説明

副甲状腺ホルモンに関連する新規ペプチド類似体

【課題】副甲状腺ホルモンに関連する新規ペプチド類似体の提供。
【解決手段】本発明は、PTHrPの1以上のアミノ酸残基をそれに相当するPTHの残基へ置換することにより、効力あるPTH-2受容体アゴニストまたはアンタゴニストに変換された新規PTHrP類似体に関する。また、これらPTHrP類似体を用いる、PTH-2受容体の変更された作用を伴う種々の病状を治療する方法も記載する。

【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
発明の分野
本発明は、副甲状腺ホルモンに関連する新規ペプチド(PTHrP)類似体に関する。さらに詳しくは、本発明は、類似体にPTH-2受容体アンタゴニストまたはアゴニスト特性を与える1以上のアミノ酸置換基を有するPTHrP類似体に関する。
【0002】
先行技術の説明
副甲状腺ホルモン(PTH)はカルシウムホメオスタシスの主要なレギュレーターであり、その主な標的細胞は骨および腎臓で生じる。カルシウム濃度の調節は胃腸系、骨格系、神経系および心臓血管系の正常な機能に必要である。PTHの合成 および放出は主に血清のカルシウムレベルにより制御され;低レベルはホルモンの合成および放出を刺激し、高レベルは抑制する。PTHは3箇所のカルシウム交換部位:消化管、骨および腎臓で血液中へのカルシウム流入を直接、または非直接的に促進することによりかわるがわる血清カルシウムレベルを維持する。PTHは活性型のビタミンDの腎臓での合成を有利にすることによりカルシウムの正味の胃腸吸収に寄与する。PTHは骨芽細胞を阻害することにより、また間接的には骨再吸収細胞である骨芽細胞の分化を刺激することにより骨からのカルシウムの再吸収を促進する。それはまた、腎臓における少なくとも3つの主要な作用:尿細管カルシウムの再吸収刺激、リン酸塩浄化の増強、および活性型ビタミンDの合成を完了する酵素の増強促進を仲介する。PTHは、受容体が介在するPTHによるホスホリパーゼCの活性化も報告されているが(Hruska et al., J. Clin. Invest. 79:230(1987)、主に受容体が介在するアデニル酸シクラーゼの活性化を通じてこれらの作用を発揮する。
【0003】
カルシウムホメオスタシスの混乱は多くの臨床上の疾患(例えば、重篤な骨の疾病、貧血症、腎臓障害、潰瘍、筋疾患および神経症)をもたらし、通常、これらは副甲状腺ホルモンのレベルの変化をもたらす症状に起因するものである。高カルシウム血症は、血清カルシウムレベルの上昇により特徴づけられる症状である。これは主に、副甲状腺の障害(例えば、腺腫、過形成または腫瘍)の結果として過剰なPTH産生が生じる上皮小体機能亢進症を伴うことが多い。別のタイプの高カルシウム血症である、悪性腫瘍の体液性高カルシウム血症(HHM)は最もよくある不規則過形成症候群である。ほとんどの例においてそれは、腫瘍(例えば、扁平上皮癌、腎臓癌、卵巣癌、または膀胱癌)によるPTHと相同なアミノ酸を共有する新規クラスのタンパク質ホルモンの産生に起因していると思われる。これらPTH関連タンパク質(PTHrP)は、PTHのある腎臓および骨格作用を擬態すると思 われ、これらの組織におけるPTH受容体と相互作用すると確信されている。PTHrPは通常、ケラチン生成細胞、脳、下垂体、副甲状腺、副腎、皮質、骨髄、胎児肝臓、骨芽細胞様細胞、および乳汁分泌乳房組織をはじめとする多くの組織において低レベルで見られる。多くのHHM悪性腫瘍において、PTHrPが循環系に高レベルで見られ、それによりHHMに伴うカルシウムレベルの上昇がもたらされる。
【0004】
PTHおよびPTHrPの薬理学的プロフィールは、in vitroアッセイ系と大部分においてほぼ同様であり、PTH(すなわち、主に上皮小体機能亢進症)またはPTHrP(すなわち、HHM)の高い血中レベルは無機イオンのホメオスタシスに匹敵する作用を有する(Broadus, A.E. & A.F., "Parathyroid hormon-related protein: Structure, processing and physiological action," in Basic and Clinical Concepts, Bilzikian, J.P. et al., "Parathynoid hormone: Biosynthesis, secretion, chemistry and action," in Handbook of Experimental Pharmacology, Mundy, G.R. & Martin, T.J., eds., Springer-Verlag, Heidelberg (1993), pp.185-201)。この2種のリガンド生物学的活性における同一性は、それらの通常の受容体である、骨および腎臓で多量に発現するPTH/PTHrP受容体との相互作用により説明できる(Urena, P et al., Endocrinology 134:451-456(1994))。
【0005】
放射性標識したPTH-(1-34)またはPTHrP-(1-36)のいずれかとPTH/PTHrP受容体との結合は、いずれかの非標識リガンドにより完全に阻害される(Juppner, H. et al., J. Biol. Chem. 263:8557-8560(1998); Nissenson, R.A. et al., J. Biol. Chem. 263:12866-12871(1988))。このように、PTH/PTHrP受容体におけるこの2種のリガンドの認識部位はおそらく重複するものである。PTHおよびPTHrPの双方には、15-34領域がPTH/PTHrP受容体への結合のための主な決定子が含まれている。これらの領域は最小の配列一致しか示さないが(3個のアミノ酸が一致するのみ)、各々15-34ペプチドはPTH-(1-34)またはPTHrP-(1-34)のいずれかのPTH/PTHrP受容体との結合をブロックすることができる(Nussbaum, S.R. et al., J. Biol. Chem. 255:10183-10187(1980); Caulfield, M.P. et al., Endocrinology 127:83-87(1990); Abou-Samra, A.-B.et al., Endocrinology, 125:2215-2217(1989))。さらに、各々のリガンドのアミノ末端部は生活性のために必要であり、これらの残基13個のうち8個がPTHおよびPTHrPにおいて同じであるので、これらはおそらくはPTH/PTHrP受容体と相互作用するであろう。
【0006】
PTH/PTHrP受容体は、Gタンパク質結合受容体の異なるファミリーのメンバーであり(Juppner, H. et al., Science 254:1024-1026(1991); Abou-Samra, A.B. et al., Proc. Natl. Acad. Sci(USA) 89:2732-2736(1992))、それはセクレチン(Ishihara, T et al., EMBO J. 10:1635-1641(1991))、カルシトニン(Lin, H.Y. et al., Science 254:1022-1024(1991))およびグルカゴン(Jelinek, L.J. et al., Science 259:1614-1616(1993))などの他のペプチドホルモンの受容体を含 む。PTH/セクレチン/カルシトニン受容体ファミリーの保存領域に相当する縮重オリゴヌクレオチドを用い、Usdin et al.はPTH/PTHrP受容体と極めて密接に関連する(51%にわたるアミノ酸配列が一致)ラットおよびヒト脳由来の新たな受容体cDNAを同定した(Usdin, T. et al., J. Biol. Chem. 270:15455-15458(1995))。この新しい受容体、PTH-2受容体はPTH-(1-34)には効果的に、強力に、かつ特異的に応答したが、興味深いことにPTHrPには全く応答しなかった(同上)。この観察はPTH-2受容体との相互作用のための選択性を決定するPTHおよびPTHrPリガンドにおける構造的差異を暗示するものである。PTH-2受容体は脳および膵臓で優先的に見出される(同上)。
【0007】
PTH-2受容体は脳および膵臓で見出されるので、それはこれらの器官の正常な機能に対する生理学的役割を有していると思われる。脳および膵臓の機能不全を伴う疾病は、実際に、PTH-2受容体の作用変化により説明され得る。次いで、このような疾病をPTH-2受容体選択性アンタゴニストを用いて治療することができよう。利用可能な他のアンタゴニストには選択性はなく、かくして、それらはまたカルシウム調節および骨格機能の観点で負の結果を持ち得るPTH/PTHrP受容体に拮抗するので望ましくない。
【0008】
従って、当該技術分野には:(1)PTH-2受容体の生物学的役割をさらに解明する助けとなり;(2)リガンド-受容体相互作用の特異的部位をマッピングし;さらには(3)PTH-2受容体の作用変化または遺伝子突然変異を伴う疾患の治療に用いることのできる新しい治療用組成物としてのPTH-2受容体選択性アゴニストおよびアンタゴニストの開発が必要である。
【発明の概要】
【0009】
まず第一に、PTH-2受容体のリガンド特異性に関与する残基を決定するために、発明者らはいくつかのPTH/PTHrPハイブリッドリガンドおよび他の関連するペプチド類似体とヒトPTH-2受容体との相互作用を研究した。その結果は、PTHおよびPTHrPにおける2つの部位が、PTH-2受容体を用いた場合に2つのリガンドが示した異なる能力を十分に説明することを示した。すなわち、残基5(PTHrPにおいてはHis、PTHにおいてはIle)はシグナリング能力を決定し、一方、残基23(PTHrPにおいてはPhe、PTHにおいてはTrp)は結合親和性を決定していた。PTHrPのこれら2種の残基(すなわち、残基5および23)をこれに相当するPTHの残基へと変更することにより、発明者らはPTHrPを、PTH-2受容体に強力に結合してcAMPの形成を十分かつ強力に刺激するリガンドへと変換させることができた。残基23単独の変更により[Trp23]hPTHrP-(1-36)が得られ、これはPTH-2受容体のアンタゴニストであったが、PTH/PTHrP受容体の十分なアゴニストではなかった。従って、発明者らはPTHおよびPTHrPにおける残基5および23は、それぞれPTH-2受容体とのシグナリングおよび結合相互作用において鍵となる役割を果たすと結論づけた。
【0010】
このように、本発明の1つの態様によれば、効力あるPTH-2受容体アゴニストと同時に効力あるPTH/PTHrP受容体アゴニストである、新規なPTHrP類似体が提供される。好ましい具体例では、このPTHrP類似体は残基5および23でこれに相当するPTHの残基へと変更されている。さらに好ましくは、本発明は、PTHrPの5位でのイソロイシンからヒスチジンへのアミノ酸置換、ならびに、PTHrPの23位でのトリプトファンからフェニルアラニンへのアミノ酸置換を有するPTHrP類似体を 含む。特に好ましい具体例では、PTHrP類似体は[Ile, Trp23]PTHrP-(1-36)である。
【0011】
本発明のもう1つの態様によれば、効力あるPTH-2受容体選択性アンタゴニストである、新規なPTHrP類似体が提供される。好ましい具体例では、この類似体はPTHrPの残基23でこれに相当するPTHの残基へと変更されている。最も好ましくは、本発明は、PTHrPの23位でのトリプトファンからフェニルアラニンへのアミノ酸置換を有するPTHrP類似体を含む。特に好ましい具体例では、PTHrP類似体は[Trp23]PTHrP-(1-36)である。
【0012】
本発明のさらなる態様によれば、患者のPTH-2受容体の活性化を阻害するのに十分な治療上有効量のPTHrP類似体を患者に投与することを含んでなる、変更されたまたは過度に作用するPTH-2受容体に起因する内科疾患を治療する方法を提供する。好ましい具体例では、この方法に用いられるPTHrP類似体は、PTHrPの23位でのトリプトファンからフェニルアラニンへの1つのアミノ酸置換を有する。特に好ましい具体例では、PTHrP類似体は[Trp23]PTHrP-(1-36)である。
【0013】
本発明のなおさらなる態様によれば、患者のPTH/PTHrP受容体およびPTH-2受容体を活性化させるのに十分な治療上有効量のPTHrP類似体を患者に投与することを含んでなる、骨粗鬆症を治療する方法を提供する。好ましい具体例では、この方法に用いられるPTHrP類似体は、PTHrPの5位でのイソロイシンからヒスチジンへのアミノ酸置換、ならびに、PTHrPの23位でのトリプトファンからフェニルアラニンへのアミノ酸置換を有する。特に好ましい具体例では、PTHrP類似体は[Ile,Trp23]PTHrP-(1-36)である。
【0014】
また、PTHrP類似体のPTH-2受容体に拮抗する、またはそれを活性化させる能力が損なわれない限り、5位および/または23位での他のいずれのアミノ酸置換も本発明の範囲内に含まれる。
【0015】
興味深いことに、これらのハイブリッドリガンド、ならびに[H5]PTH-(1-34)はPTH/PTHrP受容体との結合に関してほとんど競合せず、依然として効果的にcAMP形成を刺激したことが示された(表1)。発明者らは、COS-7細胞において放射性ヨウ素化ハイブリッド-5ペプチドがPTH/PTHrP受容体と効果的に結合することを見出した(特異的結合は添加した総放射性の〜8%)。このようにこれら変更されたリガンドはPTH/PTHrP受容体の、しかしながら125I-[NleTyr8,21,Tyr34]rPTH-(1-34)NHによって用いられるものとは完全には重複しない部位で結合すると考えられる。
表1
PTHおよびPTHrP類似体の受容体結合特性
ヒトPTH/PTHrP受容体またはヒトPTH-2受容体をコードするプラスミドでトランスフェクトしたCOS-7細胞を、放射活性リガンドとして[Nle8,21,Y34]rPTH-(1-34)NHを、また競合物質として表示された非標識リガンドを用いる競合結合研究で評価した。アッセイは室温で2時間行った。データは表示された実験数(n)から得られたIC50値の平均(±標準誤差)である。

結合IC50(nM)
PTH/PTHrP PTH-2
リガンド 受容体 受容体
(n) (n)
[Nle8,21,Y34]rPTH-(1-34)NH2 58±4 5 11±2 5
[Y34]hPTH-(1-34)NH2 39±4 7 16±4 7
[Y36]hPTHrP-(1-36)NH2 285±47 10 2,140±250 10
ハイブリッド-1
hPTHrP-(1-14)/[Y34]hPTH-(15-34)NH2 7,900±370 4 606±96 4
ハイブリッド-5
hPTHrP-(1-18)/[Y34]hPTH-(19-34)NH2 4,970±1,560 4 500±62 4
ハイブリッド-4
hPTHrP-(1-21)/[Y34]hPTH-(22-34)NH2 19±6 4 11±3 4
ハイブリッド-3
hPTHrP-(1-23)/[Y34]hPTH-(24-34)NH2 1,000±471 4 6,050±990 4
ハイブリッド-2
hPTH-(1-14)/[Y34]hPTHrP-(15-34)NH2 497±144 4 750±210 4
[Y36]hPTHrP-(15-36)NH2 >10,000 4 4,970±97 4
結合IC50(nM)
PTH/PTHrP PTH-2
リガンド 受容体 受容体
[W23,Y36]hPTHrP-(15-36)NH2 >10,000 4 370±100 4
[E22,W23,Y36]hPTHrP-(15-36)NH2 >10,000 4 137±36 4
[Y34]hPTH-(15-34)NH2 >10,000 3 624±116 3
[F23,Y34]hPTH-(15-34)NH2 >10,000 4 >10,000 4
[W23,Y36]hPTHrP-(1-36)NH2 47±8 5 30±7 5
[I5,Y36]hPTHrP-(1-36)NH2 41±11 6 695±171 6
[I5,W23,Y36]hPTHrP-(1-36)NH2 16±3 5 10±1 5
[F23,Y34]hPTH-(1-34)NH2 95±11 4 453±53 4
[H5,Y34]hPTH-(1-34)NH2 5,100±1,000 4 249±18 4
[H5,F23,Y34]hPTH-(1-34)NH2 >10,000 3 >10,000 3
【発明の具体的説明】
【0016】
これまでに発明者らは、PTHとPTHrPの相同なドメインが相互変換可能か否かを調べる目的で、一連のPTH/PTHrPハイブリッドリガンドを作製した(Gardella, T.J. et al., J. Biol. Chem.270:6584-6588(1995))。本発明者らはいま、これらハイブリッドリガンドおよび誘導ペプチド類似体を用いて、PTH-2受容体のリガンド選択性の一因であるPTHおよびPTHrPの領域をマッピングした。これらの努力は、PTH-2受容体との結合およびシグナリング相互作用の効果を決定するのに主要な役割を果たすリガンド内の2つの残基の同定へと至った。
【0017】
本発明は、効力あるPTH-2受容体アゴニストであると同時に効力あるPTH/PTHrP受容体アゴニストでもある新規なPTHrP類似体を提供する。好ましい具体例では、PTHrP類似体は残基5および23でこれに相当するPTHの残基へ変更されている。さらに好ましくは、本発明はPTHrPの5位でのイソロイシンからヒスチジンへの、ならびにPTHrPの23位でのトリプトファンからフェニルアラニンへのアミノ酸置換 を有するPTHrP類似体を含む。特定の具体例では、PTHrP類似体は[Ieu,Trp23]PTHrP-(1-36)である。
【0018】
本発明のもう1つの態様によれば、効力あるPTH-2受容体選択性アンタゴニストである、新規なPTHrP類似体が提供される。好ましい具体例では、この類似体は残基23でこれに相当するPTHの残基へ変更されている。さらに好ましくは、本発明はPTHrPの23位でのトリプトファンからフェニルアラニンへのアミノ酸置換を有するPTHrP類似体を含む。特定の具体例では、PTHrP類似体は[Trp23]PTHrP- (1-36)である。
【0019】
加えて、PTHrP類似体のPTH-2受容体と拮抗する、またはそれを刺激する能力を損なわない限り(当業者に公知のアッセイにより決定され、以下に論じられているように)、他のいずれの天然のアミノ酸置換も本発明の範囲内に含まれる。
【0020】
材料および方法
ペプチドおよび試薬
PTH/PTHrPハイブリッドリガンドの製造法および同定は従前に記載した(Gardella, T.J. et al., J. Biol. Chem. 270:6584-6588(1995))。[Nle8,21,Tyr34]rat(r)PTH(1-34)NHはBachem Fine Chemicals(Torrance, CA)から入手した。アンタゴニスト[Leu11,D-Tyr12]hPTHrP(7-34)NHはPeninsula Laboratories(Belmont, CA)から入手した。他の総てのペプチドは、固相化学およびF-moc保護基を用いて、Massachusetts General Hospital (Boston, MA)の生体高分子合成施設により製造された。125I-[NleTyr8,21,Tyr34]rPTH-(1-34)NHはクロラミン-Tヨード化によって製造し、HPLCで精製した(Shigeno, C. et al., J. Biol. Chem. 263:3872-3878(1988))。[125I]-Na(2,000 Ci/mmol)はDupont/New EnglandNuclear(Boston, MA)から入手した。ダルベッコ改変イーグル培地(Dulbecco'smodified Eagle's medium)(DMEM)、EGTA/トリプシンおよび100x抗生物質混合物(10,000単位/mlペニシリンおよび10mg/mlストレプトマイシン)はGIBCO製であり;ウシ胎児血清(FBS)はHyclone Laboratories(Logan, UT)製であった。
【0021】
COS-7細胞のDNAトランスフェクション
ヒトPTH/PTHrP受容体(Schipani, E. et. al., Endocrinology 132:2157-2165 (1993)およびヒトPTH-2受容体(Usdin, T. et al., J. Biol. Chem. 270:15455-15458(1995))をコードするcDNAを各々、発現ベクターpcDNA-1およびpcDNAI/Amp(InVitrogen, San Diego, CA)に乗せた。COS-7細胞を培養し、従前に記載したようにトランスフェクトした(Lee, C. et al., Mol. Endocrinol. 9:1269-1278(1995))。24ウェルプレート中で、塩化セシウム/臭化エチジウム勾配遠心分離により精製したプラスミドDNA(200ng/ウェル)を用い、細胞をトランスフェクトした。リガンド結合およびcAMP集積アッセイはトランスフェクション後3日めに行い、この時までに細胞密度は500,000±100,000細胞/ウェルに達していた。
【0022】
放射性リガンド-受容体結合
従前に記載したように結合反応を行った(同上)。各ウェル(最終容量:300ml)は26fmolの125I-[Nle8,21,Tyr34]rPTH(1-34)NHは(100,000 CPM)および種々の量(0.4-300pmol)の非標識競合リガンドを含み、双方とも結合緩衝液(50mMトリス塩酸, pH7.7, 100mM NaCl, 5mM KCl, 2mM CaCl, 5%熱不活性化ウマ血清,0.5%熱不活性化ウシ胎児血清)で希釈した。インキュベーションは、4℃にて6時間行ったスキャッチャード解析を含む実験以外は、室温にて2時間であった。結合反応の終了時に、細胞を0.5mlの結合緩衝液で3回すすぎ、0.5mlの5M NaOHで分解し、次いで前ライゼートを計測した。1μMの[NleTyr8,21,Tyr34]rPTH-(1-34)NHを含有するウェル中で測定した非特異的結合のトレーサー(NSB)を添加総計の1%以下であった。最大特異的結合(B)を、非標識PTHリガンドの不在下で細胞に結合した総放射性からNSBを差し引いて算出した。
【0023】
IC50値(125I-[NleTyr8,21,Tyr34]rPTH-(1-34)NH結合を50%阻害する結果となる競合リガンドの用量)をlog[競合物質]に対するlog(B/B-B)のプロットから決定した。スキャッチャード解析のためには、125I-[NleTyr8,21,Tyr34]rPTH-(1-34)NH(26fmol/ウェル)および種々の量(1.2-300pmol)の同一の非標識リガンドを用いて、同様の競合結合研究を行った。これらの研究から得られた受容体/細胞の数の評価から単一のクラスの結合部位、および20%のトランスフェクション効率が推定される(Abou-Samra, A.B. et al., Proc, Natl. Acad. Sci(USA) 89:2732-2736(1992))。
【0024】
細胞内環状AMP
トランスフェクトしたCOS-7細胞を500mlの結合緩衝液ですすいだ。次いで、200μlのIBMX緩衝液(2mM IBMX, 1mg/mlウシ血清アルブミン, 35mM Hepes-NaOH, pH7.4を含有するDMEM)と100mlの結合緩衝液もしくは種々の量のPTHまたはPTHrP類自体を含有する結合緩衝液を加えた。このプレートを室温にて60分間インキュベートした。次いで、緩衝液を回収し、粉末状のドライアイス上にプレートを置き、0.5mlの50mM塩酸を添加することにより細胞を分解した。この酸ライゼートをdHOで1/30に希釈し、アリコート85-50μl)をラジオイムノアッセイによりcAMP含量について分析した。EC50値(関連する受容体を伴うリガンドに関して得られた最大応答(Emax)の50%が得られるリガンド用量)log[リガンド]に対するlog(E/Emax-E)(ここで、Eは相当するリガンド用量で測定されたcAMP応答である)のプロットから決定した。アンタゴニスト研究については、最大刺激用量付近(1.5nM)の[Tyr34]hPTH-(1-34)NHアゴニストペプチドを含むIBMX緩衝液の添加の2分前に、100μlの結合緩衝液中のCOS-7細胞に阻害剤ペプチド[Leu11,D-Trp12]hPTHrP(7-34)NHまたは[Trp23,Tyr36]hPTHrP-(1-36)NHを適用した。次いで細胞を室温で30分間インキュベートし、生じた細胞内cAMPをRIAにより測定した。データはAssayZapソフトウエア(Elsevier Science Publishers BV, Cambridge, United Kingdom)を用いて分析した。
【0025】
結果
ヒトPTH/PTHrPおよびヒトPTH-2受容体を発現するCOS-7細胞において、PTH-(1-34)([Tyr34]hPTH-(1-34)NH)およびPTHrP-(1-36)([Tyr36]hPTHrP-(1-36)NH)について得られた結合およびcAMPシグナリング応答を図1に示す。PTH/PTHrP受容体で、PTH-(1-34)およびPTHrP-(1-36)の双方は、放射性リガンド125I-[NleTyr8,21,Tyr34]rPTH-(1-34)NHの結合を完全に阻害したが、PTH-(1-34)はPTHrP-(1-36)の4.8倍高い効力であった(各々IC50s=39および285nM, p<0.001; 図1Aおよび表1)。PTH-2受容体を発現する細胞を用いた場合、PTH-(1-34)結合は高い見かけの親和性を有し、一方、PTHrP-(1-36)結合は弱い効力しか有しておらず、それはPTH-(1-34)のそれより100倍弱いものであった(図1Bおよび表1)。
【0026】
PTH-(1-34)およびPTHrP-(1-36)の双方は、PTH/PTHrP受容体を発現するCOS-7細胞におけるcAMP産生の十分かつ効力あるアゴニストであった(図1Cおよび表2)。これに対し、PTH-2受容体を用いた場合は、PTH-(1-34)のみが効力あるアゴニストであり、一方、PTHrP-(1-36)はほとんど不活性であった(図1D)。これらの結果は、PTH-2受容体を用いた場合のPTHおよびPTHrPの明確に異なるcAMP刺激性活性を確認させ、さらにPTHrPがこの受容体とともに有する少なくとも一部のシグナリング欠損が弱い結合相互作用に帰し得ることを証明するものである。
【0027】
競合結合データのスキャッチャード解析のデータは、PTH-2受容体がCOS-7細胞の表面で、PTH/PTHrP受容体によって達成された発現レベルより5倍低いレベルで発現されたことを示した(図2Aおよび2B)。発現レベルにおけるこの差異は、PTH/PTHrP受容と比べて低いcAMP応答を説明しているように思われる(図1)。PTH-2受容体のより低い発現に関する理由は現在のところ明らかではないが、発現は異なるPTHおよびPTHrP類自体のこの受容体との相互作用を比較するには十分に適切であった。
【表1】

【0028】
PTH/PTHrPハイブリッドリガンド
2つのリガンドのPTH-2受容体との見かけの結合親和性における差異にあずかるPTHおよびPTHrP領域の位置決定のため、発明者らは図3に示された一連のPTH/PTHrPハイブリッド類似体を評価した。いくつかのハイブリッドリガンド(すなわちハイブリッド1および5)からは、いずれかの親リガンドとは異なり、PTH/PTHrP受容体との結合に関してでさえほとんど競合しなかったので、あまり情報は得られず、このことはこれら類似体がいずれかの親リガンドとは異なっていることを示すものである。同様に、これらのハイブリッドリガンドの弱い結合力は、従前にラット骨肉腫細胞(ROS17/2.8)を用いた研究でも観察された。これらの結果は、PTHrPのアミノ末端1-14位、およびPTHの15-34領域の残基の間の不適合性によって引き起こされたリガンド構造における変化と解釈される(Gardella, T.J. et al., J. Biol. Chem. 270:6584-6588(1995))。PTH-2受容体に対する現行の研究に関して、最も多くの情報が得られるハイブリッド類似体はハイブリッド-3およびハイブリッド-4であった。ハイブリッド-4であるPTHrP-(1-21)/PTH-(22-34)は強力に(IC50=11nM)PTH-2受容体と結合し、同様にPTH-(1-34)とも結合した(表1)。2つの残基によるPTHrP配列の延長により、ハイブリッド-3であるPTHrP-(1-23)/PTH-(24-34)が得られ、これはPTH/PTHrP受容体との結合に関してほとんど競合せず(IC50=1,000nM)、PTH-2受容体とは極めて弱い力でしか結合しなかった(IC50=〜6,000nM)。このリガンドにおいては、ハイブリッド-3の結合プロフィールはPTHrP-(1-36)のそれに類似していた。
【0029】
22および23位での置換
ハイブリッド3および4の構造ならびに結合特性を比較することにより、発明者らは22位および/または23位における発散残基がPTH-2受容体結合選択性の一因となっているという仮説を出すに至った。まず、受容体結合における残基22および23の役割を試験するために、Phe-22および/またはPhe-23をそれに相当するPTHのGluおよびTrp残基で置換した短いPTHrP-(15-36)断片を作製した。非置換親ペプチドPTHrP-(15-36)は、PTH-2受容体との結合に関して弱くではあるが競合した(図4B)。Glu-22およびTrp-23のGluおよびTrpへの置換を組み合わせることにより、結合力はかなり改良された。この増強の大部分はPhe-23からTryへの単一の置換によるものと説明できた(表1、図4B)。非置換または置換PTHrP(15-36)断片のいずれかのPTH/PTHrP受容体に対する結合は、これら競合アッセイの中では検出できなかった(図4A)。
【0030】
Phe-23からTrpへの修飾は全長PTHrP-(1-36)中に導入し、ここで、PTHrP-(1-36)自身の結合と比較した場合、71倍までPTH-2受容体の結合力が増強されることが判明した(図5B;表1)。非置換PTH-(1-34)と比較した場合、PTH-(1-34)におけるTrp-23からPheへの相互変換がPTH-2受容体の結合力に28倍の減少をもたらした(図5Dおよび表1)。また興味深いことに、23位における発散残基により、PTH/PTHrP受容体に対してPTHおよびPTHrPが示した見かけの結合親和性における差異のある部分を説明することもできた。このように、[Tyr23]PTHrP-(1-36)はPTHrP- (1-36)よりも6倍強い親和性でPTH/PTHrP受容体と結合し(図5A;表1)、[Phe23]PTH-(1-34)はPTH-(1-34)よりも2-3倍弱い親和性でこの受容体と結合した(図5C;表1)。PTH/PTHrP受容体との結合におけるこれら23位の変化の効果は、この受容体を用いた場合にハイブリッド-3およびハイブリッド-4が示した結合特性から推測できよう(表1)。
【0031】
cAMPシグナリングに対する残基5および23の効果
PTHまたはPTHrPの23位における前記置換は、PTH-2受容体によるcAMPシグナリングに対する効果はほとんど持たないか、または全く持たない;すなわち、[Trp23]PTHrP-(1-36)は依然として不活性であり、[Phe23]PTH-(1-34)はほとんど完全なアゴニストであった(図6Bおよび6D;表2)。PTH-2受容体を用いるcAMP産生の刺激におけるハイブリッド-2であるPTH-(1-14)/PTHrP-(15-34)の高い能力は、ハイブリッド-1であるPTHrP-(1-14)/PTH-(15-34)の弱い活性に匹敵し(表2)、このことはPTHおよびPTHrPの1-14配列内の残基がこの受容体を用いる2つのリガンドのシグナリング特性の変調に関与していることを示した。
【0032】
ROS17/2.8細胞におけるこれまでの結合研究では、5位(PTHではIleおよびPTHrPではHis)が、リガンド-受容体相互作用に劇的な影響を及ぼし得る1-14領域の1つの発散部位であることが明らかにされた(Gardella, T.J. et al., J. Biol. Chem. 270:6584-6588(1995))。従って、PTH-2受容体とのシグナリング相互作用における5位相互置換の効果を調べた。顕著なことに、[Ile]PTHrP-(1-36)はPTH-2受容体を用いる完全なアゴニストとなり、PTH-(1-34)によって達成されものと同様の最大cAMP応答を誘発した(図6Bおよび表2)。しかしながら、[Ile]PTHrP-(1-36)応答のEC50は依然としてPTH-(1-34)のそれより12倍高かった(各々EC50=7および0.6nM)。従って発明者らは、Ile-5置換を親和性増強Trp-23修飾と組み合わせた。得られた類似体[Ile,Trp23]PTHrP-(1-36)はPTH-2受容体との結合およびそれを用いるcAMP産生の双方において、PTH-(1-34)として効力があり、かつ効果的であった(図6B、表1および2)。
【0033】
[Trp23]PTHrP-(1-36)(5位におけるヒスチジン)がcAMP産生を刺激することなくPTH-2受容体に結合したという観察は、この類似体がPTH-2受容体アンタゴニストとして機能できたことを示唆するものである。図7はこの類似体が実際には、PTH-2受容体におけるPTH-(1-34)により誘導される活性の阻害において、PTH/PTHrP受容体アンタゴニストの高い効力を有するアンタゴニストである[Ile11,D-Trp12]hPTHrP-(7-34)NHと少なくとも同様の効力を有していたことを示している。PTH/PTHrP受容体、[Trp23]PTHrP-(1-36)はアゴニストではなかったが、代わりにPTH-(1-34)に対するアゴニスト応答について論じた。
【0034】
考察
前記で論じた研究は、PTHrPがPTH-2受容体に効果的に結合してこれを活性化できないことが2つの残基、すなわち23位のフェニルアラニンおよび5位のヒスチジンによるものであることを証明する。PTH-2受容体を用いた場合に十分効力のあるPTHにおいては、これらの残基は各々トリプトファンおよびイソロイシンに置換されている。PTHrPの残基5および23をこれに相当するPTHのイソロイシンおよびトリプトファンに変換することにより、PTHrPを完全かつ効力あるPTH-2受容体アゴニストへと変換させることができた。
【0035】
PTHrPの5位のヒスチジンは、PTH-2受容体の活性化をブロックした。ROS17/2.8細胞におけるこれまでの競合結合研究では、残基5はPTH/PTHrP受容体との相互作用に関する重要な決定子であることが確認された(Gardella, T.J. et al., J. Biol. Chem. 270:6584-6588(1995))。これら初期の研究は、この残基がリガンド の1-14部分と15-34部分との間の推定される分子内相互作用に関与していることを示唆するものであった。この証拠として、PTHrPにおけるHis-5からIle-5への置換の、カルボキシ末端置換(すなわち、19、21および24位における)が結合効力上有している有害な作用を「治癒する(cure)」能力が含まれる。今回のデータはこの残基がPTH-2受容体とのシグナリング相互作用を強力に変調することを示しているので、今や、PTHおよびPTHrPにおけにおけるリガンドの残基5の全役割はさらに複雑であると考えられる。
【0036】
PTHrPのPTH-2受容体への弱い結合は23位のフェニルアラニン残基よるものである可能性があり;この残基をこれに相当するPTHのトリプトファンで置換することは、PTH-2受容体への結合を71倍まで向上させた。また、Phe-23からTrpへの置換で、PTH/PTHrP受容体に対してPTHrP-(1-36)が示した結合がPTH-(1-34)に比べて6倍弱いことが説明できた(表1)。PTH/PTHrPのこのような弱い結合は、COS-7細胞で発現するクローン化ヒトPTH/PTHrP受容体を用いた初期の研究で観察され たが、クローン化ラットPTH/PTHrP受容体を用いてもほぼ同等の結合力が認められた(Schipani, E. et al., Endocrinology 132:2157-2165(1993))。また、ROS17/2.8細胞に対して内在するラットPTH/PTHrP受容体を用いた初期の研究でも、これに匹敵する2つのリガンドに対する結合力が認められた(Juppner, H. et al., J. Biol. Chem. 263:8557-8560(1988); Nissenson, R.A. et al., J. Biol. Chem. 263:12866-12871(1988))。従って、ラットおよびヒトPTH/PTHrP受容体、ならびにヒトPTH-2受容体が各々リガンドの残基23を認識する1つの部位または複 数の部位で異なっていることが説明できよう。このように、双方の受容体を用いてのPTHrPにおけるトリプトファン-23 Trp修飾は、その類似体のPTH-(1-34)のそれに近いものへの結合親和性を増強した。
【0037】
PTHの23位での種々の修飾の活性に対する効果は、PTH/PTHrP受容体でこれまでに検討されてきた。Rosenblattおよび共同研究者は、扱いにくいオルト-ニトロフェニルスルフェニル基のTrp-23のインドール窒素への付加は生活性に及ぼす影響はほとんどないか、または全くなく(Rosenblatt, M. & Potts, J.T., Endo. Res. Comm. 4:115-133(1977))、この部位でのフェニルアラニン置換もそうであった(Nakamoto, C. et al., Biochemistry 34:10546-10552(1995))ことを見出した。しかしながら、Phe-23での骨格窒素のメチル化、またはTrp-23からD-Trpへの置換は、受容体-結合親和性を激しく低下させた(Caulfield, M.P & Rosenblatt, M., T.E.M.Jan/Feb:164-168(1990))。PTH-(1-84)の残基23-24の突然変異解析では、Trp-23のシステイン置換は生活性を10倍を上回るまで低下させ、一方、ロイシン置換は50%まで活性を低下させた(Gardella, T.J. et al., "Scanning mutagenesis of the 23-25 region of parathyroid hormone reveals important determinants of receptor binding," in Calcium Regulating Hormones and Bone Metabolism; Bacic and Clinical Aspects, Vol.11, Cohn, D.V. et al., eds., Elsevier Science Publishers BV, Amsterdam(1992), pp.218-222)。PTH類似体(Barden, J.A. & Kemp, B.E., Biochemistry 32:7126-7132(1993); Marx, U. et al., J. BIol. Chem. 270:15194-15202(1995); Klaus, W. et al., Biochemistry 30:6936-6942(1991); Bundi,
A. et al., Eur. J. Biochem. 91:201-208(1978))お よびPTHrP類似体(Barden, J.A. & Kemp, B.E., Eur. J. Biochem. 184:379-394 (1989); Ray, F.R. et al., Eur. J. Biochem, 211:205-211(1993))に関するNMR研究では、いずれかのリガンドのおけるこの位置の芳香族残基が分子内疎水性相互作用に関与していることが示唆されている。従って、残基23はリガンド構造を維持すると同時に、受容体-結合相互作用を変調するために重要であるかも知れない。
【0038】
Trp-23修飾を含有するPTHrP-(1-36)類似体は、検出可能なアゴニスト活性を有することなくPTH-2受容体に対する高い結合親和性を示すので、発明者らは可能性あるPTH-2受容体アゴニストとしてこれを評価した。この類似体は、PTH-2受容体に対するアゴニスト作用の阻害における、これまでに同定されたPTH/PTHrP受容体である[Ile11,D-Trp12]hPTHrP-(7-34)NHと少なくとも同等の効力を有していた;しかしながら、末端でトランケートされたアンタゴニスト類似体とは異なり、[Trp23]PTHrP-(1-36)は、PTH/PTHrP受容体を用いる完全、かつ効力あるアゴニストであった(図6Aおよび7A)。この新たな類似体はPTH-2受容体に対する選択的アンタゴニストであると思われるので、PTH-2受容体の生理学的役割をさらに解明することを目的としたin vivo研究が潜在的に有効であろうと考えられる。PTHrPは多くの胎児および成人組織で発現し、生命発達モルフォゲンであり、その機能にはPTH/PTHrP受容体が介在すると考えられる(Karaplis, A.C. et al., Genes & Dev 8:277-289(1994))。注目すべきことは、本発明では天然PTHリガンドで見出されたようにその位置でのトリプトファンの包含がPTH/PTHrP受容体への結合に十分適合するにもかかわらず、総ての天然のPTHrPリガンドにける23位でフェニルアラニンが保存されている。フェニルアラニンは、そのPTH-2受容体への結合を阻害する能力のゆえに、PTHrPの23位として選択されたのであろう。同様に、PTHrPの5位に保存されたヒスチジン残基は、それがPTH-2とのシグナリング相互作用をブロックするがゆえに選択された可能性がある。併せて、PTHrPにおけるこれら2つの保存された残基は、このようにPTH-2受容体との生産的相互作用を確実には生じないと考えられる。
【0039】
要約すると、本発明者らはPTH-2受容体にリガンド選択性を説明するPTHおよびPTHrPの2つの部位を同定した。発明者らは今、この2つのリガンドに対するリ ガンド選択性に関与する同種の受容体部位を同定する1つの試みとして、PTH-2 とPTH/PTHrP受容体の間のキメラを構築中である。修飾PTHおよびPTHrPリガンド と相互作用するこのような受容体キメラの作用プロフィールは、これらのペプチドリガンドとそれらのGタンパク質結合受容体との間で形成される複合体のモデ ルを精密化し、絞り込む一助となるはずである。
【0040】
治療上の用途
本発明のなおさらなる態様によれば、患者のPTH-2受容体の活性化を阻害するのに十分な治療上有効量のPTHrP類似体を患者に投与することを含んでなる、変更されたまたは過剰に作用するPTH-2受容体に起因する内科疾患を治療する方法が提供される。好ましい具体例では、この方法に用いるPTHrP類似体はPTHrPの23位にトリプトファンからフェニルアラニンへの単一のアミノ酸置換を有する。特定の具体例では、PTHrP類似体は[Trp23]PTHrP-(1-36)である。
【0041】
この具体例では、PTH-2受容体の変更された作用に起因する疾患を有すると見 られる患者をPTH-2受容体の選択的アンタゴニストであることが示された本発明のペプチド類似体を用いて治療し得る。このような類似体としては、PTH-2受容体が介在する細胞の活性化を妨害することが確認された(本明細書に記載のアッセイによる)本発明の化合物、または同様の特性を有する他の類似体が含まれる。アンタゴニストを投与するためには、一般に、例えば生理食塩水などの適切な担体または賦形剤中に配合することにより、適切なペプチドを用いて製剤し、次いでPTH-2受容体へのPTHの結合を十分阻害する用量で、静脈内、筋肉内、皮下、または経口投与する。典型的な用量は体重kg・1日あたり抗体またはペプチド1ng〜10mgであろう。
【0042】
本発明のなおさらなる態様によれば、患者のPTH/PTHrP受容体およびPTH-2受容体の活性化に十分な治療上有効量のPTHrP類似体を患者に投与することを含んでなる、骨粗鬆症を治療する方法が提供される。好ましい具体例では、この方法に用いるPTHrP類似体はPTHrPの5位にイソロイシンからヒスチジンへのアミノ酸置換を有する。特定の具体例では、PTHrP類似体は[Ile, Trp23]PTHrP-(1-36)である。例えば骨粗鬆症などの症状の治療のため、PTHrPアゴニストの投与には、PTHrPアンタゴニストについて前記したものと同様の用量および投与を用いてよい。「アゴニスト」とはPTH-2受容体が介在する細胞応答を増強するまたは効力を増すことが可能なリガンドを意味する。「アンタゴニスト」とはPTH-2受容体が介在する細胞応答を阻害することが可能なリガンドを意味する。本発明の候補となるいずれの「アゴニスト」または「アンタゴニスト」がこのような細胞応答を増強または阻害できるか否かは、本願の他所に記載したものをはじめとする、当該技術分野で公知のタンパク質リガンド/受容体細胞応答または結合アッセイを用いて決定できる。
【0043】
当業者ならば、本発明の精神または範囲、もしくはそのいずれの具体例から逸脱しない限り、本発明が組成物、濃度、投与様式および症状の広範な均等のパラメーターの範囲内で実施できることが理解されよう。
【0044】
本発明は以下の通りである。
(1)PTH-2受容体アゴニストであり、かつPTH/PTHrP受容体アゴニストであるPTHrP類似体。
【0045】
(2)PTHrP類似体がアミノ酸残基5および23においてそれに相当するPTHの残基へ変更されている、(1)記載のPTHrP類似体。
【0046】
(3)PTHrP残基5における変更がイソロイシンからヒスチジンへのアミノ酸置換であり、かつ、PTHrP残基23における変更がトリプトファンからフェニルアラニンへのアミノ酸置換である、(2)記載のPTHrP類似体。
【0047】
(4)PTHrP類似体[Ile, Trp23]hPTHrP(1-36)。
【0048】
(5)PTH-2受容体選択性アンタゴニストであるPTHrP類似体。
【0049】
(6)類似体がPTHrPアミノ酸残基23でそれに相当するPTHの残基へ変更されている、(5)記載のPTHrP類似体。
【0050】
(7)PTHrPアミノ酸残基23における変更がトリプトファンからフェニルアラニンへの置換である、(6)記載のPTHrP類似体。
【0051】
(8)PTHrP類似体[Trp23]hPTHrP(1-36)。
【0052】
(9)患者のPTH-2受容体の活性化を阻害するのに十分な、治療上有効量の(6)のPTHrP類似体を患者に投与することを含んでなる、変更されたまたは過剰に作用するPTH-2受容体に起因する内科疾患を治療する方法。
【0053】
(10)患者のPTH-2受容体の活性化を阻害するのに十分な、治療上有効量の(7)のPTHrP類似体を患者に投与することを含んでなる、変更されたまたは過剰に作用するPTH-2受容体に起因する内科疾患を治療する方法。
【0054】
(11)患者のPTH-2受容体の活性化を阻害するのに十分な、治療上有効量の(8)のPTHrP類似体を患者に投与することを含んでなる、変更されたまたは過剰に作用するPTH-2受容体に起因する内科疾患を治療する方法。
【0055】
(12)患者のPTH/PTHrP受容体およびPTH-2受容体の活性化に十分な、治療上有効量の(2)のPTHrP類似体を患者に投与することを含んでなる、骨粗鬆症の治療方法。
【0056】
(13)患者のPTH/PTHrP受容体およびPTH-2受容体の活性化に十分な、治療上有効量の(3)のPTHrP類似体を患者に投与することを含んでなる、骨粗鬆症の治療方法。
【0057】
(14)患者のPTH/PTHrP受容体およびPTH-2受容体の活性化に十分な、治療上有効量の(4)のPTHrP類似体を患者に投与することを含んでなる、骨粗鬆症の治療方法。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1A】PTH/PTHrPおよびPTH-2受容体のリガンド結合プロフィールおよびcAMPシグナリングプロフィールを示す。ヒトPTH/PTHrP受容体で(図1Aおよび1C)、またはヒトPTH-2受容体で(図1Bおよび1D)トランスフェクトしたCOS-7細胞を放射性リガンド結合の阻害(図1Aおよび1B)、またはリガンド誘導cAMP集積(図1Cおよび1D)に関して評価した。結合研究は室温(RT)にて2時間行った。125I-[NleTyr8,21,Tyr34]rPTH-(1-34)NH(100,000CPM/ウェル)を放射性リガンドとして用い、種々の量の非標識[Tyr34]hPTH-(1-34)NH(黒丸)または[Tyr36]hPTHrP-(1-36)NH(黒四角)を競合リガンドとして用いた。記号は凡例中に示した。競合物質(B)の存在下でPTH/PTHrPおよびPTH-2受容体に特異的に結合したトレーサーの最大量は、各々添加された放射性総量の〜25%および〜5%であった。cAMP刺激アッセイについては、細胞をIBMXの存在下、室温で1時間、リガンドで処理した。図1Cおよび1D中の記号は図1Aおよび1Bに同じである。データは、各々2反復で行った3〜10実験の平均(±標準誤差)である。
【図1B】PTH/PTHrPおよびPTH-2受容体のリガンド結合プロフィールおよびcAMPシグナリングプロフィールを示す。ヒトPTH/PTHrP受容体で(図1Aおよび1C)、またはヒトPTH-2受容体で(図1Bおよび1D)トランスフェクトしたCOS-7細胞を放射性リガンド結合の阻害(図1Aおよび1B)、またはリガンド誘導cAMP集積(図1Cおよび1D)に関して評価した。結合研究は室温(RT)にて2時間行った。125I-[NleTyr8,21,Tyr34]rPTH-(1-34)NH(100,000CPM/ウェル)を放射性リガンドとして用い、種々の量の非標識[Tyr34]hPTH-(1-34)NH(黒丸)または[Tyr36]hPTHrP-(1-36)NH(黒四角)を競合リガンドとして用いた。記号は凡例中に示した。競合物質(B)の存在下でPTH/PTHrPおよびPTH-2受容体に特異的に結合したトレーサーの最大量は、各々添加された放射性総量の〜25%および〜5%であった。cAMP刺激アッセイについては、細胞をIBMXの存在下、室温で1時間、リガンドで処理した。図1Cおよび1D中の記号は図1Aおよび1Bに同じである。データは、各々2反復で行った3〜10実験の平均(±標準誤差)である。
【図1C】PTH/PTHrPおよびPTH-2受容体のリガンド結合プロフィールおよびcAMPシグナリングプロフィールを示す。ヒトPTH/PTHrP受容体で(図1Aおよび1C)、またはヒトPTH-2受容体で(図1Bおよび1D)トランスフェクトしたCOS-7細胞を放射性リガンド結合の阻害(図1Aおよび1B)、またはリガンド誘導cAMP集積(図1Cおよび1D)に関して評価した。結合研究は室温(RT)にて2時間行った。125I-[NleTyr8,21,Tyr34]rPTH-(1-34)NH(100,000CPM/ウェル)を放射性リガンドとして用い、種々の量の非標識[Tyr34]hPTH-(1-34)NH(黒丸)または[Tyr36]hPTHrP-(1-36)NH(黒四角)を競合リガンドとして用いた。記号は凡例中に示した。競合物質(B)の存在下でPTH/PTHrPおよびPTH-2受容体に特異的に結合したトレーサーの最大量は、各々添加された放射性総量の〜25%および〜5%であった。cAMP刺激アッセイについては、細胞をIBMXの存在下、室温で1時間、リガンドで処理した。図1Cおよび1D中の記号は図1Aおよび1Bに同じである。データは、各々2反復で行った3〜10実験の平均(±標準誤差)である。
【図1D】PTH/PTHrPおよびPTH-2受容体のリガンド結合プロフィールおよびcAMPシグナリングプロフィールを示す。ヒトPTH/PTHrP受容体で(図1Aおよび1C)、またはヒトPTH-2受容体で(図1Bおよび1D)トランスフェクトしたCOS-7細胞を放射性リガンド結合の阻害(図1Aおよび1B)、またはリガンド誘導cAMP集積(図1Cおよび1D)に関して評価した。結合研究は室温(RT)にて2時間行った。125I-[NleTyr8,21,Tyr34]rPTH-(1-34)NH(100,000CPM/ウェル)を放射性リガンドとして用い、種々の量の非標識[Tyr34]hPTH-(1-34)NH(黒丸)または[Tyr36]hPTHrP-(1-36)NH(黒四角)を競合リガンドとして用いた。記号は凡例中に示した。競合物質(B)の存在下でPTH/PTHrPおよびPTH-2受容体に特異的に結合したトレーサーの最大量は、各々添加された放射性総量の〜25%および〜5%であった。cAMP刺激アッセイについては、細胞をIBMXの存在下、室温で1時間、リガンドで処理した。図1Cおよび1D中の記号は図1Aおよび1Bに同じである。データは、各々2反復で行った3〜10実験の平均(±標準誤差)である。
【図2A】PTH/PTHrPまたはPTH-2受容体に結合するPTH-(1-34)のスキャッチャード解析を示す。ヒトPTH/PTHrP受容体(図2A)またはヒトPTH-2受容体(図2B)のいずれかをコードするプラスミドDNA(200ng/ウェル)でトランスフェクトしたCOS-7細胞を、4℃にて6時間行った競合結合研究で評価した。トレーサーとしての放射性リガンドは125I-[NleTyr8,21,Tyr34]rPTH-(1-34)アミド(100,000CPM/ウェル)であり、競合リガンドは同一の非標識ペプチドであった。データは、各々2反復で行った4実験の平均(±標準誤差)である。挿入は各実験の直線部分からの個々のデータポイントのスキャッチャードプロットを示す。これらの実験から得られた受容体/細胞としての平均解離常数(kds)およびBmax値は上記パネルについて示されている。統計分析は、Kd値ではなく2つの受容体の表面密度が有意に異なっていたことを示した(各々p値=0.0003,0.14、スチューデントt検定)。
【図2A1】PTH/PTHrPまたはPTH-2受容体に結合するPTH-(1-34)のスキャッチャード解析を示す。ヒトPTH/PTHrP受容体(図2A)またはヒトPTH-2受容体(図2B)のいずれかをコードするプラスミドDNA(200ng/ウェル)でトランスフェクトしたCOS-7細胞を、4℃にて6時間行った競合結合研究で評価した。トレーサーとしての放射性リガンドは125I-[NleTyr8,21,Tyr34]rPTH-(1-34)アミド(100,000CPM/ウェル)であり、競合リガンドは同一の非標識ペプチドであった。データは、各々2反復で行った4実験の平均(±標準誤差)である。挿入は各実験の直線部分からの個々のデータポイントのスキャッチャードプロットを示す。これらの実験から得られた受容体/細胞としての平均解離常数(kds)およびBmax値は上記パネルについて示されている。統計分析は、Kd値ではなく2つの受容体の表面密度が有意に異なっていたことを示した(各々p値=0.0003,0.14、スチューデントt検定)。
【図2B】PTH/PTHrPまたはPTH-2受容体に結合するPTH-(1-34)のスキャッチャード解析を示す。ヒトPTH/PTHrP受容体(図2A)またはヒトPTH-2受容体(図2B)のいずれかをコードするプラスミドDNA(200ng/ウェル)でトランスフェクトしたCOS-7細胞を、4℃にて6時間行った競合結合研究で評価した。トレーサーとしての放射性リガンドは125I-[NleTyr8,21,Tyr34]rPTH-(1-34)アミド(100,000CPM/ウェル)であり、競合リガンドは同一の非標識ペプチドであった。データは、各々2反復で行った4実験の平均(±標準誤差)である。挿入は各実験の直線部分からの個々のデータポイントのスキャッチャードプロットを示す。これらの実験から得られた受容体/細胞としての平均解離常数(kds)およびBmax値は上記パネルについて示されている。統計分析は、Kd値ではなく2つの受容体の表面密度が有意に異なっていたことを示した(各々p値=0.0003,0.14、スチューデントt検定)。
【図2B1】PTH/PTHrPまたはPTH-2受容体に結合するPTH-(1-34)のスキャッチャード解析を示す。ヒトPTH/PTHrP受容体(図2A)またはヒトPTH-2受容体(図2B)のいずれかをコードするプラスミドDNA(200ng/ウェル)でトランスフェクトしたCOS-7細胞を、4℃にて6時間行った競合結合研究で評価した。トレーサーとしての放射性リガンドは125I-[NleTyr8,21,Tyr34]rPTH-(1-34)アミド(100,000CPM/ウェル)であり、競合リガンドは同一の非標識ペプチドであった。データは、各々2反復で行った4実験の平均(±標準誤差)である。挿入は各実験の直線部分からの個々のデータポイントのスキャッチャードプロットを示す。これらの実験から得られた受容体/細胞としての平均解離常数(kds)およびBmax値は上記パネルについて示されている。統計分析は、Kd値ではなく2つの受容体の表面密度が有意に異なっていたことを示した(各々p値=0.0003,0.14、スチューデントt検定)。
【図3】PTH、PTHrPおよびハイブリッドリガンドの一次構造を示している。本研究に用いられた生物活性のあるPTH、PTHrPおよびPTH/PTHrPハイブリッドリガンドの領域が示されている。PTHrPに相当する配列が共有されている。総てのペプチドはチロシン-アミドのカルボキシ末端修飾を含み、他には天然ヒトPTHまたはヒトPTHrP配列と一致していた。
【図4A】PTH-(15-34)およびPTHrP-(15-36)カルボキシ末端断片の結合特性における2位での置換の効果を示す。置換および非置換PTH-(15-34)またはPTHrP-(15-36)の、PTH/PTHrP受容体(図4A)またはPTH-2受容体(図4B)のいずれかを発現するCOS-7細胞の結合特性を示している。競合結合研究は125I-[NleTyr8,21,Tyr34]rPTH-(1-34)NH(100,000CPM/ウェル)を放射性リガンドとして用いて室温にて2時間行った。用いた非標識リガンドは図の凡例中に示し、各々の構造はヒトPTHまたはPTHrP配列に基づき、カルボキシ末端残基としてチロシン-アミドを含んだ。データは各々2反復で行った3または4実験の平均(±標準誤差)である。
【図4B】PTH-(15-34)およびPTHrP-(15-36)カルボキシ末端断片の結合特性における2位での置換の効果を示す。置換および非置換PTH-(15-34)またはPTHrP-(15-36)の、PTH/PTHrP受容体(図4A)またはPTH-2受容体(図4B)のいずれかを発現するCOS-7細胞の結合特性を示している。競合結合研究は125I-[NleTyr8,21,Tyr34]rPTH-(1-34)NH(100,000CPM/ウェル)を放射性リガンドとして用いて室温にて2時間行った。用いた非標識リガンドは図の凡例中に示し、各々の構造はヒトPTHまたはPTHrP配列に基づき、カルボキシ末端残基としてチロシン-アミドを含んだ。データは各々2反復で行った3または4実験の平均(±標準誤差)である。
【図5A】PTH-(1-34)およびPTHrP-(1-36)のPTH/PTHrPおよびPTH-2受容体への結合に対する5位および23位での置換の効果を示している。置換および非置換PTH-(1-34)またはPHTrP-(1-36)類似体の、PTH/PTHrP受容体(図5Aおよび5C)またはPTH-2受容体(図5Bおよび5D)のいずれかを発現するCOS-7細胞への結合を示す。競合結合研究(RT/2h)は125I-[NleTyr8,21,Tyr34]rPTH-(1-34)アミド(100,000CPM/ウェル)を放射性リガンドとして用いて行った。競合物質として用いた非標識PTHrP(図5Aおよび5B)およびPTH(図5Cおよび5D)類似体リガンドは図の凡例中に示し;各々の構造はヒトPTHまたはPTHrP配列に基づき、カルボキシ末端残基としてチロシン-アミドを含んだ。比較のため、図1AおよびBからの[Tyr36]hPTHrP-(1-36)NHおよび[Tyr34]hPTH-(1-34)NHの結合曲線を再度示している。データは各々2反復で行った3〜10実験の平均(±標準誤差)である。
【図5B】PTH-(1-34)およびPTHrP-(1-36)のPTH/PTHrPおよびPTH-2受容体への結合に対する5位および23位での置換の効果を示している。置換および非置換PTH-(1-34)またはPHTrP-(1-36)類似体の、PTH/PTHrP受容体(図5Aおよび5C)またはPTH-2受容体(図5Bおよび5D)のいずれかを発現するCOS-7細胞への結合を示す。競合結合研究(RT/2h)は125I-[NleTyr8,21,Tyr34]rPTH-(1-34)アミド(100,000CPM/ウェル)を放射性リガンドとして用いて行った。競合物質として用いた非標識PTHrP(図5Aおよび5B)およびPTH(図5Cおよび5D)類似体リガンドは図の凡例中に示し;各々の構造はヒトPTHまたはPTHrP配列に基づき、カルボキシ末端残基としてチロシン-アミドを含んだ。比較のため、図1AおよびBからの[Tyr36]hPTHrP-(1-36)NHおよび[Tyr34]hPTH-(1-34)NHの結合曲線を再度示している。データは各々2反復で行った3〜10実験の平均(±標準誤差)である。
【図5C】PTH-(1-34)およびPTHrP-(1-36)のPTH/PTHrPおよびPTH-2受容体への結合に対する5位および23位での置換の効果を示している。置換および非置換PTH-(1-34)またはPHTrP-(1-36)類似体の、PTH/PTHrP受容体(図5Aおよび5C)またはPTH-2受容体(図5Bおよび5D)のいずれかを発現するCOS-7細胞への結合を示す。競合結合研究(RT/2h)は125I-[NleTyr8,21,Tyr34]rPTH-(1-34)アミド(100,000CPM/ウェル)を放射性リガンドとして用いて行った。競合物質として用いた非標識PTHrP(図5Aおよび5B)およびPTH(図5Cおよび5D)類似体リガンドは図の凡例中に示し;各々の構造はヒトPTHまたはPTHrP配列に基づき、カルボキシ末端残基としてチロシン-アミドを含んだ。比較のため、図1AおよびBからの[Tyr36]hPTHrP-(1-36)NHおよび[Tyr34]hPTH-(1-34)NHの結合曲線を再度示している。データは各々2反復で行った3〜10実験の平均(±標準誤差)である。
【図5D】PTH-(1-34)およびPTHrP-(1-36)のPTH/PTHrPおよびPTH-2受容体への結合に対する5位および23位での置換の効果を示している。置換および非置換PTH-(1-34)またはPHTrP-(1-36)類似体の、PTH/PTHrP受容体(図5Aおよび5C)またはPTH-2受容体(図5Bおよび5D)のいずれかを発現するCOS-7細胞への結合を示す。競合結合研究(RT/2h)は125I-[NleTyr8,21,Tyr34]rPTH-(1-34)アミド(100,000CPM/ウェル)を放射性リガンドとして用いて行った。競合物質として用いた非標識PTHrP(図5Aおよび5B)およびPTH(図5Cおよび5D)類似体リガンドは図の凡例中に示し;各々の構造はヒトPTHまたはPTHrP配列に基づき、カルボキシ末端残基としてチロシン-アミドを含んだ。比較のため、図1AおよびBからの[Tyr36]hPTHrP-(1-36)NHおよび[Tyr34]hPTH-(1-34)NHの結合曲線を再度示している。データは各々2反復で行った3〜10実験の平均(±標準誤差)である。
【図6A】PTH/PTHrPおよびPTH-2受容体を用いた場合のPTH-(1-34)およびPTHrP-(1-36)によるcAMPのシグナリングに対する5位および23位での置換の効果を示している。置換および非置換PTH-(1-34)またはPTHrP-(1-36)ペプチド類似体の、PTH/PTHrP受容体(図6Aおよび6C)またはPTH-2受容体(図6Bおよび6D)のいずれかを発現するCOS-7細胞におけるcAMP形成を刺激する能力が示されている。細胞は、IBMXの存在下、室温にて1時間、示されたペプチド量で処理した。用いたPTHrP(図6Aおよび6B)およびPTH(図6Cおよび6D)類似体リガンドは図の凡例中に示し;各々はヒトPTHまたはPTHrP配列に基づき、カルボキシ末端残基としてチロシン-アミドを含んだ。比較のため、ここで図1Cおよび1Dからの[Tyr36]hPTHrP-(1-36)NHおよび[Tyr34]hPTH-(1-34)NHの曲線を再度示している。データは各々2反復で行った3〜5実験の平均(±標準誤差)である。
【図6B】PTH/PTHrPおよびPTH-2受容体を用いた場合のPTH-(1-34)およびPTHrP-(1-36)によるcAMPのシグナリングに対する5位および23位での置換の効果を示している。置換および非置換PTH-(1-34)またはPTHrP-(1-36)ペプチド類似体の、PTH/PTHrP受容体(図6Aおよび6C)またはPTH-2受容体(図6Bおよび6D)のいずれかを発現するCOS-7細胞におけるcAMP形成を刺激する能力が示されている。細胞は、IBMXの存在下、室温にて1時間、示されたペプチド量で処理した。用いたPTHrP(図6Aおよび6B)およびPTH(図6Cおよび6D)類似体リガンドは図の凡例中に示し;各々はヒトPTHまたはPTHrP配列に基づき、カルボキシ末端残基としてチロシン-アミドを含んだ。比較のため、ここで図1Cおよび1Dからの[Tyr36]hPTHrP-(1-36)NHおよび[Tyr34]hPTH-(1-34)NHの曲線を再度示している。データは各々2反復で行った3〜5実験の平均(±標準誤差)である。
【図6C】PTH/PTHrPおよびPTH-2受容体を用いた場合のPTH-(1-34)およびPTHrP-(1-36)によるcAMPのシグナリングに対する5位および23位での置換の効果を示している。置換および非置換PTH-(1-34)またはPTHrP-(1-36)ペプチド類似体の、PTH/PTHrP受容体(図6Aおよび6C)またはPTH-2受容体(図6Bおよび6D)のいずれかを発現するCOS-7細胞におけるcAMP形成を刺激する能力が示されている。細胞は、IBMXの存在下、室温にて1時間、示されたペプチド量で処理した。用いたPTHrP(図6Aおよび6B)およびPTH(図6Cおよび6D)類似体リガンドは図の凡例中に示し;各々はヒトPTHまたはPTHrP配列に基づき、カルボキシ末端残基としてチロシン-アミドを含んだ。比較のため、ここで図1Cおよび1Dからの[Tyr36]hPTHrP-(1-36)NHおよび[Tyr34]hPTH-(1-34)NHの曲線を再度示している。データは各々2反復で行った3〜5実験の平均(±標準誤差)である。
【図6D】PTH/PTHrPおよびPTH-2受容体を用いた場合のPTH-(1-34)およびPTHrP-(1-36)によるcAMPのシグナリングに対する5位および23位での置換の効果を示している。置換および非置換PTH-(1-34)またはPTHrP-(1-36)ペプチド類似体の、PTH/PTHrP受容体(図6Aおよび6C)またはPTH-2受容体(図6Bおよび6D)のいずれかを発現するCOS-7細胞におけるcAMP形成を刺激する能力が示されている。細胞は、IBMXの存在下、室温にて1時間、示されたペプチド量で処理した。用いたPTHrP(図6Aおよび6B)およびPTH(図6Cおよび6D)類似体リガンドは図の凡例中に示し;各々はヒトPTHまたはPTHrP配列に基づき、カルボキシ末端残基としてチロシン-アミドを含んだ。比較のため、ここで図1Cおよび1Dからの[Tyr36]hPTHrP-(1-36)NHおよび[Tyr34]hPTH-(1-34)NHの曲線を再度示している。データは各々2反復で行った3〜5実験の平均(±標準誤差)である。
【図7A】PTH/PTHrPまたはPTH-2受容体を発現するCOS-7細胞におけるPTH-(1-34)のが誘導するcAMP形成の拮抗作用を示している。PTH/PTHrPまたはPTH-2受容体のいずれかを発現するCOS-7細胞を種々の用量の[Leu11,D-Trp12]hPTHrP(7-34)NHまたは[Typ34,Typ36]hPTHrP-(1-36)、および最大刺激用量付近のアゴニスト、[Tyr34]hPTHrP-(1-34)NH(1nM)で処理し、次いでIBMXの存在下、室温で30分間インキュベートした。生じた細胞内cAMPレベルは、[Tyr34]hPTH-(1-34)NH単独(1nM)で処理した細胞内でのcAMPレベルのパーセンテージとして表し、これはPTH/PTHrP受容体とPTH-2受容体について各々167±17と70±8ピコモル/ウェルであった。これに相当する、ペプチドで処理されなかった細胞における基礎cAMPレベルは、各々8.4±0.3と9.0±11.7ピコモル/ウェルであった。データは各々2反復で行った2実験の平均(±標準誤差)である。
【図7B】PTH/PTHrPまたはPTH-2受容体を発現するCOS-7細胞におけるPTH-(1-34)のが誘導するcAMP形成の拮抗作用を示している。PTH/PTHrPまたはPTH-2受容体のいずれかを発現するCOS-7細胞を種々の用量の[Leu11,D-Trp12]hPTHrP(7-34)NHまたは[Typ34,Typ36]hPTHrP-(1-36)、および最大刺激用量付近のアゴニスト、[Tyr34]hPTHrP-(1-34)NH(1nM)で処理し、次いでIBMXの存在下、室温で30分間インキュベートした。生じた細胞内cAMPレベルは、[Tyr34]hPTH-(1-34)NH単独(1nM)で処理した細胞内でのcAMPレベルのパーセンテージとして表し、これはPTH/PTHrP受容体とPTH-2受容体について各々167±17と70±8ピコモル/ウェルであった。これに相当する、ペプチドで処理されなかった細胞における基礎cAMPレベルは、各々8.4±0.3と9.0±11.7ピコモル/ウェルであった。データは各々2反復で行った2実験の平均(±標準誤差)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
PTH−2受容体アゴニストであり、かつPTH/PTHrP受容体アゴニストであるPTHrP類似体であって、アミノ酸残基5および23において変更がなされている配列番号2のアミノ酸配列を有するPTHrP類似体(但し、PTHrP残基5における変更がインロイシンからヒスチジンヘのアミノ酸置換であり、かつ、PTHrP残基23における変更がトリプトファンからフェニルアラニンヘのアミノ酸置換である場合を除く)。
【請求項2】
PTH‐2受容体選択性アンタゴニストであるPTHrP類似体であって、アミノ酸残基23において変更がなされている配列番号2のアミノ酸配列を有するPTHrP類似体(但し、PTHrPアミノ酸残基23における変更がトリプトファンからフェニルアラニンへの置換である場合を除く)。
【請求項3】
請求項1のPTHrP類似体を含んでなる、骨粗鬆症の治療用医薬組成物。
【請求項4】
請求頃2のPTHrP類似体を含んでなる、PTH−2受容体の変更されたまたは過剰な作用に起因する内科疾患の治療用医薬組成物。
【請求項5】
PTH−2受容体アゴニストであり、かつPTH/PTHrP受容体アゴニストであるPTHrP類似体であって、アミノ酸残基5および23において変更がなされている配列番号2のアミノ酸配列を有し、PTHrP残基5における変更がインロイシンからヒスチジンヘのアミノ酸置換であり、かつ、PTHrP残基23における変更がトリプトファンからフェニルアラニンヘのアミノ酸置換であるPTHrP類似体を含んでなる、PTH−2受容体の変更されたまたは過剰な作用に起因する内科疾患の治療用医薬組成物。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2A】
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【図2A1】
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【図2B】
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【図2B1】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図7A】
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【図7B】
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【公開番号】特開2008−74868(P2008−74868A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−302159(P2007−302159)
【出願日】平成19年11月21日(2007.11.21)
【分割の表示】特願平10−509112の分割
【原出願日】平成9年7月30日(1997.7.30)
【出願人】(594061492)ザ・ジェネラル・ホスピタル・コーポレイション (4)
【Fターム(参考)】