加熱器
【課題】 本発明は、ハロゲンランプから放射される近赤外線を、遠赤外線放射塗料により遠赤外線にシフトして使用する加熱器を対象とし、ハロゲンランプヒータのヒータ管に遠赤外線放射塗料を塗布した従来の構成において、上記遠赤外線放射塗料の温度が上昇することにより生じる遠赤外線の放射効率の低下や、上記遠赤外線放射塗料の温度が耐熱限度を超えることにより生じる剥離等の不都合を未然に防止し得る加熱器の提供を目的とするものである。
【解決手段】 本発明の加熱器は、端部に端部ベースを有するヒータ管と、上記ヒータ管を囲繞する管体を有して成る加熱器であって、上記ヒータ管からの近赤外線放射を遠赤外線放射にシフトする遠赤外線放射塗料を、上記管体の周面における少なくともヒータ管の発光部を覆う範囲に亘って全周に塗布し、ヒータ管の動作に基づいて遠赤外線を放射するよう構成したことを特徴としている。
【解決手段】 本発明の加熱器は、端部に端部ベースを有するヒータ管と、上記ヒータ管を囲繞する管体を有して成る加熱器であって、上記ヒータ管からの近赤外線放射を遠赤外線放射にシフトする遠赤外線放射塗料を、上記管体の周面における少なくともヒータ管の発光部を覆う範囲に亘って全周に塗布し、ヒータ管の動作に基づいて遠赤外線を放射するよう構成したことを特徴としている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば薬液等の被加熱流体を加熱するために使用される加熱器に関し、詳しくは、遠赤外線放射塗料を塗布することによって、ハロゲンランプヒータのヒータ管から放射される近赤外線を遠赤外線にシフトさせた加熱器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱源として熱容量の小さいタングステンフィラメントを使用しているハロゲンランプヒータは、放射エネルギーの立ち上がり特性が早い利点があり、例えば半導体製造分野においては、様々な製造プロセスにおける薬液(被温調流体)の温度管理に、上記ハロゲンランプヒータを加熱手段とした流体加熱装置が採用されている。
【0003】
上記流体加熱装置としては、両端部が閉止された外管と、この外管に貫通設置された内管と、この内管に挿入設置されたハロゲンランプヒータとを有して成る流体加熱装置が提供されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
図9および図10は、従来の流体加熱装置の一具体例であって、この流体加熱装置Aは、箱形状を呈するケーシングCに収容された外管Oを有し、この両端部を端壁により閉塞された円筒形状の外管Oには、端壁を貫通して円筒形状の内管Iが設置されており、この内管Iの内部には、加熱手段としてのハロゲンランプヒータHが挿入設置されている。
【0005】
上記ハロゲンランプヒータHは、図11に示す如く、耐熱ガラスから形成されたヒータ管Hpの内部にフィラメントHfを封入し、ヒータ管Hpの両端部を端部ベースHb、Hbで封止することによって構成されている。
【0006】
ここで、上記加熱流体装置Aは、薬液(被温調流体)Lであるガルテンの温度管理に供されるものであり、上記ハロゲンランプヒータHから放射される近赤外線の波長を、上記ガルテンに吸収され易いようシフトさせる目的で、上記ハロゲンランプヒータHにおけるヒータ管Hpの表面には、遠赤外線を効率良く放射する、セラミックを基材とした遠赤外線放射塗料Hcが直接に塗布されている。
【0007】
上記ハロゲンランプヒータHの挿入設置された内管Iによって、外管Oの内部には薬液(被温調流体)Lの流路Ogが画成されており、外管Oに設けられた流入口Oiから供給された薬液(被温調流体)Lは、流路Ogを通過する際に、ハロゲンランプヒータHから放射される遠赤外線を吸収して加熱され、外管Oに設けられた流出口Ooを介して排出されて行く。
【特許文献1】特開平05−231712号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上述した遠赤外線放射塗料については、その温度が上昇するに伴って、遠赤外線の放射効率が低下することが知られており、上述した構成の流体加熱装置Aにおいて、ハロゲンランプヒータHのヒータ管Hpに塗布されている遠赤外線放射塗料Hcは、フィラメントHfの極く近傍を囲繞しているに過ぎず、その塗布されている面積が少ないために単位面積当たりの近赤外線照射量が多く、これにより高温となるために遠赤外線の放射効率が低下してしまう不都合があった。
【0009】
一方、流体加熱装置全体のコンパクト化を考慮しつつ、要求される加熱能力を満足させるべく、図13に示す如く、各々にフィラメントHf′を封入した2本のヒータ管Hp′を並設し、各ヒータ管のHp′、Hp′の両端部を端部ベースHb′、Hb′で封止するとともに、一端側(図中の右端側)の端部ベースHb′において、各フィラメントHf′、Hf′を互いに接続して成るハロゲンランプヒータH′が提供されている。
【0010】
ここで、上記ハロゲンランプヒータHに′おいても、セラミックを基材とした遠赤外線放射塗料Hc′が、各ヒータ管Hp′、Hp′の表面に塗布されているのであるが、近接して並設されたヒータ管Ha′、Ha′同士の熱の干渉によって、遠赤外線放射塗料Hc′が耐熱限界を超えるまでに高温となり、過熱によって上記遠赤外線放射塗料Hc′の損傷や剥離等を生じる不都合があった。
【0011】
本発明は上記実状に鑑みて、ハロゲンランプヒータのヒータ管に遠赤外線放射塗料を塗布した従来の構成において、上記遠赤外線放射塗料の温度が上昇することにより生じる遠赤外線の放射効率の低下を未然に防止し得るとともに、上記遠赤外線放射塗料の温度が耐熱限度を超えることにより生じる剥離等の不都合を未然に防止し得る加熱器の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するべく、請求項1に関わる加熱器は、端部に端部ベースを有するヒータ管と、上記ヒータ管を囲繞する管体を有して成る加熱器であって、
ヒータ管からの近赤外線放射を遠赤外線放射にシフトする遠赤外線放射塗料を、管体の周面における少なくともヒータ管の発光部を覆う範囲に亘って全周に塗布し、ヒータ管の動作に基づいて遠赤外線を放射するよう構成したことを特徴としている。
【0013】
請求項2の発明に関わる加熱器は、請求項1に関わる加熱器において、管体が、ハロゲンランプであるヒータ管を全長に亘って囲繞するアウター管であり、ハロゲンランプヒータを構成していることを特徴としている。
【0014】
請求項3の発明に関わる加熱器は、請求項2に関わる加熱器において、アウター管と端部ベースとの間に隙間を設けていることを特徴としている。
【0015】
請求項4の発明に関わる加熱器は、請求項1に関わる加熱器において、管体が、被加熱流体の供給される外管に設けられて、外管との間に被加熱流体の流路を画成する内管であり、流体加熱装置を構成していることを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明に関わる加熱器によれば、ヒータ管を囲繞する管体の周面に遠赤外線放射塗料を塗布したことで、ハロゲンランプヒータのヒータ管に遠赤外線放射塗料を塗布している従来の構成に比べ、ヒータ管の発光部から遠赤外線放射塗料までの距離(半径)が増加することとなり、上記発光部を取り囲む遠赤外線放射塗料の面積が格段に増大する。
このように、遠赤外線放射塗料の面積が増大することで、ヒータ管から放射される遠赤外線の単位面積当たりの照射量が減少するため、上記遠赤外線放射塗料の温度上昇が抑えられ、もって上記遠赤外線放射塗料からの遠赤外線の放射効率が向上する。
また、請求項1の発明に関わる加熱器によれば、2本のヒータ管が近接して並設されている構成であっても、ヒータ管を囲繞する管体の周面に遠赤外線放射塗料を塗布したことで、個々のヒータ管に遠赤外線放射塗料を塗布している従来の構成に対して、ヒータ管同士の熱の干渉により遠赤外線放射塗料が過熱することはなく、もって遠赤外線放射塗料の損傷や剥離等を防止することができる。
【0017】
請求項2の発明に関わる加熱器によれば、ハロゲンランプヒータを構成している管体、すなわちハロゲンランプであるヒータ管を全長に亘って囲繞するアウター管に遠赤外線放射塗料を塗布したことで、遠赤外線の放射効率の低下や遠赤外線放射塗料の剥離等を未然に防止し得る、ハロゲンランプヒータを得ることが可能となる。
【0018】
請求項3の発明に関わる加熱器によれば、アウター管と端部ベースとの間に隙間を設けたことで、上記アウター管の内部の熱を有効に逃がすことが可能となる。
【0019】
請求項4の発明に関わる加熱器によれば、流体加熱装置を構成している管体、すなわち被加熱流体の供給される外管に設けられて、外管との間に被加熱流体の流路を画成する内管に遠赤外線放射塗料を塗布したことで、遠赤外線の放射効率の低下や遠赤外線放射塗料の剥離等を未然に防止し得る、流体加熱装置を得ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、実施例を示す図面に基づいて、本発明を詳細に説明する。
図1〜図3は、本発明に関わる加熱器を、半導体製造の様々なプロセスにおいて使用される薬液(被温調流体)、詳しくはガルテン等の遠赤外線を吸収し易い薬液を温度調節するための、流体加熱装置におけるハロゲンランプヒータに適用した例を示している。
【0021】
上記流体加熱装置1は、箱形状を呈するケーシング1Cに収容された外管2を有し、両端部を端壁により閉塞された上記外管2には、両端壁を貫通して円筒形状の内管3が設置されており、耐熱ガラス等から成る上記内管3の内部には、加熱手段としてのハロゲンランプヒータ10が挿入設置されている。
【0022】
図2および図3に示す如く、上記ハロゲンランプヒータ10は、内部にフィラメント10fを封入した1本のヒータ管10aを有し、該ヒータ管10aの一方端部のみを端部ベース10bで支持するとともに、上記ダブルエンド型のヒータ管10aを、サポートを兼ねた導入線10wによってシングルエンド化したもので、端部ベース10bからは2本の配線10e、10eが導出している。
【0023】
また、上記ハロゲンランプヒータ10は、ヒータ管10aを囲繞するアウター管(管体)10oを具備している。すなわち、上記ハロゲンランプヒータ10は、ヒータ管10aおよび端部ベース10b等から成る基本的要素に、アウター管10oを付加することによって構成されたものである。
【0024】
上記アウター管10oは、耐熱ガラスから成る円筒の一端を閉止した形状を呈しており、上記ヒータ管10aの全体を収容した状態で、開口側端部を端部ベース10bに支持されている。なお、アウター管10oと端部ベース10bとの間には、上記アウター管10o内の熱を逃がす為の隙間10sが設けられている。
【0025】
さらに、上記アウター管10oの外周面には、セラミックを基材とした遠赤外線放射塗料10cが塗布されており、この遠赤外線放射塗料10cは、少なくともヒータ管10aにおけるフィラメント10fの発光範囲(発光部)lfを覆う範囲lcに亘って、上記アウター管10oの全周に及ぶ態様で塗布されている。
【0026】
図1に示す如く、上述したハロゲンランプヒータ10の挿入設置された内管3によって、外管2の内部には薬液Lの流路2gが画成されており、外管2に設けられた流入口2iから供給された薬液Lは、流路2gを通過する際にハロゲンランプヒータ10から放射される遠赤外線を吸収して加熱され、外管2に設けられた流出口2oを介して排出されて行く。
【0027】
上述した如き流体加熱装置1を構成するハロゲンランプヒータ100、すなわち、本発明に関わる加熱器としてのハロゲンランプヒータ100によれば、ヒータ管10aを囲繞するアウター管(管体)10oの周面に遠赤外線放射塗料10cを塗布したことで、ハロゲンランプヒータのヒータ管に遠赤外線放射塗料を塗布している従来の構成(図11、図12参照)に比べ、ヒータ管10aの発光部(フィラメント10f)から遠赤外線放射塗料10cまでの距離(半径)が増加することとなり、上記発光部(フィラメント10f)を取り囲む遠赤外線放射塗料10cの面積が格段に増大する。
【0028】
このように、遠赤外線放射塗料10cの面積が増大することで、ヒータ管10aから放射される遠赤外線の単位面積当たりの照射量が減少するため、上記遠赤外線放射塗料10cの温度上昇が抑えられることとなり、もって遠赤外線放射塗料10cからの遠赤外線の放射効率の向上を達成することが可能となる。
【0029】
なお、上述した実施例においては、ハロゲンランプヒータ10におけるアウター管10oの外周面に遠赤外線放射塗料10cを塗布した例を示したが、上記アウター管10oの内周面に遠赤外線放射塗料10cを塗布することも可能であり、このような構成においても、遠赤外線放射塗料10cをアウター管10oの外周面に塗布したと同等の作用効果を奏することは勿論である。
【0030】
図4〜図6は、本発明に関わる加熱器を、半導体製造の様々なプロセスにおいて使用される薬液(被温調流体)、詳しくはガルテン等の遠赤外線を吸収し易い薬液を温度調節するための、流体加熱装置におけるハロゲンランプヒータに適用した他の実施例を示している。
【0031】
すなわち、流体加熱装置1′におけるハロゲンランプヒータ10′は、内部にフィラメント10f′を封入した2本のヒータ管10a′、10a′を並列配置し、これらヒータ管10a′、10a′の両端部を端部ベース10b′、10b′で支持するとともに、各フィラメント10f′、10f′を一方の端部ベース10b′において接続してシングルエンド化したもので、もう一方の端部ベース10b′から2本の配線10e′、10e′が導出している。
【0032】
また、上記ハロゲンランプヒータ10′は、2本のヒータ管10a′、10a′を囲繞するアウター管(管体)10o′を具備している。すなわち、上記ハロゲンランプヒータ10′は、2本のヒータ管10a′および一対の端部ベース10b′等から成る基本的要素に、アウター管10o′を付加することによって構成されたものである。
【0033】
上記アウター管10o′は、耐熱ガラスから成る円筒形状を呈しており、上記ヒータ管10a′の全体を収容した状態で、各端部ベース10b′、10b′に支持されている。なお、アウター管10o′と各端部ベース10b′との間には、上記アウター管10o′内の熱を逃がす為の隙間10s′が設けられている。
【0034】
さらに、上記アウター管10o′の外周面には、セラミックを基材とした遠赤外線放射塗料10c′が塗布されており、この遠赤外線放射塗料10c′は、少なくとも各ヒータ管10a′、10a′におけるフィラメント10f′、10f′の発光範囲(発光部)lf′を覆う範囲lc′に亘って、上記アウター管10o′の全周に及ぶ態様で塗布されている。
【0035】
なお、流体加熱装置1′の構成は、上述したハロゲンランプヒータ10′以外、図1〜図3に示した流体加熱装置1と基本的に同一なので、流体加熱装置1′の構成要素において、流体加熱装置1と同一の作用を成すものには、図4において図1と同一の符号に′(ダッシュ)を附して詳細な説明は省略する。
【0036】
上述した如き流体加熱装置1′を構成するハロゲンランプヒータ10′、すなわち、本発明に関わる加熱器としてのハロゲンランプヒータ10′によれば、2本のヒータ管10a′、10a′を囲繞するアウター管(管体)10o′の周面に遠赤外線放射塗料10c′を塗布したことで、図1〜図3に示したハロゲンランプヒータ10と同様、遠赤外線放射塗料10c′の面積が増大することで、ヒータ管10a′、10a′から放射される遠赤外線の単位面積当たりの照射量が減少するため、遠赤外線放射塗料10c′の温度上昇が抑えられ、もって遠赤外線放射塗料10c′からの遠赤外線の放射効率の向上を達成することができる。
【0037】
また、本発明に関わる加熱器としてのハロゲンランプヒータ10′によれば、2本のヒータ管10a′、10a′が近接して並設されている構成であっても、これらのヒータ管10a′、10a′を囲繞するアウター管(管体)10o′の周面に遠赤外線放射塗料10c′を塗布したことで、個々のヒータ管に遠赤外線放射塗料を塗布している従来の構成に対し、ヒータ管10a′同士の熱の干渉により遠赤外線放射塗料10c′が過熱することはなく、もって遠赤外線放射塗料10c′の損傷や剥離等を未然に防止することができる。
【0038】
なお、上述した実施例においては、ハロゲンランプヒータ10′におけるアウター管10o′の外周面に遠赤外線放射塗料10c′を塗布した例を示したが、上記アウター管10o′の内周面に遠赤外線放射塗料10c′を塗布することも可能であり、このような構成においても、遠赤外線放射塗料10c′をアウター管10o′の外周面に塗布したと同等の作用効果を奏することは勿論である。
【0039】
図7〜図9は、本発明に関わる加熱器を、半導体製造の様々なプロセスにおいて使用される薬液(被温調流体)、詳しくはガルテン等の遠赤外線を吸収し易い薬液を温度調節するための流体加熱装置に適用した例を示している。
【0040】
上記流体加熱装置100は、箱形状を呈するケーシング100Cに収容された外管102を有し、両端部を端壁により閉塞された上記外管102には、両端壁を貫通して円筒形状の内管103が設置されており、耐熱ガラス等から成る上記内管103の内部には、加熱手段としてのハロゲンランプヒータ110が挿入設置されている。
【0041】
上記ハロゲンランプヒータ110は、内部にフィラメント110fを封入したヒータ管110aの両端部を端部ベース110b、110bで支持したダブルエンド型であり、各端部ベース110b、110bからは配線110e、110eが導出している。
【0042】
上述した如く流体加熱装置100は、ハロゲンランプヒータ110の挿入設置される、言い換えればハロゲンランプヒータ110のヒータ管110aを囲繞する内管(管体)103を具備している。
【0043】
上記内管103は、上述の如く耐熱ガラス等から成る円筒形状を呈しており、の内周面には、セラミックを基材とした遠赤外線放射塗料103cが塗布されており、この遠赤外線放射塗料103cは、少なくともヒータ管110aにおけるフィラメント110fの発光範囲(発光部)lfを覆う範囲lcに亘って、上記内管103の全周に及ぶ態様で塗布されている。
【0044】
図7および図8に示す如く、上述したハロゲンランプヒータ110の挿入設置された内管103によって、外管102の内部には薬液Lの流路102gが画成されており、外管102に設けられた流入口102iから供給された薬液Lは、流路102gを通過する際に、ハロゲンランプヒータ110から放射された近赤外線が、内管103に塗布された遠赤外線放射塗料10cによりシフトされた遠赤外線を吸収して加熱され、外管102に設けられた流出口102oを介して排出されて行く。
【0045】
上述した如き構成の流体加熱装置100、すなわち、本発明に関わる加熱器としての流体過熱装置100によれば、ハロゲンランプヒータ110(ヒータ管110a)を囲繞する内管(管体)103の周面に遠赤外線放射塗料103cを塗布したことで、ハロゲンランプヒータのヒータ管に遠赤外線放射塗料を塗布している従来の構成(図11、図12参照)に比べ、ヒータ管110aの発光部(フィラメント110f)から遠赤外線放射塗料103cまでの距離(半径)が増加することとなり、上記発光部(フィラメント110f)を取り囲む遠赤外線放射塗料103cの面積が格段に増大する。
【0046】
このように、遠赤外線放射塗料103cの面積が増大することで、ヒータ管110aから放射される遠赤外線の単位面積当たりの照射量が減少するため、上記遠赤外線放射塗料103cの温度上昇が抑えられることとなり、もって遠赤外線放射塗料103cからの遠赤外線の放射効率の向上を達成することが可能となる。
【0047】
因みに、上述した実施例では、流体加熱装置100の内管103にダブルエンド型のハロゲンランプヒータ110を装着した例を示したが、図1〜図3に示した如き1本のヒータ管10aを有して成るシングルエンド型のハロゲンランプヒータ10や、図4〜図6に示した如き並設した2本のヒータ管10a′、10a′を有して成るシングルエンド型のハロゲンランプヒータ10を、上記内管103に装着して流体加熱装置100を構成することも可能である。
【0048】
ここで、図4〜図6に示した如き並設した2本のヒータ管10a′、10a′を有するハロゲンランプヒータ10′を、上記内管103に装着して流体加熱装置100を構成した場合でも、2本のヒータ管10a′、10a′を囲繞する内管(管体)103の周面に遠赤外線放射塗料103cを塗布することで、個々のヒータ管に遠赤外線放射塗料を塗布している従来の構成に対し、ヒータ管10a′同士の熱の干渉により遠赤外線放射塗料103cが過熱することはなく、もって遠赤外線放射塗料103cの損傷や剥離等は未然に防止されることとなる。
【0049】
また、上述した実施例においては、流体加熱装置100における内管103の内周面に遠赤外線放射塗料103cを塗布した例を示したが、条件によっては上記内管103の外周面に遠赤外線放射塗料103cを塗布することも可能であり、このような構成においても、遠赤外線放射塗料103cを内管103の内周面に塗布したと同等の作用効果を奏することは勿論である。
【0050】
なお、上述した各実施例においては、半導体製造に関わる様々なプロセスに使用される薬液、特にガルテン等の遠赤外線を吸収し易い薬液の温度調節に、本発明の加熱器を適用した例を示したが、例示したガルテン以外の様々な薬液の温度管理においても、本発明の加熱器を有効に適用し得ることは勿論である。
【0051】
さらに、上述した実施例においては、半導体装置の製造分野に本発明を適用した例を示したが、遠赤外線放射による被加熱流体の加熱を必要とする様々な産業分野における諸設備に対しても、本発明の加熱器を有効に適用し得ることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明を適用したハロゲンランプヒータの実施例を示す流体加熱装置の概念的な断面側面図。
【図2】(a)および(b)は、図1に示したハロゲンランプヒータの外観側面図および外観平面図。
【図3】(a)は図1に示したハロゲンランプヒータの要部断面側面図、(b)は(a)中のb−b線断面図、(c)は(a)中のc−c線断面図。
【図4】本発明を適用したハロゲンランプヒータの他の実施例を示す流体加熱装置の概念的な断面側面図。
【図5】(a)および(b)は、図4に示したハロゲンランプヒータの外観側面図および外観平面図。
【図6】(a)は図5に示したハロゲンランプヒータの断面側面図、(b)は(a)中のb−b線断面図、(c)は(a)中のc−c線断面図。
【図7】本発明を適用した加熱流体装置の実施例を示す概念的な断面側面図。
【図8】図7に示した流体加熱装置の要部断面側面図。
【図9】図8中のIX−IX線断面図。
【図10】従来の流体加熱装置を示す概念的な外観斜視図。
【図11】図10に示した流体加熱装置の断面側面図。
【図12】(a)は従来のハロゲンランプヒータを示す全体側面図、(b)は(a)中のb−b線断面図。
【図13】(a)は従来のハロゲンランプヒータを示す全体側面図、(b)は(a)中のb−b線断面図。
【符号の説明】
【0053】
1…流体加熱装置、
2…外管、
3…内管、
10…ハロゲンランプヒータ(加熱器)、
10a…ヒータ管、
10b…端部ベース、
10f…フィラメント、
10o…アウター管、
10c…遠赤外線放射塗料、
1′…流体加熱装置、
2′…外管、
3′…内管、
10′…ハロゲンランプヒータ(加熱器)、
10a′…ヒータ管、
10b′…端部ベース、
10f′…フィラメント、
10o′…アウター管、
10c′…遠赤外線放射塗料、
100…流体加熱装置(加熱器)、
102…外管、
103…内管、
103c…遠赤外線放射塗料、
110…ハロゲンランプヒータ、
110a…ヒータ管、
110b…端部ベース、
110f…フィラメント。
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば薬液等の被加熱流体を加熱するために使用される加熱器に関し、詳しくは、遠赤外線放射塗料を塗布することによって、ハロゲンランプヒータのヒータ管から放射される近赤外線を遠赤外線にシフトさせた加熱器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱源として熱容量の小さいタングステンフィラメントを使用しているハロゲンランプヒータは、放射エネルギーの立ち上がり特性が早い利点があり、例えば半導体製造分野においては、様々な製造プロセスにおける薬液(被温調流体)の温度管理に、上記ハロゲンランプヒータを加熱手段とした流体加熱装置が採用されている。
【0003】
上記流体加熱装置としては、両端部が閉止された外管と、この外管に貫通設置された内管と、この内管に挿入設置されたハロゲンランプヒータとを有して成る流体加熱装置が提供されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
図9および図10は、従来の流体加熱装置の一具体例であって、この流体加熱装置Aは、箱形状を呈するケーシングCに収容された外管Oを有し、この両端部を端壁により閉塞された円筒形状の外管Oには、端壁を貫通して円筒形状の内管Iが設置されており、この内管Iの内部には、加熱手段としてのハロゲンランプヒータHが挿入設置されている。
【0005】
上記ハロゲンランプヒータHは、図11に示す如く、耐熱ガラスから形成されたヒータ管Hpの内部にフィラメントHfを封入し、ヒータ管Hpの両端部を端部ベースHb、Hbで封止することによって構成されている。
【0006】
ここで、上記加熱流体装置Aは、薬液(被温調流体)Lであるガルテンの温度管理に供されるものであり、上記ハロゲンランプヒータHから放射される近赤外線の波長を、上記ガルテンに吸収され易いようシフトさせる目的で、上記ハロゲンランプヒータHにおけるヒータ管Hpの表面には、遠赤外線を効率良く放射する、セラミックを基材とした遠赤外線放射塗料Hcが直接に塗布されている。
【0007】
上記ハロゲンランプヒータHの挿入設置された内管Iによって、外管Oの内部には薬液(被温調流体)Lの流路Ogが画成されており、外管Oに設けられた流入口Oiから供給された薬液(被温調流体)Lは、流路Ogを通過する際に、ハロゲンランプヒータHから放射される遠赤外線を吸収して加熱され、外管Oに設けられた流出口Ooを介して排出されて行く。
【特許文献1】特開平05−231712号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上述した遠赤外線放射塗料については、その温度が上昇するに伴って、遠赤外線の放射効率が低下することが知られており、上述した構成の流体加熱装置Aにおいて、ハロゲンランプヒータHのヒータ管Hpに塗布されている遠赤外線放射塗料Hcは、フィラメントHfの極く近傍を囲繞しているに過ぎず、その塗布されている面積が少ないために単位面積当たりの近赤外線照射量が多く、これにより高温となるために遠赤外線の放射効率が低下してしまう不都合があった。
【0009】
一方、流体加熱装置全体のコンパクト化を考慮しつつ、要求される加熱能力を満足させるべく、図13に示す如く、各々にフィラメントHf′を封入した2本のヒータ管Hp′を並設し、各ヒータ管のHp′、Hp′の両端部を端部ベースHb′、Hb′で封止するとともに、一端側(図中の右端側)の端部ベースHb′において、各フィラメントHf′、Hf′を互いに接続して成るハロゲンランプヒータH′が提供されている。
【0010】
ここで、上記ハロゲンランプヒータHに′おいても、セラミックを基材とした遠赤外線放射塗料Hc′が、各ヒータ管Hp′、Hp′の表面に塗布されているのであるが、近接して並設されたヒータ管Ha′、Ha′同士の熱の干渉によって、遠赤外線放射塗料Hc′が耐熱限界を超えるまでに高温となり、過熱によって上記遠赤外線放射塗料Hc′の損傷や剥離等を生じる不都合があった。
【0011】
本発明は上記実状に鑑みて、ハロゲンランプヒータのヒータ管に遠赤外線放射塗料を塗布した従来の構成において、上記遠赤外線放射塗料の温度が上昇することにより生じる遠赤外線の放射効率の低下を未然に防止し得るとともに、上記遠赤外線放射塗料の温度が耐熱限度を超えることにより生じる剥離等の不都合を未然に防止し得る加熱器の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するべく、請求項1に関わる加熱器は、端部に端部ベースを有するヒータ管と、上記ヒータ管を囲繞する管体を有して成る加熱器であって、
ヒータ管からの近赤外線放射を遠赤外線放射にシフトする遠赤外線放射塗料を、管体の周面における少なくともヒータ管の発光部を覆う範囲に亘って全周に塗布し、ヒータ管の動作に基づいて遠赤外線を放射するよう構成したことを特徴としている。
【0013】
請求項2の発明に関わる加熱器は、請求項1に関わる加熱器において、管体が、ハロゲンランプであるヒータ管を全長に亘って囲繞するアウター管であり、ハロゲンランプヒータを構成していることを特徴としている。
【0014】
請求項3の発明に関わる加熱器は、請求項2に関わる加熱器において、アウター管と端部ベースとの間に隙間を設けていることを特徴としている。
【0015】
請求項4の発明に関わる加熱器は、請求項1に関わる加熱器において、管体が、被加熱流体の供給される外管に設けられて、外管との間に被加熱流体の流路を画成する内管であり、流体加熱装置を構成していることを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明に関わる加熱器によれば、ヒータ管を囲繞する管体の周面に遠赤外線放射塗料を塗布したことで、ハロゲンランプヒータのヒータ管に遠赤外線放射塗料を塗布している従来の構成に比べ、ヒータ管の発光部から遠赤外線放射塗料までの距離(半径)が増加することとなり、上記発光部を取り囲む遠赤外線放射塗料の面積が格段に増大する。
このように、遠赤外線放射塗料の面積が増大することで、ヒータ管から放射される遠赤外線の単位面積当たりの照射量が減少するため、上記遠赤外線放射塗料の温度上昇が抑えられ、もって上記遠赤外線放射塗料からの遠赤外線の放射効率が向上する。
また、請求項1の発明に関わる加熱器によれば、2本のヒータ管が近接して並設されている構成であっても、ヒータ管を囲繞する管体の周面に遠赤外線放射塗料を塗布したことで、個々のヒータ管に遠赤外線放射塗料を塗布している従来の構成に対して、ヒータ管同士の熱の干渉により遠赤外線放射塗料が過熱することはなく、もって遠赤外線放射塗料の損傷や剥離等を防止することができる。
【0017】
請求項2の発明に関わる加熱器によれば、ハロゲンランプヒータを構成している管体、すなわちハロゲンランプであるヒータ管を全長に亘って囲繞するアウター管に遠赤外線放射塗料を塗布したことで、遠赤外線の放射効率の低下や遠赤外線放射塗料の剥離等を未然に防止し得る、ハロゲンランプヒータを得ることが可能となる。
【0018】
請求項3の発明に関わる加熱器によれば、アウター管と端部ベースとの間に隙間を設けたことで、上記アウター管の内部の熱を有効に逃がすことが可能となる。
【0019】
請求項4の発明に関わる加熱器によれば、流体加熱装置を構成している管体、すなわち被加熱流体の供給される外管に設けられて、外管との間に被加熱流体の流路を画成する内管に遠赤外線放射塗料を塗布したことで、遠赤外線の放射効率の低下や遠赤外線放射塗料の剥離等を未然に防止し得る、流体加熱装置を得ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、実施例を示す図面に基づいて、本発明を詳細に説明する。
図1〜図3は、本発明に関わる加熱器を、半導体製造の様々なプロセスにおいて使用される薬液(被温調流体)、詳しくはガルテン等の遠赤外線を吸収し易い薬液を温度調節するための、流体加熱装置におけるハロゲンランプヒータに適用した例を示している。
【0021】
上記流体加熱装置1は、箱形状を呈するケーシング1Cに収容された外管2を有し、両端部を端壁により閉塞された上記外管2には、両端壁を貫通して円筒形状の内管3が設置されており、耐熱ガラス等から成る上記内管3の内部には、加熱手段としてのハロゲンランプヒータ10が挿入設置されている。
【0022】
図2および図3に示す如く、上記ハロゲンランプヒータ10は、内部にフィラメント10fを封入した1本のヒータ管10aを有し、該ヒータ管10aの一方端部のみを端部ベース10bで支持するとともに、上記ダブルエンド型のヒータ管10aを、サポートを兼ねた導入線10wによってシングルエンド化したもので、端部ベース10bからは2本の配線10e、10eが導出している。
【0023】
また、上記ハロゲンランプヒータ10は、ヒータ管10aを囲繞するアウター管(管体)10oを具備している。すなわち、上記ハロゲンランプヒータ10は、ヒータ管10aおよび端部ベース10b等から成る基本的要素に、アウター管10oを付加することによって構成されたものである。
【0024】
上記アウター管10oは、耐熱ガラスから成る円筒の一端を閉止した形状を呈しており、上記ヒータ管10aの全体を収容した状態で、開口側端部を端部ベース10bに支持されている。なお、アウター管10oと端部ベース10bとの間には、上記アウター管10o内の熱を逃がす為の隙間10sが設けられている。
【0025】
さらに、上記アウター管10oの外周面には、セラミックを基材とした遠赤外線放射塗料10cが塗布されており、この遠赤外線放射塗料10cは、少なくともヒータ管10aにおけるフィラメント10fの発光範囲(発光部)lfを覆う範囲lcに亘って、上記アウター管10oの全周に及ぶ態様で塗布されている。
【0026】
図1に示す如く、上述したハロゲンランプヒータ10の挿入設置された内管3によって、外管2の内部には薬液Lの流路2gが画成されており、外管2に設けられた流入口2iから供給された薬液Lは、流路2gを通過する際にハロゲンランプヒータ10から放射される遠赤外線を吸収して加熱され、外管2に設けられた流出口2oを介して排出されて行く。
【0027】
上述した如き流体加熱装置1を構成するハロゲンランプヒータ100、すなわち、本発明に関わる加熱器としてのハロゲンランプヒータ100によれば、ヒータ管10aを囲繞するアウター管(管体)10oの周面に遠赤外線放射塗料10cを塗布したことで、ハロゲンランプヒータのヒータ管に遠赤外線放射塗料を塗布している従来の構成(図11、図12参照)に比べ、ヒータ管10aの発光部(フィラメント10f)から遠赤外線放射塗料10cまでの距離(半径)が増加することとなり、上記発光部(フィラメント10f)を取り囲む遠赤外線放射塗料10cの面積が格段に増大する。
【0028】
このように、遠赤外線放射塗料10cの面積が増大することで、ヒータ管10aから放射される遠赤外線の単位面積当たりの照射量が減少するため、上記遠赤外線放射塗料10cの温度上昇が抑えられることとなり、もって遠赤外線放射塗料10cからの遠赤外線の放射効率の向上を達成することが可能となる。
【0029】
なお、上述した実施例においては、ハロゲンランプヒータ10におけるアウター管10oの外周面に遠赤外線放射塗料10cを塗布した例を示したが、上記アウター管10oの内周面に遠赤外線放射塗料10cを塗布することも可能であり、このような構成においても、遠赤外線放射塗料10cをアウター管10oの外周面に塗布したと同等の作用効果を奏することは勿論である。
【0030】
図4〜図6は、本発明に関わる加熱器を、半導体製造の様々なプロセスにおいて使用される薬液(被温調流体)、詳しくはガルテン等の遠赤外線を吸収し易い薬液を温度調節するための、流体加熱装置におけるハロゲンランプヒータに適用した他の実施例を示している。
【0031】
すなわち、流体加熱装置1′におけるハロゲンランプヒータ10′は、内部にフィラメント10f′を封入した2本のヒータ管10a′、10a′を並列配置し、これらヒータ管10a′、10a′の両端部を端部ベース10b′、10b′で支持するとともに、各フィラメント10f′、10f′を一方の端部ベース10b′において接続してシングルエンド化したもので、もう一方の端部ベース10b′から2本の配線10e′、10e′が導出している。
【0032】
また、上記ハロゲンランプヒータ10′は、2本のヒータ管10a′、10a′を囲繞するアウター管(管体)10o′を具備している。すなわち、上記ハロゲンランプヒータ10′は、2本のヒータ管10a′および一対の端部ベース10b′等から成る基本的要素に、アウター管10o′を付加することによって構成されたものである。
【0033】
上記アウター管10o′は、耐熱ガラスから成る円筒形状を呈しており、上記ヒータ管10a′の全体を収容した状態で、各端部ベース10b′、10b′に支持されている。なお、アウター管10o′と各端部ベース10b′との間には、上記アウター管10o′内の熱を逃がす為の隙間10s′が設けられている。
【0034】
さらに、上記アウター管10o′の外周面には、セラミックを基材とした遠赤外線放射塗料10c′が塗布されており、この遠赤外線放射塗料10c′は、少なくとも各ヒータ管10a′、10a′におけるフィラメント10f′、10f′の発光範囲(発光部)lf′を覆う範囲lc′に亘って、上記アウター管10o′の全周に及ぶ態様で塗布されている。
【0035】
なお、流体加熱装置1′の構成は、上述したハロゲンランプヒータ10′以外、図1〜図3に示した流体加熱装置1と基本的に同一なので、流体加熱装置1′の構成要素において、流体加熱装置1と同一の作用を成すものには、図4において図1と同一の符号に′(ダッシュ)を附して詳細な説明は省略する。
【0036】
上述した如き流体加熱装置1′を構成するハロゲンランプヒータ10′、すなわち、本発明に関わる加熱器としてのハロゲンランプヒータ10′によれば、2本のヒータ管10a′、10a′を囲繞するアウター管(管体)10o′の周面に遠赤外線放射塗料10c′を塗布したことで、図1〜図3に示したハロゲンランプヒータ10と同様、遠赤外線放射塗料10c′の面積が増大することで、ヒータ管10a′、10a′から放射される遠赤外線の単位面積当たりの照射量が減少するため、遠赤外線放射塗料10c′の温度上昇が抑えられ、もって遠赤外線放射塗料10c′からの遠赤外線の放射効率の向上を達成することができる。
【0037】
また、本発明に関わる加熱器としてのハロゲンランプヒータ10′によれば、2本のヒータ管10a′、10a′が近接して並設されている構成であっても、これらのヒータ管10a′、10a′を囲繞するアウター管(管体)10o′の周面に遠赤外線放射塗料10c′を塗布したことで、個々のヒータ管に遠赤外線放射塗料を塗布している従来の構成に対し、ヒータ管10a′同士の熱の干渉により遠赤外線放射塗料10c′が過熱することはなく、もって遠赤外線放射塗料10c′の損傷や剥離等を未然に防止することができる。
【0038】
なお、上述した実施例においては、ハロゲンランプヒータ10′におけるアウター管10o′の外周面に遠赤外線放射塗料10c′を塗布した例を示したが、上記アウター管10o′の内周面に遠赤外線放射塗料10c′を塗布することも可能であり、このような構成においても、遠赤外線放射塗料10c′をアウター管10o′の外周面に塗布したと同等の作用効果を奏することは勿論である。
【0039】
図7〜図9は、本発明に関わる加熱器を、半導体製造の様々なプロセスにおいて使用される薬液(被温調流体)、詳しくはガルテン等の遠赤外線を吸収し易い薬液を温度調節するための流体加熱装置に適用した例を示している。
【0040】
上記流体加熱装置100は、箱形状を呈するケーシング100Cに収容された外管102を有し、両端部を端壁により閉塞された上記外管102には、両端壁を貫通して円筒形状の内管103が設置されており、耐熱ガラス等から成る上記内管103の内部には、加熱手段としてのハロゲンランプヒータ110が挿入設置されている。
【0041】
上記ハロゲンランプヒータ110は、内部にフィラメント110fを封入したヒータ管110aの両端部を端部ベース110b、110bで支持したダブルエンド型であり、各端部ベース110b、110bからは配線110e、110eが導出している。
【0042】
上述した如く流体加熱装置100は、ハロゲンランプヒータ110の挿入設置される、言い換えればハロゲンランプヒータ110のヒータ管110aを囲繞する内管(管体)103を具備している。
【0043】
上記内管103は、上述の如く耐熱ガラス等から成る円筒形状を呈しており、の内周面には、セラミックを基材とした遠赤外線放射塗料103cが塗布されており、この遠赤外線放射塗料103cは、少なくともヒータ管110aにおけるフィラメント110fの発光範囲(発光部)lfを覆う範囲lcに亘って、上記内管103の全周に及ぶ態様で塗布されている。
【0044】
図7および図8に示す如く、上述したハロゲンランプヒータ110の挿入設置された内管103によって、外管102の内部には薬液Lの流路102gが画成されており、外管102に設けられた流入口102iから供給された薬液Lは、流路102gを通過する際に、ハロゲンランプヒータ110から放射された近赤外線が、内管103に塗布された遠赤外線放射塗料10cによりシフトされた遠赤外線を吸収して加熱され、外管102に設けられた流出口102oを介して排出されて行く。
【0045】
上述した如き構成の流体加熱装置100、すなわち、本発明に関わる加熱器としての流体過熱装置100によれば、ハロゲンランプヒータ110(ヒータ管110a)を囲繞する内管(管体)103の周面に遠赤外線放射塗料103cを塗布したことで、ハロゲンランプヒータのヒータ管に遠赤外線放射塗料を塗布している従来の構成(図11、図12参照)に比べ、ヒータ管110aの発光部(フィラメント110f)から遠赤外線放射塗料103cまでの距離(半径)が増加することとなり、上記発光部(フィラメント110f)を取り囲む遠赤外線放射塗料103cの面積が格段に増大する。
【0046】
このように、遠赤外線放射塗料103cの面積が増大することで、ヒータ管110aから放射される遠赤外線の単位面積当たりの照射量が減少するため、上記遠赤外線放射塗料103cの温度上昇が抑えられることとなり、もって遠赤外線放射塗料103cからの遠赤外線の放射効率の向上を達成することが可能となる。
【0047】
因みに、上述した実施例では、流体加熱装置100の内管103にダブルエンド型のハロゲンランプヒータ110を装着した例を示したが、図1〜図3に示した如き1本のヒータ管10aを有して成るシングルエンド型のハロゲンランプヒータ10や、図4〜図6に示した如き並設した2本のヒータ管10a′、10a′を有して成るシングルエンド型のハロゲンランプヒータ10を、上記内管103に装着して流体加熱装置100を構成することも可能である。
【0048】
ここで、図4〜図6に示した如き並設した2本のヒータ管10a′、10a′を有するハロゲンランプヒータ10′を、上記内管103に装着して流体加熱装置100を構成した場合でも、2本のヒータ管10a′、10a′を囲繞する内管(管体)103の周面に遠赤外線放射塗料103cを塗布することで、個々のヒータ管に遠赤外線放射塗料を塗布している従来の構成に対し、ヒータ管10a′同士の熱の干渉により遠赤外線放射塗料103cが過熱することはなく、もって遠赤外線放射塗料103cの損傷や剥離等は未然に防止されることとなる。
【0049】
また、上述した実施例においては、流体加熱装置100における内管103の内周面に遠赤外線放射塗料103cを塗布した例を示したが、条件によっては上記内管103の外周面に遠赤外線放射塗料103cを塗布することも可能であり、このような構成においても、遠赤外線放射塗料103cを内管103の内周面に塗布したと同等の作用効果を奏することは勿論である。
【0050】
なお、上述した各実施例においては、半導体製造に関わる様々なプロセスに使用される薬液、特にガルテン等の遠赤外線を吸収し易い薬液の温度調節に、本発明の加熱器を適用した例を示したが、例示したガルテン以外の様々な薬液の温度管理においても、本発明の加熱器を有効に適用し得ることは勿論である。
【0051】
さらに、上述した実施例においては、半導体装置の製造分野に本発明を適用した例を示したが、遠赤外線放射による被加熱流体の加熱を必要とする様々な産業分野における諸設備に対しても、本発明の加熱器を有効に適用し得ることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明を適用したハロゲンランプヒータの実施例を示す流体加熱装置の概念的な断面側面図。
【図2】(a)および(b)は、図1に示したハロゲンランプヒータの外観側面図および外観平面図。
【図3】(a)は図1に示したハロゲンランプヒータの要部断面側面図、(b)は(a)中のb−b線断面図、(c)は(a)中のc−c線断面図。
【図4】本発明を適用したハロゲンランプヒータの他の実施例を示す流体加熱装置の概念的な断面側面図。
【図5】(a)および(b)は、図4に示したハロゲンランプヒータの外観側面図および外観平面図。
【図6】(a)は図5に示したハロゲンランプヒータの断面側面図、(b)は(a)中のb−b線断面図、(c)は(a)中のc−c線断面図。
【図7】本発明を適用した加熱流体装置の実施例を示す概念的な断面側面図。
【図8】図7に示した流体加熱装置の要部断面側面図。
【図9】図8中のIX−IX線断面図。
【図10】従来の流体加熱装置を示す概念的な外観斜視図。
【図11】図10に示した流体加熱装置の断面側面図。
【図12】(a)は従来のハロゲンランプヒータを示す全体側面図、(b)は(a)中のb−b線断面図。
【図13】(a)は従来のハロゲンランプヒータを示す全体側面図、(b)は(a)中のb−b線断面図。
【符号の説明】
【0053】
1…流体加熱装置、
2…外管、
3…内管、
10…ハロゲンランプヒータ(加熱器)、
10a…ヒータ管、
10b…端部ベース、
10f…フィラメント、
10o…アウター管、
10c…遠赤外線放射塗料、
1′…流体加熱装置、
2′…外管、
3′…内管、
10′…ハロゲンランプヒータ(加熱器)、
10a′…ヒータ管、
10b′…端部ベース、
10f′…フィラメント、
10o′…アウター管、
10c′…遠赤外線放射塗料、
100…流体加熱装置(加熱器)、
102…外管、
103…内管、
103c…遠赤外線放射塗料、
110…ハロゲンランプヒータ、
110a…ヒータ管、
110b…端部ベース、
110f…フィラメント。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
端部に端部ベースを有するヒータ管と、
前記ヒータ管を囲繞する管体を有して成る加熱器であって、
前記ヒータ管からの近赤外線放射を遠赤外線放射にシフトする遠赤外線放射塗料を、前記管体の周面における少なくとも前記ヒータ管の発光部を覆う範囲に亘って全周に塗布し、前記ヒータ管の動作に基づいて遠赤外線を放射するよう構成したことを特徴とする加熱器。
【請求項2】
前記管体が、ハロゲンランプであるヒータ管を全長に亘って囲繞するアウター管であり、ハロゲンランプヒータを構成していることを特徴とする請求項1記載の加熱器。
【請求項3】
前記アウター管と前記端部ベースとの間に隙間を設けていることを特徴とする請求項2記載の加熱器。
【請求項4】
前記管体が、被加熱流体の供給される外管に設けられて前記外管との間に被加熱流体の流路を画成する内管であり、流体加熱装置を構成していることを特徴とする請求項1記載の加熱器。
【請求項1】
端部に端部ベースを有するヒータ管と、
前記ヒータ管を囲繞する管体を有して成る加熱器であって、
前記ヒータ管からの近赤外線放射を遠赤外線放射にシフトする遠赤外線放射塗料を、前記管体の周面における少なくとも前記ヒータ管の発光部を覆う範囲に亘って全周に塗布し、前記ヒータ管の動作に基づいて遠赤外線を放射するよう構成したことを特徴とする加熱器。
【請求項2】
前記管体が、ハロゲンランプであるヒータ管を全長に亘って囲繞するアウター管であり、ハロゲンランプヒータを構成していることを特徴とする請求項1記載の加熱器。
【請求項3】
前記アウター管と前記端部ベースとの間に隙間を設けていることを特徴とする請求項2記載の加熱器。
【請求項4】
前記管体が、被加熱流体の供給される外管に設けられて前記外管との間に被加熱流体の流路を画成する内管であり、流体加熱装置を構成していることを特徴とする請求項1記載の加熱器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−99259(P2009−99259A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−266469(P2007−266469)
【出願日】平成19年10月12日(2007.10.12)
【出願人】(590000835)株式会社KELK (40)
【出願人】(506378887)河北ライティングソリューションズ株式会社 (3)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月12日(2007.10.12)
【出願人】(590000835)株式会社KELK (40)
【出願人】(506378887)河北ライティングソリューションズ株式会社 (3)
【Fターム(参考)】
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