加熱式地下水検層法及び加熱式地下水検層用感知器並びに加熱式地下水検層用測定装置
【課題】 簡便な手法により熟練者でなくても短時間の計測で地下水の水みちの存在とその地表面からの深度を算出でき、且つ、計測精度が良好で、周辺環境へ与える負荷が小さい地下水検層法、及びその地下水検層法に用いられる感知器並びに測定装置を提供する。
【解決手段】 感知器2を所定の速度でもってボーリング孔内に下降させ、第1の温度センサ(22)と第2の温度センサ(23)とで感知した発熱体(21)の温度及び感知器2周囲の水温を同時に所定時間毎に計測し、発熱体の温度が水温と線形関係にある平衡温度の要素と地下水の水みちからの水流の影響による変化温度の要素とからなるものであることと平衡温度が水温と線形関係にあることを利用して、発熱体温度と、該温度と同時に計測した水温とからその計測深度毎に変化温度を算出し、変化温度が急激に変化している計測深度を探し出すことにより地下水の水みちが存在する深度を求める。
【解決手段】 感知器2を所定の速度でもってボーリング孔内に下降させ、第1の温度センサ(22)と第2の温度センサ(23)とで感知した発熱体(21)の温度及び感知器2周囲の水温を同時に所定時間毎に計測し、発熱体の温度が水温と線形関係にある平衡温度の要素と地下水の水みちからの水流の影響による変化温度の要素とからなるものであることと平衡温度が水温と線形関係にあることを利用して、発熱体温度と、該温度と同時に計測した水温とからその計測深度毎に変化温度を算出し、変化温度が急激に変化している計測深度を探し出すことにより地下水の水みちが存在する深度を求める。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、地すべり防止施設の計画・設計などのために行われる地下水検層法の改良及び高度化に関し、詳しくは、調査対象となる地層中に地下水の水みちが地表面からの深度においてどの位置に存在するかを調査する方法、及びその方法に用いられる感知器並びに測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地すべりの発生を防止するための地下水排水計画、地すべり防止施設の設計、地すべり機構の解明、あるいは一般的な土木工事の基礎調査など様々な目的のために地下水調査が行われている。この地下水調査の1つとして地下水検層があり、地下水検層は、地質調査などのために掘削された既設のボーリング孔を用いて、地下水の水みちが地表面からの深度において地層中のどの位置に存在するかを調査するものである。従来の一般的な地下水検層法は、ボーリング孔内に溜まった水に食塩などの電解質を投入し、濃度が均一になるよう攪拌し、深度方向に所定間隔をおいて連なった複数の電極対からなる感知器(プローブ)などを用いて、孔内の地下水面から孔底までの間において比抵抗値の経時変化を計測することで、水みちからの地下水の流入・流出により電解質の濃度が低下して比抵抗値が時間毎に上昇することから地下水の流動位置を特定し、地下水の水みちの存在とその深度を調査するものである(例えば、特許文献1)。
【0003】
しかし、このような地下水検層法では、電解質を均一に攪拌することが難しいという問題点や、各測定箇所の比抵抗値の経時変化の状況から水みち深度を判定するため、計測に長時間を要し、また、熟練者でなければ判定が難しかったり、地下水の流量が少ない微細な水みちは判定できなかったりして計測精度があまりよくないという問題点がある。その上、食塩などの電解質を大量に用いるため、周辺環境へ与える負荷が大きいという問題点がある。
【0004】
また、食塩などの電解質を使用しないものもいくつか提案されている(例えば、特許文献2,3)。特許文献2に記載の発明は、円柱状のプローブ主体に等熱流束を得るように工夫された帯状発熱体をその外周に設置し、発熱体の外周に沿って配置した複数個の温度センサにより、発熱体の定常及び非定常状態における温度分布を計測し、一本の前記プローブを用いて原位置で局所的な地下水の流速及び流向、並びに地層構成物体の有効熱伝導率等を同時測定するものである。
【0005】
しかし、特許文献2に記載の発明では、流速や流向などが測定できるものの、水みちの存在する深度がすぐに分かるわけではないので、つまり、ボーリング孔内の深度方向の計測する全ての箇所において、壁面温度が帯状発熱体と地下水の流速とにより定まる一定値に漸近していく定常状態に達するまで計測しなければならず、計測に長時間かかってしまうという問題点がある。
【0006】
特許文献3に記載の発明は、多数の貫通孔を有する金属製保護ケースの内部に、外周にフィンを有する金属製パイプを一体的に形成し、該パイプの下端を低蓋兼芯金に密閉し、地上の電源及び計器に接続される電熱源(ヒータ)を前記芯金に捲装せしめ、且つ前記パイプの内方上部に地上の計器に接続される電気温度計を配設した加温温度検出装置をボーリングロッドの先端に取り付けて計測し、前記パイプによる放熱の程度が流動水と不動水との場合では異なることを利用して地下水の流動位置を判定するものである。
【0007】
しかし、特許文献3に記載の発明では、1つの温度計の計測結果から流動水と不動水との放熱具合の差を判別して地下水の流動位置を判定しており、ボーリング孔内に溜まった水も流入してくる地下水の温度や、その対流の影響で計測深度によって変化することが考慮されていないなどの理由から、計測精度が悪いという問題点がある。
【0008】
【特許文献1】特開平5−60874号公報
【特許文献2】特開平2−10114号公報
【特許文献3】特公昭48−6361号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこでこの発明は、前記従来の技術の問題点を解決し、簡便な手法により熟練者でなくても短時間の計測で地下水の水みちの存在とその地表面からの深度の判定が良好にでき、且つ、計測精度が良好で、周辺環境へ与える負荷が小さい地下水検層法、及びその地下水検層法に用いられる感知器並びに測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、地中の深さ方向に掘削したボーリング孔内にケーブル等で吊り下げて下降させ、地表面からの地下水の水みちの深度を求める地下水検層法において、感知器を所定の速度でもってボーリング孔内に下降させ、前記感知器は、感知器本体と、該感知器本体の内部に設けられた発熱体と、該発熱体近傍の感知器本体に設けられ発熱体の温度を感知する第1の温度センサと、前記発熱体から所定間隔下方の感知器本体に設けられ周囲の水温を感知する第2の温度センサとを有し、第1の温度センサと第2の温度センサとで感知した前記発熱体の温度及び前記水温を同時に所定時間毎に計測し、前記発熱体の温度が前記水温と線形関係にある平衡温度の要素と地下水の水みちからの水流の影響による変化温度の要素とからなるものであることと前記平衡温度が前記水温と線形関係にあることを利用して、前記発熱体の温度と、該温度と同時に計測した前記水温とからその計測深度毎に前記変化温度を算出し、前記変化温度が急激に変化している計測深度を探し出すことにより地下水の水みちが存在する深度を求めることを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記発熱体の温度の計測データと前記水温の計測データとの関係から前記発熱体の温度の計測データと前記水温の計測データとが略線形関係にある区間を抽出し、該抽出区間では、前記発熱体の温度は前記平衡温度と略等しいものとし、前記抽出区間の計測データと近似する直線の式を求めて、該直線の式の定数を式1の定数a,bに代入し、式1と式2とにより、前記発熱体の温度及び前記水温の計測データから計測深度毎に前記変化温度を算出し、地下水の水みちが存在する深度を求めることを特徴とする。
Thw=a+bTw …式1
ΔTh=Th−Thw…式2
ここで、Thw:発熱体の平衡温度、Tw:感知器周囲の水温、Th:発熱体の温度、
ΔTh:地下水の水みちからの水流の影響による発熱体の変化温度
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の加熱式地下水検層法に用いられる感知器であって、感知器本体と、該感知器本体の内部に設けられた発熱体と、該発熱体近傍の感知器本体に設けられ発熱体の温度を感知する第1の温度センサと、前記発熱体から所定間隔下方の感知器本体に設けられ周囲の水温を感知する第2の温度センサとを有することを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項3において、前記発熱体は、通電することにより発熱する抵抗発熱体であることを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項2に記載の加熱式地下水検層法に用いられる測定装置であって、前記感知器と、ボーリング孔内において前記感知器を一定速度で昇降させる昇降手段と、前記感知器からの計測データを記録する記録手段と、前記記録手段に格納された計測データから地下水の水みちが存在する深度を算出する電子計算手段とを備え、前記電子計算手段は、前記抽出区間の計測データを直線に近似して前記定数a,bを算出すると共に、地下水の水みちからの水流の影響による変化温度を式3から計測深度毎に算出することにより地下水の水みちが存在する深度を算出して求めることを特徴とする。
ΔTh=Th−a−bTw…式3
ここで、ΔTh:地下水の水みちからの水流の影響による発熱体の変化温度、
Th:発熱体の温度、Tw:感知器周囲の水温
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明は、前記のように、地中の深さ方向に掘削したボーリング孔内にケーブル等で吊り下げて下降させ、地表面からの地下水の水みちの深度を求める地下水検層法において、感知器を所定の速度でもってボーリング孔内に下降させ、前記感知器は、感知器本体と、該感知器本体の内部に設けられた発熱体と、該発熱体近傍に設けられ該発熱体の温度を感知する第1の温度センサと、前記発熱体から所定間隔下方に設けられ周囲の水温を感知する第2の温度センサとを有し、第1の温度センサと第2の温度センサとで感知した前記発熱体の温度及び前記水温を同時に所定時間毎に計測し、前記発熱体の温度が前記水温と線形関係にある平衡温度の要素と地下水の水みちからの水流の影響による変化温度の要素とからなるものであることと前記平衡温度が前記水温と線形関係にあることを利用して、前記発熱体の温度と、該温度と同時に計測した前記水温とからその計測深度毎に前記変化温度を算出し、前記変化温度が急激に変化している計測深度を探し出すことにより地下水の水みちが存在する深度を求めるので、発熱体の温度の低下から直接的に地下水の水みちの深度の判定を良好に行うことが可能となり、熟練者でなくとも精度よく判定できる。また、1つの測定箇所(計測深度)での計測は、1回で済み従来と比べて大幅に計測時間を短縮することができる。その上、地下水に従来の食塩のようなもの等、何も溶かす必要がないため、更に調査時間を短縮することができると共に、環境への負荷が少なくて済む。
【0016】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記発熱体の温度の計測データと前記水温の計測データとの関係から前記発熱体の温度の計測データと前記水温の計測データとが略線形関係にある区間を抽出し、該抽出区間では、前記発熱体の温度は前記平衡温度と略等しいものとし、前記抽出区間の計測データと近似する直線の式を求めて、該直線の式の定数を式1の定数a,bに代入し、式1と式2とにより、前記発熱体の温度及び前記水温の計測データから計測深度毎に前記変化温度を算出し、地下水の水みちが存在する深度を求めるので、前記効果に加え、更に正確に地下水の水みちが存在する深度を判定することができる。
【0017】
請求項3に記載の発明は、感知器本体と、該感知器本体の内部に設けられた発熱体と、該発熱体近傍の感知器本体に設けられ発熱体の温度を感知する第1の温度センサと、前記発熱体から所定間隔下方の感知器本体に設けられ周囲の水温を感知する第2の温度センサとを有するので、請求項1又は2に記載の加熱式地下水検層法にこの感知器を用いることで、簡単に、前記効果を奏することができる。
【0018】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の加熱式地下水検層法用感知器おいて、前記発熱体は、通電することにより発熱する抵抗発熱体であるので、この抵抗発熱体を計測器や他の制御手段で制御して所定温度にすることが容易であり、更に、正確に地下水の水みちが存在する深度を求めることができる。
【0019】
請求項5に記載の発明は、前記感知器と、ボーリング孔内において前記感知器を一定速度で昇降させる昇降手段と、前記感知器から送信される前記計測データを記録する記録手段と、該記録手段に格納された前記計測データから地下水の水みちが存在する深度を算出する電子計算手段とを備え、前記電子計算手段は、前記抽出区間の計測データを直線に近似して前記定数a,bを算出すると共に、地下水の水みちからの水流の影響による変化温度を式3から計測深度毎に算出することにより地下水の水みちが存在する深度を算出して求めるので、請求項2に記載の加熱式地下水検層法にこの測定装置を用いることで、前記効果を奏することができるだけでなく、作業手間を掛けずに自動で各温度を計測し、地下水の水みちが存在する深度をその場で素早く正確に判定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
この発明の一実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0021】
図1は、この発明の加熱式地下水検層法用測定装置の一実施の形態の概要構成を示す構成図である。1は、加熱式地下水検層法用測定装置であり、地質調査などのために地すべり斜面等に掘削された既設のボーリング孔を利用して、調査対象となる地層中に地下水の水みちが地表面からの深度においてどの位置に存在するかを調査するのに用いられるものである。この加熱式地下水検層法用測定装置1は、ケーブルに接続され、ボーリング孔内をケーブルで吊り下げながら下降させて地下水の温度等を感知する後述の感知器2と、ボーリング孔上方に設置され、前記ケーブルをプーリーで巻き出し・巻き上げ可能に構成されており、ボーリング孔内において感知器2を昇降させる昇降手段である昇降機3と、地上に設置され、感知器2とケーブル内の配線で電気的に接続し、感知器2から送信される信号から地下水の温度等を計測する計測器4と、この計測器4と配線で電気的に接続し、計測器4で計測された計測データを継続的に収集し、この計測データを電子計算手段に利用できるように処理するデータ収集用のデータロガー5と、このデータロガー5を介して計測器4と配線で電気的に接続し、計測データを記録する記録手段(例えば、ハードディスク)を備え、この記録手段に格納した計測データから地下水の水みちが存在する深度を算出する電子計算手段としてのPC6などを具備している。
【0022】
本実施の形態において昇降機3は、地すべり斜面のような商用電源が近くにない場所でも使用できるように、発動発電機が備えられ、ガソリンなどの燃料から発電して作動するようになっている。また、各機器同士(例えば、感知器2と計測器4)は、配線で電気的に接続されたような有線形式ではなく無線形式であっても構わない。つまり、電磁的な方法により、計測データ等を少なくとも所定の一方向に送信可能となっていればよい。
【0023】
図2は、図1の感知器2の概略構成を示すために部分的に透視して表した正面図である。同図に示すように、感知器2には、ケーブルが接続されている下端が尖った外観形状がロケット状の感知器本体20と、この感知器本体20の内部やや上方に設けられ、通電することにより発熱する抵抗発熱体であるヒータ21と、このヒータ21近傍の感知器本体下側に設けられ、ヒータ温度を感知する第1の温度センサとしてのヒータ温度センサ22と、ヒータ21から所定間隔下方の感知器本体に設けられ、地下水などの感知器2の周囲の水温を感知する第2の温度センサとしての水温センサ23などが備えられている。このヒータ温度センサ22、水温センサ23は、例えば、熱電対やサーミスタ、白金測温抵抗体などの接触式の温度センサが用いられている。特に、比較的安価で入手し易く、測定方法が簡単で精度が高く、測定時間の遅れも比較的小さい熱電対が好ましい。
【0024】
ヒータ21で発生させる熱は、主に上方に拡散していくので、このように、ヒータ21を感知器本体20の内部やや上方に設け、ヒータ温度センサ22をヒータ21近傍の感知器本体下側に設け、水温センサ23をヒータ21から所定間隔下方の感知器本体に設けることにより、簡易な構成で、正確にヒータ温度及び周囲の水温を感知して計測することができるようになっている。また、本実施の形態に係る感知器本体20は、塩化ビニルなどの断熱性を有する樹脂から形成されており、そのため、ヒータ21と水温センサ23とが断熱されて、ヒータ21の熱の影響を受けずに感知器2の周囲の水温を水温センサ23で更に正確に感知して計測することができる構成となっている。
【0025】
感知器本体20の材質は、特に断熱性を有する樹脂に限られるものではなく、樹脂以外のものから成形し、感知器本体20内側のヒータ温度センサ22と水温センサ23との間に、発泡樹脂などの断熱材を挿入して断熱しても構わない。そうすることで、同様の効果を得られるのは明らかである。
【0026】
次に、本実施の形態に係る加熱式地下水検層法用測定装置による測定方法について説明する。図3は、加熱式地下水検層法用測定装置の動作を示す模式図である。先ず、地すべり地盤などの調査の対象地域に掘削されたボーリング孔内に、ボーリング孔の壁面を構成する土砂が崩れてくるのを防止するため、管体の周面に一様に多数の貫通孔(図の下部参照)が穿設されたストレーナ管Sを挿入して、その上端が地表面から少し突出するように設置する。そして、加熱式地下水検層法用測定装置1の昇降機3を作動させて、昇降機3のプーリーを回転させ、ケーブルを巻き出し、一定速度(例えば、10mm/s)で、ゆっくりと感知器2をボーリング孔内の水面に向けて下降させる。この時、感知器2のヒータ21も通電して、所定温度になるよう発熱させる。ヒータ21の温度は、実験結果からボーリング孔内の水温より3℃程度高い温度で発熱させると計測精度の観点から好ましい。
【0027】
また、感知器本体20の外観形状が下端が尖ったロケット状となっているため、ボーリング孔内に溜まった水面に着水する時、及び水中を下降させる時に水の抵抗を受け難く、感知器2が水平方向に揺れ動いたりしないので、精度よく計測することができる。また、感知器2がボーリング孔の壁面に接触して損傷することを防止することができる。
【0028】
このように、ボーリング孔内の水中を感知器2のヒータ21を発熱させながら下降させ、感知器2のヒータ温度センサ22と水温センサ23とで、それぞれ感知したヒータ温度、及び水温を地上に設置してある計測器4(図1参照)で所定時間毎に同時に計測し、データロガー5(図1参照)で継続的にこれらの計測データの収集・データ処理を行ったうえ、PC6(図1参照)の記録手段に記録していくことにより測定していく。そして、感知器2がボーリング孔の底に達するまで測定する。このように計測するため、計測箇所(計測深度)では、1回しか計測を行わず、しかも、瞬時に計測できるので、従来の地下水検層法と比べて飛躍的に計測時間が短くて済む。
【0029】
また、感知器2を一定速度で下降させて、所定時間毎に計測するので、計測データからその計測箇所(計測深度)が割り出せる。しかし、突発的なアクシデントで計測がストップすることもあり得るので、ケーブルに目盛を付すなどして、所定の計測時間毎にその計測深度を計測するようにすると好ましい。更に、昇降機3のケーブル送り出しメータ数を自動で記録されるようにするとより好ましい。
【0030】
次に、これらの温度の計測データから地下水の水みちの深度を算出する方法について説明する。説明するにあたって、地下水検層法の性能を調べるために、人工的に地下水の水みちを再現した検証用施設を作成し、その施設において、本実施の形態に係る地下水検層法用測定装置を用いて測定し、その計測データを基に地下水の水みちの深度を算出する場合で説明する。図4は、この検証用施設の概要を示す模式図であり、図5は、この検証用施設において、本実施の形態に係る加熱式地下水検層法用測定装置で測定した各計測データの深度分布を表したグラフ、つまり、横軸を各温度データ(ヒータ温度、水温)、縦軸を計測深度で表したグラフである。
【0031】
図4に示すように、この検証用施設(長さ2.0m、幅2.0m、高さ1.5m)は、ボーリング孔に相当する長さ200cm、直径40mmのストレーナ管Sと、地下水の水みちに相当する直径4mmの流入側のパイプP1と、同径の流出側のパイプP2と、このパイプP1に水を供給するためのタンクTから構成されている。図に示すタンクTの高さhを調整することにより、高低差による圧力で地下水の水流を再現している。図に示すように、ストレーナ管Sの設置深度は、150cmまでとし、パイプP1、P2の設置深度は、65cmとした。また、供給する水量は、100ml/minとなるように高さhを調整した。
【0032】
図5から明らかなように、ヒータ温度と水温とは、大局的には相関しているが、ヒータ温度は、深度65cm付近(即ち、地下水の水みちの深度)で一旦低下し、深度70cm付近ではすぐにもとの温度まで回復して、その後の80cm以降の深度では、水温と共に徐々に低下していく。これは、水みちを再現したパイプP1の水流がヒータ21及びヒータ温度センサ22の温度を低下させたものと推測できる。つまり、水みちを流れる流動水は、ボーリング孔内に溜まった水に相当するストレーナ管S内に溜まった不動水と比べて、単位時間に感知器2と接触する水量が多いので、パイプP1を流れる水の水温より温度の高いヒータ21及びヒータ温度センサ22の温度をより低下させたものと推測できる。また、ヒータ温度、水温ともパイプP1の設置深度付近から温度が徐々に低下しているのは、パイプP1から流入してくる低温の水は、温度が低いほど対流により下の方に移動するからだと推測される。
【0033】
図6は、この検証実験の計測データの水温とヒータ温度との関係を示すため、横軸を水温、縦軸をヒータ温度で表したグラフであり、図7は、図6のグラフから近似直線の定数a,bを求める方法を示す説明図である。図6中の範囲A内にあるデータは、ストレーナ管S内に溜まった水の水面付近の計測データであり、範囲B内にあるデータは、ストレーナ管Sの孔底付近の計測データである。そのため、これら範囲A、B内にあるデータは、外気温などの影響を受けたものと推測される。よって、これらのデータを除くと、図7から明らかなように、水温とヒータ温度の両者は、略線形関係にあることが分かる。このことから、ヒータ温度は、水温と平衡状態を保ちながら変化し、水みちでは、流動水の流入により、ヒータ温度だけさらに低下していると考えられる。したがって、ヒータ温度は、水温と線形関係にある平衡温度(以下、ヒータ平衡温度Thwという。)の要素とパイプP1(地下水の水みち)からの水流の影響による変化温度(以下、ヒータ変化温度ΔThという。)の要素とからなるものと想定することができ、式(1)が成立するといえる。
Th=Thw+ΔTh…式(1)
Th:ヒータ温度、Thw:ヒータ平衡温度、
ΔTh:パイプP1からの水流の影響によるヒータ変化温度
【0034】
ここで、ヒータ平衡温度Thwは、水温と線形関係にあるのだから式(2)が成立する。
Thw=a+bTw…式(2)
Thw:ヒータ平衡温度、Tw:感知器2周囲の水温
図7から明らかなように、この直線の定数bは、直線の傾きであり、定数aは、原点を通る縦軸とこの直線との交点のヒータ温度、つまり、水温0℃の時のヒータ温度であり、簡単に算出することができる。
また、式(1)のヒータ変化温度ΔThを左辺に移項すると、式(3)となる。
ΔTh=Th−Thw…式(3)
この式(3)に式(2)を代入すると、式(4)となる。
ΔTh=Th−a−bTw…式(4)
ΔTh:パイプP1からの水流の影響によるヒータ変化温度、Th:ヒータ温度、
Tw:感知器2周囲の水温
以上のように、感知器2と計測器4とで計測したヒータ温度Thと、感知器2周囲の水温Twの各計測データからパイプP1からの水流の影響によるヒータ変化温度ΔTh、即ち、地下水の水みちからの水流の影響による変化温度が求められる。
【0035】
図8は、この検証実験の計測データからヒータ変化温度を算出し、その計測深度分布を表したグラフである。図8から明らかなように、地下水の水みちとして設置したパイプP1の設置深度である深度約65cm付近で、ヒータ変化温度が約0.3℃低下しており、水みちの存在と、その深度が明瞭に判定できる。つまり、図5のグラフからヒータ温度の変化を読み取って地下水の水みちの存在を判定して、その水みちの存在する深度を特定することは、熟練者でなければ甚だ困難であるが、図8のグラフに変換することで、誰でも容易に地下水の水みちの存在とその地表面からの深度を判定・算出することができる。また、前述のように、ほとんどピンポイントで深度65cmが割り出せたように、計測精度も良好である。
【0036】
尚、式(2)、即ち、定数a,bを算出するにあたっては、図7のグラフを最小二乗法などの近似手法を用いて電子計算機(例えば、図1のPC6)で自動的に直線に近似させて算出するようにプログラミングしておくと好ましく、また、ヒータ変化温度ΔThを、式(4)により、ヒータ温度Thと、感知器2周囲の水温Twの各計測データから自動的に算出するようプログラミングしておくとより好ましい。そうすることで、更に素早く、正確に算出することができるからである。
【0037】
次に、新潟県の赤崎のある地すべり地域で行った従来の地下水検層法である食塩を用いた比抵抗値の地下水検層法による調査結果と、同地域で行った本実施の形態に係る地下水検層法を用いた調査結果とを比較・検証する。図9は、従来の地下水検層法による比抵抗値の深度分布の時系変化を表したグラフであり、図10は、本実施の形態に係る地下水検層法によるヒータ変化温度の深度分布を表すグラフである。図中の矢印がそれぞれの地下水検層法による判定・検出結果である水みちを表している。図9、10から明らかなように、本実施の形態に係る地下水検層法は、従来の地下水検層法では、検出できなかった微細な水みちも判定・検出できている。以上のように、本実施の形態に係る地下水検層法によれば、比抵抗値の時系変化から経験的に判定していた従来の地下水検層法と比べて、ヒータ温度の低下から直接的に地下水の水みち深度の判定・算出が可能であり、経験を特に必要としない。また、従来の地下水検層法では、計測を長時間に亘って実施する必要があったのに比べ、計測は、各測定深度ついて1回の計測すればよく、計測時間を大幅に短縮することができる。更に、地下水に何も溶かす必要がないため、調査時間の更なる短縮と環境への負荷を少なくすることができる。
【0038】
以上のように、この発明の実施の形態を説明してきたが、あくまでも一例を示すものであり、昇降機や各温度センサ、計測器、データロガー、PC等は、実施の形態で説明した範囲の他の市販品等でもよいことは言うもまでもない。また、図面で示した各構成部材や手段の形状や構造等は、あくまでも好ましい一例を示すものであり、その実施に際しては特許請求の範囲に記載した範囲内で、任意に設計変更・修正ができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】この発明の加熱式地下水検層法用測定装置の一実施の形態の概要構成を示す構成図である。
【図2】同上の検知器の概略構成を示すために部分的に透視して表した正面図である。
【図3】加熱式地下水検層法用測定装置の動作を示す模式図である。
【図4】地下水検層法の検証用施設の概要を示す模式図である。
【図5】同上の施設において、図1の加熱式地下水検層法用測定装置で計測した各計測データ(ヒータ温度、水温)の深度分布を表したグラフである。
【図6】同上の計測データの水温とヒータ温度との関係を示すため、横軸を水温、縦軸をヒータ温度で表したグラフである。
【図7】同上のグラフから近似直線の定数a,bを求める方法を示す説明図である。
【図8】同上の計測データから算出したヒータ変化温度の計測深度分布を表したグラフである。
【図9】ある場所において、従来の地下水検層法による比抵抗値の深度分布の時系変化を表したグラフである。
【図10】同上の場所において、本実施の形態に係る地下水検層法によるヒータ変化温度の深度分布を表すグラフである。
【符号の説明】
【0040】
1 加熱式地下水検層法用測定装置
2 感知器
20 感知器本体
21 ヒータ(発熱体)
22 ヒータ温度センサ(第1の温度センサ)
23 水温センサ(第2の温度センサ)
3 昇降機(昇降手段)
4 計測器
5 データロガー
6 PC(記録手段、電子計算手段)
【技術分野】
【0001】
この発明は、地すべり防止施設の計画・設計などのために行われる地下水検層法の改良及び高度化に関し、詳しくは、調査対象となる地層中に地下水の水みちが地表面からの深度においてどの位置に存在するかを調査する方法、及びその方法に用いられる感知器並びに測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地すべりの発生を防止するための地下水排水計画、地すべり防止施設の設計、地すべり機構の解明、あるいは一般的な土木工事の基礎調査など様々な目的のために地下水調査が行われている。この地下水調査の1つとして地下水検層があり、地下水検層は、地質調査などのために掘削された既設のボーリング孔を用いて、地下水の水みちが地表面からの深度において地層中のどの位置に存在するかを調査するものである。従来の一般的な地下水検層法は、ボーリング孔内に溜まった水に食塩などの電解質を投入し、濃度が均一になるよう攪拌し、深度方向に所定間隔をおいて連なった複数の電極対からなる感知器(プローブ)などを用いて、孔内の地下水面から孔底までの間において比抵抗値の経時変化を計測することで、水みちからの地下水の流入・流出により電解質の濃度が低下して比抵抗値が時間毎に上昇することから地下水の流動位置を特定し、地下水の水みちの存在とその深度を調査するものである(例えば、特許文献1)。
【0003】
しかし、このような地下水検層法では、電解質を均一に攪拌することが難しいという問題点や、各測定箇所の比抵抗値の経時変化の状況から水みち深度を判定するため、計測に長時間を要し、また、熟練者でなければ判定が難しかったり、地下水の流量が少ない微細な水みちは判定できなかったりして計測精度があまりよくないという問題点がある。その上、食塩などの電解質を大量に用いるため、周辺環境へ与える負荷が大きいという問題点がある。
【0004】
また、食塩などの電解質を使用しないものもいくつか提案されている(例えば、特許文献2,3)。特許文献2に記載の発明は、円柱状のプローブ主体に等熱流束を得るように工夫された帯状発熱体をその外周に設置し、発熱体の外周に沿って配置した複数個の温度センサにより、発熱体の定常及び非定常状態における温度分布を計測し、一本の前記プローブを用いて原位置で局所的な地下水の流速及び流向、並びに地層構成物体の有効熱伝導率等を同時測定するものである。
【0005】
しかし、特許文献2に記載の発明では、流速や流向などが測定できるものの、水みちの存在する深度がすぐに分かるわけではないので、つまり、ボーリング孔内の深度方向の計測する全ての箇所において、壁面温度が帯状発熱体と地下水の流速とにより定まる一定値に漸近していく定常状態に達するまで計測しなければならず、計測に長時間かかってしまうという問題点がある。
【0006】
特許文献3に記載の発明は、多数の貫通孔を有する金属製保護ケースの内部に、外周にフィンを有する金属製パイプを一体的に形成し、該パイプの下端を低蓋兼芯金に密閉し、地上の電源及び計器に接続される電熱源(ヒータ)を前記芯金に捲装せしめ、且つ前記パイプの内方上部に地上の計器に接続される電気温度計を配設した加温温度検出装置をボーリングロッドの先端に取り付けて計測し、前記パイプによる放熱の程度が流動水と不動水との場合では異なることを利用して地下水の流動位置を判定するものである。
【0007】
しかし、特許文献3に記載の発明では、1つの温度計の計測結果から流動水と不動水との放熱具合の差を判別して地下水の流動位置を判定しており、ボーリング孔内に溜まった水も流入してくる地下水の温度や、その対流の影響で計測深度によって変化することが考慮されていないなどの理由から、計測精度が悪いという問題点がある。
【0008】
【特許文献1】特開平5−60874号公報
【特許文献2】特開平2−10114号公報
【特許文献3】特公昭48−6361号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこでこの発明は、前記従来の技術の問題点を解決し、簡便な手法により熟練者でなくても短時間の計測で地下水の水みちの存在とその地表面からの深度の判定が良好にでき、且つ、計測精度が良好で、周辺環境へ与える負荷が小さい地下水検層法、及びその地下水検層法に用いられる感知器並びに測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、地中の深さ方向に掘削したボーリング孔内にケーブル等で吊り下げて下降させ、地表面からの地下水の水みちの深度を求める地下水検層法において、感知器を所定の速度でもってボーリング孔内に下降させ、前記感知器は、感知器本体と、該感知器本体の内部に設けられた発熱体と、該発熱体近傍の感知器本体に設けられ発熱体の温度を感知する第1の温度センサと、前記発熱体から所定間隔下方の感知器本体に設けられ周囲の水温を感知する第2の温度センサとを有し、第1の温度センサと第2の温度センサとで感知した前記発熱体の温度及び前記水温を同時に所定時間毎に計測し、前記発熱体の温度が前記水温と線形関係にある平衡温度の要素と地下水の水みちからの水流の影響による変化温度の要素とからなるものであることと前記平衡温度が前記水温と線形関係にあることを利用して、前記発熱体の温度と、該温度と同時に計測した前記水温とからその計測深度毎に前記変化温度を算出し、前記変化温度が急激に変化している計測深度を探し出すことにより地下水の水みちが存在する深度を求めることを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記発熱体の温度の計測データと前記水温の計測データとの関係から前記発熱体の温度の計測データと前記水温の計測データとが略線形関係にある区間を抽出し、該抽出区間では、前記発熱体の温度は前記平衡温度と略等しいものとし、前記抽出区間の計測データと近似する直線の式を求めて、該直線の式の定数を式1の定数a,bに代入し、式1と式2とにより、前記発熱体の温度及び前記水温の計測データから計測深度毎に前記変化温度を算出し、地下水の水みちが存在する深度を求めることを特徴とする。
Thw=a+bTw …式1
ΔTh=Th−Thw…式2
ここで、Thw:発熱体の平衡温度、Tw:感知器周囲の水温、Th:発熱体の温度、
ΔTh:地下水の水みちからの水流の影響による発熱体の変化温度
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の加熱式地下水検層法に用いられる感知器であって、感知器本体と、該感知器本体の内部に設けられた発熱体と、該発熱体近傍の感知器本体に設けられ発熱体の温度を感知する第1の温度センサと、前記発熱体から所定間隔下方の感知器本体に設けられ周囲の水温を感知する第2の温度センサとを有することを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項3において、前記発熱体は、通電することにより発熱する抵抗発熱体であることを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項2に記載の加熱式地下水検層法に用いられる測定装置であって、前記感知器と、ボーリング孔内において前記感知器を一定速度で昇降させる昇降手段と、前記感知器からの計測データを記録する記録手段と、前記記録手段に格納された計測データから地下水の水みちが存在する深度を算出する電子計算手段とを備え、前記電子計算手段は、前記抽出区間の計測データを直線に近似して前記定数a,bを算出すると共に、地下水の水みちからの水流の影響による変化温度を式3から計測深度毎に算出することにより地下水の水みちが存在する深度を算出して求めることを特徴とする。
ΔTh=Th−a−bTw…式3
ここで、ΔTh:地下水の水みちからの水流の影響による発熱体の変化温度、
Th:発熱体の温度、Tw:感知器周囲の水温
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明は、前記のように、地中の深さ方向に掘削したボーリング孔内にケーブル等で吊り下げて下降させ、地表面からの地下水の水みちの深度を求める地下水検層法において、感知器を所定の速度でもってボーリング孔内に下降させ、前記感知器は、感知器本体と、該感知器本体の内部に設けられた発熱体と、該発熱体近傍に設けられ該発熱体の温度を感知する第1の温度センサと、前記発熱体から所定間隔下方に設けられ周囲の水温を感知する第2の温度センサとを有し、第1の温度センサと第2の温度センサとで感知した前記発熱体の温度及び前記水温を同時に所定時間毎に計測し、前記発熱体の温度が前記水温と線形関係にある平衡温度の要素と地下水の水みちからの水流の影響による変化温度の要素とからなるものであることと前記平衡温度が前記水温と線形関係にあることを利用して、前記発熱体の温度と、該温度と同時に計測した前記水温とからその計測深度毎に前記変化温度を算出し、前記変化温度が急激に変化している計測深度を探し出すことにより地下水の水みちが存在する深度を求めるので、発熱体の温度の低下から直接的に地下水の水みちの深度の判定を良好に行うことが可能となり、熟練者でなくとも精度よく判定できる。また、1つの測定箇所(計測深度)での計測は、1回で済み従来と比べて大幅に計測時間を短縮することができる。その上、地下水に従来の食塩のようなもの等、何も溶かす必要がないため、更に調査時間を短縮することができると共に、環境への負荷が少なくて済む。
【0016】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記発熱体の温度の計測データと前記水温の計測データとの関係から前記発熱体の温度の計測データと前記水温の計測データとが略線形関係にある区間を抽出し、該抽出区間では、前記発熱体の温度は前記平衡温度と略等しいものとし、前記抽出区間の計測データと近似する直線の式を求めて、該直線の式の定数を式1の定数a,bに代入し、式1と式2とにより、前記発熱体の温度及び前記水温の計測データから計測深度毎に前記変化温度を算出し、地下水の水みちが存在する深度を求めるので、前記効果に加え、更に正確に地下水の水みちが存在する深度を判定することができる。
【0017】
請求項3に記載の発明は、感知器本体と、該感知器本体の内部に設けられた発熱体と、該発熱体近傍の感知器本体に設けられ発熱体の温度を感知する第1の温度センサと、前記発熱体から所定間隔下方の感知器本体に設けられ周囲の水温を感知する第2の温度センサとを有するので、請求項1又は2に記載の加熱式地下水検層法にこの感知器を用いることで、簡単に、前記効果を奏することができる。
【0018】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の加熱式地下水検層法用感知器おいて、前記発熱体は、通電することにより発熱する抵抗発熱体であるので、この抵抗発熱体を計測器や他の制御手段で制御して所定温度にすることが容易であり、更に、正確に地下水の水みちが存在する深度を求めることができる。
【0019】
請求項5に記載の発明は、前記感知器と、ボーリング孔内において前記感知器を一定速度で昇降させる昇降手段と、前記感知器から送信される前記計測データを記録する記録手段と、該記録手段に格納された前記計測データから地下水の水みちが存在する深度を算出する電子計算手段とを備え、前記電子計算手段は、前記抽出区間の計測データを直線に近似して前記定数a,bを算出すると共に、地下水の水みちからの水流の影響による変化温度を式3から計測深度毎に算出することにより地下水の水みちが存在する深度を算出して求めるので、請求項2に記載の加熱式地下水検層法にこの測定装置を用いることで、前記効果を奏することができるだけでなく、作業手間を掛けずに自動で各温度を計測し、地下水の水みちが存在する深度をその場で素早く正確に判定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
この発明の一実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0021】
図1は、この発明の加熱式地下水検層法用測定装置の一実施の形態の概要構成を示す構成図である。1は、加熱式地下水検層法用測定装置であり、地質調査などのために地すべり斜面等に掘削された既設のボーリング孔を利用して、調査対象となる地層中に地下水の水みちが地表面からの深度においてどの位置に存在するかを調査するのに用いられるものである。この加熱式地下水検層法用測定装置1は、ケーブルに接続され、ボーリング孔内をケーブルで吊り下げながら下降させて地下水の温度等を感知する後述の感知器2と、ボーリング孔上方に設置され、前記ケーブルをプーリーで巻き出し・巻き上げ可能に構成されており、ボーリング孔内において感知器2を昇降させる昇降手段である昇降機3と、地上に設置され、感知器2とケーブル内の配線で電気的に接続し、感知器2から送信される信号から地下水の温度等を計測する計測器4と、この計測器4と配線で電気的に接続し、計測器4で計測された計測データを継続的に収集し、この計測データを電子計算手段に利用できるように処理するデータ収集用のデータロガー5と、このデータロガー5を介して計測器4と配線で電気的に接続し、計測データを記録する記録手段(例えば、ハードディスク)を備え、この記録手段に格納した計測データから地下水の水みちが存在する深度を算出する電子計算手段としてのPC6などを具備している。
【0022】
本実施の形態において昇降機3は、地すべり斜面のような商用電源が近くにない場所でも使用できるように、発動発電機が備えられ、ガソリンなどの燃料から発電して作動するようになっている。また、各機器同士(例えば、感知器2と計測器4)は、配線で電気的に接続されたような有線形式ではなく無線形式であっても構わない。つまり、電磁的な方法により、計測データ等を少なくとも所定の一方向に送信可能となっていればよい。
【0023】
図2は、図1の感知器2の概略構成を示すために部分的に透視して表した正面図である。同図に示すように、感知器2には、ケーブルが接続されている下端が尖った外観形状がロケット状の感知器本体20と、この感知器本体20の内部やや上方に設けられ、通電することにより発熱する抵抗発熱体であるヒータ21と、このヒータ21近傍の感知器本体下側に設けられ、ヒータ温度を感知する第1の温度センサとしてのヒータ温度センサ22と、ヒータ21から所定間隔下方の感知器本体に設けられ、地下水などの感知器2の周囲の水温を感知する第2の温度センサとしての水温センサ23などが備えられている。このヒータ温度センサ22、水温センサ23は、例えば、熱電対やサーミスタ、白金測温抵抗体などの接触式の温度センサが用いられている。特に、比較的安価で入手し易く、測定方法が簡単で精度が高く、測定時間の遅れも比較的小さい熱電対が好ましい。
【0024】
ヒータ21で発生させる熱は、主に上方に拡散していくので、このように、ヒータ21を感知器本体20の内部やや上方に設け、ヒータ温度センサ22をヒータ21近傍の感知器本体下側に設け、水温センサ23をヒータ21から所定間隔下方の感知器本体に設けることにより、簡易な構成で、正確にヒータ温度及び周囲の水温を感知して計測することができるようになっている。また、本実施の形態に係る感知器本体20は、塩化ビニルなどの断熱性を有する樹脂から形成されており、そのため、ヒータ21と水温センサ23とが断熱されて、ヒータ21の熱の影響を受けずに感知器2の周囲の水温を水温センサ23で更に正確に感知して計測することができる構成となっている。
【0025】
感知器本体20の材質は、特に断熱性を有する樹脂に限られるものではなく、樹脂以外のものから成形し、感知器本体20内側のヒータ温度センサ22と水温センサ23との間に、発泡樹脂などの断熱材を挿入して断熱しても構わない。そうすることで、同様の効果を得られるのは明らかである。
【0026】
次に、本実施の形態に係る加熱式地下水検層法用測定装置による測定方法について説明する。図3は、加熱式地下水検層法用測定装置の動作を示す模式図である。先ず、地すべり地盤などの調査の対象地域に掘削されたボーリング孔内に、ボーリング孔の壁面を構成する土砂が崩れてくるのを防止するため、管体の周面に一様に多数の貫通孔(図の下部参照)が穿設されたストレーナ管Sを挿入して、その上端が地表面から少し突出するように設置する。そして、加熱式地下水検層法用測定装置1の昇降機3を作動させて、昇降機3のプーリーを回転させ、ケーブルを巻き出し、一定速度(例えば、10mm/s)で、ゆっくりと感知器2をボーリング孔内の水面に向けて下降させる。この時、感知器2のヒータ21も通電して、所定温度になるよう発熱させる。ヒータ21の温度は、実験結果からボーリング孔内の水温より3℃程度高い温度で発熱させると計測精度の観点から好ましい。
【0027】
また、感知器本体20の外観形状が下端が尖ったロケット状となっているため、ボーリング孔内に溜まった水面に着水する時、及び水中を下降させる時に水の抵抗を受け難く、感知器2が水平方向に揺れ動いたりしないので、精度よく計測することができる。また、感知器2がボーリング孔の壁面に接触して損傷することを防止することができる。
【0028】
このように、ボーリング孔内の水中を感知器2のヒータ21を発熱させながら下降させ、感知器2のヒータ温度センサ22と水温センサ23とで、それぞれ感知したヒータ温度、及び水温を地上に設置してある計測器4(図1参照)で所定時間毎に同時に計測し、データロガー5(図1参照)で継続的にこれらの計測データの収集・データ処理を行ったうえ、PC6(図1参照)の記録手段に記録していくことにより測定していく。そして、感知器2がボーリング孔の底に達するまで測定する。このように計測するため、計測箇所(計測深度)では、1回しか計測を行わず、しかも、瞬時に計測できるので、従来の地下水検層法と比べて飛躍的に計測時間が短くて済む。
【0029】
また、感知器2を一定速度で下降させて、所定時間毎に計測するので、計測データからその計測箇所(計測深度)が割り出せる。しかし、突発的なアクシデントで計測がストップすることもあり得るので、ケーブルに目盛を付すなどして、所定の計測時間毎にその計測深度を計測するようにすると好ましい。更に、昇降機3のケーブル送り出しメータ数を自動で記録されるようにするとより好ましい。
【0030】
次に、これらの温度の計測データから地下水の水みちの深度を算出する方法について説明する。説明するにあたって、地下水検層法の性能を調べるために、人工的に地下水の水みちを再現した検証用施設を作成し、その施設において、本実施の形態に係る地下水検層法用測定装置を用いて測定し、その計測データを基に地下水の水みちの深度を算出する場合で説明する。図4は、この検証用施設の概要を示す模式図であり、図5は、この検証用施設において、本実施の形態に係る加熱式地下水検層法用測定装置で測定した各計測データの深度分布を表したグラフ、つまり、横軸を各温度データ(ヒータ温度、水温)、縦軸を計測深度で表したグラフである。
【0031】
図4に示すように、この検証用施設(長さ2.0m、幅2.0m、高さ1.5m)は、ボーリング孔に相当する長さ200cm、直径40mmのストレーナ管Sと、地下水の水みちに相当する直径4mmの流入側のパイプP1と、同径の流出側のパイプP2と、このパイプP1に水を供給するためのタンクTから構成されている。図に示すタンクTの高さhを調整することにより、高低差による圧力で地下水の水流を再現している。図に示すように、ストレーナ管Sの設置深度は、150cmまでとし、パイプP1、P2の設置深度は、65cmとした。また、供給する水量は、100ml/minとなるように高さhを調整した。
【0032】
図5から明らかなように、ヒータ温度と水温とは、大局的には相関しているが、ヒータ温度は、深度65cm付近(即ち、地下水の水みちの深度)で一旦低下し、深度70cm付近ではすぐにもとの温度まで回復して、その後の80cm以降の深度では、水温と共に徐々に低下していく。これは、水みちを再現したパイプP1の水流がヒータ21及びヒータ温度センサ22の温度を低下させたものと推測できる。つまり、水みちを流れる流動水は、ボーリング孔内に溜まった水に相当するストレーナ管S内に溜まった不動水と比べて、単位時間に感知器2と接触する水量が多いので、パイプP1を流れる水の水温より温度の高いヒータ21及びヒータ温度センサ22の温度をより低下させたものと推測できる。また、ヒータ温度、水温ともパイプP1の設置深度付近から温度が徐々に低下しているのは、パイプP1から流入してくる低温の水は、温度が低いほど対流により下の方に移動するからだと推測される。
【0033】
図6は、この検証実験の計測データの水温とヒータ温度との関係を示すため、横軸を水温、縦軸をヒータ温度で表したグラフであり、図7は、図6のグラフから近似直線の定数a,bを求める方法を示す説明図である。図6中の範囲A内にあるデータは、ストレーナ管S内に溜まった水の水面付近の計測データであり、範囲B内にあるデータは、ストレーナ管Sの孔底付近の計測データである。そのため、これら範囲A、B内にあるデータは、外気温などの影響を受けたものと推測される。よって、これらのデータを除くと、図7から明らかなように、水温とヒータ温度の両者は、略線形関係にあることが分かる。このことから、ヒータ温度は、水温と平衡状態を保ちながら変化し、水みちでは、流動水の流入により、ヒータ温度だけさらに低下していると考えられる。したがって、ヒータ温度は、水温と線形関係にある平衡温度(以下、ヒータ平衡温度Thwという。)の要素とパイプP1(地下水の水みち)からの水流の影響による変化温度(以下、ヒータ変化温度ΔThという。)の要素とからなるものと想定することができ、式(1)が成立するといえる。
Th=Thw+ΔTh…式(1)
Th:ヒータ温度、Thw:ヒータ平衡温度、
ΔTh:パイプP1からの水流の影響によるヒータ変化温度
【0034】
ここで、ヒータ平衡温度Thwは、水温と線形関係にあるのだから式(2)が成立する。
Thw=a+bTw…式(2)
Thw:ヒータ平衡温度、Tw:感知器2周囲の水温
図7から明らかなように、この直線の定数bは、直線の傾きであり、定数aは、原点を通る縦軸とこの直線との交点のヒータ温度、つまり、水温0℃の時のヒータ温度であり、簡単に算出することができる。
また、式(1)のヒータ変化温度ΔThを左辺に移項すると、式(3)となる。
ΔTh=Th−Thw…式(3)
この式(3)に式(2)を代入すると、式(4)となる。
ΔTh=Th−a−bTw…式(4)
ΔTh:パイプP1からの水流の影響によるヒータ変化温度、Th:ヒータ温度、
Tw:感知器2周囲の水温
以上のように、感知器2と計測器4とで計測したヒータ温度Thと、感知器2周囲の水温Twの各計測データからパイプP1からの水流の影響によるヒータ変化温度ΔTh、即ち、地下水の水みちからの水流の影響による変化温度が求められる。
【0035】
図8は、この検証実験の計測データからヒータ変化温度を算出し、その計測深度分布を表したグラフである。図8から明らかなように、地下水の水みちとして設置したパイプP1の設置深度である深度約65cm付近で、ヒータ変化温度が約0.3℃低下しており、水みちの存在と、その深度が明瞭に判定できる。つまり、図5のグラフからヒータ温度の変化を読み取って地下水の水みちの存在を判定して、その水みちの存在する深度を特定することは、熟練者でなければ甚だ困難であるが、図8のグラフに変換することで、誰でも容易に地下水の水みちの存在とその地表面からの深度を判定・算出することができる。また、前述のように、ほとんどピンポイントで深度65cmが割り出せたように、計測精度も良好である。
【0036】
尚、式(2)、即ち、定数a,bを算出するにあたっては、図7のグラフを最小二乗法などの近似手法を用いて電子計算機(例えば、図1のPC6)で自動的に直線に近似させて算出するようにプログラミングしておくと好ましく、また、ヒータ変化温度ΔThを、式(4)により、ヒータ温度Thと、感知器2周囲の水温Twの各計測データから自動的に算出するようプログラミングしておくとより好ましい。そうすることで、更に素早く、正確に算出することができるからである。
【0037】
次に、新潟県の赤崎のある地すべり地域で行った従来の地下水検層法である食塩を用いた比抵抗値の地下水検層法による調査結果と、同地域で行った本実施の形態に係る地下水検層法を用いた調査結果とを比較・検証する。図9は、従来の地下水検層法による比抵抗値の深度分布の時系変化を表したグラフであり、図10は、本実施の形態に係る地下水検層法によるヒータ変化温度の深度分布を表すグラフである。図中の矢印がそれぞれの地下水検層法による判定・検出結果である水みちを表している。図9、10から明らかなように、本実施の形態に係る地下水検層法は、従来の地下水検層法では、検出できなかった微細な水みちも判定・検出できている。以上のように、本実施の形態に係る地下水検層法によれば、比抵抗値の時系変化から経験的に判定していた従来の地下水検層法と比べて、ヒータ温度の低下から直接的に地下水の水みち深度の判定・算出が可能であり、経験を特に必要としない。また、従来の地下水検層法では、計測を長時間に亘って実施する必要があったのに比べ、計測は、各測定深度ついて1回の計測すればよく、計測時間を大幅に短縮することができる。更に、地下水に何も溶かす必要がないため、調査時間の更なる短縮と環境への負荷を少なくすることができる。
【0038】
以上のように、この発明の実施の形態を説明してきたが、あくまでも一例を示すものであり、昇降機や各温度センサ、計測器、データロガー、PC等は、実施の形態で説明した範囲の他の市販品等でもよいことは言うもまでもない。また、図面で示した各構成部材や手段の形状や構造等は、あくまでも好ましい一例を示すものであり、その実施に際しては特許請求の範囲に記載した範囲内で、任意に設計変更・修正ができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】この発明の加熱式地下水検層法用測定装置の一実施の形態の概要構成を示す構成図である。
【図2】同上の検知器の概略構成を示すために部分的に透視して表した正面図である。
【図3】加熱式地下水検層法用測定装置の動作を示す模式図である。
【図4】地下水検層法の検証用施設の概要を示す模式図である。
【図5】同上の施設において、図1の加熱式地下水検層法用測定装置で計測した各計測データ(ヒータ温度、水温)の深度分布を表したグラフである。
【図6】同上の計測データの水温とヒータ温度との関係を示すため、横軸を水温、縦軸をヒータ温度で表したグラフである。
【図7】同上のグラフから近似直線の定数a,bを求める方法を示す説明図である。
【図8】同上の計測データから算出したヒータ変化温度の計測深度分布を表したグラフである。
【図9】ある場所において、従来の地下水検層法による比抵抗値の深度分布の時系変化を表したグラフである。
【図10】同上の場所において、本実施の形態に係る地下水検層法によるヒータ変化温度の深度分布を表すグラフである。
【符号の説明】
【0040】
1 加熱式地下水検層法用測定装置
2 感知器
20 感知器本体
21 ヒータ(発熱体)
22 ヒータ温度センサ(第1の温度センサ)
23 水温センサ(第2の温度センサ)
3 昇降機(昇降手段)
4 計測器
5 データロガー
6 PC(記録手段、電子計算手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中の深さ方向に掘削したボーリング孔内にケーブル等で吊り下げて下降させ、地表面からの地下水の水みちの深度を求める地下水検層法において、
感知器を所定の速度でもってボーリング孔内に下降させ、前記感知器は、感知器本体と、該感知器本体の内部に設けられた発熱体と、該発熱体近傍の感知器本体に設けられ発熱体の温度を感知する第1の温度センサと、前記発熱体から所定間隔下方の感知器本体に設けられ周囲の水温を感知する第2の温度センサとを有し、第1の温度センサと第2の温度センサとで感知した前記発熱体の温度及び前記水温を同時に所定時間毎に計測し、前記発熱体の温度が前記水温と線形関係にある平衡温度の要素と地下水の水みちからの水流の影響による変化温度の要素とからなるものであることと前記平衡温度が前記水温と線形関係にあることを利用して、前記発熱体の温度と、該温度と同時に計測した前記水温とからその計測深度毎に前記変化温度を算出し、前記変化温度が急激に変化している計測深度を探し出すことにより地下水の水みちが存在する深度を求めることを特徴とする加熱式地下水検層法。
【請求項2】
前記発熱体の温度の計測データと前記水温の計測データとの関係から前記発熱体の温度の計測データと前記水温の計測データとが略線形関係にある区間を抽出し、該抽出区間では、前記発熱体の温度は前記平衡温度と略等しいものとし、前記抽出区間の計測データと近似する直線の式を求めて、該直線の式の定数を式1の定数a,bに代入し、式1と式2とにより、前記発熱体の温度及び前記水温の計測データから計測深度毎に前記変化温度を算出し、地下水の水みちが存在する深度を求める請求項1に記載の加熱式地下水検層法。
Thw=a+bTw …式1
ΔTh=Th−Thw…式2
ここで、Thw:発熱体の平衡温度、Tw:感知器周囲の水温、Th:発熱体の温度、
ΔTh:地下水の水みちからの水流の影響による発熱体の変化温度
【請求項3】
請求項1又は2に記載の加熱式地下水検層法に用いられる感知器であって、感知器本体と、該感知器本体の内部に設けられた発熱体と、該発熱体近傍の感知器本体に設けられ発熱体の温度を感知する第1の温度センサと、前記発熱体から所定間隔下方の感知器本体に設けられ周囲の水温を感知する第2の温度センサとを有することを特徴とする加熱式地下水検層法用感知器。
【請求項4】
前記発熱体は、通電することにより発熱する抵抗発熱体である請求項3に記載の加熱式地下水検層法用感知器。
【請求項5】
請求項2に記載の加熱式地下水検層法に用いられる測定装置であって、前記感知器と、ボーリング孔内において前記感知器を一定速度で昇降させる昇降手段と、前記感知器からの計測データを記録する記録手段と、前記記録手段に格納された計測データから地下水の水みちが存在する深度を算出する電子計算手段とを備え、前記電子計算手段は、前記抽出区間の計測データを直線に近似して前記定数a,bを算出すると共に、地下水の水みちからの水流の影響による変化温度を式3から計測深度毎に算出することにより地下水の水みちが存在する深度を算出して求めることを特徴とする加熱式地下水検層法用測定装置。
ΔTh=Th−a−bTw…式3
ここで、ΔTh:地下水の水みちからの水流の影響による発熱体の変化温度、
Th:発熱体の温度、Tw:感知器周囲の水温
【請求項1】
地中の深さ方向に掘削したボーリング孔内にケーブル等で吊り下げて下降させ、地表面からの地下水の水みちの深度を求める地下水検層法において、
感知器を所定の速度でもってボーリング孔内に下降させ、前記感知器は、感知器本体と、該感知器本体の内部に設けられた発熱体と、該発熱体近傍の感知器本体に設けられ発熱体の温度を感知する第1の温度センサと、前記発熱体から所定間隔下方の感知器本体に設けられ周囲の水温を感知する第2の温度センサとを有し、第1の温度センサと第2の温度センサとで感知した前記発熱体の温度及び前記水温を同時に所定時間毎に計測し、前記発熱体の温度が前記水温と線形関係にある平衡温度の要素と地下水の水みちからの水流の影響による変化温度の要素とからなるものであることと前記平衡温度が前記水温と線形関係にあることを利用して、前記発熱体の温度と、該温度と同時に計測した前記水温とからその計測深度毎に前記変化温度を算出し、前記変化温度が急激に変化している計測深度を探し出すことにより地下水の水みちが存在する深度を求めることを特徴とする加熱式地下水検層法。
【請求項2】
前記発熱体の温度の計測データと前記水温の計測データとの関係から前記発熱体の温度の計測データと前記水温の計測データとが略線形関係にある区間を抽出し、該抽出区間では、前記発熱体の温度は前記平衡温度と略等しいものとし、前記抽出区間の計測データと近似する直線の式を求めて、該直線の式の定数を式1の定数a,bに代入し、式1と式2とにより、前記発熱体の温度及び前記水温の計測データから計測深度毎に前記変化温度を算出し、地下水の水みちが存在する深度を求める請求項1に記載の加熱式地下水検層法。
Thw=a+bTw …式1
ΔTh=Th−Thw…式2
ここで、Thw:発熱体の平衡温度、Tw:感知器周囲の水温、Th:発熱体の温度、
ΔTh:地下水の水みちからの水流の影響による発熱体の変化温度
【請求項3】
請求項1又は2に記載の加熱式地下水検層法に用いられる感知器であって、感知器本体と、該感知器本体の内部に設けられた発熱体と、該発熱体近傍の感知器本体に設けられ発熱体の温度を感知する第1の温度センサと、前記発熱体から所定間隔下方の感知器本体に設けられ周囲の水温を感知する第2の温度センサとを有することを特徴とする加熱式地下水検層法用感知器。
【請求項4】
前記発熱体は、通電することにより発熱する抵抗発熱体である請求項3に記載の加熱式地下水検層法用感知器。
【請求項5】
請求項2に記載の加熱式地下水検層法に用いられる測定装置であって、前記感知器と、ボーリング孔内において前記感知器を一定速度で昇降させる昇降手段と、前記感知器からの計測データを記録する記録手段と、前記記録手段に格納された計測データから地下水の水みちが存在する深度を算出する電子計算手段とを備え、前記電子計算手段は、前記抽出区間の計測データを直線に近似して前記定数a,bを算出すると共に、地下水の水みちからの水流の影響による変化温度を式3から計測深度毎に算出することにより地下水の水みちが存在する深度を算出して求めることを特徴とする加熱式地下水検層法用測定装置。
ΔTh=Th−a−bTw…式3
ここで、ΔTh:地下水の水みちからの水流の影響による発熱体の変化温度、
Th:発熱体の温度、Tw:感知器周囲の水温
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2008−256386(P2008−256386A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−95961(P2007−95961)
【出願日】平成19年4月2日(2007.4.2)
【出願人】(301031392)独立行政法人土木研究所 (107)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年4月2日(2007.4.2)
【出願人】(301031392)独立行政法人土木研究所 (107)
【Fターム(参考)】
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