説明

加熱調理器

【課題】
グリル部を使用して加熱調理する場合に、高速で調理し、かつ調理物の表面と裏面で焼色の差がないようにする。
【解決手段】
グリル部6の加熱室10内に設けられた焼網13と、焼網13を載置する受皿14と、焼網13より上に位置する上ヒータ11と、焼網より下に位置し、上ヒータ11と同じ定格電力を有する下ヒータ12と、加熱室10内の温度を検出する温度検出部15とを備え、さらにグリル操作部7aに前記下ヒータ12及び上ヒータ11へ交互通電を行う交互通電スイッチ18と、下ヒータ12及び上ヒータ11に同時通電を行う同時通電スイッチ19を設けた加熱調理器において、前記上ヒータ11と下ヒータ12への同時通電時に下ヒータ12は最大電力で連続通電し、上ヒータ11は断続通電で運転する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱室内に魚等の調理物を入れて上,下ヒータにより加熱するグリル部を備えた加熱調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種加熱調理器のグリル部は、加熱室内に出し入れ自在に収納された受皿内に焼網を載置し、その焼網上に魚等の調理物を載せ、それらを加熱室内に収納して加熱室内の上,下ヒータにより加熱し、調理物を焼き上げるのが一般的である。
【0003】
そして、この加熱調理器は、器具単体で用いられるものや、誘導加熱調理器等の中に一体に組み込み、これをシステムキッチンの上面から中に落とし込んで設置される組み込み式のものがあり、近年では複合調理器として組み込み式のものが主流になりつつある。
【0004】
この加熱調理器において、主要な課題は、グリル部によって魚等の調理物を加熱調理する場合に、調理物の両面を適度に焦げ目を付けて美味しく、かつ早く焼き上げることである。
【0005】
この課題に対処するものとして特許文献1に示すものがある。
【0006】
このものは、ロースター部の上ヒータ及び下ヒータを交互に通電する交互通電モードと同時に通電する同時通電モードとを備えており、交互通電モードを選択した場合には、最初に下ヒータ12に通電し、次に上ヒータ11に通電し、最後に下ヒータ12に通電して魚等の調理物を焼き上げるものであり、また、上ヒータ,下ヒータを同時通電する同時通電モードを選択した場合には、上ヒータ,下ヒータの両方を同時通電して高速で魚等の調理物を焼き上げるものである。
【0007】
【特許文献1】特開2004−337322号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記した特許文献1に示されている加熱調理器では、ロースター部の上ヒータと下ヒータを同時に通電する同時通電モードを選択した場合に、上ヒータと下ヒータを同時に最大電力で通電を行うため、魚等の調理物の裏面に適度な焦げ目が付く頃には表面が真っ黒に焼けてしまう仕上がりとなっていた。
【0009】
これは魚等の表面を焼いている時、余分な水分や脂分が裏面へ回るので必然的に裏面が焼けにくく表面と裏面で焼色の差がでてしまうためである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために本発明の請求項1では、本体内に設置されたグリル部と、外部から操作できるグリル操作部と、グリル部の加熱室内に設けられた焼網と、焼網を載置し加熱室内に出し入れ自在に収納された受皿と、前記焼網より上に位置する上ヒータと、焼網より下に位置し上ヒータと同じ定格電力を有する下ヒータと、加熱室内の温度を検出する温度検出部とを備え、さらに前記グリル操作部に前記下ヒータ及び上ヒータへ交互に通電を行う交互通電スイッチと、下ヒータ及び上ヒータに同時通電を行う同時通電スイッチを設けた加熱調理器において、前記上ヒータと下ヒータへの同時通電時に下ヒータは最大電力で連続通電し、上ヒータは断続通電で運転するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明は上記の構成としたことにより、上ヒータと下ヒータへの同時通電時に魚等の調理物の表面と裏面で焼色の差がなくなり、しかも早く調理できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下本発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明の加熱調理器を誘導加熱調理器の中に組み込んだ状態の外観斜視図である。図2は同じく加熱調理器のグリル部の側面断面図であり、図3は同じく加熱調理器の操作部の正面図である。図4は同じく加熱調理器の上,下ヒータの動作図である。
【0013】
図1において、1は本発明の加熱調理器が中に組み込まれた誘導加熱調理器の本体である。2はトッププレートで、本体1の上面に配置され、耐熱性の高い結晶化ガラスで構成されている。
【0014】
3,4,5の円形は加熱部で、トッププレート2の下側で本体1内部の上部左右と中央後部に設けられており、トッププレート2の上方に置かれた鍋等の負荷(図示せず)を加熱する。加熱部3,4は誘導加熱用コイルで構成され、加熱部5は誘導加熱用コイル又はニクロムヒータ線の加熱式円形ヒータで構成されている。
【0015】
6は加熱調理器を構成するグリル部で、本体1の左側下部に配置され、魚等の調理物を焼く部分である。
【0016】
7は操作部で、本体1の前面右側の垂直面部に設けられている。なお、この操作部7は、図では本体1前面の垂直面部に露出した状態で設けられているが、所謂、カンガルーポケット式として通常は本体1の内部に収納され、使用時のみ操作部7が前面に露出する方式にしてもよい。
【0017】
8は吸気口で、本体1後部の右側上方に設けられ、本体1の内部に冷却用空気を吸引する。9は排気口で、本体1後部の左側上方に設けられ、グリル部6からの排気および本体1内部を冷却した廃熱を排出する。
【0018】
図2はグリル部6の詳細を示しており、10は加熱室で、本体1内部に設けられ、その中で食材である魚等の調理物を加熱調理する。
【0019】
加熱室10の前面にはハンドル16aやガラス等で構成されたドア16が設けられ、ドア16を通して加熱室10内の調理物の加熱状態が確認できる。
【0020】
14は受皿で、加熱室10内に出し入れ自在に設けられ、魚等の調理物から発生して落下する油等を受ける。13は焼網で、受皿14の上に載置され、魚等を乗せる。受皿14及び焼網13はハンドル16aを引いたり押したりすることにより魚等の出し入れを行う。
【0021】
11は上ヒータで、加熱室10の内部で、焼網13より上に位置し、調理物の上面を焼く。12は下ヒータで、加熱室10の内部で、焼網13より下に位置し、調理物の下面を焼く。
【0022】
15は温度検出部で、加熱室10の内部に設けられ、加熱室10内の温度を検出する。
【0023】
次に、図3により操作部7を説明する。
【0024】
操作部7は、左側にグリル操作部7a、右側に加熱操作部7bとを備えている。
【0025】
グリル操作部7aには、動作表示部20と、丸焼き,切身,くし焼き等の複数の自動メニューを含んだ調理メニューを選択設定するメニュースイッチ17、同じ定格電力に設定された上ヒータ11,下ヒータ12を交互に通電する通電モード選択用の交互通電スイッチ18、そして、本発明である上ヒータ11を断続運転、下ヒータ12を連続通電で同時に通電する同時通電スイッチ19を配置している。
【0026】
また、加熱操作部7bには、詳述しないが操作つまみ21や電源スイッチ22等が設けられている。
【0027】
次に、以上のような構成からなる加熱調理器のグリル部6の動作について説明する。
【0028】
実施例の加熱調理器は、誘導加熱調理器に一体に組み込まれており、3口の加熱部3,4,5とグリル部6を有しているため、電源容量の制限により合計の電力が4.8kW 又は5.8kw に制限されている。
【0029】
但し、この場合でも、グリル部6の上ヒータ11及び下ヒータ12は、魚等の調理物を十分に調理するためにそれぞれ1.2kW 程度の必要な電力が供給される。
【0030】
例えば、最大電力が4.8kw に制限されている場合において、図1における誘導加熱用の右側の加熱部4で2.0kW 、左側の加熱部3で1.6kW 使用している時、グリル部6に使える電力は1.2kW となる。この場合にはグリル部の上ヒータ11,下ヒータ12を同時に使用できないので交互通電スイッチ18をオンすることにより交互通電モードを選択して使用する。即ち、図4の上段に示すもので、最初に下ヒータ12に通電し、次に上ヒータ11に通電し、最後に下ヒータ12に通電する交互通電モードである。
【0031】
また、左右の加熱部3,4を使用していない場合や、その電力が少ない場合は、グリル部6の上ヒータ11,下ヒータ12を同時通電する同時通電スイッチ19をオンし、同時通電モードを選択する
すると、図4の下段に示すように、上ヒータ11と下ヒータ12が同時に通電を開始する。
【0032】
このとき、本発明においては、上ヒータ11は断続運転、下ヒータ12は連続運転することにより、上ヒータ11より下ヒータ12の方が電力の出力が強くなるので表面と裏面で焼色の差がなくなり、しかも早く調理できるものである。なお、上ヒータ11の断続運転のON−OFF時間は、それぞれ一定時間に設定してもよく、また調理物のメニューに応じて適宜設定することもできる。
【0033】
このように、本発明は、グリル部6の使用に際して、上ヒータ11及び下ヒータ12を同時通電する同時通電モードを選択すると、上ヒータ11を断続運転、下ヒータ12を連続運転することにより、魚等の調理物の表面と裏面で焼色の差がなくなり、しかも早く調理できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施例を示す加熱調理器の外観斜視図である。
【図2】同じく加熱調理器のグリル部の側面断面図である。
【図3】同じく加熱調理器の操作部の正面図である。
【図4】同じく加熱調理器の上下ヒータの動作図である。
【符号の説明】
【0035】
1 本体
2 トッププレート
3,4,5 加熱部
6 グリル部
7 操作部
7a グリル操作部
10 加熱室
11 上ヒータ
12 下ヒータ
13 焼網
15 温度検出部
17 メニュースイッチ
18 交互通電スイッチ
19 同時通電スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体内に設置されたグリル部と、外部から操作できるグリル操作部と、グリル部の加熱室内に設けられた焼網と、焼網を載置し加熱室内に出し入れ自在に収納された受皿と、前記焼網より上に位置する上ヒータと、焼網より下に位置し上ヒータと同じ定格電力を有する下ヒータと、加熱室内の温度を検出する温度検出部とを備え、さらに前記下ヒータ及び上ヒータへ交互に通電を行う交互通電スイッチと、下ヒータ及び上ヒータに同時通電を行う同時通電スイッチを設けた加熱調理器において、前記上ヒータと下ヒータへの同時通電時に下ヒータは最大電力で連続通電し、上ヒータは断続通電で運転することを特徴とする加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−173204(P2008−173204A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−7582(P2007−7582)
【出願日】平成19年1月17日(2007.1.17)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】