説明

加熱調理装置

【課題】食品の加熱調理が可能な搬送距離を確保した上で、加熱装置の全長をコンパクト化するとともに、食品に対して均一、且つ確実な加熱をする。
【解決手段】加熱室2は、食品10を加熱する複数の加熱ゾーン2A〜2Dを有し、複数の加熱ゾーンが搬送方向に沿って直列状に連通し、且つ最上流側の加熱ゾーンと最下流側の加熱ゾーンの間に位置する中間側の加熱ゾーンの位置が、最上流側の加熱ゾーン及び/又は最下流側の加熱ゾーンよりも高い位置又は低い位置に設定され、搬送部は、食品10を加熱ゾーンの搬送方向に沿って搬送できるように配され、ノズル部は、各加熱ゾーンを搬送される食品10を挟む2方向、且つ搬送方向に対して斜めに交差する方向から過熱水蒸気を噴出するように設けられた第1ノズル部と、食品10を挟む2方向、且つ搬送方向に対して斜めに交差するとともに、第1ノズル部の過熱水蒸気の噴出方向に対して斜めに交差する方向から過熱水蒸気を噴出するように設けられた第2ノズル部とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品を搬送しながら過熱水蒸気で加熱調理する加熱調理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
加熱調理装置は、食品を加熱調理する加熱室と、この加熱室に食品を搬入するとともに、加熱室から搬出する搬送部と、加熱室に過熱水蒸気を噴出する噴出部とを具備し、食品を搬送しながら連続的に過熱水蒸気で加熱調理するものが知られている。
【0003】
このような加熱調理装置は、未調理の食品を、加熱室に搬入して搬送しながら過熱水蒸気によって加熱調理し、食品が搬出されるときには、調理済みの状態となるようにしている。
【0004】
下記特許文献1に記載のものは、上方向から過熱水蒸気を噴出する上ノズル部と、下方向から過熱水蒸気を噴出する下ノズル部を備え、加熱室内を水平方向に搬送される食品に対し、上下方向から過熱水蒸気を噴出させて食品の表裏面を同時に加熱調理できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−61655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の従来技術によると、上下方向から過熱水蒸気を噴出することで、搬送される食品の表裏面を同時に加熱調理できるので、食品を効率的に、且つ均一に調理することができる。
【0007】
しかしながら、この特許文献1の従来技術では、第1室〜第4室からなる加熱室を前後方向に沿って直列状に並べ、食品を第1室〜第4室へ搬送しながら加熱調理するものであるため、加熱装置の前後方向に沿う長さが長くなってしまうという問題があった。
【0008】
また、過熱水蒸気を上下方向から噴出させて食品を加熱する構成であるため、食品によっては、側部に過熱水蒸気を噴き付け難いものもあり、均一な加熱ができないという問題があった。
【0009】
本発明は、このような問題に対処することを課題の一例とするものである。すなわち、食品の加熱調理が可能な搬送距離を確保した上で、加熱装置の全長をコンパクト化できること、加熱装置の全長がコンパクトでありながら食品に対して均一、且つ確実な加熱ができること、等が本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような目的を達成するために、本発明による加熱調理装置は、以下の構成を少なくとも具備するものである。
【0011】
食品を加熱調理する加熱室と、前記加熱室内で食品を加熱調理するための過熱水蒸気を噴出するノズル部と、前記加熱室内外で前記食品を搬送する搬送部と、を備え、前記加熱室は、食品を加熱する複数の加熱ゾーンを有し、該複数の加熱ゾーンが搬送方向に沿って直列状に連通し、且つ最上流側の前記加熱ゾーンと最下流側の前記加熱ゾーンの間に位置する中間側の前記加熱ゾーンの位置が、最上流側の前記加熱ゾーンの上流端及び/又は最下流側の前記加熱ゾーンの下流端よりも高い位置又は低い位置に設定され、前記搬送部は、前記食品を前記加熱ゾーンの搬送方向に沿って搬送できるように配され、前記ノズル部は、前記各加熱ゾーンを搬送される前記食品を挟む2方向、且つ搬送方向に対して斜めに交差する方向から過熱水蒸気を噴出するように設けられた第1ノズル部と、前記食品を挟む2方向、且つ搬送方向に対して斜めに交差するとともに、前記第1ノズル部の過熱水蒸気の噴出方向に対して斜めに交差する方向から過熱水蒸気を噴出するように設けられた第2ノズル部とを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
このような特徴を有することで本発明は、以下の効果を奏する。すなわち、最上流側の加熱ゾーンと最下流側の加熱ゾーンの間に位置する中間側の加熱ゾーンの位置を、最上流側の加熱ゾーンの上流端及び/又は最下流側の加熱ゾーンの下流端よりも高い位置又は低い位置に設定した加熱室とし、この加熱室内で、ノズル部が搬送部によって搬送される食品に向かって四方向から過熱水蒸気を噴出するようにしているので、食品の加熱調理が可能な搬送距離を確保した上で、加熱装置の全長をコンパクト化でき、加熱装置の全長がコンパクトでありながら食品に対して均一、且つ確実な加熱ができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る加熱調理装置を示す概略側面図。
【図2】図1の要部拡大一部切欠平面図で、加熱ゾーンB付近を示す。
【図3】図1のA部拡大図。
【図4】図1のB部拡大図。
【図5】図1のC部拡大図。
【図6】図1のD部拡大図。
【図7】各加熱ゾーンにおける過熱水蒸気の温度設定の一例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
ここで食品とは、加熱調理して食べることができるものであり、食肉類、野菜類、果実類、更には、各種加工食品類である。
【0015】
過熱水蒸気の温度は、全て同温度とすることもできるが、好ましくは、過熱水蒸気の温度を、加熱ゾーン毎で異なる温度にすることである。この場合、過熱水蒸気の温度を、最上流側の加熱ゾーンから最下流側の加熱ゾーンへ、順次高くなる、或いは順次低くなるように設定することが好ましい。
【0016】
以下、本発明の加熱調理装置の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、加熱調理装置1の構成を示す概略構成図である。
【0017】
加熱調理装置1は、食品10を加熱調理する加熱室2と、加熱室2内外で食品10を搬送する搬送部3と、加熱室2内で食品10を加熱調理するための過熱水蒸気を噴出するノズル部4とを備えている。
【0018】
このような加熱調理装置1は、搬送部3で食品10を搬送しながらノズル部4から高温の過熱水蒸気を噴出することによって食品10を焼き調理することができるものであって、食品10が加熱室2から搬出された時点において焼き上がっているようになっている。
【0019】
加熱室2は、トンネル上に連通した4個の加熱ゾーン2A、2B、2C、2Dとから構成されており、最上流側の加熱ゾーン2Aが入口ゾーン2Eと連通され、最下流側の加熱ゾーン2Dが出口ゾーン2Fと連通されている。
【0020】
加熱ゾーン2Aと加熱ゾーン2Dの間に位置する中間側の加熱ゾーン2B、2Cは、入口ゾーン2Eの上流端に位置する入口20E及び出口ゾーン2Fの下流端に位置する出口20Fよりも高い位置に配されている。
【0021】
このような、加熱ゾーン2Bと入口ゾーン2Eとを、搬送方向を上方向とする加熱ゾーン2Aを介して連通し、加熱ゾーン2Cと出口ゾーン2Fとを、搬送方向を下方向とする加熱ゾーン2Dを介して連通することによって、加熱ゾーン2A〜加熱ゾーン2Dまでの形状が、図面上、逆凹型状をとなるようにしている。
【0022】
すなわち、加熱ゾーン2A〜加熱ゾーン2Dまでの形状を逆凹型状にすることによって、加熱ゾーン2Aから加熱ゾーン2Dまでの加熱室2の搬送方向の全長を、加熱ゾーン2Aから加熱ゾーン2Dに至る加熱室2の搬送距離(加熱距離)よりも短くでき、これによって、食品10の加熱調理に必要な搬送距離を確保した上で、加熱室2の搬送方向に沿う全長をコンパクト化することができる。
【0023】
尚、加熱室2の形状は、例示した逆凹型状に限らず、凹型状のような、加熱室2の搬送方向の全長を加熱室2の搬送距離(加熱距離)よりも短くできる形状であればよい。また、加熱ゾーン2A〜2Dの個数は、例示した4個に限らない。
【0024】
搬送部3は、食品10を載置する載置部30と、載置部30の両側(図2において上下方向)に位置し、この載置部30を支持して前後方向(図1において左右方向)にわたってエンドレスに巻き掛けられたチェーン31と、載置部30の載置状態を保持及び保持解除する切替手段とを備えている。
【0025】
載置部30は、図2に示すように、櫛歯形状に形成されており、その櫛歯部分で食品10を支持し、この櫛歯部分の基端部が支持杆3Aに一体状に支持されている。
【0026】
尚、載置部20の形態は、例示した櫛歯形状に限らず、食品10を載置でき、しかも、その載置された食品10に過熱水蒸気の噴きつけが可能なものであればよく、例えば、籠形状のものが挙げられる。
【0027】
載置部30の櫛歯形状は、図3〜図6に示すように、下方へ突出するように湾曲していて、載置される食品10が落下しないように支持する形状に形成されている。支持杆3Aは、チェーン31間にわたって、搬送方向の上下流側に回転可能に支持されている。
【0028】
チェーン31は、入口ゾーン2Eから逆凹型状の加熱室2を経て出口ゾーン2Fに向かい、この出口ゾーン2Fの下流端から出て下方向に方向転換して入口ゾーン2E方向に向かうとともに、上方向に方向転換して入口ゾーン2Eの上流端に戻るように、エンドレスに巻掛けられている。
【0029】
切替手段は、載置部30を、加熱ゾーン2A及び加熱ゾーン2Dでの上下移動状態と、加熱ゾーン2B及び加熱ゾーン2Cでの水平移動状態における姿勢を同姿勢に保持して、食品10の載置状態を保持するものであり、例えば、特許第4464246号に開示された構成を用いることができる(図3〜図6参照)。
【0030】
切替手段の基本的概略構成を説明すると、切替手段は、食品10の載置状態を保持する載置保持部51と、載置保持部51の載置状態を保持しながら案内する案内部52とからなる。
【0031】
載置保持部51は、載置部30の水平移動状態と上下移動状態を保持する3個の保持ローラー5A,5B,5Cを備え、前記支持杆1Aと一体回転するように支持されている。
【0032】
保持ローラー5A,5B,5Cは、載置保持部51の回転中心から放射方向3方に突出するように設けられており、これら保持ローラー5A,5B,5Cが、案内部52に接触することによって、載置状態を保持するようになっている。
【0033】
また、載置部30の水平移動状態と上下移動状態とで、保持ローラー5A,5B,5Cの案内部52に対する接触が切り替わるようになっている。
【0034】
また、図6に示すように、保持ローラー5A,5B,5Cが案内部52に対して非接触状態になることによって、載置部30が下方向に回転して載置していた食品10を落とすようになっている。
【0035】
このような切替手段を備えた搬送部3によると、載置部30の逆凹型状に形成された加熱室2の各加熱ゾーン2A〜2Dでの上下移動状態と水平移動状態において、この載置部30の姿勢を同姿勢に保つことができる。
【0036】
ノズル部4は、加熱ゾーン2A〜2D毎に、搬送部4によって搬送される食品10を挟む2方向、且つ搬送方向に対して斜めに交差する方向から過熱水蒸気を噴出するように設けられた第1ノズル部4Aと、食品10を挟む2方向、且つ搬送方向に対して斜めに交差するとともに、第1ノズル部4Aの過熱水蒸気の噴出方向に対して斜めに交差する方向から過熱水蒸気を噴出するように設けられた第2ノズル部4Bとを備えている。
【0037】
このように配した第1ノズル部4A及び第2ノズル部4Bによって、食品10に向かって四方向から過熱水蒸気を噴出するようになっているので、食品10をムラなく均一に、且つ確実に加熱調理することができる。
【0038】
第1ノズル部4A及び第2ノズル部4Bは、載置部30の全長(櫛歯が並ぶ方向)及び全幅(櫛歯の長手方向)にわたる範囲に過熱水蒸気を噴出できるように形成され、加熱室2を構成する壁面20に貫通支持されている。
【0039】
また、第1ノズル部4A及び第2ノズル部4Bは、過熱水蒸気を発生させる過熱水蒸気発生装置(図示せず)に配管(図示せず)されており、この過熱水蒸気発生装置から配管を経て、過熱水蒸気を加熱室2内に噴出するようになっている。
【0040】
以上のような構成の加熱調理装置1は、加熱室2を逆凹型状に形成したことにより、食品10の加熱調理が可能な搬送距離を確保した上で、加熱調理装置1の全長をコンパクト化できる。したがって、コンパクトな全長でありながら食品10に対して均一、且つ確実な加熱ができるため、ムラや生焼け等を生じさせることなく加熱調理することができる。
【0041】
また、加熱室2を逆凹型状に形成したことから、少なくとも、上下方向の加熱ゾーン2A、2Dに噴出する過熱水蒸気が、水平方向の加熱ゾーン2B、2C噴出する過熱水蒸気に混合し難くなるため、加熱ゾーン2A、2Dの温度管理及び加熱ゾーン2B、2Cの温度管理を容易、且つ確実に行うことができる。
【0042】
前述の過熱水蒸気発生装置は、各加熱ゾーン2A〜2Dのノズル部4が夫々独立して過熱水蒸気を噴出できるように配管され、且つ夫々独立して過熱水蒸気の温度設定ができるようになっている。
【0043】
図7は、加熱ゾーン2A〜2Dにおける過熱水蒸気の温度分布の一例を説明する説明図である。本例は、加熱ゾーン2Aには100℃の過熱水蒸気、加熱ゾーン2Bには200℃の過熱水蒸気、加熱ゾーン2Cには300℃の過熱水蒸気、加熱ゾーン2Cには400℃の過熱水蒸気を噴出するように設定したものである。
【0044】
このように、上流側から下流側に過熱水蒸気の温度を順次高くなるように設定したことによって、食品10を徐々に加熱することができ、食品10の内側から外側まで均一に加熱することができる。また、前述のように加熱ゾーン2A、2Dの温度管理及び加熱ゾーン2B、2Cの温度管理を容易、且つ確実に行うことができるため、食品10を徐々に加熱することが確実にできる。また、各加熱ゾーン2A〜2Dの境界20付近の差圧で生じる温度変化による加熱によって、良好な焼き加減や風味、香りを持つ食品10に調理できるものと期待できる
【0045】
加熱ゾーン2A〜2Dにおける過熱水蒸気の温度分布設定は、例示した温度分布設定に限らず、加熱ゾーン2A〜2Dにわたり、順次加熱水蒸気の温度が順次低くなるような設定(図示せず)、加熱ゾーン2A〜2Dの加熱水蒸気の温度が異なる温度でランダムに分布するような設定(図示せず)、加熱ゾーン2A〜2D素別の温度を同温度にする設定等、任意に設定することができる。また、過熱水蒸気の温度は、例示した温度に限らず、加熱調理する食品10の種類によって変更することができる。
【0046】
以上説明した加熱調理装置1は、加熱調理した食品10を冷凍する冷凍装置(図示せず)と組み合わせることによって、食品10の加熱調理から冷凍まで連続して行える食品加工装置(図示せず)の一部として使用できる。
【0047】
ここで使用される前述の冷凍装置は、焼き上がり直後の熱い食品10を極めて短時間でほぼ瞬間的に冷凍できる機能を有するものがよく、例えば、窒素式の冷凍装置が使用できる。
【0048】
尚、本発明は、例示した実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲の各項に記載された内容から逸脱しない範囲の構成による実施が可能である。
【符号の説明】
【0049】
1:加熱調理装置
2:加熱室
3:搬送部
4:ノズル部
2A:加熱ゾーン
2B:加熱ゾーン
2C:加熱ゾーン
2D:加熱ゾーン
10:食品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品を加熱調理する加熱室と、前記加熱室内で食品を加熱調理するための過熱水蒸気を噴出するノズル部と、前記加熱室内外で前記食品を搬送する搬送部と、を備え、前記加熱室は、食品を加熱する複数の加熱ゾーンを有し、該複数の加熱ゾーンが搬送方向に沿って直列状に連通し、且つ最上流側の前記加熱ゾーンと最下流側の前記加熱ゾーンの間に位置する中間側の前記加熱ゾーンの位置が、最上流側の前記加熱ゾーン及び/又は最下流側の前記加熱ゾーンよりも高い位置又は低い位置に設定され、前記搬送部は、前記食品を前記加熱ゾーンの搬送方向に沿って搬送できるように配され、前記ノズル部は、前記各加熱ゾーンを搬送される前記食品を挟む2方向、且つ搬送方向に対して斜めに交差する方向から過熱水蒸気を噴出するように設けられた第1ノズル部と、前記食品を挟む2方向、且つ搬送方向に対して斜めに交差するとともに、前記第1ノズル部の過熱水蒸気の噴出方向に対して斜めに交差する方向から過熱水蒸気を噴出するように設けられた第2ノズル部と、を備えていることを特徴とする加熱調理装置。
【請求項2】
前記過熱水蒸気の温度を、前記加熱ゾーン毎で異なる温度にしていることを特徴とする請求項1記載の加熱調理装置。
【請求項3】
前記過熱水蒸気の温度を、最上流側の前記加熱ゾーンから最下流側の前記加熱ゾーンへ、順次高くなるように設定していることを特徴とする請求項1又は2記載の加熱調理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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