説明

加圧ローラ、加圧ローラの製造方法

【課題】転写材上に形成されたトナー像を定着しても高解像力で、均一な光沢の高品質プリント画像が得られ、且つ、定着性が良好で耐久性にも優れる加圧ローラ及び加圧ローラの製造方法の提供。
【解決手段】加熱部材と加圧ローラを用いる電子写真用の加熱定着装置の加圧ローラにおいて、該加圧ローラ8が、中心部の芯金1から外層に向かって、プライマー層2、連続発泡シリコーンゴム層3、プライマー層4、平滑化チューブ層5、プライマー層6、フッ素樹脂チューブ層7を設けたものであることを特徴とする加圧ローラ8。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真画像形成方法を採用した複写機やプリンタの加熱定着装置に用いる加圧ローラ及び加圧ローラの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真画像形成方法を採用した複写機やプリンタでは、電子写真画像形成においても軽印刷並の高品質(例えば、高濃度、高解像力、均一光沢、画像汚れが無い)のプリント画像が継続して得られることが要求されるようになってきた。
そのため、高解像力のプリント画像を得る目的で小径のトナーが開発されている。
【0003】
又、近年、地球環境に優しい定着装置(例えば、ウォーミオングアップ時間、低温定着)が求められてきている。定着装置のウォーミオングアップ時間を短縮できる加圧ロールとして、中心部の芯金から外層に向かって、シリコーンゴム層、シリコーンスポンジ層、フッ素樹脂チューブ層を順次被覆した多層構造に構成され、前記シリコーンスポンジ層が連続気泡のスポンジであることを特徴とする加圧ローラが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
又、弱い圧着力でも十分に広いニップ幅を形成することで良好な定着性能を発揮できる低温定着に適した加熱定着装置の加圧ローラとして、金属のローラ軸と、このローラ軸上に形成した弾性変形可能な弾性ゴム層と、この弾性ゴム層上に形成した離型材層とを具え、前記弾性ゴム層を、連続気泡を有する発泡ゴム材料で構成し、弾性ゴムの内部を連続気泡を介してローラ端部に連通させた加圧ローラが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【0005】
【特許文献】
【特許文献1】特開平6−27850号公報
【特許文献2】特開平10−17610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記提案の加圧ローラを用いると、ウォーミオングアップ時間の短縮や弱い圧着力でも十分に広いニップ幅を形成することはできたが、転写材上のトナー像を上記提案の加圧ローラを用い定着すると、解像力が低下したり光沢むらが発生したりするという問題があった。
【0007】
又、提案された加圧ローラを用い多数枚のプリントを行うと、加圧ローラを形成する各層間で剥離が発生し、継続して高品質のプリント画像が得られないという問題があった。
【0008】
本発明の目的は、転写材上に形成されたトナー像を定着しても高解像力で、光沢むらの無い高品質プリント画像が継続して得られ、且つ、低温定着特性に適し、耐久性にも優れる加圧ローラ及び加圧ローラの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、下記構成を採ることにより達成できる。
1.加熱部材と加圧ローラを有する加熱定着装置の加圧ローラにおいて、
該加圧ローラが、中心部の芯金から外層に向かって、プライマー層、連続発泡シリコーンゴム層、プライマー層、平滑化チューブ層、プライマー層、フッ素樹脂チューブ層を設けたものであることを特徴とする加圧ローラ。
2.前記連続発泡シリコーンゴム層の連泡率が、15〜40体積%であることを特徴とする前記1に記載の加圧ローラ。
3.前記平滑化チューブ層が、無泡シリコーンゴムチューブ、ポリイミドチューブ、ニッケル電鋳チューブ或いはステンレスチューブからなる層であることを特徴とする前記1又は2に記載の定着ローラ。
4.前記平滑化チューブ層が、ポリイミドチューブの表面、ニッケル電鋳チューブの表面或いはステンレスチューブの表面に無泡シリコーンゴム層を設けた層であることを特徴とする前記1又は2に記載の定着ローラ。
5.加熱部材と加圧ローラを用いる電子写真用の加熱定着装置の加圧ローラの製造方法において、
芯金の表面にプライマー層を形成する工程、その上に連泡シリコーンゴム層を設ける工程、その上にプライマー層を設けた無泡シリコーンチューブを挿入して無泡シリコーンチューブ層を形成する工程、その上にプライマー層を設けたフッ素樹脂チューブを挿入してフッ素樹脂チューブ層を形成する工程を有することを特徴とする加圧ローラの製造方法
【発明の効果】
【0010】
本発明は、転写材への熱伝達が良好になり低温定着特性に適し、高解像力で、均一光沢のプリント画像が継続して得られ、転写材の裏面汚れが無く、定着性が良好で、多数枚プリントしても各層間が剥離することが無く高耐久性の加圧ローラ及び加圧ローラの製造方法を提供できる優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の加圧ローラの断面模式図を示す。
【図2】本発明の加圧ローラと加熱部材を有する加熱定着装置の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明者等は、上記問題を解決するため、加熱定着装置の加圧ローラ及び加圧ローラの製造方法について検討を行った。
【0013】
種々検討の結果、中心部の芯金から外層に向かって、プライマー層、連続発泡シリコーンゴム層、プライマー層、平滑化チューブ層、プライマー層、フッ素樹脂チューブ層を設けた加圧ローラを用いると、上記目的が達成できることを見いだした。
図1は、本発明の加圧ローラの断面模式図を示す。
図1において、1は芯金、2はプライマー層、3は連続発泡シリコーンゴム層、4はプライマー層、5は平滑化チューブ層、6はプライマー層、7はフッ素樹脂チューブ層を示す。
【0014】
芯金の上に上記6層を設けることで、本発明の目的が達成できたのは以下のように推察している。
1.芯金の表面に連続発泡(以下、単に連泡とも云う)シリコーンゴム層を設けることで、定着ニップ部のニップ幅を広く(例えば、3〜10mm)することができる。定着ニップ部のニップ幅を広くすることで転写材への熱伝達が良好になり、低温定着に適した特性が得られる。
2.連泡シリコーンゴム層の上に、平滑化チューブ層を設けることで連泡シリコーンゴム層表面の凹凸を隠蔽できる。加圧ローラの表面を平滑にすることで、高解像力で均一光沢のプリント画像を得ることができる。
3.平滑化チューブ層の上に、離型性に優れたフッ素樹脂チューブ層を設けることでトナーとの離型性に優れた加圧ローラ表面を形成できる。加圧ローラ表面がトナーと離型性に優れているので加圧ローラの表面がトナーで汚れず、転写材の裏面汚れの発生を防止できる。
4.芯金、連泡シリコーンゴム層、平滑化チューブ層及びフッ素樹脂チューブ層の層間にプライマー層設けることで、多数枚プリントしても各層間が剥離することが無く、継続して高品質のプリントが得られ、耐久性に優れた加圧ローラを提供することが可能となる。
【0015】
先ず、本発明の加圧ローラを構成する部材について説明する。
【0016】
《芯金》
芯金は、加熱定着装置の加熱ローラに圧接したとき変形して悪影響が発生しない程度の強度を有していればよく、好ましくは、鉄、アルミニウム、ステンレス鋼、真鍮等の金属棒または金属管が用いられる。
好ましい芯金としては、鉄芯の表面に無電解ニッケル鍍金を施した部材の鉄芯胴部をベーター加工し、無電解ニッケル鍍金を落とし接着アンカー効果を高めたものを洗浄剤で洗浄したものを挙げることができる。
尚、無電解ニッケル鍍金を落とす方法としては、ブラスト加工により落とす方法が好ましい。
【0017】
《連泡シリコーンゴム層》
連泡シリコーンゴム層としては、特定の連泡率が得られるようシリコーンゴムを発泡させて形成したものを用いることができる。
連泡シリコーンゴム材としては、信越化学工業株式会社製のNT−522−U、C25−B、C25−A、C−3、KE−COLOR−BR、KE−P−26、X−93−1687を挙げることができる。
連泡シリコーンゴム層は、上記シリコーンゴム材を適量ブレンドした部材を押し出し成形し、その後加硫・発泡させて作製したものが好ましい。
連泡シリコーンゴム層の連泡率は15〜40体積%が好ましく、20〜30体積%がより好ましい。
連泡シリコーンゴム層の連泡率を上記範囲にすることにより、広いニップ幅を得ることができる。
【0018】
尚、連泡シリコーンゴム層の連泡率は次のようにして算出することができる。
先ず、連泡シリコーンゴム層から連泡シリコーンゴムの全部又は一部を切り出して、試験片を準備する。この試験片の質量W(g)及び密度D(g/cm)を常法に従って測定し、試験片の体積V(cm)をW/Dにより算出する。次いで、減圧チャンバ内に配置された容器に満たされた水に試験片を浸漬して、試験片から気泡が出現しなくなるまで、減圧チャンバ内を減圧し、試験片から気泡が出現しなくなったら、減圧を解除して、常圧で24時間静置する。次いで、試験片を水中から取り出し、試験片に付着した水を拭き取って、浸漬後の試験片の質量Wi(g)を測定し、試験片が吸収した水の質量Ww(g)をWi−Wにより算出する。尚、試験片が吸収した水の体積Vw(cm)は、水の密度を1(g/cm)とすると、Wwと等しくなる。
【0019】
一方、連泡シリコーンゴム層を形成するシリコーンゴム組成物の密度Dc(g/cm)を予め常法に従って測定して、このシリコーンゴム組成物で形成される連泡シリコーンゴム層の理論上の体積Vc(cm)をW/Dcにより算出し、さらに、連泡シリコーンゴム層に形成された連続気泡の全体積Vb(cm)をV−Vcにより算出する。
【0020】
連泡シリコーンゴム層の連泡率(体積%)は、このようにして算出した、試験片が吸収した水の体積Vwと連続気泡の全体積Vbとから、計算式(Vw/Vb)×100(%)、すなわち、((Ww/Vb)×100(%)によって、算出する。
連泡シリコーンゴム層のアスカーC硬度は、芯金上で15〜30が好ましい。尚、アーカスC硬度は、JIS K6253に準拠して測定した値である。
連泡シリコーンゴム層の厚さは、5〜20mmが好ましい。
【0021】
《平滑化チューブ層》
平滑化チューブ層は、連泡シリコーンゴム層の上に設けたとき、連泡シリコーンゴム層表面の凹凸を隠蔽できるよう平滑化チューブを用いて形成した層である。
平滑化チューブとしては、表面が平滑な無泡シリコーンゴムチューブ、ポリイミドチューブ、ニッケル電鋳チューブ或いはステンレスチューブを用いることができる。
又、ポリイミドチューブの表面、ニッケル電鋳チューブの表面或いはステンレスチューブの表面に無泡シリコーンゴムを設け、その表面を平滑にしたチューブを用いることができる。
【0022】
無泡シリコーンゴムチューブを用いるときは、その膜厚が0.5〜2.0mmであることが好ましく、そのアスカーC硬度が芯金上で20〜60のものが好ましい。
シリコーンゴムチューブ材としては、信越化学工業株式会社製のC25−B、C25−A、C−3、KE−561−U、KE−COLOR−BRを挙げることができる。
ポリイミドチューブ、ニッケル電鋳チューブ或いはステンレスチューブを用いるときは、その膜厚が30〜50μmであることが好ましい。
ポリイミドチューブの表面、ニッケル電鋳チューブの表面或いはステンレスチューブの表面に無泡シリコーンゴムを設けたチューブを用いるときは、厚さ30〜50μmのポリイミドチューブ、ニッケル電鋳チューブ或いはステンレスチューブの表面に厚さ0.3〜1.0mmの無泡シリコーンゴムを設けたものが好ましい。
【0023】
《フッ素樹脂チューブ層》
フッ素樹脂チューブ層としては、トナーを離型しやすく、トナーによる加圧ローラ表面汚れが発生するのを防止できる表面が平滑なフッ素樹脂チューブを用いる。好ましくは耐久性に優れた四フッ化エチレン−パーフロロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂(PFA)、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体樹脂(FEP)及び四フッ化エチレン樹脂(PTFE)を挙げることができる。
フッ素樹脂チューブは、その厚さが10〜30μmのものが好ましい。
【0024】
《プライマー層》
プライマー層は、芯金及び各層間の接着性を良好にするため設けられる。
プライマー層の厚さは、3〜20μmが好ましい。
プライマー材としては、信越化学工業株式会社製のシリコーンゴムプライマーNo.28、シリコーンゴムプライマーNo.3、KE−1880を挙げることができる。
【0025】
次に、圧力ローラの製造方法について説明する。
【0026】
《圧力ローラの製造方法》
本発明の圧力ローラの製造方法は、芯金の上にプライマー層、連続発泡シリコーンゴム層、プライマー層、平坦化チューブ層、プライマー層、フッ素樹脂チューブ層を順次形成できる方法であれば特に制限されるものではない。
好ましい圧力ローラの製造方法として、以下の方法を挙げることができる。
(芯金の準備)
芯金は、防錆加工した鉄芯の表面をブラスト加工した後、洗剤で洗浄したものを準備する。
(プライマー層の形成)
プライマー層は、芯金の表面にプライマー液を塗布して形成する。
(連泡シリコーンゴム層の形成)
連泡シリコーンゴム層はプライマー層の上に形成する。連泡シリコーンゴム層の形成は、シリコーンゴム材を適量ブレンドした部材をプライマー層の上に押し出し、その後加硫・発泡して層を形成し、その後層の表面を研磨して好ましい層厚に調整する。
連泡シリコーンゴム層の連泡率は、用いるシリコーンゴム部材や加硫・発泡条件を変更して好ましい範囲にする。
(プライマー層の形成)
プライマー層は、連泡シリコーンゴム層の表面にプライマー液を塗布して形成する。
(平滑化チューブ層の形成)
平滑化チューブ層は、予め準備した無泡シリコーンゴムチューブからなるゴムチューブ部材、ポリイミドチューブ、ニッケル電鋳チューブ、ステンレスチューブ等からなるチューブ部材、或いはポリイミドチューブの表面、ニッケル電鋳チューブの表面、ステンレスチューブの表面等に無泡シリコーンゴム材を設けたチューブ部材を、プライマー層の上に挿入して形成する。
平滑化チューブ層の挿入は、減圧法或いは加圧法により行うことができる。
(プライマー層の形成)
プライマー層は、平滑化チューブ層の表面にプライマー液を塗布して形成する。
(フッ素樹脂チューブ層の形成)
フッ素樹脂チューブ層は、上記のプライマー層の上に予め準備したフッ素樹脂チューブを挿入して形成する。
フッ素樹脂チューブの挿入は、減圧法或いは加圧法により行うことができる。
次に、加熱定着装置について説明する。
【0027】
《加熱定着装置》
本発明で用いられる加熱定着装置は、加熱部材と加圧ローラを有する装置で、前記加熱部材としては加熱ローラや加熱ベルトが好ましく用いられる。
図2は、本発明の加圧ローラと加熱部材を有する加熱定着装置の一例を示す模式図である。
図2の(a)は、加熱部材として加熱ローラを用いる加熱定着装置の一例を示す模式図である。
図2の(a)において、8は加圧ローラ、9はトナー像、10は転写材、11は加熱ローラ、12はヒーター、Nはニップ部を示す。
この加熱定着装置は、加熱ローラ11と、加圧ローラ8とを有し、この加熱ローラ11と加圧ローラ8とを圧接してニップ部Nを形成している。
ニップ部Nは、加熱ローラ11と加圧ローラ8は不図示の加圧手段により圧接されて形成される。尚、ニップ部のニップ幅及び圧接圧は、定着速度や加熱温度により左右されるが、ニップ部のニップ幅は3〜10mmが好ましく、圧接圧は線圧で0.9〜1.1N/cm(9〜11kgf/cm)が好ましい。
【0028】
転写材10上のトナー像9は、不図示の回転駆動により回転されている加熱ローラ11と加圧ローラ8間のニップ部Nに導入され、ヒーター12により加熱された加熱ローラ11の熱で転写材に定着される。
図2の(b)は、加熱部材として加熱ベルトを用いる加熱定着装置の一例を示す模式図である。
図2の(b)において、8は加圧ローラ、9はトナー像、10は転写材、700は円筒形状の定着ベルト、720はベルトガイド、740はヒーター、Nはニップ部、Mは駆動手段を示す。
【0029】
加圧ローラ8は、不図示の加圧手段により、ヒーター740、定着ベルト700、ベルトガイド720等からなるヒーターユニットに対し加圧されてニップ部が形成され、駆動手段Mにより駆動回転される。
尚、ニップ部のニップ幅及び圧接圧は、定着速度や加熱温度により左右されるが、ニップ部の幅は3〜10mmが好ましく、圧接圧は線圧で0.9〜1.1N/cm(9〜11kgf/cm)が好ましい。
加圧ローラ8の回転駆動により定着ベルト700を回転させ、ヒーター740を所定に昇温させた状態において、フィルム700と加圧ローラ8の間の定着ニップ部Nに導入された転写材10を挟持搬送し、ヒーター740の熱を付与して該転写材上に形成されたトナー像9の定着を行う。
【実施例】
【0030】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明の様態はこれに限定されるものではない。
【0031】
《加圧ローラ1の作製》
加圧ローラ1は、中心部の芯金から外に向かって、プライマー層、連泡シリコーンゴム層、プライマー層、無泡シリコーンゴムチューブ層、プライマー層、フッ素樹脂チューブ層の順で6層を設けて作製した。
〈芯金の準備〉
芯金としては、外径34mmの鉄芯の表面に無電解ニッケル鍍金を施した部材の鉄芯胴部を、ベーター加工し無電解ニッケル鍍金を落とし接着アンカー効果を高めたものを洗浄剤で洗浄したものを準備した。
〈プライマー層の形成〉
プライマー層は、上記芯金の表面に、膜厚が5μmになるようプライマー液「No.28」(信越化学工業株式会社製)を刷毛塗布し、自然乾燥して形成した。
〈連泡シリコーンゴム層1の形成〉
上記プライマー層の上に、下記の部材を混練、押し出し、加硫・発泡して連泡シリコーンゴムを形成した。その後、連泡シリコーンゴムの表面を研磨し、「連泡シリコーンゴム層1」を形成した。
連泡シリコーンゴム層1は、層厚が9mm、連泡率が30体積%、アスカーC硬度が25であった。尚、連泡率とアスカーC硬度は、前記の方法で測定した値である。
(連泡シリコーンゴムの部材)
NT−522−U 100質量部
KE−COLOR−BRP−26 3.0質量部
C25−A 0.5質量部
C25−B 3.0質量部
C−3 1.0質量部
X−93−1687 1.0質量部
KE−COLOR−BR 0.5質量部
〈プライマー層の形成〉
プライマー層は、上記連泡シリコーンゴム層1の上に、膜厚が10μmになるようプライマー液「KE−1880」(信越化学工業株式会社製)を刷毛塗布して形成した。
〈平滑化チューブ層1の形成〉
平滑化チューブ層1は、上記プライマー層の上に、下記の「無泡シリコーンゴムチューブ1」を挿入して「平滑化チューブ層1」を形成した。
(無泡シリコーンゴムチューブ1)
下記部材を配合、混練、押し出し、加硫後、表面を研磨して膜厚の調整と平滑化を行い「無泡シリコーンゴムチューブ1」を作製した。作製した無泡シリコーンゴムチューブ1の研磨後の膜厚は0.5mm、アスカーC硬度は50であった。
(無泡シリコーンゴムチューブの部材)
KE−561−U 100重量部
C25−A 0.5重量部
C25−B 3.0重量部
KE−COLOR−BR 0.5重量部
〈プライマー層の形成〉
上記平滑化チューブ層1の表面に、プライマー液「No.28」(信越化学工業株式会社製)を刷毛塗布して10μmのプライマー層を形成した。
〈フッ素樹脂チューブ層1の形成〉
フッ素樹脂チューブ層は、上記プライマー層の上に、下記の「フッ素樹脂チューブ1」を加圧挿入して「フッ素樹脂チューブ層1」を形成した。
(フッ素樹脂チューブ)
フッ素樹脂チューブ1は、厚さが30μmのPFA製チューブの内面を、エキシマレーザー処理をしたものを用いた。
《加圧ローラ2、3の作製》
加圧ローラ1の作製において、連泡シリコーンゴム層の連泡率が表1になるよう連泡シリコーンゴム層の作製条件を変更した以外は同様にして「加圧ローラ2、3」を作製した。
【0032】
《加圧ローラ4の作製》
加圧ローラ1の作製で用いた平滑化チューブ層1を、下記の「平滑化チューブ層2」に変更した以外は同様にして「加圧ローラ4」を作製した。
(平滑化チューブ層2)
表面が平滑な膜厚40μmのニッケル電鋳チューブを「平滑化チューブ層2」として用いた。
【0033】
《加圧ローラ5の作製》
加圧ローラ1の作製で用いた平滑化チューブ層1を、下記の「平滑化チューブ層3」に変更した以外は同様にして「加圧ローラ5」を作製した。
(平滑化チューブ層3)
表面が平滑な膜厚40μmのニッケル電鋳チューブの表面に、膜厚50μmの無泡シリコーンゴム層を設けたものを「平滑化チューブ層3」として用いた。
【0034】
《加圧ローラ6〜9)》
加圧ローラ1の作製において作製した層を、表1のように変更した以外は同様にして「加圧ローラ6〜9」を作製した。
表1に、加圧ローラ1〜9の作製で用いた部材、層構成を示す。
【0035】
【表1】

【0036】
《評価》
加圧ローラの評価装置として、「LP9000C」(エプソン社製)を準備した。この評価装置で用いられている加熱定着装置の加圧ローラを上記で作製した加圧ローラに順次交換して20万枚の通紙実験を行い、解像力、光沢度、定着性及び加圧ローラの耐久性について評価を行った。
【0037】
(解像度)
解像度の評価は、20万枚の通紙実験を行った後、64g/mの上質紙に、1mm幅に8本と5本の黒線が横方向に引かれた原稿をプリントし、何本まで解像できているかを10倍のルーペで拡大して評価した。
評価基準
◎ 8本/mmまで解像でき、細線の再現性が非常に良好
○ 5本/mmまで解像でき、細線の再現性が良好
× 5本/mmを解像できす、細線の再現性が悪い。
【0038】
(光沢むら)
光沢度むらは、20万枚の通紙実験を行った後、64g/mの上質紙に、べた画像の原稿をプリントし、プリント画像のべた画像の光沢を目視と10倍のルーペで拡大して評価した。
評価基準
◎ ルーペで拡大しても光沢むらが検知できない
○ 目視では光沢むらが検知できない
× 目視ですじ状の光沢むらが検知できる。
(耐久性)
20万枚の通紙実験を行う中で、加圧ローラの耐久性を評価した。
評価基準
◎ 20万枚の通紙実験を行っても、加圧ローラに剥離が発生せず、加圧ローラに起因するプリント不良が発生せず耐久性は良好
○ 20万枚の通紙実験終了時点で、加圧ローラ端部に一部剥離が見られたが、加圧ローラに起因するプリント不良が発生せず耐久性は実用上問題なし
× 20万枚の通紙実験終了以前に、加圧ローラの層間で剥離が発生し、加圧ローラに起因するプリント不良が発生し実用上問題あり。
【0039】
(定着性)
定着性の評価は、64g/mの上質紙に、べた画像の原稿をプリントし、このプリントを外側に2つに折り曲げ、折り曲げたところのトナーの剥離状態で評価した。
評価基準
◎:折り曲げたところのトナーの剥離が無く定着性良好
○:折り曲げたところのトナーの剥離がやや見られるが実用上問題ないレベル
×:折り曲げたところのトナーの剥離が明らかに見られ実用上問題あり。
表2に、評価結果を示す。
【0040】
【表2】

【0041】
表2から判るように、本発明の実施例1〜5の「加圧ローラ1〜5」は何れの評価項目も良好であったが、比較例1〜3の「加圧ローラ6〜9」は評価項目の何れかに問題があり、本発明の目的を達成できていないことが判る。
【符号の説明】
【0042】
1 芯金
2 プライマー層
3 連泡シリコーンゴム層
4 プライマー層
5 平滑化チューブ層
6 プライマー層
7 フッ素樹脂チューブ層
8 加圧ロール
9 未定着トナー
10 複写紙
11 加熱ローラ
12 駆動部
13 ヒーター
14 定着ベルト
15 ベルトガイド
16 ヒーター
N:ニップ巾

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱部材と加圧ローラを有する加熱定着装置の加圧ローラにおいて、
該加圧ローラが、中心部の芯金から外層に向かって、プライマー層、連続発泡シリコーンゴム層、プライマー層、平滑化チューブ層、プライマー層、フッ素樹脂チューブ層を設けたものであることを特徴とする加圧ローラ。
【請求項2】
前記連続発泡シリコーンゴム層の連泡率が、15〜40体積%であることを特徴とする請求項1に記載の加圧ローラ。
【請求項3】
前記平滑化チューブ層が、無泡シリコーンゴムチューブ、ポリイミドチューブ、ニッケル電鋳チューブ或いはステンレスチューブからなる層であることを特徴とする請求項1又は2に記載の定着ローラ。
【請求項4】
前記平滑化チューブ層が、ポリイミドチューブの表面、ニッケル電鋳チューブの表面或いはステンレスチューブの表面に無泡シリコーンゴム層を設けた層であることを特徴とする請求項1又は2に記載の定着ローラ。
【請求項5】
加熱部材と加圧ローラを用いる電子写真用の加熱定着装置の加圧ローラの製造方法において、
芯金の表面にプライマー層を形成する工程、その上に連泡シリコーンゴム層を設ける工程、その上にプライマー層を設けた無泡シリコーンチューブを挿入して無泡シリコーンチューブ層を形成する工程、その上にプライマー層を設けたフッ素樹脂チューブを挿入してフッ素樹脂チューブ層を形成する工程を有することを特徴とする加圧ローラの製造方法

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−22543(P2011−22543A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−181910(P2009−181910)
【出願日】平成21年7月13日(2009.7.13)
【出願人】(509219763)エス・ケー・デー・ジャパン株式会社 (2)
【Fターム(参考)】