説明

副腎皮質ステロイド投与のための経皮的方法及びパッチ

副腎皮質ステロイドの投与を必要とする、疾患を有する個体の治療方法及び診断目的の方法であって、個体の完全な皮膚にバッキング層及びマトリクス接着層を有する経皮パッチを適用することを含む方法。このマトリクス接着層は、皮膚適合性圧力感受性接着剤、副腎皮質ステロイド及び少なくとも1種の透過促進剤を含む。このマトリクス接着層は、個体の完全な皮膚に適用すると、疾患の全身治療のために、又は診断目的で哺乳動物に副腎皮質ステロイドを経皮的に継続送達する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、個体において疾患の全身治療のために、又は診断目的で副腎皮質ステロイドを投与するための経皮的方法及びデバイスに関する。より詳細には、本発明は、疾患の全身治療のために、又は診断目的でデキサメタゾンを投与するための経皮的方法及びパッチに関する。
【0002】
デキサメタゾンは、炎症;心筋梗塞;化学療法、放射線療法又はその他の薬剤治療による悪心及び嘔吐を含む悪心及び嘔吐;癌治療;周術期及び術後の外傷、損傷、及び浮腫;出血斑;呼吸器感染;喘息;その他の疾患を治療するため、並びにその他の診断目的のために投与することができる副腎皮質ステロイドの一例である。副腎皮質ステロイド投与の一般的方法には、錠剤及び液剤などの経口法、並びに筋肉内若しくは静脈内投与又は関節腔への注射などの非経口法が含まれる。関節炎などによる局所的炎症、又はツタウルシ皮疹などによるそう痒及び皮膚刺激の場合、局所用副腎皮質ステロイドは、症状の局所的治療を実現するために患部に局所的に適用することができる。
【0003】
しかし、副腎皮質ステロイドで最も効果的に治療される疾患及び診断目的の多くは、2日以上の期間にわたって治療を継続することが必要である。さらに、これらの疾患及び診断目的の多くは、その特性のため薬物の効果的な経口投与が不可能ではないにしても、不快で困難である。例えば、患者が悪心及び嘔吐に苦しんでいるような場合、薬剤の経口投与は辛く、患者により不快感をもたらす。患者によってはまた、これらの薬剤の投与が胃の不快感又は刺激を引き起こすことに気づくことがある。注射による投与は一般的に、家庭での使用が実現不可能である。
【0004】
皮膚(derma)、すなわち、皮膚(skin)及び粘膜からの薬剤送達は、その他の投与経路よりも多くの利点をもたらす。まず第1に、経皮的薬剤送達は苦痛がなく、便利で、非侵襲的な薬剤の投与方法である。胃腸刺激などのその他の不都合と同様に、経口投与に伴って吸収及び代謝の速度が様々となることが回避される。経皮的薬剤送達はまた、いかなる特別な薬剤でも血中濃度の制御を高くすることが可能で、一定した薬剤送達が可能である。これらの利点は、患者の服薬遵守を高め、医薬品の安全性及び効率を改善する。
【0005】
皮膚は複雑な構造をした比較的厚い膜である。環境から完全な皮膚の内部へ、及び完全な皮膚を通過して移動する分子は、まず角質層及びその表面上のいかなる物質にも浸透しなければならない。その後、このような分子は、生きている表皮、乳頭層、及び全身治療のためには血流又はリンパ管への毛細管に浸透しなければならない。このように吸収されるために、分子は様々な抵抗を克服して様々な種類の組織に浸透しなければならない。さらに、様々な種類の薬剤分子は、様々な種類の組織への浸透に関連したそれら固有の特性を表すことができる。皮膚膜を通過する輸送はこのように複雑な現象で、したがって、単一の製剤を様々な薬剤に適用することはできない。経皮的送達に関するいくつかの文書によってステロイドの送達について論じられているが、エストロゲン、プロゲスチンなどこれらの多くは、1日当たり微量で送達したとき、効果的なステロイド送達が可能である。したがって、これらの製剤は、ミリグラムの用量で投与される副腎皮質ステロイドの送達には適していない。さらに、ステロイド剤を含有する公知の経皮的送達製剤のいくつかは、pH感受性を示し、酸基がない成分のみを含む。
【0006】
薬剤の経皮投与のためのデバイスは一般的に、液体貯蔵体パッチ又はマトリクスパッチいずれかの部類に分類される。液体貯蔵体パッチでは、薬剤は貯蔵体中に液体として保存され、そこから皮膚に拡散する。このパッチには、薬剤の放出速度を制御する速度制御膜を含むことができる境界層が含まれる。マトリクスパッチでは、薬剤を保存し、放出速度を制御し、皮膚に密着するための1種又は複数の層から構成され得る高分子マトリクス中に薬剤は保存される。液体貯蔵体パッチは、薬剤及び高分子マトリクスの不適合性などの問題が少ないので、マトリクスパッチよりも開発しやすい。しかし、マトリクスパッチは、液体貯蔵体パッチよりも製造しやすく、装着がより快適で便利である。
【0007】
したがって、疾患の全身治療のために、又は診断目的で副腎皮質ステロイドを投与するためのマトリクスパッチなどの経皮的方法及びデバイスを提供することが望ましい。
【0008】
〔発明の概要〕
本発明は、個体において疾患の全身治療のために、又は診断目的で副腎皮質ステロイドを投与するための経皮的方法及びデバイスに関する。より詳細には、本発明は、個体において疾患の全身治療のために、又は診断目的でデキサメタゾンを投与するための経皮マトリクスパッチ及びその使用方法に関する。
【0009】
一実施形態では、本発明は、個体の完全な皮膚に、バッキング層、並びに皮膚適合性圧力感受性接着剤、副腎皮質ステロイド及び少なくとも1種の透過促進剤を備えたマトリクス接着層を有する経皮マトリクスパッチを適用することによって、副腎皮質ステロイドの全身投与を必要とする、疾患を有する個体を治療する方法又は診断目的の方法に関する。マトリクス接着層は、個体の完全な皮膚に適用すると、疾患の全身治療のために、又は診断目的で個体に副腎皮質ステロイドを経皮的に継続送達する。一実施形態では、副腎皮質ステロイドはデキサメタゾンである。一実施形態では、透過促進剤は、脂肪酸、脂肪酸エステル、直鎖、環式又は分枝鎖アルキルアルコール及びそれらのエステル及びエーテル及びこれらの組合せから選択される。
【0010】
他の実施形態では、本発明はバッキング層並びに皮膚適合性アクリル系接着剤、治療的に有効な1日用量を送達するのに十分な量の副腎皮質ステロイド及び脂肪酸、脂肪酸エステル、直鎖又は分枝鎖アルキルアルコール及びそれらのエステル及びこれらの組合せから選択された少なくとも1種の透過促進剤を備えたマトリクス接着層を有する経皮マトリクスパッチに関する。一実施形態では、透過促進剤は、マトリクス接着層の総重量をベースにして0.5%と15%との間の量でマトリクス接着層中に存在する。マトリクスパッチを個体の皮膚に適用するとき、マトリクス接着層は、長期にわたって、疾患の全身治療のために、又は診断目的で個体に副腎皮質ステロイドを経皮的に継続送達する。一実施形態では、マトリクスパッチは、デキサメタゾンなどの副腎皮質ステロイドの0.25mgと8.0mgとの間の1日用量を送達する。一実施形態では、透過促進剤は、オレイン酸、ミリスチン酸イソプロピル、ラウリルアルコール、ジメチルイソソルビド、オレイン酸メチル及びこれらの組合せから選択される。一実施形態では、透過促進剤は、脂肪酸、脂肪酸エステル、C8〜C16アルコール(直鎖アルコールなど)、ヒドロキシルがC1〜C4アルキルでアルキル化されているか、若しくはされていない多価アルコール、炭素若しくは酸素の5個から10個の環原子及びヒドロキシルがC1〜C4アルキルでアルキル化されているか、若しくはされていない2個以上のヒドロキシルを有するC/H/Oの環式若しくは二環式化合物、炭素若しくは酸素の5個から10個の主鎖原子及びヒドロキシルがC1〜C4アルキルでアルキル化されているか、若しくはされていない2個以上のヒドロキシルを有するC/H/Oの分枝鎖化合物又はそれらの混合物から選択される。脂肪酸又は脂肪酸アシル部分は、例えば、C12〜C30若しくはC14以上、又はC16以上、又はC24以下、又はC22以下、又はC20以下、又はC18以下であってよい。脂肪酸又は脂肪酸アシル部分は、例えば、シス2重結合を形成することができる1個又は複数の不飽和を含むことができる。脂肪酸エステルのアルコール部分は、例えば、C1〜C6又はC2〜C4、例えばイソプロパノールであってよい。
【0011】
驚くべきことに、本発明は、少量の活性成分を含有する組成物からの高い流量を示す。この送達速度は、透過促進剤の最適レベル及び/又は組合せによってさらに促進される。
【0012】
〔詳細な説明〕
本明細書では、「副腎皮質ステロイド」という用語は、副腎皮質によって産生されたステロイドホルモンのいずれか又は合成された同等物を意味する。
【0013】
本明細書では、「疾患」及び「疾患状態」という用語は、病気又は疾病又は生命機能の障害に関連した特定の徴候及び症状によって特徴付けられた個体の任意の状態を意味する。
【0014】
本明細書では、「診断」という用語は、個体における疾患状態、症状又は正常機能を検出し、同定する目的のために使用される製品又は過程を意味する。
【0015】
本明細書では、「個体」という用語は、生きている哺乳動物を意味し、限定はしないが、ヒト及びその他の霊長類、家畜及び競技用動物(sports animal)、例えば、ウシ、ブタ及びウマ、及びペット、例えば、ネコ及びイヌを含む。
【0016】
本明細書では、「マトリクス接着層」という用語は、その他の成分も含有することができる生体適合性接着相、好ましくは圧力感受性接着剤中に完全に混合した、すなわち、溶解又は懸濁した薬剤を意味する。
【0017】
本明細書では、「透過促進」という用語は、透過促進剤が存在しない治療薬に対する皮膚の透過性と比較して、透過促進剤が存在する同治療薬に対する皮膚の透過性の増加を意味する。
【0018】
本明細書では、「透過促進剤」という用語は、治療薬に対する皮膚の透過性を増加させるように作用する薬剤又は薬剤の混合物を意味する。
【0019】
本明細書では、「透過促進量」という用語は、投与期間の実質的な部分を通じて透過促進をもたらす透過促進剤の量を意味する。
【0020】
本明細書では、「完全な皮膚の部分」という表現は、完全な無傷の皮膚又は粘膜組織の限定された部位を意味する。その部位は通常、約5cmから約100cmの範囲内である。
【0021】
本明細書では、「経皮」という用語は、経皮的(percutaneous)及び経粘膜的投与の両方、すなわち、薬剤、例えば、副腎皮質ステロイドの完全な無傷の皮膚又は完全な無傷の粘膜組織などの体表面又は膜から体循環への移行を意味する。
【0022】
本明細書では、「経皮的に吸収可能な」という用語は、本発明の経皮デバイス内に製剤化されたとき、薬剤が完全な無傷の皮膚又は完全な無傷の粘膜組織などの体表面又は膜から体循環へ通過する能力を意味する。
【0023】
本明細書では、「皮膚接触層」という用語は、皮膚又は粘膜と接触する経皮デバイスの1層のことである。
【0024】
本明細書では、「治療有効用量」という用語は、所望する治療効果をもたらすために個体の適切な収集による平均に対して必要な薬剤の量を意味する。診断用量は、治療標的に合わせてあることは理解されよう。したがって、治療有効用量は、診断上有効な用量である。
【0025】
本発明は、副腎皮質ステロイドの経皮投与による副腎皮質ステロイドの投与を必要とする、疾患の治療方法又は診断目的のための方法に関する。本発明で使用するための副腎皮質ステロイドの例には、限定はしないが、ヒドロキシコルチゾン、コルチゾン、デソキシコルチコステロン、フルドロコルチゾン、ベタメタゾン、デキサメタゾン、プレドニゾロン、プレドニゾン、メチルプレドニゾロン、パラメタゾン、トリアムシロノン、フルメタゾン、フルオシノロン、フルオシノニド、フルプレドニゾロン、ハルシノニド、フルランドレノリド、メプレドニゾン、メドリゾン及びそれらのエステル及び混合物が含まれる。本発明はまた、本発明の方法で使用するためのデバイス及び組成物に関する。
【0026】
特定の実施形態では、本発明の方法は、限定はしないが、心筋梗塞、炎症、喘息、出血斑、周術期及び術後の外傷及び損傷、浮腫、ある種の癌、呼吸器感染症及び悪心及び嘔吐を含む、デキサメタゾンの投与を必要とする疾患の治療に、又は診断目的に有用である。
【0027】
特定の実施形態では、本発明の方法は、化学療法、放射線療法、その他の薬物療法、乗物酔い又は術後反応による悪心及び嘔吐の治療に特に有用であることを見出し得る。この方法は、数日間だけ副腎皮質ステロイドの継続的な経皮投与を必要とするので、経口摂取によって既存の悪心及び嘔吐を悪化させることなく、長期間悪心及び嘔吐を予防、改善又は治療するのに有効である。この方法は経皮デバイスを設置することが必要で、実施形態によっては3日以上設置したままにし、デバイスを適用した時点からデバイスを取り除くまで患者の悪心及び嘔吐を予防し、このデバイスが悪心及び嘔吐を予防又は軽減することがわかると、化学療法後、患者が病院又は診療所を退院する自信を高めるので、本発明の利点にはさらに患者の服薬遵守の改善が含まれる。さらに、このデバイスは、全治療期間、又は取り除くまで、副腎皮質ステロイドの治療有効1日用量を送達する。このデバイスは、継続的な制御された速度で副腎皮質ステロイドを送達するので、薬剤をIVによって投与するときのように血漿濃度が最初に急上昇することがなく、したがって、この方法はその他の投与形態で時々起こり得る副作用が少ない。
【0028】
特定の実施形態では、本発明の方法は、喘息又はその他の呼吸器障害の治療に特に有用であることを発見することができる。これらの症状に罹患した個体は、気道が炎症を起こし膨張しているため、呼吸困難が見られることがある。副腎皮質ステロイドの全身治療がこれらの症状の治療に指示されることがある。しかし、これらの症状のため呼吸が困難な個体は、いかなる薬剤の経口剤形も嚥下することがしばしば困難で、不快なことがあり得る。IM及びIV注射は、家庭での使用は不可能で、したがって、喘息及びその他の呼吸障害の全身治療のための副腎皮質ステロイドの経皮投与方法は、薬剤を継続的に制御された用量で送達するので、薬剤投与による患者の不快を軽減するのに役立つ。
【0029】
特定の実施形態では、本発明の方法は、特定の症状、例えば、トローザハント症候群などの診断、又はデキサメタゾン抑制試験を使用する場合はいつでも特に有用であることを発見することがある。
【0030】
特定の実施形態では、本発明のデバイスは、24時間以上、48時間以上、又は72時間以上デキサメタゾンの0.1μg/cm/時間以上の実質的に一定な流動速度を実現する。特定の実施形態では、本発明のデバイスは、24時間以上、48時間以上、又は72時間以上デキサメタゾンの0.2μg/cm/時間以上の一定な流動速度を実現する。
【0031】
特定の実施形態では、本発明のデバイスは経皮的に副腎皮質ステロイドの治療有効1日用量を供給する。特定の実施形態では、本発明のデバイスは経皮的にデキサメタゾンの治療有効1日用量、例えば、0.25と8mg/日との間などを供給する。特定の実施形態では、このデバイスは、2日以上、又は3日以上このような用量を供給する。
【0032】
本発明のデバイスの一実施形態は、個体の皮膚又は粘膜に適用するための経皮パッチである。このパッチは、バッキング層に積層されているか、その他の形で接着された皮膚接触マトリクス接着層を有する。通常、マトリクス接着層は、皮膚又は粘膜に適用するまでマトリクス接着表面を保護し清潔に保つために、使用するまで除去可能な剥離層によって覆われている。
【0033】
バッキング層は、マトリクス接着層の支持体として役立ち、マトリクス接着層中の薬剤の環境への消失を防御するバリヤー層を形成する。バッキングのために選択された材料は、接着剤、薬剤及び透過促進剤に適合しなければならず、パッチのいかなる成分も最小限しか透過してはならない。バッキングは、紫外線に対する曝露による分解からマトリクスパッチの成分を防御するために不透明であることができる。さらに、バッキングは、接着層に結合し、支持することができなければならず、パッチを使用する人の動きに適用するように柔軟でなければならない。バッキングに適した材料には、金属ホイル、金属被覆ポリホイル、テレフタレートポリエステルなどのポリエステルを含む複合ホイル又はフィルム、ポリエステル又はアルミニウム被覆ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルブロックアミド共重合体、ポリエチレンメチルメタクリレートブロック共重合体、ポリウレタン、ポリビニリデンクロリド、ナイロン、シリコンエラストマー、ゴムベースポリイソブチレン、スチレン、スチレン−ブタジエン及びスチレン−イソプレン共重合体、ポリエチレン及びポリプロピレンが含まれる。例えば、厚さは約0.0005から0.01インチを使用することができる。当業界で知られているように、接着性単量体には、カルボキシル酸部分(又はそれらの塩)及び/又はその他の官能基、例えば、ヒドロキシルを含めることができる。又は、接着性単量体は、官能基を有さない単量体であってよい(合成される場合、例えば、エステル結合の実質的な加水分解はないとみなされる)。接着性重合体は、ある程度まで、例えば、架橋結合単量体によって架橋していることが多い。
【0034】
有用な接着剤には、例えば、アクリル樹脂(例えば、アクリル酸アルキルを含むポリアクリレート)、酢酸ポリビニル、天然及び合成ゴム、エチレンビニルアセテート共重合体、ポリシロキサン、ポリウレタン、可塑化ポリエーテルブロックアミド共重合体、可塑化スチレン−ブタジエンゴムブロック共重合体及びそれらの混合物が含まれる。ポリアクリレートは、例えば、Duro−Tak87−4098、Duro−Tak87−2052、Duro−Tak387−2353(又はDuro−Tak87−2353)、Duro−Tak387−2287(又はDuro−Tak87−2287)、Duro−Tak387−2516(又はDuro−Tak87−2516)(いずれもNational Starch&Chemical、Bridewater、NJから入手)又はそれらの混合物であってよい。スチレン−ブタジエンゴム圧力感受性接着剤は、例えば、DURO−TAK(登録商標)87−6173接着剤(National Starch&Chemical)であってよい。
【0035】
剥離層は、バッキングと同一の材料又は適切な剥離表面でコーティングしたその他の適切なフィルムで形成され得る。
【0036】
パッチはさらに、接着剤、副腎皮質ステロイド及び透過促進剤に加えて様々な添加物を含むことができる。これらの添加物は一般的に、薬剤送達の業界、より詳細には、経皮的薬剤送達の業界で知られている薬学的に許容される成分である。添加物成分の非限定的な例には、希釈剤、賦形剤、軟化薬、可塑剤、皮膚刺激軽減剤(粘膜に対する刺激を軽減する薬剤も含めることができる)、担体及びこれらの混合物が含まれる。例えば、適切な希釈剤は、鉱物油、低分子重合体、可塑剤などを含むことができる。いくつかの経皮的薬剤送達製剤は、皮膚又は粘膜に長期間曝露した後で刺激を引き起こす傾向があり、したがって、刺激軽減剤の添加は皮膚又は粘膜によってより許容される組成物の実現に役立つ。
【0037】
本発明の方法の実施形態による副腎皮質ステロイドの経皮的送達のために、皮膚適合性圧力感受性接着剤、副腎皮質ステロイド及び透過促進剤を含有するマトリクス接着層を備えた経皮パッチを個体の完全な皮膚に適用する。パッチは、副腎皮質ステロイドの投与を必要とする、疾患の全身治療のために、又は診断目的で副腎皮質ステロイドを個体に経皮的に継続送達する。
【0038】
特定の実施形態では、接着層中の副腎皮質ステロイド(複数可)の量は、接着層の重量の15%以下、又は14%以下、又は13%以下、又は12%以下、又は11%以下、又は10%以下、又は9%以下、又は8%以下、又は7%以下、又は6%以下、又は5%以下、又は4%以下である。特定の実施形態では、接着層中の副腎皮質ステロイド(複数可)の量は、接着層の重量の0.25%以上、又は0.5%以上、又は1%以上、又は2%以上、又は3%以上、又は4%以上、又は5%以上、又は6%以上、又は7%以上、又は8%以上である。
【0039】
特定の実施形態では、接着層中の透過促進剤(複数可)の量は、接着層の重量の15%以下、又は14%以下、又は13%以下、又は12%以下、又は11%以下、又は10%以下、又は9%以下、又は8%以下、又は7%以下、又は6%以下、又は5%以下、又は4%以下、又は3%以下である。特定の実施形態では、接着層中の透過促進剤(複数可)の量は、接着層の重量の0.5%以上、又は1%以上、又は2%以上、又は3%以上、又は4%以上、又は5%以上、又は6%以上である。
実施例1:試料の調製
【表1】

【0040】
実施例1で使用したアクリル系接着剤は、いずれもNational Starch and Chemical、Bridgewater、NJから市販されているDURO−TAK(登録商標)87−900A(官能基を有さない単量体、酢酸ビニル無し)及びDURO−TAK(登録商標)87−2510(ヒドロキシル官能基)であった。本明細書の実施例で使用した剥離層は、ポリエステルであり、Loparex,Incから市販されている。本明細書の実施例で使用したバッキングはまた、ポリエステルであり、3Mから2610Fとして市販されている。試料は、表1で示した量に従って調製した。デキサメタゾンはアクリル系接着剤に混合して、均一な懸濁液を形成した。懸濁液を所望する厚さまでポリエステル剥離層のシリコン処理表面にコーティングした。次に、コーティングした剥離層を乾燥器に入れ、溶媒を除去した。次に、乾燥した接着剤コーティング剥離層にポリエステルバッキング層を積層した。多層状の積層を、所望する標的1日用量を送達するために所望する大きさ及び形状の単位をパンチすることによって切断した。或いは、積層は、保存のため、又は他の位置に輸送するために筒状に巻くことができる。筒状の積層は、その後広げて、所望する大きさ及び形状の単位をパンチすることによって切断することができる。次に、これらのパンチした単位を個々の小袋に入れ、後にパッチとして使用するために密封した。
実施例2:経皮送達デバイスからのデキサメタゾンのin vitro流量
【0041】
熱分離したヒト死体皮膚を所望する大きさに切断し、フランツ型拡散セルに設置した。前記の実施例1で記載したように作製したパッチから剥離層をはがした。パッチを皮膚の上に置き、パッチ及び皮膚を一緒に固定した。レセプター溶液を拡散セルに添加し、構築物を32℃に維持した。レセプター溶液の一部を断続的な時間(2時間、4時間、10時間、24時間、48時間、72時間、96時間及び120時間)に採取した。レセプター溶液中のデキサメタゾンの濃度を各時点で測定し、示した期間のデキサメタゾンの累積送達量を算出した。結果は表2及び3に示す。
【表2】


【表3】

【0042】
驚くべきことに、その結果から、接着マトリクス中のデキサメタゾンの濃度がより低いとより高いin vitro流量を供給することが示される。これは、試験したどちらのアクリル系接着剤についてもあてはまる。
実施例3:透過促進剤を含む試料の調製
【表4】

【0043】
試料は、DURO−TAK87−900A接着剤及び表4で示した量のその他の成分を使用して、前記の実施例1で記載したように調製した。この実施例では、全試料にデキサメタゾン5%を使用し、均一な懸濁液を形成するために、選択した透過促進剤、すなわちオレイン酸、ラウリルアルコール及びジメチルイソソルビドもアクリル系接着剤に混合した。
実施例4:in vitroにおける透過促進剤存在下での経皮送達デバイスからのデキサメタゾンの経皮流量
【0044】
in vitroにおける流量試験は、実施例3の試料について、25時間、48時間、72時間及び96時間に採取したレセプター溶液の一部で、実施例2で前述したin vitroにおける流量試験と同様の方法で実施した。結果は表5に示す。
【表5】

【0045】
これらの結果は、実施例3によって作製したパッチがマトリクス接着層からデキサメタゾンを経皮的に継続送達し、透過促進剤を添加するとデキサメタゾンの累積流量が増加することを示している。
【0046】
限定はしないが、この明細書で引用した特許及び特許出願を含む出版物及び参考文献は全体として、それぞれ個々の出版物又は参考文献が完全に記載されているように本明細書に参照により組み込まれることが具体的に、且つ個々に示されているかのように、引用した部分全体が参照により本明細書に組み込まれる。優先権を主張するいかなる特許出願も、出版物及び参考文献について前述したように、本明細書に参照により組み込まれる。
【0047】
特定の実施形態を強調して本発明を記載したが、当業者には、好ましいデバイス及び方法の変形形態を使用することができ、本発明が本明細書で具体的に記載したのと別の方法で実施できるものであることは明らかであろう。したがって、本発明は、以下の特許請求の範囲によって定義された本発明の精神及び範囲内に包含される変更形態を全て含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
副腎皮質ステロイドの投与を必要とする、疾患を有する個体の治療方法又は診断目的の方法であって、
a.バッキング層、並びに
b.i.皮膚適合性圧力感受性接着剤、
ii.副腎皮質ステロイド、及び
iii.少なくとも1種の透過促進剤
を含むマトリクス接着層
を含む経皮パッチを提供するステップと、
前記経皮パッチを前記個体の完全な皮膚の一部に適用するステップと、
前記個体に治療有効用量の前記副腎皮質ステロイドを全身に24時間以上経皮送達するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記透過促進剤が、脂肪酸、脂肪酸エステル、直鎖又は分枝鎖アルキルアルコール及びそれらのエステル、エーテル及びそれらの組合せから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
個体の完全な皮膚の一部に適用するための経皮パッチであって、
a.バッキング層、及び
b.i.アクリレート接着剤を含む皮膚適合性圧力感受性接着剤、
ii.前記マトリクス接着層の総重量をベースにして0.25重量%と15重量%との間の量の副腎皮質ステロイド、
iii.脂肪酸、脂肪酸エステル、C8〜C16アルコール(直鎖アルコールなど)、ヒドロキシルがC1〜C14アルキルでアルキル化されているか、若しくはされていない多価アルコール、炭素若しくは酸素の5個から10個の環原子を有し、C1〜C4アルキルでアルキル化されているか、若しくはされていない2個以上のヒドロキシルを有するC/H/Oの環式若しくは二環式化合物、又は炭素若しくは酸素の5個から10個の主鎖原子及びC1〜C4アルキルでアルキル化されているか、若しくはされていない2個以上のヒドロキシルを有するC/H/Oの分枝鎖化合物である1種又は複数の透過促進剤であって、マトリクス接着層の総重量をベースにして0.5%と15%の間の量でマトリクス接着層に存在する透過促進剤(複数可)、
を混合して含むマトリクス接着層
を備え、
前記マトリクス接着層が、個体の完全な皮膚に適用されたとき、前記個体に治療有効用量の前記副腎皮質ステロイドを全身に24時間以上経皮送達する経皮パッチ。
【請求項4】
前記副腎皮質ステロイドがデキサメタゾンを含む、請求項3に記載のパッチ。
【請求項5】
前記デキサメタゾンが前記マトリクス接着層の総重量をベースにして1%と10%との間の量で存在する、請求項4に記載のパッチ。
【請求項6】
前記デキサメタゾンが、前記マトリクス接着層の総重量をベースにして2.0%と5.5%との間の量で存在する、請求項5に記載のパッチ。
【請求項7】
前記透過促進剤が、オレイン酸、ミリスチン酸イソプロピル、ラウリルアルコール、ジメチルイソソルビド、オレイン酸メチル及びそれらの組合せから選択される、請求項3に記載のパッチ。
【請求項8】
前記透過促進剤が、オレイン酸を前記マトリクス接着層の総重量をベースにして0.5%と15%との間の量で含む、請求項7に記載のパッチ。
【請求項9】
前記透過促進剤がさらに、ラウリルアルコールを前記マトリクス接着層の総重量をベースにして0.5%と15%との間の量で含む、請求項8に記載のパッチ。
【請求項10】
前記透過促進剤がさらに、ジメチルイソソルビドを前記マトリクス接着層の総重量をベースにして0.5%と15%との間の量で含む、請求項8に記載のパッチ。
【請求項11】
前記パッチが個体に0.25mgから8.0mgの間の1日用量を送達する、請求項3に記載のパッチ。
【請求項12】
個体への副腎皮質ステロイドの経皮投与の方法であって、個体の皮膚に請求項1に記載のパッチを適用するステップを含み、前記個体に治療有効用量の前記副腎皮質ステロイドを全身に24時間以上経皮送達する方法。
【請求項13】
前記副腎皮質ステロイドがデキサメタゾンを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記デキサメタゾンが、前記マトリクス接着層の総重量をベースにして1%と10%との間の量で存在する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記デキサメタゾンが、前記マトリクス接着層の総重量をベースにして2.0%と5.5%との間の量で存在する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記透過促進剤が、オレイン酸、ミリスチン酸イソプロピル、ラウリルアルコール、ジメチルイソソルビド、オレイン酸メチル及びそれらの組合せから選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記透過促進剤が、オレイン酸を前記マトリクス接着層の総重量をベースにして0.5%と15%との間の量で含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記透過促進剤がさらに、ラウリルアルコールを前記マトリクス接着層の総重量をベースにして0.5%と15%との間の量で含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記透過促進剤がさらに、ジメチルイソソルビドを前記マトリクス接着層の総重量をベースにして0.5%と15%との間の量で含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記パッチが前記個体に0.25mgと8.0mgとの間の1日用量を送達する、請求項12に記載の方法。

【公表番号】特表2010−514789(P2010−514789A)
【公表日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−544245(P2009−544245)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【国際出願番号】PCT/US2007/088807
【国際公開番号】WO2008/083149
【国際公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(506298769)アベール ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】