説明

加圧浮上分離装置

【課題】凝集反応水中の凝集物が高分子凝集助剤によって成長し、これに対して気泡が十分に付着し、効率良く浮上分離処理を行うことができる加圧浮上分離装置を提供する。
【解決手段】凝集反応水は、流出口16を通って混合室20に流入し、槽体底面3bの幅方向中央に沿って流れる。凝集処理水に供給管27から高分子凝集助剤溶液が添加された後、この水とノズル23からの加圧水とは混ざり合いながら隔壁2に沿って上昇する。上昇流は、傾斜した隔壁上部2bに案内されて仕切壁1側へ流れ方向を変え、仕切壁1の近傍に到ると該隔壁1に沿って下降する。隔壁2の上端から仕切壁1へ向う流れは、隔壁2近傍の幅方向中央付近から仕切壁1の幅方向の両側へ分岐する流れとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凝集剤によって凝集処理された凝集反応水に対し、加圧水及び高分子凝集助剤を添加して加圧浮上分離処理する加圧浮上分離装置に係り、特に槽体内を隔壁によって区画して混合室及び浮上分離室を形成した加圧浮上分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
槽体内を隔壁によって区画して混合室と浮上分離室とを形成した加圧浮上分離装置が特公平7−38984号公報に記載されている。第8図は同号公報の図1に記載の槽体を示す縦断面図、第9図及び第10図は同号公報の図2,3に記載の混気水管と排水管との配置関係図である。
【0003】
槽体81内が隔壁83によって混合室82と浮上分離室84とに区画されている。排水は、隔壁83と反対側の混合室壁面82aから突設された排水導入管85を介して混合室82内に下向きに導入される。なお、排水導入管85の末端はT字形となっており、水平方向に延在した排水流出用のスリット状開口86から排水が下向きにカーテン状に流出する。
【0004】
空気が溶解した加圧水は、加圧水管88から水平方向に該混合室82内に供給される。加圧水管88の末端もT字状となっており、多数の吐出口89が側方向を指向して開設されている。加圧水管88は排水導入管85よりも下位に設けられている。排水は、排水導入管85から下向きに且つカーテン状に流出し、混合室82の側面82aに沿って下向きに流れ、この途中で加圧水管88から加圧水が添加され、合流する。この合流した水は、混合室壁面82aから離れる方向に流れ、次いで隔壁83に沿って上昇し、混合室82内を循環する。循環途中の水の一部が、隔壁83の上端を乗り越えるようにして浮上分離室84へ流出し、浮上分離処理される。浮上分離されたスラッジは、かき取り機90によってかき取り物受け91へかき出され、排出される。
【0005】
この特公平7−38984号公報には、排水として凝集処理水を用いる点及び高分子凝集助剤を添加する点は記載されていないが、懸濁固形物を凝集させた凝集反応水を浮上槽に導入するための配管に、加圧水と高分子凝集助剤を添加することが特公平3−12949号公報に記載されている。
【特許文献1】特公平7−38984号公報
【特許文献2】特公平3−12949号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
I. 上記特公平7−38984号の加圧浮上分離装置にあっては、排水導入管85からカーテン状に下向きに吐出された排水に対し、加圧水が水平方向に添加されて合流する。そのため排水導入管85からの下向きの排水流れが水平方向に変えられ、排水が混合室底面82bに達しないうちに混合室壁面82aから離れるようになり易い。しかも、水平方向に吐出した加圧水は気泡を多量に含んだ低比重のものであるから、混合室壁面82aから離れていった加圧水は隔壁83に到達する前に上昇を開始するようになる。このため、混合室82内の循環流のうち隔壁83に沿う流れが弱くなり、混合室82内の隅部では循環が不十分となり易く、気泡付着が不十分なフロックが生じ易い。
【0007】
排水導入管85から下向きに流出した排水を混合室底面82bにまで到達させるために、排水の導入速度を高くすることも考えられるが、このようにすると、加圧水と合流した水が比較的高速で混合室底面82bに衝突する。そのため、排水中のスラッジに付着した気泡が、この混合室底面82bとの衝突時の衝撃によってスラッジから離反し易い。
【0008】
また、加圧水管88の開口89からの流出速度を小さくし、これによって排水導入管85からの下向きの排水流れ方向を保つようにすることも考えられるが、このように加圧水の吐出速度を小さくすると、加圧水は排水のカーテン状下降流に対し単に沿って流れるようになり、加圧水と排水とが十分に混ざり合わない。
【0009】
このようなことから、特公平7−38984号の加圧浮上分離装置は、スラッジに対して気泡が十分には付着しにくく、浮上分離効率が十分に高くはない。
【0010】
II. 上記特公平3−12949号のように、凝集反応水に対し配管途中で加圧水及び高分子凝集助剤を添加して浮上槽に導入する場合、凝集反応水と加圧水及び高分子凝集助剤との混合が十分に行われないうちに浮上槽に流入してしまうため、内部に気泡を含有した気泡含有フロックが形成されにくい。そのため、フロックの浮上分離効率が良くない。
【0011】
本発明は、槽体内に設けられた混合室において、凝集反応水中の凝集物と高分子凝集助剤と気泡とを同時に十分に混合して接触させることにより、内部に多くの気泡を含有した気泡含有フロックを形成し、効率良く浮上分離処理を行うことができる加圧浮上分離装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1の加圧浮上分離装置は、凝集反応水と加圧水とを混合室にて混合した後、浮上分離室にて浮上分離処理する加圧浮上分離装置であって、槽体内が隔壁によって区画されることによって混合室と、浮上分離室とが設置され、該隔壁は、該槽体の底面から立ち上がり、その上端は槽体の水面位よりも下位に位置し、これによって、該隔壁の上側を通って、該混合室から浮上分離室へ水が流出するようになっている加圧浮上分離装置において、該混合室に気体を溶解した加圧水を吐出する加圧水吐出口が設けられており、該混合室内に高分子凝集助剤を添加する添加手段が設けられていることを特徴とするものである。
【0013】
請求項2の加圧浮上分離装置は、請求項1において、前記加圧水吐出口は、該混合室の底部のうち、該隔壁の近接部に、加圧水を上向きに吐出するように設けられており、該加圧水吐出口へ向って該混合室の下部に凝集反応水を流出させるための流出口が設けられていることを特徴とするものである。
【0014】
請求項3の加圧浮上分離装置は、請求項1または2において、該隔壁は、上部を除いて略鉛直であり、該隔壁の上部は、前記混合室側へ傾斜していることを特徴とするものである。
【0015】
請求項4の加圧浮上分離装置は、請求項3において、前記加圧水吐出口は、傾斜した該隔壁の該上部の鉛直下方領域に配置されていることを特徴とするものである。
【0016】
請求項5の加圧浮上分離装置は、請求項2ないし4のいずれか1項において、前記高分子凝集助剤の添加手段は高分子凝集助剤を上向きに吐出する供給口であり、該供給口は前記吐出口の近傍であって且つ該吐出口よりも上位に設けられていることを特徴とするものである。
【0017】
請求項6の加圧浮上分離装置は、請求項5において、該供給口の上端と該吐出口の上端とのレベル差が150mm以内であることを特徴とするものである。
【0018】
請求項7の加圧浮上分離装置は、請求項1ないし6のいずれか1項において、前記槽体内が仕切壁と前記隔壁によって区画されることによって凝集反応室と、前記混合室と、前記浮上分離室とがこの順に設置され、該凝集反応室と混合室との間に該仕切壁が配置され、該混合室と浮上分離室との間に該隔壁が配置され、該仕切壁の下部に、該凝集反応室から該混合室の底面に沿うように凝集反応水を流出させるための前記流出口が設けられており、該流出口からの流出方向の延長方向に前記加圧水吐出口が配置されていることを特徴とするものである。
【0019】
請求項8の加圧浮上分離装置は、請求項7において、前記高分子凝集助剤の供給口は、前記加圧水吐出口よりも前記流出口側に設置されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明(請求項1)の加圧浮上装置にあっては、混合室内で凝集反応水中の凝集物と気泡と高分子凝集助剤とが、勢いのある加圧水の流れにより同時に十分に混合されるため、内部に多くの気泡を含有した気泡含有フロックが効率よく形成される。
【0021】
凝集反応室からの凝集反応水中の凝集物は、SSによる負電荷と、凝集剤由来物質による正電荷が相殺して、全体として、弱正電荷を帯びている。高分子凝集助剤としてよく使用される陰イオン性ポリマーは、負電荷を持っており、これにより弱正電荷をもつ凝集物を粗大化する役割を持つ。微細な気泡も高い負電荷を持っており、弱正電荷をもつ凝集物と付着する。
【0022】
凝集物と高分子凝集助剤がまず良く接触し撹拌されて十分にフロックが粗大化した後に、気泡が接触する場合には、フロックに気泡が良く付着せず処理性能が悪い。また、凝集物と気泡がまず良く接触し撹拌され凝集物に気泡が付着したのち、高分子凝集助剤が接触する場合には、粗大なフロックとならず、フロックの内部に気泡があるのではなく、凝集物の周囲に単に気泡が付着するだけとなるため、凝集物から気泡が外れやすく、処理性能が悪くなる。
【0023】
本発明の加圧浮上分離装置にあっては、凝集物と高分子凝集助剤と気泡が同時に良く混合し接触されることで、内部に気泡を含有した粗大な気泡含有フロックの形成が促進され、浮上分離性能が向上する。
【0024】
請求項2の加圧浮上分離装置にあっては、混合室底部の隔壁近傍から上方に向って加圧水が上方に向って吐出するので、該混合室内では、隔壁に沿う上昇流を有した上下循環流が形成される。
【0025】
流出口を通って混合室内に流入した凝集反応水は、この循環の途中で、高分子凝集助剤と、混合室底部の加圧水吐出口から吐出された加圧水と混ざり合う。この混ざり合った水は、隔壁に沿って上昇した後、主として隔壁と反対側の混合室内壁面に沿って下降するようにして混合室内を循環し、この間に凝集フロックに対し加圧水から生じた微細な気泡が付着すると同時に凝集反応水中の凝集物が高分子凝集助剤によって成長することで、内部に気泡を含有した大きなフロックになる。この気泡含有フロックが隔壁の上側を通って浮上分離室内に流入し、効率良く浮上分離処理される。
【0026】
請求項2の加圧浮上分離装置にあっては、このように、加圧水吐出口に向って流れてきた凝集反応水に対し吐出口から上向きに吐出された加圧水が添加される。この加圧水の吐出方向が上向き方向であると共に、加圧水は気泡を多量に含んだ低比重のものであるため、凝集反応水と加圧水との混合水は隔壁に沿ってスムーズに上向きに流れる。
【0027】
この吐出口上方領域を上昇してきた上昇流は、混合室上部において隔壁から離れる方向に流れ方向を変えるが、この際、隔壁の幅方向に流れ方向が分散するようになる。この結果、混合室内の循環水流は、上下方向に単純に循環するのではなく、この循環途中で隔壁幅方向に分離したり、流入する凝集反応水に合流したりを繰り返すようになり、混合室内の全域において加圧水と被処理水とが十分に混ざり合う。この結果、気泡含有フロックの成長が混合室内の全体にわたって十分に行われるようになる。
【0028】
請求項3のように隔壁の上部を混合室側に傾斜させると、隔壁に沿って上昇してきた水が隔壁から離れるように流れ方向を変えるので、混合室内の水が浮上分離室へ短絡的に流出することが防止され、フロックに対して気泡が極めて十分に付着するようになる。なお、隔壁の上部以外は略鉛直であるため、吐出口から上向きに吐出した加圧水に伴って、混合室内の水が該隔壁に沿ってスムーズに上昇する。
【0029】
請求項4のように、傾斜した隔壁の上部の鉛直下方領域に加圧水吐出口を設けておくと、該吐出口から吐出した加圧水による上昇流が隔壁上部の傾斜部に当り、隔壁から離れる方向へ流れ方向を変えるようになる。そのため、上昇してきた水が隔壁を短絡的に乗り越えて浮上分離室へ流れ込むことが確実に防止される。
【0030】
請求項5,6の加圧浮上分離装置によると、吐出口上方における上昇流により、高分子凝集助剤が吐出口からの加圧水を含む混合室内の水と十分に混ざり合うようになる。
【0031】
請求項7の加圧浮上分離装置にあっては、凝集反応室内の凝集反応水が、仕切壁の下部の流出口を通って混合室内に流入し、該混合室の底面に沿って加圧水吐出口へ向って流れる。この流出口からの流出水と混合室内の底面に沿う循環流との流れ方向が合致するため、循環流速が大きくなる。
【0032】
請求項8の加圧浮上分離装置にあっては、高分子凝集助剤溶液は加圧水の大きな流れの勢いに引き込まれ、加圧水と混ざりながら上方向に流れる。これにより、比重が大きく粘度が大きい高分子凝集助剤溶液が沈んで溜ってしまうことなく安定的にフロックの成長及び浮上分離効率が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。第1図は実施の形態に係る加圧浮上分離装置の長手方向の縦断面図、第2図は仕切壁付近の構成を示す断面斜視図、第3図は混合室内の水の循環状況を示す断面図、第4図は第3図のIV−IV線断面図、第5図は第3図のV−V線断面図である。
【0034】
平面視形状が略長方形の槽体3内が、仕切壁1及び隔壁2によって区画されることにより、凝集反応室10、混合室20及び浮上分離室30がこの順に形成されている。各室10,20,30は槽体3の長手方向に配列されており、隔壁1,2は槽体3の短手方向すなわち幅方向に延設されている。
【0035】
仕切壁1の下部の幅方向の中央部に、室10,20を連通する流出口16が形成されている。仕切壁1の上端は、槽体3間の水面より上方に延出している。
【0036】
隔壁2は、槽体底面3bから立設され、その上端は槽体3間の水面よりも下位となっている。
【0037】
各壁1,2は槽体の両側面3aに連なっている。
【0038】
凝集反応室10へは、原水配管11を介して原水が導入されると共に、凝集剤及びアルカリ剤が各々の供給配管12,13を介して供給可能とされている。凝集反応室10内の水のpHを検知するためのpH計14が設置され、このpH計14の検出値が所定範囲となるようにアルカリ剤薬注ポンプ(図示略)が作動される。
【0039】
凝集剤としてはPAC等の無機凝集剤の他、各種の有機凝集剤も用いることができ、2種以上の凝集剤を併用してもよい。凝集剤は、凝集剤薬注ポンプ(図示略)によって所定量添加される。凝集反応室10内の水は撹拌機15によって撹拌され、凝集処理される。
【0040】
凝集反応水は、流出口16を通って混合室20に流入し、該混合室20の幅方向中央付近を槽体底面3bに沿って流れる。この槽体底面3bのうち、幅方向中央かつ隔壁2に比較的近接して、加圧水吐出用のノズル23が設けられている。ノズル23の上端が加圧水吐出口である。該ノズル23の先端は、槽体底面3bから若干突出している。
【0041】
このノズル23の近傍であって、且つ該ノズル23よりも流出口16側に高分子凝集助剤溶液の供給管27が設けられている。この供給管27は高分子凝集助剤溶液を上向きに吐出させるように上向きに設置されている。この供給管27の上端が高分子凝集助剤溶液の供給口である。
【0042】
高分子凝集助剤としては、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミドの部分加水分解塩、アルギン酸ナトリウム、CMCナトリウム塩等の陰イオン性ポリマーを使用することが望ましい。
【0043】
この供給管27の上端のレベルはノズル23の上端よりも高い。
【0044】
この実施の形態では、浮上分離室30内の下部から配管21を介して水を取り出し、加圧水製造装置22にて空気を加圧溶解させ、この加圧水をノズル23へ供給する。
【0045】
この実施の形態では、ノズル23及び供給管27は、後述する傾斜した隔壁上部2bの鉛直下方領域に配置されている。また、この実施の形態では、ノズル23及び供給管27は槽体底面3bの幅方向の中央に1個のみ設けられている。
【0046】
流出口16からの凝集処理水に対し供給管27からの高分子凝集助剤溶液が添加され、これに対しノズル23からの加圧水が添加され、これらが混ざり合いながら主として隔壁2の幅方向中央付近に沿って上昇する。隔壁2は、上部2bを除き略鉛直な(好ましくは、鉛直面に対し±10゜以内の)鉛直部2aとなっており、該上部2bは仕切壁1側へ傾斜している。
【0047】
上記上昇流は、隔壁2の鉛直部2aに沿って略鉛直上方へ向って流れる。この上昇流は、次いで、傾斜した隔壁上部2bに案内されて仕切壁1側へ流れ方向を変え、仕切壁1の近傍に到ると該仕切壁1に沿って下降する下降流となる。仕切壁1の下部にまで流れてきた下降流は、流出口16からの凝集処理水と合流しながら槽体底面3bを隔壁2へ向って流れる。このようにして、混合室2内に第3図の如く上下方向の循環流が形成される。そして、循環している間に、凝集物に対し加圧水から生じた微細な気泡が付着すると同時に凝集反応水中の凝集物が高分子凝集助剤によって粗大化することで、内部に気泡を含有した大きなフロックになる。
【0048】
なお、この混合室内の水の循環状況について第3図〜第5図を参照してさらに詳細に説明する。
【0049】
流出口16から凝集反応水が混合室20内に流入し、この流入した水は槽体底面3bに沿って該槽体幅方向の中央付近を隔壁2へ向って流れる。
【0050】
この槽体底面3bに沿う流れに対し、供給管27から高分子凝集助剤溶液が添加されるとともに、ノズル23から加圧水が上向きに添加される。高分子凝集助剤は加圧水の大きな勢いに引き込まれ、加圧水に混ざりながら上方向に流れる。ノズル23は、隔壁2に比較的近接して配置されているので、隔壁2に当って流れを上向きに変えようとする流れと、この上向きの加圧水流とが重畳することにより、隔壁2の近傍の槽体幅方向中央部付近において、上方に向う部分的に比較的高流速の上昇流が形成される。隔壁2の両側付近では、比較的低流速の上昇流が形成されるか、又は混合室20の幅が大きい場合等には、下降流が形成される。
【0051】
この隔壁2の幅方向中央付近に沿う上昇流は、傾斜した隔壁上部2bに当って仕切壁1側へ流れ方向を変えて混合室20の水面付近を仕切壁1へ向って流れるが、隔壁2の幅方向中央付近の上昇流速が幅方向の両側よりも大きいので、仕切壁1へ向う流れは、第5図のように、隔壁2近傍の幅方向中央付近から仕切壁1の幅方向全体へ広がる放射方向流れとなる。仕切壁1の全体に広がった流れは、次いで仕切壁1に沿って下降し、流出口16からの流れに伴って槽体底面3bの幅方向中央付近に集束するようにして隔壁2へ向って流れる。そして、隔壁2の近傍に到ると、前記の通り幅方向中央側が高流速となるようにして隔壁2に沿って上昇する。
【0052】
このように、混合室20内では隔壁2に沿う上昇流と隔壁1に沿う下降流との上下循環に加え、隔壁2に沿って上昇した後、隔壁2から離反するに従って幅方向に広がり、次いで、仕切壁1に沿って下降した後、幅方向中央に集束する幅方向の循環とが重畳した上下及び左右循環流が形成される。このため、混合室2内で凝集処理水及び高分子凝集助剤溶液と加圧水とが万遍なく混ざり合うようになる。
【0053】
しかも、隔壁上部2bが仕切壁1側へ傾斜しており、隔壁2に沿う上昇流が仕切壁1側へ流れ方向を変えるので、上昇してきた水が短絡的に隔壁2を乗り越えて浮上分離室30へ流れることがない。
【0054】
この結果、凝集処理水及び高分子凝集助剤溶液と加圧水とが十分に混ざり合い、フロックに気泡が十分に含有された状態で、フロックが浮上分離室30へ供給され、フロックが効率よく浮上分離される。
【0055】
しかも、この実施の形態では、流出口16からの凝集反応水に対し高分子凝集助剤溶液が供給管27から添加され、その後加圧水がノズル23から添加される。このため、凝集反応水中の凝集物に気泡が付着すると同時に、凝集物に対し高分子凝集助剤が接触し、凝集物表面に対し高分子凝集助剤が結合し易い。この結果、凝集反応水中の小さな凝集物同士が高分子凝集助剤によって結合され、成長し易くなる。この成長した粗大フロックは、気泡をフロック内部に含有しているため、浮上速度が大きく、フロックから気泡が分離しにくい。このため、効率良く浮上分離処理される。
【0056】
浮上したフロックは、スキマーやスクレーバ等のかき取り機31によってスラッジ受入室32へ排出され、排出管33を介して取り出される。
【0057】
なお、浮上分離室30内で沈降したスラッジは、配管34を介して排出される。
【0058】
清浄水は、浮上分離室30の上下方向の途中から配管35によって抜き出され、水位調整槽(図示略)を介して取り出される。この水位調整槽は、槽体3内の水位を調整するためのものである。
【0059】
なお、第1図〜第5図に図示の実施の形態における好適な寸法や運転条件の一例を次に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0060】
流出口16の上下寸法は40〜250mmあるいは水深の5〜30%程度が好適である。流出口16の幅は、仕切壁1の幅の3〜50%、特に6〜20%程度であることが好ましい。
【0061】
混合室20の容積は、浮上室24(混合室20と浮上分離室30とをあわせて浮上室とする)の容積の2〜30%程度が好適である。混合室20内の平均滞留時間は10〜60秒、特に15〜45秒程度が好ましい。
【0062】
隔壁2の上端と水面との距離は50〜240mmあるいは水深の5〜30%程度が好適である。
【0063】
隔壁2の上部2bの鉛直からの傾斜角度は30〜60゜程度が好適である。
【0064】
隔壁2の最上端(隔壁上部2bの上端)と仕切壁1との水平距離は20〜200mmあるいは浮上室24の長手方向長さの2〜10%程度が好適である。
【0065】
この隔壁2の最上端と仕切壁1との間における平均上昇流速は0.01〜0.1m/sec程度が好適である。
【0066】
隔壁2の傾斜した上部2bの鉛直方向の長さは30〜300mmあるいは、隔壁2の鉛直方向の全高の5〜30%程度が好適である。
【0067】
ノズル23の混合室底面からの突出長さhは50〜400mmあるいは隔壁2の鉛直方向の全高の5〜30%程度が好適である。
【0068】
ノズル23は直管状であり、槽体底面3bよりも下方に減圧弁が設けられていることが好ましい。この減圧弁よりも上方のノズル23は、上端に到るまで鉛直な直管状とされるのが好ましい。
【0069】
ノズル23の上端の吐出口と供給管27の上端の供給口とのレベル差は150mm以下、特に20〜100mm程度が好ましい。
【0070】
ノズル23と供給管27との水平方向距離は100mm以下特に50mm以下であることが好ましく、できるだけノズル23と供給管27の距離が近い方が高分子凝集助剤の混合効率が良くなる。
【0071】
供給管27の混合室底面からの突出長さHと前記ノズル23の突出長さhとの比h/Hは0.1〜0.4程度が好ましい。
【0072】
上記実施の形態では、流出口16は方形の開口よりなるが、半円形ないし半楕円形、あるいは、円形や横長の楕円形であってもよく、多角形であってもよい。
【0073】
この実施の形態では、凝集反応室10の底面と混合室20の底面とが面一状であるため、凝集反応室10からの凝集処理水は槽体底面3bに沿って流れを乱すことなく流出口16を通り抜け、混合室20の底面に沿って幅方向中央部を流れる。この流れが横方向や上方向に広がるのを防ぐために、流出口16に比較的短いトンネル状のガイド部材を接続してもよい。
【0074】
上記実施の形態では、流出口16、供給管27及びノズル23は1個ずつ設けられているが、第6,7図のように2個ずつ設けられてもよく、3個以上ずつ設けられてもよい。これらを2個ずつ設けた場合の水の流れ状況を第7図(a),(b)に示す。なお、第7図(a)は前記第5図と同様部分の水平断面図、第7図(b)は同(a)のB−B線断面図である。
【0075】
第6,7図において、各流出口16から流出してきた凝集反応水は、それぞれの前方に位置するノズル23へ向って流れ、その途中で高分子凝集助剤溶液が供給管27から添加される。各ノズル23付近に達した水の流れは、各ノズル23からの上向きの加圧水流によって隔壁2に沿いながら上方に流れ、その後、循環する。この場合、上昇流は各ノズル23の上方付近に形成される。また、下降流は、槽体3の両側面3a,3aに沿う領域と、ノズル23,23間の領域とに形成される。
【0076】
このため、槽体3の幅が大きい場合でも、混合室20内の全体にわたって循環流が満遍なく形成され、フロックの成長及び気泡付着が十分に進行する。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】実施の形態に係る加圧浮上分離装置の長手方向の縦断面図である。
【図2】仕切壁付近の構成を示す断面斜視図である。
【図3】混合室内の水の循環状況を示す断面図である。
【図4】図3のIV−IV線断面図である。
【図5】図3のV−V線断面図である。
【図6】別の実施の形態に係る仕切壁付近の断面斜視図である。
【図7】図6の実施の形態における循環流の説明図である。
【図8】従来例を示す断面図である。
【図9】図8の排水導入管と加圧水管とを示す斜視図である。
【図10】図8の排水導入管と加圧水管とを示す断面図である。
【符号の説明】
【0078】
1 仕切壁
2 隔壁
3 槽体
10 凝集反応室
15 撹拌機
16 流出口
20 混合室
22 加圧水製造装置
23 ノズル
27 高分子凝集助剤溶液の供給管
30 浮上分離室
31 かき取り機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凝集反応水と加圧水とを混合室にて混合した後、浮上分離室にて浮上分離処理する加圧浮上分離装置であって、
槽体内が隔壁によって区画されることによって混合室と、浮上分離室とが設置され、
該隔壁は、該槽体の底面から立ち上がり、その上端は槽体の水面位よりも下位に位置し、これによって、該隔壁の上側を通って、該混合室から浮上分離室へ水が流出するようになっている加圧浮上分離装置において、
該混合室に気体を溶解した加圧水を吐出する加圧水吐出口が設けられており、
該混合室内に高分子凝集助剤を添加する添加手段が設けられていることを特徴とする加圧浮上分離装置。
【請求項2】
請求項1において、前記加圧水吐出口は、該混合室の底部のうち、該隔壁の近接部に、加圧水を上向きに吐出するように設けられており、
該加圧水吐出口へ向って該混合室の下部に凝集反応水を流出させるための流出口が設けられていることを特徴とする加圧浮上分離装置。
【請求項3】
請求項1または2において、該隔壁は、上部を除いて略鉛直であり、
該隔壁の上部は、前記混合室側へ傾斜していることを特徴とする加圧浮上分離装置。
【請求項4】
請求項3において、前記加圧水吐出口は、傾斜した該隔壁の該上部の鉛直下方領域に配置されていることを特徴とする加圧浮上分離装置。
【請求項5】
請求項2ないし4のいずれか1項において、前記高分子凝集助剤の添加手段は高分子凝集助剤を上向きに吐出する供給口であり、該供給口は前記吐出口の近傍であって且つ該吐出口よりも上位に設けられていることを特徴とする加圧浮上分離装置。
【請求項6】
請求項5において、該供給口の上端と該吐出口の上端とのレベル差が150mm以内であることを特徴とする加圧浮上分離装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項において、前記槽体内が仕切壁と前記隔壁によって区画されることによって凝集反応室と、前記混合室と、前記浮上分離室とがこの順に設置され、
該凝集反応室と混合室との間に該仕切壁が配置され、
該混合室と浮上分離室との間に該隔壁が配置され、
該仕切壁の下部に、該凝集反応室から該混合室の底面に沿うように凝集反応水を流出させるための前記流出口が設けられており、該流出口からの流出方向の延長方向に前記加圧水吐出口が配置されていることを特徴とする加圧浮上分離装置。
【請求項8】
請求項7において、前記高分子凝集助剤の供給口は、前記加圧水吐出口よりも前記流出口側に設置されていることを特徴とする加圧浮上分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−223992(P2006−223992A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−40855(P2005−40855)
【出願日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】