説明

加熱手段を備えた耐圧容器の運転方法

【課題】 液体を短時間で且つ均一に加熱し、また、液体を目標温度以上に上昇することを防止できるようにした加熱手段を備えた耐圧容器の運転方法を得る。
【解決手段】 加熱手段を備えた耐圧容器1の運転方法であって、加熱運転時に、耐圧容器1内の液体の温度を測定し、その温度に対する飽和圧力近辺に耐圧容器1内の圧力を調整することにより、耐圧容器1内の液体を沸騰させ、この液体の沸騰状態を維持するようにして加熱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱手段を備えた耐圧容器の運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、加熱手段を備えた耐圧容器として、電気ヒータを用い、耐圧容器内の液体を加熱するようにした構造のものや、加熱用の蒸気を用い、耐圧容器を内缶と外缶の二重構造として、内缶と外缶の間へ蒸気を導入して耐圧容器内の液体を加熱するようにした構造のものが知られており、洗浄装置や除菌装置等に広く使用されている。
【0003】
かかる加熱手段を備えた耐圧容器による運転は、一般に、電気ヒータや蒸気により耐圧容器内の液体を耐圧容器の壁面から加熱し、そして、加熱する液体の温度制御は電気ヒータや蒸気を調整することにより行っていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記ような構造の加熱手段を備えた耐圧容器における従来の運転では、次のような問題があった。即ち、電気ヒータや蒸気により耐圧容器内の液体を耐圧容器の壁面から加熱する場合、液体の自然循環により加熱するので、加熱に時間がかかり、また、内部に温度ムラが発生し均一な加熱が得難い。また、加熱する液体の温度制御に際し、特に、加熱手段として蒸気を用い、耐圧容器を内缶と外缶の二重構造として、内缶と外缶の間へ蒸気を導入して耐圧容器内の液体を加熱するようにした構造である場合、内缶と外缶の間の熱容量が大きいとオーバーシュートして、液体が目標の温度より上昇してしまうことがあった。
【0005】
本発明の目的は、液体を短時間で且つ均一に加熱し、また、液体を目標温度以上に上昇することを防止できるようにした加熱手段を備えた耐圧容器の運転方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために請求項1に記載の発明は、加熱手段を備えた耐圧容器の運転方法であって、加熱運転時に、耐圧容器内の液体の温度を測定し、その温度に対する飽和圧力近辺に耐圧容器内の圧力を調整することにより、耐圧容器内の液体を沸騰させ、この液体の沸騰状態を維持するようにして加熱することを特徴とする。
【0007】
このようにすると、加熱手段と液体との間の熱伝達率が高まり加熱速度が促進されるとともに、液体の沸騰により液体内に泡が発生し、この泡の発生が液体を攪拌する作用となって、液体の均一な加熱が得られるので、液体の沸騰状態を維持するようにして加熱することにより、液体を短時間で均一に加熱することができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、加熱手段を備えた耐圧容器の運転方法であって、加熱運転時に、耐圧容器内の液体温度を測定し、該液体温度が目標温度に達した時点で、耐圧容器内の圧力を前記目標温度に対する飽和圧力に調整することを特徴とする。
【0009】
このようにすると、液体温度が目標温度で沸騰することになり、液体温度は目標温度以上に上昇しない。
【0010】
請求項3に記載の発明は、加熱手段を備えた耐圧容器の運転方法であって、加熱運転時に、耐圧容器内の液体の温度を測定し、その温度に対する飽和圧力近辺に耐圧容器内の圧力を調整することにより、耐圧容器内の液体を沸騰させ、この液体の沸騰状態を維持するようにして加熱し、該液体温度が目標温度に達した時点で、耐圧容器内の圧力を前記目標温度に対する飽和圧力に調整することを特徴とする。
【0011】
このようにすると、加熱手段と液体との間の熱伝達率が高まり加熱速度が促進されるとともに、液体の沸騰により液体内に泡が発生し、この泡の発生が液体を攪拌する作用となって、液体の均一な加熱が得られるので、液体の沸騰状態を維持するようにして加熱することにより、液体を短時間で均一に加熱することができ、そして、液体温度が目標温度に達すると沸騰することになり、液体温度は目標温度以上に上昇しない。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明に係る加熱手段を備えた耐圧容器の運転方法によれば、加熱運転時に、耐圧容器内の液体の温度を測定し、その温度に対する飽和圧力近辺に耐圧容器内の圧力を調整して耐圧容器内の液体を沸騰させ、この液体の沸騰状態を維持するようにして加熱することにより、液体を短時間で均一に加熱することができる。
【0013】
また、耐圧容器内の液体温度を測定し、該液体温度が目標温度に達した時点で、耐圧容器内の圧力を前記目標温度に対する飽和圧力に調整することにより、液体温度が目標温度で沸騰することになり、これにより液体温度が目標温度以上に上昇することを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係る加熱手段を備えた耐圧容器の運転方法を実施するための最良の形態を、図面に示す加熱手段を備えた耐圧容器の一例を基に説明する。
【0015】
図1に示す加熱手段を備えた耐圧容器1は、内缶2と外缶3の二重構造となっており、内缶2と外缶3の間に蒸気導入空間4が形成されている。前記耐圧容器1には、外部から供給される加熱用の蒸気を蒸気導入空間4へ導入する蒸気導入管5と、蒸気導入空間4に導入された蒸気を排出する蒸気排出管6と、内缶2内へ液体を供給する液体供給管7と、内缶2内へ供給された液体を排出する液体排出管8が設けられている。また、耐圧容器1は、内缶2内の液体の温度を測定する温度センサ9と、内缶2内の圧力を測定する圧力センサ10と、内缶2内を減圧する真空ポンプ11とを備えている。
【0016】
前記の加熱手段を備えた耐圧容器1により、先ず、本発明に係る加熱手段を備えた耐圧容器1の運転方法の第1例を説明する。本例では、加熱運転時に、耐圧容器1内の液体の温度を測定し、その温度に対する飽和圧力近辺に耐圧容器1内の圧力を調整することにより、耐圧容器1内の液体を沸騰(飽和沸騰、サブクール沸騰のいずれも含む)させ、この液体の沸騰状態を維持するようにして加熱する。
【0017】
更に詳細には、液体供給管7から耐圧容器1の内缶2内へ液体を供給し、加熱用の蒸気を蒸気導入管5から蒸気導入空間4へ導入し、蒸気により内缶2内の液体を加熱する。そして、この加熱の過程で、前記液体の温度を温度センサ9で測定し、内缶2内の圧力を圧力センサ10で測定しながら真空ポンプ11を駆動して内缶2内を減圧して、前記測定した温度に対する飽和圧力近辺に内缶2内の圧力を調整し、内缶2内の液体を沸騰させる。そして、液体の温度が上昇するに従い、内缶2内の圧力を当該液体の測定温度に対する飽和圧力近辺に調整し、液体の沸騰状態を維持するようにして加熱する。
【0018】
このようにすると、加熱手段と液体との間の熱伝達率が高まり加熱速度が促進されるとともに、液体の沸騰により液体内に泡が発生し、この泡の発生が液体を攪拌する作用となって、液体の均一な加熱が得られる。そして、前記液体の沸騰状態を維持するようにして加熱することにより、液体を短時間で均一に加熱することができる。
【0019】
次に、本発明に係る加熱手段を備えた耐圧容器1の運転方法の第2例を説明する。本例では、加熱運転時に、耐圧容器1内の液体温度を測定し、該液体温度が目標温度に達した時点で、耐圧容器1内の圧力を前記目標温度に対する飽和圧力に調整する。
【0020】
更に詳細には、液体供給管7から耐圧容器1の内缶2内へ液体を供給し、加熱用の蒸気を蒸気導入管5から蒸気導入空間4へ導入し、蒸気により内缶2内の液体を加熱する。そして、この加熱の過程で、前記液体の温度を温度センサ9で測定し、前記液体の温度が予め設定してある目標温度に達した時点で、内缶2内の圧力を圧力センサ10で測定しながら真空ポンプ11を駆動して内缶2内を減圧して、内缶2内の圧力を前記目標温度に対する飽和圧力に調整する。
【0021】
このようにすると、液体の温度が目標温度で沸騰することになり、液体温度は目標温度以上に上昇しない。
【0022】
次に、本発明に係る加熱手段を備えた耐圧容器1の運転方法の第3例を説明する。本例では、加熱運転時に、耐圧容器1内の液体の温度を測定し、その温度に対する飽和圧力近辺に耐圧容器1内の圧力を調整することにより、耐圧容器1内の液体を沸騰させ、この液体の沸騰状態を維持するようにして加熱し、該液体温度が目標温度に達した時点で、耐圧容器1内の圧力を前記目標温度に対する飽和圧力に調整することを特徴する。
【0023】
更に詳細には、液体供給管7から耐圧容器1の内缶2内へ液体を供給し、加熱用の蒸気を蒸気導入管5から蒸気導入空間4へ導入し、蒸気により内缶2内の液体を加熱する。そして、この加熱の過程で、前記液体の温度を温度センサ9で測定し、内缶2内の圧力を圧力センサ10で測定しながら真空ポンプ11を駆動して内缶2内を減圧して、前記測定した温度に対する飽和圧力近辺に内缶2内の圧力を調整し、内缶2内の液体を沸騰させる。そして、液体の温度が上昇するに従い、内缶2内の圧力を当該液体の測定温度に対する飽和圧力近辺に調整し、液体の沸騰状態を維持するようにして加熱する。そして、前記液体の温度が予め設定してある目標温度に達した時点で、内缶2内の圧力を圧力センサ10で測定しながら真空ポンプ11を駆動して内缶2内を減圧して、内缶2内の圧力を前記目標温度に対する飽和圧力に調整する。
【0024】
このようにすると、加熱手段と液体との間の熱伝達率が高まり加熱速度が促進されるとともに、液体の沸騰により液体内に泡が発生し、この泡の発生が液体を攪拌する作用となって、液体の均一な加熱が得られる。そして、前記液体の沸騰状態を維持するようにして加熱することにより、液体を短時間で均一に加熱することができ、そして、液体の温度が目標温度に達すると沸騰することになり、液体温度は目標温度以上に上昇しない。
【実施例】
【0025】
次に、前記加熱手段を備えた耐圧容器が医療器具を洗浄除菌する洗浄除菌装置である場合の本発明の実施の一例を説明する。本例は前記実施の形態の第3例を実施している。
【0026】
先ず、血液等の付着したメス、鉗子等を耐圧容器1の内缶2内へ収容してから、耐圧容器1の内缶2内へ洗浄液を供給する。洗浄工程では、洗浄液の目標温度を設定しておく。この目標温度は、メス、鉗子等に付着している血液等が凝固しない温度、例えば、50℃前後となっている。
【0027】
次に、加熱用の蒸気を蒸気導入管5から蒸気導入空間4へ導入し、蒸気により内缶2内の洗浄液を加熱する。そして、この加熱の過程で、前記洗浄液の温度を温度センサ9で測定し、内缶2内の圧力を圧力センサ10で測定しながら真空ポンプ11を駆動して内缶2内を減圧して、前記測定した温度に対する飽和圧力近辺に内缶2内の圧力を調整し、内缶2内の洗浄液を沸騰させる。そして、洗浄液の温度が上昇するに従い、内缶2内の圧力を当該洗浄液の測定温度に対する飽和圧力近辺に調整し、洗浄液の沸騰状態を維持するようにして加熱する。
【0028】
このようにすることにより、耐圧容器1の内缶2内で洗浄液が短時間で均一に加熱される。そして、前記洗浄液の温度が予め設定してある目標温度、即ち50℃前後に達した時点で、内缶2内の圧力を圧力センサ10で測定しながら真空ポンプ11を駆動して内缶2内を減圧して、内缶2内の圧力を前記目標温度に対する飽和圧力に調整する。
【0029】
これにより、洗浄液の温度が目標温度に達すると沸騰することになり、洗浄液の温度は目標温度である50℃前後以上に上昇せず、同温度に維持される。従って、洗浄液の熱によりメス、鉗子等に付着している血液等が凝固することが防止でき、優れた洗浄効果を発揮できる。
【0030】
洗浄工程が終わったら、洗浄液の除菌工程へ移る。洗浄液の除菌工程では、洗浄工程における目標温度による制限を解き、除菌に要する目標温度(80℃〜93℃)を設定する。次に、洗浄液の温度を温度センサ9で測定し、内缶2内の圧力を圧力センサ10で測定しながら真空ポンプ11を駆動して、前記測定した温度に対する飽和圧力近辺に内缶2内の圧力を調整し、内缶2内の洗浄液を沸騰させ、そして、洗浄液の温度が上昇するに従い、内缶2内の圧力を当該洗浄液の測定温度に対する飽和圧力近辺に調整し、洗浄液の沸騰状態を維持するようにして加熱する。
【0031】
このようにすることにより、耐圧容器1の内缶2内で洗浄液が短時間で均一に加熱される。そして、前記洗浄液の温度が予め設定してある目標温度、即ち80℃〜93℃に達した時点で、内缶2内の圧力を圧力センサ10で測定しながら真空ポンプ11を駆動して内缶2内を減圧して、内缶2内の圧力を前記目標温度に対する飽和圧力に調整する。これにより、洗浄液の温度が目標温度に達すると沸騰することになり、洗浄液の温度は目標温度である80℃〜93℃に維持され、確実な除菌が図れる。
【0032】
このように、本発明を医療器具を洗浄除菌する洗浄除菌装置に実施すると、洗浄液を洗浄温度、除菌温度に短時間で均一に加熱することができるので、医療器具の洗浄除菌作業時間の短縮化が図れ、また、洗浄工程で洗浄液の熱によりメス、鉗子等に付着している血液等が凝固することが防止できるので、優れた洗浄効果を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明を実施する加熱手段を備えた耐圧容器の一例を示す概略構成図。
【符号の説明】
【0034】
1 耐圧容器
2 内缶
3 外缶
4 蒸気導入空間
5 蒸気導入管
6 蒸気排出管
7 液体供給管
8 液体排出管
9 温度センサ
10 圧力センサ
11 真空ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱手段を備えた耐圧容器の運転方法であって、加熱運転時に、耐圧容器内の液体の温度を測定し、その温度に対する飽和圧力近辺に耐圧容器内の圧力を調整することにより、耐圧容器内の液体を沸騰させ、この液体の沸騰状態を維持するようにして加熱することを特徴とする加熱手段を備えた耐圧容器の運転方法。
【請求項2】
加熱手段を備えた耐圧容器の運転方法であって、加熱運転時に、耐圧容器内の液体温度を測定し、該液体温度が目標温度に達した時点で、耐圧容器内の圧力を前記目標温度に対する飽和圧力に調整することを特徴とする加熱手段を備えた耐圧容器の運転方法。
【請求項3】
加熱手段を備えた耐圧容器の運転方法であって、加熱運転時に、耐圧容器内の液体の温度を測定し、その温度に対する飽和圧力近辺に耐圧容器内の圧力を調整することにより、耐圧容器内の液体を沸騰させ、この液体の沸騰状態を維持するようにして加熱し、該液体温度が目標温度に達した時点で、耐圧容器内の圧力を前記目標温度に対する飽和圧力に調整することを特徴とする加熱手段を備えた耐圧容器の運転方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−230889(P2006−230889A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−53131(P2005−53131)
【出願日】平成17年2月28日(2005.2.28)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【出願人】(504143522)株式会社三浦プロテック (488)
【Fターム(参考)】