説明

加熱調理装置における過熱蒸気供給システム

【課題】任意の調理条件を加熱室21ごとに設定する。
【解決手段】飽和蒸気を発生するボイラ11と、ヘッダ12を介して供給されるボイラ11からの飽和蒸気を過熱する過熱ユニット13、13…と、各加熱室21に配設する上下のノズル14、14…、15、15…とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、過熱蒸気を利用して材料を加熱し、焼成することができる加熱調理装置における過熱蒸気供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
加熱室内のノズルから過熱蒸気を噴射することにより、材料を加熱調理する調理装置が提案されている(特許文献1)。
【0003】
このものは、共通のコンベヤを介して材料を順に通過させる複数の加熱室を設け、各加熱室においてコンベヤの上下にノズルを配設し、上下のノズルからコンベヤ上の材料に向けて過熱蒸気を噴射することにより、材料を加熱し、焼成することができる。ただし、コンベヤは、たとえばネットコンベヤのように、加熱用の蒸気が上下に通気し得る形式を使用するものとし、上下のノズルに供給する過熱蒸気の流量、圧力を自動制御するとともに、上下のノズルとコンベヤとの間の間隔を調節することにより、材料の調理条件を設定することができる。
【特許文献1】特開2001−61655号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
かかる従来技術によるときは、各加熱室のノズルに過熱蒸気を供給する過熱蒸気の発生源が共通であり、各ノズルから噴射する過熱蒸気の流量、圧力の制御性が十分でないため、必要な調理条件を加熱室ごとに設定することが困難であるという問題があった。
【0005】
そこで、この発明の目的は、かかる従来技術の問題に鑑み、過熱ユニットを各加熱室に対応させて設けることによって、任意の調理条件を加熱室ごとに適確に設定することができる加熱調理装置における過熱蒸気供給システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するためのこの発明の構成は、飽和蒸気を発生するボイラと、ヘッダを介して供給されるボイラからの飽和蒸気を過熱する電気ヒータ式の過熱ユニットと、共通のネットコンベヤを介して材料を順に通過させる複数の加熱室にそれぞれ配設し、ネットコンベヤ上の材料に向けて過熱ユニットからの過熱蒸気を噴射する上下のノズルとを備えてなり、過熱ユニットは、各加熱室に対応させて設けることをその要旨とする。
【0007】
なお、各過熱ユニットに供給する蒸気圧を制御する圧力コントローラを設けることができ、各過熱ユニットからの蒸気温度を制御する温度コントローラを設けることができる。
【発明の効果】
【0008】
かかる発明の構成によるときは、過熱ユニットは、各加熱室に対応させて設ける小容量の電気ヒータ式であるため、応答性に優れ、各加熱室ごとに任意の調理条件を速やかに、しかも確実に設定することができる。たとえば3室の加熱室を冷凍材料の解凍ゾーンまたは蒸しゾーン、焼成ゾーン、仕上げゾーンに設定することも可能である。なお、各加熱室の上下のノズルは、それぞれ下向き、上向きの箱形に形成し、それぞれの下面、上面にネットコンベヤを横切る断面山形の複数の平行突条を設け、各突条の稜線に沿って、過熱蒸気の噴射用のスリットを形成するのがよい。スリットは、それぞれネットコンベヤの幅とほぼ同長の全長に形成するとともに、ネットコンベヤの上面、すなわち材料の搬送面に対してそれぞれ30〜80mmの間隔で対向させ、ネットコンベヤ上の材料に直接過熱蒸気を吹き付けるものとする。突条は、箱体の厚さ90〜120mmとして、頂角10〜15°、高さ80mm程度に設定することにより、スリットの全長に亘り、過熱蒸気を均一に噴射させることができる。
【0009】
圧力コントローラは、各過熱ユニットに供給する蒸気圧を制御することにより、各加熱室内に噴射される過熱蒸気量を調節することができる。なお、圧力コントローラは、ヘッダの出口側において、ボイラからの飽和蒸気を減圧制御するものとする。
【0010】
温度コントローラは、各過熱ユニットからの蒸気温度を制御することにより、各加熱室内に噴射される過熱蒸気の温度を調節することができる。温度コントローラは、過熱ユニットの出口側の蒸気温度を検出し、過熱ユニット内のヒータを電力制御するものとする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を以って発明の実施の形態を説明する。
【0012】
加熱調理装置における過熱蒸気供給システムは、ボイラ11、ヘッダ12と、複数の電気ヒータ式の過熱ユニット13、13…と、各加熱室21内の上下のノズル14、14…、15、15…とを備えてなる(図1)。ただし、加熱室21、21…には、材料搬送用のネットコンベヤ22が貫通して配設されている。
【0013】
ボイラ11は、最大圧力10気圧程度の飽和蒸気を発生する。ボイラ11の出口側には、一次減圧弁11aを介してヘッダ12が接続されている。また、各過熱ユニット13は、圧力コントローラ16用の減圧弁16aを介してヘッダ12に接続されている。ただし、圧力コントローラ16は、過熱ユニット13に供給される蒸気圧を圧力センサ16bにより検出し、減圧弁16aを介して蒸気圧を設定圧力に制御することができる。各過熱ユニット13の出口側には、過熱ユニット13からの蒸気温度を制御する温度コントローラ17が配設されている。温度コントローラ17は、温度センサ17aを介して蒸気温度を検出し、過熱ユニット13内のヒータ33を電力制御することにより、過熱ユニット13からの過熱蒸気の蒸気温度を設定温度に制御することができる。なお、各過熱ユニット13の出口側は、対応する加熱室21内の上下のノズル14、15に分岐接続されている。
【0014】
加熱室21、21…は、ネットコンベヤ22とともに、脚23a、23a…付きのフレーム23に一体に組み込まれている(図2)。
【0015】
各加熱室21の前面には、図示しない開閉扉が付設されており、ネットコンベヤ22は、加熱室21、21…を貫通し、上流側において搬入される材料を加熱室21、21…に順に通過させることができる(図2の矢印方向)。なお、ネットコンベヤ22は、両端のガイドスプロケット22b、22bにコンベヤネット22aを巻き掛けるとともに、下流側のテンショナスプロケット22c、22c、駆動スプロケット22dを経由させて構成されており、駆動スプロケット22dは、チェーン22eを介して駆動モータ22fに連結されている。
【0016】
各加熱室21には、ネットコンベヤ22を挟むようにして相対向する上下のノズル14、15が収納されている。上のノズル14は、平形の箱状に形成されており(図3(A))、下面には、ネットコンベヤ22を横切る方向に断面山形の平行な突条14a、14a…が形成されている。また、ノズル14の前端面には、蓋板14b付きの点検口が形成され、過熱ユニット13からの配管は、後端面に接続されている。各突条14aの頂部には、稜線に沿ってスリット14c、14c…が一直線状に形成されており(図3(B)、(C))、ノズル14は、スリット14c、14c…の全長がネットコンベヤ22の全幅aにほぼ一致するように、ネットコンベヤ22の上面から所定高さに下向きにセットされている。なお、図3(B)、(C)は、それぞれ同図(A)の下面図、同図(B)の要部拡大図である。
【0017】
下のノズル15は、上のノズル14とほぼ同様に形成され、ネットコンベヤ22の下に上向きにセットされている(図2)。ただし、下のノズル15は、ドレンを排出するために下面を緩い下向きの山形に形成するとともに、封止可能なドレン排出口15dが最も低い位置に形成されている。また、下のノズル15は、ネットコンベヤ22の上面から所定の間隔だけ離してセットされている。
【0018】
各過熱ユニット13は、斜め上向きに傾く蒸気管31、31…をジグザグ状に順に連結して構成されている(図4)。
【0019】
各蒸気管31の下側の一端は、底板31aを介して閉じられており、上側の一端からは、袋ナット32a、端板34を介し、ヒータ33を巻き付ける芯管32が抜取り可能に挿着されている。なお、芯管32の先端側は、蒸気管31内のスペーサを兼ねる底板32dを介して閉じられており、他端側に突設する取付ロッド32bは、袋ナット32aを介して蒸気管31に付設する端板34を貫通し、ナット32cを介して固定されている(図4、図5(A))。一方、ヒータ33は、芯管32に対し、中間で折り返す2重螺旋状に巻き付けられており(図4、図5(B))、両端の端子33a、33aは、端板34を貫通して外部に引き出されている。なお、ヒータ33を巻き付ける芯管32は、蒸気管31内に同軸状に内装されており、蒸気管31、31…は、下側の入口管31b、中間の連結管31c、31c、スペーサ31d、31d、上側の出口管31eとともに一体に組み立てられ、図示しない断熱性のケースに収納されている。
【0020】
そこで、過熱ユニット13は、入口管31bからの飽和蒸気を蒸気管31、31…に順に通過させ、各蒸気管31内のヒータ33、33…を介して蒸気を過熱し、過熱蒸気として出口管31eから排出することができる(図4の矢印方向)。ただし、各蒸気管31内の蒸気は、芯管32と蒸気管31との間の隙間をヒータ33に接触しながら蒸気管31の軸方向に流れる。また、ヒータ33、33…は、温度コントローラ17により適切に電力制御するものとする。各蒸気管31は、ヒータ33のほぼ全長に蒸気を接触させて熱効率を最大にすることができる上、斜め上向きに配置することにより、供給される飽和蒸気の湿分を含む全量を過熱蒸気として有効に利用することができる。なお、過熱ユニット13は、ヒータ33、33…を十分大容量にすることにより、極めて良好な応答性を実現することができる。
【0021】
図1において、ボイラ11からの飽和蒸気は、一次減圧弁11a、ヘッダ12を介して各過熱ユニット13に供給されるが、このとき、各圧力コントローラ16は、減圧弁16aを介し、過熱ユニット13に供給する蒸気圧を制御して過熱ユニット13に供給する蒸気量を制御する。一方、各過熱ユニット13は、温度コントローラ17を介して出口側の蒸気温度を制御し、対応する加熱室21内のノズル14、15に過熱蒸気を供給するから、各加熱室21のノズル14、15は、ネットコンベヤ22上の材料に向けて上下から過熱蒸気を噴射し、搬送中の材料を加熱調理することができる。このとき、過熱ユニット13、13…は、それぞれの入口側の圧力コントローラ16の設定圧力、出口側の温度コントローラ17の設定温度を調節することにより、各加熱室21ごとに独立に調理条件を設定することができるから、ネットコンベヤ22上の材料は、加熱室21、21…を順に通過することにより、最適の調理条件によって加熱し、焼成し、仕上げ加工することができる。
【0022】
以上の説明において、加熱室21、21…は、2室以上の任意の室数としてもよく、過熱ユニット13、13…は、圧力コントローラ16、温度コントローラ17とともに、各加熱室21に対応させて、加熱室21、21…と同数を設ければよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】全体構成ブロック系統図
【図2】加熱調理装置の構成図
【図3】要部拡大構成説明図(1)
【図4】要部拡大構成図
【図5】要部拡大構成説明図(2)
【符号の説明】
【0024】
11…ボイラ
12…ヘッダ
13…過熱ユニット
14、15…ノズル
16…圧力コントローラ
17…温度コントローラ
21…加熱室
22…ネットコンベヤ

特許出願人 アサヒ装設株式会社
代理人 弁理士 松 田 忠 秋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
飽和蒸気を発生するボイラと、ヘッダを介して供給される前記ボイラからの飽和蒸気を過熱する電気ヒータ式の過熱ユニットと、共通のネットコンベヤを介して材料を順に通過させる複数の加熱室にそれぞれ配設し、ネットコンベヤ上の材料に向けて前記過熱ユニットからの過熱蒸気を噴射する上下のノズルとを備えてなり、前記過熱ユニットは、各加熱室に対応させて設けることを特徴とする加熱調理装置における過熱蒸気供給システム。
【請求項2】
前記各過熱ユニットに供給する蒸気圧を制御する圧力コントローラを設けることを特徴とする請求項1記載の加熱調理装置における過熱蒸気供給システム。
【請求項3】
前記各過熱ユニットからの蒸気温度を制御する温度コントローラを設けることを特徴とする請求項1または請求項2記載の加熱調理装置における過熱蒸気供給システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−34482(P2006−34482A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−216829(P2004−216829)
【出願日】平成16年7月26日(2004.7.26)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第3項適用申請有り 2004国際食品工業展、社団法人 日本食品機械工業会、平成16年6月8日から6月11日まで
【出願人】(591109094)アサヒ装設株式会社 (7)
【Fターム(参考)】