説明

加圧気体供給装置

【課題】 高出力のコンプレッサやポンプ等の高圧加圧装置を必要とすることなく高圧気体を瞬時に供給することができる加圧気体供給装置を提供すること。
【解決手段】 加圧対象に加圧気体を供給するための加圧シリンダ11と、加圧シリンダ11を駆動するための駆動シリンダ12と、加圧シリンダ11のピストン14を、気体を圧縮する方向に移動することが不能なロック状態と、移動することが可能な作用状態とに切り替えることが可能なロック装置21とを備えており、駆動シリンダ12のピストンロッド16と加圧シリンダ11のピストンロッド16とが同軸状に連結されており、駆動シリンダ12のピストン15が加圧シリンダ11のピストン14より大きな受圧面積を有するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は加圧気体供給装置に関する。さらに詳しくは、たとえば亜鉛やアルミニウム等の金属材料を溶融して型キャビティに射出するダイカストマシン等の、瞬時の加圧を必要とする種々の対象装置に適用可能な加圧気体供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
溶融金属を型キャビティ内に射出して鋳造物を製造するダイカストマシンとしては、メルティングポット(溶解ナベ)内で金属材料を溶融してこれを型キャビティ内に射出するホットチャンバ型と、別に設けられた保温炉から金属材料を移送してこれを射出するコールドチャンバ型とが知られている。従来のホットチャンバ型のダイカストマシンは、特許文献1および特許文献2に開示されているようなものが一般的である。
【0003】
すなわち、図2に示すように、このホットチャンバ型ダイカストマシン51は、バーナー52によって加熱するための加熱炉53と、この加熱炉53に設置された溶解ナベ54とを備えている。溶解ナベ54内で溶解された亜鉛等の金属材料MMは、グースネック本体55のシリンダ56内に導かれる。そして、空圧または液圧の駆動シリンダ57のピストンロッド57Aに連結されたプランジャ58により押し出されたこの溶融金属MMは、ノズル59を通して型キャビティ60内に射出される。型キャビティ60は固定型61と可動型62との間に形成されている。
【0004】
このように、従来のホットチャンバ型ダイカストマシン51では、大容積の溶解ナベ54にポンプ機能を有するグースネック本体55およびプランジャ58を配置し、使用時には溶融金属内に常時浸漬させておく。そして、溶融金属を射出する力はプランジャ58から機械的に与えられる。そして、ポンプ機能を有するグースネック本体55やプランジャ58は溶融金属内に常時浸漬されているため、損傷しやすく、短寿命となる。
【特許文献1】特開2004−261841号公報
【特許文献2】特開平8−197218号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前述した従来技術が包含する課題を解決することはもとより、瞬時の高圧作動気体を必要とする装置に対して、高出力のコンプレッサ等を用いることなく高圧作動気体を供給することができる加圧気体供給装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の加圧気体供給装置は、
加圧対象に加圧気体を供給するための加圧シリンダと、
この加圧シリンダのピストンを、気体を圧縮する方向に移動することが不能なロック状態と、移動することが可能な作用状態とに切り替えることが可能なロック装置とを備えている。
【0007】
このロック装置を備えておれば、加圧シリンダのピストンをロック状態にして駆動力を与えておき、必要時にロックを解除して作用状態とすることにより、加圧シリンダの急激な動作を得ることができるので、加圧気体を瞬時に供給することができる。
【0008】
前記加圧シリンダを駆動するための駆動シリンダを配設し、
この駆動シリンダのピストンの受圧面積を加圧シリンダのピストンの受圧面積より大きくし、
駆動シリンダのピストンロッドと加圧シリンダのピストンロッドとを同軸状に連結することができる。
【0009】
このように構成すると、加圧シリンダのピストンは、駆動シリンダに供給する駆動用気体(作動気体)の圧力よりさらに高い圧力を加圧対象に加えることができる。なお、前述した「ピストンロッドを同軸状に連結する」とは、二本のピストンロッドを実際に連結することはもとより、一本のピストンロッドを駆動シリンダ用と加圧シリンダ用とに共用することをも含む意味である。
【0010】
加圧シリンダと加圧対象との間に排気弁を配設し
この排気弁が閉弁しているときには加圧対象内と加圧シリンダ内とが連通し、開弁したときには加圧対象内と加圧シリンダ内とが大気に開放されるように構成することができる。
【0011】
前記駆動シリンダのピストンロッドを駆動シリンダのボトム側端部を貫通して外方へ突出させ、このピストンロッドの突出した端部に被係合部を形成し、
前記ロック装置に、前記被係合部に係合しうる鉤型の係合部が形成された揺動可能なフック部材と、このフック部材を前記被係合部と係合する係合位置および係合が解除された非係合位置に揺動させる駆動装置とを備えることができる。
【0012】
以上説明した加圧気体供給装置は全て、溶融金属を型キャビティに射出するためのダイカスト装置にも好適に用いることができる。すなわち、射出すべき金属材料をその内部で熔解する本体容器と、該本体容器を加熱する加熱装置と、本体容器に取り付けられた射出ノズルと、本体容器に形成された、本体容器内に加圧気体を供給する加圧気体供給口とを備えたダイカスト装置の加圧気体供給口に、以上説明したうちいずれか一の加圧気体供給装置を接続し、前記本体容器内に供給される加圧気体によって溶融金属を前記射出ノズルを通して射出しうるように構成することができる。
【0013】
この加圧気体供給装置を備えたダイカスト装置では、前記本体容器がいわば従来のグースネック本体と溶解ナベとを兼ねた構成にされていると言える。そして、前記加圧気体が従来の機械的なプランジャの作用を奏するのである。したがって、従来のように、大きな加熱炉および溶解ナベを必要とせず、また、グースネックを溶解ナベの中に浸漬することによる問題から解放される。したがって、装置全体をコンパクトに構成することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の加圧気体供給装置は、高出力のコンプレッサやポンプ等の高圧加圧装置を必要とすることなく高圧気体を瞬時に供給することができるので、装置の設置スペースや製造コストの低減が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
添付の図面を参照しながら本発明にかかる加圧気体供給装置の実施形態を説明する。図1は本発明の一実施形態にかかる加圧気体供給装置をダイカスト装置に適用した例を概略的に示す一部断面図である。
【0016】
図示のダイカスト装置1は、その中で金属材料を熔解する本体容器2を備えている。この本体容器2の底部には溶融金属MMの通路となる射出孔3が形成されており、この射出孔3に連通するように射出ノズル4が取り付けられている。図示の本体容器2は、一つの閉じられた容器として構成されているが、開放された容器本体と、この開放部を閉止する着脱可能な蓋とから構成してもよい。本体容器2は耐食性および十分な耐圧強度を有する金属から形成される。
【0017】
この本体容器2の外周面および射出ノズル4の外周面を覆うように、加熱用のヒータ5が装着されている。射出ノズル4の射出口4Aが形成された先端部は、当然ながらヒータ5から突出して外部へ露出している。ヒータ5の加熱原理は限定しないが、ジュール熱を利用するものが入手容易で構造が簡単である。このヒータ5により、本体容器2内で亜鉛等の金属材料が溶解される。
【0018】
本体容器2の天井部には、その内部に金属材料を供給するための金属供給孔6が形成されている。金属材料としては均一径のワイヤ状の金属(たとえば亜鉛)MWが用いられる。この金属ワイヤMWは回転自在な収容ドラムDに巻き付けられている。金属ワイヤMWは送り装置7によって前記金属供給孔6に挿通され、本体容器2の内部に押し込まれる。送り装置7として、摩擦によってワイヤを送る複数組のプーリ状のローラ(周縁にワイヤが係合する溝が形成されているもの)7が用いられる。ワイヤ状金属MWの外径は金属供給孔6の内径より0〜0.02mm程度大きくなるように計画される。ヒータ5によって本体容器壁が高温に加熱されるので、金属供給孔6に挿通されるときにはワイヤ状金属MWの表面が軟化する。そのためワイヤ状金属MWは、金属供給孔6との間に隙間を生じることなく密な状態であるがひっかかりなく本体容器2の内部に送り込まれる。本体容器2内に送り込まれたワイヤ状金属MWはヒータ5の加熱によって連続的に溶解される。また、金属供給孔6は、前述のとおり金属ワイヤMWが密に挿通されているうえに、図示のごとく長く形成されているので、本体容器2の内圧が上昇しても、金属供給孔6内周と金属ワイヤMW外周との間から圧縮空気が外部へ逃げることがない。
【0019】
本体容器2の天井部から下方に向けて容器内部の所定の計画深さまでレベルセンサ(液面センサ)8が挿入されている。このレベルセンサ8によれば、その先端が溶融金属MMに接触したときに電気導通することより液面が検出される。このレベルセンサ8の検出結果に応じて前記金属材料の供給を行う。たとえば、液面が検出されないときに送り装置7の金属供給動作を作動させ、液面が検出されたときにこの動作を停止するように制御することができる。または、たとえば設定深さを相違させた複数のレベルセンサ8を用いて、下方のセンサが液面を検出しなくなったときに送り装置7を作動させ、上方のセンサが液面を検出したときにこの作動を停止するように制御してもよい。
【0020】
このように構成することにより、ダイカスト装置1の使用中においても本体容器2の内部の溶融金属MMの量が安定する。その結果、ダイカスティング作業が金属材料の供給のために中断したり、金属材料の追加に伴う溶融金属MMの温度の大幅な変動を抑制することができる。
【0021】
本体容器2には、その内圧を上昇させるための加圧気体が供給されてくる加圧気体供給口9が形成されている。本実施形態では加圧気体として圧縮空気が用いられているが特に限定はされない。加圧気体供給口9には加圧気体供給装置10が接続されている。
【0022】
加圧気体供給装置10は、図示のごとく第一空圧シリンダ11および第二空圧シリンダ12を有しており、第一空圧シリンダ11が排気弁13を介して前記加圧気体供給口9に連通されている。本実施形態では排気弁13として三方口の電磁切換弁が採用されており、常に本体容器2と第一空圧シリンダ11とを連通し、排気口13Aを開閉しうるように構成されている。
【0023】
両シリンダ11、12はそれぞれ固有のピストン14、15を有しているが、ピストンロッド16については一本のものを共用している。もちろん、それぞれ別のピストンロッドを用い、両ピストンロッドを互いに同軸直列に連結してもよい。第一空圧シリンダ11はいわゆる片ロッドの単動シリンダとして構成されている。もちろん両ロッド式でもよい。第二空圧シリンダ12はいわゆる複動シリンダとして構成されている。第二空圧シリンダ12の作動により、共用のピストンロッド16を介して第一空圧シリンダ11のピストン14が駆動されることにより、空気を圧縮してこれを本体容器2に送ることができる。したがって、第一空圧シリンダ11を加圧シリンダ11と呼び、第二空圧シリンダ12を駆動シリンダ12と呼ぶ。
【0024】
複動である駆動シリンダ12の給気用の第一ポート17および排気用の第二ポート18には、電磁切換弁19を介してそれぞれ図示しないコンプレッサ等の空気供給源が接続されている。加圧シリンダ11のヘッド側(図中のピストン14の左側)のポート20が前記排気弁13を通して本体容器2と連通している。駆動シリンダ12のピストン15の受圧面積は加圧シリンダ11のピストン14の受圧面積の約十倍に形成されている。そして、駆動シリンダ12にその第一ポート17から所定圧の作動空気を供給すると、ピストンロッド16が左方へ移動して(図中に二点鎖線で示す)加圧シリンダ11のヘッド側に約十倍の圧力が発生する。もちろん約十倍に限定されないが、駆動シリンダ12へ供給される低圧空気により、可動シリンダ11において高圧の圧縮空気を発生せしめるためには相当倍にする必要がある。
【0025】
前記ピストンロッド16は、図示のごとく、駆動シリンダ12のヘッド(左端)のみならずボトム(右端)をも貫通して外方へ延びている。ボトムを貫通して右外方へ延びたピストンロッドの延長部16Aの端部近傍には、ロック装置21が係合しうる被係合部22が形成されている。図1にはロック装置21の主構成要素としてフック部材24が例示されている。フック部材24の先端近傍には鉤型の係合部23が形成され、基端部は枢支されて揺動可能に構成されている。このフック部材24はバネ部材25によって延長部16Aの被係合部22に係合するロック位置、すなわち、ピストンロッド16を移動し得ないようにする位置、に向けて付勢されている。そして、このフック部材24を、被係合部22との係合を解除する方向に、すなわちピストンロッド16が移動し得る作用位置に向けて揺動させるための駆動装置26が配設されている。この駆動装置26としては、図示のごとき流体圧シリンダでもよく、ソレノイド等の他の好適な駆動装置でもよい。
【0026】
ピストンロッドの延長部16Aの端部(被係合部22の後端)には傾斜面22Aが形成され、フック部材24の先端部にはこの傾斜面22Aに対向するように相補的に傾斜した傾斜面24Aが形成されている。したがって、ピストンロッド16が図中二点鎖線で示す左方位置から実線で示す右方の初期位置へ戻るとき、フック部材24がロック位置にあったとしても、両者16、24の傾斜面22A、24A同士が摺動し合って最終的に被係合部22と係合部23とが係合する。
【0027】
また、他のロック装置として、ピストンロッドの延長部16Aを把持したり把持を解除したりすることができるソレノイド、トグル機構等を用いたグリップ部材を採用してもよい。
【0028】
前記ロック装置21は、図示のごとく、ピストンロッド16の左方への移動を阻止して加圧シリンダ11の駆動(加圧動作)を停止させるためのものである。従って、ピストンロッド16をロックした状態で第一ポート17から駆動シリンダ12に作動空気を供給してもピストンロッド16は左方へ動かない。そして、駆動シリンダ12のボトム側の内圧が所定の圧力になったときに、駆動装置26によってロック装置21の係合を解除すると、ピストンロッド16は一気に左方へ移動し(図中に二点鎖線で示す)、加圧シリンダ11を急激に駆動する。その結果、加圧シリンダ11からは高圧空気がまるで爆発したかのように瞬時に本体容器2内に供給される。この実施形態では、両シリンダ11、12において、とくにピストン14、15のストロークエンドを機械的ストッパによって規制することはしていない。駆動シリンダ12によって加圧駆動したとき、駆動シリンダ12のボトム側に供給された作動空気による力と、加圧シリンダ11のヘッド側(本体容器内と同じ)の圧縮空気による力との釣り合いによってピストンロッド16の左方向きストロークが停止するようにされている。
【0029】
溶融金属の射出はきわめて短時間内で行うべきものである。従来のプランジャという機械的な加圧に代えて圧縮気体を採用した場合でも、前述した構成の加圧気体供給装置10を用いることによって従来の技術に勝るとも劣らない瞬時の加圧力を得ることができる。また、メンテナンスも容易となる。
【0030】
この加圧気体供給装置10には下記のとおり便利な使用法がある。ダイカスト装置1による型キャビティ60内への溶融金属MMの射出が終了したあと射出ノズル4の先端が固定型61の湯口61Aから離間させられるが、このときノズル先端の射出口4Aから溶融金属が露出している。射出ノズル4が本体容器2の底部に取り付けられて下方を向いているため、重力の作用によって溶融金属が露出してしまうのである。この状態のまま射出を継続しようとしてノズル先端を固定型の湯口61Aに接触させたとき、ノズル先端の溶融金属MMが冷却されて固化してしまう可能性がある。こうなれば射出することができない。しかし、この加圧気体供給装置10を用いれば、後述するように、射出終了後に排気弁13を開弁して本体容器2および加圧シリンダ11の内圧をそれぞれ大気圧に戻し、その後、排気弁13を閉弁した上で加圧シリンダ11のピストン14を初期位置(図1中に実線で示す)まで戻すので、本体容器2の内部が負圧となる。その結果、射出ノズル4内の溶融金属MMはわずかに内部まで、すなわち、その外周がヒータ5によって覆われている部分まで吸い上げられるので、次ぎの射出時にノズル先端が湯口61Aに接触してもノズル内の溶融金属MMが固化することはない。つまり、通常の連続射出動作によってノズル先端の溶融金属の固化が防止されるのである。
【0031】
つぎに、図1を参照しつつこのダイカスト装置1の動作の一例を説明する。まず、ヒータ5によって本体容器2を加熱する。そして、送りローラ7を作動させて金属ワイヤMWを本体容器2内に供給していく。本体容器2内で金属ワイヤMWが溶融して溶融金属MMが蓄積されていく。レベルセンサ8が溶融金属MMの液面を検知したときに送りローラ7の金属供給動作が停止する。このとき、加圧気体供給装置10のピストン14、15は図中の実線で示す位置にあり、ロック装置21によってピストンロッド16がこの実線位置に停止させられている。その間に図示しない空気供給源から駆動シリンダ12のボトム側にその第一ポート17から作動空気が供給されている。排気弁13はその排気口13Aを閉止している。
【0032】
ついで、ダイカスティングの開始のために、固定型61と可動型62とが一体で本体容器2に接近して、その湯口61Aに前記射出ノズル4の先端が当接する。すなわち、固定型61の湯道とノズル先端の射出口4Aとが連通する。この当接を図示しないセンサが検知すると同時に、前記ロック装置21の駆動装置26が作動してピストンロッド16のロックを解除する。そうすると、瞬時にピストン14、15が左方へ移動して加圧シリンダ11を駆動し、加圧シリンダ11から高圧の圧縮空気が排気弁13を経由して本体容器2内へ供給される。この高圧空気の力により、本体容器2内の溶融金属MMのほんの一部が型キャビティ60内に射出される。
【0033】
射出を終了したらすぐに射出された金属は型キャビティ60内で固化する。つぎに、左右の可動型62が一体でわずかに横移動し、湯道の金属を切断する(ゲート切りといわれる)。ゲート切りとほぼ同時に排気弁13の排気口13Aが一瞬開き、本体容器2内の圧縮空気と加圧シリンダ11内の圧縮空気とが大気放散され、本体容器2および加圧シリンダ11の内圧が大気圧まで降下する。すぐに排気弁13の排気口13Aが閉弁してピストンロッド16が初期位置に向けて右方へ戻る。この動作によって本体容器2の内圧および加圧シリンダのヘッド側の内圧が同時に負圧となる。そして、固定型61と可動型62とが一体で射出ノズル4から離間する。そうすると、本体容器2内が負圧であることにより、ノズル先端の射出口4Aの溶融金属が内部に吸い上げられる。ついで、両可動型62が左右に開いてダイカスト製品が取り出される。以上の一連の動作は迅速に行われる。
【0034】
初期位置に戻ったピストンロッド16は、その被係合部22にロック装置21の係合部23が係合することによってロックされる。ここで、ダイカスティングの一サイクルが終了する。次のダイカスティングのために駆動シリンダ12のボトム側に作動空気が供給される。
【0035】
以上の動作が繰り返されることにより、非常に短いタクトタイムで同一形状のダイカスト製品が自動的に大量に製造される。
【0036】
前述のダイカスト装置1では、本体容器2の底部に射出ノズル4を下向きに取り付けているが、かかる構成に限定されない。たとえば、本体容器2の底部に、U字状やV字状等に湾曲して上方、横方向または斜め方向を向いた配管を取り付け、この配管の先端に上方、横方向または斜め方向を向くように射出ノズルを取り付けてもよい。このようにすることにより、射出ノズルの先端から溶融金属を内方へ吸い込む動作を考慮する必要が無くなる。
【0037】
前述したダイカスト材料として用いられている金属ワイヤMWおよびこれの送りローラ7の適用は、前記本体容器2への金属材料供給だけに限られるわけではない。たとえば、図2に示すような従来のダイカストマシン51への材料供給手段としても十分に適用可能であることは当業者にとって明らかであろう。さらに、前記レベルセンサ8を組み合わせて適用することも容易である。こうすることにより、従来のダイカストマシン51に対しても、人手による金属塊の投入や溶解ナベ内の溶融金属の量の監視等の作業を省略できるという利点が得られる。
【0038】
ダイカスト材料としての金属ワイヤは、たとえば複数段の圧延ローラを用いた連続鋳造圧延法、円形断面のダイスを用いた押し出し加工、ローラダイス引き抜き法等、公知の種々の加工法を適用して製造することが可能である。また、金属ワイヤMWの送り装置としても、前記送りローラ7に限定されることはない。たとえば、往復動可能なチャック部材を採用してもよい。すなわち、このチャック部材が金属ワイヤMWを把持し、本体容器2に向けてわずかな寸法(たとえば5〜20mm)だけ送って金属供給孔6から押し込む。ついで、金属ワイヤMWを把持を解放して同じ寸法だけ戻る。この動作を必要に応じて繰り返して断続的に金属ワイヤMWを本体容器2内に供給するのである。
【0039】
圧縮性流体によって加圧する射出法であるため、加圧シリンダ11から本体容器2に至るまでの圧力損失をできるだけ低減するのが望ましい。圧縮空気の流路の抵抗を小さくするために、加圧シリンダ11から本体容器2に至る流路の断面積を大きくするのがよい。また、加圧シリンダ11から本体容器2に至るまでの容積を小さくするために、加圧シリンダ11、排気弁13および本体容器2を互いに近接させるのが好ましい。加圧シリンダ11、排気弁13および本体容器2を一つのブロックに一体に形成するのが好ましい。
【0040】
一方、加圧シリンダ11と駆動シリンダ12とを一体に形成するのも好ましい。ピストンロッドを共用しやすく、また、両シリンダ11、12を同軸状に形成しやすいからである。
【0041】
前述した加圧気体供給装置の実施形態は、ダイカスト装置に適用される場合を例示しているが、適用対象としてはダイカスト装置に限定されない。射出成形用加圧装置、バルジ成型用加圧装置、板金加工や穿孔加工のためのプレス装置、緩衝用のアクティブダンパ等の加圧手段としても適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の加圧気体供給装置はダイカスト装置に適用する上で有用である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の加圧気体供給装置の一実施形態をダイカスト装置に適用した例を概略的に示す一部断面図である。
【図2】従来の加圧装置(流体圧シリンダ)が用いられたダイカスト装置の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0044】
1・・・・ダイカスト装置
2・・・・本体容器
3・・・・射出孔
4・・・・射出ノズル
5・・・・ヒータ
6・・・・金属供給孔
7・・・・送りローラ
8・・・・レベルセンサ
9・・・・加圧気体供給口
10・・・・加圧気体供給装置
11・・・・加圧シリンダ(第一空圧シリンダ)
12・・・・駆動シリンダ(第二空圧シリンダ)
13・・・・排気弁
14・・・・(加圧シリンダの)ピストン
15・・・・(駆動シリンダの)ピストン
16・・・・ピストンロッド
17・・・・(駆動シリンダの)第一ポート
18・・・・(駆動シリンダの)第二ポート
19・・・・電磁切換弁
20・・・・(加圧シリンダの)ヘッド側ポート
21・・・・ロック装置
22・・・・被係合部
23・・・・係合部
24・・・・フック部材
25・・・・バネ部材
26・・・・駆動装置
60・・・・型キャビティ
D・・・・収容ドラム
MM・・・・溶融金属
MW・・・・金属ワイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧対象に加圧気体を供給するための加圧シリンダと、
該加圧シリンダのピストンを、気体を圧縮する方向に移動することが不能なロック状態と、移動することが可能な作用状態とに切り替えることが可能なロック装置とを備えてなる加圧気体供給装置。
【請求項2】
前記加圧シリンダを駆動するための駆動シリンダをさらに有しており、
該駆動シリンダのピストンロッドと加圧シリンダのピストンロッドとが同軸状に連結されており、
駆動シリンダのピストンが加圧シリンダのピストンより大きな受圧面積を有するように構成されてなる請求項1記載の加圧気体供給装置。
【請求項3】
加圧シリンダと加圧対象との間に配設された排気弁をさらに有しており、
該排気弁が閉弁しているときには加圧対象と加圧シリンダ内とが連通し、開弁したときには加圧対象と加圧シリンダ内とが大気に開放されるように構成されてなる請求項1記載の加圧気体供給装置。
【請求項4】
前記駆動シリンダのピストンロッドが駆動シリンダのボトム側端部を貫通して外方へ突出しており、ピストンロッドの突出した端部に被係合部が形成されており、
前記ロック装置が、前記被係合部に係合しうる鉤型の係合部が形成された揺動可能なフック部材と、該フック部材を前記被係合部と係合する係合位置および係合が解除された非係合位置に揺動させる駆動装置とを備えてなる請求項2記載の加圧気体供給装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−275958(P2007−275958A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−107411(P2006−107411)
【出願日】平成18年4月10日(2006.4.10)
【出願人】(506121928)
【Fターム(参考)】