説明

創傷体積を測定するための装置および方法

創傷の体積を測定する方法および装置であって、当該方法が、その体積を測定されるべき創傷の上にドレッシングを配置するステップであって、ドレッシングが、封止された創腔を作り出すように創傷を覆った封止ドレープを少なくとも含むステップと、前記創腔内に所定の真空を生み出すように真空ポンプ手段によって前記創腔内に真空を作り出すステップと、前記所定の真空を生み出す際に前記創腔から抜き出された空気の量を測定するステップと、前記創傷の体積を計算するステップとを含む、方法および装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、これだけに限るものではないが特に局所陰圧(TNP: topical negative pressure)療法時に、創傷治癒の経過を評価するために創傷体積を測定するための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
TNP療法の効果を高めることを目的とした他の治療プロセスとともにTNP療法を創傷に施すための装置およびその使用方法の提供に関する、多くの従来技術が利用可能である。そのような従来技術の例には、以下に列挙し簡単に説明するものが含まれる。
【0003】
TNP療法は、組織浮腫を低減し、血流および組織の肉芽形成(granulation)を促進し、過剰な滲出物を除去することによって、創傷の閉鎖および治癒を助けており、また、細菌負荷を低減し、したがって創傷への感染を低減することができる。さらに、TNP療法は、創傷の外部擾乱(outside disturbance)の低減を可能にし、より迅速な治癒を促進する。
【0004】
我々の同時係属中の/特許文献1には、創傷を吸引(aspirating)し、潅注し(irrigating)、洗浄(cleansing)する、装置、創傷ドレッシング、および方法が記載されている。非常に大まかな言い方をすれば、この発明は、創傷を潅注かつ/または洗浄する追加流体のさらなる提供とともに、創傷を吸引する局所陰圧(TNP)療法を施すことによる、創傷の処置について記載しており、前記流体は、創傷滲出物および潅注流体の両方を含むが、次いで、吸引手段によって引き出され、その中の有益な物質を有害な物質から分離する手段を通って循環される。創傷治癒に有益な物質は、創傷ドレッシングを通って再循環され、創傷治癒に有害な物質は、廃棄物収集バッグまたは容器に捨てられる。
【0005】
我々の同時係属中の/特許文献2では、創傷の吸引、潅注、および洗浄を使用して創傷を洗浄する、装置、創傷ドレッシング、および方法が記載されている。やはり、非常に大まかな言い方をすれば、この文献に記載されている発明は、創傷の吸引、潅注、および洗浄に関して/特許文献1の装置に類似した装置を用いるが、その発明は、さらに、有益な物質が最適な温度となるように、例えば、創傷に対して最も効果的な治療効果をもつ最適な温度となるように、創傷部位/ドレッシングに戻されるその有益な物質の温度を制御するための加熱手段を提供する重要な追加ステップを含む。
【0006】
我々の同時係属中の/特許文献3では、創傷の吸引、潅注、および/または洗浄のための装置および方法が記載されている。やはり、非常に大まかな言い方をすれば、この文献は、前述した2つの文献に類似の装置を記載しているが、創傷治癒を促進するために創傷部位/ドレッシングに生理学的に活性な薬剤を供給かつ適用するための手段を提供する追加ステップを含む。
【0007】
以上の参考文献の内容を参照により本明細書に含める。
【0008】
しかし、以上の装置および方法は、一般に、装置が複雑で、装置の操作および保守の方法について専門知識のある人を必要とし、またさらに、比較的重くかさばり、例えば、患者が病院環境の外に容易に移動させるには適していないので、入院時にしか患者に適用することができない。
【0009】
例えば、継続的な入院を必要としない比較的軽度の創傷を負っている、それでもやはりTNP療法を長期間施すことによる恩恵を受けることになる患者の中には、容易に携帯可能かつ保守可能なTNP療法装置が利用可能な場合に限り、自宅または職場で処置できる患者もいる。
【0010】
望ましい創傷治療の特定の一領域は、治癒過程を定量化できるように、例えばドレッシング交換時点など、その処置の間に創傷の体積を監視することである。しかし、現時点では、この創傷体積評価を行うための単純かつ/または精確なツールが存在しない。
【0011】
使用されてきた方法には、創傷の長さ、幅、および深さを測定し、寸法から何らかの評価を行う方法が含まれるが、これは、非常に不精確であり、またさらに、創傷の周りをトレースし、面積を計算し、深さ測定を実施する方法、創傷をフィラーで充填し、フィラーの既知の密度に基づいて創傷体積を測定する方法、ならびに写真による方法が含まれる。これらの従来の方法は、すべて、不精確な体積値をもたらす、計算による推測を実施するものであり、または時間がかかり、より正確に言えば非実用的である。
【0012】
望ましくは、創傷体積は、経過を連続的に記録し続けるために、ドレッシングが交換されるときに、例えば数日ごとに測定すべきである。
【0013】
どのような方法が使用されるとしても、その方法は、例えば、数値をファイルに保存することが必要となり、一般に、その際に患者は処置されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】国際公開第2004/037334号
【特許文献2】国際公開第2005/04670号
【特許文献3】国際公開第2005/105180号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、前述の問題を少なくとも部分的に軽減することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第1の態様によれば、創傷の体積を測定する方法であって、その体積を測定されるべき創傷の上にドレッシングを配置するステップであって、ドレッシングが、少なくとも、封止された創腔を作り出すように創傷を覆った封止ドレープを含むステップと、前記創腔内に所定の真空を生み出すように真空ポンプ手段によって前記創腔内に真空を作り出すステップと、前記所定の真空を生み出す際に前記創腔から抜き出された空気の量を測定するステップと、前記創傷の体積を計算するステップとを含む方法が提供される。
【0017】
本発明の第2の態様によれば、創傷の体積を測定する装置であって、創傷の上に空洞を形成するように創傷を覆って封止するドレッシングと、創腔から廃棄物キャニスタへと通じる吸引導管と、真空源と、流れ測定センサ手段とを含む装置が提供される。
【0018】
本発明の一実施形態では、空気の量は、装置制御システム内の流れセンサ手段から受け取った信号によって測定することができる。
【0019】
望ましくは、創傷体積測定は、ドレッシング交換時に、廃棄物キャニスタが空の状態で実施することができる。
【0020】
望ましくは、例えば創傷のパッキングのタイプおよび程度の差に起因したばらつきを最小限に抑えるように、毎回可能な限り厳密に同じ方式で創傷にドレッシングを付けることができる。例えば、創傷は、ガーゼ、フォーム(foam)、または創傷に適した他の任意のタイプのフィラーなど、適切なフィラー材料(十分に大きく適切であれば)でパッキングすることができ、封止ドレープは、印加された真空によってフィラーが所定の真空圧力まで圧縮されたときに、その封止ドレープが、例えば創傷を取り囲む患者の健康な肉(flesh)と同一平面にくるように、配置することができる。この説明は、単なる例示にすぎず、一貫した創傷ドレッシング方式の望ましさを強調することを意図したものである。
【0021】
本発明の方法は、TNP療法を提供するための装置によってほとんどの環境で患者に適用することができる。装置は、軽量であり、電源コンセント(mains)を動力源としてもよく、またはデバイス内に収められた充電式バッテリパックにより、バッテリを動力源としてもよい(以下、用語「デバイス」は、制御手段、電力供給手段、電源再充電手段、電子的指示手段、ならびに創傷への吸引機能および類似した性質の他の必要な機能を開始させ持続させる手段すべてを収容できるユニットを意味するために使用される)。例えば、家の外にあるときには、装置は、バッテリ電力で長時間の運転をもたらすことができ、例えば、家庭内では、デバイスは、なお患者によって使用され操作されたまま、充電器ユニットによって電源コンセントに接続することができる。
【0022】
本発明がその一部となる装置全体は、創傷を覆うドレッシングであって、そのドレッシングによって吸引導管の少なくとも開放端を創傷の上に形成された空洞へと封止するドレッシングと、創傷ドレッシングから、創傷滲出物/廃棄物質を収集して廃棄まで保持する廃棄物質キャニスタへと通じる、それを通り抜ける少なくとも1つのルーメンを含む吸引チューブと、廃棄物キャニスタに関係付けられた電力/制御/吸引の開始/持続デバイスとを含む。
【0023】
創傷を覆うドレッシングは、TNP療法とともに通常用いられるいずれのタイプのドレッシングとすることもでき、非常に大まかな言い方をすれば、ドレッシングの技術分野において、創傷を覆い、周囲の健康な組織とともに封止して創傷の上に封止された空洞または空隙を作り出すことで知られている、例えば、半透性で可撓性のある自己接着性ドレープ材料を含むことができる。創傷の領域の上に均一な真空分布を達成できるようにするために、創傷床と被覆材料との間の空洞に多孔質のバリア/支持部材が適切に存在してもよい。多孔質のバリア/支持部材は、例えば、ガーゼ、フォーム、可膨張式バッグ、または、作り出された真空レベル下で圧潰に耐える、創傷滲出物が創傷領域を横切って創傷の上の可撓性カバードレープに封止された吸引導管へと移動できるようにする、既知の創傷接触タイプの材料である。
【0024】
吸引導管は、例えば、それを通り抜ける単一のルーメンを有する、例えば生組織と適合性のあるプラスチック材料から作製された、単純な可撓性チューブとすることができる。ただし、吸引導管は、発明に関する特定の目的を達成するために、それを通り抜ける複数のルーメンを有することもできる。創傷の上の封止された空洞内に位置するチューブの部分は、想定される、より高いレベルの陰圧範囲においても、収縮するまたは閉塞することなしに創傷滲出物の持続的な吸引および吸出し(evacuation)を可能にするような構造を有することができる。
【0025】
本発明を具体化する装置についての陰圧範囲は、約-50mmHg〜-200mmHgにできることが想定される(これらの圧力が、標準周囲大気圧に対する相対的な圧力であること、したがって、-200mmHgは、実用的な言い方では約560mmHgとなることに留意する)。適切には、圧力範囲は、約-75mmHg〜-150mmHgにすることができる。あるいは、最大-75mmHgまで、最大-80mmHgまで、または-80mmHgを超える圧力範囲を使用することもできる。また、適切には、-75mmHgを下回る圧力範囲を使用することもできる。あるいは、-100mmHgを超える、または-150mmHgを超える圧力範囲を使用することもできる。
【0026】
吸引導管は、ドレッシングから離れたその遠位端では、入口ポートまたはコネクタのところで廃棄物キャニスタに取り付けることができる。創傷/ドレッシングの吸引を開始させ持続させる手段を含むデバイスは、ドレッシングと廃棄物キャニスタとの間に位置してもよいが、本発明を具体化する装置の好ましい一実施形態では、当該デバイスは、キャニスタを通じて創傷/ドレッシングを吸引することができ、したがって、廃棄物キャニスタは、好ましくは創傷/ドレッシングとデバイスとの間に置くことができる。
【0027】
廃棄物質キャニスタ端部のところの吸引導管は、好ましくは、例えば障害物に引っ掛かったときに不慮に外れるのを防ぐために、廃棄物キャニスタに結合することができる。
【0028】
キャニスタは、プラスチック材料モールディング、または別個の複数のモールディングを含む複合ユニットとすることができる。キャニスタは、適切には、滲出物による充填の程度を視覚的に判定するために、半透明または透明とすることができる。ただし、キャニスタおよびデバイスは、一部の実施形態では、キャニスタが満杯の状態が迫っているという自動警告を提供することができ、またさらに、キャニスタが満杯の状態に達したときに吸引を停止させるための手段を提供することができる。
【0029】
キャニスタは、そのキャニスタからの液体および臭気の排出を防ぐために、またさらに大気中への細菌の放出を防ぐために、フィルタを備えることができる。そのようなフィルタは、連続した複数のフィルタを含むことができる。適切なフィルタの例は、例えば、細菌を放出しないようにキャニスタを封止することに関しては0.2μm孔径、液体を放出しないようにキャニスタを封止することに関しては1μm孔径の疎水性フィルタを含むことができる。
【0030】
適切には、フィルタは、通常使用時には廃棄物キャニスタの上方部分に位置することができ、すなわち、装置が患者によって使用または携持されるときには、フィルタは、上方の位置にあり、重力によって廃棄物キャニスタ内の滲出液体から引き離される。さらに、そのような向きは、廃棄物キャニスタ出口または排出口ポートを滲出物表面から遠ざけておく。
【0031】
適切には、廃棄物キャニスタは、満杯になって交換/廃棄されるときにキャニスタの漏れを防ぐ追加の保護手段として、例えば、ISOLYSEL(商標)などの吸収性ゲルを充填することができる。廃棄物キャニスタの滲出物貯蔵容積内のゲルマトリックスのさらなる利点は、それが、液体のこぼれなどの過度の動きを防ぎ、細菌成長を最小限に抑え、臭気を最小限に抑えることである。
【0032】
廃棄物キャニスタは、また、デバイスユニットから取り外されるとき、またさらに吸引導管が創傷部位/ドレッシングから取り外されるときの廃棄物キャニスタの漏れを防ぐのに適した手段を備えることができる。
【0033】
キャニスタは、満杯のキャニスタまたは耐用期間を過ぎたキャニスタを、まだ廃棄流体が入った状態で廃棄することしかできないように、(道具もキャニスタの損傷もなしに)ユーザが空にするのを防ぐのに適した手段を有することができる。
【0034】
デバイスおよび廃棄物キャニスタは、デバイスユニットを廃棄物キャニスタに連結する互いに相補的な手段を有することができ、それによって、デバイスユニット内の吸引手段は、創傷部位/ドレッシングからデバイス上の排出ポートへと連続的な吸引経路が存在するように、廃棄物キャニスタ上の吸出しポートに自動的に連結する。
【0035】
適切には、流路から装置を通り抜ける排出ポートは、悪臭が大気中に排出されるのを防ぐためのフィルタ手段を備える。
【0036】
大まかに言えば、デバイスユニットは、吸引ポンプと、吸引ポンプによって印加される圧力を監視する手段と、吸引ポンプ内の流体流れを監視するための流量計と、例えば圧力監視手段や流量計などのセンサからの信号に応答して、吸引ポンプを制御する制御システムであって、またさらに内蔵バッテリパックおよびその充電に関して電力管理システムを制御する制御システムと、最後に、例えば圧力レベル設定点など、(装置の停止および始動を含む)デバイスの様々な機能をユーザがそれによって調整できるユーザインターフェースシステムとを含む。デバイスユニットは、単一の一体型ケーシング内に以上の機構すべてを収容することができる。
【0037】
ドレッシングが創傷に配置されるときには、ある体積の空気が創腔内の封止ドレープの下に閉じ込められる。例えば、真空ポンプなどの真空源が始動されるときには、創腔は、0.1気圧分(すなわち、大気圧よりも約76mmHg低い)など、所定の真空へと排気される。この場合、創腔内の空気の量のうちの0.1が除去され、その空気が、制御/監視システム内の例えば流量計などの流れセンサ手段によって測定される。除去される空気の量は、創傷の実際の体積に比例することになる。吸引導管、廃棄物キャニスタ、真空ポンプ、および、流れセンサへと通じる装置内の流れ導管など、装置の他の部分の容積は、測定することができ、かつ/または、制御システムソフトウェア内のメモリ手段にそれについての補正係数を組み込むことのできる既知の一定の因子である。
【0038】
所望の真空レベルが達成され、そのレベルで安定した後には、様々な因子を制御システム内のソフトウェアによって算出して、創傷体積を計算することができる。所望の真空が定常状態にあることが重要であり、真空ポンプなどの真空源は、例えば、封止ドレープを通り抜けるまたは封止ドレープの周りでの創腔内への漏れがあるので、そのような定常状態を達成するために、ゆっくりまたは断続的に動作することができる。ソフトウェアは、定常状態の漏れ速度を計算し、定常状態の漏れ速度を考慮するのに適した補正係数を制御/監視システムが利用できるようにするために、真空ポンプ運転レジームに関する適切なデータを含むことができる。したがって、真空レベル圧力が所望の値にある定常状態に創腔が達したときには、流れセンサが読み取るのは、利用可能な補正係数を算出するためにソフトウェアが使用できる実際の漏れ速度である。
【0039】
異なる創傷充填材料は、互いに異なる圧縮率を有する可能性がある。例えば、ガーゼは、本発明で考慮している真空レベルでは、それら自体が事実上非圧縮性である材料繊維から作製されるが、フォーム材料は、はるかに圧縮性が高く、したがって、補正係数を、使用されている創傷充填材料のタイプを考慮するようなものにする必要がある。これは、様々な充填材料について装置をキャリブレートし、適切な補正係数を計算するために使用される、既知の体積の試験空洞によって、容易に達成することができる。
【0040】
前述のように、廃棄物キャニスタの空の容積がソフトウェアに組み込まれる補正係数の一部を成すので、ドレッシング交換時に廃棄物キャニスタが空であることが望ましい。ただし、廃棄物キャニスタの自由空間が既知であり、したがって、例えば装置デバイスと関係付けられたキーパッドなどによって、適切な係数を制御/監視システムに入力できるのであれば、必ずしも廃棄物キャニスタを空にする必要はない。
【0041】
本発明では、デバイスは、創傷治癒の経過についての記録が存在するように、例えばドレッシング交換時ごとなど、各ステージで測定された創傷の体積を表示し記憶する、例えばLEDディスプレイ手段などの手段を有することができる。あるいは、デバイスは、データをそこで保持かつ/または表示できる、別個のディスプレイおよび/または記録デバイスへの出力を有することもできる。
【0042】
デバイスユニットがその中に固有機器コストの大部分を含むという事実を考慮すると、理想的には、デバイスユニットは、また、他の患者による再使用を可能にするために、衝撃を乗り切り、洗浄に耐えることが可能である。
【0043】
圧力性能に関して、吸引手段は、創傷部位/ドレッシングに少なくとも-200mmHgの最大圧力降下を適用可能とすることができる。装置は、システムへの空気の少量の漏れがあり、滲出物が高流量である条件下でも、所定の陰圧を維持可能である。
【0044】
圧力制御システムは、患者の過度の不快感を引き起こさないように、達成される最低圧力が例えば-200mmHgを超えるのを防ぐことができる。必要とされる圧力は、問題となっている創傷の必要性、および臨床医の助言に応じて、ユーザが、例えば、-50、-75、-100、-125、-150、-175mmHgなど、いくつかの不連続なレベルに設定することができる。したがって、使用時の適切な圧力範囲は、例として、-25〜-80mmHg、または-50〜-76mmHg、または-50〜-75mmHgとすることができる。制御システムは、また、有利には、漏れおよび滲出速度が予想されるレベルまたは正常なレベル内にあるならば、装置が動作している時間の95%にわたって設定圧力を設定点の±10mmHgの許容幅内で維持可能とすることができる。
【0045】
適切には、制御システムは、例えば、大量の空気がシステム内に漏れたことによって圧力が設定値から大きく外れたとき、比較的少量の空気がシステム内に漏れたことによって吸引ポンプに加わる負荷が高くなりすぎたとき、例えば、閉塞、または廃棄物キャニスタが満杯になったことが原因で、創傷部位とポンプとの間の圧力差が高くなりすぎたときなど、様々な異常条件が当てはまるときに、点滅光、ブザー、または他のいずれか適切な警報手段などの警報手段をトリガすることができる。
【0046】
本発明の装置は、携帯用ケースと、例えばショルダストラップやハーネスなどの適切な支持手段とを備えることができる。携帯用ケースは、1つに接合されたデバイスおよび廃棄物キャニスタ内に含まれる装置の形状に共形となるように適合させることができる。具体的には、携帯用ケースは、装置を携帯用ケースから完全に取り除くことなしに廃棄物キャニスタを交換できるようにするために、底部開放型のフラップを備えることができる。
【0047】
携帯用ケースは、装置によって施される治療を変更するためにユーザがキーパッドにアクセスできるようにするために、移動可能な(displaceable)フラップによって覆われた孔を備えることができる。
【0048】
本発明をより完全に理解できるようにするために、ここで、添付図面を参照して、単に説明の目的で諸実施例について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】装置およびそれを構成する装置機構の全体図を示す、一般化された概略ブロック図である。
【図2】図1の流路を示す、図1に類似の一般化された概略ブロックである。
【図3】装置の様々な電力消費/電力生成機構のための電力経路を示す、図1に類似した、ただしデバイスユニットだけの、一般化された概略ブロック図である。
【図4】装置の様々な機能および構成要素を制御する制御システムデータ経路を示す、デバイスユニットの図3に類似の一般化された概略ブロック図である。
【図5】装置の斜視図である。
【図6】図5の装置の組み立てられたデバイスユニットの斜視図である。
【図7】図6のデバイスユニットの分解組立図である。
【図8】廃棄物キャニスタと装置のデバイスユニットとの間の接触面を通る部分断面側面図である。
【図9】図5〜図8の装置の廃棄物キャニスタを通る断面を示す図である。
【図10】TNP療法を創傷に施すための装置を有する、その体積を測定されるべき創傷の概略断面図である。
【図11】創傷体積測定の一例を示す流量対時間のグラフである。
【図12】創腔内の圧力に対する流量のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0050】
ここで、諸図面のうちの図1〜図4を参照する。諸図面では、同一または類似の特徴は、共通の参照番号によって示されている。
【0051】
図1は、携帯型の局所陰圧(TNP)システムの装置10の一般化された略図を示す。本発明の諸実施形態が、一般に、このようなTNPシステムでの使用に適用可能であることが理解されよう。簡潔に言えば、陰圧創傷療法は、組織浮腫を低減し、血流および肉芽組織(granular tissue)形成を促進し、過剰な滲出物を除去することによって多くの形態の「難治性(hard to heal)」創傷の閉鎖および治癒を助け、細菌負荷を(したがって感染を)低減することができる。さらに、その療法は、創傷の擾乱の低減を可能にし、より迅速な治癒をもたらす。TNPシステムについては以下でさらに詳述するが、要約すれば、TNPシステムは、キャニスタと、少なくとも1年の耐用期間内で長期間の継続治療を提供可能なデバイスとを含む、携帯可能な本体を含む。システムは、チュービングの端部が患者の上の創傷ドレッシングに動作可能に固定された、ある長さのチュービングによって患者に連結される。
【0052】
より具体的には、図1に示したように、装置は、一端でその外表面がドレッシング14に封止式に取り付けられた、吸引導管12を動作可能に含む。ここではドレッシング14についてこれ以上説明せず、ドレッシング14が、本発明の装置によるTNP療法によって処置されるべき創傷の上および周りに封止された空洞を作り出すように、ドレッシングの分野の技術者によく知られている材料から公知の方式で形成されると言うにとどめる。吸引導管は、ドレッシング14と廃棄物キャニスタ22との間に、その長さの中間にコネクタ部分18、20を含む直列コネクタ16を有する。コネクタ部分20とキャニスタ22との間の吸引導管は、異なる参照番号24によって示されているが、導管部分12および24を通って廃棄物キャニスタに達する流路は、連続している。コネクタ部分18、20は、漏れを起こさない(leak-free)着脱可能な方式で、導管部分12、24を接合する。廃棄物キャニスタ22は、廃棄物キャニスタから液体および細菌が出口ポート28を通って流出するのを防ぐフィルタ26を備える。フィルタは、すべての液体および細菌が廃棄物キャニスタ22の内部廃棄物収集容積に閉じ込められるように、1μm疎水性液体フィルタと、0.2μm細菌フィルタとを含むことができる。廃棄物キャニスタ22の出口ポート28は、廃棄物キャニスタ22がデバイスユニット32に取り付けられたときに自動的に係合し封止し合う相互封止式コネクタ部分34、36を用いてデバイスユニット32の入口/吸入ポート30と対合し、廃棄物キャニスタ22およびデバイスユニット32は、掛止具(catch)アセンブリ38、40によって1つに保持される。デバイスユニット32は、ともに動作可能に連結された、吸引ポンプ44と、吸引圧力モニタ46と、吸引流量計48とを含む。吸引経路は、出口ポート28の出口側で流体である場合にはガス状である、吸引された流体を、消音システム50と、デバイス32から排出ポート54を通じて排出されるガスとともに臭気が確実に流出しないようにする活性炭マトリックスを有する最終フィルタ52とを通じて運ぶ。フィルタ52材料は、また、消音システム50の効果を高めるために騒音低減材料の役割を果たす。デバイス32は、また、装置に電力を供給するバッテリパック56を含んでおり、そのバッテリパックは、また、キーパッド(図示せず)を通じて制御されるユーザインターフェースシステム62を制御し、センサ46、48からの信号を通じて吸引ポンプ44を制御する、制御システム60に電力を供給する。また、バッテリパック56からの電力、バッテリパック56の再充電、ならびに吸引ポンプ44および電気的に操作される他の構成要素の電力要件を制御する、電力管理システム66が設けられる。装置のユーザまたは装置自体が都合の良い電源コンセントソケットに隣接するときに、電源コンセント供給部74に接続されたSELV電源72から電力入力ジャック70を受けるために、電気コネクタ68が設けられる。
【0053】
図2は、図1に類似の略図を示すが、流路をより詳細に示している。創傷滲出物は、創傷部位/ドレッシング14から、導管12、2つのコネクタ部分18、20、および導管24を通じて、廃棄物キャニスタ22へと吸引される。廃棄物キャニスタ22は、創傷からの滲出物が吸引システムによって入口ポート82のところでその中に引き込まれる、500mlの領域内の比較的大きな容積80を含む。キャニスタ容積80内に引き込まれる流体84は、半透性の接着性封止ドレープ(図示せず)を通じてドレッシング14内に引き込まれた空気と、創傷滲出物の形態をした液体86との混合物である。キャニスタ内の容積80は、また、圧力が低下した状態にあり、吸引された流体のガス状要素88は、キャニスタ容積80からフィルタ26および廃棄物キャニスタ排出口ポート28を通じて無菌ガスとして排出される。廃棄物キャニスタの出口ポート28から最終排出ポート54まで、流体は、ガス状のみである。
【0054】
図3は、本発明を具体化する装置のデバイス部分と、その装置のデバイス内の電力経路とだけを示す、略図を示している。電力は、例えばユーザが自身の家庭または職場の外にいるときには、主にバッテリパック56によって提供されるが、また、ソケット68によってデバイス32に接続されたときにデバイスを動作させると同時にバッテリパック56を再充電することが可能な外部電源コンセント74供給式の充電ユニット72によって、電力を提供することもできる。電力管理システム66は、TNPシステムの電力を制御できるように含められる。TNPシステムは、バッテリを動力源とする再充電可能なシステムであるが、以下で他の図に関してより詳細に説明するように、電源コンセントの電気から直接動作可能である。電源コンセントから切り離された場合、バッテリは、通常の条件で約8時間使用するのに十分な充電量を蓄えている。再充電間の他の関連寿命を有するバッテリを利用できることが理解されよう。例えば、8時間未満または8時間よりも長く供給するバッテリを使用することができる。電源コンセントに接続されたときには、デバイスは、電源コンセントで動作し、また同時に、携帯使用によって消耗した場合、バッテリを再充電することになる。バッテリ再充電の正確な速度は、TNPシステムに加わる負荷によって決まることになる。例えば、創傷が非常に大きい場合、または著しい漏れが存在する場合、バッテリ再充電には、創傷が小さく十分に封止された場合よりも長い時間がかかる。
【0055】
図4は、本発明を具体化する装置のデバイス32部分と、吸引ポンプおよび装置の他の機構の制御のために制御システムで用いられるデータ経路とを示す。TNPシステムの重要な目的は、陰圧創傷療法を施すことである。これは、ポンプとポンプ制御システムとを含む圧力制御システムによって達成される。ポンプは、陰圧を印加し、圧力制御システムは、ポンプヘッドのところの圧力に関するフィードバックを制御システムに与え、ポンプ制御装置は、目標圧力とポンプヘッドのところの実際の圧力との差に基づいてポンプ速度を変化させる。ポンプ速度の確度を改善するために、したがって創傷部位におけるより滑らかでより精確な陰圧の印加をもたらすために、ポンプは、補助制御システムによって制御される。ポンプは、時々、それに印加される電圧を止めることによって、そのデューティサイクルの間に「フリーホイール運動(free-wheel)」させられる。スピニングモータは、「逆起電力(back electro-motive force)」またはBEMFを発生させる。このBEMFを監視し、使用して、ポンプ速度の精確な指標を提供することができる。したがって、従来技術のポンプシステムよりも速度を精確に調整することができる。
【0056】
本発明の諸実施形態によれば、創傷部位における実際の圧力は測定されないが、測定された圧力(ポンプにおける圧力)と創傷圧力との差は、実用的であれば、大きなフィルタおよび大口径チューブを用いることによって最小限に抑えられる。圧力制御装置によって、ポンプヘッドのところの圧力がある期間にわたって目標圧力(大気圧に近い)よりも大きいことが測定された場合、デバイスは、警報を送信し、漏れなどの潜在的な問題をユーザに警告するメッセージを表示する。
【0057】
圧力制御装置に加えて、別個の流れ制御システムを設けることができる。流量計をポンプの後に位置決めすることができ、その流量計を使用して、いつキャニスタが満杯になったか、またはチューブが閉塞したかを検出する。流量が特定の閾値を下回る場合、デバイスは、警報を発し、閉塞のおそれまたはキャニスタが満杯になったおそれがあることをユーザに警告するメッセージを表示する。
【0058】
ここで、本発明を具体化する装置200の好ましい実施形態の様々な図および断面を示す、図5〜図9を参照する。好ましい実施形態は、平面では全体的に楕円形であり、掛止具配置206によって1つに連結されたデバイスユニット202および廃棄物キャニスタ204を含む。デバイスユニット202は、施されている創傷治療に関するテキストベースのフィードバックを与える液晶ディスプレイ(LCD)208と、メンブレンキーパッド210とを有しており、LCDは、ユーザが創傷(図示せず)に施されるべき治療を調整または設定できるように、キーパッドのメンブレンを通して視認可能である。デバイスは、概ね横方向の下面212を有しており、その下面の中心には、デバイスユニット内で吸引手段(後述する)がそれに連結される吸入/入口ポート216を形成する、スピゴット(spigot)214がある。デバイスユニットの下縁部は、廃棄物キャニスタ204の上縁部(図8および図9参照)の協働する周辺雌型構造220と係合する、さねはぎ加工された(rebated)周辺雄型対合面218を備える。デバイス202の両側では、キャニスタ204にヒンジ式に連結されたクリップ222が、デバイスユニットの本体の陥凹部226内の構造と協働する係合フィンガ(図示せず)を有する。図7から、デバイスユニットのケーシング230が、概ね、前方モールディング232および後方モールディング234と、左側インサート236および右側インサート238とを含む、「クラムシェル」構造であることがわかる。ケーシング230の内側には、内部の成形構造部材242に留め付けられた中央シャーシ240があり、このシャーシは、電気回路および構成要素のための据付部の役割を果たし、またさらにバッテリパック246および吸引ポンプユニット248を保持する。様々なチュービング部品250、252、254が、ポンプユニット248および吸入/入口ポート216を、フィルタ290を通じて最終ガス排出孔へと連結する。図8は、装置200の部分断面側面図を示しており、その部分断面は、デバイスユニット202と廃棄物キャニスタ204との間の接合部の周りであり、その廃棄物キャニスタ204の断面が図9に示されている。これらの図は、廃棄物キャニスタ204の上面262の周りの直立フランジ260によって画定された雌型部分220と協働する、デバイスユニット上の雄型構造のさねはぎ加工された縁部218を示す。廃棄物キャニスタがデバイスユニットに接合されたときには、「O」リングシール264をその周囲に有するスピゴット214は、廃棄物キャニスタ内の排出/出口ポート268の周りに形成された円筒状チューブ部分266と封止式に係合する。デバイスのスピゴット214は、デバイスケーシングに堅固に固定されているのではなく、廃棄物キャニスタをデバイスユニットに連結した際にスピゴット214およびシール264が移動して円筒状チューブ部分266の穴とともに良好なシールを形成できるように、ケーシング内で「浮遊(float)」するまたはその位置特徴を移動することが可能である。図9の廃棄物キャニスタ204は、ユーザによって装着されたときと同様の直立した向きで示されている。したがって、滲出物270は、廃棄物レセプタクル部分272の内部容積の底部にくることになる。吸引導管274は、創傷(図示せず)から導管274を通じて吸引された流体を受け取るために入口ポート280を画定する入口ポートスピゴット278に永久的に添着される。0.2μmフィルタを含むフィルタ部材282、および1μmフィルタを含むフィルタ部材284が、フィルタ保持モールディング286によって上面閉鎖部材または隔壁288に隣接して配置されており、それらのフィルタ部材は、液体または細菌が、排出口ポート268から引き出されてポンプおよび吸引経路に進入し、ケーシング側部部品236内の排出チューブ(図示せず)を通じて291のところでケーシング出口モールディングに連結された排出/フィルタユニット290まで到達するのを防ぐ。側部部品236、238は、患者が使用するための携帯用ストラップ(図示せず)を配置するためにその中に支持ピン294を有する陥凹部292を備える。側部部品230およびキャニスタ204は、また、キャニスタとデバイスとが1つに連結されたときに互いに「ぐらつき(wobble)」を示すのを防ぐ機構を備える。キャニスタとデバイスとが連結されたときには、キャニスタ上面閉鎖部材288と直立フランジ260の内面300との間を延びるリブ(図示せず)が、デバイス側壁の溝302内に位置する。ケーシング230は、また、以上で図3および図4に関してそれらの機能について簡単に説明した、電気機器および制御/電力管理機構のすべてを収容する。側部部品238は、外部電源コンセントを動力源とするバッテリ充電器から充電ジャック(いずれも図示せず)を受け取るためのソケット部材298を備える。
【0059】
図10は、創傷400と、創傷にTNP療法を施し創傷の体積を測定するためにその創傷に連結された装置402との、概略断面図を示す。装置は、創傷充填材料404と吸引導管406とを含んでおり、吸引導管406の一端408は、その上を覆う封止ドレープ412によって点414のところで創腔410内に封止され、導管406の遠位端416は、創傷からの滲出物を収集するための廃棄物キャニスタ418に取り付けられる。廃棄物キャニスタは、導管部分422によって圧力センサ420へと、また、導管部分428によって真空ポンプ426の入口側へと、動作可能に連結される。真空ポンプ出力側は、導管部分430によって流れセンサ432に連結され、排出物は、導管434を通じて取り去られる。制御/監視システムが440のところに設けられており、この制御/監視システムは、圧力センサ420から信号442を受け取り、真空ポンプから信号444を受け取り、流れセンサ432から信号446を受け取る。制御システム440は、臨床医/ユーザがデータ入力キーパッド452に入力した命令450によって設定された定常状態圧力を真空ポンプ426が維持するように、真空ポンプ426に制御信号448を送る。制御システム440は、命令450に応答して、臨床医/ユーザの要求に応じて、例えばLCDディスプレイなどのディスプレイ456にデータ454を出力するが、創傷400の体積に関するデータを含む。封止ドレープ412は、創傷400を取り囲む患者の健康な肉へと、一般に、その肉に接触するドレープ412側部の感圧接着剤の層(図示せず)によって、460のところで封止される。
【0060】
操作に際しては、臨床医/ユーザが、予め使用されたキャリブレーション手順と一致した創腔410内で達成する必要のある圧力を、キーパッド452に入力する。真空ポンプ426は、起動され、創腔410をポンプ排気して必要な圧力へと低下させ、その必要な圧力を定常状態で維持するために適切なだけ動作し続ける。装置402は、導管406の容積、空の廃棄物キャニスタ418の容積、導管422、428、430の容積、および真空ポンプ426の容積が既知であるという点でキャリブレートされており、補正係数は、制御システム440のメモリに入力されている。
【0061】
図11は、流体流量、この事例では空気流量の、定常状態条件を達成する時間に対するグラフである。図11は、始動時に制御システム内に設定された定常状態圧力に達するのにかかる時間を示しており、どの時点で定常状態圧力に達したかが線500によって示されている。空気の流量は、初めは、急速に上昇して502のところで最大に達し、その後、設定圧力に近づくにつれて低下し、線502のところで定常状態が達成される。曲線504よりも下の流量の部分は、おそらく、空気が内部に漏れたことに起因しており、封止ドレープ412と患者の健康な肉460との間の創腔410内に空気が漏れたことに起因する可能性が最も高い(流体流れの方向における導管406からの装置の構成部品間の接合部は、すべて完全で漏れが起こらないはずである)。点508は、所望の設定圧力を維持するための定常状態流量を示しており、三角形510、508、512の領域は、漏れを原因とする、創腔から吸引された空気の部分すなわち量を示し、線500までの曲線504よりも下の全領域から差し引くことができる。したがって、制御/監視システム440は、線508-510によって境界を定められた曲線504よりも下の領域から創傷の体積を算出し、ディスプレイ456上および/または適切な記録装置(図示せず)内に表示されることになる。
【0062】
図11のグラフに類似した、図12に示される、創腔410内の圧力に対する流量を示すグラフを描くことができる。設定圧力が達成されたときに定常状態に達する。図12のグラフでは、設定圧力600と定常状態とは、線602のところで一致しており、曲線604よりも下の全領域は、三角形の領域600、606、608となる、前述のような漏れ速度に関する因子と、斜線を引かれた領域610によって示されたシステム容積に関する因子と、領域612によって示された創傷体積とから成る。システムが線614によって示された定常状態にあるときには、流れセンサを通る流れは、システム内への漏れだけに関係する。
【0063】
創傷の体積Vwoundは、次式から算出することができる:
【0064】
【数1】

【0065】
ドレッシングドレープ412が完全に漏れを起こさない場合、設定された必要圧力に達するときの定常状態流量は、ゼロとなり、点508は、時間軸上にくることになる。
【0066】
流量計432は、真空ポンプ426の後に位置するものとして示されているが、本発明による装置の他の実施形態では、廃棄物キャニスタ418と真空ポンプ426との間にくることもできる。使用される装置の正確な配置に関する適切な補正係数を決定する必要がある。
【0067】
本発明の方法は、以上で図1〜図9に即して記載し議論した装置によって実施することができ、それらの装置は、また、本発明による装置を構成する。
【0068】
本明細書の記載および特許請求の範囲全体を通して、言葉「含む(comprise)」および「含む(contain)」、ならびにそれらの言葉の変形、例えば、「含む(comprising)」「含む(comprises)」は、「含むがそれだけに限定しない(including but not limited to)」を意味しており、他の部分、添加物、構成要素、整数、またはステップを除外することを意図したものではない(また除外するものでもない)。
【0069】
本明細書の記載および特許請求の範囲全体を通して、文脈上異なる解釈を要する場合を除き、単数形は、複数形を含む。具体的には、不定冠詞(indefinite article)が使用される場合、その指定は、文脈上異なる解釈を要する場合を除き、複数も単数も企図しているものと理解すべきである。
【0070】
本発明の特定の態様、実施形態、または実施例に関して記載した、特徴、整数、特性、化合物、化学的部分、または化学基は、本明細書に記載した他のいずれの態様、実施形態、または実施例にも、それらと適合性がない場合を除き、適用可能であることを理解すべきである。
【符号の説明】
【0071】
10 装置
12 吸引導管、導管部分
14 ドレッシング
16 直列コネクタ
18 コネクタ部分
20 コネクタ部分
22 廃棄物キャニスタ
24 導管、導管部分
26 フィルタ
28 出口ポート、排出口ポート
30 入口/吸入ポート
32 デバイスユニット
34 相互封止式コネクタ部分
36 相互封止式コネクタ部分
38 掛止具アセンブリ
40 掛止具アセンブリ
44 吸引ポンプ
46 吸引圧力モニタ、センサ
48 吸引流量計、センサ
50 消音システム
52 最終フィルタ
54 排出ポート
56 バッテリパック
60 制御システム
62 ユーザインターフェースシステム
66 電力管理システム
68 電気コネクタ、ソケット
70 電力入力ジャック
72 SELV電源、充電ユニット
74 電源コンセント供給部
80 キャニスタ容積
82 入口ポート
84 流体
86 液体
88 ガス状要素
200 装置
202 デバイスユニット
204 廃棄物キャニスタ
206 掛止具配置
208 液晶ディスプレイ、LCD
210 メンブレンキーパッド
212 下面
214 スピゴット
216 吸入/入口ポート
218 雄型対合面
220 雌型構造
222 クリップ
226 陥凹部
230 ケーシング
232 前方モールディング
234 後方モールディング
236 左側インサート、側部部品
238 右側インサート、側部部品
240 中央シャーシ
242 成形構造部材
246 バッテリパック
248 吸引ポンプユニット
250 チュービング部品
252 チュービング部品
254 チュービング部品
260 直立フランジ
262 上面
264 「O」リングシール
266 円筒状チューブ部分
268 排出/出口ポート
270 滲出物
272 廃棄物レセプタクル部分
274 吸引導管
278 入口ポートスピゴット
280 入口ポート
282 フィルタ部材、0.2μmフィルタを含むフィルタ部材
284 フィルタ部材、1μmフィルタを含むフィルタ部材
286 フィルタ保持モールディング
288 隔壁、キャニスタ上面閉鎖部材
290 フィルタ、排出/フィルタユニット
292 陥凹部
294 支持ピン
298 ソケット部材
300 内面
302 溝
400 創傷
402 装置
404 創傷充填材料
406 吸引導管
408 吸引導管の一端
410 創腔
412 封止ドレープ
416 吸引導管の遠位端
418 廃棄物キャニスタ
420 圧力センサ
422 導管部分
426 真空ポンプ
428 導管部分
430 導管部分
432 流れセンサ、流量計
434 導管
440 制御/監視システム
442 信号
444 信号
446 信号
448 制御信号
450 命令
452 データ入力キーパッド
454 データ
456 ディスプレイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
創傷の体積を測定する方法であって、その体積を測定されるべき創傷の上にドレッシングを配置するステップであって、前記ドレッシングが、封止された創腔を作り出すように前記創傷を覆った封止ドレープを少なくとも含むステップと、前記創腔内に所定の真空を生み出すように真空ポンプ手段によって前記創腔内に真空を作り出すステップと、前記所定の真空を生み出す際に前記創腔から抜き出された空気の量を測定するステップと、前記創傷の体積を計算するステップとを含む方法。
【請求項2】
抜き出された前記空気の量が流量計手段によって測定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
補正係数を得るために装置構成要素の容積が測定される、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記創傷体積がソフトウェア手段によって算出される、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記真空ポンプ手段が、定常状態設定圧力が達成されるまで運転される、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記創腔内への漏れ速度が制御システム手段によって算出され、それに応じて前記創傷体積が補正される、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記創傷体積がドレッシング交換時に測定される、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
廃棄物キャニスタがまた設けられており、前記創傷体積測定が、前記廃棄物キャニスタが空のときに実施される、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記創傷ドレッシングが、ドレッシング交換のたび、および創傷体積測定のたびに、繰返し可能な方式で配置される、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
明細書本文ならびに図面の図10および図11に即して以上で実質的に記載した、創傷の体積を測定する方法。
【請求項11】
創傷の体積を測定する装置であって、前記創傷の上に空洞を形成するように前記創傷を覆って封止するドレッシングと、前記創腔から廃棄物キャニスタへと通じる吸引導管と、真空源と、流れ測定センサ手段とを含む装置。
【請求項12】
制御/監視システムをさらに含む、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
圧力監視/制御手段をさらに含む、請求項11または請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記制御/監視システムが、定常状態設定圧力において前記真空ポンプ手段を制御可能である、請求項12または請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記制御/監視システムが、圧力センサ手段からの信号、流れセンサ手段からの信号、およびメモリ手段に格納されたデータからの信号から前記創傷体積を算出するためのソフトウェアを有する、請求項12から請求項14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
明細書本文ならびに図面の図10および図11に即して以上で実質的に記載した、創傷の体積を測定する装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2011−508614(P2011−508614A)
【公表日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−536534(P2010−536534)
【出願日】平成20年10月7日(2008.10.7)
【国際出願番号】PCT/GB2008/050917
【国際公開番号】WO2009/071924
【国際公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(391018787)スミス アンド ネフュー ピーエルシー (79)
【氏名又は名称原語表記】SMITH & NEPHEW PUBLIC LIMITED COMPANY
【Fターム(参考)】