説明

剥離処理基材及びその製造方法

【課題】 カチオン重合性紫外線硬化型シリコーン系剥離処理剤による剥離処理剤層と、基材との密着性が優れている剥離処理基材を得る。
【解決手段】 剥離処理基材は、基材の少なくとも一方の面に、少なくとも部分的に、カチオン重合性紫外線硬化型シリコーン系剥離処理剤による剥離処理剤層を有する剥離処理基材であって、カチオン重合性紫外線硬化型シリコーン系剥離処理剤を、基材の少なくとも一方の面に、少なくとも部分的に、塗布した後に、且つ紫外線照射処理を行う前に、加熱処理が施されていることを特徴とする。カチオン重合性紫外線硬化型シリコーン系剥離処理剤としては、分子中に少なくとも2つのエポキシ基を有する変性シリコーン系ポリマー成分を有効成分とするカチオン重合性紫外線硬化型シリコーン系剥離処理剤が好適である。加熱処理の際の温度としては、35〜120℃であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着テープ又はシートに用いられる剥離ライナーや、背面に剥離処理が施された粘着テープ又はシート用基材等の剥離処理基材及びその製造方法に関し、より詳細には、カチオン重合性紫外線硬化型シリコーン系剥離処理剤による剥離処理剤層と、基材との密着性が優れており、過度の加熱や加湿の条件下で暴露された場合や、長期間にわたり保管された場合であっても、基材から剥離処理剤層中のシリコーン成分の脱落を抑制又は防止することができる剥離処理基材及びその製造方法に関する
【背景技術】
【0002】
紫外線硬化型シリコーン系剥離処理剤としては、カチオン重合により硬化するカチオン重合性紫外線硬化型シリコーン系剥離処理剤(カチオン重合型の紫外線硬化型シリコーン系剥離処理剤)、ラジカル重合により硬化するラジカル重合性紫外線硬化型シリコーン系剥離処理剤、ラジカル付加重合により硬化するラジカル付加重合性紫外線硬化型シリコーン系剥離処理剤、ヒドロシリル化反応により硬化するヒドロシリル化反応性紫外線硬化型シリコーン系剥離処理剤など利用されている。このような紫外線硬化型シリコーン系剥離処理剤において、カチオン重合性紫外線硬化型シリコーン系剥離処理剤は、ラジカル重合性紫外線硬化型シリコーン系剥離処理剤、ラジカル付加重合性紫外線硬化型シリコーン系剥離処理剤や、ヒドロシリル化反応性紫外線硬化型シリコーン系剥離処理剤よりも、硬化後の体積収縮が少ないため、カチオン重合性紫外線硬化型シリコーン系剥離処理剤による剥離処理剤層は基材に対する密着性が良好であると言われている(特許文献1参照)。しかし、剥離処理基材における基材の材質や構造、カチオン重合性紫外線硬化型シリコーン系剥離処理剤の塗布厚などによっては、カチオン重合性紫外線硬化型シリコーン系剥離処理剤による剥離処理剤層は、基材に対する密着性が充分でないものもあった。
【0003】
また、通常の温和な環境下での使用では、問題がなくても、剥離処理基材が単体で、もしくは粘着剤層と貼り合わされた状態で、過度の加熱や加湿の条件下で暴露された場合や、長期間にわたり保管された場合には、剥離処理剤層中のシリコーン成分が基材から脱落してしまい、例えば、剥離処理基材が粘着剤層と貼り合わされた場合では、粘着剤層の表面に残留し、粘着特性を大きく妨げる場合があった。そのため、剥離処理基材の剥離特性と、粘着テープ又はシートの粘着特性とを、安定した状態で維持するためには、剥離処理基材における基材に対してカチオン重合性紫外線硬化型シリコーン系剥離処理剤による剥離処理剤層が充分に密着していることが望まれている。
【0004】
【特許文献1】特開2001−226592号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、カチオン重合性紫外線硬化型シリコーン系剥離処理剤による剥離処理剤層と、基材との密着性が優れている剥離処理基材及びその製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、過度の加熱や加湿の条件下で暴露された場合や、長期間にわたり保管された場合であっても、基材から剥離処理剤層中のシリコーン成分の脱落を抑制又は防止することができる剥離処理基材及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の目的を達成するため鋭意検討した結果、剥離処理剤としてカチオン重合性紫外線硬化型シリコーン系剥離処理剤を用い、且つカチオン重合性紫外線硬化型シリコーン系剥離処理剤による剥離処理剤層を、加熱処理を経て形成させると、カチオン重合性紫外線硬化型シリコーン系剥離処理剤による剥離処理剤層の基材に対する密着性を飛躍的に向上させることができることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成されたものである。
【0007】
すなわち、本発明は、基材の少なくとも一方の面に、少なくとも部分的に、カチオン重合性紫外線硬化型シリコーン系剥離処理剤による剥離処理剤層を有する剥離処理基材であって、カチオン重合性紫外線硬化型シリコーン系剥離処理剤を、基材の少なくとも一方の面に、少なくとも部分的に、塗布した後に、且つ紫外線照射処理を行う前に、加熱処理が施されていることを特徴とする剥離処理基材である。
【0008】
前記カチオン重合性紫外線硬化型シリコーン系剥離処理剤としては、分子中に少なくとも2つのエポキシ基を有する変性シリコーン系ポリマー成分を有効成分とするカチオン重合性紫外線硬化型シリコーン系剥離処理剤を好適に用いることができる。
【0009】
本発明では、加熱処理の際の温度としては、35〜120℃であることが好ましい。
【0010】
また、前記剥離処理基材としては、カチオン重合性紫外線硬化型シリコーン系剥離処理剤層による皮膜が形成されている側の面を上にして、ガラス板上に置き、接触面積10mm×10mmサイズのショアA硬度(JIS K 6301 スプリング式A型)が70のシリコーン製ゴムを、前記皮膜上に置いて、0.5MPaの圧力摩擦にて、1m/分の速度で、10cm振幅させる動作を5回行った際に、前記皮膜が基材から脱落しないことが好適である。
【0011】
本発明の剥離処理基材としては、基材の一方の面又は両面に、カチオン重合性紫外線硬化型シリコーン系剥離処理剤による剥離処理剤層を有する剥離ライナーや、基材の一方の面にカチオン重合性紫外線硬化型シリコーン系剥離処理剤による剥離処理剤層を有し、且つ他方の面が粘着剤層を形成させるための面である背面処理が施された粘着テープ又はシート用基材であることが好ましい。
【0012】
本発明は、また、前記剥離処理基材を製造する方法であって、カチオン重合性紫外線硬化型シリコーン系剥離処理剤が、基材の少なくとも一方の面に、少なくとも部分的に塗布されて形成され且つ紫外線照射処理が施されていないカチオン重合性紫外線硬化型シリコーン系剥離処理剤の塗布層に対して、加熱処理を施す工程を具備していることを特徴とする剥離処理基材の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の剥離処理基材によれば、カチオン重合性紫外線硬化型シリコーン系剥離処理剤による剥離処理剤層と、基材との密着性が優れている。そのため、過度の加熱や加湿の条件下で暴露された場合や、長期間にわたり保管された場合であっても、基材から剥離処理剤層中のシリコーン成分の脱落を抑制又は防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明の実施の形態を、必要に応じて図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、同一の部材や部分などには同一の符号を付している場合がある。
【0015】
[剥離処理基材]
本発明の剥離処理基材は、図1で示されるように、基材の少なくとも一方の面に、少なくとも部分的に、カチオン重合性紫外線硬化型シリコーン系剥離処理剤(「UVカチオン系シリコーン剥離処理剤」と称する場合がある)による剥離処理剤層(「UVカチオン系シリコーン剥離処理剤層」と称する場合がある)を有しており、前記UVカチオン系シリコーン剥離処理剤層は、UVカチオン系シリコーン剥離処理剤を、基材の少なくとも一方の面に、少なくとも部分的に、塗布した後に、且つ紫外線照射処理を行う前に、加熱処理を施すことにより形成されている。そのため、UVカチオン系シリコーン剥離処理剤を塗布した後に且つ紫外線照射処理を行う前に、加熱処理を施すことにより形成されたUVカチオン系シリコーン剥離処理剤層(「加熱処理UVカチオン系シリコーン剥離処理剤層」と称する場合がある)は、基材の材質や構造、UVカチオン系シリコーン剥離処理剤の種類、加熱処理UVカチオン系シリコーン剥離処理剤層の厚みなどによらずに、基材上に優れた密着性で形成されており、過度の加熱や加湿の条件下で暴露された場合や、長期間にわたり保管された場合であっても、加熱処理UVカチオン系シリコーン剥離処理剤層中のシリコーン成分は、基材から脱落することが抑制又は防止されている。従って、本発明の剥離処理基材を用いると、剥離ライナーとしての剥離特性や、粘着テープ又はシートの粘着特性を、安定した状態で保持又は維持させることができる。
【0016】
図1は、本発明の剥離処理基材の例を示す概略断面図である。図1において、11〜13は、それぞれ、剥離処理基材、2は基材、3は加熱処理UVカチオン系シリコーン剥離処理剤層、4は粘着剤層、5は粘着テープ又はシートである。図1(a)で示される剥離処理基材11は、基材2の両面に加熱処理UVカチオン系シリコーン剥離処理剤層3が形成された構成を有している剥離ライナーである。また、図1(b)で示される剥離処理基材12は、基材2の片面に加熱処理UVカチオン系シリコーン剥離処理剤層3が形成された構成を有している剥離ライナーである。さらにまた、図1(c)で示される剥離処理基材13は、基材2の一方の面に加熱処理UVカチオン系シリコーン剥離処理剤層3が形成され、且つ他方の面は粘着剤層を形成させるための面である背面処理が施された粘着テープ又はシート用基材であり、該剥離処理基材13における粘着剤層を形成させるための面(すなわち、加熱処理UVカチオン系シリコーン剥離処理剤層3が形成されていない面)には、粘着剤層4が形成されており、剥離処理基材13および粘着剤層4の全体が、粘着テープ又はシート5となっている。
【0017】
但し、前記加熱処理UVカチオン系シリコーン剥離処理剤層3は、UVカチオン系シリコーン剥離処理剤を、基材の少なくとも一方の面に、少なくとも部分的に、塗布した後に、加熱処理を施し、さらにその後、紫外線照射処理を施して形成されている。すなわち、UVカチオン系シリコーン剥離処理剤を塗布してから、紫外線照射処理を行う前の間で、加熱処理が施されている。この加熱処理は、紫外線照射処理により硬化させる前に行われているので、加熱処理を施すと、未硬化状態のUVカチオン系シリコーン剥離処理剤が、基材表面上に細部までいきわたることができ、また、界面相溶効果が発揮される。そのため、加熱処理後、紫外線照射処理を施して硬化させると、基材上に、優れた密着性で、加熱処理UVカチオン系シリコーン剥離処理剤層を形成させることができる。
【0018】
(加熱処理UVカチオン系シリコーン剥離処理剤層)
加熱処理UVカチオン系シリコーン剥離処理剤層は、UVカチオン系シリコーン剥離処理剤を塗布した後に且つ紫外線照射処理を行う前に、加熱処理を施すことにより、基材の一方の面又は両面に、少なくとも部分的に、形成されている。なお、UVカチオン系シリコーン剥離処理剤は、紫外線照射によって硬化(架橋)して、剥離性皮膜を形成し、熱安定性に優れた剥離特性を発現するUVカチオン系シリコーン剥離処理剤層を形成することができる。このようなUVカチオン系シリコーン剥離処理剤としては、紫外線照射により硬化(架橋)が可能なカチオン重合型のシリコーン系剥離処理剤であれば特に制限されない。UVカチオン系シリコーン剥離処理剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0019】
UVカチオン系シリコーン剥離処理剤では、主鎖のポリシロキサン成分中に、カチオン重合反応性官能基(またはカチオン重合反応部位)が1種又は2種以上導入された変性シリコーン系ポリマー成分(変性ポリシロキサン成分)が、1種又は2種以上組み合わせられて用いられている。このような変性シリコーン系ポリマー成分において、カチオン重合反応性官能基としては、例えば、エポキシ基(特に、脂環式エポキシ基など)を好適に用いることができる。また、前記カチオン重合反応性官能基は、変性シリコーン系ポリマー成分1分子中に、少なくとも2つ導入されていることが好ましい。なお、カチオン重合反応性官能基は、変性シリコーン系ポリマー成分中の主鎖又は側鎖の珪素原子に、直接結合していてもよく、2価の基(例えば、アルキレン基、アルキレンオキシ基等の2価の有機基など)を介して結合していてもよい。
【0020】
従って、カチオン重合反応性官能基が導入された変性シリコーン系ポリマー成分としては、分子中に少なくとも2つのエポキシ基を有する変性シリコーン系ポリマー成分を好適に用いることができる。分子中に少なくとも2つのエポキシ基を有する変性シリコーン系ポリマー成分としては、特に制限されないが、例えば、主鎖のポリシロキサン成分中に、γ−グリシジルオキシプロピル基、β(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、β(4−メチル−3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピル基などのエポキシ基含有基(特に、脂環式エポキシ基を含有する基)が、1分子中に少なくとも2つ導入された変性シリコーン系ポリマー成分などが挙げられる。なお、前記エポキシ基含有基は、例えば、モノマー成分として「HOSi(R1)(R2)OH」(R1はエポキシ基含有基、R2は水素原子又は炭化水素基)を用いることにより、分子中に導入することができる。
【0021】
なお、前記変性シリコーン系ポリマー成分は、直鎖状、分岐鎖状のいずれの鎖状形態を有していてもよく、また、これらの混合物であってもよい。
【0022】
また、UVカチオン系シリコーン剥離処理剤では、各種の紫外線開裂型開始剤(光重合開始剤)が1種又は2種以上組み合わせて用いられている。このような紫外線開裂型開始剤としては、オニウム塩系紫外線開裂型開始剤(オニウム塩系光重合開始剤)を好適に用いることができる。なお、紫外線開裂型開始剤は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0023】
紫外線開裂型開始剤として用いられるオニウム塩系紫外線開裂型開始剤としては、例えば、特開平6−32873号公報で記載されているオニウム塩光開始剤や、特開2000−281965号公報で記載されているオニウム塩系光開始剤、特開平11−228702号公報で記載されているオニウム塩系光開始剤、特公平8−26120号公報で記載されているオニウム塩系光開始剤などが挙げられる。このようなオニウム塩系紫外線開裂型開始剤としては、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、トリアリールセレノニウム塩、テトラアリールホスホニウム塩、アリールジアゾニウム塩などが挙げられる。オニウム塩系紫外線開裂型開始剤としては、ジアリールヨードニウム塩が好適である。
【0024】
より具体的には、例えば、ジアリールヨードニウム塩としては、「Y2+-(Yは置換基を有していてもよいアリール基を示す。また、X-は、非求核性且つ非塩基性の陰イオンである。)」で表される化合物が挙げられる。なお、X-の非求核性且つ非塩基性の陰イオンとしては、例えば、SbF6-、SbCl6-、BF4-、[B(C654-、[B(C654-、[B(C64CF34-、[(C652BF2-、[C65BF3-、[B(C6324-、AsF6-、PF6-、HSO4-、ClO4-などが挙げられる。
【0025】
なお、トリアリールスルホニウム塩、トリアリールセレノニウム塩、テトラアリールホスホニウム塩、アリールジアゾニウム塩は、前記ジアリールヨードニウム塩に対応した化合物が挙げられる。具体的には、トリアリールスルホニウム塩、トリアリールセレノニウム塩、テトラアリールホスホニウム塩、アリールジアゾニウム塩としては、それぞれ、「Y3+-」、「Y3Se+-」、「Y4+-」、「YN2+-」(Y、X-は、前記に同じ)で表される化合物を用いることができる。
【0026】
オニウム塩系紫外線開裂型開始剤としては、アンチモン原子を含有する紫外線開裂型開始剤(アンチモン系紫外線開裂型開始剤)、ホウ素原子を含有する紫外線開裂型開始剤(ホウ素系紫外線開裂型開始剤)を好適に用いることができ、特に、アンチモン原子を含有するジアリールヨードニウム塩系紫外線開裂型開始剤や、ホウ素原子を含有するジアリールヨードニウム塩系紫外線開裂型開始剤が好適である。
【0027】
従って、UVカチオン系シリコーン剥離処理剤としては、例えば、分子中に少なくとも2つのエポキシ基を有する変性シリコーン系ポリマー成分(エポキシ基含有ポリシロキサン成分)と、紫外線開裂型開始剤とを少なくとも含有するものなどが挙げられる。UVカチオン系シリコーン剥離処理剤において、紫外線開裂型開始剤の割合としては、触媒量であれば特に制限されないが、例えば、エポキシ基含有ポリシロキサン成分100重量部に対して0.1〜8重量部(好ましくは0.3〜5重量部、さらに好ましくは0.5〜3重量部)の範囲から選択することができる。
【0028】
加熱処理UVカチオン系シリコーン剥離処理剤層は、UVカチオン系シリコーン剥離処理剤を、基材の少なくとも一方の面に、少なくとも部分的(全面又は部分的)な所定の部位に塗布した後に、所定の温度で加熱処理を施し、その後、紫外線照射処理を施すことにより形成することができる。UVカチオン系シリコーン剥離処理剤の塗布の際には、適正な塗布量で塗布することが重要である。UVカチオン系シリコーン剥離処理剤の塗布量が、少なすぎると、剥離強度(剥離に要する力)が大きくなって実用上問題が生じ、一方、多すぎると、コストが高くなって経済的に不利になる。UVカチオン系シリコーン剥離処理剤の適正な塗布量(固形分)としては、UVカチオン系シリコーン剥離処理剤の種類、UVカチオン系シリコーン剥離処理剤を塗布する基材の種類、加熱処理UVカチオン系シリコーン剥離処理剤層が重ね合わせられる粘着剤層を形成する粘着剤の種類などに応じて適宜選択することができるが、例えば、0.01〜10g/m2程度であり、好ましくは0.05〜5g/m2である。
【0029】
また、UVカチオン系シリコーン剥離処理剤の塗布層(未硬化のUVカチオン系シリコーン剥離処理剤層)に加熱処理を施す際には、公知の加熱装置を用いることができる。例えば、所定温度に設定された加熱オーブン中に、所定時間、入れることにより加熱処理を施す方法などが挙げられる。加熱処理温度としては、UVカチオン系シリコーン剥離処理剤の種類や、基材の種類などに応じて、例えば、35〜120℃の範囲から選択することができ、好ましくは40〜110℃(さらに好ましくは、50〜100℃)である。また、加熱処理時間としては、例えば、3秒〜2分(好ましくは5秒〜1分)の範囲から選択することができる。なお、加熱処理温度が、35℃未満であると、加熱処理UVカチオン系シリコーン剥離処理剤層と基材との密着性向上効果が低下し、一方、120℃を超えると、UVカチオン系シリコーン剥離処理剤中に有効成分として含まれている変性シリコーン系ポリマー成分(主鎖のポリシロキサン成分中に、カチオン重合反応性官能基が導入された変性シリコーン系ポリマー成分など)が揮発する可能性があり、好ましくない。
【0030】
さらにまた、加熱処理が施された未硬化のUVカチオン系シリコーン剥離処理剤層に、紫外線照射処理を施す際には、公知の紫外線照射処理方法を適宜利用することができる。紫外線の照射エネルギーや照射時間などは、特に制限されず、紫外線開裂型開始剤(光重合開始剤)を活性化させて、未硬化のUVカチオン系シリコーン剥離処理剤層を硬化させることができればよい。
【0031】
加熱処理UVカチオン系シリコーン剥離処理剤層の厚みとしては、特に制限されないが、例えば、0.01〜5μm(好ましくは0.05〜4μm、さらに好ましくは0.1〜3μm)の範囲から選択することができる。
【0032】
(基材)
本発明の剥離処理基材は、前述のように、基材の一方の面又は両面に、少なくとも部分的に、加熱処理UVカチオン系シリコーン剥離処理剤層を有している。具体的には、剥離処理基材は、基材(剥離ライナー用基材)の一方の面又は両面に、加熱処理UVカチオン系シリコーン剥離処理剤層を有する剥離ライナーや、基材(粘着テープ又はシート用基材)の一方の面に加熱処理UVカチオン系シリコーン剥離処理剤層を有し、且つ他方の面が粘着剤層を形成させるための面である背面処理が施された粘着テープ又はシート用基材として利用することができる。従って、基材としては、剥離ライナー用基材や粘着テープ又はシート用基材を用いることができる。このような基材としては、基材の種類(剥離ライナー用基材や粘着テープ又はシート用基材など)に応じて、例えば、紙系基材、プラスチック系基材、繊維系基材、金属系基材などの各種基材から適宜選択することができる。基材は単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。基材は、単層の形態を有していてもよく、積層された形態を有していてもよい。従って、基材としては、例えば、金属系基材とプラスチック系基材との積層体や、紙系基材とプラスチック系基材との積層体などであってもよい。但し、基材としては、UVカチオン系シリコーン剥離処理剤の硬化を阻害する成分を含有しており、UVカチオン系シリコーン剥離処理剤を塗工した際に、UVカチオン系シリコーン剥離処理剤中に抽出されて、UVカチオン系シリコーン剥離処理剤の硬化不良を生じさせるような基材は好ましくない。
【0033】
なお、紙系基材としては、例えば、和紙、洋紙、上質紙、グラシン紙、クラフト紙、クルパック紙、クレープ紙、クレーコート紙、トップコート紙、合成紙、プラスチックラミネート紙、プラスチックコート紙などが挙げられる。紙系基材としては、UVカチオン系シリコーン剥離処理剤が塗布される面には、UVカチオン系シリコーン剥離処理剤の硬化阻害が生じないように、塩基成分が表層にでない又はでていないものを用いることが重要である。また、紙系基材としては、耐熱性を有する紙系基材も好適に用いることができる。耐熱性を有する紙系基材としては、中性紙化処理が施された紙系基材(例えば、中性紙など)などが挙げられる。
【0034】
また、プラスチック系基材としては、例えば、ポリオレフィン製シート又はフィルム(ポリエチレン製シート又はフィルム、ポリプロピレン製シート又はフィルム、エチレン−プロピレン共重合体製シート又はフィルムなど)、塩化ビニル系樹脂製シート又はフィルム、酢酸ビニル系樹脂製シート又はフィルム、フッ素系樹脂製シート又はフィルム、セロハン類などが挙げられる。また、プラスチック系基材としては、耐熱性を有するプラスチック系基材も好適に用いることができる。耐熱性を有するプラスチック系基材としては、例えば、ポリエステル製シート又はフィルム(ポリエチレンテレフタレート製シート又はフィルム、ポリエチレンナフタレート製シート又はフィルム、ポリブチレンテレフタレート製シート又はフィルムなど)、ポリフェニレンサルファイド製シート又はフィルム、ポリエーテルエーテルケトン製シート又はフィルム、ポリアミドイミド製シート又はフィルム、ポリエーテルイミド製シート又はフィルム、ポリイミド製シート又はフィルム、アミド系樹脂製シート又はフィルム(ポリアミド製シート又はフィルム、全芳香族ポリアミド製シート又はフィルムなど)などが挙げられる。
【0035】
さらに、繊維系基材としては、例えば、綿繊維、スフ、マニラ麻、パルプ、レーヨン、アセテート繊維、ポリエステル繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリアミド繊維、ポリオレフィン繊維などの天然繊維、半合成繊維又は合成繊維の繊維状物質などからなる単独又は混紡などの織布や不織布等の布系基材などが挙げられ、金属系基材としては、例えば、アルミニウム箔、銅箔、ステンレス箔、鉄箔などが挙げられる。なお、金属系基材として、表面が塩基性で金属系基材は、UVカチオン系シリコーン剥離処理剤の硬化阻害を生じさせるので、不活性化してあることが望ましい。
【0036】
基材の厚みとしては、特に制限されず、基材の種類や、剥離処理基材の用途などに応じて、適宜選択することができ、例えば、2〜1000μmの範囲から選択することができる。具体的には、紙系基材の厚みとしては、50〜150μmであることが好ましく、プラスチック系基材の厚みとしては、6〜250μmであることが好ましい。
【0037】
なお、基材の表面には、加熱処理UVカチオン系シリコーン剥離処理剤層等との密着性を高めるため、慣用の表面処理、例えば、下塗り剤(アンダーコート剤)等の各種コーティング剤によるコーティング処理の他、クロム酸処理、オゾン暴露、火炎暴露、高圧電撃暴露、イオン化放射線処理などの各種処理が施されていてもよい。なお、下塗り剤としては、アクリル系下塗り剤、ゴム系下塗り剤(スチレン−ブタジエンブロック共重合体系下塗り剤など)などの公知の下塗り剤(好ましくは、アクリル系下塗り剤)を用いることができる。また、下塗り剤による下塗り剤層は、透明性を有していることが好ましいが、用途等に応じて、着色されていてもよい。但し、表面処理としては、UVカチオン系シリコーン剥離処理剤の硬化を阻害するような表面処理は好ましくない。例えば、表面処理が、下塗り剤によるコーティング処理である場合、下塗り剤としては、UVカチオン系シリコーン剥離処理剤の硬化を阻害する成分を含有しており、下塗り剤による表面処理上に、UVカチオン系シリコーン剥離処理剤を塗工した際に、UVカチオン系シリコーン剥離処理剤中に抽出されて、UVカチオン系シリコーン剥離処理剤の硬化不良を生じさせるような下塗り剤は好ましくない。
【0038】
本発明の剥離処理基材は、剥離ライナーである場合、前述のように、基材(剥離ライナー用基材)の一方の面又は両面に、少なくとも部分的に、加熱処理UVカチオン系シリコーン剥離処理剤層を有している。すなわち、剥離処理基材が剥離ライナーである場合、加熱処理UVカチオン系シリコーン剥離処理剤層は、剥離ライナー用基材の一方の面に全面的に又は部分的に形成されていてもよく、剥離ライナー用基材の一方の面に全面的に又は部分的に形成され、且つ他方の面に全面的に又は部分的に形成されていてもよい。例えば、加熱処理UVカチオン系シリコーン剥離処理剤層は、剥離ライナー用基材の何れかの面において、部分的に形成されている場合、加熱処理UVカチオン系シリコーン剥離処理剤層が形成されていない部分には、加熱処理UVカチオン系シリコーン剥離処理剤層以外の剥離処理剤層が形成されていてもよい。
【0039】
また、加熱処理UVカチオン系シリコーン剥離処理剤層は、剥離ライナー用基材の一方の面(片面)に形成されている場合、他方の面には、加熱処理UVカチオン系シリコーン剥離処理剤層以外の剥離処理剤層が形成されていてもよい。なお、加熱処理UVカチオン系シリコーン剥離処理剤層以外の剥離処理剤層としては、UVカチオン系シリコーン剥離処理剤を塗布した後に、加熱処理を施さずに、紫外線照射処理を施して形成されたUVカチオン系シリコーン剥離処理剤層や、UVカチオン系シリコーン剥離処理剤以外の剥離処理剤(例えば、ラジカル付加重合性紫外線硬化型シリコーン系剥離処理剤等の紫外線硬化型シリコーン系剥離処理剤の他、フッ素系剥離処理剤、長鎖アルキル系剥離処理剤など)を用いて形成された剥離処理剤層などが挙げられる。
【0040】
さらにまた、加熱処理UVカチオン系シリコーン剥離処理剤層は、剥離ライナー用基材の両面に形成されている場合、両面の加熱処理UVカチオン系シリコーン剥離処理剤層は、2つのUVカチオン系シリコーン剥離処理剤は、同一のUVカチオン系シリコーン剥離処理剤により形成されていてもよく、異なるUVカチオン系シリコーン剥離処理剤により形成されていてもよい。また、それぞれの加熱処理UVカチオン系シリコーン剥離処理剤層の厚みは、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0041】
このように、本発明の剥離処理基材は、剥離ライナーである場合、各種粘着製品における粘着面(例えば、粘着テープ又はシートにおける粘着剤層表面など)を保護するための剥離ライナーとして用いることができる。なお、剥離処理基材を適用することができる粘着製品としては、粘着面を有していれば特に制限されず、粘着テープ又はシート、粘着フィルム、粘着ラベルなどのシート状形状を有する粘着製品の他、シート状形状以外の形状を有する各種製品(例えば、少なくとも一方の表面に、少なくとも部分的に粘着剤層が形成された回路基板など)などが挙げられる。このような粘着製品としては、各粘着製品の種類に応じて、公知の粘着製品から適宜選択して用いることができる。具体的には、粘着製品が粘着テープ又はシートである場合、粘着テープ又はシートとしては、公知の粘着テープ又はシート(例えば、公知の基材の少なくとも一方の面に公知の粘着剤による粘着剤層を有している基材付きタイプの粘着テープ又はシートや、公知の粘着剤による粘着剤層のみを有している基材レスタイプの粘着テープ又はシートなど)などが挙げられる。
【0042】
また、本発明の剥離処理基材は、粘着テープ又はシート用基材である場合、前述のように、基材(粘着テープ又はシート用基材)の一方の面に、少なくとも部分的に(全面的に又は部分的に)、加熱処理UVカチオン系シリコーン剥離処理剤層を有しており、他方の面は、粘着剤層を形成させるための面となっている。すなわち、本発明の剥離処理基材が粘着テープ又はシート用基材である場合、剥離処理基材における加熱処理UVカチオン系シリコーン剥離処理剤層が形成されない面又は形成されていない面(粘着剤層を形成させるための面)に、粘着剤層を設けることにより、粘着テープ又はシートが得られる。この場合、加熱処理UVカチオン系シリコーン剥離処理剤層を形成する際の基材(粘着テープ又はシート用基材)には、予め、粘着剤層が形成されていてもよい。従って、剥離処理基材は、粘着テープ又はシートを作製する際に用いられる基材であってもよく、粘着テープ又はシートにおける基材であってもよい。
【0043】
(粘着剤層)
前記粘着剤層を形成する粘着剤としては、例えば、公知の粘着剤を用いることができる。粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、ウレタン系粘着剤、フッ素系粘着剤、スチレン−ジエンブロック共重合体系粘着剤、これらの粘着剤に融点が約200℃以下の熱溶融性樹脂を配合したクリ−プ特性改良型粘着剤などが挙げられる。粘着剤は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0044】
粘着剤としては、耐熱性等の観点から、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤を好適に用いることができる。アクリル系粘着剤としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの1種又は2種以上を単量体主成分として用いられ、必要に応じて(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合が可能な単量体(共重合性単量体)を1種又は2種以上用いられたアクリル系重合体(単独重合体又は共重合体)をベースポリマー又はポリマー主成分とするアクリル系粘着剤が挙げられる。
【0045】
アクリル系重合体において、(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、単量体主成分として用いられているので、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの割合としては、単量体成分全量に対して50重量%以上であることが重要であり、好ましくは85〜98重量%(特に90〜97重量%)である。従って、共重合性単量体の割合は、単量体成分全量に対して50重量%以下となることが重要であり、好ましくは2〜15重量%(特に3〜10重量%)である。
【0046】
前記アクリル系粘着剤における(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシルなどの(メタ)アクリル酸C1-20アルキルエステル[好ましくは(メタ)アクリル酸C2-14アルキル(直鎖状又は分岐鎖状のアルキル)エステル]などが挙げられる。
【0047】
アクリル系粘着剤において、共重合性単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸などのカルボキシル基含有単量体又はその無水物;アクリルアミド、メタアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミドなどのアミド基含有単量体;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリロイルモルホリンなどのアミノ基含有単量体;(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルや(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルや、グリセリンジメタクリレートなどの水酸基含有単量体;(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジルなどのエポキシ基含有単量体;シクロヘキシルマレイミド、イソプロピルマレイミドなどのイミド基含有単量体;2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートなどのイソシアネート基含有単量体;ビニルスルホン酸ナトリウムなどのスルホン酸基含有単量体;スチレン、置換スチレンなどの芳香族ビニル化合物;アクリロニトリルやメタクリロニトリルなどのシアノ基含有単量体;エチレン、ブタジエン、イソプレン、イソブチレンなどのオレフィン又はジエン類;酢酸ビニルなどのビニルエステル類;ビニルアルキルエーテルなどのビニルエーテル類;塩化ビニルなどが挙げられる。なお、共重合性単量体としては、カルボキシル基、アミド基(アミド結合含有基)、アミノ基、水酸基(ヒドロキシル基)などの極性基を有する単量体(極性基含有単量体)を好適に用いることができる。
【0048】
アクリル系粘着剤には、粘着剤の保持特性等を向上させるために、交叉結合剤として、公知の架橋剤(交叉結合剤)を用いることができる。このような架橋剤としては、特に制限されないが、例えば、エポキシ系架橋剤(ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルなど)、イソシアネート系架橋剤(トリレンジイソシアネート、トリメチロールプロパントリイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなど)、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、過酸化物系架橋剤、メラミン系架橋剤、アミノ系架橋剤、カップリング剤系架橋剤(シランカップリング剤など)等が挙げられる。
【0049】
また、アクリル系粘着剤において、光重合を行う際などでは、共重合性単量体として、多官能性の共重合性単量体(多官能モノマー)が用いられていてもよい。このような多官能モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン又はその変性体のトリ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA又はその変性体のジ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのトリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。なお、光重合に際しては、例えば、アセトフェノン系光開始剤、ベンゾフェノン系光開始剤、ベンゾイン系光開始剤、ベンジル系光開始剤、ベンゾインアルキルエーテル系光開始剤、ケタール系光開始剤、チオキサントン系光開始剤、α−ケトール系光開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光開始剤、光活性オキシム系光開始剤などの公知乃至慣用の光開始剤を用いることができる。
【0050】
また、ゴム系粘着剤としては、天然ゴムや合成ゴムをベースポリマーとしている。前記合成ゴムとしては、例えば、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、スチレン−イソプレン(SI)ゴム、スチレン−ブタジエン(SB)ゴム、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)ゴム、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)ゴム、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)ゴム、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)ゴム、スチレン−エチレン−プロピレンブロック共重合体(SEP)ゴム、エチレン−プロピレン共重合体ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴム、再生ゴム、ブチルゴム、ポリイソブチレンや、これらの変性体などが挙げられる。特に、耐熱性の観点からは、ゴム系粘着剤としては、カルボキシル変性アクリロニトリル−ブタジエンゴムが好適である。
【0051】
ゴム系粘着剤には、アクリル系粘着剤と同様に、粘着剤の保持特性等を向上させるために、交叉結合剤として、公知の架橋剤(交叉結合剤)を用いることができる。このような架橋剤としては、特に制限されないが、例えば、硫黄、過酸化物系架橋剤、金属キレート系架橋剤、キノイド系架橋剤、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、金属塩系架橋剤、メラミン系架橋剤、アミノ系架橋剤、カップリング剤系架橋剤(シランカップリング剤など)等が挙げられる。
【0052】
粘着剤として高度の耐熱性を必要とする場合、粘着剤のベースポリマー(アクリル系重合体や、合成ゴムなど)としては、紫外線照射により重合が可能なもの又はその重合物や、架橋剤(例えば、エポキシ系架橋剤など)により架橋が可能なもの又はその架橋物を好適に用いることができる。このように、粘着剤のベースポリマー(アクリル系重合体や、合成ゴムなど)として、架橋剤による架橋が可能なもの又はその架橋物を用いる場合、ベースポリマーには、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基などの反応性官能基が導入されていることが好ましい。
【0053】
粘着剤には、必要に応じて、粘着付与剤(例えば、ロジン誘導体樹脂、ポリテルペン樹脂、石油樹脂、油溶性フェノール樹脂などからなる粘着付与剤)、可塑剤、軟化剤、充填剤、着色剤(顔料や染料など)、老化防止剤などの公知の各種添加剤が添加されていてもよい。
【0054】
粘着剤層の厚さとしては、特に制限されないが、例えば、1μm〜1.2mmの範囲から選択することができ、好ましくは5〜80μmである。
【0055】
粘着剤層は、単層の形態を有していてもよく、複層で積層された形態を有していてもよい。
【0056】
粘着剤層は、公知の粘着剤層の形成方法を利用して形成することができる。例えば、粘着剤を、乾燥後の厚みが所定の厚みとなる塗布量で、粘着テープ又はシート用基材における粘着剤層を形成させるための面に、直接塗布して、乾燥又は硬化させることにより形成する方法や、適当なセパレータ(剥離紙など)上に粘着剤を、乾燥後の厚みが所定の厚みとなる塗布量で塗布して、乾燥又は硬化させることにより粘着剤層を形成し、この粘着剤層を、粘着テープ又はシート用基材における粘着剤層を形成させるための面に転写(移着)して形成する方法などにより、粘着剤層を形成することができる。
【0057】
また、粘着剤層の形成に際しては、必要に応じて、加熱等により架橋処理を行ったり、電磁波(紫外線や電子線等)の照射により重合を行ったりすることができる。さらに、粘着剤層は、溶融押出方法を利用して形成することもできる。
【0058】
なお、粘着剤層は、粘着テープ又はシート用基材の所定の面に、加熱処理UVカチオン系シリコーン剥離処理剤層を形成する前に、予め形成していてもよく、また、粘着テープ又はシート用基材の一方の面に加熱処理UVカチオン系シリコーン剥離処理剤層がされた剥離処理基材の所定の面に、形成してもよい。
【0059】
このような粘着テープ又はシートにおける粘着剤層表面(粘着面)は、粘着テープ又はシート用基材としての剥離処理基材における加熱処理UVカチオン系シリコーン剥離処理剤層と重ね合わせてロール状に巻回することにより、保護することができる。
【0060】
本発明の剥離処理基材は、前述のように、UVカチオン系シリコーン剥離処理剤を塗布した後に且つ紫外線照射処理を行う前に、加熱処理を施すことにより作製されているので、紫外線照射処理を行うと、反応速度が速くなり、転化率が高くなるという効果が発揮される場合がある。また、このように、転化率が高くなっていると、紫外線照射処理後に、エージングを行わなくてもよくなる。さらに、紫外線照射処理の際の反応阻害物の水分を、加熱処理の際に除去することも可能である。しかも、塗工面のレベリング効果も発揮させることができる。
【0061】
[剥離処理基材の製造方法]
本発明の剥離処理基材の製造方法は、前記剥離処理基材を製造する方法であり、カチオン重合性紫外線硬化型シリコーン系剥離処理剤が、基材の少なくとも一方の面に、少なくとも部分的に塗布されて形成され且つ紫外線照射処理が施されていないカチオン重合性紫外線硬化型シリコーン系剥離処理剤の塗布層に対して、加熱処理を施す工程を具備している。従って、前記剥離処理基材は、下記の工程(A)〜(C)を具備する製造方法により作製することができる。
工程(A):UVカチオン系シリコーン剥離処理剤を、基材の少なくとも一方の面に、少なくとも部分的に、塗布する工程(塗布工程)
工程(B):UVカチオン系シリコーン剥離処理剤の塗布層に対して、加熱処理を施す工程(加熱処理工程)
工程(C):加熱処理が施されたUVカチオン系シリコーン剥離処理剤の塗布層に対して、紫外線照射処理を施す工程(紫外線照射処理工程)
【0062】
工程(A)では、UVカチオン系シリコーン剥離処理剤を、基材(剥離ライナー用基材や、粘着テープ又はシート用基材など)の所定の面における所定の部位に、塗布している。UVカチオン系シリコーン剥離処理剤の塗布に際しては、慣用のコーター(例えば、グラビヤロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーターなど)を用いることができる。なお、UVカチオン系シリコーン剥離処理剤の塗布量は、適正な塗布量(例えば、0.01〜10g/m2)であることが重要である。
【0063】
また、工程(B)では、前記工程(A)の後、UVカチオン系シリコーン剥離処理剤が塗布された基材におけるUVカチオン系シリコーン剥離処理剤の塗布層(未硬化のUVカチオン系シリコーン剥離処理剤層)に対して、加熱処理を施している。UVカチオン系シリコーン剥離処理剤の塗布層に加熱処理を施す際には、公知の加熱装置(例えば、加熱オーブン、ホットプレート、熱風乾燥機、近赤外線ランプ、エアードライヤー等の加熱装置)を用いることができる。加熱温度としては、35〜120℃(好ましくは40〜110℃、さらに好ましくは、50〜100℃)の範囲から選択することができ、また、加熱時間としては、3秒〜2分(好ましくは5秒〜1分)の範囲から選択することができる。
【0064】
なお、UVカチオン系シリコーン剥離処理剤の塗布層に加熱処理を施す際には、UVカチオン系シリコーン剥離処理剤の塗布層のみに加熱処理が施されるようにして加熱処理を行ってもよく、UVカチオン系シリコーン剥離処理剤の塗布層を有する基材全体に対して加熱処理を行ってもよい。
【0065】
さらにまた、工程(C)では、前記工程(B)の後、UVカチオン系シリコーン剥離処理剤が塗布された後、加熱処理が施されたUVカチオン系シリコーン剥離処理剤の塗布層に対して、紫外線照射処理を施している。加熱処理が施されたUVカチオン系シリコーン剥離処理剤の塗布層に紫外線照射処理を施す際には、公知の紫外線照射装置(例えば、光源として、フュージョン(H)ランプ、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ(オゾン発生タイプ、オゾンレスタイプ)などが用いられた紫外線照射装置)を用いることができ、特に、光源としてフュージョン(H)ランプを用いることで、高い生産性で紫外線照射処理を施すことができる。なお、照度[イーアイティー(EIT)社製の「マイクロキュア」を用いて測定された照度]としては、例えば、10〜3000(mW/cm2)[好ましくは50〜2500(mW/cm2)、さらに好ましくは100〜2200(mW/cm2)]の範囲から適宜選択することができる。また、照射する際のライン速度としては、1〜200m/分(好ましくは3〜180m/分、さらに好ましくは10〜150m/分)の範囲から適宜選択することができる。
【0066】
なお、加熱処理が施されたUVカチオン系シリコーン剥離処理剤の塗布層に紫外線照射処理を施す際には、加熱処理が施されたUVカチオン系シリコーン剥離処理剤の塗布層のみに紫外線照射処理が施されるようにして紫外線照射処理を行ってもよく、加熱処理が施されたUVカチオン系シリコーン剥離処理剤の塗布層を有する基材全体に対して紫外線照射処理を行ってもよい。
【0067】
本発明では、(1)工程(A)、工程(B)および工程(C)を、それぞれ、独立した工程として、非連続的に実施する方法、(2)工程(A)と工程(B)とを一連の工程として、連続的に実施した後、工程(C)を実施する方法、(3)工程(A)を実施した後、工程(B)と工程(C)とを一連の工程として、連続的に実施する方法、(4)工程(A)、工程(B)および工程(C)を一連の工程として、連続的に実施する方法などにより、各工程を実施することができる。
【実施例】
【0068】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、以下において、「部」とあるのは「重量部」を、「%」とあるのは「重量%」を、それぞれ意味する。また、剥離処理基材の作製や測定において、温度等の条件を限定していない場合の温度等の条件は、23℃で且つ50%RHの条件である。
【0069】
(実施例1)
商品名「X−62−7629」(信越化学工業社製):100部に対して、商品名「CAT−7603」(信越化学工業社製)を1部加えて、攪拌して、カチオン重合性紫外線硬化型シリコーン系剥離処理剤としての剥離処理液を得た。
【0070】
この剥離処理液を、上質紙(坪量70g)の一方の面に塗布し、バッチ式加熱オーブン(設定温度:80℃)にて30秒間加熱させた後、高圧水銀ランプ(オゾン発生タイプ、出力:80W/cm)1灯でライン速度:10m/minのコンベア搬送にて、紫外線照射処理を行って、剥離処理基材を得た。なお、得られた剥離処理基材において、カチオン重合性紫外線硬化型シリコーン系剥離処理剤の塗布量は、1.5g/m2(固形分)であった。
【0071】
また、加熱オーブンにより加熱処理した際の材料表面の最高温度は77℃であった。この表面温度の測定は、簡易温度検知ラベル(商品名「サーモラベル」日油技研社製)により行った。
【0072】
(実施例2)
実施例1と同様にして剥離処理液を得た。この剥離処理液を、実施例1と同様の上質紙(坪量70g)の一方の面に塗布し、バッチ式加熱オーブン(設定温度:40℃)にて60秒間加熱させた後、高圧水銀ランプ(オゾン発生タイプ、出力:80W/cm)1灯でライン速度:10m/minのコンベア搬送にて、紫外線照射処理を行って、剥離処理基材を得た。なお、得られた剥離処理基材において、カチオン重合性紫外線硬化型シリコーン系剥離処理剤の塗布量は、1.6g/m2(固形分)であった。また、加熱オーブンにより加熱処理した際の材料表面の最高温度は40℃であった。
【0073】
(実施例3)
実施例1と同様にして剥離処理液を得た。この剥離処理液を、実施例1と同様の上質紙(坪量70g)の一方の面に塗布し、バッチ式加熱オーブン(設定温度:110℃)にて30秒間加熱させた後、高圧水銀ランプ(オゾン発生タイプ、出力:80W/cm)1灯でライン速度:10m/minのコンベア搬送にて、紫外線照射処理を行って、剥離処理基材を得た。なお、得られた剥離処理基材において、カチオン重合性紫外線硬化型シリコーン系剥離処理剤の塗布量は、1.4g/m2(固形分)であった。また、加熱オーブンにより加熱処理した際の材料表面の最高温度は107℃であった。
【0074】
(実施例4)
商品名「UV9300」(GE東芝シリコーン社製):100部に対して、商品名「UV9380C」(GE東芝シリコーン社製)を1.5部加えて、攪拌して、カチオン重合性紫外線硬化型シリコーン系剥離処理剤としての剥離処理液を得た。
【0075】
この剥離処理液を、ポリエチレン製フィルム(商品名「NSO」大倉工業社製)の一方の面に塗布し、バッチ式加熱オーブン(設定温度:80℃)にて30秒間加熱させた後、高圧水銀ランプ(オゾン発生タイプ、出力:80W/cm)1灯でライン速度:10m/minのコンベア搬送にて、紫外線照射処理を行って、剥離処理基材を得た。なお、得られた剥離処理基材において、カチオン重合性紫外線硬化型シリコーン系剥離処理剤の塗布量は、1.0g/m2(固形分)であった。また、加熱オーブンにより加熱処理した際の材料表面の最高温度は78℃であった。
【0076】
(実施例5)
実施例1と同様にして剥離処理液を得た。この剥離処理液を、実施例1と同様の上質紙(坪量70g)の一方の面に塗布し、バッチ式加熱オーブン(設定温度:80℃)にて30秒間加熱させた後、高圧水銀ランプ(オゾン発生タイプ、出力:80W/cm)1灯でライン速度:10m/minのコンベア搬送にて、紫外線照射処理を行って、剥離処理基材を得た。なお、得られた剥離処理基材において、カチオン重合性紫外線硬化型シリコーン系剥離処理剤の塗布量は、0.3g/m2(固形分)であった。また、加熱オーブンにより加熱処理した際の材料表面の最高温度は77℃であった。
【0077】
(実施例6)
実施例1と同様にして剥離処理液を得た。この剥離処理液を、実施例1と同様の上質紙(坪量70g)の一方の面に塗布し、バッチ式加熱オーブン(設定温度:80℃)にて30秒間加熱させた後、高圧水銀ランプ(オゾン発生タイプ、出力:80W/cm)1灯でライン速度:10m/minのコンベア搬送にて、紫外線照射処理を行って、剥離処理基材を得た。なお、得られた剥離処理基材において、カチオン重合性紫外線硬化型シリコーン系剥離処理剤の塗布量は、3.5g/m2(固形分)であった。また、加熱オーブンにより加熱処理した際の材料表面の最高温度は77℃であった。
【0078】
(比較例1)
実施例1と同様にして剥離処理液を得た。この剥離処理液を、実施例1と同様の上質紙(坪量70g)の一方の面に塗布した後、高圧水銀ランプ(オゾン発生タイプ、出力:80W/cm)1灯でライン速度:10m/minのコンベア搬送にて、紫外線照射処理を行った。その後、バッチ式加熱オーブン(設定温度:80℃)にて30秒間加熱させて、剥離処理基材を得た。なお、得られた剥離処理基材において、カチオン重合性紫外線硬化型シリコーン系剥離処理剤の塗布量は、1.5g/m2(固形分)であった。また、加熱オーブンにより加熱処理した際の材料表面の最高温度は78℃であった。
【0079】
(比較例2)
実施例1と同様にして剥離処理液を得た。この剥離処理液を、実施例1と同様の上質紙(坪量70g)の一方の面に塗布した後、高圧水銀ランプ(オゾン発生タイプ、出力:80W/cm)1灯でライン速度:10m/minのコンベア搬送にて、紫外線照射処理を行って、剥離処理基材を得た。なお、得られた剥離処理基材において、カチオン重合性紫外線硬化型シリコーン系剥離処理剤の塗布量は、1.6g/m2(固形分)であった。
【0080】
(評価)
実施例1〜6および比較例1〜2により得られた剥離処理基材について、カチオン重合性紫外線硬化型シリコーン系剥離処理剤層の基材に対する密着性、剥離処理基材の粘着剤層に対する剥離力について、下記の測定方法又は評価方法により測定又は評価した。測定又は評価結果は表1に示した。
【0081】
(密着性の評価方法)
剥離処理基材を、カチオン重合性紫外線硬化型シリコーン系剥離処理剤層による皮膜が形成されている側の面を上にして、ガラス板上に置き、接触面積10mm×10mmサイズのショアA硬度(JIS K 6301 スプリング式A型)が70のシリコーン製ゴムを、前記皮膜上に置いて、0.5MPaの圧力摩擦にて、1m/分の速度で、10cm振幅させる動作を5回又は10回行った場合の皮膜(カチオン重合性紫外線硬化型シリコーン系剥離処理剤層)の脱落状態を観察し、下記の基準により、カチオン重合性紫外線硬化型シリコーン系剥離処理剤層の基材に対する密着性を評価した。
評価基準
◎:10回擦っても、皮膜の脱落が全くない。
○:5回擦っても、皮膜の脱落がないが、10回擦ると、表層に若干傷がはいる。
△:5回擦ると、皮膜の一部が脱落する。
×:5回擦ると、皮膜の大半が脱落する。もしくは、スミヤーが発生する。
【0082】
(剥離力の測定方法)
剥離処理基材の剥離処理面(すなわち、カチオン重合性紫外線硬化型シリコーン系剥離処理剤層による皮膜が形成されている側の面)上に、下記の粘着剤溶液を塗布し、剥離処理基材における基材が上質紙の場合は120℃で2分間、ポリエチレン製フィルムの場合は80℃で3分間乾燥処理を行って、厚さ:50μmの粘着剤層(感圧接着剤層)を形成して、粘着シートを作製した。
粘着剤溶液:アクリル酸ブチル:95部、およびアクリル酸:5部を仕込み、酢酸エチルを溶媒として、窒素置換下で、60℃で攪拌しながら、溶液重合を行って、粘度:約100Pa・s、重合率:99.3%、固形分:32%の感圧接着剤組成物の溶液を調製し、この溶液:100部(固形分)に、多官能エポキシ系架橋剤(商品名「テトラッドC」三菱瓦斯化学社製):0.1部(固形分)を添加して、粘着剤溶液を得た。
【0083】
粘着シートの粘着剤層側の面に、厚さが25μmのポリエステルフィルムを貼り付けた後、50mm幅で、150mmの長さに切断した。この切断片を、背面にあて板をして、23℃且つ50%RHの条件下、テンシロン引張試験機にて、剥離処理基材側を300mm/minの引張速度で、180°の角度で引っ張り、その際の最大応力(N/50mm)(測定初期のピークトップを除いた最大値)を測定して、この最大応力を剥離力(N/50mm)とした。
【0084】
【表1】

【0085】
表1より明らかなように、実施例に係る剥離処理基材は、紫外線照射処理を行う前に、加熱処理を行っているので、剥離処理基材の粘着剤層に対する剥離力をほとんど変化させることなく、カチオン重合性紫外線硬化型シリコーン系剥離処理剤層の基材への密着性を向上させることができることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の剥離処理基材の例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0087】
11〜13 それぞれ、剥離処理基材
2 基材
3 加熱処理UVカチオン系シリコーン剥離処理剤層
4 粘着剤層
5 粘着テープ又はシート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の少なくとも一方の面に、少なくとも部分的に、カチオン重合性紫外線硬化型シリコーン系剥離処理剤による剥離処理剤層を有する剥離処理基材であって、カチオン重合性紫外線硬化型シリコーン系剥離処理剤を、基材の少なくとも一方の面に、少なくとも部分的に、塗布した後に、且つ紫外線照射処理を行う前に、加熱処理が施されていることを特徴とする剥離処理基材。
【請求項2】
カチオン重合性紫外線硬化型シリコーン系剥離処理剤が、分子中に少なくとも2つのエポキシ基を有する変性シリコーン系ポリマー成分を有効成分とするカチオン重合性紫外線硬化型シリコーン系剥離処理剤である請求項1記載の剥離処理基材。
【請求項3】
加熱処理の際の温度が、35〜120℃である請求項1又は2記載の剥離処理基材。
【請求項4】
カチオン重合性紫外線硬化型シリコーン系剥離処理剤層による皮膜が形成されている側の面を上にして、ガラス板上に置き、接触面積10mm×10mmサイズのショアA硬度(JIS K 6301 スプリング式A型)が70のシリコーン製ゴムを、前記皮膜上に置いて、0.5MPaの圧力摩擦にて、1m/分の速度で、10cm振幅させる動作を5回行った際に、前記皮膜が基材から脱落しない請求項1〜3の何れかの項に記載の剥離処理基材。
【請求項5】
剥離処理基材が、基材の一方の面又は両面に、カチオン重合性紫外線硬化型シリコーン系剥離処理剤による剥離処理剤層を有する剥離ライナーである請求項1〜4の何れかの項に記載の剥離処理基材。
【請求項6】
剥離処理基材が、基材の一方の面にカチオン重合性紫外線硬化型シリコーン系剥離処理剤による剥離処理剤層を有し、且つ他方の面が粘着剤層を形成させるための面である背面処理が施された粘着テープ又はシート用基材である請求項1〜4の何れかの項に記載の剥離処理基材。
【請求項7】
請求項1〜6の何れかの項に記載の剥離処理基材を製造する方法であって、カチオン重合性紫外線硬化型シリコーン系剥離処理剤が、基材の少なくとも一方の面に、少なくとも部分的に塗布されて形成され且つ紫外線照射処理が施されていないカチオン重合性紫外線硬化型シリコーン系剥離処理剤の塗布層に対して、加熱処理を施す工程を具備していることを特徴とする剥離処理基材の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−39550(P2007−39550A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−225273(P2005−225273)
【出願日】平成17年8月3日(2005.8.3)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】