説明

加圧ポンプ装置及び液体噴射装置

【課題】液体噴射装置におけるポンプ部から液体収容体への加圧気体供給路の途中に設けた大気開放弁のシール機能を良好に維持して液体収容体側から液体噴射ヘッド側への液体加圧供給機能を好適に発揮させることができる加圧ポンプ装置及び液体噴射装置を提供する。
【解決手段】ポンプ部46から排出された加圧空気を、該加圧空気の加圧力を受けて収容液体を記録ヘッド側へ送出するように構成されたインクカートリッジに導く空気供給チューブ32a〜32eと、開弁状態となったときに前記空気供給チューブ内を大気に対して連通状態とする一方、閉弁状態となったときに前記空気供給チューブ内を大気に対して密閉された非連通状態とする大気開放弁35と、前記空気供給チューブ内の途中位置であって少なくともポンプ部46から大気開放弁35の弁体配設位置に至るまでの途中位置に配置されるフィルタ部材81,86とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加圧ポンプ装置及び液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、液体をターゲットに対して噴射させる液体噴射装置として、インクジェット式プリンタ(以下、「プリンタ」という。)が広く知られている。このプリンタは、往復移動するキャリッジに記録ヘッド(液体噴射ヘッド)を搭載し、通常は、この記録ヘッドに対してプリンタの所定箇所(例えば、キャリッジ上)に装着されたインクカートリッジ(液体収容体)からインク(液体)を供給するようにしている。そして、インクカートリッジから記録ヘッドに供給されたインクを記録ヘッドに形成されたノズルから噴射することにより、ターゲットとしての記録媒体に印刷を施すようになっている。
【0003】
こうしたプリンタにあって、インクカートリッジをキャリッジ上とは異なる別の箇所に装着するタイプ(所謂オフキャリッジタイプ)のプリンタの場合は、インクカートリッジと記録ヘッドとの間をインク供給チューブ(液体供給路)で連結し、該チューブを介してインクカートリッジ内のインクを記録ヘッド側へ供給する必要がある。そのため、オフキャリッジタイプのプリンタの場合は、例えば特許文献1に記載されるように、加圧ポンプ及び大気開放弁等を有してなる加圧ポンプ装置を備え、加圧ポンプとインクカートリッジの間を空気供給チューブ(加圧気体供給路)で連結するようにしている。
【0004】
そして、加圧ポンプの駆動に基づき加圧ポンプ側から加圧空気(加圧気体)をインクカートリッジ内の空気室に空気供給チューブを介して送り込み、その空気室内に収容されたインクパックを押し潰すように加圧することで、インクカートリッジからインク供給チューブを介して記録ヘッド側にインクを送出するようにしている。また、プリンタの電源オフ時や、電源オン時でも空気供給チューブ内の圧力が高くなりすぎたときには、空気供給チューブの途中に設けた大気開放弁を開弁状態にして空気供給チューブ内を大気に連通させることにより、空気供給チューブ内が高圧となった場合に生じる各種の弊害(例えば、インク漏れ等)の発生を抑制するようにしている。
【特許文献1】特開2000−352379号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、加圧ポンプの駆動に基づき空気供給チューブを介してインクカートリッジ側に供給される加圧空気中には、例えば加圧ポンプの駆動時に外部から加圧ポンプ内に流入した塵埃等の異物を含んでしまうことがあった。そして、そうした異物を含む加圧空気が大気開放弁の開弁状態時に大気へ放出されると、その放出される加圧空気中に含まれていた異物が大気開放弁の弁体や弁座に付着してしまい、その後において閉弁状態としたときに弁体と弁座の間に異物を噛み込んでシール機能が阻害された不完全閉弁状態になってしまうという虞があった。
【0006】
そのため、そのように大気開放弁が不完全閉弁状態のままで、その後に加圧ポンプを駆動させることにより、空気供給チューブを介してインクカートリッジ側へ加圧空気を加圧供給しようとしても、その場合の加圧空気は不完全閉弁状態とされた大気開放弁から大気側にリークしてしまうことがあった。その結果、加圧ポンプ側からインクカートリッジ内へ送り込まれる加圧空気の圧力が弱くなってしまい、インクパックを十分に押し潰すことができなくなることから、インクカートリッジ側から記録ヘッド側へ送出されるインク量が不足して印刷不良等の不具合を生じさせるという問題があった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものである。その目的は、液体噴射装置におけるポンプ部から液体収容体への加圧気体供給路の途中に設けた大気開放弁のシール機能を良好に維持して液体収容体側から液体噴射ヘッド側への液体加圧供給機能を好適に発揮させることができる加圧ポンプ装置及びそのような加圧ポンプ装置を備えた液体噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の加圧ポンプ装置は、加圧気体を排出するポンプ部と、該ポンプ部から排出された加圧気体を、該加圧気体の加圧力を受けて収容液体を液体噴射装置が備える液体噴射ヘッド側へ送出するように構成された液体収容体に導く加圧気体供給路と、該加圧気体供給路の途中位置に配置され、開弁状態となったときに前記加圧気体供給路内を大気に対して連通状態とする一方、閉弁状態となったときに前記加圧気体供給路内を大気に対して密閉された非連通状態とする大気開放弁と、前記加圧気体供給路内の途中位置であって少なくとも前記ポンプ部から前記大気開放弁の弁体配設位置に至るまでの途中位置に配置されるフィルタ部材とを備えた。
【0009】
この発明によれば、ポンプ部から加圧気体供給路内に排出された加圧気体中に塵埃等の異物が含まれていたとしても、そのような異物は加圧気体供給路内の途中位置であって少なくとも大気開放弁の弁体配設位置よりもポンプ部側となる途中位置に配置されたフィルタ部材によって補足される。したがって、そのような異物が弁体配設位置まで至ることが抑制され、大気開放弁を閉弁状態としたときに不完全閉弁状態となる事態を回避できる結果、大気開放弁のシール機能を良好に維持して液体収容体側から液体噴射ヘッド側への液体加圧供給機能を好適に発揮させることができるようになる。
【0010】
また、本発明の加圧ポンプ装置において、前記加圧気体供給路の途中には、内部にフィルタ収容室を有する中継部材が前記フィルタ収容室内を介して前記加圧気体供給路内の上流側と下流側とを中継するように介装されており、前記フィルタ部材は前記中継部材の前記フィルタ収容室内に配置されている。
【0011】
この発明によれば、フィルタ部材が配置されたフィルタ収容室を内部に有する中継部材を加圧気体供給路の途中に介装するだけで、加圧気体供給路内の途中に異物を捕捉可能なフィルタ部材を簡単に配置できるようになる。
【0012】
また、本発明の加圧ポンプ装置において、前記中継部材は、シール部材を介して接合される上流側ケース体と下流側ケース体とからなり、前記フィルタ収容室は、前記上流側ケース体と前記下流側ケース体が接合されることにより両ケース体間に形成される。
【0013】
この発明によれば、上流側ケース体と下流側ケース体とを接合して中継部材を形成する前に、両ケース体間に形成されるフィルタ収容室内へフィルタ部材を簡単に配置できる。
また、本発明の加圧ポンプ装置において、前記中継部材は、前記加圧気体供給路の途中であって、前記大気開放弁の前記弁体配設位置から見た場合に前記ポンプ部側となる上流側の途中位置及び前記液体収容体側となる下流側の途中位置にそれぞれ配置されている。
【0014】
この発明によれば、ポンプ部の駆動時に加圧気体供給路を介してポンプ部側となる上流側から大気開放弁内に流入する加圧気体中の異物のみならず、ポンプ部の駆動停止に伴い加圧気体供給路内を逆流して液体収容体側となる下流側から大気開放弁内に流入する加圧気体中の異物をも捕捉することができるようになる。
【0015】
本発明の加圧ポンプ装置において、前記中継部材は、前記加圧気体供給路内の上流側及び下流側に連通する弁室が内部に形成された前記大気開放弁の弁ハウジングにより構成され、該弁ハウジング内の前記弁室により前記フィルタ収容室が構成されている。
【0016】
この発明によれば、大気開放弁における弁ハウジング内の弁室という一箇所にフィルタ部材を配置するだけで、加圧気体供給路内を流通してポンプ部側となる上流側及び液体収容室側となる下流側の双方から大気開放弁側に流入する加圧気体中に含まれている異物を捕捉することができるようになる。
【0017】
本発明の液体噴射装置は、液体を噴射可能な液体噴射ヘッドと、収容液体を加圧気体が供給された場合に該加圧気体の加圧力に基づき外部に排出する液体収容体と、該液体収容体から排出された液体を前記液体噴射ヘッドに導く液体供給路と、上記構成の加圧ポンプ装置とを備えた。
【0018】
この発明によれば、加圧ポンプ装置において、ポンプ部から加圧気体供給路内に排出された加圧気体中に塵埃等の異物が含まれていたとしても、そのような異物は大気開放弁の弁体配設位置よりもポンプ部側となる加圧気体供給路内の途中位置に配置されたフィルタ部材によって補足される。そのため、そのような異物が弁体配設位置まで至ることが抑制され、大気開放弁を閉弁状態としたときに不完全閉弁状態となる事態を回避できる。したがって、加圧ポンプ装置における大気開放弁のシール機能が良好に維持されるので、液体収容体側から液体噴射ヘッド側への液体加圧供給機能を好適に発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(第1実施形態)
以下、本発明を、加圧ポンプ装置を備えた所謂オフキャリッジタイプの液体噴射装置に具体化した第1実施形態を図1〜図7に従って説明する。
【0020】
図1に示すように、本実施形態における液体噴射装置としてのインクジェット式プリンタ(以下、「プリンタ」という。)10は、平面視矩形状をなす本体ケース11を備えている。本体ケース11内には棒状のガイド軸12が本体ケース11の長手方向となる左右方向に沿って架設され、ガイド軸12には液体噴射ヘッドとしての記録ヘッド13を搭載したキャリッジ14がガイド軸12の長手方向に沿って移動可能に挿通支持されている。
【0021】
また、本体ケース11内においてキャリッジ14の移動範囲から外れた位置(図1では右端側位置)にはカートリッジホルダ15が設けられ、そのカートリッジホルダ15上には複数(本実施形態では4つ)の液体収容体としてのインクカートリッジ16が着脱自在に装着されている。この点で、本実施形態のプリンタ10は、インクカートリッジ16がキャリッジ14上に搭載されてキャリッジ14と共に移動する所謂オンキャリッジタイプのプリンタではなく、インクカートリッジ16がキャリッジ14上とは別箇所に固定配置されてキャリッジ14と共に移動しない所謂オフキャリッジタイプのプリンタとして構成されている。
【0022】
本体ケース11の後側壁(図1では上側壁)内面においてガイド軸12の両端部と対応する位置には駆動プーリ17と従動プーリ18が回転自在に支持されている。駆動プーリ17と従動プーリ18との間には無端状のタイミングベルト19が掛装され、駆動プーリ17には本体ケース11の後側壁外面に固定されたキャリッジモータ20が連結されている。したがって、キャリッジ14は、タイミングベルト19を介して伝達されるキャリッジモータ20の駆動力に基づきガイド軸12に沿う主走査方向(図1の左右方向)に往復移動するようになっている。
【0023】
また、本体ケース11内においてガイド軸12の下方には、プラテン25が左右方向に沿うように設けられている。このプラテン25は、ターゲットとしての用紙(図示略)を支持する支持台であり、図示しない紙送りモータの回転に伴い、図1において下方となる前方へ向けて用紙を給送するようなっている。
【0024】
キャリッジ14上には、記録ヘッド13側にインク(収容液体)を供給するサブタンク(バルブユニットとも言う)26が搭載されている。インクカートリッジ16及びサブタンク26は、プリンタ10において使用されるインク色(例えばブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの各色)の色数に相当する数(本実施形態では4つ)だけ各々配設され、各サブタンク26はインク色毎に個別対応する各インクカートリッジ16と液体供給路としてのインク供給チューブ27を介して各々接続されている。そして、各サブタンク26は、インクカートリッジ16側からインク供給チューブ27を介して取り込んだインクを一時貯留し、その貯留インクを所定圧に圧力調整して記録ヘッド13側に供給するようになっている。
【0025】
また、本体ケース11内においてカートリッジホルダ15の上側となる位置には、加圧ポンプ装置としての加圧ユニット31が搭載されている。加圧ユニット31は加圧気体供給路としての空気供給チューブ32を介して加圧空気(加圧気体)をインクカートリッジ16に送り出す装置であり、加圧ポンプ33、圧力センサ34及び大気開放弁35を備えている。空気供給チューブ32は大気開放弁35の下流側に配置される分配器36により複数本(本実施形態では4本)に分岐され、分岐した各チューブが各インクカートリッジ16に1本ずつ接続されている。
【0026】
図1及び図2に示すように、各インクカートリッジ16は、矩形箱状のインクケース37を有し、そのインクケース37内には液体としてのインクを封入したインクパック38が収納されている。インクケース37の一側壁(図2では右側壁)における上下方向の略中間位置には、インク供給接続口39が貫通形成され、そのインク供給接続口39には、インクパック38に一体形成された筒状をなすインク排出口38aが、その先端をインクケース37外へ露出するようにして嵌合されている。そして、このインク排出口38aに対して前述したサブタンク26側へ延びるインク供給チューブ27が接続されている。
【0027】
また、インクケース37の一側壁(図2では右側壁)においてインク供給接続口39の下方となる位置には空気供給接続口40が貫通形成されている。この空気供給接続口40には、筒状をなす接続管41が、その一端(図2では右端)をインクケース37外に露出させると共に、その他端をインクケース37内に臨ませるようにして嵌合されている。そして、この接続管41におけるインクケース37外に露出した一端に対して前述した加圧ポンプ33側から延びる空気供給チューブ32の先端が接続されることにより、インクケース37内には、インクケース37の内面とインクパック38の外面との間に気密状態の空気室42が形成されるようになっている。
【0028】
そして、加圧ポンプ33の駆動に伴い加圧空気が空気供給チューブ32を介してインクカートリッジ16におけるインクケース37の空気室42内に導入された場合には、その加圧空気の空気圧(加圧力)によりインクパック38が押し潰されるようになっている。そして、そのようにインクパック38が押し潰されることにより、インクパック38内のインクがインク供給チューブ27を介してサブタンク26側に供給されるようになっている。
【0029】
次に、加圧ユニット31について、図3を参照しながら説明する。
図3に示すように、加圧ユニット31は、加圧ポンプ33、圧力センサ34、大気開放弁35等の複数部材が金属製の取付板44上に取着されることにより、一体的に取扱可能なユニット化された構成をしている。取付板44上において、加圧ポンプ33と圧力センサ34との間は第1空気供給チューブ32aを介して接続されている。また、取付板44上において、圧力センサ34と大気開放弁35との間は第2空気供給チューブ32b及び第3空気供給チューブ32c並びに第2空気供給チューブ32bと第3空気供給チューブ32cとの間を中継するように介装された中継部材としてのケース体75を介して接続されている。そして、取付板44上の大気開放弁35とカートリッジホルダ15上のインクカートリッジ16との間は第4空気供給チューブ32d及び第5空気供給チューブ32e並びに第4空気供給チューブ32dと第5空気供給チューブ32eとの間を中継するように介装された中継部材としてのケース体76を介して接続されている。
【0030】
加圧ポンプ33は、ダイアフラム式ポンプであり、ポンプ駆動源となるポンプモータ45と、ポンプモータ45の駆動力に基づきポンプ動作するポンプ部46とを備えている。ポンプモータ45には例えば小型のDCモータが用いられ、その出力軸45aにはモータ歯車47が固着されている。ポンプモータ45とポンプ部46との間には、ポンプモータ45側からポンプ部46側へ駆動力を伝達可能な歯車機構48とカム機構49が設けられている。そして、この歯車機構48とカム機構49を介してポンプモータ45の回転運動が往復直線運動に変換されてポンプ部46に伝達されるようになっている。
【0031】
取付板44において、ポンプモータ45の出力軸45a側となる一端側縁(図3では右端側縁)の略中央部分からは矩形板状の支持壁44aが上方へ垂直に折り曲げ形成されると共に、その反対側の他端縁においてポンプ部46の配設位置と対応する位置からは保持壁44bが上方へ垂直に折り曲げ形成されている。この保持壁44bの中央部には円形状の係止孔50が形成されている。また、取付板44上において、保持壁44bとポンプ部46の配設位置を挟んで反対側となる箇所には、一対の支持片44cがポンプモータ45の出力軸45aと平行な方向へ所定間隔をおくようにして立設されている。これら各支持片44cには同じ高さ位置に支持孔51がそれぞれ貫通形成されている。
【0032】
図3に示すように、支持壁44aには第1支軸52が取付板44上をポンプモータ45側へ水平方向に沿って延びるように一体形成されている。第1支軸52は、基端側(図3における右端側)が大径に形成されると共に、先端側(図3における左端側)が小径に形成され、その第1支軸52の小径部分には第1歯車53が回転可能な状態で支持されている。第1歯車53は、大径歯部53aと小径歯部53bが軸方向へ段違いに重合した歯車構成とされ、その大径歯部53aがポンプモータ45の出力軸45aに固着されたモータ歯車47と噛合っている。
【0033】
ポンプ部46は、一端(図3では左端)が円形状に開口したダイアフラム(蛇腹)54と、ダイアフラム54の開口部(図示略)を密封状態で閉じる蓋部55とを備えている。従って、ポンプ部46においては、蓋部55で閉じられたダイアフラム54の内部がポンプ室54aとして機能することになる。ダイアフラム54は、側壁が複数に折り返された蛇腹形状をなし、樹脂等をブロー成形することで製造される。ダイアフラム54はポンプモータ45からの駆動力に基づき長手方向(図3に示す矢印A方向)に伸縮可能であり、この伸縮動作に伴ってポンプ室54aの容積が増減するようになっている。
【0034】
ポンプ部46の蓋部55において前述した保持壁44bと対向する側の端面(図3では左端面)には、複数(本実施形態では3つ)の爪部55aが形成されている。そして、この爪部55aが保持壁44bの係止孔50に係止されることによって、ポンプ部46は、一端側(即ち、蓋部55側)が取付板44に対して支持されている。一方、ダイアフラム54の他端(図3では右端)には押圧部材56が取り付けられている。この押圧部材56は、平板状をなす連結板57と、この連結板57に一体形成された円柱状のピストン58とを備えている。そして、押圧部材56は、そのピストン58が前述した一対の支持片44cの両支持孔51内に挿通されることにより、取付板44上をポンプモータ45の出力軸45aと平行な水平方向に往復直線運動し得るように構成されている。
【0035】
図3に示すように、両支持片44cの間には、第1歯車53における大径歯部53aと噛合う大径の歯部59aを備えた第2歯車59が配設されている。第2歯車59は、その歯部59aよりも小径の円筒部59bが歯部59aの一側面側(図3では左側面側)から軸方向へ一体形成されている。また、第2歯車59は、歯部59aと円筒部59bとの両方に亘って軸方向に連通する連通孔(図示略)を有している。そして、第2歯車59は、その連通孔にピストン58が挿通されることによって、ピストン58に対して相対回転可能に支持されている。
【0036】
また、押圧部材56におけるピストン58の外周面には螺旋状をなすカム溝(図示略)が形成される一方、第2歯車59における円筒部59bの内周面側にはピストン58の外周面に形成されたカム溝(図示略)と摺動可能に係合する突起(図示略)が形成されている。そのため、ポンプモータ45が回転すると、それに連れて第1歯車53及び第2歯車59が回転し、その際に第2歯車59側の突起がピストン58側のカム溝内を摺動することで、ポンプモータ45の回転運動がピストン58の往復直線運動に変換されることになる。そして、ポンプモータ45の回転に伴ってピストン58が往復直線運動することにより、ダイアフラム54は伸張状態(図3の実線の状態)と収縮状態(図3の一点鎖線の状態)とを繰り返すようになっている。
【0037】
なお、ポンプ部46の蓋部55には、ダイアフラム54が収縮状態から伸張状態となる際におけるポンプ室54a内への大気の流入口となる吸気口(図示略)と、ダイアフラム54が伸張状態から収縮状態となる際におけるポンプ室54a内から外部への加圧空気の排出口となる排気口とが形成されている(図示略)。吸気口にはポンプ室54a内への大気流通のみを許容する吸気用一方向弁が設けられ、排気口にはポンプ室54a外への加圧空気の流通のみを許容する排気用一方向弁が接続されている。これら吸気用一方向弁及び排気用一方向弁が逆止弁に相当するため、ポンプ部46は、ダイアフラム54が伸縮動作するごとに加圧量が上昇するようになっている。
【0038】
ポンプモータ45の回転に伴いピストン58が反ダイアフラム側(図3では右側)に直線運動(復動)すると、ダイアフラム54は図3に一点鎖線で示す収縮状態から実線で示す伸張状態へと伸びる。このとき、ダイアフラム54は吸気状態となり、吸気口から大気がポンプ室54a内に吸い込まれる。一方、ポンプモータ45の回転に伴いピストン58がダイアフラム54側(図3では左側)に直線運動(往動)すると、ダイアフラム54は図3に実線で示す伸張状態から一点鎖線で示す収縮状態へと縮む。このとき、ダイアフラム54は排気状態となり、ポンプ室54a内の加圧空気が排気口に接続された排気接続管46a(図3参照)から空気供給チューブ32を介してインクカートリッジ16側に位置する圧力センサ34へと送出される。
【0039】
図3に示すように、圧力センサ34は、加圧空気の入口となる入力接続管34aと、取り込んだ加圧空気の出口となる出力接続管34bとを備えている。入力接続管34aは第1空気供給チューブ32aを介してポンプ部46の排気接続管46aに接続されている。一方、出力接続管34bは第2空気供給チューブ32b及び第3空気供給チューブ32c並びに第2空気供給チューブ32bと第3空気供給チューブ32cとの間を中継するように介装された中継部材としてのケース体75を介して大気開放弁35の吸入接続管35aに接続されている。そして、圧力センサ34は、第1空気供給チューブ32a及び入力接続管34aを介してポンプ部46側から圧力センサ34内に流入した加圧空気の圧力を検出し、その圧力に応じた検出値を加圧ユニット31におけるポンプモータ45等の駆動状態を制御する制御部(図示略)に出力するようになっている。
【0040】
一方、取付板44上において、第1歯車53と大気開放弁35との間には摩擦クラッチ機構61が配設されている。図3〜図5に示すように、取付板44における右端側縁の支持壁44aには第1支軸52と平行に第2支軸62が一体形成され、この第2支軸62の先端側(図3における左端側)には第3歯車63が回転可能な状態で支持されている。なお、第3歯車63は、第2支軸62の先端に固着された保持ピン(図示略)の保持力によって第2支軸62の先端側から抜け落ちないように保持されている。
【0041】
また、図3〜図5に示すように、第3歯車63と支持壁44aとの間には、外周面からアーム部64aが放射方向へ突出形成された略円板状の従動部品64が、第2支軸62に対して回転可能に挿通支持された状態で配置されている。この従動部品64と支持壁44aとの間にはコイルスプリング65が配置され、このコイルスプリング65は、その一端(図3では右端)が支持壁44aの側面に当接すると共に、その他端(図3では左端)が従動部品64の側面に当接した蓄圧状態に保持されている。
【0042】
したがって、従動部品64は、第3歯車63が回転する場合、コイルスプリング65の押圧力により第3歯車63に摩擦係合した状態となって第3歯車63と共に連れ回りすることになる。なお、従動部品64におけるアーム部64aの突出長さは、大気開放弁35側へ従動部品64が回転した場合に大気開放弁35に届く長さに設定されている。また、第3歯車63及び従動部品64の間の摩擦クラッチによる減速比は、第1歯車53及び第2歯車59の間の減速比よりも大きく設定されている。
【0043】
ちなみに、ポンプモータ45は正逆両方向へ回転することから、本実施形態では、ポンプモータ45が正転すると従動部品64が大気開放弁35を閉弁状態とする方向(図4に示す矢印B方向)に回転し、ポンプモータ45が逆転すると大気開放弁35を開弁状態とする方向(図4に示す矢印C方向)に回転するように構成されている。そして、本実施形態では、これらの第3歯車63、従動部品64及びコイルスプリング65により、摩擦クラッチ機構61が構成されている。
【0044】
次に、大気開放弁35について説明する。
大気開放弁35は、大気開放機能とレギュレータ機能とを有する弁装置であり、図3〜図5に示すように、一側面(図3では左側面)から第3空気供給チューブ32cを接続する吸入接続管35aが突設されると共に他側面(図3では左側面)からは第4空気供給チューブ32dを接続する排出接続管35bが突設された弁ハウジング66を有している。弁ハウジング66内には、加圧気体供給路の一部となる弁室66aと、その弁室66a内と吸入接続管35aに接続された第3空気供給チューブ32c内とを連通させる吸入口66bと、その弁室66a内と排出接続管35bに接続された第4空気供給チューブ32d内とを連通させる排出口66cとが形成されている。
【0045】
また、弁ハウジング66には、弁室66a内を弁ハウジング66外に連通する弁孔67が形成され、弁孔67の弁ハウジング66外に臨む周縁部位には弁座68が形成されている。また、弁ハウジング66には、第2支軸62の軸方向に沿って延びる軸69が設けられ、この軸69に対して弁開放レバー70が揺動可能に支持されている。弁開放レバー70の先端(図4における右端)において弁座68と対向する側の面(図4及び図5では下面)には、弁座68に対して着座及び離座することにより弁孔67を開閉して大気開放弁35を開弁状態と閉弁状態との間で切り替える弁体70aが一体形成されている。
【0046】
また、弁ハウジング66において弁座68の上方となる位置には上壁部66dが庇状に形成されると共に、その上壁部66dの下面には下方へ凸状のばね受け部66eが形成されている。その一方、弁開放レバー70の先端において弁体70aが一体形成された側とは反対側の面(図4及び図5では上面)には、前述した上壁部66dのばね受け部66eと上下方向で対向するように上方へ凸状のばね受け部70bが形成されている。そして、両ばね受け部66e,70b間には、弁開放レバー70を弁体70aが弁座68に着座する閉弁方向へ揺動付勢するコイルスプリング71が介装されている。
【0047】
したがって、大気開放弁35においては、ポンプモータ45がポンプ部46を作動させるべく正転した場合、従動部品64は、前述したように図4の矢印B方向に回転することになるが、暫くするとアーム部64aが第1支軸52に当接して、それ以上は回転しない状態となる。そして、その状態においては、図4に示すように、弁開放レバー70がコイルスプリング71の付勢力を受けて閉弁方向へと付勢され、その弁体70aが弁座68に着座して弁孔67を閉じることから、弁室66aを含む空気供給チューブ32内が大気に対して密閉された非連通状態となる。
【0048】
その一方、大気開放弁35においては、プリンタ10が電源オフされる時、及び、圧力センサ34による加圧空気の圧力の検出値が予め設定した設定圧以上となったときには、ポンプモータ45が逆転されるため、従動部品64が第3歯車63に連れ回りして図4の矢印C方向に回転する。その結果、図5に示すように、従動部品64のアーム部64aが弁開放レバー70の基端側を下方へ押し込み、コイルスプリング71の付勢力に抗して弁開放レバー70を弁体70aが弁座68から離間する開弁方向へ揺動させることから、弁室66aを含む空気供給チューブ32内が大気に対して連通状態となる。
【0049】
次に、第2空気供給チューブ32bと第3空気供給チューブ32cとの間を中継するように接続するケース体75、及び、第4空気供給チューブ32dと第5空気供給チューブ32eとの間を中継するように接続するケース体76について、図6及び図7を参照しながら説明する。
【0050】
まず、ケース体75について説明する。図6に示すように、ケース体75は、第2空気供給チューブ32bを接続するための吸入側接続管77aが形成された上流側ケース体77と第3空気供給チューブ32cを接続するための排出側接続管78aが形成された下流側ケース体78とがシール部材79を介して接合された構成をしている。上流側ケース体77の吸入側接続管77a内には第2空気供給チューブ32b内に連通する吸入口77bが形成されるとともに、下流側ケース体78の排出側接続管78a内には第3空気供給チューブ32c内に連通する排出口78bが形成されている。
【0051】
また、シール部材79を介して接合された上流側ケース体77と下流側ケース体78との間には、吸入口77b及び排出口78bを介して第2空気供給チューブ32b内と第3空気供給チューブ32c内とを連通するフィルタ収容室80が形成されている。そして、このフィルタ収容室80内には、フィルタ収容室80内を通過する加圧空気中に塵埃等の異物が含まれている場合に、当該異物を捕捉可能な金属製メッシュからなるフィルタ部材81が収容されている。
【0052】
次に、ケース体76について説明する。図7に示すように、ケース体76は、第4空気供給チューブ32dを接続するための吸入側接続管82aが形成された上流側ケース体82と第5空気供給チューブ32eを接続するための排出側接続管83aが形成された下流側ケース体83とがシール部材84を介して接合された構成をしている。上流側ケース体82の吸入側接続管82a内には第4空気供給チューブ32d内に連通する吸入口82bが形成されるとともに、下流側ケース体83の排出側接続管83a内には第5空気供給チューブ32e内に連通する排出口83bが形成されている。
【0053】
また、シール部材84を介して接合された上流側ケース体82と下流側ケース体83との間には、吸入口82b及び排出口83bを介して第4空気供給チューブ32d内と第5空気供給チューブ32e内とを連通するフィルタ収容室85が形成されている。そして、このフィルタ収容室85内には、フィルタ収容室85内を通過する加圧空気中に塵埃等の異物が含まれている場合に、当該異物を捕捉可能なウレタンフォームからなるフィルタ部材86が収容されている。
【0054】
そこで次に、上記のように構成されたプリンタ10における加圧ユニット31の作用について、特に、大気開放弁35の大気開放作用と、ケース体75及びケース体76による異物捕捉作用に着目して、以下説明する。
【0055】
さて、加圧ユニット31においては、インクカートリッジ16側から記録ヘッド13側にインクを送出させる際に加圧ポンプ33が駆動される。すなわち、ポンプモータ45の正転駆動に伴いポンプ部46がポンプ作動を開始し、ダイアフラム54が伸縮動作する。そして、ダイアフラム54の伸張時には吸気用一方向弁を介して吸気口からポンプ室54a内に空気(大気)が吸入され、吸入された空気はダイアフラム54の伸縮動作が繰り返されることにより圧力が高まると、排気用一方向弁を介して排出口に連なる排気接続管46aから第1空気供給チューブ32a内に排出される。
【0056】
そして、第1空気供給チューブ32a内に排出された加圧空気は、その後、圧力センサ34内、第2空気供給チューブ32b内、ケース体75のフィルタ収容室80内、及び、第3空気供給チューブ32c内を順次に経由して大気開放弁35の弁室66a内に至る。また、大気開放弁35の弁室66a内に至った加圧空気は、大気開放弁35が閉弁状態にある場合には、さらに、第4空気供給チューブ32d内、ケース体76のフィルタ収容室85内、及び第5空気供給チューブ32e内を順次に経由してインクカートリッジ16におけるインクケース37の空気室42内に導入される。
【0057】
そして、加圧空気がインクカートリッジ16におけるインクケース37の空気室42内に導入されると、その加圧空気の空気圧(加圧力)によりインクパック38が押し潰されることにより、インクパック38内のインクがインク供給チューブ27を介してサブタンク26側に供給される。そして、サブタンク26内において圧力調整されたインクが記録ヘッド13側へと供給され、そのインクが記録ヘッド13から用紙に対して噴射されることにより印刷が実行される。
【0058】
一方、プリンタ10の電源オフ時、及び電源オン時でも圧力センサ34による加圧空気の圧力検出値が設定圧以上になった場合には、ポンプモータ45の駆動が停止される。したがって、インクカートリッジ16におけるインクケース37の空気室42内に導入された加圧空気は前述した加圧空気供給時とは逆に、各空気供給チューブ32a〜32e内、各ケース体75,76のフィルタ収容室80,85内、及び、大気開放弁35の弁室66a内を経由してポンプ部46側へと逆流するようになる。
【0059】
そして、プリンタ10の電源オフ時、及び電源オン時でも圧力センサ34による加圧空気の圧力検出値が設定圧を越えて異常に高くなったような時には、引き続きポンプモータ45が逆転駆動され、大気開放弁35が開弁状態とされる。その結果、大気開放弁35においては弁体70aが弁座68から離座して弁孔67を介して弁室66a内を大気に連通させる。したがって、弁室66a内から弁孔67を介して加圧空気が大気に放出される。
【0060】
ところで、ポンプ部46のポンプ作動時において、ダイアフラム54が伸張動作したときに大気中から空気と共に塵埃等の異物がポンプ室54a内に吸入された場合には、それらの異物が加圧空気と共に、ポンプ室54a内から下流側の大気開放弁35側へと送出されることになる。そして、そのような加圧空気中の異物が大気開放弁35の開弁状態時に大気開放弁35の弁体70aや弁座68に付着してしまうと、その後における閉弁動作時に不完全閉弁状態を形成してしまう虞がある。
【0061】
しかし、本実施形態では、第2空気供給チューブ32bと第3空気供給チューブ32cとの間に介装されたケース体75のフィルタ収容室80内にフィルタ部材81が収容されている。そのため、ポンプ部46側から大気開放弁35側へ送出される加圧空気中に異物が含まれていたとしても、そのような異物は、大気開放弁35における弁座68(すなわち、弁体配設位置)に至るまでの空気供給チューブ32(32b,32c)の途中で捕捉され、弁体70aや弁座68に付着することはない。
【0062】
また、インクカートリッジ16にあっては、そのインクカートリッジ16の製造段階やユーザによってカートリッジホルダ15に装着される際に、塵埃等の異物をインクケース37の空気室42内に取り込んでしまうことがある。そのため、ポンプモータ45の駆動停止に伴い空気室42内から大気開放弁35側へ逆流する加圧空気と共に、そうした異物が大気開放弁35側へと送出されると、前述した場合と同様に、大気開放弁35の開弁状態時に大気開放弁35の弁体70aや弁座68に付着してしまい、その後における閉弁動作時に不完全閉弁状態を形成してしまう虞がある。
【0063】
しかし、本実施形態では、第4空気供給チューブ32dと第5空気供給チューブ32eとの間に介装されたケース体76のフィルタ収容室85内にフィルタ部材86が収容されている。そのため、インクカートリッジ16側から大気開放弁35側へ逆流する加圧空気中に異物が含まれていたとしても、そのような異物は、大気開放弁35における弁座68に至るまでの空気供給チューブ32の途中(32d,32e)で捕捉され、弁体70aや弁座68に付着することはない。
【0064】
したがって、上記の第1実施形態においては次のような効果を得ることができる。
(1)ポンプ部46から大気開放弁35側へ排出された加圧空気中に塵埃等の異物が含まれていたとしても、そのような異物は大気開放弁35の弁座68よりもポンプ部46側で第2空気供給チューブ32bと第3空気供給チューブ32cとの間に介装されたケース体75のフィルタ収容室80内に配置されたフィルタ部材81によって補足される。したがって、そのような異物が大気開放弁35において弁体配設位置となる弁座68まで至ることが抑制され、その後において大気開放弁35を閉弁状態としたときに不完全閉弁状態となる事態を回避できる。その結果、大気開放弁35の閉弁時におけるシール機能を良好に維持できるので、インクカートリッジ16側から記録ヘッド13側へのインク(液体)加圧供給機能を好適に発揮させることができる。
【0065】
(2)加圧空気が流通する空気供給チューブ32(32a〜32e)の途中に異物捕捉機能を有するフィルタ部材81,86を配置するには、そうしたフィルタ部材81,86が配置されたフィルタ収容室80,85を内部に有するケース体75,76を空気供給チューブ32(32a〜32e)の途中に介装するだけでよい。したがって、既存のプリンタ10における加圧ユニット31に対しても、その加圧ユニット31における空気供給チューブ32(32a〜32e)内の途中に異物を捕捉可能なフィルタ部材81,86を簡単に配置することができる。
【0066】
(3)ケース体75は、上流側ケース体77と下流側ケース体78とを互いに接合することにより、両者の間にフィルタ部材81を収容可能なフィルタ収容室80が形成される構成となっている。また、ケース体76についても、上流側ケース体82と下流側ケース体83とを互いに接合することにより、両者の間にフィルタ部材86を収容可能なフィルタ収容室85が形成される構成となっている。したがって、各ケース体75,76を形成する前に、両者の各上流側ケース体77,82と下流側ケース体78,83間に形成されるフィルタ収容室80,85内へフィルタ部材81,86を簡単に配置できる。
【0067】
(4)フィルタ部材81,86を収容したケース体75,76が空気供給チューブ32の途中であって大気開放弁35の弁座68(弁体配設位置)から見た場合にポンプ部46側となる上流側の途中位置及びインクカートリッジ16側となる下流側の途中位置にそれぞれ配置されている。したがって、ポンプ部46の駆動時にポンプ部46側となる上流側から大気開放弁35内に流入する加圧空気中の異物のみならず、ポンプ部46の駆動停止に伴い空気供給チューブ32内を逆流してインクカートリッジ16側となる下流側から大気開放弁35内に流入する加圧空気中の異物をも、各フィルタ部材81,86で捕捉することができる。
【0068】
(第2実施形態)
次に、本発明の加圧ポンプ装置及びプリンタに係る第2実施形態について図8に基づき説明する。
【0069】
さて、この第2実施形態のプリンタ10は、そのプリンタ10に設けられる加圧ポンプ装置としての加圧ユニット31の一部の構成が次の点で第1実施形態とは相違しており、その他の点では第1実施形態と基本的構成は同じである。したがって、以下には第1実施形態と相違する部分について主に説明することとし、その他の同一構成部分については、同一符号を付して重複説明を省略する。
【0070】
図8に示すように、第2実施形態の大気開放弁35においては、その弁室66a内に、第1実施形態におけるケース体76のフィルタ収容室85内に収容されていたフィルタ部材86と同様のウレタンフォームからなるフィルタ部材87が弁室66a内の全体にゆきわたるように収容されている。すなわち、この第2実施形態においては、大気開放弁35の弁室66aがフィルタ収容室を構成している。また、このような弁室66a内を吸入口66b及び排出口66cを介して上流側の第3空気供給チューブ32c内と下流側の第4空気供給チューブ32d内とを中継するように両空気供給チューブ32c,32d間に介装される弁ハウジング66が中継部材を構成している。
【0071】
そして、この第2実施形態では、大気開放弁35の弁室66a内に異物捕捉機能を有するフィルタ部材87を収容したことにより、圧力センサ34と大気開放弁35との間を接続する空気供給チューブ32(32b,32c)の途中に第1実施形態におけるケース体75が介装されていない。また、同様の理由で、この第2実施形態では大気開放弁35とインクカートリッジ16との間を接続する空気供給チューブ32(32d,32e)の途中に第1実施形態におけるケース体76が介装されていない。
【0072】
すなわち、この第2実施形態では、大気開放弁35の弁室66a内に収容したフィルタ部材87が、ポンプ部46側となる上流側及びインクカートリッジ16側となる下流側の双方から大気開放弁35の弁座68(弁体配設位置)に向けて流通する加圧気体中に含まれている異物を捕捉するように構成されている。換言すると、弁室66a内に収容された1つのフィルタ部材87が、第1実施形態におけるフィルタ部材81の上流側からの異物捕捉機能とフィルタ部材86の下流側からの異物捕捉機能を併有する構成となっている。
【0073】
したがって、この第2実施形態においては、第1実施形態における前述した(1)の効果に加えて、第1実施形態における前述した(4)の効果を大気開放弁35の弁室66a内という一箇所にフィルタ部材87を配置するだけで享受できるため、装置コストが低減できるという優れた効果を得ることができる。
【0074】
なお、上記各実施形態は、以下のような別の実施形態(別例)に変更してもよい。
・ 図9に示すように、第2実施形態における大気開放弁35の弁室66a内には、第1実施形態におけるケース体75のフィルタ収容室80内に収容されていたフィルタ部材81と同様の金属製メッシュからなるフィルタ部材88が弁室66a内と弁孔67との境界に位置するように配設してもよい。このようにした場合も、第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0075】
・ 第1実施形態において、ケース体75のフィルタ収容室80内に収容されるフィルタ部材81を、ケース体76のフィルタ収容室85内に収容されているフィルタ部材86と同様にウレタンフォームにて構成してもよい。
【0076】
・ 第1実施形態において、ケース体76のフィルタ収容室85内に収容されるフィルタ部材86を、ケース体75のフィルタ収容室80内に収容されているフィルタ部材81と同様に金属製メッシュにて構成してもよい。
【0077】
・ 各実施形態及び図9に示す別例におけるフィルタ部材81,86,87,88は、各フィルタ部材81,86,87,88を通過する加圧空気中に含まれる異物を捕捉する機能を有するものであれば、金属製メッシュ、ウレタンフォーム以外に、例えば不織布やスポンジ等の他の材料にて構成してもよい。
【0078】
・ 第1実施形態において、ケース体75,76は、内部にフィルタ部材(例えばウレタンフォーム製のフィルタ部材)を詰め込んだ筒状のパイプにより構成してもよい。
・ 第1実施形態において、ケース体75,76を省略し、圧力センサ34と大気開放弁35との間を接続する空気供給チューブ32内、及び、大気開放弁35とインクカートリッジ16との間を接続する空気供給チューブ32内に、それぞれフィルタ部材(例えばウレタンフォーム製のフィルタ部材)を直接詰め込んだ構成としてもよい。
【0079】
・ 第1実施形態において、大気開放弁35とインクカートリッジ16との間を接続する空気供給チューブ32(32d,32e)の途中に介装されたケース体76を省略してもよい。
【0080】
・ 加圧ユニット31において、ポンプ部46はダイアフラム54を用いた構造に限らず、例えば、シリンダ内を往復動するピストン等によって構成してもよい。
・ 上記実施形態では、大気開放弁35において、従動部品64が弁開放レバー70を揺動させることで大気開放を行う構成としたが、弁開放レバー70の回動をその他のアクチュエータで行ってもよいし、又は電磁弁として構成してもよい。
【0081】
・ 上記実施形態においては、液体噴射装置として、インクを吐出するプリンタ10について説明したが、その他の液体噴射装置であってもよい。例えば、ファックス、コピア等を含む印刷装置や、液晶ディスプレイ、ELディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材や色材などの液体を噴射する液体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとしての試料噴射装置であってもよい。また、流体もインクに限られず、他の流体に応用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】第1実施形態のインクジェット式プリンタの概略平面図。
【図2】インクカートリッジの構成を示す断面図。
【図3】インクカートリッジに加圧空気を送る加圧ユニットの平面図。
【図4】閉弁状態のときの大気開放弁を示す図3の4−4線矢視断面図。
【図5】図3の大気開放弁が開弁状態のときを示す断面図。
【図6】空気供給チューブの上流側の途中にケース体を介装した状態を示す断面図。
【図7】空気供給チューブの下流側の途中にケース体を介装した状態を示す断面図。
【図8】第2実施形態の大気開放弁が閉弁状態のときを示す断面図。
【図9】別例の大気開放弁が閉弁状態のときを示す断面図。
【符号の説明】
【0083】
10…液体噴射装置としてのプリンタ、13…液体噴射ヘッドとしての記録ヘッド、16…液体収容体としてのインクカートリッジ、27…液体供給路としてのインク供給チューブ、31…加圧ポンプ装置としての加圧ユニット、32,32a,32b,32c,32d,32e…加圧気体供給路としての空気供給チューブ、35…大気開放弁、46…ポンプ部、66…中継部材としての弁ハウジング、66a…フィルタ収容室としての弁室、75,76…中継部材としてのケース体、77,82…上流側ケース体、78,83…下流側ケース体、79,84…シール部材、80,85…フィルタ収容室、81,86,87,88…フィルタ部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧気体を排出するポンプ部と、
該ポンプ部から排出された加圧気体を、該加圧気体の加圧力を受けて収容液体を液体噴射装置が備える液体噴射ヘッド側へ送出するように構成された液体収容体に導く加圧気体供給路と、
該加圧気体供給路の途中位置に配置され、開弁状態となったときに前記加圧気体供給路内を大気に対して連通状態とする一方、閉弁状態となったときに前記加圧気体供給路内を大気に対して密閉された非連通状態とする大気開放弁と、
前記加圧気体供給路内の途中位置であって少なくとも前記ポンプ部から前記大気開放弁の弁体配設位置に至るまでの途中位置に配置されるフィルタ部材と
を備えたことを特徴とする加圧ポンプ装置。
【請求項2】
前記加圧気体供給路の途中には、内部にフィルタ収容室を有する中継部材が前記フィルタ収容室内を介して前記加圧気体供給路内の上流側と下流側とを中継するように介装されており、前記フィルタ部材は前記中継部材の前記フィルタ収容室内に配置されている請求項1に記載の加圧ポンプ装置。
【請求項3】
前記中継部材は、シール部材を介して接合される上流側ケース体と下流側ケース体とからなり、前記フィルタ収容室は、前記上流側ケース体と前記下流側ケース体が接合されることにより両ケース体間に形成される請求項2に記載の加圧ポンプ装置。
【請求項4】
前記中継部材は、前記加圧気体供給路の途中であって、前記大気開放弁の前記弁体配設位置から見た場合に前記ポンプ部側となる上流側の途中位置及び前記液体収容体側となる下流側の途中位置にそれぞれ配置されている請求項2又は請求項3に記載の加圧ポンプ装置。
【請求項5】
前記中継部材は、前記加圧気体供給路内の上流側及び下流側に連通する弁室が内部に形成された前記大気開放弁の弁ハウジングにより構成され、該弁ハウジング内の前記弁室により前記フィルタ収容室が構成されている請求項2に記載の加圧ポンプ装置。
【請求項6】
液体を噴射可能な液体噴射ヘッドと、収容液体を加圧気体が供給された場合に該加圧気体の加圧力に基づき外部に排出する液体収容体と、該液体収容体から排出された液体を前記液体噴射ヘッドに導く液体供給路と、請求項1〜請求項5のうち何れか一項に記載の加圧ポンプ装置とを備えた液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−203582(P2007−203582A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−24593(P2006−24593)
【出願日】平成18年2月1日(2006.2.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】