説明

加工米飯、加工米飯調理物および加工米飯の製法

【課題】湯や調味液を添加して電子レンジ調理加熱などの短時間加熱で雑炊などの調理物を容易に得ることができる、安価で食味・食感に優れる長期保存可能な加工米飯、加工米飯調理物およびその製法の提供。
【解決手段】精白米を常温の水で洗米後、浸漬水に浸漬することなく、常温の水を米粒の周囲に通過させ水切りし、次いで炊き水を添加して炊飯後、ガスバリヤー性耐熱容器中に充填し、完全に密封した加工米飯1であって、米飯の表面近傍2は澱粉のα化が大いに進行しているが、米飯の中心部3は澱粉のα化があまり進行しておらず、米飯の表面近傍2の澱粉のα化度をA、米飯の中心部3の澱粉のα化度をBとすると、A>Bの関係があり、そして湯や調味液とともに加熱して調理した後においても米粒が原形を留めており、食すると米飯の中心部に適度な歯応えを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工米飯および加工米飯に湯や調味液を添加して加熱調理して得られる雑炊、茶漬け、五目ご飯、炊き込みご飯、クッパ、ドリア、チャーハン、ライスサラダ、ピラフ、パエリア、リゾットなどの加工米飯調理物および加工米飯の製法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、水分含量約10〜24質量%の精白米を洗米後、水に浸漬して水分含量が約20〜50質量%となるように水を含浸させた後、引き続き米に対して例えば約0.7〜1.5倍量の炊き水を添加し、ガス、電気、蒸気などの熱源を用いて常圧炊飯を行い、炊飯した後、バリヤー性耐熱容器中に充填し、例えばヒートシール機で完全に密封して長期保存可能な米飯が作られている(例えば、特許文献1参照)。
この米飯を食す場合は、耐熱容器の蓋を少し開けるなどして電子レンジなどで短時間加熱することにより、ホクホクの食感を有するご飯が得られ美味しく食することができる。
【0003】
しかし、この米飯に湯や調味液を添加・混合して、再加熱すると米粒が水分を吸収して膨潤し、米粒が壊れて原形を留めず、澱粉質が流出してベトついたり、ドロドロになったり、湯や調味液が濁ったりして外観が悪くなるとともに、食すると軟らかくなり過ぎて糊のような食感になってしまうという問題があった。
【0004】
そこで、凍結した米飯と、スープやだし汁などの調味液を凍結して小さな固形物にしたものとを混合した混合物である冷凍食品(特許文献2参照)、米粒をグルコマンナンの水和ゲルで包着し、これを加熱処理して不可逆的ゲル化した食物繊維包着米(特許文献3参照)、洗米後、浸漬水に1〜3時間浸漬してから約90〜100℃で水蒸気加熱して水分含有量30〜40質量%程度として容器に充填した後、さらに水を加えて密封して水分含有量54〜60質量%とした、米糠を含まず水分やα化度が特定の範囲にあり、米粒の団塊が少ない容器入り調理用加工米(特許文献4参照)などが提案されている。
【特許文献1】特許第2107997号公報
【特許文献2】特開平10−150936号公報
【特許文献3】特許第3182547号公報
【特許文献4】特開2001−275588号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の凍結した米飯と、スープやだし汁などの調味液を凍結して小さな固形物にしたものとの混合物である冷凍食品は、凍結したり、カットあるいはクラッシュするなどの工程が必要となり、手間がかかって、コストアップになる問題があり、米粒をグルコマンナンの水和ゲルで包着し、これを加熱処理して不可逆的ゲル化した食物繊維包着米も、食物繊維包着に手間がかかって、コストアップになったり、食味・食感に影響がでるなどの問題があり、また、米糠を含まず水分やα化度が特定の範囲にあり、米粒の団塊が少ない容器入り調理用加工米は、水分やα化度の調整や米粒の団塊を砕くなど団塊解消に手間がかかって、コストアップになる問題があった。
また、水洗せず、その後の水使用も禁じ、完全な炊飯を行わずに半煮状態でその後の加熱調理に供するようにした加熱調理用加工米が市販されているが、一般には調理困難であるという問題があった。
【0006】
本発明の第1の目的は、一般の人でも湯や調味液を添加して電子レンジ調理加熱などの短時間加熱で雑炊、茶漬け、五目ご飯、炊き込みご飯、クッパ、ドリア、チャーハン、ライスサラダ、ピラフ、パエリア、リゾットなどの調理物を容易に得ることができる、安価で食味・食感に優れる長期保存可能な加工米飯であって、これらの調理物とした際に、米粒が原形を留めており、澱粉質が流出してベトついたりせず、ドロドロになったりせず、湯や調味液が濁ったりせず、軟らかくなり過ぎて糊のような食感にならず、食すると適度な歯応えを有する加工米飯を提供することであり、
本発明の第2の目的は、そのような加工米飯を用いて湯や調味液を添加して加熱調理して得られる加工米飯調理物であって、米粒が原形を留めており、澱粉質が流出してベトついたりせず、ドロドロになったりせず、湯や調味液が濁ったりせず、軟らかくなり過ぎて糊のような食感にならず、食すると適度な歯応えを有する安価で食味・食感に優れる加工米飯調理物を提供することであり、
本発明の第3の目的は、そのような加工米飯を容易に低コストで製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解消するための本発明の請求項1に記載の加工米飯は、精白米を常温の水で洗米後、浸漬水に浸漬することなく、常温の水を米粒の周囲に通過させ水切りし、次いで炊き水を添加して炊飯後、ガスバリヤー性耐熱容器中に充填し、完全に密封した加工米飯であって、米飯の表面近傍は澱粉のα化が大いに進行しているが、米飯の中心部は澱粉のα化があまり進行しておらず、米飯の表面近傍の澱粉のα化度をA、米飯の中心部の澱粉のα化度をBとすると、A>Bの関係があり、そして湯や調味液とともに加熱して調理した後においても米粒が原形を留めており、食すると米飯の中心部に適度な歯応えを有することを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項2は、請求項1記載の加工米飯に湯や調味液を添加し、加熱して調理したことを特徴とする加工米飯調理物である。
【0009】
本発明の請求項3は、請求項2記載の加工米飯調理物において、雑炊、茶漬け、五目ご飯、炊き込みご飯、クッパ、ドリア、チャーハン、ライスサラダ、ピラフ、パエリア、リゾットのいずれかであることを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項4は、レトルト処理、加圧殺菌処理、冷蔵処理、冷凍処理から選ばれる処理がなされていることを特徴とする請求項1記載の加工米飯または請求項2記載の加工米飯調理物である。
【0011】
本発明の請求項5は、下記の(1)〜(5)工程により製造することを特徴とする請求項1記載の加工米飯の製法である。
(1)精白米を常温の水で洗米して表面の糠を除去する洗米工程。
(2)洗米後、浸漬水に浸漬することなく、水切り容器に充填し、米粒の水分含量が当初の10〜24質量%を維持し増加しないように、かつ米粒の膨潤が生じないように常温の水を米粒の周囲に通過させて残りの糠を洗いながし、水切りする水切り工程。
(3)次いで炊飯直前に炊き水を添加して炊飯する炊飯工程。
(4)炊飯後、無菌設備中でガスバリヤー性耐熱容器中に充填し、完全に密封する包装工程。
(5)必要に応じて、さらにレトルト処理、加圧殺菌処理、冷蔵処理、冷凍処理から選ばれる処理を行う処理工程。
【発明の効果】
【0012】
本発明の請求項1に記載の加工米飯は、精白米を常温の水で洗米後、浸漬水に浸漬することなく、常温の水を米粒の周囲に通過させ水切りし、次いで炊き水を添加して炊飯後、ガスバリヤー性耐熱容器中に充填し、完全に密封した加工米飯であって、米飯の表面近傍は澱粉のα化が大いに進行しているが、米飯の中心部は澱粉のα化があまり進行しておらず、米飯の表面近傍の澱粉のα化度をA、米飯の中心部の澱粉のα化度をBとすると、A>Bの関係があり、そして湯や調味液とともに加熱して調理した後においても米粒が原形を留めており、食すると米飯の中心部に適度な歯応えを有することを特徴とするものであり、一般の人でも湯や調味液を添加して電子レンジ調理加熱などの短時間加熱で雑炊、茶漬け、五目ご飯、炊き込みご飯、クッパ、ドリア、チャーハン、ライスサラダ、ピラフ、パエリア、リゾットなどの調理物を容易に得ることができる、安価で食味・食感に優れる長期保存可能な加工米飯であって、これらの調理物とした際に、米粒が原形を留めており、澱粉質が流出してベトついたりせず、ドロドロになったりせず、湯や調味液が濁ったりせず、軟らかくなり過ぎて糊のような食感にならず、食すると適度な歯応えを有するという、顕著な効果を奏する。
【0013】
本発明の請求項2は、請求項1記載の加工米飯に湯や調味液を添加し、加熱して調理したことを特徴とする加工米飯調理物であり、米粒が原形を留めており、澱粉質が流出してベトついたりせず、ドロドロになったりせず、湯や調味液が濁ったりせず、食すると適度な歯応えを有し、安価で食味・食感に優れるという、顕著な効果を奏する。
【0014】
本発明の請求項3は、請求項2記載の加工米飯調理物において、雑炊、茶漬け、五目ご飯、炊き込みご飯、クッパ、ドリア、チャーハン、ライスサラダ、ピラフ、パエリア、リゾットのいずれかであることを特徴とするものであり、安価で美味しいという、さらなる顕著な効果を奏する。
【0015】
本発明の請求項4は、レトルト処理、加圧殺菌処理、冷蔵処理、冷凍処理から選ばれる処理がなされていることを特徴とする請求項1記載の加工米飯または請求項2記載の加工米飯調理物であり、さらに長期保存性を向上できるという、さらなる顕著な効果を奏する。
【0016】
本発明の請求項5は、下記の(1)〜(5)工程により製造することを特徴とする請求項1記載の加工米飯の製法であり、請求項1記載の加工米飯を容易に低コストで製造できるという、顕著な効果を奏する。
(1)精白米を常温の水で洗米して表面の糠を除去する洗米工程。
(2)洗米後、浸漬水に浸漬することなく、水切り容器に充填し、米粒の水分含量が当初の10〜24質量%を維持し増加しないように、かつ米粒の膨潤が生じないように常温の水を米粒の周囲に通過させて残りの糠を洗いながし、水切りする水切り工程。
(3)次いで炊飯直前に炊き水を添加して炊飯する炊飯工程。
(4)炊飯後、無菌設備中でガスバリヤー性耐熱容器中に充填し、完全に密封する包装工程。
(5)必要に応じて、さらにレトルト処理、加圧殺菌処理、冷蔵処理、冷凍処理から選ばれる処理を行う処理工程。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に本発明を図を用いて実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の加工米飯の断面を模式的に説明する説明図である。
図2は、図1に示した本発明の加工米飯の製造工程の1例を説明する説明図である。
図1に示したように本発明の加工米飯1は、図示しないガスバリヤー性耐熱容器中に充填し、完全に密封した加工米飯であって、米飯の表面近傍2は澱粉のα化が大いに進行しているが、米飯の中心部3は澱粉のα化があまり進行していない。米飯の表面近傍2の澱粉のα化度をA、米飯の中心部3の澱粉のα化度をBとすると、A>Bの関係がある。α化度はジアスターゼ法に準じて測定するものとする。
【0018】
図2に示したように本発明の加工米飯1を製造するには、先ず洗米工程(1)において精白米を常温の水で洗米して表面の糠を除去する。糠を除去すると食味・食感が向上する。
【0019】
本発明で使用する精白米は日本米や外米あるいはこれらの混合物であってもよく、特に限定されない。
【0020】
本発明においては、洗米後の精白米4を浸漬水に浸漬することなく、図2に示したように底部に米粒が流出しない程度のメッシュを有するステンレスメッシュ5を備えた水切り容器6に充填し、常温の水を米粒の周囲に通過させて残りの糠やゴミなどを洗い流し、水切りする。
例えば、所定量の精白米を水切り容器6に充填し、常温の流水で水洗いしながら、攪拌することを数回、約1時間行う。
そして水切り後、米粒の表面が濡れたまま約1時間放置して表面を少し乾燥させる。
この水切り工程(2)においては、米粒の当初の水分含量約10〜24質量%を維持して増加しないように、かつ米粒の膨潤が生じないように行うことが肝要である。
【0021】
水切り容器6は図2に示した構成のものに限定されず、形状は逆三角形の漏斗のような形状やステンレスメッシュベルトなど帯状でもよく、また底部に設けたステンレスメッシュ5も図2に示した構成のものに限定されず、米粒が流出しない程度の多数の小孔を有する多孔性の板や多孔性の栓などでもよい。
【0022】
そして水切り容器6から米粒を排出する時は、ステンレスメッシュ5や多孔性の板や多孔性の栓などを移動させたり、排除したり、抜いたり、分割して開いたりして勢い良く排出することが好ましい。勢い良く排出すると米粒がブロッキングしたり塊にならず、バラバラの状態で排出される。
そして排出された米粒を次の貯留タンクに入れたり、次の工程へ移動させる時は、ステンレスメッシュベルトなどを用いるのが好ましい。ステンレスメッシュベルトなどで残留する水をよく切ることができる。
【0023】
なお、この水切り工程(2)の後に、必要に応じて、短時間の殺菌工程や加熱工程を設けることもできる。
【0024】
引き続き炊飯工程(3)において、炊飯直前に米に対して例えば0.7〜1.5倍量(質量比)の炊き水を添加し、常法に従ってガス、電気、水蒸気などの熱源を用いて常圧炊飯を行う。
【0025】
このようにして炊飯した後、米飯が比較的温かい約60℃以上のうちに、無菌設備中でバリヤー性耐熱容器中に脱酸素剤と共に充填し、例えばヒートシール機で完全に密封する。脱酸素剤は保存期間中の美味しさを保持するために、容器内の酸素を吸収する。充填時に窒素などの不活性ガスを充填することもできる。
例えば、米国航空宇宙局(NASA)の規格でクラス100〜クラス10000のクリーンルームやクリーンブース内等で無菌充填を行なう。無菌充填を行なう際には使用する設備・包材・容器・脱酸素剤等は充分に滅菌されたものを使用する。
【0026】
なお、炊飯後に、必要に応じて、蒸らし工程を設けることもできる。
【0027】
好ましいガスバリヤー性耐熱容器包装体は、加熱に耐えうる容器であって、空気不透過性のものが好ましく、細菌などの侵入を防ぎ得るものであり、その形態は限定されるものではなく、例えば耐熱性合成樹脂からなるトレーなどの耐熱容器か、耐熱性合成樹脂フィルムからなる耐熱プラスチック袋を例示することができる。
例えば、耐熱容器は、塩化ビニリデンフィルムを中間層とし、上下層には、ポリプロピレンを積層しこれを容器状に成形したものと上蓋フィルム(PET/Kナイロン/ポリエチレン系シーラント)などが使用できる。
またそのままの状態で電子レンジ加熱調理しない場合は、金属箔のラミネート材からなるトレーなどの耐熱容器か、金属箔のラミネート材からなる耐熱プラスチック袋を使用することもできる。
【0028】
本発明の加工米飯は、20〜35℃程度の常温で1ケ月以上保存可能であり、実質半年以上の長期間保存可能である。常温保存可能にするためには、加熱殺菌してなるものであり、加熱殺菌としては、耐熱容器の形態や充填量に応じて常法に従い加熱温度や加熱時間を決めるが、例えば80〜135℃程度で4〜100分程度の加熱を行うとよい。
【0029】
本発明の加工米飯は、処理工程(5)において必要に応じて、さらにレトルト処理、加圧殺菌処理、冷蔵処理、冷凍処理から選ばれる処理を行い、長期保存性をさらに向上することもできる。
【0030】
以上のように調製された本発明の加工米飯は、一般の人でも湯や調味液を添加して電子レンジ調理再加熱あるいは加熱水浴中再加熱などの短時間加熱で雑炊、茶漬け、五目ご飯、炊き込みご飯、クッパ、ドリア、チャーハン、ライスサラダ、ピラフ、パエリア、リゾットなどの調理物を容易に得ることができ、食に供すことができる。
【0031】
本発明の主旨を逸脱しない範囲で本発明の加工米飯にさらに調味料、着色料、油脂、乳化剤などを添加してもよい。
例えば本発明の加工米飯には、米粒の粘着・固着抑制、流動性向上などのためにキサンタンガム、グアガム、タマリンドシードガム、澱粉、ヘミセルロースなどを少量、例えば、加工米飯に対して0.1〜3質量%程度添加することができる。
【0032】
本発明の加工米飯が、一般の人でも湯や調味液を添加して電子レンジ調理加熱などの短時間加熱で雑炊、茶漬け、ピラフ、パエリア、リゾットなどの調理物であって米粒が原形を留めており、澱粉質が流出してベトついたりせず、ドロドロになったりせず、湯や調味液が濁ったりせず、軟らかくなり過ぎて糊のような食感にならず、食すると適度な歯応えを有する理由は明らかではないが、1つには本発明においては、精白米を洗米後、浸漬水に浸漬しないことに起因すると考えられる。
【0033】
すなわち、従来のように精白米を洗米後、常温の浸漬水に約1〜1.5時間程度浸漬すると、米粒中に水が浸透して、当初、水分含量約10〜24質量%であった米粒の水分含量が増加し、通常約20〜50質量%程度になる。
【0034】
浸漬水に浸漬し水分含量が約20〜50質量%となった精白米を次の炊飯工程で炊飯すると米飯の中心部3まで澱粉のα化が進行する。その結果、この米飯に湯や調味液を添加して加熱すると、水分を吸収して膨潤し、米粒が壊れて原形を留めず、澱粉質が流出してベトついたり、ドロドロになったり、湯や調味液が濁ったりして外観が悪くなるとともに、食すると軟らかくなり過ぎて糊のような食感になってしまう。
【0035】
精白米を洗米後、浸漬水に浸漬しないと、前記のように水切り工程を経ても米粒の水分含量が当初の約10〜24質量%に維持されて、増加せず、かつ、米粒の膨潤も生ぜず、このような水切り後の精白米を用いて、炊飯直前に米に対して例えば0.7〜1.5倍量の炊き水を添加し、常法に従って炊飯を行うと、米飯の表面近傍2は澱粉のα化が大いに進行するが、米飯の中心部3は澱粉のα化があまり進行していない本発明の加工米飯1が得られる。
【0036】
米飯の表面近傍2は澱粉のα化が大いに進行しているが、米飯の中心部3が澱粉のα化があまり進行していないと、湯や調味液を添加して電子レンジ調理加熱などの短時間再加熱しても、米粒が原形を留めており、米粒内の澱粉質が流出しなくなり、ベトついたりせず、ドロドロになったりせず、湯や調味液が濁ったりせず、軟らかくなり過ぎて糊のような食感にならず、食すると適度な歯応えを有するようになる。
【0037】
次に、図3および図4を用いて本発明の加工米飯を充填して完全に密封したガスバリヤー性耐熱容器を、調味液などを充填し密封包装した包装袋とともに一体的に包装した包装体を用いて、電子レンジで加熱調理して食する1例を説明する。
図3および図4に示したように、10は包装体であり、本発明の加工米飯を充填し密封したガスバリヤー性耐熱容器11の上に、調味液などを充填し密封した包装袋12を載せて、底部側からその上部側を経て底部側にわたるように縦巻き状にするスリーブ型カートン13にて包装してなるものである。
耐熱容器11の内部には、前記のように電子レンジ加熱調理を行なえるように前加工された本発明の加工米飯が充填され、上面開口を柔軟で耐熱性のある樹脂シートからなる蓋材14で覆って、開口周縁をヒートシールして閉じて完全に密封してあるが、蓋材14は必要時に手操作で剥ぎ取ることができるシール強度でヒートシールしてある。
【0038】
包装袋12の中には、耐熱容器11に収容した本発明の加工米飯と合わせて食することのできる調味液などが電子レンジ加熱調理を行なえるように前加工されて収容されていて、相対向した二枚の樹脂シート又は金属箔のラミネート材からなる包装材料の辺部同士をヒートシールすることにより全体として略偏平となるように形成されている。
【0039】
電子レンジ加熱調理する際は、まず耐熱容器11のスリーブ型カートン13のカバー部15を開き、耐熱容器11の蓋材14の一部を捲って開くとともに、前記包装袋12を開封し、蓋材14を捲って形成した開口から包装袋12側の調味液などを耐熱容器11に入れて本発明の加工米飯と均一に合わせる。
次に、蓋材14を戻して開口を閉じるとともに、カバー部15を戻してそのカバー部15の係止爪16を座部17における係止部18に係止させる。こうすることによりカバー部15は蓋材14を覆うように被せ付けられた状態が維持される。そして、スリーブ型カートン13と耐熱容器11との組み合わせとなった包装体10を前記カバー部15が被せ付けられた形態のまま電子レンジの庫内に入れ、電子レンジ加熱調理を短時間行なう。
加熱が終了したら、包装体10を電子レンジ庫内から取り出し、カバー部15を開き、蓋材14を取り除くことにより、本発明の加工米飯調理物を食することができる。
電子レンジ加熱調理されて熱くなった耐熱容器11に直接触れることなく取り扱うことができるので火傷を防ぐことができる。
【0040】
次に実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明の主旨を逸脱しない限りこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0041】
図2に示したように精白米を常温の水で洗米して表面の糠を除去し、浸漬水に浸漬することなく、底部に米粒が流出しない程度のステンレスメッシュ5を備えた水切り容器6に充填し、常温の水を米粒の周囲に通過させて、攪拌することを数回、約1時間行った。水切り後、米粒の表面が濡れたまま約1時間放置して表面を少し乾燥させた。米粒の水分含量は当初の約10〜24質量%が維持されており、米粒の膨潤が生じていなかった。
引き続き、炊飯直前に米に対して1.0倍量(質量比)の炊き水を添加し、常法に従って水蒸気を用いて常圧炊飯を行った。
炊飯した後、米飯が比較的温かい約60℃以上のうちに、無菌設備中でバリヤー性耐熱容器中に脱酸素剤と共に充填しヒートシールして完全に密封し、本発明の加工米飯を得た。
【0042】
本発明の加工米飯の含水量(赤外線水分計を用い、乾燥温度140℃、乾燥時間20分の条件で測定した値)は約55質量%であり、米飯の表面近傍の澱粉のα化度が97%、米飯の中心部の澱粉のα化度が88%であった。
【0043】
本発明の加工米飯100gに対して、レトルトパウチに充填密封し加圧殺菌したキノコ風味クリーム状リゾットソース100gの割合で均一に合わせ、1500Wの電子レンジで40秒加熱して加工米飯調理物を得た。
【0044】
得られた加工米飯調理物は、米粒が原形を留めており、澱粉質が流出してベトついたりせず、ドロドロになったりせず、湯や調味液が濁ったりせず、軟らかくなり過ぎて糊のような食感にならず、食すると適度な歯応えを有しており、食味・食感ともに極めて良好であった。
本発明の加工米飯を常温で約12ケ月間保存した後、同様にして評価したが、保存前と同等の結果が得られた。
【実施例2】
【0045】
本発明の加工米飯100gに対して、雑炊風調味液300g用いた以外は実施例1と同様にして本発明の加工米飯調理物を得た。
得られた加工米飯調理物は、米粒が原形を留めており、澱粉質が流出してベトついたりせず、ドロドロになったりせず、湯や調味液が濁ったりせず、軟らかくなり過ぎて糊のような食感にならず、食すると適度な歯応えを有しており、食味・食感ともに極めて良好であった。
本発明の加工米飯を常温で約12ケ月間保存した後、同様にして評価したが、保存前と同等の結果が得られた。
【実施例3】
【0046】
本発明の加工米飯100gに対して、熱湯300gを注ぎ、約1分後に湯を捨て、雑炊風粉末調味料を所定量添加して熱湯300gを注ぎ雑炊風の本発明の加工米飯調理物を得た。
得られた加工米飯調理物は、米粒が原形を留めており、澱粉質が流出してベトついたりせず、ドロドロになったりせず、湯や調味液が濁ったりせず、軟らかくなり過ぎて糊のような食感にならず、食すると適度な歯応えを有しており、食味・食感ともに極めて良好であった。
本発明の加工米飯を常温で約12ケ月間保存した後、同様にして評価したが、保存前と同等の結果が得られた。
【0047】
上記実施の形態の説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或は範囲を減縮するものではない。又、本発明の各部構成は上記実施の形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の加工米飯は、精白米を常温の水で洗米後、浸漬水に浸漬することなく、常温の水を米粒の周囲に通過させ水切りし、次いで炊き水を添加して炊飯後、ガスバリヤー性耐熱容器中に充填し、完全に密封した加工米飯であって、米飯の表面近傍は澱粉のα化が大いに進行しているが、米飯の中心部は澱粉のα化があまり進行しておらず、米飯の表面近傍の澱粉のα化度をA、米飯の中心部の澱粉のα化度をBとすると、A>Bの関係があり、そして湯や調味液とともに加熱して調理した後においても米粒が原形を留めており、食すると米飯の中心部に適度な歯応えを有することを特徴とするものであり、一般の人でも湯や調味液を添加して電子レンジ調理加熱などの短時間加熱で雑炊、茶漬け、五目ご飯、炊き込みご飯、クッパ、ドリア、チャーハン、ライスサラダ、ピラフ、パエリア、リゾットなどの調理物を容易に得ることができる、安価で食味・食感に優れる長期保存可能な加工米飯であって、これらの調理物とした際に米粒が原形を留めており、澱粉質が流出してベトついたりせず、ドロドロになったりせず、湯や調味液が濁ったりせず、軟らかくなり過ぎて糊のような食感にならず、食すると適度な歯応えを有するという、顕著な効果を奏するので、産業上の利用価値が高い。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の加工米飯の断面を模式的に説明する説明図である。
【図2】図1に示した本発明の加工米飯の製造工程の1例を説明する説明図である。
【図3】本発明の加工米飯を充填して完全に密封したガスバリヤー性耐熱容器を、調味液などを充填し密封包装した包装袋とともに一体的に包装した包装体の1例を説明する説明図である。
【図4】図3に示した包装体のカバー部を開けた状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0050】
1 本発明の加工米飯
2 米飯の表面近傍
3 米飯の中心部
4 洗米後の精白米
5 ステンレスメッシュ
6 水切り容器
11 ガスバリヤー性耐熱容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
精白米を常温の水で洗米後、浸漬水に浸漬することなく、常温の水を米粒の周囲に通過させ水切りし、次いで炊き水を添加して炊飯後、ガスバリヤー性耐熱容器中に充填し、完全に密封した加工米飯であって、米飯の表面近傍は澱粉のα化が大いに進行しているが、米飯の中心部は澱粉のα化があまり進行しておらず、米飯の表面近傍の澱粉のα化度をA、米飯の中心部の澱粉のα化度をBとすると、A>Bの関係があり、そして湯や調味液とともに加熱して調理した後においても米粒が原形を留めており、食すると米飯の中心部に適度な歯応えを有することを特徴とする加工米飯。
【請求項2】
請求項1記載の加工米飯に湯や調味液を添加し、加熱して調理したことを特徴とする加工米飯調理物。
【請求項3】
雑炊、茶漬け、五目ご飯、炊き込みご飯、クッパ、ドリア、チャーハン、ライスサラダ、ピラフ、パエリア、リゾットのいずれかであることを特徴とする請求項2記載の加工米飯調理物。
【請求項4】
レトルト処理、加圧殺菌処理、冷蔵処理、冷凍処理から選ばれる処理がなされていることを特徴とする請求項1記載の加工米飯または請求項2記載の加工米飯調理物。
【請求項5】
下記の(1)〜(5)工程により製造することを特徴とする請求項1記載の加工米飯の製法。
(1)精白米を常温の水で洗米して表面の糠を除去する洗米工程。
(2)洗米後、浸漬水に浸漬することなく、水切り容器に充填し、米粒の水分含量が当初の10〜24質量%を維持し増加しないように、かつ米粒の膨潤が生じないように常温の水を米粒の周囲に通過させて残りの糠を洗いながし、水切りする水切り工程。
(3)次いで炊飯直前に炊き水を添加して炊飯する炊飯工程。
(4)炊飯後、無菌設備中でガスバリヤー性耐熱容器中に充填し、完全に密封する包装工程。
(5)必要に応じて、さらにレトルト処理、加圧殺菌処理、冷蔵処理、冷凍処理から選ばれる処理を行う処理工程。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−34190(P2006−34190A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−220260(P2004−220260)
【出願日】平成16年7月28日(2004.7.28)
【出願人】(000116297)ヱスビー食品株式会社 (40)
【Fターム(参考)】