説明

加熱調理装置

【課題】高速噴射用のエアーノズルの内部に放射温度計を配置し、高速流速のエアーを噴射開口部から噴射し、該ノズル内に油煙のみではなく、油跳ね等の進入をも防ぎ、放射温度計の受光部の損傷や、汚れを防止することにより、長期に渡る正確な温度測定の実現を可能とする温度測定手段を備えた加熱調理装置とする。
【解決手段】加熱調理装置に次の手段を採用する。第1に、本体ケーシングに、加熱手段と温度測定手段を備える。第2に、被加熱食品の温度を放射温度計により測定し、温度制御をしながら加熱調理を行う。第3に、高速噴射用に先細りに形成されたエアーノズルを、送風機と連結されたエアーダクトに連結する。第4に、エアーノズルを加熱調理器具の垂直上方を外した斜め上方に位置させると共に噴射開口部を被加熱食品に対向させる。第5に、エアーノズル内部に放射温度計をその受光部がエアーノズルの噴射開口部より被加熱食品に向かうように配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱調理装置に関するものであり、詳しくは、加熱調理器具内の被加熱食品の温度を放射温度計よりなる温度測定手段により測定し、温度制御をしながら加熱料理を行う加熱調理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
加熱調理装置を用いて加熱調理をする場合、一定温度を保持して調理する必要がある場合が存在する。例えば、天ぷらを揚げる場合には、天ぷら油の温度を設定温度(180℃)に保つ必要がある。特に、多量の調理を必要とする飲食業においては、料理の品質を一定に保つため、被加熱食品の温度を測定し、必要温度を維持しながら加熱調理を行う必要があった。
【0003】
そのため、被加熱食品の温度を測定することが従来より行われていた。被加熱食品の温度を測定する方式には、従来より接触式と非接触式があった。接触式の例として、加熱手段やその近傍に熱電対、サーミスタなどの接触式の温度計を装着する例がある。この場合、被加熱食品の温度を加熱手段やその設置台を介して間接的に検知することとなり、被加熱食品の正確な温度測定が難しかった。
【0004】
又、調理を行う者が、接触式の温度計を直接被加熱食品に接触させ、温度を測定することも考えられるが、業務として多量の調理を行う場合には、作業効率の点から好ましくなかった。
【0005】
そこで、接触式の温度計を用いず、非接触式の温度計である赤外線センサーなどを被加熱食品の上方に設置し、直接被加熱食品の温度を測定しようとする手段が考えられた。しかし、被加熱食品の上方に赤外線センサーなどを設置すると、加熱調理器具(例えば、中華鍋)の操作の邪魔となると共に、赤外線センサーを損傷させる虞があり、且つ、赤外線センサーの汚れ、特に受光部の汚れを発生させ、正確な温度測定を困難にしていた。
【0006】
赤外線センサーなどの放射温度計は、被加熱食品から放射される赤外線や可視光線を受光部で受光し、その温度を測定するものであるため、受光部の汚れは放射される赤外線や可視光線の強度の測定を狂わせ、正確な温度測定を不可能とする。
【0007】
このため、特許文献1に示すように、非接触式の赤外線センサーを用い、被加熱食品の温度を測定するに際し、赤外線センサーが加熱調理器具の操作の邪魔にならず、且つ、赤外線センサーの受光部の汚れを防止する構造を持った加熱調理装置が提供された。
【0008】
特許文献1では、赤外線センサーの受光部の近傍に、該受光部の油煙などによる汚れを防止するエアーノズルを配設することが提案された。特許文献1のエアーノズルは、受光部に対し直接エアーを吹きつけるか、受光部に被加熱食品から放射される赤外線が通過する開口を横方向からのエアーの吹きつけによるエアーカーテンで塞ぎ、該開口より油煙などが進入することを防ぎ、受光部の汚れを防止しようとするものである。
【0009】
しかし、特許文献1に示される赤外線センサーの受光部は、被加熱食品の上方に設置されている。このため、油煙のみならず、被加熱食品からの跳ね上がり物体の直撃を受けやすい。その上、受光部に対して直接エアーを吹きつけるか、横方向からのエアーカーテンで受光部付近の開口を塞ぐ方法であるので、微細で軽量の油煙などの進入は防げるが、直接被加熱食品から受光部方向に跳ね上がってくる物体、例えば油跳ねのような一定の重さを有する物体の進入を防止することはできない。更に、上記開口を通過してしまった油煙や油跳ねなどは、排出することができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003−249336号公開特許公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、温度測定手段において、高速噴射用のエアーノズルの内部に受光部が被加熱食品の方向に向けられた放射温度計を配置し、高速な流速のエアーをエアーノズルの噴射開口部から噴射することができようにし、エアーノズル内に油煙のみではなく、一定の重さを有する物体(例えば、油跳ね)の進入をも防ぎ、放射温度計の受光部の損傷や、汚れを防止することにより、長期に渡る正確な温度測定の実現を可能とする温度測定手段を備えた加熱調理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、第1の発明は、加熱調理装置に次の手段を採用する。
第1に、本体ケーシングに、加熱手段と温度測定手段を備える。
第2に、加熱手段で加熱調理器具内の被加熱食品を加熱すると共に、該加熱調理器具内の被加熱食品の温度を放射温度計よりなる温度測定手段により測定し、温度制御をしながら加熱調理を行う加熱調理装置とする。
【0013】
第3に、温度測定手段が、先端が高速噴射用に先細りに形成されたエアーノズルを、送風機と連結されたエアーダクトに連結する。
第4に、前記エアーノズルを加熱調理器具の垂直上方を外した斜め上方に位置させると共に噴射開口部を加熱調理器具内の被加熱食品に対向させる。
第5に、前記エアーノズル内部に放射温度計をその受光部が該エアーノズルの噴射開口部より加熱調理器具内の被加熱食品に向かうように配置した。
【0014】
第2の発明は、第1の発明に次の手段を付加した加熱調理装置である。
第1に、上記本体ケーシングが、中央部に加熱手段配置用開口が開けられたテーブルと、該テーブル奥縁に立設された内部中空の奥壁よりなる。
第2に、上記温度測定手段のエアーダクトが前記奥壁内部を貫通して配置される。
【0015】
第3の発明は、第1の発明に次の手段を付加した加熱調理装置である。
第1に、上記本体ケーシングが、上面の中央部に加熱手段配置用開口が開けられたテーブルと、該テーブルの加熱手段配置位置下方の排気空間と、該テーブル奥縁に立設され内部中空の奥壁を備える。
第2に、前記排気空間と前記奥壁の中空内部を連結して排気通路とする。
第3に、上記温度測定手段のエアーダクトを、該排気通路内に配置した。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、エアーノズルの噴射開口部から被加熱食品に向かって高速な流速のエアーを噴射し、受光部の存在するエアーノズル内部に油煙や、一定の重さを有する物体(例えば、油跳ね)が進入することを防止できる加熱調理装置となった。
【0017】
更に、本発明では、放射温度計をエアーノズル内部に配置しているため、放射温度計の受光部付近のエアーは高速に移動しており、エアーノズル内部に進入した油煙や油跳ねなどをエアーノズル外部に排出することができる加熱調理装置となった。
【0018】
又、本発明における放射温度計を内部に配置したエアーノズルを加熱調理器具の垂直上方を外した斜め上方に位置させるため、エアーノズル内部に油煙や油跳ねが進入する可能性を少なくすることができると共に、加熱調理装置上の加熱調理器具の取扱いが不便とならないこととなった。
【0019】
如上のようにして、放射温度計の受光部の汚れや損傷を防止することにより、長期に渡る正確な温度測定の実現を可能とすると共に、放射温度計の保守経費を節約することのできる加熱調理装置となった。
【0020】
第2の発明の効果ではあるが、本体ケーシングの奥縁に立設された奥壁に、温度測定手段のエアーダクトが貫通して配置されたことにより、加熱調理装置のコンパクト化を図ることができた。
【0021】
第3の発明の効果ではあるが、上記排気空間と上記奥壁の中空内部を連結して排気通路とすると共に、温度測定手段のエアーダクトを、該排気通路内に配置したことにより、排気通路内に位置するエアーダクトにより暖められたエアーを噴射開口部から噴射することができ、被加熱食品が噴射エアーの影響を受けることのない加熱調理装置となった。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施例を示す加熱調理装置の断面説明図
【図2】エアーノズル付近の断面説明図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面に従って、実施例と共に本発明の実施の形態について説明する。
図1は、加熱調理装置の概略を示す断面説明図であり、図中符号1は、中華用加熱調理装置であり、該中華用加熱調理装置1は、テーブル3を有する本体ケーシング2と、テーブル3の奥縁に立設された内部中空の奥壁4を有し、加熱手段、温度測定手段、加熱温度設定手段、加熱制御手段が備わっている。尚、図1中符号5は、加熱手段の上方に置かれた加熱調理器具である中華鍋である。
【0024】
テーブル3の中央部には、加熱手段配置用の開口21が開けられており、該開口21に加熱手段が設けられる。実施例における加熱手段は、電磁誘導加熱を用いている。図1中符号6が加熱用トッププレートである。実施例では、電磁誘導加熱を加熱手段としているが、これに限定されるものではなく、ガス式加熱などであってもよい。
【0025】
加熱用トッププレート6は、中華鍋5の底部を受容する凹部が形成されたもので、本体ケーシング2の上面に配置され、結晶ガラス板、或いはセラミックス板などにより構成される。この加熱用トッププレート6の裏面側部位には、高周波磁界を発生する加熱コイル(図示されていない)が配設され、この加熱コイルの出力は、加熱温度設定手段により設定され、加熱制御手段により制御されている。則ち、該加熱コイルに通電して高周波磁界を発生させ、中華鍋5の内部に渦電流を生じさせて中華鍋5を自己発熱させることにより、加熱調理器具たる中華鍋5内の被加熱食品を加熱するのである。
【0026】
開口21の下方(結果として、テーブル3の加熱手段配置位置下方)に内ケーシング22を設ける。内ケーシング22は、上面が開口した平たい直方体状のもので、非磁性材料(例えば、アルミニウム)製であり、加熱コイルから発する電磁波を遮断している。この内ケーシング22の下方には、加熱コイル冷却用のファン23が取り付けられている。
【0027】
ファン23の排気口は、内ケーシング22の下面から内ケーシング22内の排気空間25に貫通している。奥壁4の内部中空の領域には、排気通路41が形成されている。内ケーシング22の奥側には、奥壁4内の排気通路41に連通する連通穴24が開けられている。ファン23が作動すると、吹き出されたエアーは内ケーシング22内の排気空間25から奥側の連通穴24を経て、奥壁4の排気通路41を通って排気される。
【0028】
温度測定手段は、中華鍋5内の被加熱食品の加熱温度を非接触方式で測定する手段であって、温度測定手段は、本体ケーシング2底面に配置された送風機たる軸流ファン7と、軸流ファン7に連結されるエアーダクト8と、エアーダクト8の上端に連結される先端が高速噴射用に先細りに形成されたエアーノズル9と、エアーノズル9内部に設置される放射温度計(実施例では赤外線放射温度計10)とによりなる。
【0029】
エアーダクト8は、本体ケーシング2内及び奥壁4の中空内部に形成された排気通路41を通り、エアーダクト8の上端は、奥壁4上端から突出し、中華鍋5の垂直上方を外した斜め上方に位置している。エアーダクト8の上端にはエアーノズル9が連結されているので、エアーノズル9は中華鍋5の垂直上方を外した斜め上方に位置している。噴射開口部11は、中華鍋5内の被加熱食品に対向させている。その結果、エアーノズル9内部に設置された赤外線放射温度計10の受光部12がエアーノズル9の噴射開口部11より中華鍋5内の被加熱食品に向かっている。実施例では、被加熱食品への放射角度が40度に設定されている。
【0030】
以下、温度測定手段の動作について説明する。
軸流ファン7により発生させられたエアーは、エアーダクト8に送られる。エアーダクト8内のエアーは、図1のエアーダクト8内の矢印に示されるように、上方に送られる。該エアーは、排気通路41内に位置するエアーダクト8の内部を通過する際、排気通路41内を移動する高温の排気エアーにより暖められる。
【0031】
エアーダクト8内のエアーは、エアーノズル9内に送られる。エアーノズル9は先端が高速噴射用に先細りに形成されているため、エアーノズル9の噴射開口部11からは高速エアーが噴射される。これにより、油煙や油跳ねがエアーノズル9内に進入することを防止する。更に、エアーノズル9の上記形状及び内部に赤外線放射温度計10が設置されていることから、エアーノズル9内のエアー移動が高速であり、万一噴射開口部11より油煙や油跳ねが進入したとしても排出することが可能である。
【0032】
エアーノズル9の噴射開口部11は、中華鍋5内の被加熱食品に対向しているため、噴射されたエアーは被加熱食品に向かうが、通常エアーノズル9から噴射されるエアーは、さほど強いものではなく、且つ、故意に暖めているわけでもないが、排気通路41の高温排気エアーにより暖められるため、被加熱食品に噴射エアーの影響を与えることはない。
【0033】
エアーノズル9の内部に設置された赤外線放射温度計10は、受光部12が噴射開口部11から被加熱食品に向かっているため、被加熱食品から放射される赤外線の強度を検知して被加熱食品の温度を測定する。
【0034】
加熱制御手段には、加熱コイルに高周波電流を供給するインバータ回路を制御して加熱を実行するためのプログラムが記憶されている。被加熱食品の温度を測定する赤外線放射温度計10による測定温度、及び加熱温度設定手段により設定された加熱温度が伝達され、これらの情報に基づいて制御される。具体的には、赤外線放射温度計10により測定された被加熱食品の温度が加熱温度設定手段に設定した設定温度に達した時に加熱コイルの出力をOFFし、設定温度より下がった場合に加熱コイルの出力をONし、一定の設定温度を精度よく且つ効率的に確保する。
【符号の説明】
【0035】
1・・・・・・・・中華用加熱調理装置
2・・・・・・・・本体ケーシング
3・・・・・・・・テーブル
4・・・・・・・・奥壁
5・・・・・・・・中華鍋
6・・・・・・・・加熱用トッププレート
7・・・・・・・・軸流ファン
8・・・・・・・・エアーダクト
9・・・・・・・・エアーノズル
10・・・・・・・赤外線放射温度計
11・・・・・・・噴射開口部
12・・・・・・・受光部
21・・・・・・・開口
22・・・・・・・内ケーシング
23・・・・・・・ファン
24・・・・・・・連通穴
25・・・・・・・排気空間
41・・・・・・・排気通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体ケーシングに、加熱手段と温度測定手段を備え、
加熱手段で加熱調理器具内の被加熱食品を加熱すると共に、該加熱調理器具内の被加熱食品の温度を放射温度計よりなる温度測定手段により測定し、温度制御をしながら加熱調理を行う加熱調理装置において、
温度測定手段が、
先端が高速噴射用に先細りに形成されたエアーノズルを、送風機と連結されたエアーダクトに連結し、
前記エアーノズルを加熱調理器具の垂直上方を外した斜め上方に位置させると共に噴射開口部を加熱調理器具内の被加熱食品に対向させ、
前記エアーノズル内部に放射温度計をその受光部が該エアーノズルの噴射開口部より加熱調理器具内の被加熱食品に向かうように配置したことを特徴とする加熱調理装置。
【請求項2】
上記本体ケーシングが、中央部に加熱手段配置用開口が開けられたテーブルと、該テーブル奥縁に立設された内部中空の奥壁よりなり、上記温度測定手段のエアーダクトが前記奥壁内部を貫通して配置されたことを特徴とする請求項1記載の加熱調理装置。
【請求項3】
上記本体ケーシングが、上面の中央部に加熱手段配置用開口が開けられたテーブルと、該テーブルの加熱手段配置位置下方の排気空間と、該テーブル奥縁に立設され内部中空の奥壁を備え、前記排気空間と前記奥壁の中空内部を連結して排気通路とすると共に、上記温度測定手段のエアーダクトを、該排気通路内に配置したことを特徴とする請求項1記載の加熱調理装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−29237(P2013−29237A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164574(P2011−164574)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(592181440)株式会社マルゼン (29)
【Fターム(参考)】