割合で混合した成形材料(B1)を使用した。
【0053】
これらの成形材料を共押出成形(二色押出成形)することにより、剥離層成形材料(A1)から形成された剥離層の背面に支持層成形材料(B1)から形成された支持層が積層された二層構造の剥離ライナーを作製した。すなわち、上記成形材料(A1)および(B1)を二色成形用の押出機に投入し、該押出機のTダイ(ダイ温度240℃)から溶融状態の成形材料(A1)および(B1)を各々層状に押し出した。この押出物を、表面に格子状の溝が設けられた加工ロール(冷却ロール)と表面が平滑な加圧ロール(冷却ロール)との間に、剥離層成形材料(A1)が加工ロール側に、支持層成形材料(B1)が加圧ロール側となるようにして導入した。そして、これら加工ロールと加圧ロールとの間に上記押出物を挟みこんで押圧しつつ冷却することにより、剥離層成形材料(A1)側の表面に上記加工ロールの表面形状(格子状の溝)が転写されたシート状に成形した。このようにして、凹凸形状を有する剥離面を備えた剥離層(厚さ約30μm、シリコーン含有量10%)と、その剥離層の背面側に積層された基材層(厚さ約160μm)とからなる、例1に係る剥離ライナー(サンプル1)を得た。上記剥離面は、互いに直交する畝状の凸部が格子状に形成された凹凸形状を有し、該凸部の断面形状は、下辺70μm、上辺20μm、高さ25μmの台形状であった。また、上記格子状の凸部の間に形成された凹部の幅は縦横それぞれ450μmであった。
【0054】
<例2:剥離ライナー(サンプル2)の作製>
本例では、例1で用いた剥離層成形材料(A1)に代えて、上記シリコーングラフトPP樹脂と上記PP樹脂とをGr−PP:PPの質量比が50:50となる割合でドライブレンドした剥離層成形材料(A2;シリコーン含有量20%)を使用した。その他の点については上記例1と同様にして、剥離層成形材料(A2)から形成された剥離層と支持層成形材料(B1)から形成された支持層とからなる、例2に係る剥離ライナー(サンプル2)を得た。
【0055】
<例3:剥離ライナー(サンプル3)の作製>
本例では、例1で用いた剥離層成形材料(A1)に代えて、上記シリコーングラフトPP樹脂と上記PP樹脂とをGr−PP:PPの質量比が75:25となる割合でドライブレンドした剥離層成形材料(A3;シリコーン含有量30%)を使用した。その他の点については上記例1と同様にして、剥離層成形材料(A3)から形成された剥離層と支持層成形材料(B1)から形成された支持層とからなる、例3に係る剥離ライナー(サンプル3)を得た。
【0056】
<例4:剥離ライナー(サンプル4)の作製>
本例では、例1で支持層の形成に使用した支持層成形材料(B1)を、剥離ライナー全体の構成材料として使用した。すなわち、該成形材料(B1)を押出機に投入してダイ温度240℃で押し出し、これを例1と同様に冷却および成形することにより、全体が成形材料(B1)から形成され一方の表面(剥離面)に格子状の凸部が形成された、例4に係る剥離ライナー(サンプル4)を得た。
【0057】
<例5:剥離ライナー(サンプル5)の作製>
例4に係る剥離ライナー(サンプル4)の剥離面に、市販のシリコーン系剥離剤(信越化学工業株式会社製品、商品名「KS−847T」)を塗布して離型処理を施した。これにより、例5に係る剥離ライナー(サンプル5)を得た。
【0058】
サンプル1〜5に係る剥離ライナーにつき、上述した方法により、ライナー剥離力、シリコーン存在量およびSiの分布状態を評価した。それらの結果を、各サンプルの作製に用いた成形材料の種類とともに表1に示す。
【0059】
【表1】

【0060】
表1に示されるように、シリコーングラフトPP樹脂を含む成形材料(A1〜A3)から形成された剥離面を備えるサンプル1〜3によると、該剥離面に離型剤を塗布する等の別途の離型処理が施されていないにも拘らず、シリコーン成分を含まない成形材料(B1)により形成された剥離面にシリコーン系離型剤を塗布する離型処理を施してなるサンプル5と同等以上の良好な剥離性(低いライナー剥離力)が達成された。さらに、これらのサンプルのライナー剥離力測定チャートから、サンプル1〜3のライナー剥離力は、いずれもサンプル5に比べて明らかに安定している(ばらつきが少ない)ことが確認された。また、各サンプルのSi分布状態を観察したところ、サンプル5では格子状の凸部に沿ってSiが偏在していることがはっきりと認められたが、サンプル1〜3ではいずれもサンプル5に比べてSiの偏りが顕著に改善されていることが確認された。特にサンプル1および2はSi分布の均一性に優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0061】
以上に説明したとおり、本発明に係る剥離ライナーによると、凹凸形状を有する剥離面を備えながら、該ライナーを用いて構築されたライナー付き粘着シートにおいて安定したライナー剥離力を実現することができる。このように剥離面に凹凸形状を有する剥離ライナーを備えたライナー付き粘着シートは、該粘着シートの貼付時等における空気抜け性が良いことから、各種の装飾用シートとして有用であり、例えば車両の外装に貼り付けられる塗装代替シートや装飾用シート、表面保護用粘着シート等として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明に係る剥離ライナー付き粘着シートの構成例を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明に係る剥離ライナー付き粘着シートの他の構成例を模式的に示す断面図である。
【図3】ライナー成形装置の一構成例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0063】
1,2:剥離ライナー付き粘着シート
10 :剥離ライナー
10A:剥離面
12 :剥離層
14 :支持層
20 :粘着シート
22 :支持体
24 :粘着剤層
40 :ライナー成形装置
44,46 :冷却ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹凸形状を有する剥離面を備えた剥離ライナーであって、
該剥離ライナーは、その少なくとも前記剥離面側の部分を構成する剥離層を有し、
該剥離層は、オレフィン系ポリマーにシリコーンが化学結合したシリコーン変性ポリオレフィン系樹脂を含む剥離層成形材料を押出成形して形成されたものである、剥離ライナー。
【請求項2】
前記剥離層のシリコーン含有量が10質量%〜30質量%である、請求項1に記載の剥離ライナー。
【請求項3】
前記凹凸形状は、高さ5μm〜50μm、幅30μm〜150μmの凸部を有する形状である、請求項1または2に記載の剥離ライナー。
【請求項4】
前記凸部が格子状に形成されている、請求項3に記載の剥離ライナー。
【請求項5】
前記剥離層成形材料は、プロピレン系ポリマーにシリコーンが化学結合したシリコーン変性ポリプロピレン系樹脂とポリプロピレン系樹脂とを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の剥離ライナー。
【請求項6】
前記剥離層の背面側に積層された支持層をさらに有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の剥離ライナー。
【請求項7】
前記支持層を形成する支持層成形材料と前記剥離層成形材料とを共押出成形してなる、請求項6に記載の剥離ライナー。
【請求項8】
凹凸形状を有する剥離面を備え、該剥離ライナーの少なくとも前記剥離面側の部分を構成する剥離層を有する剥離ライナーを製造する方法であって、
オレフィン系ポリマーにシリコーンが化学結合したシリコーン変性ポリオレフィン系樹脂を含む剥離層成形材料を用意すること;
該成形材料を加熱溶融させて押し出すこと;および、
その加熱溶融状態で押し出された剥離層成形材料を層状に冷却固化させて、表面に凹凸形状を有する剥離層を形成すること;
を包含する、剥離ライナー製造方法。
【請求項9】
前記剥離層成形材料の冷却固化は、前記加熱溶融状態で押し出された剥離層成形材料を表面に凹凸形状を有する冷却部材に接触させて加圧しつつ冷却することにより行われる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
請求項1から7のいずれか一項に記載の剥離ライナーと、
該ライナーの剥離面上に配置された感圧接着剤層と、
を有する剥離ライナー付感圧接着シート。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2008−296560(P2008−296560A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−148524(P2007−148524)
【出願日】平成19年6月4日(2007.6.4)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】