力率改善電流共振コンバータ
【課題】縦続接続された二つのコンバータ回路でのスイッチング動作の干渉をなくした力率改善電流共振コンバータを提供する。
【解決手段】電流共振コンバータ回路を構成するスイッチQ1,Q2、共振コンデンサCr、共振インダクタLr、トランスT、ダイオードD1,D2、平滑コンデンサCoおよび制御回路CONTと、力率改善コンバータ回路を構成するチョークコイルLp、ダイオードDp1、平滑コンデンサCsおよびスイッチQ3とを備え、スイッチQ3をトランスTの第2の巻線P2に発生する電圧によってオン・オフさせる。これにより、力率改善コンバータ回路は、電流共振コンバータ回路と同期してスイッチング動作されるため、スイッチング動作の干渉がなく、しかも、専用の制御回路が不要なため、コストを低減することができる。
【解決手段】電流共振コンバータ回路を構成するスイッチQ1,Q2、共振コンデンサCr、共振インダクタLr、トランスT、ダイオードD1,D2、平滑コンデンサCoおよび制御回路CONTと、力率改善コンバータ回路を構成するチョークコイルLp、ダイオードDp1、平滑コンデンサCsおよびスイッチQ3とを備え、スイッチQ3をトランスTの第2の巻線P2に発生する電圧によってオン・オフさせる。これにより、力率改善コンバータ回路は、電流共振コンバータ回路と同期してスイッチング動作されるため、スイッチング動作の干渉がなく、しかも、専用の制御回路が不要なため、コストを低減することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は力率改善電流共振コンバータに関し、特に力率改善(PFC:Power Factor Correct)コンバータ回路と電流共振コンバータ回路とを縦続接続して構成される力率改善電流共振コンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
電源装置として、直流入力電圧を昇圧または降圧して一定の直流出力電圧を得るDC−DCコンバータがある。DC−DCコンバータとして、共振コンバータ回路が知られている。この共振コンバータ回路は、直流入力電圧が変化しない場合に良好な出力の負荷特性が得られる特性を有している。このため、共振コンバータ回路の入力電源として商用交流電源を使用する場合、前段に力率改善コンバータ回路を設けて入力される電圧をあらかじめ安定化させておく構成がよく用いられている(たとえば、特許文献1,2参照)。このような2段構成のDC−DCコンバータの具体的な構成例を以下に示す。
【0003】
図13は従来のDC−DCコンバータの一例を示す回路図である。
このDC−DCコンバータは、直流の電圧Vsを入力して直流の電圧Voを出力する電流共振コンバータ回路100と、商用交流電源120をダイオードブリッジDBで整流した電圧Vdから直流の電圧Vsを出力する力率改善コンバータ回路110とを備えている。
【0004】
電流共振コンバータ回路100では、二つのスイッチQ1,Q2の直列回路が直流の電圧Vsに対して並列に接続されており、スイッチQ1,Q2のゲートには、制御回路CONT1が接続されている。電流共振コンバータ回路100は、また、直列に接続された共振コンデンサCrおよび共振インダクタLrを備え、共振インダクタLrは、トランスTの一次側の巻線P1に接続されている。このトランスTの巻線P1の等価回路は、励磁インダクタンスLmが並列に接続されているものとなっている。トランスTの二次側の巻線S1,S2は、ダイオードD1,D2および平滑コンデンサCoからなって電圧Voを出力する整流・平滑回路が接続されている。平滑コンデンサCoには、これと並列にフィードバック回路102が接続されている。このフィードバック回路102は、出力の電圧Voの変動に応じて発光するフォトカプラPCe(発光ダイオード)と、その発光された光を受けるフォトカプラPCr(フォトトランジスタ)とを備え、受光側のフォトカプラPCrのフォトトランジスタは、制御回路CONT1に接続されている。制御回路CONT1は、出力の電圧Voを基にして、二つのスイッチQ1,Q2のオン時間またはスイッチング周波数を制御して出力の電圧Voを安定化している。
【0005】
力率改善コンバータ回路110は、チョークコイルLp、ダイオードDp1、スイッチQ3、平滑コンデンサCs、電流検出用の抵抗Rsおよび制御回路CONT2を備えている。制御回路CONT2は、平滑コンデンサCsの電圧Vsを検出するとともにチョークコイルLpに流れる電流を検出抵抗Rsにより検出し、これらの値を基にスイッチQ3を制御し、入力電流を正弦波状にして力率を向上させている。
【0006】
従来のDC−DCコンバータは、電流共振コンバータ回路100および力率改善コンバータ回路110に制御回路CONT1,CONT2を備え、制御回路CONT1,CONT2がそれぞれ独立して動作している。このため、電流共振コンバータ回路100および力率改善コンバータ回路110では、それぞれの制御方式も異なっており、さらにスイッチング周波数も異なっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−97303号公報
【特許文献2】特開2006−204048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の2段構成のDC−DCコンバータでは、二つのコンバータ回路がそれぞれ異なる動作をするため、お互いのスイッチング動作の干渉が生じ、このため不安定動作が発生するという問題点があった。
【0009】
また、2段構成のDC−DCコンバータでは、異なるスイッチング周波数での動作であるため、スイッチングノイズ低減のためのノイズフィルタが複雑になり、さらに制御回路も二つ必要であるため、部品点数が多くコスト増になるという問題点があった。
【0010】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、縦続接続された二つのコンバータ回路でのスイッチング動作の干渉をなくし、コストを抑制することのできる力率改善電流共振コンバータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明では上記の課題を解決するために、電流共振コンバータ回路の前段に力率改善コンバータ回路を縦続接続して構成した力率改善電流共振コンバータにおいて、力率改善コンバータ回路は、独立して動作する専用の制御回路を持たず、電流共振コンバータ回路のスイッチング動作によって発生される電圧を利用することで電流共振コンバータ回路のスイッチング動作に同期したスイッチング動作を行うようにした。
【発明の効果】
【0012】
上記構成の力率改善電流共振コンバータは、力率改善コンバータ回路を、電流共振コンバータ回路のスイッチング動作に同期してスイッチング動作させるようにしたことで、力率改善電流共振コンバータの動作周波数が一つに統一されるという利点がある。これによって、力率改善電流共振コンバータの動作が安定し、ノイズの発生も抑制され、力率改善電流共振コンバータの性能を向上させることができる。
【0013】
また、上記構成の力率改善電流共振コンバータは、力率改善コンバータ回路が独立して動作する専用の制御回路を持たないことで、力率改善電流共振コンバータのコストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1の実施の形態に係る力率改善電流共振コンバータを示す回路図である。
【図2】整流回路の出力電圧波形例を示す図である。
【図3】力率改善電流共振コンバータの各部の電流波形例を示す図である。
【図4】チョークコイル電流および入力電流を示す波形例の図である。
【図5】第2の実施の形態に係る力率改善電流共振コンバータを示す回路図である。
【図6】第3の実施の形態に係る力率改善電流共振コンバータを示す回路図である。
【図7】第4の実施の形態に係る力率改善電流共振コンバータを示す回路図である。
【図8】第5の実施の形態に係る力率改善電流共振コンバータを示す回路図である。
【図9】第6の実施の形態に係る力率改善電流共振コンバータを示す回路図である。
【図10】第7の実施の形態に係る力率改善電流共振コンバータを示す回路図である。
【図11】第8の実施の形態に係る力率改善電流共振コンバータを示す回路図である。
【図12】第9の実施の形態に係る力率改善電流共振コンバータを示す回路図である。
【図13】従来のDC−DCコンバータの一例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、図面において、図13で示した回路素子に対応した機能を有する回路素子には同じ符号を付してある。
【0016】
図1は第1の実施の形態に係る力率改善電流共振コンバータを示す回路図、図2は整流回路の出力電圧波形例を示す図、図3は力率改善電流共振コンバータの各部の電流波形例を示す図、図4はチョークコイル電流および入力電流を示す波形例の図である。
【0017】
第1の実施の形態に係る力率改善電流共振コンバータは、電流共振コンバータ回路と力率改善コンバータ回路とを備え、これら電流共振コンバータ回路および力率改善コンバータ回路を一つの制御回路CONTで制御する構成を有している。力率改善コンバータ回路は、商用交流電源10をダイオードブリッジDBで整流した脈流の電圧Vdを入力して電圧変換された直流の電圧Vsを出力し、電流共振コンバータ回路は、電圧Vsを入力して直流の電圧Voを出力する。
【0018】
電流共振コンバータ回路では、電圧Vsに対して直列接続の二つのスイッチQ1,Q2が並列に接続されている。スイッチQ1,Q2は、この実施の形態では、NチャネルのパワーMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)を使用している。すなわち、電圧Vsの正極側の端子は、スイッチQ2のドレイン端子に接続され、スイッチQ2のソース端子は、スイッチQ1のドレイン端子に接続され、スイッチQ1のソース端子は、電圧Vsの負極側の端子に接続されている。
【0019】
電圧Vsの正極側の端子は、また、共振コンデンサCrの一端に接続され、共振コンデンサCrの他端は、共振インダクタLrの一端に接続されている。共振インダクタLrの他端は、トランスTの一次側の巻線P1の一端に接続され、巻線P1の他端は、スイッチQ1,Q2の共通の接続点に接続されている。トランスTの巻線P1の等価回路は、巻線P1の両端に励磁インダクタンスLmが並列に接続されているものとなっている。トランスTは、また、一次側に第2の巻線P2を有し、その一端は、抵抗R1を介して制御回路CONTの制御入力端子に接続され、他端は、制御回路CONTのグランド端子に接続されている。
【0020】
トランスTは、二次側に二つの巻線S1,S2を有し、互いに直列に接続されている。巻線S1,S2の両端子には、ダイオードD1,D2のアノード端子が接続され、これらのカソード端子は、互いに接続されて平滑コンデンサCoの正極端子に接続されている。平滑コンデンサCoの負極端子は、巻線S1,S2の接続点に接続されている。ダイオードD1,D2および平滑コンデンサCoは、整流・平滑回路を構成し、直流の電圧Voを出力する。なお、トランスTのそれぞれの巻線P1,P2,S1,S2に記したドットは、極性を表している。
【0021】
平滑コンデンサCoには、フィードバック回路12が接続されている。このフィードバック回路12は、平滑コンデンサCoの正極端子と負極端子との間に接続されて出力の電圧Voの変動を検出する直列接続の抵抗R11,R12を有している。また、この抵抗R11,R12の直列回路と並列に、電流制限用の抵抗R13と、発光側のフォトカプラPCe(発光ダイオード)と、シャントレギュレータSRとの直列回路が接続されている。シャントレギュレータSRのリファレンス端子は、抵抗R11と抵抗R12との共通の接続部が接続されている。一方、発光側のフォトカプラPCeと対をなす受光側のフォトカプラPCr(フォトトランジスタ)は、制御回路CONTのフィードバック端子とスイッチQ1のソース端子(グランド端子)との間に接続されている。シャントレギュレータSRは、抵抗R11,R12によって検出された、図示しないシャントレギュレータSRの基準電圧に対する電圧Voの変動に応じた電流を発光側のフォトカプラPCeに流し、受光側のフォトカプラPCrがその変動に対応する誤差信号を制御回路CONTのフィードバック端子に入力する。
【0022】
力率改善コンバータ回路では、ダイオードブリッジDBが出力する電圧Vdの正極端子は、チョークコイルLpの一端に接続され、チョークコイルLpの他端は、ダイオードDp1のアノード端子とスイッチQ3とに接続されている。この実施の形態では、スイッチQ3は、NチャネルのパワーMOSFETを使用しているので、チョークコイルLpとダイオードDp1との接続点は、スイッチQ3のドレイン端子に接続されている。ダイオードDp1のカソード端子は、平滑コンデンサCsの正極端子に接続され、平滑コンデンサCsの負極端子は、ダイオードブリッジDBの負極端子、スイッチQ3のソース端子、および電流共振コンバータ回路のスイッチQ1のソース端子、すなわちグランド端子に接続されている。
【0023】
制御回路CONTは、その第1の制御出力がスイッチQ1のゲート端子に接続され、第2の制御出力がスイッチQ2のゲート端子に抵抗R2を介して接続されている。スイッチQ3のゲート端子は、トランスTの一次側に設けた第2の巻線P2の一端に抵抗R3を介して接続されている。
【0024】
以上の構成の力率改善電流共振コンバータにおいて、まず、電流共振コンバータ回路では、制御回路CONTがフィードバック回路12を介して出力の電圧Voを検出している(より厳密に言えば、出力電圧Voの基準電圧に対する誤差電圧を検出している。)。制御回路CONTは、この電圧Voに基づいて二つのスイッチQ1,Q2のオン時間またはスイッチング周波数を制御して出力の電圧Voを安定化している。制御回路CONTは、また、トランスTの一次側に設けた第2の巻線P2に発生する電圧を入力し、第2のスイッチQ2のオン・オフ状態を検出している。したがって、この電流共振コンバータ回路では、スイッチQ2がオンしているとき、スイッチQ1はオンにされないので、二つのスイッチQ1,Q2が同時にオンすることはない。
【0025】
力率改善コンバータ回路では、ダイオードブリッジDBと平滑コンデンサCsとの間に力率改善用のチョークコイルLpおよびダイオードDp1が挿入されており、スイッチQ3は、トランスTの一次側の第2の巻線P2に発生する電圧によって駆動される。チョークコイルLp、ダイオードDp1、平滑コンデンサCs、およびスイッチQ3を含む回路は、図13の昇圧コンバータと同様である。ただし、スイッチQ3のオン・オフ制御は、この力率改善コンバータ回路に最適化されたものではなく、電流共振コンバータ回路のスイッチQ1のオン・オフに同期されたものなので、平滑コンデンサCsに出力される電圧Vsは、十分に安定化される訳ではない。
【0026】
力率改善コンバータ回路に入力される電圧Vdは、図2に示したように、商用交流電源10をダイオードブリッジDBで整流した波形を示している。商用交流電源10の周波数は、50Hzまたは60Hz、周期は、20msまたは16.7msであり、電流共振コンバータ回路のスイッチング周波数(たとえば、50kHz〜100kHz)と比べるとかなり低い。
【0027】
電流共振コンバータ回路では、平滑コンデンサCsの電圧Vsを入力とするハーフブリッジ型スイッチング回路になっており、上下二つのスイッチQ1,Q2が交互にオン・オフ制御される。
【0028】
まず、下側のスイッチQ1がオンすると、共振コンデンサCr、共振インダクタLr、トランスTの一次側の第1の巻線P1およびスイッチQ1を経由して電流ICrが流れる。このとき、共振コンデンサCrおよび共振インダクタLrによるLC回路で共振するので、図3に示したように、流れる電流ICr1は、第1の巻線P1を介して2次側に流れる正弦波状の電流(ここで、P1は理想トランスの構成要素としている。)とトランスTの励磁インダクタンスLmに流れる励磁電流との和となる。一次側の第1の巻線P1に正弦波の入力が印加されることにより、トランスTの二次側の巻線S1には電圧が誘起され、その電圧は、ダイオードD1で整流され、平滑コンデンサCoで平滑化されて、電圧Voが得られる。このとき、ダイオードD1を流れる電流は、図3に示した電流ID1である。また、トランスTの励磁インダクタンスLmには、巻線P1の電圧が印加されて励磁電流が流れるので、スイッチQ1には共振電流に励磁電流を加えた電流IQ1が流れる。
【0029】
次に、スイッチQ1がオフになり、上側のスイッチQ2がオンすると、巻線P1、共振インダクタLrおよび共振コンデンサCrのルートで電流ICr2(の励磁電流を除く正弦波成分)が流れる。これにより、トランスTの二次側の巻線S2に発生した電圧は、ダイオードD2で整流され、平滑コンデンサCoで平滑化されて、電圧Voが得られる。このとき、ダイオードD2を流れる電流は、図3に示した電流ID2である。この電圧Voの安定化は、スイッチQ1,Q2のスイッチング周波数を変化させて行う。
【0030】
トランスTの一次側に設けられた第2の巻線P2は、下側のスイッチQ1がオンのときに、この巻線P2に正極の電圧VP2が発生するように巻かれている。したがって、スイッチQ1がオンすると、スイッチQ3もオンし、スイッチQ1がオフのときは、スイッチQ3もオフとなる。
【0031】
スイッチQ3がオンすると、ダイオードブリッジDBと平滑コンデンサCsとの間に接続されたチョークコイルLpには、ダイオードブリッジDBによって整流された電圧Vdが印加され、スイッチQ3には、図3に示したように、電流IP1が流れる。これにより、チョークコイルLpにはエネルギが蓄えられる。スイッチQ1がオフすると、スイッチQ3もオフとなり、今までチョークコイルLpに蓄えられたエネルギは、ダイオードDp1を介して平滑コンデンサCsへ移行する。このとき、ダイオードDp1には、図3に示したように、電流IP2が流れる。なお、スイッチQ3がオン・オフしたときにチョークコイルLpに流れる電流は、図1,3,4に電流ILPで示している。
【0032】
スイッチQ3のオン時間は、スイッチQ1のオン時間に等しい。このスイッチQ3のオン時間をT1とし、スイッチQ3のオフ時間をT2とすると、平滑コンデンサCsの電圧Vsは、式(1)のようになる。
Vs=Vd/(1−D)・・・(1)
D=T1/(T1+T2)=0.5・・・(2)
Vs=2Vdp・・・(3)
ただし、Dは、時比率であり、スイッチQ1およびスイッチQ2のオン時間が等しい場合は、式(2)のように、D=0.5となる。平滑コンデンサCsの容量値が大きい場合には、商用交流の周期に対する電圧Vsの電圧変動は、非常に小さいので、この場合の電圧Vsは、式(3)に示されるように、整流された電圧Vdの最大電圧Vdpの2倍にほぼ等しい値になる。
【0033】
スイッチQ3は、電流共振コンバータ回路の下側のスイッチQ1のオン時間に等しい時間で駆動されるので、図4に示したように、チョークコイルLpには、電流共振コンバータ回路のスイッチング周波数に等しい周波数の電流ILPが流れる。このとき、チョークコイルLpに流れる電流ILPの平均値またはピーク波形はほぼ正弦波となり、力率が向上する。すなわち、負荷の変動がなければ電流共振コンバータ回路のスイッチング周波数および上記オン時間T1は一定であり、チョークコイルLpに流れる電流のピーク電流はスイッチ素子Q3がオンしたときのチョークコイルLpの両端電圧、すなわちダイオードブリッジDBの出力電圧に比例することになる。商用交流電源10から入力される入力電流IINは、図示しないフィルタ回路によりチョークコイルLpに流れる電流ILPを平均化した波形となるので、図4に示すようにほぼ正弦波となる。
【0034】
以上の構成の力率改善電流共振コンバータによれば、力率改善コンバータ回路を独立して動作するのではなく、電流共振コンバータ回路の制御回路CONTによって制御される力率改善回路として機能させるようにした。この力率改善回路のスイッチを電流共振コンバータ回路のスイッチングに同期してオン・オフさせるので、力率改善コンバータ回路の制御回路が不要となり、コンバータのコストを低減することができる。さらに、コンバータの動作周波数が一つに統一されるため、コンバータの動作が安定し、ノイズの発生も抑制され、コンバータの性能が向上することになる。
【0035】
図5は第2の実施の形態に係る力率改善電流共振コンバータを示す回路図である。なお、この図5において、図1に示した構成要素と同じまたは均等の構成要素については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0036】
第2の実施の形態に係る力率改善電流共振コンバータによれば、第1の実施の形態に係る力率改善電流共振コンバータが有する第3のスイッチQ3を電流共振コンバータ回路の下側のスイッチQ1で兼用している。
【0037】
すなわち、この力率改善電流共振コンバータでは、チョークコイルLpとダイオードDp1との接続点は、ダイオードDp2を介して電流共振コンバータ回路のスイッチQ1のドレイン端子に接続されている。これ以外の構成は、第1の実施の形態のものと変わりがない。これにより、力率改善コンバータ回路は、電流共振コンバータ回路のスイッチQ1のオン・オフに同期してオン・オフさせられることになる。したがって、この力率改善電流共振コンバータは、第1の実施の形態に係る力率改善電流共振コンバータと同じ動作をすることになる。
【0038】
なお、ダイオードDp2は、逆流電流防止のためのものである。また、スイッチQ1は、力率改善コンバータ回路を動作させるスイッチを兼用していることによって、電流IP1と電流ICr1との和の電流が流れることになるので、上側のスイッチQ2に比べて流れる電流は大きくなる。
【0039】
図6は第3の実施の形態に係る力率改善電流共振コンバータを示す回路図である。なお、この図6において、図1に示した構成要素と同じまたは均等の構成要素については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0040】
第3の実施の形態に係る力率改善電流共振コンバータによれば、電流共振コンバータ回路のスイッチQ2を、制御回路CONTによって駆動するのではなく、トランスTの一次側に設けた第3の巻線P3に発生する電圧VP3によって駆動するようにしている。巻線P3は、下側のスイッチQ1がオフのときに、正極の電圧VP3が発生するように巻かれている。このため、この力率改善電流共振コンバータでは、制御回路CONTがスイッチQ2の駆動を行わない。これ以外の構成は、第1の実施の形態のものと同じである。したがって、この力率改善電流共振コンバータは、第1の実施の形態に係る力率改善電流共振コンバータと同じ動作をすることになる。
【0041】
図7は第4の実施の形態に係る力率改善電流共振コンバータを示す回路図である。なお、この図7において、図5および図6に示した構成要素と同じまたは均等の構成要素については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0042】
第4の実施の形態に係る力率改善電流共振コンバータは、第2の実施の形態に係る力率改善電流共振コンバータと第3の実施の形態に係る力率改善電流共振コンバータとを組み合わせた構成にしている。
【0043】
すなわち、トランスTの一次側に第3の巻線P3が設けられ、その巻線に発生する電圧VP3によって上側のスイッチQ2を駆動するようにしている。また、チョークコイルLpとダイオードDp1との接続点は、ダイオードDp2を介して電流共振コンバータ回路のスイッチQ1のドレイン端子に接続されている。スイッチQ1が力率改善コンバータ回路および電流共振コンバータ回路のスイッチング動作を同時に行うようにしている。これ以外の構成は、第1の実施の形態のものと同じである。したがって、この力率改善電流共振コンバータは、第1の実施の形態に係る力率改善電流共振コンバータと同じ動作をすることになる。
【0044】
図8は第5の実施の形態に係る力率改善電流共振コンバータを示す回路図である。なお、この図8において、図1に示した構成要素と同じまたは均等の構成要素については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0045】
第5の実施の形態に係る力率改善電流共振コンバータは、第1の実施の形態に係る力率改善電流共振コンバータの力率改善コンバータ回路のチョークコイルLpの構成を変更している。すなわち、チョークコイルLpは、その巻線にタップを設けている。つまり、チョークコイルLpの巻線は、一つではなく、二つの巻線N1,N2で構成して、平滑コンデンサCsに発生する電圧の昇圧比を調整している。図示の力率改善電流共振コンバータでは、巻線N1と巻線N2との接続点がスイッチQ3に接続されている。この場合、平滑コンデンサCsに発生する電圧Vsは、式(4)と式(5)のようになる。
Vs=Vd・{1−(1−m)D}/(1−D)・・・(4)
m=(N1+N2)/N1・・・(5)
ここで、一例として、N1=N2とし、時比率D=0.5の場合、式(5)のmは2となり、式(4)の電圧Vsは、3Vdとなり、昇圧比は、第1の実施の形態における式(3)の場合よりも増加する。
【0046】
図9は第6の実施の形態に係る力率改善電流共振コンバータを示す回路図である。なお、この図9において、図8に示した構成要素と同じまたは均等の構成要素については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0047】
この第6の実施の形態に係る力率改善電流共振コンバータによれば、二つの巻線N1,N2を有するチョークコイルLpの接続方法を第5の実施の形態によるものから変更している。
【0048】
すなわち、チョークコイルLpの巻線N1と巻線N2の接続点は、ダイオードDp1のアノードに接続され、巻線N2の自由端側は第3のスイッチQ3に接続されている。この場合、平滑コンデンサCsに発生する電圧Vsは、式(6)と式(7)のようになる。
Vs=Vd・{1−(1−n)D}/(1−D)・・・(6)
n=N1/(N1+N2)・・・(7)
ここで、一例として、N1=N2とし、時比率D=0.5の場合、式(7)のnは、0.5となり、式(6)の電圧Vsは、1.5Vdとなり、昇圧比は、第1の実施の形態における式(3)の場合よりも減少する。
【0049】
図10は第7の実施の形態に係る力率改善電流共振コンバータを示す回路図である。なお、この図10において、図1に示した構成要素と同じまたは均等の構成要素については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0050】
この第7の実施の形態に係る力率改善電流共振コンバータは、第1〜第6の実施の形態における力率改善コンバータ回路をSEPIC(Single Ended Primary Inductance Converter)コンバータへ置換えた回路にしている。第1〜第6の実施の形態における力率改善コンバータ回路が昇圧型のブーストコンバータであるのに対し、SEPICコンバータは、ブーストコンバータの中間にコンデンサおよびインダクタを入れ、出力電圧範囲を変更することで降圧も可能にしたものである。
【0051】
このSEPICコンバータでは、二つのチョークコイルLp1,Lp2を用いている。チョークコイルLp1は、その一端にダイオードブリッジDBによって整流された電圧Vdを受け、他端は、エネルギ転送コンデンサCpの一端に接続されている。このチョークコイルLp1とエネルギ転送コンデンサCpとの接続点は、スイッチQ3に接続されている。エネルギ転送コンデンサCpの他端は、ダイオードDp1のアノード端子に接続されている。ダイオードDp1のカソード端子は、平滑コンデンサCsの正極端子に接続されている。エネルギ転送コンデンサCpとダイオードDp1との接続点は、チョークコイルLp2の一端に接続され、チョークコイルLp2の他端は、平滑コンデンサCsの負極端子に接続されている。二つのチョークコイルLp1,Lp2は、互いに独立していて、磁気的に結合していない。ダイオードDp3は、SEPICコンバータの起動時に平滑コンデンサCsに電流を供給して電圧Vsを立ち上げるためのものであり、チョークコイルLp1,ダイオードDp1およびエネルギ転送コンデンサCpの直列回路に並列に接続され、ダイオードDp3のカソード端子は平滑コンデンサCsの正極に接続される。
【0052】
SEPICコンバータの出入力電圧比は、スイッチQ3のオン時間とオフ時間の比に比例するので、力率改善コンバータ回路の出力電圧をブーストコンバータよりも低く設定することが可能である。
【0053】
図11は第8の実施の形態に係る力率改善電流共振コンバータを示す回路図である。なお、この図11において、図10に示した構成要素と同じまたは均等の構成要素については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0054】
この第8の実施の形態に係る力率改善電流共振コンバータでは、第7の実施の形態に二つのチョークコイルLp1,Lp2を一つのコアに巻いて互いに磁気的に結合し、一つの素子に一体に構成している。なお、図中、チョークコイルLp1,Lp2に記したドットは、極性を表している。
【0055】
図12は第9の実施の形態に係る力率改善電流共振コンバータを示す回路図である。なお、この図12において、図1に示した構成要素と同じまたは均等の構成要素については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0056】
この第9の実施の形態に係る力率改善電流共振コンバータは、第1ないし第8の実施の形態に係る力率改善電流共振コンバータと比較して、共振コンデンサCr、共振インダクタLrおよびトランスTの一次側の巻線P1の直列回路の接続位置を変更している。
【0057】
すなわち、第1ないし第8の実施の形態に係る力率改善電流共振コンバータでは、共振コンデンサCr、共振インダクタLrおよびトランスTの一次側の巻線P1の直列回路は、上側のスイッチQ2に並列に接続している。これに対し、この第9の実施の形態に係る力率改善電流共振コンバータでは、共振コンデンサCr、共振インダクタLrおよびトランスTの一次側の巻線P1の直列回路は、下側のスイッチQ1に並列に接続している。また、トランスTの一次側に設けられた第2の巻線P2は、逆極性の電圧VP2を制御回路CONTおよび第3のスイッチQ3に供給するようにしている。これ以外の構成は、第1の実施の形態のものと変わりがない。これにより、力率改善コンバータ回路は、電流共振コンバータ回路のスイッチQ1のオン・オフに同期してオン・オフさせられるので、この力率改善電流共振コンバータは、第1の実施の形態に係る力率改善電流共振コンバータと同じ動作をすることになる。
【0058】
なお、今までは共振コンデンサCr、共振インダクタLrおよびトランスTの一次側の巻線P1はこの順序で直列に接続して直列回路を形成した場合について説明してきたが、これに限定されるものではない。すなわち、共振コンデンサCr、共振インダクタLrおよびトランスTの一次側の巻線P1の接続順は任意であってよいし、この直列回路の共振インダクタLrとトランスTの一次側の巻線P1との直列回路部分を巻線P1のみで構成してもよい。
【符号の説明】
【0059】
10 商用交流電源
12 フィードバック回路
CONT 制御回路
Co 平滑コンデンサ
Cp エネルギ転送コンデンサ
Cr 共振コンデンサ
Cs 平滑コンデンサ
DB ダイオードブリッジ
D1,D2,Dp1,Dp2 ダイオード
Lm 励磁インダクタンス
Lp,Lp1,Lp2 チョークコイル
Lr 共振インダクタ
PCe フォトカプラ(発光ダイオード)
PCr フォトカプラ(フォトトランジスタ)
Q1,Q2,Q3 スイッチ
T トランス
【技術分野】
【0001】
本発明は力率改善電流共振コンバータに関し、特に力率改善(PFC:Power Factor Correct)コンバータ回路と電流共振コンバータ回路とを縦続接続して構成される力率改善電流共振コンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
電源装置として、直流入力電圧を昇圧または降圧して一定の直流出力電圧を得るDC−DCコンバータがある。DC−DCコンバータとして、共振コンバータ回路が知られている。この共振コンバータ回路は、直流入力電圧が変化しない場合に良好な出力の負荷特性が得られる特性を有している。このため、共振コンバータ回路の入力電源として商用交流電源を使用する場合、前段に力率改善コンバータ回路を設けて入力される電圧をあらかじめ安定化させておく構成がよく用いられている(たとえば、特許文献1,2参照)。このような2段構成のDC−DCコンバータの具体的な構成例を以下に示す。
【0003】
図13は従来のDC−DCコンバータの一例を示す回路図である。
このDC−DCコンバータは、直流の電圧Vsを入力して直流の電圧Voを出力する電流共振コンバータ回路100と、商用交流電源120をダイオードブリッジDBで整流した電圧Vdから直流の電圧Vsを出力する力率改善コンバータ回路110とを備えている。
【0004】
電流共振コンバータ回路100では、二つのスイッチQ1,Q2の直列回路が直流の電圧Vsに対して並列に接続されており、スイッチQ1,Q2のゲートには、制御回路CONT1が接続されている。電流共振コンバータ回路100は、また、直列に接続された共振コンデンサCrおよび共振インダクタLrを備え、共振インダクタLrは、トランスTの一次側の巻線P1に接続されている。このトランスTの巻線P1の等価回路は、励磁インダクタンスLmが並列に接続されているものとなっている。トランスTの二次側の巻線S1,S2は、ダイオードD1,D2および平滑コンデンサCoからなって電圧Voを出力する整流・平滑回路が接続されている。平滑コンデンサCoには、これと並列にフィードバック回路102が接続されている。このフィードバック回路102は、出力の電圧Voの変動に応じて発光するフォトカプラPCe(発光ダイオード)と、その発光された光を受けるフォトカプラPCr(フォトトランジスタ)とを備え、受光側のフォトカプラPCrのフォトトランジスタは、制御回路CONT1に接続されている。制御回路CONT1は、出力の電圧Voを基にして、二つのスイッチQ1,Q2のオン時間またはスイッチング周波数を制御して出力の電圧Voを安定化している。
【0005】
力率改善コンバータ回路110は、チョークコイルLp、ダイオードDp1、スイッチQ3、平滑コンデンサCs、電流検出用の抵抗Rsおよび制御回路CONT2を備えている。制御回路CONT2は、平滑コンデンサCsの電圧Vsを検出するとともにチョークコイルLpに流れる電流を検出抵抗Rsにより検出し、これらの値を基にスイッチQ3を制御し、入力電流を正弦波状にして力率を向上させている。
【0006】
従来のDC−DCコンバータは、電流共振コンバータ回路100および力率改善コンバータ回路110に制御回路CONT1,CONT2を備え、制御回路CONT1,CONT2がそれぞれ独立して動作している。このため、電流共振コンバータ回路100および力率改善コンバータ回路110では、それぞれの制御方式も異なっており、さらにスイッチング周波数も異なっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−97303号公報
【特許文献2】特開2006−204048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の2段構成のDC−DCコンバータでは、二つのコンバータ回路がそれぞれ異なる動作をするため、お互いのスイッチング動作の干渉が生じ、このため不安定動作が発生するという問題点があった。
【0009】
また、2段構成のDC−DCコンバータでは、異なるスイッチング周波数での動作であるため、スイッチングノイズ低減のためのノイズフィルタが複雑になり、さらに制御回路も二つ必要であるため、部品点数が多くコスト増になるという問題点があった。
【0010】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、縦続接続された二つのコンバータ回路でのスイッチング動作の干渉をなくし、コストを抑制することのできる力率改善電流共振コンバータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明では上記の課題を解決するために、電流共振コンバータ回路の前段に力率改善コンバータ回路を縦続接続して構成した力率改善電流共振コンバータにおいて、力率改善コンバータ回路は、独立して動作する専用の制御回路を持たず、電流共振コンバータ回路のスイッチング動作によって発生される電圧を利用することで電流共振コンバータ回路のスイッチング動作に同期したスイッチング動作を行うようにした。
【発明の効果】
【0012】
上記構成の力率改善電流共振コンバータは、力率改善コンバータ回路を、電流共振コンバータ回路のスイッチング動作に同期してスイッチング動作させるようにしたことで、力率改善電流共振コンバータの動作周波数が一つに統一されるという利点がある。これによって、力率改善電流共振コンバータの動作が安定し、ノイズの発生も抑制され、力率改善電流共振コンバータの性能を向上させることができる。
【0013】
また、上記構成の力率改善電流共振コンバータは、力率改善コンバータ回路が独立して動作する専用の制御回路を持たないことで、力率改善電流共振コンバータのコストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1の実施の形態に係る力率改善電流共振コンバータを示す回路図である。
【図2】整流回路の出力電圧波形例を示す図である。
【図3】力率改善電流共振コンバータの各部の電流波形例を示す図である。
【図4】チョークコイル電流および入力電流を示す波形例の図である。
【図5】第2の実施の形態に係る力率改善電流共振コンバータを示す回路図である。
【図6】第3の実施の形態に係る力率改善電流共振コンバータを示す回路図である。
【図7】第4の実施の形態に係る力率改善電流共振コンバータを示す回路図である。
【図8】第5の実施の形態に係る力率改善電流共振コンバータを示す回路図である。
【図9】第6の実施の形態に係る力率改善電流共振コンバータを示す回路図である。
【図10】第7の実施の形態に係る力率改善電流共振コンバータを示す回路図である。
【図11】第8の実施の形態に係る力率改善電流共振コンバータを示す回路図である。
【図12】第9の実施の形態に係る力率改善電流共振コンバータを示す回路図である。
【図13】従来のDC−DCコンバータの一例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、図面において、図13で示した回路素子に対応した機能を有する回路素子には同じ符号を付してある。
【0016】
図1は第1の実施の形態に係る力率改善電流共振コンバータを示す回路図、図2は整流回路の出力電圧波形例を示す図、図3は力率改善電流共振コンバータの各部の電流波形例を示す図、図4はチョークコイル電流および入力電流を示す波形例の図である。
【0017】
第1の実施の形態に係る力率改善電流共振コンバータは、電流共振コンバータ回路と力率改善コンバータ回路とを備え、これら電流共振コンバータ回路および力率改善コンバータ回路を一つの制御回路CONTで制御する構成を有している。力率改善コンバータ回路は、商用交流電源10をダイオードブリッジDBで整流した脈流の電圧Vdを入力して電圧変換された直流の電圧Vsを出力し、電流共振コンバータ回路は、電圧Vsを入力して直流の電圧Voを出力する。
【0018】
電流共振コンバータ回路では、電圧Vsに対して直列接続の二つのスイッチQ1,Q2が並列に接続されている。スイッチQ1,Q2は、この実施の形態では、NチャネルのパワーMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)を使用している。すなわち、電圧Vsの正極側の端子は、スイッチQ2のドレイン端子に接続され、スイッチQ2のソース端子は、スイッチQ1のドレイン端子に接続され、スイッチQ1のソース端子は、電圧Vsの負極側の端子に接続されている。
【0019】
電圧Vsの正極側の端子は、また、共振コンデンサCrの一端に接続され、共振コンデンサCrの他端は、共振インダクタLrの一端に接続されている。共振インダクタLrの他端は、トランスTの一次側の巻線P1の一端に接続され、巻線P1の他端は、スイッチQ1,Q2の共通の接続点に接続されている。トランスTの巻線P1の等価回路は、巻線P1の両端に励磁インダクタンスLmが並列に接続されているものとなっている。トランスTは、また、一次側に第2の巻線P2を有し、その一端は、抵抗R1を介して制御回路CONTの制御入力端子に接続され、他端は、制御回路CONTのグランド端子に接続されている。
【0020】
トランスTは、二次側に二つの巻線S1,S2を有し、互いに直列に接続されている。巻線S1,S2の両端子には、ダイオードD1,D2のアノード端子が接続され、これらのカソード端子は、互いに接続されて平滑コンデンサCoの正極端子に接続されている。平滑コンデンサCoの負極端子は、巻線S1,S2の接続点に接続されている。ダイオードD1,D2および平滑コンデンサCoは、整流・平滑回路を構成し、直流の電圧Voを出力する。なお、トランスTのそれぞれの巻線P1,P2,S1,S2に記したドットは、極性を表している。
【0021】
平滑コンデンサCoには、フィードバック回路12が接続されている。このフィードバック回路12は、平滑コンデンサCoの正極端子と負極端子との間に接続されて出力の電圧Voの変動を検出する直列接続の抵抗R11,R12を有している。また、この抵抗R11,R12の直列回路と並列に、電流制限用の抵抗R13と、発光側のフォトカプラPCe(発光ダイオード)と、シャントレギュレータSRとの直列回路が接続されている。シャントレギュレータSRのリファレンス端子は、抵抗R11と抵抗R12との共通の接続部が接続されている。一方、発光側のフォトカプラPCeと対をなす受光側のフォトカプラPCr(フォトトランジスタ)は、制御回路CONTのフィードバック端子とスイッチQ1のソース端子(グランド端子)との間に接続されている。シャントレギュレータSRは、抵抗R11,R12によって検出された、図示しないシャントレギュレータSRの基準電圧に対する電圧Voの変動に応じた電流を発光側のフォトカプラPCeに流し、受光側のフォトカプラPCrがその変動に対応する誤差信号を制御回路CONTのフィードバック端子に入力する。
【0022】
力率改善コンバータ回路では、ダイオードブリッジDBが出力する電圧Vdの正極端子は、チョークコイルLpの一端に接続され、チョークコイルLpの他端は、ダイオードDp1のアノード端子とスイッチQ3とに接続されている。この実施の形態では、スイッチQ3は、NチャネルのパワーMOSFETを使用しているので、チョークコイルLpとダイオードDp1との接続点は、スイッチQ3のドレイン端子に接続されている。ダイオードDp1のカソード端子は、平滑コンデンサCsの正極端子に接続され、平滑コンデンサCsの負極端子は、ダイオードブリッジDBの負極端子、スイッチQ3のソース端子、および電流共振コンバータ回路のスイッチQ1のソース端子、すなわちグランド端子に接続されている。
【0023】
制御回路CONTは、その第1の制御出力がスイッチQ1のゲート端子に接続され、第2の制御出力がスイッチQ2のゲート端子に抵抗R2を介して接続されている。スイッチQ3のゲート端子は、トランスTの一次側に設けた第2の巻線P2の一端に抵抗R3を介して接続されている。
【0024】
以上の構成の力率改善電流共振コンバータにおいて、まず、電流共振コンバータ回路では、制御回路CONTがフィードバック回路12を介して出力の電圧Voを検出している(より厳密に言えば、出力電圧Voの基準電圧に対する誤差電圧を検出している。)。制御回路CONTは、この電圧Voに基づいて二つのスイッチQ1,Q2のオン時間またはスイッチング周波数を制御して出力の電圧Voを安定化している。制御回路CONTは、また、トランスTの一次側に設けた第2の巻線P2に発生する電圧を入力し、第2のスイッチQ2のオン・オフ状態を検出している。したがって、この電流共振コンバータ回路では、スイッチQ2がオンしているとき、スイッチQ1はオンにされないので、二つのスイッチQ1,Q2が同時にオンすることはない。
【0025】
力率改善コンバータ回路では、ダイオードブリッジDBと平滑コンデンサCsとの間に力率改善用のチョークコイルLpおよびダイオードDp1が挿入されており、スイッチQ3は、トランスTの一次側の第2の巻線P2に発生する電圧によって駆動される。チョークコイルLp、ダイオードDp1、平滑コンデンサCs、およびスイッチQ3を含む回路は、図13の昇圧コンバータと同様である。ただし、スイッチQ3のオン・オフ制御は、この力率改善コンバータ回路に最適化されたものではなく、電流共振コンバータ回路のスイッチQ1のオン・オフに同期されたものなので、平滑コンデンサCsに出力される電圧Vsは、十分に安定化される訳ではない。
【0026】
力率改善コンバータ回路に入力される電圧Vdは、図2に示したように、商用交流電源10をダイオードブリッジDBで整流した波形を示している。商用交流電源10の周波数は、50Hzまたは60Hz、周期は、20msまたは16.7msであり、電流共振コンバータ回路のスイッチング周波数(たとえば、50kHz〜100kHz)と比べるとかなり低い。
【0027】
電流共振コンバータ回路では、平滑コンデンサCsの電圧Vsを入力とするハーフブリッジ型スイッチング回路になっており、上下二つのスイッチQ1,Q2が交互にオン・オフ制御される。
【0028】
まず、下側のスイッチQ1がオンすると、共振コンデンサCr、共振インダクタLr、トランスTの一次側の第1の巻線P1およびスイッチQ1を経由して電流ICrが流れる。このとき、共振コンデンサCrおよび共振インダクタLrによるLC回路で共振するので、図3に示したように、流れる電流ICr1は、第1の巻線P1を介して2次側に流れる正弦波状の電流(ここで、P1は理想トランスの構成要素としている。)とトランスTの励磁インダクタンスLmに流れる励磁電流との和となる。一次側の第1の巻線P1に正弦波の入力が印加されることにより、トランスTの二次側の巻線S1には電圧が誘起され、その電圧は、ダイオードD1で整流され、平滑コンデンサCoで平滑化されて、電圧Voが得られる。このとき、ダイオードD1を流れる電流は、図3に示した電流ID1である。また、トランスTの励磁インダクタンスLmには、巻線P1の電圧が印加されて励磁電流が流れるので、スイッチQ1には共振電流に励磁電流を加えた電流IQ1が流れる。
【0029】
次に、スイッチQ1がオフになり、上側のスイッチQ2がオンすると、巻線P1、共振インダクタLrおよび共振コンデンサCrのルートで電流ICr2(の励磁電流を除く正弦波成分)が流れる。これにより、トランスTの二次側の巻線S2に発生した電圧は、ダイオードD2で整流され、平滑コンデンサCoで平滑化されて、電圧Voが得られる。このとき、ダイオードD2を流れる電流は、図3に示した電流ID2である。この電圧Voの安定化は、スイッチQ1,Q2のスイッチング周波数を変化させて行う。
【0030】
トランスTの一次側に設けられた第2の巻線P2は、下側のスイッチQ1がオンのときに、この巻線P2に正極の電圧VP2が発生するように巻かれている。したがって、スイッチQ1がオンすると、スイッチQ3もオンし、スイッチQ1がオフのときは、スイッチQ3もオフとなる。
【0031】
スイッチQ3がオンすると、ダイオードブリッジDBと平滑コンデンサCsとの間に接続されたチョークコイルLpには、ダイオードブリッジDBによって整流された電圧Vdが印加され、スイッチQ3には、図3に示したように、電流IP1が流れる。これにより、チョークコイルLpにはエネルギが蓄えられる。スイッチQ1がオフすると、スイッチQ3もオフとなり、今までチョークコイルLpに蓄えられたエネルギは、ダイオードDp1を介して平滑コンデンサCsへ移行する。このとき、ダイオードDp1には、図3に示したように、電流IP2が流れる。なお、スイッチQ3がオン・オフしたときにチョークコイルLpに流れる電流は、図1,3,4に電流ILPで示している。
【0032】
スイッチQ3のオン時間は、スイッチQ1のオン時間に等しい。このスイッチQ3のオン時間をT1とし、スイッチQ3のオフ時間をT2とすると、平滑コンデンサCsの電圧Vsは、式(1)のようになる。
Vs=Vd/(1−D)・・・(1)
D=T1/(T1+T2)=0.5・・・(2)
Vs=2Vdp・・・(3)
ただし、Dは、時比率であり、スイッチQ1およびスイッチQ2のオン時間が等しい場合は、式(2)のように、D=0.5となる。平滑コンデンサCsの容量値が大きい場合には、商用交流の周期に対する電圧Vsの電圧変動は、非常に小さいので、この場合の電圧Vsは、式(3)に示されるように、整流された電圧Vdの最大電圧Vdpの2倍にほぼ等しい値になる。
【0033】
スイッチQ3は、電流共振コンバータ回路の下側のスイッチQ1のオン時間に等しい時間で駆動されるので、図4に示したように、チョークコイルLpには、電流共振コンバータ回路のスイッチング周波数に等しい周波数の電流ILPが流れる。このとき、チョークコイルLpに流れる電流ILPの平均値またはピーク波形はほぼ正弦波となり、力率が向上する。すなわち、負荷の変動がなければ電流共振コンバータ回路のスイッチング周波数および上記オン時間T1は一定であり、チョークコイルLpに流れる電流のピーク電流はスイッチ素子Q3がオンしたときのチョークコイルLpの両端電圧、すなわちダイオードブリッジDBの出力電圧に比例することになる。商用交流電源10から入力される入力電流IINは、図示しないフィルタ回路によりチョークコイルLpに流れる電流ILPを平均化した波形となるので、図4に示すようにほぼ正弦波となる。
【0034】
以上の構成の力率改善電流共振コンバータによれば、力率改善コンバータ回路を独立して動作するのではなく、電流共振コンバータ回路の制御回路CONTによって制御される力率改善回路として機能させるようにした。この力率改善回路のスイッチを電流共振コンバータ回路のスイッチングに同期してオン・オフさせるので、力率改善コンバータ回路の制御回路が不要となり、コンバータのコストを低減することができる。さらに、コンバータの動作周波数が一つに統一されるため、コンバータの動作が安定し、ノイズの発生も抑制され、コンバータの性能が向上することになる。
【0035】
図5は第2の実施の形態に係る力率改善電流共振コンバータを示す回路図である。なお、この図5において、図1に示した構成要素と同じまたは均等の構成要素については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0036】
第2の実施の形態に係る力率改善電流共振コンバータによれば、第1の実施の形態に係る力率改善電流共振コンバータが有する第3のスイッチQ3を電流共振コンバータ回路の下側のスイッチQ1で兼用している。
【0037】
すなわち、この力率改善電流共振コンバータでは、チョークコイルLpとダイオードDp1との接続点は、ダイオードDp2を介して電流共振コンバータ回路のスイッチQ1のドレイン端子に接続されている。これ以外の構成は、第1の実施の形態のものと変わりがない。これにより、力率改善コンバータ回路は、電流共振コンバータ回路のスイッチQ1のオン・オフに同期してオン・オフさせられることになる。したがって、この力率改善電流共振コンバータは、第1の実施の形態に係る力率改善電流共振コンバータと同じ動作をすることになる。
【0038】
なお、ダイオードDp2は、逆流電流防止のためのものである。また、スイッチQ1は、力率改善コンバータ回路を動作させるスイッチを兼用していることによって、電流IP1と電流ICr1との和の電流が流れることになるので、上側のスイッチQ2に比べて流れる電流は大きくなる。
【0039】
図6は第3の実施の形態に係る力率改善電流共振コンバータを示す回路図である。なお、この図6において、図1に示した構成要素と同じまたは均等の構成要素については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0040】
第3の実施の形態に係る力率改善電流共振コンバータによれば、電流共振コンバータ回路のスイッチQ2を、制御回路CONTによって駆動するのではなく、トランスTの一次側に設けた第3の巻線P3に発生する電圧VP3によって駆動するようにしている。巻線P3は、下側のスイッチQ1がオフのときに、正極の電圧VP3が発生するように巻かれている。このため、この力率改善電流共振コンバータでは、制御回路CONTがスイッチQ2の駆動を行わない。これ以外の構成は、第1の実施の形態のものと同じである。したがって、この力率改善電流共振コンバータは、第1の実施の形態に係る力率改善電流共振コンバータと同じ動作をすることになる。
【0041】
図7は第4の実施の形態に係る力率改善電流共振コンバータを示す回路図である。なお、この図7において、図5および図6に示した構成要素と同じまたは均等の構成要素については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0042】
第4の実施の形態に係る力率改善電流共振コンバータは、第2の実施の形態に係る力率改善電流共振コンバータと第3の実施の形態に係る力率改善電流共振コンバータとを組み合わせた構成にしている。
【0043】
すなわち、トランスTの一次側に第3の巻線P3が設けられ、その巻線に発生する電圧VP3によって上側のスイッチQ2を駆動するようにしている。また、チョークコイルLpとダイオードDp1との接続点は、ダイオードDp2を介して電流共振コンバータ回路のスイッチQ1のドレイン端子に接続されている。スイッチQ1が力率改善コンバータ回路および電流共振コンバータ回路のスイッチング動作を同時に行うようにしている。これ以外の構成は、第1の実施の形態のものと同じである。したがって、この力率改善電流共振コンバータは、第1の実施の形態に係る力率改善電流共振コンバータと同じ動作をすることになる。
【0044】
図8は第5の実施の形態に係る力率改善電流共振コンバータを示す回路図である。なお、この図8において、図1に示した構成要素と同じまたは均等の構成要素については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0045】
第5の実施の形態に係る力率改善電流共振コンバータは、第1の実施の形態に係る力率改善電流共振コンバータの力率改善コンバータ回路のチョークコイルLpの構成を変更している。すなわち、チョークコイルLpは、その巻線にタップを設けている。つまり、チョークコイルLpの巻線は、一つではなく、二つの巻線N1,N2で構成して、平滑コンデンサCsに発生する電圧の昇圧比を調整している。図示の力率改善電流共振コンバータでは、巻線N1と巻線N2との接続点がスイッチQ3に接続されている。この場合、平滑コンデンサCsに発生する電圧Vsは、式(4)と式(5)のようになる。
Vs=Vd・{1−(1−m)D}/(1−D)・・・(4)
m=(N1+N2)/N1・・・(5)
ここで、一例として、N1=N2とし、時比率D=0.5の場合、式(5)のmは2となり、式(4)の電圧Vsは、3Vdとなり、昇圧比は、第1の実施の形態における式(3)の場合よりも増加する。
【0046】
図9は第6の実施の形態に係る力率改善電流共振コンバータを示す回路図である。なお、この図9において、図8に示した構成要素と同じまたは均等の構成要素については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0047】
この第6の実施の形態に係る力率改善電流共振コンバータによれば、二つの巻線N1,N2を有するチョークコイルLpの接続方法を第5の実施の形態によるものから変更している。
【0048】
すなわち、チョークコイルLpの巻線N1と巻線N2の接続点は、ダイオードDp1のアノードに接続され、巻線N2の自由端側は第3のスイッチQ3に接続されている。この場合、平滑コンデンサCsに発生する電圧Vsは、式(6)と式(7)のようになる。
Vs=Vd・{1−(1−n)D}/(1−D)・・・(6)
n=N1/(N1+N2)・・・(7)
ここで、一例として、N1=N2とし、時比率D=0.5の場合、式(7)のnは、0.5となり、式(6)の電圧Vsは、1.5Vdとなり、昇圧比は、第1の実施の形態における式(3)の場合よりも減少する。
【0049】
図10は第7の実施の形態に係る力率改善電流共振コンバータを示す回路図である。なお、この図10において、図1に示した構成要素と同じまたは均等の構成要素については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0050】
この第7の実施の形態に係る力率改善電流共振コンバータは、第1〜第6の実施の形態における力率改善コンバータ回路をSEPIC(Single Ended Primary Inductance Converter)コンバータへ置換えた回路にしている。第1〜第6の実施の形態における力率改善コンバータ回路が昇圧型のブーストコンバータであるのに対し、SEPICコンバータは、ブーストコンバータの中間にコンデンサおよびインダクタを入れ、出力電圧範囲を変更することで降圧も可能にしたものである。
【0051】
このSEPICコンバータでは、二つのチョークコイルLp1,Lp2を用いている。チョークコイルLp1は、その一端にダイオードブリッジDBによって整流された電圧Vdを受け、他端は、エネルギ転送コンデンサCpの一端に接続されている。このチョークコイルLp1とエネルギ転送コンデンサCpとの接続点は、スイッチQ3に接続されている。エネルギ転送コンデンサCpの他端は、ダイオードDp1のアノード端子に接続されている。ダイオードDp1のカソード端子は、平滑コンデンサCsの正極端子に接続されている。エネルギ転送コンデンサCpとダイオードDp1との接続点は、チョークコイルLp2の一端に接続され、チョークコイルLp2の他端は、平滑コンデンサCsの負極端子に接続されている。二つのチョークコイルLp1,Lp2は、互いに独立していて、磁気的に結合していない。ダイオードDp3は、SEPICコンバータの起動時に平滑コンデンサCsに電流を供給して電圧Vsを立ち上げるためのものであり、チョークコイルLp1,ダイオードDp1およびエネルギ転送コンデンサCpの直列回路に並列に接続され、ダイオードDp3のカソード端子は平滑コンデンサCsの正極に接続される。
【0052】
SEPICコンバータの出入力電圧比は、スイッチQ3のオン時間とオフ時間の比に比例するので、力率改善コンバータ回路の出力電圧をブーストコンバータよりも低く設定することが可能である。
【0053】
図11は第8の実施の形態に係る力率改善電流共振コンバータを示す回路図である。なお、この図11において、図10に示した構成要素と同じまたは均等の構成要素については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0054】
この第8の実施の形態に係る力率改善電流共振コンバータでは、第7の実施の形態に二つのチョークコイルLp1,Lp2を一つのコアに巻いて互いに磁気的に結合し、一つの素子に一体に構成している。なお、図中、チョークコイルLp1,Lp2に記したドットは、極性を表している。
【0055】
図12は第9の実施の形態に係る力率改善電流共振コンバータを示す回路図である。なお、この図12において、図1に示した構成要素と同じまたは均等の構成要素については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0056】
この第9の実施の形態に係る力率改善電流共振コンバータは、第1ないし第8の実施の形態に係る力率改善電流共振コンバータと比較して、共振コンデンサCr、共振インダクタLrおよびトランスTの一次側の巻線P1の直列回路の接続位置を変更している。
【0057】
すなわち、第1ないし第8の実施の形態に係る力率改善電流共振コンバータでは、共振コンデンサCr、共振インダクタLrおよびトランスTの一次側の巻線P1の直列回路は、上側のスイッチQ2に並列に接続している。これに対し、この第9の実施の形態に係る力率改善電流共振コンバータでは、共振コンデンサCr、共振インダクタLrおよびトランスTの一次側の巻線P1の直列回路は、下側のスイッチQ1に並列に接続している。また、トランスTの一次側に設けられた第2の巻線P2は、逆極性の電圧VP2を制御回路CONTおよび第3のスイッチQ3に供給するようにしている。これ以外の構成は、第1の実施の形態のものと変わりがない。これにより、力率改善コンバータ回路は、電流共振コンバータ回路のスイッチQ1のオン・オフに同期してオン・オフさせられるので、この力率改善電流共振コンバータは、第1の実施の形態に係る力率改善電流共振コンバータと同じ動作をすることになる。
【0058】
なお、今までは共振コンデンサCr、共振インダクタLrおよびトランスTの一次側の巻線P1はこの順序で直列に接続して直列回路を形成した場合について説明してきたが、これに限定されるものではない。すなわち、共振コンデンサCr、共振インダクタLrおよびトランスTの一次側の巻線P1の接続順は任意であってよいし、この直列回路の共振インダクタLrとトランスTの一次側の巻線P1との直列回路部分を巻線P1のみで構成してもよい。
【符号の説明】
【0059】
10 商用交流電源
12 フィードバック回路
CONT 制御回路
Co 平滑コンデンサ
Cp エネルギ転送コンデンサ
Cr 共振コンデンサ
Cs 平滑コンデンサ
DB ダイオードブリッジ
D1,D2,Dp1,Dp2 ダイオード
Lm 励磁インダクタンス
Lp,Lp1,Lp2 チョークコイル
Lr 共振インダクタ
PCe フォトカプラ(発光ダイオード)
PCr フォトカプラ(フォトトランジスタ)
Q1,Q2,Q3 スイッチ
T トランス
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流共振コンバータ回路の前段に力率改善コンバータ回路を縦続接続して構成した力率改善電流共振コンバータにおいて、
前記力率改善コンバータ回路を、前記電流共振コンバータ回路のスイッチング動作に同期してスイッチング動作させるようにしたことを特徴とする力率改善電流共振コンバータ。
【請求項2】
前記電流共振コンバータ回路は、
互いに直列に接続された第1のスイッチおよび第2のスイッチと、
共振コンデンサと、
共振インダクタと、
一次側に設けられた第1の巻線および前記第1のスイッチおよび前記第2のスイッチのオン・オフにより電圧が発生される第2の巻線、並びに整流平滑回路が接続された二次側巻線を有するトランスと、
前記第2の巻線に発生する電圧に基づいて前記第1のスイッチをオン・オフさせる制御回路と、
を備え、
前記共振コンデンサ、前記共振インダクタおよび前記第1の巻線からなる直列回路が前記第1のスイッチまたは前記第2のスイッチに並列に接続され、
前記力率改善コンバータ回路は、一端に商用交流入力電源を整流した電圧が入力されるチョークコイルと、前記チョークコイルの他端に接続されたダイオードと、前記ダイオードを介して流れる電流を平滑化する平滑コンデンサと、前記チョークコイルと前記ダイオードとの接続点を前記平滑コンデンサの定電位側に接続する第3のスイッチとを備え、
前記第3のスイッチは、前記トランスの第2の巻線に発生する電圧によってオン・オフされることを特徴とする請求項1記載の力率改善電流共振コンバータ。
【請求項3】
前記チョークコイルと前記ダイオードとの接続点を逆流防止ダイオードを介して前記第1のスイッチと前記第2のスイッチとの接続点に接続することで前記第3のスイッチの機能を持たせたことを特徴とする請求項2記載の力率改善電流共振コンバータ。
【請求項4】
前記チョークコイルは、その巻線にタップを有し、前記ダイオードおよび前記第3のスイッチを前記タップまたは前記商用交流入力電源を整流した電圧が入力される側とは反対側の端部のいずれかに接続することによって前記力率改善コンバータ回路の昇圧比を変更できることを特徴とする請求項2記載の力率改善電流共振コンバータ。
【請求項5】
前記力率改善コンバータ回路は、前記チョークコイルと前記ダイオードとの間に、エネルギ転送コンデンサおよび別のチョークコイルを接続してSEPICコンバータとしたことを特徴とする請求項2記載の力率改善電流共振コンバータ。
【請求項6】
前記第2のスイッチは、前記制御回路によって前記第1のスイッチとは交互にオン・オフするように駆動する請求項2記載の力率改善電流共振コンバータ。
【請求項7】
前記トランスは、その一次側に第3の巻線を有し、前記第2のスイッチは、前記第3の巻線に発生する電圧によってオン・オフされることを特徴とする請求項2記載の力率改善電流共振コンバータ。
【請求項1】
電流共振コンバータ回路の前段に力率改善コンバータ回路を縦続接続して構成した力率改善電流共振コンバータにおいて、
前記力率改善コンバータ回路を、前記電流共振コンバータ回路のスイッチング動作に同期してスイッチング動作させるようにしたことを特徴とする力率改善電流共振コンバータ。
【請求項2】
前記電流共振コンバータ回路は、
互いに直列に接続された第1のスイッチおよび第2のスイッチと、
共振コンデンサと、
共振インダクタと、
一次側に設けられた第1の巻線および前記第1のスイッチおよび前記第2のスイッチのオン・オフにより電圧が発生される第2の巻線、並びに整流平滑回路が接続された二次側巻線を有するトランスと、
前記第2の巻線に発生する電圧に基づいて前記第1のスイッチをオン・オフさせる制御回路と、
を備え、
前記共振コンデンサ、前記共振インダクタおよび前記第1の巻線からなる直列回路が前記第1のスイッチまたは前記第2のスイッチに並列に接続され、
前記力率改善コンバータ回路は、一端に商用交流入力電源を整流した電圧が入力されるチョークコイルと、前記チョークコイルの他端に接続されたダイオードと、前記ダイオードを介して流れる電流を平滑化する平滑コンデンサと、前記チョークコイルと前記ダイオードとの接続点を前記平滑コンデンサの定電位側に接続する第3のスイッチとを備え、
前記第3のスイッチは、前記トランスの第2の巻線に発生する電圧によってオン・オフされることを特徴とする請求項1記載の力率改善電流共振コンバータ。
【請求項3】
前記チョークコイルと前記ダイオードとの接続点を逆流防止ダイオードを介して前記第1のスイッチと前記第2のスイッチとの接続点に接続することで前記第3のスイッチの機能を持たせたことを特徴とする請求項2記載の力率改善電流共振コンバータ。
【請求項4】
前記チョークコイルは、その巻線にタップを有し、前記ダイオードおよび前記第3のスイッチを前記タップまたは前記商用交流入力電源を整流した電圧が入力される側とは反対側の端部のいずれかに接続することによって前記力率改善コンバータ回路の昇圧比を変更できることを特徴とする請求項2記載の力率改善電流共振コンバータ。
【請求項5】
前記力率改善コンバータ回路は、前記チョークコイルと前記ダイオードとの間に、エネルギ転送コンデンサおよび別のチョークコイルを接続してSEPICコンバータとしたことを特徴とする請求項2記載の力率改善電流共振コンバータ。
【請求項6】
前記第2のスイッチは、前記制御回路によって前記第1のスイッチとは交互にオン・オフするように駆動する請求項2記載の力率改善電流共振コンバータ。
【請求項7】
前記トランスは、その一次側に第3の巻線を有し、前記第2のスイッチは、前記第3の巻線に発生する電圧によってオン・オフされることを特徴とする請求項2記載の力率改善電流共振コンバータ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−65414(P2012−65414A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−206396(P2010−206396)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】
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