説明

加熱処理装置

【課題】 基板が大型であっても基板の反りや破損等の発生を抑止することができるとともに、基板を収容するケーシングの小型化を図ることが可能な加熱処理装置を提供する。
【解決手段】 加熱処理装置28は、基板Gを一方向に搬送する搬送路としてのコロ搬送機構5と、搬送路を囲繞するように設けられたケーシング6と、ケーシング6内に搬送路を搬送される基板Gの両面側に、基板Gに近接するように搬送路に沿ってそれぞれ設けられた第1および第2の面状ヒーター71a〜71r、72a〜72rとを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラットパネルディスプレイ(FPD)用のガラス基板等の基板に加熱処理を施す加熱処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
FPDの製造においては、FPD用のガラス基板上に回路パターンを形成するためにフォトリソグラフィ技術が用いられる。フォトリソグラフィによる回路パターンの形成は、ガラス基板上にレジスト液を塗布してレジスト膜を形成し、回路パターンに対応するようにレジスト膜を露光し、これを現像処理するといった手順で行われる。
【0003】
フォトリソグラフィ技術では一般的に、レジスト膜の形成後および現像処理後に、レジスト膜を乾燥させるためにガラス基板に対して加熱処理が施される。このような加熱処理には、ガラス基板を収容可能なケーシングと、ケーシング内に設けられた、ガラス基板を載置して加熱する加熱プレートと、加熱プレート上から突出および没入するように昇降可能に設けられ、搬送アームにより把持されて搬送されたガラス基板を加熱プレート上に受け渡す昇降ピンとを具備した加熱処理装置が用いられている(例えば特許文献1、2、3参照)。
【0004】
ところで、近時、FPDの大型化が指向され、一辺が2m以上にもなる巨大なガラス基板が出現するに至っている。これに対して、上述した従来の加熱処理装置では、ガラス基板の加熱手段がガラス基板を載置する加熱プレートであるため、ガラス基板が大型になると、基板全体を均等に加熱することが難しくなり、加熱処理によってガラス基板に反りが生じてしまうおそれがある。また、ガラス基板は大型化に伴って取り扱い性が悪くなるため、この加熱処理装置では、ガラス基板が大型になると、搬送アームと昇降ピンとの間または昇降ピンと加熱プレートとの間の受け渡しの際の衝撃によって破損してしまうおそれもある。
【0005】
その一方で、加熱処理装置では、基板の大型化に伴う装置自体の著しい巨大化を回避するため、ケーシング内の基板周りのスペースを極力小さく抑えてケーシングを小型化することが望まれている。
【特許文献1】特開2002−231792号公報
【特許文献2】特開2001−196299号公報
【特許文献3】特開平11−204428号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであって、基板が大型であっても基板の反りや破損等の不具合の発生を抑止することができるとともに、基板を収容するケーシングの小型化を図ることが可能な加熱処理装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、基板に加熱処理を施す加熱処理装置であって、基板を一方向に搬送する搬送路と、前記搬送路を囲繞するように設けられたケーシングと、前記搬送路に沿って前記ケーシング内に、前記搬送路を搬送される基板に近接するように基板の両面側にそれぞれ設けられた第1および第2の面状ヒーターとを具備することを特徴とする加熱処理装置を提供する。
【0008】
本発明において、前記搬送路は、一方向に間隔をあけて複数設けられたコロ部材の回転によって基板をコロ搬送し、前記第1の面状ヒーターは、前記コロ部材同士の間にそれぞれ設けられて搬送方向に複数配列されていることが好ましい。この場合に、前記第2の面状ヒーターは、前記第1の面状ヒーターの配列ピッチと対応するように搬送方向に複数配列され、前記複数の第1および第2の面状ヒーターは、個別または搬送方向に区分けされたグループごとに温度制御可能であることが好ましい。さらに、この場合に、前記複数の第1および第2の面状ヒーターが、個別または搬送方向に区分けされたグループごとに温度制御されることにより、前記複数の第1および第2の面状ヒーターからなるヒーター群は所定の温度プロファイルを形成することが好ましく、前記第1および第2の面状ヒーターはそれぞれ、前記搬送路の幅方向に複数に区分けされた領域ごとに温度制御可能であることが好ましく、前記第2の面状ヒーターは、前記ケーシングの一壁部に取り付けられており、前記ケーシングの前記一壁部は、前記ケーシング内を開閉する扉として機能することが好ましい。また、これらの場合に、前記コロ部材は、少なくとも外周面が熱伝導率の低い材料からなることが好ましい。
【0009】
以上の本発明において、前記ケーシングの壁部は、互いに空間をあけて設けられた内壁および外壁を備えた二重壁構造を有しており、前記内壁および外壁の間の空間が前記ケーシング内外を断熱する空気断熱層として機能することが好ましい。
【0010】
さらに、以上の本発明において、前記搬送路を搬送される基板の搬送経路と前記第1および第2の面状ヒーターとの間隔はそれぞれ、5〜30mmであることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、基板を一方向に搬送する搬送路を設けるとともに、基板を加熱する第1および第2の面状ヒーターを搬送路に沿って設けたため、基板に搬送による大きな衝撃が加わることを防止しつつ加熱処理を施すことができ、しかも、搬送路を囲繞するようにケーシングを設けるとともに、ケーシング内に、搬送路を搬送される基板に近接するように基板の両面側にそれぞれ、第1および第2の面状ヒーターを設けたため、基板の表面および裏面を均等に加熱することを可能としながらも、ケーシング内の基板両面側のスペースを小さく抑えることができる。したがって、基板が大型であっても基板の破損や反り等の不具合の発生を抑止することができるとともに、基板を収容するケーシングの薄型化、すなわち小型化を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について具体的に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る加熱処理装置が搭載された、FPD用のガラス基板(以下、単に「基板」と記す)へのレジスト膜の形成および露光処理後のレジスト膜の現像処理を行うレジスト塗布・現像処理システムの概略平面図である。
【0013】
レジスト塗布・現像処理システム100は、複数の基板Gを収容するためのカセットCが載置されるカセットステーション1と、基板Gにレジスト塗布および現像を含む一連の処理を施す処理ステーション2と、基板Gに露光処理を施す露光装置9との間で基板Gの受け渡しを行うインターフェースステーション4とを備えており、カセットステーション1およびインターフェースステーション4はそれぞれ、処理ステーション2の両側に配置されている。なお、図1において、レジスト塗布・現像処理システム100の長手方向をX方向、平面上においてX方向と直交する方向をY方向とする。
【0014】
カセットステーション1は、カセットCをY方向に並列に載置可能な載置台12と、処理ステーション2との間で基板Gの搬入出を行う搬送装置11を備え、載置台12と外部との間でカセットCの搬送が行われる。搬送装置11に設けられた搬送アーム11aは、Y方向に延びるガイド10に沿って移動可能であるとともに、上下動、前後動および水平回転可能であり、カセットCと処理ステーション2との間で基板Gの搬入出を行うものである。
【0015】
処理ステーション2は、カセットステーション1とインターフェースステーション4との間にX方向に伸びる平行な2列の基板Gの搬送ラインA、Bを有している。搬送ラインAは、コロ搬送やベルト搬送等の所謂平流し搬送によって基板Gをカセットステーション1側からインターフェースステーション4側に向かって搬送するように構成され、搬送ラインBは、コロ搬送やベルト搬送等の所謂平流し搬送によって基板Gをインターフェースステーション4側からカセットステーション1側に向かって搬送するように構成されている。
【0016】
搬送ラインA上には、カセットステーション1側からインターフェースステーション4側に向かって、エキシマUV照射ユニット(e−UV)21、スクラブ洗浄ユニット(SCR)22、プレヒートユニット(PH)23、アドヒージョンユニット(AD)24、冷却ユニット(COL)25、レジスト塗布ユニット(CT)26、減圧乾燥ユニット(DP)27、加熱処理ユニット(HT)28、冷却ユニット(COL)29が順に配列されている。
【0017】
エキシマUV照射ユニット(e−UV)21は基板Gに含まれる有機物の除去処理を行い、スクラブ洗浄ユニット(SCR)22は基板Gのスクラブ洗浄処理および乾燥処理を行う。プレヒートユニット(PH)23は基板Gの加熱処理を行い、アドヒージョンユニット(AD)24は基板Gの疎水化処理を行い、冷却ユニット(COL)25は基板Gを冷却する。レジスト塗布ユニット(CT)26は基板G上にレジスト液を供給してレジスト膜を形成し、減圧乾燥ユニット(DP)27は、減圧下で基板G上のレジスト膜に含まれる揮発成分を蒸発させてレジスト膜を乾燥させる。後に詳述する加熱処理ユニット(HT)28は基板Gの加熱処理を行い、冷却ユニット(COL)29は冷却ユニット(COL)25と同様に基板Gを冷却する。
【0018】
搬送ラインB上には、インターフェースステーション4側からカセットステーション1側に向かって、現像ユニット(DEV)30、加熱処理ユニット(HT)31、冷却ユニット(COL)32が順に配列されている。なお、冷却ユニット(COL)32とセットステーション1との間には、レジスト塗布および現像を含む一連の処理が施された基板Gを検査する検査装置(IP)35が設けられている。
【0019】
現像ユニット(DEV)30は、基板G上への現像液の塗布、基板Gのリンス処理、基板Gの乾燥処理を順次行う。加熱処理ユニット(HT)31は、加熱処理ユニット(HT)28と同様に基板Gの加熱処理を行い、冷却ユニット(COL)32は、冷却ユニット(COL)25と同様に基板Gを冷却する。
【0020】
インターフェースステーション4は、基板Gを収容可能なバッファカセットが配置された、基板Gの受け渡し部であるロータリーステージ(RS)44と、搬送ラインAを搬送された基板Gを受け取ってロータリーステージ(RS)44に搬送する搬送アーム43とを備えている。搬送アーム43は、上下動、前後動および水平回転可能であり、搬送アーム43に隣接して設けられた露光装置9と、搬送アーム43および現像ユニット(DEV)30に隣接して設けられた、周辺露光装置(EE)およびタイトラー(TITLER)を有する外部装置ブロック90とにもアクセス可能である。
【0021】
レジスト塗布・現像処理装置100は、CPUを備えたプロセスコントローラ101に接続されて制御されるように構成されている。プロセスコントローラ101には、工程管理者がレジスト塗布・現像処理装置100の各部または各ユニットを管理するためにコマンドの入力操作等を行うキーボードや、各部または各ユニットの稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等からなるユーザーインターフェース102と、レジスト塗布・現像処理装置100で実行される加熱処理や冷却処理などの各種処理をプロセスコントローラ101の制御にて実現するための制御プログラムや処理条件データ等が記録されたレシピが格納された記憶部103とが接続されている。
【0022】
そして、必要に応じて、ユーザーインターフェース102からの指示等にて任意のレシピを記憶部103から呼び出してプロセスコントローラ101に実行させることで、プロセスコントローラ101の制御下で、レジスト塗布・現像処理装置100で所望の処理が行われる。また、制御プログラムや処理条件データ等のレシピは、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体、例えばCD−ROM、ハードディスク、フレキシブルディスク、フラッシュメモリなどに格納された状態のものを利用したり、あるいは、他の装置から、例えば専用回線を介して随時伝送させてオンラインで利用したりすることも可能である。
【0023】
このように構成されたレジスト塗布現像処理装置100においては、まず、カセットステーション1の載置台12に載置されたカセットC内の基板Gが、搬送装置11の搬送アーム11aによって処理ステーション2の搬送ラインAの上流側端部に搬送され、さらに搬送ラインA上を搬送されて、エキシマUV照射ユニット(e−UV)21で基板Gに含まれる有機物の除去処理が行われる。エキシマUV照射ユニット(e−UV)21での有機物の除去処理が終了した基板Gは、搬送ラインA上を搬送されて、スクラブ洗浄ユニット(SCR)22でスクラブ洗浄処理および乾燥処理が施される。
【0024】
スクラブ洗浄ユニット(SCR)22でのスクラブ洗浄処理および乾燥処理が終了した基板Gは、搬送ラインA上を搬送されて、プレヒートユニット(PH)23で加熱処理が施され脱水される。プレヒートユニット(PH)23での加熱処理が終了した基板Gは、搬送ラインA上を搬送されて、アドヒージョンユニット(AD)24で疎水化処理が施される。アドヒージョンユニット(AD)24での疎水化処理が終了した基板Gは、搬送ラインA上を搬送されて、冷却ユニット(COL)25で冷却される。
【0025】
冷却ユニット(COL)25で冷却された基板Gは、搬送ラインA上を搬送されて、レジスト塗布ユニット(CT)26でレジスト膜が形成される。レジスト塗布ユニット(CT)26でのレジスト膜の形成は、基板Gが搬送ラインA上を搬送されながら、基板G上にレジスト液が供給されることにより行われる。
【0026】
レジスト塗布ユニット(CT)26でレジスト膜が形成された基板Gは、搬送ラインA上を搬送されて、減圧乾燥ユニット(DP)27で減圧雰囲気に晒されることにより、レジスト膜の乾燥処理が施される。
【0027】
減圧乾燥ユニット(DP)27でレジスト膜の乾燥処理が施された基板Gは、搬送ラインA上を搬送されて、加熱処理ユニット(HT)28で加熱処理が施され、レジスト膜に含まれる溶剤が除去される。基板Gの加熱処理は、後述するコロ搬送機構5によって搬送ラインA上を搬送されながら行われる。加熱処理ユニット(HT)28での加熱処理が終了した基板Gは、搬送ラインA上を搬送されて、冷却ユニット(COL)29で冷却される。
【0028】
冷却ユニット(COL)29で冷却された基板Gは、搬送ラインA上を下流側端部まで搬送された後、インターフェースステーション4の搬送アーム43によってロータリーステージ(RS)44に搬送される。次に、基板Gは、搬送アーム43によって外部装置ブロック90の周辺露光装置(EE)に搬送されて、周辺露光装置(EE)でレジスト膜の外周部(不要部分)を除去するための露光処理が施される。続いて、基板Gは、搬送アーム43により露光装置9に搬送され、レジスト膜に所定パターンの露光処理が施される。なお、基板Gは、一時的にロータリーステージ(RS)44上のバッファカセットに収容された後に、露光装置9に搬送される場合がある。露光処理が終了した基板Gは、搬送アーム43により外部装置ブロック90のタイトラー(TITLER)に搬送され、タイトラー(TITLER)で所定の情報が記される。
【0029】
タイトラー(TITLER)で所定の情報が記された基板Gは、搬送ラインB上を搬送されて、現像ユニット(DEV)30で現像液の塗布処理、リンス処理および乾燥処理が順次施される。現像液の塗布処理、リンス処理および乾燥処理は、例えば、基板Gが搬送ラインB上を搬送されながら基板G上に現像液が液盛りされ、次に、搬送が一旦停止されて基板が所定角度傾斜して現像液が流れ落ち、この状態で基板G上にリンス液が供給されて現像液が洗い流され、その後、基板Gが水平姿勢に戻って再び搬送されながら基板Gに乾燥ガスが吹き付けられるといった手順で行われる。
【0030】
現像ユニット(DEV)30での現像液の塗布処理、リンス処理および乾燥処理が終了した基板Gは、搬送ラインB上を搬送されて、加熱処理ユニット(HT)31で加熱処理が施され、レジスト膜に含まれる溶剤および水分が除去される。基板Gの加熱処理は、後述するコロ搬送機構5によって搬送ラインB上を搬送されながら行われる。なお、現像ユニット(DEV)30と加熱処理ユニット(HT)31との間には、現像液の脱色処理を行うi線UV照射ユニットを設けてもよい。加熱処理ユニット(HT)31での加熱処理が終了した基板Gは、搬送ラインB上を搬送されて、冷却ユニット(COL)32で冷却される。
【0031】
冷却ユニット(COL)32で冷却された基板Gは、搬送ラインB上を搬送されて、検査ユニット(IP)35で検査される。検査を通過した基板Gは、カセットステーション1に設けられた搬送装置11の搬送アーム11aにより載置台12に載置された所定のカセットCに収容されることとなる。
【0032】
次に、加熱処理ユニット(HT)28について詳細に説明する。なお、加熱処理ユニット(HT)31も加熱処理ユニット(HT)28と全く同じ構造を有している。
図2は加熱処理ユニット(HT)28(加熱処理装置)を示す平面方向の断面図であり、図3はその側面方向の断面図である。
【0033】
加熱処理ユニット(HT)28は、基板GをX方向一方側に向かって搬送するコロ搬送機構5と、コロ搬送機構5を囲繞または収納するように設けられたケーシング6と、ケーシング6内でコロ搬送機構5によってコロ搬送されている基板Gを加熱する加熱機構7とを具備している。
【0034】
コロ搬送機構5は、Y方向に延びる略円柱状の回転可能なコロ部材50をX方向に間隔をあけて複数有している。コロ部材50はそれぞれ、回転軸51が図示しないモーター等の駆動源に直接的または間接的に接続され、駆動源の駆動によって回転し、これにより、基板Gが複数のコロ部材50上をX方向一方側に向かって搬送される。また、コロ部材50はそれぞれ、基板Gの全幅(Y方向)にわたって接する形状を有しており、加熱機構7によって加熱された基板Gの熱が伝達しにくいように、外周面部52が樹脂等の熱伝導率の低い材料で形成され、回転軸51がアルミニウム、ステンレス、セラミック等の高強度ながらも熱伝導率の比較的低い材料で形成されている。コロ搬送機構5は、その搬送路または搬送面が搬送ラインA(加熱処理ユニット(HT)31においては搬送ラインB)の一部を構成している。
【0035】
ケーシング6は、薄型の箱状に形成されて基板Gを略水平状態で収容可能であり、X方向に対向する側壁部にそれぞれ、搬送ラインA(加熱処理ユニット(HT)31では搬送ラインB)上の基板Gが通過可能なY方向に延びるスリット状の搬入口61および搬出口62を有している。コロ搬送機構5のコロ部材50はそれぞれ、回転軸51がケーシング6のY方向に対向する側壁部に設けられた軸受け60に回転可能に支持されてケーシング6内に配置されている。
【0036】
ケーシング6の壁部、ここでは上壁部、底壁部およびY方向に対向する側壁部は、互いに空間をあけて設けられた内壁63および外壁64を備えた二重壁構造を有しており、内壁63および外壁64の間の空間65がケーシング6内外を断熱する空気断熱層として機能する。なお、外壁64の内側面にも、ケーシング6内外を断熱するための断熱材66が設けられている。
【0037】
加熱機構7は、コロ搬送機構5による基板Gの搬送路に沿ってケーシング6内に設けられた第1および第2の面状ヒーター71(71a〜71r)、72(72a〜72r)を備えており、第1および第2の面状ヒーター71、72はそれぞれ、コロ搬送機構5によって搬送される基板に近接するように、コロ搬送機構5によって搬送される基板Gの裏面(下面)側および表面(上面)側に設けられている。これにより、ケーシング6の薄型化が図られている。
【0038】
第1の面状ヒーター71は、Y方向に延びる短冊状に形成され、コロ部材50同士の間にそれぞれ設けられてX方向に複数(X方向上流側から順に71a〜71r)配列されている。これにより、ケーシング6のさらなる薄型化が図られている。第1の面状ヒーター71は、例えば、ケーシング6のY方向に対向する側壁部に取り付けられて支持されている。第2の面状ヒーター72は、Y方向に延びる短冊状に形成され、第1の面状ヒーター71の配列ピッチと対応するようにX方向に複数(X方向上流側から順に72a〜72r)配列されている。第2の面状ヒーター72は、ケーシング6に上壁部に取り付けられて支持されている。第1の面状ヒーター71とコロ搬送機構5によって搬送される基板Gの搬送経路との間隔と、第2の面状ヒーター72とコロ搬送機構5によって搬送される基板Gの搬送経路との間隔とは等しくなっている。
【0039】
本実施形態では、基板Gを加熱するための第1および第2の面状ヒーター71、72を等しいピッチでX方向に複数配列したことにより、第1の面状ヒーター71同士(または第2の面状ヒーター72同士)の間の位置(例えば図3の符号P位置)でケーシング6をX方向に複数分割可能に構成することができる。これにより、基板Gが大型化しても加熱処理装置28自体の運搬が容易である。
【0040】
さらに、本実施形態では、基板Gを加熱するための第2の面状ヒーター72をX方向に複数配列したことにより、第2の面状ヒーター72同士の間の位置(例えば図3の符号P位置)で、ケーシング6の上壁部を観音扉状に開閉可能に構成することができる(図3の仮想線参照)。これにより、ケーシング6内のコロ搬送機構5や加熱機構7のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0041】
第1および第2の面状ヒーター71、72はそれぞれ、図4に示すように(図4は加熱処理装置28を構成する第1および第2の面状ヒーター71、72の概略平面図)、マイカ板に発熱体を設けて構成された複数、例えば4枚のマイカヒーター73(73a、73b、73c、73d)と、これらの複数のマイカヒーター73がY方向に配列されるように取り付けられた短冊状の伝熱体74とを有している。
【0042】
複数の第1および第2の面状ヒーター71a〜71r、72a〜72rは、図5に示すように(図5は第1および第2の面状ヒーター71、72の制御系を示す概念図)、X方向に区分けされたX方向上流側グループの第1および第2の面状ヒーター71a〜71g、72a〜72g(のマイカヒーター73)とX方向下流側グループの第1および第2の面状ヒーター71h〜71r、72h〜72r(のマイカヒーター73)とがそれぞれ、異なるヒーター電源105a、105bに接続されている。X方向上流側グループの第1および第2の面状ヒーター71a〜71g、72a〜72gおよびX方向下流側グループの第1および第2の面状ヒーター71h〜71r、72h〜72rにはそれぞれ、図示しない温度センサーが設けられ、ヒーター電源105a、105bはそれぞれ、温度センサーの検出信号およびプロセスコントローラ101からの指令を受けたヒーターコントローラ(制御部)104によって制御される。すなわち、X方向上流側グループの第1および第2の面状ヒーター71a〜71g、72a〜72gからなる領域SとX方向下流側グループの第1および第2の面状ヒーター71h〜71r、72h〜72rからなる領域Tとは、ヒーターコントローラ104によって別個に温度制御されるように構成されている。なお、領域Sと領域Tとを同じ電源に接続し、この電源における領域Sの出力と領域Tの出力とを変えるように構成してもよい。
【0043】
ケーシング6のX方向両端部の例えば上壁部および底壁部にはそれぞれ排気口67が設けられており、排気口67には排気装置68が接続されている。そして、排気装置68が作動することにより、排気口67を介してケーシング6内の排気が行われるように構成されている。排気口67および排気装置68は、ケーシング6内が排気する排気機構を構成している。排気口67は、例えば、Y方向に複数形成されていてもよく、Y方向に延びる長孔状に形成されていてもよい。排気機構をケーシング6のX方向両端部にそれぞれ設けることにより、搬入口61および搬出口62にエアカーテンが形成され、外部の塵埃等が搬入口61および搬出口62からケーシング6内に侵入してしまうことが抑止される。なお、排気口67は側壁部に形成されていてもよく、この場合には、X方向に複数、あるいはX方向に延びる長孔状に形成されていてもよい。
【0044】
一方、ケーシング6のX方向中央部の例えば上壁部および底壁部には、ケーシング内に吸気を行う吸気機構としての吸気口69が設けられている。吸気口69は、例えば、Y方向に複数形成されていてもよく、Y方向に延びる長孔状に形成されていてもよい。排気口67とは対照的に吸気口69をケーシング6のX方向中央部に設けることにより、ケーシング6内の雰囲気の滞留を確実に防止することができるため、加熱機構7による熱をケーシング6内に効果的に拡散させるとともに、加熱処理の際に発生する、レジスト膜に含まれる昇華物のケーシング6内への付着を防止することができる。なお、吸気口69は側壁部に形成されていてもよく、この場合には、X方向に複数、あるいはX方向に延びる長孔状に形成されていてもよい。また、吸気口69に吸気装置(図示せず)を接続し、この吸気装置の作動により、熱せられた空気がケーシング6内に導入されるように構成してもよい。
【0045】
次に、上述の通り構成された加熱処理ユニット(HT)28での基板Gの加熱処理について説明する。
【0046】
加熱処理ユニット(HT)28では、減圧乾燥ユニット(DP)27側(加熱処理ユニット(HT)31では現像ユニット(DEV)30側)の搬送機構によって搬送された基板Gが、搬入口61を通過すると、コロ搬送機構5に受け渡され、このコロ搬送機構5によって搬送されながら、ヒーターコントローラ104によって温度制御された第1および第2の面状ヒーター71、72によりケーシング6内で加熱される。したがって、基板の搬送および加熱が並行して行われるため、処理時間の短縮化が図られる。基板Gは、第1および第2の面状ヒーター71、72によって両面側から加熱されるため、反りが生じるといったことが抑止される。コロ搬送機構5によって搬送された基板Gが、搬出口62を通過すると、冷却ユニット(COL)29側(加熱処理ユニット(HT)31では冷却ユニット(COL)32側)の搬送機構に受け渡され、この平流し式の搬送機構によって搬送されることとなる。したがって、加熱処理時および加熱処理前後の基板Gの搬送がコロ搬送機構5等による所謂平流し式のみなので、基板Gを安全に搬送することができる。
【0047】
加熱処理に際しては、X方向上流側グループの第1および第2の面状ヒーター71a〜71g、72a〜72gとX方向下流側グループの第1および第2の面状ヒーター71h〜71r、72h〜72rとがそれぞれ、異なるヒーター電源105a、105bに接続されているため、X方向上流側グループの第1および第2の面状ヒーター71a〜71g、72a〜72gからなる領域SとX方向下流側グループの第1および第2の面状ヒーター71h〜71r、72h〜72rからなる領域Tとを異なる温度に設定することができる。基板Gを所定の温度、例えば130℃程度に加熱する場合に、領域Tを所定の温度の略等しい、または所定の温度よりもやや高い温度、例えば140〜150℃程度に設定し、領域Sを領域Tの温度よりも高い温度、例えば170〜180℃程度に設定すれば、図6に示すように(図6は加熱処理ユニット(HT)28での基板Gの加熱処理を説明するための図)、コロ搬送機構5によって搬送されている基板Gを、領域Sにおいて加熱して(図6(a)参照)、所定の温度近傍まで急速に昇温させた後、領域Tにおいて加熱して(図6(b)参照)、所定の温度に保温するといったことができ、加熱処理時間の短縮化を図ることが可能となる。
【0048】
また、第1の面状ヒーター71の配列ピッチと第2の面状ヒーター72の配列ピッチとが等しいため、上下に対応する第1および第2の面状ヒーター71、72を等しい加熱温度に設定することにより、基板Gの反りの発生を確実に防止することが可能となる。
【0049】
次に、第1および第2の面状ヒーター71、72の制御系の他の例について説明する。
図7は第1および第2の面状ヒーター71、72の制御系の他の例を示す概念図である。
【0050】
複数の第1および第2の面状ヒーター71a〜71r、72a〜72rを、X方向に区分けされたグループごとに温度制御可能に構成するとともに、各グループを、マイカヒーター73によってY方向に複数に区分けされた領域ごとに温度制御可能に構成してもよい。例えば、第1および第2の面状ヒーター71a〜71c、72a〜72cのY方向両側部のマイカヒーター73a、73dを有する領域Hと、第1および第2の面状ヒーター71a〜71c、72a〜72cのY方向中央部のマイカヒーター73b、73cを有する領域Iと、第1および第2の面状ヒーター71d〜71g、72d〜72gのY方向両側部のマイカヒーター73a、73dを有する領域Jと、第1および第2の面状ヒーター71d〜71g、72d〜72gのY方向中央部のマイカヒーター73b、73cを有するKと、第1および第2の面状ヒーター71h〜71o、72h〜72oのY方向両側部のマイカヒーター73a、73dを有するLと、第1および第2の面状ヒーター71h〜71o、72h〜72oのY方向中央部のマイカヒーター73b、73cを有するMと、第1および第2の面状ヒーター71p〜71r、72p〜72rのY方向両側部のマイカヒーター73a、73dを有するNと、第1および第2の面状ヒーター71p〜71r、72p〜72rのY方向中央部のマイカヒーター73b、73cを有する領域Oとをそれぞれ、異なるヒーター電源105c〜jに接続し、ヒーター電源105c〜jをそれぞれ、温度センサーの検出信号およびプロセスコントローラ101からの指令を受けたヒーターコントローラ104によって制御させてもよい。このような構成により、複数の第1および第2の面状ヒーター71a〜71r、72a〜72rからなるヒーター群をより細かく制御することができる。なお、領域H〜Oを同じ電源に接続し、この電源における領域H〜Oの出力を変えるように構成してもよく、図5に示した制御系と併用して、領域H〜Kおよび領域L〜Oをそれぞれ同じ電源に接続し、これらの電源における領域H〜Kおよび領域L〜Oの出力をそれぞれ変えるように構成してもよい。
【0051】
この場合に、ケーシング6の側壁部や排気機構等による熱損失を考慮して、領域Sにおいては、領域Kよりも領域I、Jの温度を高く設定し、かつ、領域I、Jよりも領域Hの温度を高く設定するとともに、領域Tにおいては、領域Mよりも領域O、Lの温度を高く設定し、かつ、領域O、Lよりも領域Nの温度を高く設定すれば、加熱処理時間の短縮化を図ることができるとともに、領域Sおよび領域Tにおいて、ケーシング6内の基板Gの全面を均等な温度に加熱することでき、加熱処理の品質を向上させることが可能となる。
【0052】
ヒーターは通常、被加熱物に対してある程度の距離をあけて設けると、被加熱物を均等に加熱しやすくなる代わりに加熱効率が低くなるが、本実施形態では、複数の第1および第2の面状ヒーター71a〜71r、72a〜72rからなるヒーター群が区分けされた領域ごとに温度制御可能であるため、第1および第2の面状ヒーター71、72をコロ搬送機構5によって搬送される基板Gと近接するように設けても、基板G全体を均等に加熱することが可能となる。コロ搬送機構5によって搬送される基板Gが第1および第2の面状ヒーター71、72と接触しないように、かつ、第1および第2の面状ヒーター71、72の加熱効率を低下させないように、コロ搬送機構5によって搬送される基板Gの搬送経路と第1の面状ヒーター71および第2の面状ヒーター72との間隔はそれぞれ、5〜30mmとすることが好ましい。
【0053】
なお、第1および第2の面状ヒーター71a〜71r、72a〜72rをそれぞれ、異なるヒーター電源に接続して、ヒーターコントローラ104によって個別に温度制御可能に構成してもよく、さらには、第1および第2の面状ヒーター71a〜71r、72a〜72rのマイカヒーター73a〜73dをそれぞれ、異なるヒーター電源に接続して、ヒーターコントローラ104によって個別に温度制御可能に構成してもよい。
【0054】
本実施形態においては、複数の第1および第2の面状ヒーター71a〜71r、72a〜72rが個別またはX方向に区分けされたグループごとに温度制御され、るため、複数の第1および第2の面状ヒーター71a〜71r、72a〜72rからなるヒーター群は、用途に応じた所定の温度プロファイルを形成することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明によれば、FPD用のガラス基板のように特に基板が大型の場合に好適であるが、ガラス基板に限らず、半導体ウエハなどの他の基板の加熱処理にも広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】FPD用のガラス基板へのレジスト膜の形成および露光処理後のレジスト膜の現像処理を行う、本発明に係る加熱処理装置を備えたレジスト塗布・現像処理システムの概略平面図である。
【図2】加熱処理装置の平面方向の断面図である。
【図3】加熱処理装置の側面方向の断面図である。
【図4】加熱処理装置を構成する第1および第2の面状ヒーターの概略平面図である。
【図5】第1および第2の面状ヒーターの制御系を示す概念図である。
【図6】加熱処理装置での基板の加熱処理を説明するための図である。
【図7】第1および第2の面状ヒーターの制御系の他の例を示す概念図である。
【符号の説明】
【0057】
28、31…加熱処理ユニット(加熱処理装置)
5…コロ搬送機構
6…ケーシング
50…コロ部材
52…外周面部
63…内壁
64…外壁
65…空間
71(71a〜71r)…第1の面状ヒーター
72(72a〜72r)…第2の面状ヒーター
G…基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に加熱処理を施す加熱処理装置であって、
基板を一方向に搬送する搬送路と、
前記搬送路を囲繞するように設けられたケーシングと、
前記搬送路に沿って前記ケーシング内に、前記搬送路を搬送される基板に近接するように基板の両面側にそれぞれ設けられた第1および第2の面状ヒーターと
を具備することを特徴とする加熱処理装置。
【請求項2】
前記搬送路は、一方向に間隔をあけて複数設けられたコロ部材の回転によって基板をコロ搬送し、
前記第1の面状ヒーターは、前記コロ部材同士の間にそれぞれ設けられて搬送方向に複数配列されていることを特徴とする請求項1に記載の加熱処理装置。
【請求項3】
前記第2の面状ヒーターは、前記第1の面状ヒーターの配列ピッチと対応するように搬送方向に複数配列され、
前記複数の第1および第2の面状ヒーターは、個別または搬送方向に区分けされたグループごとに温度制御可能であることを特徴とする請求項2に記載の加熱処理装置。
【請求項4】
前記複数の第1および第2の面状ヒーターが、個別または搬送方向に区分けされたグループごとに温度制御されることにより、前記複数の第1および第2の面状ヒーターからなるヒーター群は所定の温度プロファイルを形成することを特徴とする請求項3に記載の加熱処理装置。
【請求項5】
前記第1および第2の面状ヒーターはそれぞれ、前記搬送路の幅方向に複数に区分けされた領域ごとに温度制御可能であることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の加熱処理装置。
【請求項6】
前記第2の面状ヒーターは、前記ケーシングの一壁部に取り付けられており、
前記ケーシングの前記一壁部は、前記ケーシング内を開閉する扉として機能することを特徴とする請求項3から請求項5のいずれか1項に記載の加熱処理装置。
【請求項7】
前記コロ部材は、少なくとも外周面が熱伝導率の低い材料からなることを特徴とする請求項2から請求項6のいずれか1項に記載の加熱処理装置。
【請求項8】
前記ケーシングの壁部の少なくとも一部は、互いに空間をあけて設けられた内壁および外壁を備えた二重壁構造を有しており、前記内壁および外壁の間の空間が前記ケーシング内外を断熱する空気断熱層として機能することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の加熱処理装置。
【請求項9】
前記搬送路を搬送される基板の搬送経路と前記第1および第2の面状ヒーターとの間隔はそれぞれ、5〜30mmであることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の加熱処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−158253(P2007−158253A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−355183(P2005−355183)
【出願日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】