説明

加熱具及びその製造方法

【課題】製造時の変形を防止することができる加熱具の製造方法、及び加熱具を提供する。
【解決手段】本発明の加熱具3の製造方法は、金属板31の一方の面に、線状に延び幅方向に連通する第1及び第2の凹部311、312を形成する第1の工程と、金属板31の第1の凹部311に、線状に形成された金属製の発熱体33を配置する第2の工程と、第2の凹部312の少なくとも一部にろう材32を充填し、ろう材32を発熱体33と第2の凹部312に接触させる第3の工程と、ろう材32にレーザを照射して、ろう材32を溶解させる第4の工程と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調理などに用いられる加熱具及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、金属製の発熱体と金属板がろう付けにより接合され、熱効率の高い加熱具の製造方法として、高温の炉の中でろう材を溶解させる炉中ろう付けが知られている。この炉中ろう付けによると、発熱体と金属板の全体が加熱されて、熱膨張により変形するため、特許文献1においては、発熱体と金属板を熱膨張とは反対に変形させておく方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−162390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示される方法においても、熱膨張による変形は、発熱体と金属板の材質、形状、大きさに依存するため、予測して変形させておくことは難しく、平坦な形状の加熱具を製造することが困難であった。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであって、製造時の変形を防止することができる加熱具の製造方法、及び加熱具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の加熱具の製造方法は、金属板の一方の面に、線状に延び幅方向に連通する第1及び第2の凹部を形成する第1の工程と、前記金属板の第1の凹部に、線状に形成された金属製の発熱体を配置する第2の工程と、前記第2の凹部の少なくとも一部にろう材を充填し、前記ろう材を前記発熱体と前記第2の凹部に接触させる第3の工程と、前記ろう材にレーザを照射して、前記ろう材を溶解させる第4の工程と、を備えている。
【0007】
この構成によれば、金属板に、発熱体を配置する第1の凹部と、ろう材を充填する第2の凹部を形成しているため、発熱体とろう材の位置決めを確実に行うことができる。そのため、ろう材に対してレーザを正確に照射することができ、発熱体や金属板にレーザが直接照射されるのを防止することができる。その結果、金属板と発熱体には接合部分に対する局所的な熱しか伝達しないため、熱膨張による変形を小さくすることができ、平坦な形状を有する加熱具を製造することができる。ここで、ろう材は、第2の凹部の全部、一部又は一部ずつなど、第2の凹部の少なくとも一部に充填される。
【0008】
上記加熱具の製造方法においては、ろう材を粉末状にすることができる。例えば、線状のろう材を用いると、レーザにより溶融する際に、熱による変形でレーザを照射していない部分が動くおそれがあり、ろう材の位置決めをやり直す必要がある。これに対して、ろう材を粉末状にすると、レーザを照射しても、他の部分が動くことはなく、ろう材のズレを確実に防止することができる。したがって、発熱体と金属板を正確に接合させることができる。
【0009】
また、上記製造方法において、第1の工程では、第1の凹部を幅方向に挟むように、一対の第2の凹部を形成し、第4の工程では、平面視において、前記第1の凹部を幅方向に挟んで千鳥状にレーザを照射することができる。このようにすると、一対の第2の凹部の全長に亘ってレーザを照射する必要がないため、レーザの照射によって伝達する熱をより小さくすることができる。但し、溶解されたろう材は千鳥状に配置されているため、発熱体を両側からバランスよく固定することができ、接合強度が低下するのを防止することができる。この製造方法においては、ろう材を、予め一対の第2の凹部に千鳥状に充填しておいてもよい。千鳥状に充填していない場合には、レーザが照射されず溶解されなかったろう材が残存するため、このろう材を後から取り除くようにしてもよい。
【0010】
本発明に係る加熱具は、線状に延び幅方向に連通する第1及び第2の凹部が、一方の面に形成された金属板と、線状に形成され、前記第1の凹部に配置された金属製の発熱体と、前記第2の凹部の少なくとも一部に充填され、前記発熱体と前記第2の凹部に接触し、レーザの照射によって溶解されたろう材と、を備えている。
【0011】
この構成によれば、上述したような製造時の熱変形を防止することに加え、金属板に形成された第1の凹部に発熱体が配置されているため、発熱体と金属板との接触面積を大きくすることができる。そのため、発熱体から金属板へ伝達する熱が多くなり、熱効率を高くすることができる。また、金属板に形成された第2の凹部にろう材が配置されているため、金属板及び発熱体に対するろう材の接触面積が広くなり、金属板と発熱体の接合強度を高くすることができる。
【0012】
上記加熱具において、金属板には、第1の凹部を幅方向に挟むように、一対の前記第2の凹部が形成されており、溶解されたろう材は、平面視において、前記第1の凹部を幅方向に挟んで千鳥状に配置されているようにすることができる。
【0013】
この構成によれば、溶解されたろう材が配置されていない第2の凹部には、隙間が形成されている。これにより、この加熱具を繰り返し使用した場合には、この隙間に発熱体の熱膨張による変形を吸収することができる。例えば、発熱体を挟む両側の第2の凹部にろう材を配置した場合には、両側のろう材が負荷を受け、クラックが発生する可能性があるが、上記のように千鳥状に配置すると、ろう材に作用する負荷を減少させることができ、クラックが生じるのを防止することができる。その結果、加熱具の耐久性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る加熱具及びその製造方法によれば、製造時の変形を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る加熱具が適用されたお好み焼き機を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る加熱具の一実施形態を示す斜視図である。
【図3】図2の平面図である。
【図4】図3のA−A線断面図である。
【図5】図3のA−A線拡大断面図である。
【図6】本発明に係る加熱具の製造工程を示す図である。
【図7】本発明に係る加熱具の他の実施形態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る加熱具をお好み焼き機に適用した場合の一実施形態について図面を参照して説明する。図1は本実施形態に係るお好み焼き機の斜視図、図2は図1のお好み焼き機に用いられる加熱具を下側から見た斜視図、図3は図2の平面図、図4は図3のA−A線断面図、図5は図3のA−A線拡大断面図である。
【0017】
図1に示すように、このお好み焼き機1は、貫通孔が形成された支持台2に、板状の加熱具3を嵌め込むことで構成されている。支持台2の側面には、加熱具3の温度を制御する制御装置4が取り付けられており、この制御装置4を操作することで、後述するように加熱具3に供給する電流を調整することができ、これによって温度を調整することができる。
【0018】
続いて、加熱具3について詳細に説明する。図2、図3及び図4に示すように、この加熱具3は、矩形状の金属板31と、この金属板31にろう材32によって接合された複数の発熱体33によって構成されている。各発熱体33は、断面円形で線状に延びるように形成されており、金属板31の一端部から他端部に向かって平行に並ぶように配置されている。金属板31の材質は、調理器具として、熱伝導や加工性の観点から軟鋼のものが好ましいが、硬鋼、合金綱、アルミニウムなど特に限定されるものではない。
【0019】
図4に示すように、金属板31の一方の面には、発熱体33を固定するための複数の溝310が平行に形成されている。各溝310は、発熱体33を配置する第1の凹部311と、この第1の凹部311の両側に沿って延びる一対の第2の凹部312とで形成されている。第1の凹部311は、発熱体33の断面形状とほぼ一致するように、断面円弧状に形成されている。より詳細には、図5に示すように、第1の凹部311は、発熱体33が配置されたときに、発熱体33の中心が金属板31の表面よりも下方に配置されるような深さで形成される。また、各第2の凹部312は、断面矩形状に形成され、第1の凹部311と連通している。この第2の凹部312には、ろう材32が充填され、ろう材32をレーザで溶融させることで、発熱体33を金属板31に接合させている。
【0020】
発熱体33は、金属製のパイプと、このパイプの中に挿入される線状の発熱導体とを備えており、パイプと発熱導体の隙間に絶縁材が充填されている。より具体的には、例えば、ステンレス綱(SUS321)からなるパイプの中に、ニクロム線が挿入されたシーズヒーターを使用することができる。この金属パイプは、例えば、断面視円形の外径5〜12mm、肉厚0.5〜1.0mm、長さ300〜1000mmの形状のものを用いることができる。
【0021】
ろう材32としては、ろう付け温度が1065〜1205℃のニッケルろうが好ましいが、レーザの照射によって溶解されるものであれば、銀ろう、銅ろう、燐銅ろうなどいずれのものでもよい。ろう材32の形状は、線状、ペースト状、粉末状いずれのものであってもよいが、本実施形態においては、粉末状のものが用いられる。
【0022】
次に、上記のように構成された加熱具30の製造方法について、図6を参照して説明する。まず、図6(a)、(b)に示すように、金属板31の一方の面に、複数の溝310を並行に形成する。その際、まず、複数の第1の凹部311を切削加工により形成した後、各第1の凹部311の両側に沿って一対の第2の凹部312を形成する。
【0023】
続いて、図6(c)に示すように、第1の凹部311に発熱体33を配置する。これに続いて、図6(d)に示すように、第2の凹部312に粉末のろう材32を充填する。このとき、第1及び第2の凹部311、312は連通しているので、充填されたろう材32は、発熱体33と接触する。また、ろう材32は、金属板31の表面まで充填すればよいため、これによって、ろう材32の充填量を容易に把握することができる。これに続いて、図6(e)に示すように、充填されたろう材32にレーザを照射して、ろう材32を溶解させる。このとき、レーザの照射は、例えばレーザパワー2〜4kW、速度500〜2000mm/minの加工条件によって行うことができる。こうして、ろう材32が溶解されることで、金属板31と発熱体33とが接合される。このとき、発熱体33は、断面円形の中心が金属板31の表面よりも下側にあるため、金属板31の表面よりも上側に露出する部分は、金属板31の表面から離れるにしたがって、幅が小さくなる。すなわち、平面視において、発熱体33によってろう材32が隠れることがなくなり、これによってろう材32をレーザによって確実に照射することができる。こうして、発熱体33を金属板31に接合させた後、発熱体33を導線によって制御装置4に接続する。
【0024】
続いて、上記のように構成されたお好み焼き機1の使用方法について説明する。まず、制御装置4により、発熱体33に対し電流を供給する。これにより、発熱体33内のニクロム線に電流が流れ、熱を発する。この熱は、発熱体33の表面から金属板31に伝達され、これによって金属板31が加熱される。こうして、金属板31が加熱されると、金属板31に食材を載せて調理を行うことが可能になる。なお、金属板31の加熱温度は、制御装置4により調整可能であり、制御装置4を操作することで、発熱体33に供給される電流が調整され、金属板31の温度を調整することができる。このように、電気を用いたお好み焼き機1は、ガスが使えない場所においても設置できる。
【0025】
以上のように、本実施形態によれば、金属板31に、発熱体33を配置する第1の凹部311と、ろう材32を配置する第2の凹部312を形成しているため、発熱体33とろう材32の位置決めを確実に行うことができる。そのため、ろう材32に対してレーザを正確に照射することができ、発熱体33や金属板31にレーザが直接照射されるのを防止することができる。その結果、金属板31と発熱体33には接合部分に対する局所的な熱しか伝達しないため、熱膨張による変形を小さくすることができ、平坦な形状を有する加熱具3を製造することができる。
【0026】
特に、誤って発熱体33にレーザが照射されると、発熱体33のパイプの肉厚は薄いため、容易に穴があき、発熱体33の絶縁不良が引き起こされるおそれがあるが、本実施形態においては、このようなレーザの誤照射を防止することができ、発熱体33の絶縁不良の発生を防止することができる。
【0027】
また、ろう材32が粉末状であるため、第2の凹部312にろう材32を充填してすり切るだけで、必要量を過不足なく、充填することができる。また、ろう材32にレーザが照射されると、ろう材32も金属であるため熱膨張を起こし、位置決めされた第2の凹部312からズレる可能性があるが、本実施形態においては、ろう材32は第2の凹部312に充填されて、金属板31と発熱体33によって固定された状態にあるため、レーザ照射によるろう材32のズレを防止することができる。これにより、ろう材32が金属板31と発熱体33に接触したままでレーザを照射することができ、金属板31と発熱体33を接合することができる。さらに、ろう材32が粉末状やペースト状の場合には、充填されたろう材32全体に熱が伝達しにくく、全体がつながった、線状のものに比べて熱膨張による影響が少ないため、ろう材32のズレを確実に防止することができる。
【0028】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の具体的な態様が上記実施形態に限定されるものではない。例えば、図7に示すように、ろう材32を平面視において第1の凹部311を幅方向に挟んで千鳥状に充填し、千鳥状にレーザを照射することによって、溶解されたろう材32を、千鳥状に配置することができる。これにより、溶解されたろう材32が配置されていない第2の凹部312には、隙間が形成されている。このようにすると、次のような効果を得ることができる。すなわち、お好み焼き機1を繰り返し使用した場合において、発熱体33の熱膨張による変形が、この隙間に吸収されるため、溶解されたろう材32にかかる負荷を減少することができ、溶解されたろう材32にはクラックが生じにくく、お好み焼き機1の耐久性を向上することができる。この実施形態の製造方法においては、ろう材32を、予め一対の第2の凹部312に千鳥状に充填する必要はなく、一対の第2の凹部312にある程度充填しておき、千鳥状に照射するレーザによって溶解されなかったろう材32を後から取り除くようにしてもよい。
【0029】
レーザには、例えば半導体レーザを使用したが、ろう材32を溶解できるものであれば、固体レーザ、液体レーザ、ガスレーザいずれのものでもよい。
【0030】
上記実施形態においては、発熱体33を固定せずにレーザの照射を行っているが、このときに発熱体33を金属板31に仮止めしておいてもよい。この仮止めとしては、例えば、発熱体33を固定部材により金属板31に固定し、充填されたろう材32にレーザを所々照射し点付けして行うことができる。本付けの際には、この固定部材を取り外す。これにより、発熱体33が金属板31からズレることはなく、発熱体33と金属板31をより確実に接合させることができる。
【0031】
上記実施形態においては、一対の第2の凹部312を、第1の凹部311の両側に形成しているが、いずれか一方にだけ形成されてもよい。また、発熱体33、第1の凹部311、第2の凹部312の断面形状は、特には限定されず、上述した以外の円形、矩形、円弧状など、種々の形態をとることができる。さらに、金属板31の形状は、上記のように矩形状以外に、使用目的に応じて、円形、楕円形などに変更することができる。また、本発明の加熱具3は、お好み焼き機1以外でも、食材を調理したり、材料に熱を加えたり、種々の用途に適用することができる。
【符号の説明】
【0032】
1 お好み焼き機
2 支持台
3 加熱具
4 制御装置
31 金属板
32 ろう材
33 発熱体
310 溝
311 第1の凹部
312 第2の凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板の一方の面に、線状に延び幅方向に連通する第1及び第2の凹部を形成する第1の工程と、
前記金属板の第1の凹部に、線状に形成された金属製の発熱体を配置する第2の工程と、
前記第2の凹部の少なくとも一部にろう材を充填し、前記ろう材を前記発熱体と前記第2の凹部に接触させる第3の工程と、
前記ろう材にレーザを照射して、前記ろう材を溶解させる第4の工程と、
を備えている、加熱具の製造方法。
【請求項2】
前記ろう材は粉末状である、請求項1に記載の加熱具の製造方法。
【請求項3】
前記第1の工程では、前記第1の凹部を幅方向に挟むように、一対の前記第2の凹部を形成し、
前記第4の工程では、平面視において、前記第1の凹部を幅方向に挟んで千鳥状にレーザを照射する、請求項1又は2に記載の加熱具の製造方法。
【請求項4】
線状に延び幅方向に連通する第1及び第2の凹部が、一方の面に形成された金属板と、
線状に形成され、前記第1の凹部に配置された金属製の発熱体と、
前記第2の凹部の少なくとも一部に充填され、前記発熱体と前記第2の凹部に接触し、レーザの照射によって溶解されたろう材と、
を備えている、加熱具。
【請求項5】
前記溶解されたろう材は、粉末状のろう材が溶解されたものである請求項4に記載の加熱具。
【請求項6】
前記金属板には、前記第1の凹部を幅方向に挟むように、一対の前記第2の凹部が形成されており、
前記溶解されたろう材は、平面視において、前記第1の凹部を幅方向に挟んで千鳥状に配置されている、請求項4又は5に記載の加熱具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−9164(P2012−9164A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−141561(P2010−141561)
【出願日】平成22年6月22日(2010.6.22)
【出願人】(508130122)河内温度株式会社 (3)
【出願人】(502036756)岡野鈑金工業株式会社 (1)
【出願人】(510174303)株式会社真上電子 (1)
【出願人】(000205627)大阪府 (238)
【Fターム(参考)】