説明

加熱調理用容器

【課題】加熱調理時に容器内の圧力や蒸気が所定値以下になることを防止できる加熱調理用容器を提供する。
【解決手段】容器本体10と、その開口部に着脱可能に嵌合された蓋体30とを備え、容器本体10のうち蓋体30を嵌合させる部分よりも下方に、径方向に沿って延びるフランジ部15と、その内周端から下方に延びる筒状部16とが順次連設され、容器本体10の外周面には、フランジ部15及び筒状部16の外面を覆い、これらの外面との間に環状の中空空間Vを形成する環状部材50が嵌合され、環状部材50は、一端部51が容器本体10の外周面に嵌合し、かつ、他端部52が容器本体10の外周面に当接して構成され、環状部材50の他端部52側が一端部51側に対して弾性変形可能とされ、フランジ部15に容器本体10の内部と中空空間Vとを連通させる通気孔19を形成した構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱調理用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食材を収納して電子レンジ等で加熱する加熱調理用容器としては、例えば特許文献1のように、容器本体の開口部を被冠フィルム(蓋体)により閉塞して密閉された空洞部を形成したものがある。この被冠フィルムには、前記空洞部を外部に連通させる小径の通気孔が形成されており、さらに、通気孔を閉塞するチップフィルムが貼着されている。
このチップフィルムは、電子レンジ等での加熱調理の際に容器内圧力が所定圧に達した時に、その一部が被冠フィルムから剥がれ、容器内圧力が所定圧以下に減圧された時に、その剥離箇所が再接着されて通気孔を再び閉塞する、という役割を果たしている。このように構成することで、加熱調理時における容器内の圧力や蒸気の変動抑制を図っている。
【特許文献1】登録実用新案第3069530号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の加熱調理用容器においては、チップフィルムの一部が被冠フィルムから剥がれた時点で、前記空洞部が直接外部に連通してしまうため、容器内の圧力が一時的に所定圧よりも小さくなったり蒸気が過剰に抜けてしまう虞があり、特に容器内を高い圧力に保持することが難しい、という問題がある。
なお、蒸し料理や煮物料理を調理する場合には、容器内の圧力を高い状態に保持する程、短時間で美味しく調理することが可能である。
【0004】
本発明は、前述の事情に鑑みてなされたものであって、加熱調理時に容器内の圧力や蒸気が所定値以下になることを防止でき、また、容器内を高い圧力に保持できる加熱調理用容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題を解決するために、本発明の加熱調理用容器は、内部に食材が収納される容器本体と、該容器本体の開口部に着脱可能に嵌合された蓋体と、を備える加熱調理用容器であって、前記容器本体において、前記蓋体が嵌合された蓋嵌合部よりも下方に位置する部分には、径方向に沿って延びるフランジ部と、該フランジ部の内周端から当該容器本体の軸線に沿って延びる筒状部とが下方に向けてこの順に連設され、前記容器本体の外周面には、前記フランジ部及び前記筒状部を径方向外側から覆い、これらの外面との間に環状の中空空間を形成するように環状部材が嵌合され、当該環状部材は、その軸方向の一端部が前記容器本体の外周面に装着固定されると共に、他端部が前記容器本体の外周面から離間可能に当接するように構成され、前記環状部材の他端部側が、一端部側に対して弾性変形可能とされ、前記フランジ部及び前記筒状部の少なくとも一方には、前記容器本体の内部と前記中空空間とを連通させる通気孔が形成されていることを特徴としている。
【0006】
この構成の加熱調理用容器において、蓋体を容器本体に取り付けた状態では、蓋体が容器本体の蓋嵌合部に嵌合されているため、また、環状部材の他端部が弾性力によって容器本体の外周面に押し付けられているため、相互に連通する容器本体の内部及び中空空間が外部に対して密閉される。
そして、この加熱調理用容器を使用して食材を加熱調理する場合には、容器本体の内部及び中空空間の圧力や蒸気が高まるが、所定圧以上となった際には、環状部材の他端部が中空空間の圧力によって容器本体の外周面から離れ、中空空間が外部に開口する。
【0007】
この際、容器本体の内部は通気孔及び中空空間を介して加熱調理用容器の外部に連通する、すなわち、加熱調理用容器の外部には直接連通しない。このため、中空空間においては急激に減圧されると共に蒸気も急激に抜けるが、容器本体の内部においては減圧が緩やかになり、容器本体の内部からの蒸気の抜けも緩やかになる。すなわち、容器本体の内部の圧力が所定値よりも小さくなることを防止できると共に、容器本体の内部の蒸気が過剰に抜けてしまうことも防止できる。
さらに、この構成の加熱調理用容器においては、例えば通気孔の開口面積を小さくすることや、通気孔の個数を減少させることにより、空洞部から中空空間に流れる蒸気の流量を減らすことができるため、容易に容器本体の内部を高い圧力や湿度、温度に保持することが可能となる。
【0008】
なお、前記加熱調理用容器においては、前記環状部材が弾性変形可能に形成され、該環状部材に、摘み部が形成されていてもよい。
この構成では、加熱調理後に摘み部を把持してこれを外周面から離間する方向に引張った際に、環状部材が伸びるように弾性変形するため、容器本体の外周面との間に隙間を形成して中空空間を外部に連通させることができる。これにより、例えば加熱調理後に、この容器を開けずに室温下に放置する等して冷却させた場合には、容器内部が減圧されて容器を開けにくくなるが、これを防止することができる。さらに、蓋体を容器本体から取り外す前に容器本体内部の圧力を外部の圧力まで減圧できると共に、高温の蒸気も外部に逃がすことができるため、蓋体を安全に取り外すことが可能となる。
【0009】
また、前記加熱調理用容器においては、前記通気孔が複数形成されていてもよい。
この場合には、通気孔を例えばフランジ部の周方向にわたって等間隔に配置できるため、中空空間における圧力や蒸気に偏りが生じることを容易に抑制できる。したがって、容器本体内部の圧力及び蒸気をより高い精度で調整して、一定に保持することが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、中空空間が外部に開口した直後でも、容器本体内部の圧力が所定圧以下となることを防止できると共に、容器本体内部の蒸気が過剰に抜けてしまうことも防止できるため、食材を効率よく美味しく調理することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明の実施形態について添付した図面を参照して説明する。図1,2に、本発明の一実施形態である加熱調理用容器Aを示す。
この加熱調理用容器Aは、内部に食材が収納されて上方に開口する容器本体10と、この容器本体10の開口部に着脱可能に嵌合された蓋体30と、容器本体10の開口部よりも下方に位置する容器本体10の外周面に嵌合する環状部材50と、を備えている。
【0012】
容器本体10は、軸線Lに沿って延びる概略有底円筒状に形成されており、略円形状の底板部11と、底板部11の外周端から立設されて上方に向かうにしたがい漸次径が大きくなるテーパ胴部12と、を有している。また、容器本体10の開口部をなすテーパ胴部12の上端部は、容器本体10の軸線Lに沿って延びて蓋体30が嵌合される蓋嵌合部13、及び、蓋嵌合部13の上端から容器本体10の径方向外方に向けて外側に延びる蓋体用フランジ部14を形成して構成されている。
【0013】
蓋嵌合部13は、蓋体30を容器本体10に取り付けた状態において、容器本体10に対する蓋体30の径方向位置を位置決めする役割を果たしている。また、蓋体用フランジ部14は、その上面に蓋体30を当接させることで、容器本体10に対する蓋体30の軸方向位置を位置決めする役割を果たしている。
【0014】
さらに、このテーパ胴部12においては、蓋嵌合部13の下端に連設されて径方向内方に向けて延びる空間用フランジ部(フランジ部)15と、空間用フランジ部15の内周端から容器本体10の軸線Lに沿って下方に向けて延びる空間用筒状部(筒状部)16と、空間用筒状部16の下端側から径方向内方に向けて延びる位置決め用フランジ部17と、が形成されている。また、空間用筒状部16の下端には、環状部材50を嵌合固定するための嵌合部18が形成されており、図示例においては、この嵌合部18は径方向外方に向けて膨出している。
また、空間用フランジ部15には、その厚さ方向に貫通する通気孔19が形成されている。なお、図示はしていないが、通気孔19は複数形成されており、空間用フランジ部15の周方向にわたって等間隔に配されることが好ましい。
【0015】
蓋体30は、軸線Mを中心として円形状に形成された天板部31と、天板部31の外周端から垂設されて下方に向かうにしたがい漸次拡径されたテーパ形状の筒状側壁部32と、を有している。
また、蓋体30の開口部をなす筒状側壁部32の下端部には、蓋体30の径方向外方に向けて延びる第1フランジ部33と、第1フランジ部33の外周端から立設されて蓋嵌合部13の内側に嵌合される被嵌合部34と、被嵌合部34の上端からさらに径方向外方に向けて延びる第2フランジ部35と、が形成されている。
すなわち、この構成では、第1フランジ部33の外径寸法を蓋嵌合部13の内径寸法に対して同等あるいはわずかに大きくしておくことで、被嵌合部34を容器本体10の蓋嵌合部13に嵌合させることができる。なお、この嵌合状態においては、容器本体10の軸線Lと蓋体30の軸線Mとが一致することになり、また、容器本体10の開口部と蓋体30の開口部との間に隙間が生じない。
【0016】
そして、第2フランジ部35は、被嵌合部34を蓋嵌合部13に嵌合させた状態において蓋体用フランジ部14の上面に当接させる蓋体30の一部分であり、蓋体用フランジ部14と共に蓋体30が必要以上に容器本体10の内部に入り込むことを防止して、前述したように、容器本体10に対する蓋体30の軸方向位置を位置決めする役割を果たしている。また、第2フランジ部35が蓋体用フランジ部14に当接することで、第1フランジ部33がこれに対向する空間用フランジ部15の内面に当接する等して通気孔19が閉塞されることも防止している。すなわち、この嵌合状態においては、第1フランジ部33が隙間を介して容器本体10の空間用フランジ部15の内面に対向配置されている。
【0017】
環状部材50は、弾性変形可能に形成されており、容器本体10の空間用フランジ部15及び空間用筒状部16を径方向外側から覆うことで、空間用フランジ部15と空間用筒状部16の外面との間に環状の中空空間Vを形成するように構成されている。
詳しく説明すると、環状部材50は、容器本体10の嵌合部18の外面に嵌合固定される被嵌合部(一端部)51と、この被嵌合部51の上端から空間用フランジ部15の外面に当接するように延出する可動弁(他端部)52と、を有している。
【0018】
被嵌合部51は、前述した容器本体10の嵌合部18と同様に、径方向外方に向けて膨出している。一方、可動弁52は、被嵌合部51に対して弾性変形可能とされており、被嵌合部51の上端側から上側に向かうにしたがい漸次拡径するテーパ形状に形成されている。すなわち、可動弁52は上側に向かうにしたがい空間用筒状部16から漸次離間するように配されている。また、可動弁52の先端は、空間用フランジ部15の外面のうち通気孔19の形成部分よりも径方向の外側部分に当接している。したがって、可動弁52と空間用フランジ部15及び空間用筒状部16との隙間が、前述した環状の中空空間Vをなしている。この中空空間Vは、可動弁52の先端が空間用フランジ部15の外面に当接している限り、容器の外部に対して密閉される。
【0019】
また、環状部材50は、その被嵌合部51の下端から径方向内方に向けて延びる環状板部53を有しており、被嵌合部51が容器本体10の嵌合部18に嵌合された状態で位置決め用フランジ部17の外面に当接している。ここで、位置決め用フランジ部17の外面は容器本体10の軸線Lに直交しているため、容器本体10に対する環状部材50の軸方向位置を位置決めすることができる。
さらに、環状部材50には、下方に向けて延出する摘み部54が形成されている。摘み部54は、環状部材50の周方向の一部にのみ形成されており、例えば被嵌合部51の下端から延出している。なお、摘み部54とテーパ胴部12との間には隙間が設けられているが、この隙間は設けなくともよい。
【0020】
以上のように構成された加熱調理用容器Aを用いて食材を電子レンジ等により加熱調理する場合には、食材を容器本体10の内部に収納し、その後、蓋体30を容器本体10の上部に取り付ける。なお、環状部材50は、少なくとも加熱調理する前までに容器本体10の外周面に取り付けられていればよい。
このように蓋体30及び環状部材50を容器本体10に取り付けた状態においては、容器本体10及び蓋体30の内部と中空空間Vとが通気孔19を介して相互に連通している。さらに、この状態においては、蓋体30が容器本体10の蓋嵌合部13に嵌合されているため、また、可動弁52の先端が弾性力によって空間用フランジ部15の外面に当接しているため、容器本体10及び蓋体30の内部と中空空間Vとが外部に対して密閉される。
【0021】
そして、加熱調理によって容器本体10の内部が加熱されると、容器本体10及び蓋体30の内部並びに中空空間Vの圧力や蒸気が高まる。ここで、中空空間Vの圧力が所定圧以上となった際には、可動弁52の先端が空間用フランジ部15の外面から離れるように可動弁52が被嵌合部51との連結部分を中心に回転し、これによって中空空間Vが外部に開口する。
この開口状態において、容器本体10及び蓋体30の内部は、通気孔19及び中空空間Vを介して加熱調理用容器Aの外部に連通する、すなわち、加熱調理用容器Aの外部には直接連通しない。このため、中空空間Vにおいては急激に減圧されて所定圧以下になると共に蒸気も急激に逃げるが、容器本体10及び蓋体30の内部においては減圧が緩やかとなり、容器本体10及び蓋体30の内部からの蒸気の抜けも緩やかとなる。
【0022】
なお、容器本体10及び蓋体30の内部における減圧の速さや、容器本体10及び蓋体30の内部から中空空間Vに流れる蒸気の流量は、通気孔19の開口面積を調整することや、通気孔19の個数を調整することで変化させることができる。具体的には、例えば通気孔19の総開口面積を小さくする程中空空間Vに流出する蒸気の流量を小さくできるため、容器本体10及び蓋体30の内部における減圧の速さを遅くすることができる。
以上のようにして、中空空間Vの圧力が所定圧以下になると、可動弁52の先端が弾性力によって空間用フランジ部15の外面に当接するように回転し、これによって中空空間Vが外部に対して密閉されることになる。
加熱調理は、上述した中空空間Vの開口及び密閉を繰り返しながら行われる。
【0023】
そして、加熱調理の終了後には、環状部材50の摘み部54を把持して径方向外方に向けて引っ張る。この際には、環状部材50が伸びるように弾性変形するため、容器本体10の外周面との間に隙間が形成され、中空空間Vが外部に連通される。なお、本実施形態では、摘み部54が被嵌合部51の下端から延出しているため、前述した隙間が被嵌合部51や環状板部53と容器本体10の外周面との間に形成される。
そして、この状態においては、容器本体10及び蓋体30の内部の蒸気が中空空間Vを介して外部に流出するため、容器本体10及び蓋体30の内部の圧力を外部の圧力まで減圧することができ、高温の蒸気も外部に逃がすことができる。
最後に、蓋体30を容器本体10から取り外すことで、食材の加熱調理が完了する。
【0024】
以上説明したように、この実施形態による加熱調理用容器Aによれば、加熱調理時に中空空間Vの圧力が所定圧以上となって中空空間Vが外部に開口しても、容器本体10及び蓋体30の内部圧力が所定圧よりも小さくなることを防止できると共に、容器本体10及び蓋体30の内部の蒸気が過剰に抜けてしまうことも防止できる。さらに、通気孔19の開口面積を小さくする程、容器本体10及び蓋体30の内部から中空空間Vに流れる蒸気の流量を減らすことができるため、容易に容器本体10及び蓋体30の内部を高い圧力や湿度、温度に保持することが可能となる。以上のことから、食材を効率よく美味しく調理することが可能となり、特に、蒸し物料理や煮物料理の調理に有効である。
また、複数の通気孔19を空間用フランジ部15の周方向にわたって等間隔に配置することで、中空空間Vにおける圧力や蒸気に偏りが生じることを容易に抑制できるため、容器本体10及び蓋体30の内部の圧力及び蒸気をより高い精度で調整して、一定に保持することが可能となる。
【0025】
さらに、環状部材50に摘み部54を設けておくことで、容器本体10及び蓋体30の内部の圧力を外部の圧力まで減圧することができ、高温の蒸気も外部に逃がすことができるため、蓋体30を安全に取り外すことができる。また、摘み部54を設けておくことで、例えば加熱調理後に、この容器を開けずに室温下に放置する等して冷却させた場合には、容器内部が減圧されて容器を開けにくくなるが、これを防止することもできる。
さらに、環状部材50を容器本体10に取り付ける際には、容器本体10に対する環状部材50の軸方向位置を位置決めできるため、可動弁52の先端を空間用フランジ部15の外面に押し付ける環状部材50の弾性力を一定とすることが可能となる。したがって、環状部材50を容器本体10に対して繰り返し着脱しても、加熱調理の際に中空空間Vが開口する時の圧力値を一定に保つことが可能となる。
【0026】
以上、本発明の実施形態である加熱調理用容器Aについて説明したが、本発明の技術的範囲はこれに限定されることはなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
すなわち、容器本体10の蓋嵌合部13は、蓋体30の被嵌合部34が容器本体10の内周面に嵌合されるように構成されるとしたが、例えば容器本体10の外周面に嵌合されるように構成されていてもよい。
【0027】
また、容器本体10及び蓋体30の内部と中空空間Vとを相互に連通させる通気孔19は、例えば空間用筒状部16のみに形成されてもよいし、空間用フランジ部15及び空間用筒状部16の両方に形成されるとしてもよい。さらに、通気孔19は、例えば一つだけ形成されるとしてもよい。
また、蓋体30は、例えば、筒状側壁部32や第1フランジ部33を形成せず、天板部31の外周縁に直接被嵌合部34を形成して構成されるとしても構わない。
【0028】
さらに、環状部材50においては、軸方向の下端部側を被嵌合部51とすると共に軸方向の上端部側を可動弁52としたが、これに限ることはなく、少なくとも環状部材50は、その軸方向の一端部が容器本体10の外周面において空間用フランジ部15及び空間用筒状部16のいずれか一方よりも容器本体10の軸方向外側の部分に嵌合される被嵌合部をなすと共に、他端部が空間用フランジ部15及び空間用筒状部16のいずれか他方の外面に当接する可動弁をなすように構成されていればよい。したがって、環状部材50は、例えば軸方向の上端部側を空間用フランジ部15の上方(蓋嵌合部13の下端側)に嵌合される被嵌合部とすると共に、軸方向の下端部側を空間用筒状部16の外面に当接する可動弁として構成されてもよい。また、環状部材50の軸方向の一端部は、容器本体10の外周面に嵌合固定されることに限らず、例えば接着や固定などにより固定されてもよい。
【0029】
また、上記実施形態の可動弁52は、その先端が空間用フランジ部15や空間用筒状部16の外面に当接する程度の長さに形成されることに限らず、少なくとも可動弁52の先端部あるいは中間部が密閉可能に当接していれば、例えば前述した長さよりも長く形成されてもよい。すなわち、上記実施形態の環状部材50においては、例えば、可動弁52の先端が空間用フランジ部15の外縁よりも径方向の外側に突出し、かつ、空間用フランジ部15の外面よりも上側に突出していてもよい。この場合には、可動弁52の先端部が空間用フランジ部15の外面の外縁に当接する。
さらに、摘み部54は、少なくとも手動で中空空間Vを外部に連通することができるように形成されていればよく、例えば、可動弁52や環状板部53から延出していてもよいし、軸方向に沿って上側に延出していても、また、径方向外方に向けて延出していてもよい。
さらに、環状部材は、容器本体10の底板部11を覆う筒状体として形成されてもよい。この場合、摘み部は可動弁側から延設されることになる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
加熱調理時に容器内の圧力や蒸気が所定値以下になることを防止でき、また、容器内を高い圧力に保持できる加熱調理用容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施形態である加熱調理用容器を示す半体切断側面図である。
【図2】図1の加熱調理用容器において、容器本体に対する環状部材の取り付け状態を示す拡大断面図である。
【符号の説明】
【0032】
10 容器本体
13 蓋嵌合部
15 空間用フランジ部(フランジ部)
16 空間用筒状部(筒状部)
18 嵌合部
19 通気孔
30 蓋体
50 環状部材
51 被嵌合部(一端部)
52 可動弁(他端部)
54 摘み部
A 加熱調理用容器
L 軸線
M 軸線
V 中空空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に食材が収納される容器本体と、該容器本体の開口部に着脱可能に嵌合された蓋体と、を備える加熱調理用容器であって、
前記容器本体において、前記蓋体が嵌合された蓋嵌合部よりも下方に位置する部分には、径方向に沿って延びるフランジ部と、該フランジ部の内周端から当該容器本体の軸線に沿って延びる筒状部とが下方に向けてこの順に連設され、
前記容器本体の外周面には、前記フランジ部及び前記筒状部を径方向外側から覆い、これらの外面との間に環状の中空空間を形成するように環状部材が嵌合され、
当該環状部材は、その軸方向の一端部が前記容器本体の外周面に装着固定されると共に、他端部が前記容器本体の外周面から離間可能に当接するように構成され、
前記環状部材の他端部側が、一端部側に対して弾性変形可能とされ、
前記フランジ部及び前記筒状部の少なくとも一方には、前記容器本体の内部と前記中空空間とを連通させる通気孔が形成されていることを特徴とする加熱調理用容器。
【請求項2】
前記環状部材が弾性変形可能に形成され、
該環状部材に、摘み部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の加熱調理用容器。
【請求項3】
前記通気孔が複数形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の加熱調理用容器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−78103(P2009−78103A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−251391(P2007−251391)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】