説明

加工情報共有システムおよびその方法

【課題】 最適加工条件のデータを複数のユーザが共有するシステムおよびその方法
【解決手段】 切削力、切削温度、面粗さ、工具摩耗、直径を測定可能なセンサ群10を含む工作機械30と、それにより得られた加工情報X1〜Xnを検索自在に記憶するデータベース40と、工具材種、工具形状、切削速度、切り込み深さ、送り速度、切削油の何れかの項目を材料別に異なる加工条件にした組み合わせによる実験計画を作成する実験計画作成プログラム50と、それにより計画された実験を前記工作機械30に実行させる制御手段60と、加工情報X1〜Xnを分析して高度情報Y1〜Ynに変換する加工情報分析プログラム70と、それにより整理され前記データベース40に記憶された高度情報Y1〜Ynから最適加工条件を探索する最適加工条件探索プログラム80と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工条件が不明な材料または工具に対する最適な組み合わせの切削試験によって得られた加工情報を、プログラムされたコンピュータを用いて複数のユーザが共有する加工情報共有システムおよびその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
前工程で処理(製造)された製品の品質を効果的に向上させるために、歩留まり検査等の情報を関係企業間で共有することで、フィードバックできる複数の処理系間の情報共有方法及びそのシステム、並びにコンピュータプログラムに関する技術として、複数の企業間において、インターネットなどのネットワークを介してデータの送受信を行うものがあった。例えば、製品検査企業の情報処理手段と製品加工企業の製品加工企業サーバ群を含む製品加工企業データベース格納手段とで構成されるものがあった(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方、従来にはなかった次世代材料が開発され、一般部品に採用されている。例えば、次世代材料のコバールは、硬質ガラスと膨張係数を等しくし、鉄、ニッケル、コバルトから構成された合金である。このコバールを用いて作られた線材や管は、硬質ガラスに封入したり接触させたりすることができるため、主に電子管材料や光通信関連部品に使われている。
また、インコネルは、ニッケルをベースにした合金である。このインコネルは、耐熱性、耐食性に優れているため、航空機エンジンや原子力発電の機器に使用されている。
【特許文献1】特開2004−145521(段落0006、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、次世代材料の中には、従来の材料の切削条件では切削できない異種の難切削材もある。例えば、NC旋盤等の工作機械を使用して被加工物(ワーク)の外径を切削する場合、ワークに深穴を加工する場合、あるいは、フライス盤、マシニングセンタ(MC)を使用してワークの外周をフライス加工する場合、従来の難切削材(ステンレスやチタン等)を加工するような切削条件では、きれいな加工面が得られないという問題があった。
また、最適な切削条件が判らない、すなわち加工情報(以下、略して「データ」ともいう)がないため、経験則や勘の適用もないままに不適切な切削条件で加工を行えば、工具の寿命を著しく縮めてしまうという問題もあった。さらに、最適な切削条件を求めるためにサンプル材料による切削試験を行う場合、材料と工具がともに高価であるため、切削試験のコストが高く付き、採算が合わないという問題があった。
【0005】
すなわち、難削材とされる次世代材料には、以下の問題点が未解決のままに含まれていた。
1.加工しにくい。
2.工具の寿命が短い。
3.きれいな加工面が得られない。
4.工作機械の運転条件の決定が困難。
5.僅かな条件の違いで、加工ができなくなる。
6.材料、工具とも高価で、試験切削が高コスト。
7.新材料・新工具が次々に開発される。
【0006】
また、データ供給の必要性として、以下の理由があった。
1.地域で協力関係にある企業群に必要な精密小物用データが不足している。
2.既存データだけでは精密小物に適用できないことがある。
3.工具・材料メーカーにとってはデータの有無で開発経費が左右される。
4.企業独自に取得したデータは企業秘密なので公開は困難で公益に寄与させにくい。
5.最適加工条件(以下、「最適データ」または「最適解」ともいう)の存在する可能性が高くても、大規模かつ合理的な探索システムが未確立であり、企業独自の探索が困難であった。
6.工具・材料ともに高価であるため、重複する条件での切削試験を避けることで膨大な試験費用を節減し公益に資することが望まれていた。
7.生産活動中の生産設備を、試験のために割り当てる無駄を省くことが望まれていた。
8.工作機械にはデータ収集用のセンサが、通常は設置されていない。また、設置することもできなかった。
【0007】
また、これまでのワーク測定装置やワークの表面粗さ測定装置が工作機械に組み込まれていた目的は、加工ワークを良品に仕上げるためであり、加工不良品を最小に抑えるために加工不良品が出る前に、事前に工具(バイト)のチップ交換等の対策を講じるためであった。これは品質管理や、生産管理の向上対策であり、最適な切削条件を見つけるためのものではなかった。
なお、チップとは、超硬合金で形成された刃部の小片をいう。バイトの場合は1個であるが、フライスの場合は複数個から構成される。消耗により交換が可能で、スローアウェイチップともいい、工具の先端部に固定される。
【0008】
そこで、本発明は、これらの問題点を解決するために創案されたものであり、表面粗さが小さい、きれいな加工面の最適加工条件を得るために、効率良く最短の時間で最適加工条件の実験データが得られ、このデータをプログラムされたコンピュータを用いて複数のユーザにより共有することができる加工情報共有システムおよびその方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、プログラムされたコンピュータ(90)を用いて複数のユーザ(1)が加工情報(X1〜Xn)を共有する加工情報共有システム(100)であって、
切削力、切削温度、面粗さ、工具摩耗、直径の何れか1項目以上を測定可能なセンサ群(10)および旋盤機能(20)を含む工作機械(30)と、前記センサ群(10)により得られた加工情報(X1〜Xn)を検索自在に記憶するデータベース(40)と、工具材種、工具形状、切削速度、切り込み深さ、送り速度、切削油の何れかの項目を材料別に異なる加工条件にした組み合わせによる実験計画を作成する実験計画作成プログラム(50)と、前記実験計画作成プログラム(50)が作成した組み合わせによる実験を前記工作機械(30)に実行させる制御手段(60)と、前記加工情報(X1〜Xn)を分析して高度情報(Y1〜Yn)に変換する加工情報分析プログラム(70)と、前記加工情報分析プログラム(70)により整理され前記データベース(40)に記憶された高度情報(Y1〜Yn)から最適加工条件を探索する最適加工条件探索プログラム(80)と、を備えたことを特徴とする加工情報共有システム(100)である。
【0010】
請求項1に係る発明によれば、実験計画作成プログラム(50)により、「工具材種」、「工具形状」、「切削速度」、「切り込み深さ」、「送り速度」、「切削油」の加工条件を異なる組み合わせにした実験計画を材料別に作成する。詳しくは、工具材料の種類を表す「工具材種」、材料の回転速度を意味する「切削速度」、材料を削る深さを意味する「切り込み深さ」、工具の移動速度を意味する「送り速度」、冷却や潤滑に寄与する「切削油」の各項目を加減した場合の組み合わせを効率良く計画立案する。
実験計画作成プログラム(50)が作成した組み合わせの実験を、制御手段(60)が工作機械(30)に実行させる。
工作機械(30)には旋盤機能(20)およびセンサ群(10)を含んでおり、そのセンサ群(10)により、切削力、切削温度、面粗さ、工具摩耗、直径の何れか1項目以上を測定した加工情報(X1〜Xn)を、検索自在のデータベース(40)に記憶する。
【0011】
センサ群(10)により得られた加工情報(X1〜Xn)は、加工情報分析プログラム(70)により分析され、高度情報(Y1〜Yn)に変換、整理されて前記データベース(40)に記憶される。
最適加工条件探索プログラム(80)を実行すれば、高度情報(Y1〜Yn)から最適加工条件が探索される。
このように、実験計画作成プログラム(50)と、加工情報分析プログラム(70)と、最適加工条件探索プログラム(80)と、を含んでプログラムされたコンピュータ(90)により、加工情報(X1〜Xn)およびその利用価値を高めて材料別の最適加工条件が探索されるように整理された高度情報(Y1〜Yn)を、複数のユーザ(1)が共有できる。
【0012】
請求項2に係る発明は、前記データベース(40)にアクセス可能な通信手段(3)を備えたことを特徴とする請求項1に記載の加工情報共有システム(100)である。
【0013】
請求項3に係る発明は、プログラムされたコンピュータ(90)を用いて複数のユーザ(1)が情報を共有する方法であって、工具材種、工具形状、切削速度、切り込み深さ、送り速度、切削油の何れかの項目を材料別に異なる加工条件にした組み合わせによる実験計画を作成する実験計画作成段階(S1)と、前記実験を前記工作機械(30)に制御手段(60)を用いて実行させる実験段階(S2)と、旋盤機能とセンサ群(10)を含む工作機械(30)により、切削力、切削温度、面粗さ、工具摩耗、直径の何れか1項目以上を測定する測定段階(S3)と、前記センサ群(10)により得られた加工情報(X1〜Xn)をデータベース(40)で検索自在に記憶する加工情報記憶段階(S4)と、前記加工情報(X1〜Xn)を分析して高度情報(Y1〜Yn)に変換する分析段階(S5)と、前記加工情報分析段階(S5)により整理された高度情報(Y1〜Yn)を前記データベース(40)に記憶する高度情報記憶段階(S6)と、前記高度情報(Y1〜Yn)から最適加工条件を探索する最適加工条件探索段階(S7)と、を備えたことを特徴とする加工情報共有システム(100)である。
【0014】
請求項4に係る発明は、前記実験段階(S2)は、実験計画を立案する実験計画立案段階(S11)の後に加工条件を設定する段階(S12)と、材料実直径を測定する段階(S13)と、加工可能な直径か否かを判断する段階(S14)と、前記加工可能な直径か否かを判断する段階(S14)でYESならば実直径は計画どおりか否かの判断をする段階(S15)と、前記実直径は計画どおりか否かの判断する段階(S15)がYESならば加工する段階(S16)と、前記加工可能な直径か否かの判断する段階(S14)において、NOならば材料交換(S19)する段階と、前記材料交換する段階(S19)により交換した材料の実直径に合わせて実験計画を再立案する段階(S20)と、前記材料を加工する段階(S16)の後に材料実直径を測定する段階(S17)と、を含み、前記材料実直径測定段階(S17)の後に未実施試験が有るか否かの判断(S18)をし、NOなら終了するが、YESならば、前記加工条件設定段階(S12)まで戻って一連の処理段階を繰り返すことを特徴とする請求項3に記載の加工情報共有方法である。
【0015】
請求項4に係る発明によれば、前記実験段階(S2)は、実験計画を立案する実験計画立案段階(S11)の後に加工条件を設定する段階(S12)を経て材料実直径を測定(S13)し、加工可能な直径か否かを判断する段階(S14)により、加工可能な直径の場合にのみ、次の工程へ進んで実直径が計画どおりか否かの判断(S15)し、実直径が計画どおりの場合にのみ、次の工程へ進んで加工する(S16)ので、無駄なく効率よく実験を進めることが可能となる。
また、前記加工可能な直径か否かの判断する段階(S14)において、NOならば材料交換(S19)した材料の実直径に合わせて実験計画を再立案する段階(S20)を経て、材料を加工した(S16)後に材料実直径を測定(S17)する。
材料実直径を測定した(S17)後に未実施試験が有るか否かの判断(S18)をし、NOなら終了するが、YESならば、前記加工条件設定段階(S12)まで戻って一連の処理段階を繰り返す。
これら一連の処理段階により、実験計画立案段階(S11)で立案された実験計画のうち、現実的で有効な実験のみに絞って短時間で完了できる。しかも、切削試験装置として必須の機能とされる安全かつ信頼性の高い実験ができる。
【0016】
請求項5に係る発明は、前記ユーザ(1)から通信手段(3)により前記データベース(40)にアクセスするアクセス段階(S8)を含むことを特徴とする請求項3または請求項4に記載の加工情報共有方法である。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に係る発明によれば、コンピュータ(90)により、加工情報(X1〜Xn)およびその利用価値を高めて材料別の最適加工条件が探索されるように整理された高度情報(Y1〜Yn)を、複数のユーザ(1)が共有できる。
【0018】
請求項2に係る発明によれば、データベース(40)にアクセス可能な通信手段(3)を備えたことにより、複数のユーザ(1)は、加工情報(X1〜Xn)および高度情報(Y1〜Yn)を容易に利用できて利便性が高められる。
【0019】
請求項3に係る発明によれば、請求項1と同等の作用効果がある。
【0020】
請求項4に係る発明によれば、無駄なく効率よく実験を進めることが可能となる。また、現実的で有効な実験のみに絞って短時間で完了できる。しかも、切削試験装置として必須の機能とされる安全かつ信頼性の高い実験ができる。
【0021】
請求項5に係る発明によれば、請求項2と同等の作用効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら構成と動作を併せて詳細に説明する。
図1は本発明に係る加工情報共有システムの概略を示すブロック図である。図1に示す情報共有システム100は、プログラムされたコンピュータ90を用いて複数のユーザ1が加工情報X1〜Xnおよび後記説明する高度情報Y1〜Ynを共有できるように構成されている。
工作機械30は、切削力X1、切削温度X2、面粗さX3、工具摩耗X4、直径X5の何れか1項目以上の加工情報X1〜Xnを測定可能なセンサ群10および旋盤機能20を含んで構成されたNC等である。センサ群10により得られた加工情報X1〜Xnは、検索自在のデータベース40に記憶される。
【0023】
なお、センサの種類としては、加工中に工具にかかる切削力X1を検出する加工力センサ、切削中の工具先端温度すなわち切削温度X2を検出する温度センサ、加工品質すなわち加工表面の粗さを意味する面粗さX3を検出する表面粗さ計、工具先端の摩耗すなわち工具摩耗X4を視覚的に把握するCCDカメラ、加工に伴う材料表面の固さ変化を検出する硬さセンサ、それから材料の直径X5を測定する周知の寸法センサ、そのほか、主軸消費電力を測定することにより加工に要する累積エネルギー値を計上するセンサ等もある。
【0024】
コンピュータ90は内蔵されたメモリ、外付け接続されたプリンタのほか、内外に接続されたハードディスク、ディスプレイ、キーボード等によるハードウェア(図4参照)と、図示せぬOS(Operating System)、前記各プログラムにより構成されている。このコンピュータ90は、実験計画作成プログラム50と、加工情報分析プログラム70と、最適加工条件探索プログラム80と、工作機械30を制御する制御手段60を備え、インターネット等の通信手段3に接続され、データベース40に複数のユーザ1がアクセスすることにより、加工情報X1〜Xnおよび後記説明する高度情報Y1〜Ynを共有できるように構成されている。
【0025】
実験計画作成プログラム50は、「工具材種」、「工具形状」、「切削速度」、「切り込み深さ」、「送り速度」、「切削油」の加工条件を異なる組み合わせにした実験計画を材料別に作成する。詳しくは、工具材料の種類を表す「工具材種」、材料の回転速度を意味する「切削速度」、材料を削る深さを意味する「切り込み深さ」、工具の移動速度を意味する「送り速度」、冷却や潤滑に寄与する「切削油」の各項目を加減した場合の組み合わせを効率良く計画立案する(図2参照)。
【0026】
制御手段60は、実験計画作成プログラム50が作成した組み合わせの実験を工作機械30に実行させることができる。
センサ群10により得られた加工情報X1〜Xnは、加工情報分析プログラム70により分析され、高度情報Y1〜Ynに変換、整理されて前記データベース40に記憶される。
【0027】
最適加工条件探索プログラム80を実行すれば、高度情報Y1〜Ynから最適加工条件が探索される。
このように、実験計画作成プログラム50と、加工情報分析プログラム70と、最適加工条件探索プログラム80と、を含んでプログラムされたコンピュータ90により、加工情報X1〜Xnおよびその利用価値を高めて材料別の最適加工条件が探索されるように整理された高度情報Y1〜Ynを、複数のユーザ1が共有できる。
【0028】
また、データベース40にアクセス可能な通信手段3を備えたことにより、複数のユーザ1は、加工情報X1〜Xnおよび高度情報Y1〜Ynを容易に利用できて利便性が高められる。
なお、以下の説明において、複数のユーザ1は、それぞれがインターネットに常時接続された周知のパソコン(以下、「ユーザ端末1」ともいう)を用いてデータベース40にアクセス可能であるものとする。
【0029】
図2は、実験計画の説明図であり、例えば、10通りの「工具材種」と、5通りの「工具形状」と、10通りの「切削速度」と、10通りの「切り込み深さ」と、10通りの「送り速度」と、3通りの「切削油」との組み合わせは、15万通りに及ぶ。
(10×5×10×10×10×3=150,000)
【0030】
このように、加工条件の組み合わせとしては、メーカー毎に多種多様な工具材種、工具先端の形状の違いで区別する工具形状、材料の回転速度の違いを意味する切削速度、材料を削る深さの違いを意味する切り込み速度、工具の移動速度の違いを意味する送り速度、冷却や循環違いを意味する切削油等を異なる10万種類以上の組み合わせにする。
【0031】
しかし、全ての組み合わせを洩れなく実験するとすれば、膨大な経費と時間を要することになるが、最適加工条件を探索するに際し、10万通りの組み合わせの全てを実験することは現実的でない。そこで、効率的な実験計画として、以下の便法を用いることにする。
1.荒い条件の組み合わせで試験する。初期条件は、公開データや経験で初期条件を選定。
2.試験結果から傾向をつかむ。試験結果は表やグラフにまとめ、経験者の勘に客観的な裏付けをもって一般化することにより、第三者にも利用できるように情報加工する。
3.現実に採用できそうな条件の範囲に限定して密度の高い試験を効率良く行う。
【0032】
前記便法を駆使した効率的な実験計画作成プログラム50により、加工条件が不明な材料、工具等に対する最適な加工条件を迅速に求めることができる。すなわち、重複実験等の無駄を極力排除して効率化を図りながら、データベース40を有効利用する。そして、大量の試験条件の組み合わせを自動的に生成し、これらの試験を連続して自動的に実行するとともに、加工結果を判断するためのデータを即座に表示し、データベース化する。このことにより、従来1〜2週間程度を要していた切削試験を、2時間程度で実施できる。
そして、センサ群10により得られた加工情報X1〜Xnは、加工情報分析プログラム70により分析され、高度情報Y1〜Ynに変換、整理されてデータベース40に記憶される。
【0033】
また、条件を自動探索する際は、最適加工条件探索プログラム80を実行する。この最適加工条件探索プログラム80は、以下の技術思想を実現するために備えられた複数のソフトウェアを適宜に実行できるように統合されている。
1.あらかじめ、手動により予備探索して、相当のデータを蓄積する。
2.蓄積されたデータを経験側として体系づける。
3.蓄積されたデータを対象に各種のソフトウェアを備える。
4.最適解を迅速に検索する検索ソフトウェア。
5.例えば、実験を効率化するために実験計画法を実行する。
6.遺伝的アルゴリズム、生物の進化、ニューラルネットワーク、神経細胞(脳)の構造を参考にする。
7.前記1〜6で示した段階を以後の探索に適用する。
8.前記蓄積されたデータが探索性能の高性能化に寄与する。
【0034】
最適加工条件探索プログラム80を実行すれば、高度情報Y1〜Ynから最適加工条件が探索され、例えば図10(b)に示すような安定した状態を得るための切削条件をデータベース40から探索する。
【0035】
このような、実験計画作成プログラム50と、加工情報分析プログラム70と、最適加工条件探索プログラム80と、を含んでプログラムされたコンピュータ90により、加工情報X1〜Xnおよびその利用価値を高めて材料別の最適加工条件が探索されるように整理された高度情報Y1〜Ynを、複数のユーザ1が共有することが可能となる。
【0036】
なお、図1に示すように、ユーザ1はデータベース40に対して、インターネット等の通信手段3を介してアクセスし、加工情報X1〜Xnおよびその利用価値を高めて材料別の最適加工条件が探索されるように整理された高度情報Y1〜Ynを簡易迅速に利用することが可能である。
【0037】
図3は、本発明に係る加工情報共有方法を示すフローチャートである。図3に示すように、まず、工具材種、工具形状、切削速度、切り込み深さ、送り速度、切削油の何れかの項目を材料別に異なる加工条件にした組み合わせによる実験計画を作成する実験計画作成段階(S1)が実行される。
【0038】
つぎに、実験計画作成段階(S1)作成された実験計画を、制御手段60により工作機械30に実験させる実験段階(S2)が実行される。この工作機械30は、旋盤機能とセンサ群10を含んで構成されており、この工作機械30のセンサ群10により、切削力X1,切削温度X2,面粗さX3,工具摩耗X4,直径X5の何れか1項目以上を測定する測定段階(S3)が実行される。
【0039】
センサ群10により得られた加工情報X1〜Xnは、データベース40に検索自在に記憶される。このようにして蓄積されたデータベース40の加工情報X1〜Xnを分析して高度情報Y1〜Ynに変換する分析段階(S5)が実行される。
【0040】
前記加工情報分析段階(S5)により整理された高度情報Y1〜Ynを前記データベース40に記憶する高度情報記憶段階(S6)が実行される。
前記高度情報Y1〜Ynから最適加工条件を探索する最適加工条件探索段階(S7)が実行される。
ユーザ1から通信手段3により前記データベース40にアクセスするアクセス段階(S8)が実行される。
なお、フローチャートでは「段階」の文言を省略している。
【0041】
図4は、加工情報共有システムの実施形態を示すブロック図である。図4に示すように、コンピュータ90と工作機械30がLAN(Local Area Network)81により情報接続された構成を明示している。すなわち、コンピュータ90から発令された制御信号はLAN81を介してNC制御装置61に伝達されて工作機械30を制御することが可能である。工作機械30にはセンサ群10が付設されている。このセンサ群10から得られた加工情報X1〜Xnをコンピュータ90に入力する。コンピュータ90はハードディスク91、ディスプレイ92、キーボード93が配設され、周知の要領で操作することが可能である。
なお、データベース40は、コンピュータ90に内蔵されたハードディスク91に形成しても良いが、インターネットに接続されて独立したサーバの支配下に設置しても構わない。
また、センサ群10は、具体的には、加工力センサ11、切削温度センサ12、面粗さセンサ13、工具摩耗センサ14、材料直径センサ15から構成され、それぞれ計測装置19に接続され、コンピュータ90へ加工情報X1〜Xnを送信する。
【0042】
図5は、効率的な実験計画を示すフローチャートである。まず、実験計画を立案する実験計画立案段階(S11)は図1における(S1)とほぼ同様である。つぎに、加工条件設定段階(S12)により加工条件を設定する。
そして、材料実直径測定段階(S13)により材料実直径を測定し、加工可能な直径か否かを判断(S14)する。ここで、YESならば実直径は計画どおりか否かの判断(S15)をし、YESならば加工(S16)する。
一方、加工可能な直径か否かの判断(S14)する段階において、NOならば材料交換(S19)し、交換した材料の実直径に合わせて実験計画を再立案(S20)する。その交換した材料に沿って再立案された実験計画によりその材料を加工(S16)し、この材料実直径を測定(S17)する。
【0043】
この材料実直径測定段階(S17)の後に未実施試験が有るか否かの判断(S18)をし、NOなら終了するが、YESならば、加工条件設定段階(S12)まで戻って一連の処理段階を繰り返す。そして、再び未実施試験が有るか否かの判断(S18)をし、NOの判定が出るまで繰り返した後にNOの判定が出れば終了する。
【0044】
実験計画では、指定された材料直径を基礎として切削速度などの条件を決める。しかし、実験の際に間違えて違う直径の材料を取り付けてしまったり、前回の試験の残り材料を使ったりすると、指定と実直径が異なることがあり、そのまま実験を継続すると工作機械30を破損させる危険がある。
また、工具摩耗などによっても実験計画どおりに材料直径が変化するとは限らないそこで、加工前には必ず実際の直径を測定し、それが予想と異なる場合は、その場で、自動的に、実際の直径と合わせて実験計画を立て直すこととしている。この処理により、安全で信頼性の高い実験ができるようになった。これは、切削試験装置として必須の機能と考えられる。
【0045】
以下、センサに関して、簡単な説明をする。
まず、加工中に工具にかかる切削力X1を検出する加工力センサとして、切削試験装置のテーブルの上面側部には、3成分の力をそれぞれ測定する切削抵抗測定装置(「3成分切削動力計」ともいう)を介在してベース状の刃物台が載置され、その刃物台には、櫛歯状に工具(ツール)を固定したバイトホルダが固定されている。
3成分切削動力計は、外径バイトの主分力と、背分力と、送り分力との3成分の切削抵抗を測定するための、3成分に対応した3組の水晶圧電式センサが組み込まれており、3成分の切削動力を独立して測定することができる。また、水晶圧電式センサに限らず、ひずみ計ゲージ、その他の検出手段であっても構わない。
【0046】
また、切削中の工具先端温度、すなわち切削温度X2を検出する温度センサとして、外径切削用バイト(以下、「外径バイト」ともいう)の後端部に熱電対温度計が形成されている。すなわち、ワークと工具がともに金属ならば、これら異種金属の接合部である切削点には熱起電力が発生する。そこで、この熱起電力を測定し、演算処理することによって、切削中の工具刃先の温度を検出できる。
そして、テーブルの上面には、面粗さX3を検出する表面粗さ計、または面粗度測定装置が配設されている。面粗度測定装置は、接触型であり、ワークの表面粗さを触針が接触して測定する方式のほか、光を照射してその散乱光の性質等から評価する非接触式であっても構わない。
【0047】
一方、主軸台の側部には、工具先端の摩耗すなわち工具摩耗X4を視覚的に把握するCCDカメラが配設され、外径バイトに接近し、チップ先端部の形状変化を撮像して画像データをパソコンに送信する。
また、材料の直径X5を測定するためのワーク測定装置は、全方位形精密マイクロスイッチを内蔵したプローブによって検知される。これは、ワークの外径(直径)を等間隔に8カ所(45度ずつ)測定した平均値により直径を表示する。なお、スケールは、マグネスケール、パルスケール、インダクトシンなどのほか、その他のスケールであってもよい。
【0048】
ワーク測定装置による検知信号は、非接触に信号伝送可能な光学式送受信機能、すなわち、プローブの元部に内蔵されたトランスミッタとレシーバで構成されるオプチカルトランスミッションからインターフェイスユニットに送られ、加工後の寸法測定が行われる。ワークの所定直径は、NC制御装置61(図4)からLAN81を介して接続されたコンピュータ90の制御手段60(図1)を含むソフトで指定する。
【0049】
また、加工に伴う材料表面の固さ変化を検出する硬度計がそれぞれのバイトホルダに固定され、所定の間隔をもって配設されている。硬度計は、ロックウェル硬さ試験機に使われるのと同じ先端が120°のダイヤモンド円錐圧子を使用し、これにワークを所定の力で押し付け、ワーク表面に窪みを付けて、その深さを測定して硬さを評価する。例えば、ステンレスのように、加工によって表面が加工硬化する材料の加工前、加工後の硬さを評価するには好都合である。
そのほか、主軸消費電力から加工に要する累積エネルギー値も検知できる。これらのセンサ群10により得られた加工情報X1〜Xnは、検索自在のデータベース40に記憶される。
【0050】
つづいて、本発明の加工情報共有システムによる切削試験機の動作について説明する。
ワークレスト(図示せず)に新しいワーク(例えば、φ20×150mmのバー材)を置くと、プッシャー(図示せず)がワークをコレットチャックに押し込み、把持する。
主軸が回転し、主軸台が前後方向と、左右方向へ移動し、予め入力されたプログラムに従って、最初の指令された切削条件にのっとり、外径バイトにワークが接近し、1回目の外径切削加工を行う。
その間、切削抵抗測定装置は、外径バイトの主分力と、背分力と、送り分力との3成分の切削抵抗を測定する。さらに、温度計は、切削熱によって温度上昇する工具の刃先点の温度を測定する。
【0051】
さらに、この面粗度測定装置の触針部(図示せず)が現われると、主軸台のワークが接近する。そして、面粗度測定装置の触針にワークの表面が接触して表面粗さを測定する。
さらに、硬度計に主軸台が接近する。そして、ダイヤモンド円錐圧子にワークを所定の力で押し付けて、ワークの加工面の硬さを測定する。
また、CCDカメラが外径バイトに接近し、外径バイトのチップ先端部の撮影を行う。
さらに、ワーク測定装置のプローブに、主軸台が移動して、ワークの外径を直径表示する。
【0052】
以上の測定を完了しワークが元の位置に戻って1サイクルが終了する。つぎの切削条件で2回目の切削加工を開始する。この手順にしたがって、100種類以上の切削条件によって切削試験が終了する。なお、ワーク直径が8mmになると、ワークは突切りバイトによって切断され、その後、ロボットにより25mm引き出され、ワークがなくなれば、新しいワークが供給される。
【0053】
その結果、従来、実験計画法で決められた100種類以上の切削条件を実施するために、4〜5日間要していた切削試験作業は、2〜3時間で終えることができるようになった。これは、1/13〜1/16に短縮したことになる。このように、効率良く最短の時間でワークの最適加工条件のデータを採取して提供することができる。
【0054】
なお、必要なデータが共有されているならば、最適解の企業独自探索も容易となり公益に資することが可能となる。さらに全自動切削試験装置の製作、切削試験の自動化・無人化、各種センサによる加工状態の認識、最適加工条件探索技術の開発、膨大な組み合わせからの探索、加工情報データベースの開発と公開、データ形式の決定、インターネットへの公開等へと発展させることも可能となる。
【0055】
また、システム全体の構成は、NCをはじめとする工作機械および各種センサを含む切削試験装置により、最適条件を探索し、加工情報をデータベースに蓄積し、このデータベースに基づいて実験計画を自動的に生成する実験計画生成プログラムを実行し、これにより生成された実験計画を手動設定により切削試験装置に反映させる。
【0056】
そうすると、手動設定に応じて切削試験装置が実験計画を順次実行し、より高精度かつ有効な最適条件を探索容易にするように体系付けられた加工情報をデータベース40に蓄積する。これら一連の工程を繰り返すことにより、データベース40に蓄積される加工情報が増強されていく。
【0057】
このようにして、次世代材料の精密加工に必要な情報を地域企業に供給する。そのために、精密加工に必要な情報として、例えば、工具摩耗の状況、切削温度、加工力等の条件である切削試験データ、そして、要求される加工品位を低コストで実現できる最適データ、すなわち、安価な工具、長い工具寿命、加工時間の短縮、工具材種・形状、機械の運転パラメータ(加工速度など)を複数のユーザ1で共有することが可能となる。
【0058】
複数のユーザ1にとっては、コンピュータ90と工作機械30が通信しながら整理されたデータY1〜Ynを短時間に入手できる。例えば、普通の汎用的な工作機械30そのものを主体とする切削試験装置として用いた場合、本発明により開示した加工情報共有システムおよびその方法に沿って、単体の切削試験装置として測定制御ユニットおよび旋盤等を一塊に構成すれば、測定項目毎に測定するわずらわしさから開放される。また、切削試験装置を、試験機専用に独占される不自由から開放され工作機械30として一般利用に適宜兼用することも可能となる。
【0059】
複数のユーザ1が、離れた別の場所で、新しい材料に関して、個々の実験計画により切削試験のサイクルを繰り返すと、データが蓄積されていく。しかも、試験用サンプルを切り落としたりするような、手間のかかるわずらわしいことまでも、システムが自動的に実行する。
【0060】
図6はユーザ端末1における表示画面図の一例であり、(a)は切削温度を熱起電力mvで表示した数値、(b)は主分力をNで表示した数値、(c)は面粗さをμmで表示した数値である。設定条件として、切削速度を50mm/minに固定し、送りと切り込みをそれぞれ0.05〜0.2mm/minに変化させた場合の切削温度の生データであり、リアルタイムに表示され、複数のユーザ1が、離れた別の場所で共有できる。
【0061】
図7は、ユーザ端末1における表示画面図の他の一例であり、(a)は切削温度を熱起電力mvで表示した数値、(b)は主分力をNで表示したグラフである。設定条件として、切削速度を100mm/minに設定し、送りと切り込みをそれぞれ0.05〜0.2mm/minに変化させた場合を示している。これらも、リアルタイムに表示され、複数のユーザ1が、離れた別の場所で共有できる。
なお、図7(a)が数値のみを表示した生データであるのに対して、図7(b)は生データを演算処理してグラフに情報加工して、より見やすく表示している。
【0062】
また、図6(a)(b)(c)および図7(a)における数値表示には所定範囲ごとの文字に色分けが施され、数値の分布が直感的にわかるように表示機能がプログラムされている。例えば、切削速度を50mm/minに固定して送りと切り込みを変化させた図6(a)では、青色文字で数値表示した熱起電力440〜510mvの範囲の切削温度が広く分布しており、切削速度を100mm/minに固定して送りと切り込みを変化させた図7(a)では、黄緑色の文字で数値表示した熱起電力730〜790mvの範囲の切削温度に成りやすい傾向のあることが読み取れる。したがって、図6および図7(a)は、ほとんど生データではあるが、材料別の切削状態が数値ランクごとに虹色のように赤、橙、黄色、黄緑、緑、緑青、空色、青、藍色と色分けされた数値群を、当業者が1目見れば大まかな傾向として把握できる。
【0063】
図8はユーザ端末1における表示画面図の一例であり、(a)は切削温度を℃表示したグラフ、(b)は切削力の主分力(main)、送分力(feed)、背分力(back)の3分力をNで表示したグラフである。コンピュータ90に具備されたソフトウェアを用いて、切削温度を℃表示するため、熱起電力としてmvで表示した数値を所定の公式で演算処理し、さらにグラフ表示している。
【0064】
図9はユーザ端末1における表示画面図の一例であり、(a)はあらさ測定結果をμm表示したグラフ、(b)は圧痕μm測定結果の硬さを表示したグラフ、(c)は切り込み誤差をμmでX−Y座標表示したグラフである。
【0065】
図10はユーザ端末1において切削力Nの変動成分をグラフ表示した画面図の一例である。図10に示すように、送り0.2mm/rev、切り込み0.2mmに統一し、切削速度のみを低速と高速の2条件に区別して、SUS316をUS7020で切削している。その結果、一方の図10(a)は切削速度20mm/minとした場合に変動が大きい状態を示し、このように加工力の変動が激しいと切削面が荒れ、面粗さに影響するので悪い結果を呼ぶ。他方の図10(b)は切削速度50m/minとした場合に安定した状態を示し、良い結果を呼ぶことが読み取れる。
なお、加工情報分析プログラム70は、図6に示した測定データの一覧表を作成し、図7(b)および図8〜図10に示したグラフを表示し、さらに図10(a)に示した悪条件と図10(b)に示した良好な条件を明示し、当業者が利用可能な加工情報を開示する。
【0066】
ここで、ユーザ1がSUS316という材料を切削するための最適加工条件を探索したい場合、図1に示した通信手段3を介してコンピュータ90にアクセスし、材料名SUS316を検索キーワードに用いて最適加工条件探索プログラム80を実行すれば、ユーザ端末1において図10(b)が表示され、送り0.2mm/rev、切り込み0.2mm、切削速度50m/minの条件に設定して、SUS316をツール名US7020で切削した場合に安定した良い結果を得られることが読み取れる。そして、図10(a)に示した悪条件による実験は最初に1人が経験してデータベース40に蓄積してあり、重複する研究や実験の無駄が省けるので、本システム100は産業の発展に寄与できる。
なお、図6(a)(b)(c)および図7(a)における数値表示が、請求項1に記載した「センサ群(10)により得られた加工情報(X1〜Xn)」を意味しており、図7(b),図8(a)(b),図9(a)(b)(c)および図10(a)(b)に示したグラフが、請求項1に記載した「高度情報(Y1〜Yn)」を意味している。
【0067】
詳しくは、工作機械30のセンサ群10により得られる加工情報X1〜Xnとは、切削力X1、切削温度X2、面粗さX3、工具摩耗X4、直径X5であり、これら加工情報X1〜Xnを、加工情報分析プログラム70で、より一般化して利用しやすく情報加工した高度情報Y1〜Ynとは、ユーザ1が手間のかかる実験を省略するための参考情報を意味し、、例えば、切削力Y1が図8(b)、切削温度Y2が図8(a)、面粗さY3が図9(a)、工具摩耗Y4に関しては、工具と材料および使用時間数等の条件別に撮影した該当部分の拡大写真(図示せず)をネット上にアップロードしてもよい。
【0068】
これらの加工情報X1〜Xnおよび高度情報Y1〜Ynは、データベース40に検索自在に記憶されて蓄積される。
そして、成果を普及させる手段として、成果普及講習会、インターネット公開、試験装置の貸し付け等の事業を展開する。公開内容は、切削試験データ、最適加工条件、最適加工条件探索システムのドキュメント、例えば、センサ構造、信号処理手法、探索手法、探索アルゴリズムが有効である。
なお、研究事業のため公表を義務づける等の産業政策等によるほか、インターネット公開等による波及効果として、業界全体の技術向上、装置の貸し付けにより企業独自のデータを蓄積できること、さらに、探索技術を搭載した工作機械への発展が見込める。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明に係る加工情報共有システムの概略を示すブロック図である。
【図2】実験計画の説明図である。
【図3】本発明に係る加工情報共有方法を示すフローチャートである
【図4】加工情報共有システムの実施形態を示すブロック図である。
【図5】効率的な実験計画を示すフローチャートである。
【図6】ユーザ端末1における表示画面図の一例であり、(a)は切削温度を熱起電力mvで表示した数値、(b)は主分力をNで表示した数値、(c)は面粗さをμmで表示した数値である。
【図7】ユーザ端末1における表示画面図の他の一例であり、(a)は切削温度を熱起電力mvで表示した数値、(b)は主分力をNで表示したグラフである。
【図8】ユーザ端末1における表示画面図の一例であり、(a)は切削温度を℃表示したグラフ、(b)は切削力の主分力(main)、送分力(feed)、背分力(back)の3分力をNで表示したグラフである。
【図9】ユーザ端末1における表示画面図の一例であり、(a)はあらさ測定結果をμm表示したグラフ、(b)は圧痕μm測定結果を表示したグラフ、(c)は切り込み誤差をμmでX−Y座標表示したグラフである。
【図10】図10はユーザ端末1において切削力Nの変動成分をグラフ表示した画面図の一例であり、(a)は変動が大きい状態、(b)は安定した状態である。
【符号の説明】
【0070】
1 ユーザ
3 通信手段
10 センサ群
11 加工力センサ
12 切削温度センサ
13 面粗さセンサ
14 工具摩耗センサ
15 材料直径センサ
19 計測装置
20 旋盤機能
30 工作機械
40 データベース
50 実験計画作成プログラム
60 制御手段
70 加工情報分析プログラム
80 最適加工条件探索プログラム
81 LAN(Local Area Network)
90 コンピュータ
91 ハードディスク
92 ディスプレイ
93 キーボード
100 加工情報共有システム
1〜Xn 加工情報
1〜Yn 高度情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プログラムされたコンピュータ(90)を用いて複数のユーザ(1)が加工情報(X1〜Xn)を共有する加工情報共有システム(100)であって、
切削力、切削温度、面粗さ、工具摩耗、直径の何れか1項目以上を測定可能なセンサ群(10)および旋盤機能(20)を含む工作機械(30)と、
前記センサ群(10)により得られた加工情報(X1〜Xn)を検索自在に記憶するデータベース(40)と、
工具材種、工具形状、切削速度、切り込み深さ、送り速度、切削油の何れかの項目を材料別に異なる加工条件にした組み合わせによる実験計画を作成する実験計画作成プログラム(50)と、
前記実験計画作成プログラム(50)が作成した組み合わせによる実験を前記工作機械(30)に実行させる制御手段(60)と、
前記加工情報(X1〜Xn)を分析して高度情報(Y1〜Yn)に変換する加工情報分析プログラム(70)と、
前記加工情報分析プログラム(70)により整理され前記データベース(40)に記憶された高度情報(Y1〜Yn)から最適加工条件を探索する最適加工条件探索プログラム(80)と、を備えたことを特徴とする加工情報共有システム(100)。
【請求項2】
前記データベース(40)にアクセス可能な通信手段(3)を備えたことを特徴とする請求項1に記載の加工情報共有システム(100)。
【請求項3】
プログラムされたコンピュータ(90)を用いて複数のユーザ(1)が情報を共有する方法であって、
工具材種、工具形状、切削速度、切り込み深さ、送り速度、切削油の何れかの項目を材料別に異なる加工条件にした組み合わせによる実験計画を作成する実験計画作成段階(S1)と、
前記実験を前記工作機械(30)に制御手段(60)を用いて実行させる実験段階(S2)と、
旋盤機能とセンサ群(10)を含む工作機械(30)により、切削力、切削温度、面粗さ、工具摩耗、直径の何れか1項目以上を測定する測定段階(S3)と、
前記センサ群(10)により得られた加工情報(X1〜Xn)をデータベース(40)で検索自在に記憶する加工情報記憶段階(S4)と、
前記加工情報(X1〜Xn)を分析して高度情報(Y1〜Yn)に変換する分析段階(S5)と、
前記加工情報分析段階(S5)により整理された高度情報(Y1〜Yn)を前記データベース(40)に記憶する高度情報記憶段階(S6)と、
前記高度情報(Y1〜Yn)から最適加工条件を探索する最適加工条件探索段階(S7)と、を備えたことを特徴とする加工情報共有方法。
【請求項4】
前記実験段階(S2)は、
実験計画を立案する実験計画立案段階(S11)の後に加工条件を設定する段階(S12)と、
材料実直径を測定する段階(S13)と、
加工可能な直径か否かを判断する段階(S14)と、
前記加工可能な直径か否かを判断する段階(S14)でYESならば実直径は計画どおりか否かの判断をする段階(S15)と、
前記実直径は計画どおりか否かの判断する段階(S15)がYESならば加工する段階(S16)と、
前記加工可能な直径か否かの判断する段階(S14)において、NOならば材料交換(S19)する段階と、
前記材料交換する段階(S19)により交換した材料の実直径に合わせて実験計画を再立案する段階(S20)と、
前記材料を加工する段階(S16)の後に材料実直径を測定する段階(S17)と、を含み、
前記材料実直径測定段階(S17)の後に未実施試験が有るか否かの判断(S18)をし、NOなら終了するが、YESならば、前記加工条件設定段階(S12)まで戻って一連の処理段階を繰り返すことを特徴とする請求項3に記載の加工情報共有方法。
【請求項5】
前記ユーザ(1)から通信手段(3)により前記データベース(40)にアクセスするアクセス段階(S8)を含むことを特徴とする請求項3または請求項4に記載の加工情報共有方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−107073(P2006−107073A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−292102(P2004−292102)
【出願日】平成16年10月5日(2004.10.5)
【出願人】(391001619)長野県 (64)
【出願人】(391033171)株式会社エグロ (14)
【Fターム(参考)】