説明

加硫用袋体及びタイヤの製造方法

【課題】未加硫ゴムをトレッドゴムと台タイヤとの間に配置し、未加硫ゴムを介してトレッドゴムが台タイヤに貼り付けられたタイヤを加硫用袋体に収容し、加硫缶内で加硫するときの加硫時間を短縮させる加硫用袋体及びタイヤの製造方法を提供する。
【解決手段】未加硫ゴムとしてのクッションゴムをトレッドゴムと台タイヤとの間に配置し、クッションゴムを介して台タイヤにトレッドゴムが配置されたタイヤ1を収容して加硫缶内に投入される加硫用袋体としてのエンベロープ5において、エンベロープ5にタイヤ1を加温する予熱手段としてのシリコンヒーター7が接着層に対応する位置となるように設け、タイヤ1がエンベロープ5に収容されたタイヤ1を加硫缶に投入する前にシリコンヒーター7によりクッションゴムを加温するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、未加硫接着層を介してトレッドゴムが貼り付けられたタイヤを収容して加硫缶内に投入される加硫用袋体及びタイヤの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、トラック,バス等の車両に使用されるタイヤは、タイヤに作用する荷重が大きいため、路面と接地するトレッドゴムの摩耗が激しく、トレッドゴムの寿命に比べてタイヤの台となる部分はまだ十分に継続使用ができるにもかかわらずタイヤとしての寿命が終わることになってしまう。トラック,バス等では、図6に示すように、使用済みのタイヤから摩耗したトレッドゴム部分を切削する等して取り除いて新品のトレッドゴム4を貼り付ける貼り付け面を形成した台タイヤ2に、新品のトレッドゴム4を貼り付けてタイヤとしての機能が回復されて更生タイヤとして再び使用される。
【0003】
上記のように、台タイヤ2に貼り付けられるトレッドゴムには、例えば、あらかじめトレッドパターンとともに所定寸法に成型されて加硫された加硫済みのトレッドゴム(プレキュアトレッド)がある。このプレキュアトレッドから成るトレッドゴム4を台タイヤ2に貼り付けて更生される更生タイヤは、例えば、特許文献1に示すように製造される。
【0004】
図6〜図9に示すように、更生タイヤは、摩耗したタイヤのトレッドゴム部分がバフがけされた台タイヤ2の貼り付け面に加硫用接着層として用いられる未加硫ゴムとしてのクッションゴム3を配置して、このクッションゴム3の上にトレッドゴム4を貼り付け、トレッドゴム4と台タイヤ2との表面を加硫用袋体としてのドーナツ状で、かつ、内周開口型のエンベロープ5と呼ばれるカバーで被い、このエンベロープ5と台タイヤ2の内径部分を密着させるビードリング8を台タイヤ2の内径部分に嵌め込む。これにより、エンベロープ5の内面とタイヤ表面との間に閉じた空間が形成され、この空間内の空気を脱気することにより、エンベロープ5がトレッドゴム4を押圧して台タイヤ2に密着させる。このエンベロープ5がタイヤ1を被った状態で加硫缶と称される容器内に投入されて加温,加圧することにより、上記未加硫ゴムのクッションゴム3を加硫することでトレッドゴム4が台タイヤ2に加硫接着される。
すなわち、未加硫ゴムからなるクッションゴム3をトレッドゴム4と台タイヤ2との間に配置し、加硫缶内で加硫することでトレッドゴム4と台タイヤ2とをクッションゴム3により接着する形態である。
【0005】
タイヤ表面を被うエンベロープ5には、図9に示すように、エア抜きバルブ(以下単にバルブと示す)9が設けられ、加硫容器の内部に設けられたフックにビードリング8が嵌められたタイヤ1の内径部分が掛けられて吊るされる。このエンベロープ5のバルブ9と容器本体の内部に配管されている接続管とが接続される。
【0006】
例えば、加硫缶は、特許文献2に示すように、エンベロープ5で被われたタイヤを収容する容器本体と、この容器本体を密閉する容器蓋と、容器内部に設けられて容器内部を加熱する熱交換器と接続される加熱手段と、容器内部に加圧した空気等を供給する加圧手段によって構成され、この加硫缶の容器本体にエンベロープ5ごとトレッドゴム4付きのタイヤ1が設置されて加硫される。
【0007】
上記構成の加硫方法によれば、バフがけが完了して台タイヤ2に形成された貼り付け面に、台タイヤ2とトレッドゴム4を密着接着させる接着層としての未加硫ゴムからなるクッションゴム3を配設したのちに、このクッションゴム3上に、トレッドゴム4を配置して貼り付ける。このトレッドゴム4が台タイヤ2に貼り付けられたタイヤ1をエンベロープマシン6により拡径されたエンベロープ5の内側に収容させて、タイヤ表面全体を被ったのちに、両側のタイヤ内径部にビードリング8を嵌め込んでエンベロープ5をタイヤ内径部分に密着させて、エンベロープ5の内面とタイヤ1の表面との空間を密閉する。
エンベロープ5によって被われたタイヤ1を加硫缶の容器本体の天井部に設けられたフックでタイヤ1の内径部分を保持させて吊るすとともに、容器本体内の天井部分から延長する接続管とエンベロープ5のバルブ9を接続して加硫準備を整える。すべてのタイヤ1の設置が終了したのちに減圧手段を作動させて、接続管とエンベロープ5のバルブ9を介して、エンベロープ5が被うタイヤ表面の空間から空気を抜き取り、エンベロープ5をトレッドゴム4に密着させて台タイヤ2に対して押圧させる。各タイヤ1から空気の抜き取りが確認されたのちに容器本体の容器蓋を閉じて容器内を密閉する。
この密閉された容器内を加熱手段から熱交換器に加硫媒体を循環させて、加硫容器内の温度を100℃〜130℃程度まで加熱し、この温度を約2時間〜5時間維持するとともに、加圧手段15を駆動させて容器内の圧力を5〜7kg/cm程度に加圧することで、クッションゴム3が加硫されてトレッドゴム4と台タイヤ2が強固に接着される。
【0008】
上記方法により製造されるタイヤには、次のような利点がある。必要な性能を有する台タイヤ2とトレッドゴム4とを組み合わせてタイヤユーザーが所望するタイヤを製造することが可能となり、タイヤユーザーにとっては経済的にも環境にも良い方法である。また、タイヤメーカーにとっては、用途別又はサイズ別に台タイヤを用意すれば良いので、トレッドゴム4の種類に合わせてタイヤをまるごと在庫する必要がないため、在庫の占有空間が少なくなるので、ユーザー,メーカーにとって効率の良いタイヤ製造方法である。
【0009】
しかしながら、特許文献1の方法によれば、トレッドゴム4を貼り付けた台タイヤ2を1本づつエンベロープ5に入れ、さらに容器本体内部に設けられたフック及び接続管に1本づつ設けなければならないため、一度に製造できるタイヤ1の数量は、容器本体内のフックと接続管の数量に依存し、タイヤ1の加硫中にも次々とエンベロープ5に収容された加硫待ちのタイヤセット10の山ができてしまい、これら加硫待ちのタイヤセット10の加硫待ち時間を短縮して効率よく、更生タイヤ又は新品タイヤを製造するには一回の加硫にかかる加硫時間の短縮が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平5−154940号公報
【特許文献2】特開2007−203684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記課題を解決するため、未加硫ゴムをトレッドゴムと台タイヤとの間に配置し、未加硫ゴムを介してトレッドゴムが台タイヤに貼り付けられたタイヤを加硫用袋体に収容し、加硫缶内で加硫するときの加硫時間を短縮させる加硫用袋体及びタイヤの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の形態として、未加硫ゴムをトレッドゴムと台タイヤとの間に配置し、未加硫ゴムを介して台タイヤにトレッドゴムが配置されたタイヤを収容して加硫缶内に投入される加硫用袋体であって、加硫用袋体にタイヤを加温する予熱手段を設けるようにした。
本発明によれば、加硫缶で加硫する前の待機時間中に、加硫用袋体に設けられた予熱手段により、タイヤを加温することができるので、予熱されたタイヤを加硫缶内に投入すれば、既にタイヤが所定の温度に加温されているため加硫缶での加硫時間が短くて済む。さらに、従来の加硫用袋体としてのエンベロープで被覆するのと同様に作業が行えるので、タイヤ製造における工程を増やすことなく生産性を向上させることが可能となる。
【0013】
本発明の第2の形態として、予熱手段は、加硫用袋体に収容されたタイヤの未加硫ゴムに対応する位置に設けるようにした。
本発明によれば、加硫缶でタイヤを加温,加硫するときに、トレッドゴムを介して未加硫ゴムが加温されるため未加硫ゴムまでの加温には時間を要するので、加硫缶にタイヤを投入する前に、あらかじめ接着層としての未加硫ゴムが加温されて予熱できるので、加硫缶での加硫時間を短縮するとともに、未加硫ゴムが加温不足となることなく、トレッドゴムを台タイヤに接着することができる。
【0014】
本発明の第3の形態として、未加硫ゴムをトレッドゴムと台タイヤとの間に配置し、加硫缶内で加硫することでトレッドゴムと台タイヤとを接着する工程を含むタイヤの製造方法において、未加硫ゴムを介して配置されたトレッドゴムと台タイヤとを加硫缶内で加硫する前に、タイヤを予熱手段で加温する予熱工程を有するようにした。
本発明によれば、加硫缶での加硫の待機時間中に、加硫用袋体に設けられた予熱手段により加温する予熱工程を有することで、加硫缶にタイヤを投入する前に、タイヤをあらかじめ予熱して加温することができるので、予熱されたタイヤを加硫缶内に投入したときには、既にタイヤが所定の温度に加温されているため加硫缶での加硫時間が短くて済むのでタイヤ製造における工程を増やすことなく生産性を向上させることが可能となる。
【0015】
本発明の第4の形態として、予熱工程は、加硫用袋体に設けられた予熱手段により行うようにした。
本発明によれば、予熱工程で加硫用袋体に設けられた予熱手段により、加硫缶にタイヤを投入する前にあらかじめタイヤが加温されるので、予熱されたタイヤを加硫缶内に投入したときには、既にタイヤが所定の温度に加温されているため加硫缶での加硫時間が短くて済む。
【0016】
本発明の第5の形態として、予熱手段は、加硫用袋体に収容されたタイヤの未加硫ゴムに対応する位置を部分的に加温するようにした。
本発明によれば、加硫缶でタイヤを加温,加硫するときに、トレッドゴムを介して接着層としての未加硫ゴムが加温されるため、未加硫ゴムまでの加温には時間を要するが、加硫缶にタイヤを投入する前に、予熱工程であらかじめ部分的に未加硫ゴムが予熱されて加温されるので、加硫缶での加硫時間を短縮するとともに、接着層としての未加硫ゴムが加温不足となることなく、トレッドゴムを接着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る加硫用袋体によりタイヤを予熱する概念及び加硫用袋体の構成を示す図。
【図2】本発明に係る加硫缶による加硫工程の概略図。
【図3】本発明に係る加硫用袋体によって被覆されたタイヤセットの断面拡大図。
【図4】本発明に係る加硫用袋体へのタイヤの収容を示す図。
【図5】本発明に係るシリコンヒーターの概略構成図。
【図6】クッションゴム及びトレッドゴムが貼り付けられたタイヤの断面図。
【図7】エンベローピングマシンにより拡径されたエンベロープへのタイヤの収容図。
【図8】エンベロープにより被覆されたタイヤがビードリングにより密封される図。
【図9】エンベロープされたタイヤのタイヤセットを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
実施形態
図1,図2は、エンベローピングされたタイヤ1を加硫缶内に投入した一実施形態を示す図である。同図において、11は、タイヤ1を収容して加硫する加硫缶を示す。
加硫缶11は、一方が開口する底部を有する横置き円筒状の容器本体12と、容器本体12の開口部にヒンジを介して取り付けられ、この開口部を開閉する容器蓋13からなり、容器本体12が横向きに工場内等の床面に沿うように設けられる。容器本体12は、開口部を容器蓋13で閉じたときに密閉した空間を形成して圧力容器となるように設計されており、加硫缶11内を加熱する加熱手段14と、容器内を加圧する加圧手段15とを備える。
容器本体12の天井部16には、エンベローピング(被覆)されたタイヤセット10を吊下げるフック17と、後述の加硫用袋体としてのエンベロープ5のバルブ9に接続される接続管18が設けられる。フック17と接続管18はセットで用いられ、例えば、容器本体12内の天井部16に22組設けられている。
各接続管18は、容器本体12を内外に貫通する配管と連通し、容器外部に設けられた減圧手段19に接続されている。これにより、接続管18と加硫用袋体としてのエンベロープ5のバルブ9とを接続して減圧手段19を駆動させることにより、エンベロープ5とタイヤ表面の間の空気が吸い出されて、エンベロープ5がトレッドゴム4を台タイヤに押し付けるように作用してトレッドゴム4が台タイヤ2に密着する。
【0019】
加熱手段14は、例えば、図外の電気的に加熱されるヒーターや、容器外部から加熱媒体を循環させて容器内に設けた熱交換器14Aにより容器本体12内を加熱するように構成される。
また、加圧手段15は、図外のコンプレッサ等により構成され、容器内に加圧された空気等を送り込むことで容器本体12内の圧力を高める。
すなわち、加熱手段14により、容器内の温度を上昇させて、トレッドゴム4と台タイヤ2の間に配置した未加硫の接着層としてのクッションゴム3を加硫するとともに、加圧手段15により容器内の圧力を上昇させて、タイヤ内面側と、エンベロープ5を介してタイヤ表面側から加圧してトレッドゴム4を台タイヤ2に押圧させることで加硫接着が行われる。なお、容器本体12及び容器蓋13、減圧手段19、加熱手段14、加圧手段15により加硫缶11を構成する。
例えば、容器本体12の寸法は、22本同時に加硫できる一般的な大きさのもので、内径が約2.5mで、長さが約7mである。
この加硫缶11内に、本発明の加硫用袋体としてのエンベロープ5によって被覆されたタイヤ1が設けられて加硫される。
【0020】
図3は、エンベロープ5によって被覆されたタイヤ1の断面拡大図である。
タイヤ1は、バフがけが完了して台タイヤ2に形成された貼り付け面に、台タイヤ2とトレッドゴム4を密着接着させるトレッドゴム貼り付け用の接着層としての未加硫ゴムからなるクッションゴム3を配設したのちに、このクッションゴム3上に、トレッドパターンが成型された加硫済みのトレッドゴム4を配置して貼り付けたものである。このタイヤ1がエンベロープ5によって収容されて加硫缶11内に投入される。
【0021】
図4(a),(b)に示すように、エンベロープ5は、可撓性を有する例えばゴム等からなり、タイヤ1のタイヤ外周被い部5aと左右のタイヤ側部被い部5b,5bを有するようにドーナツ袋状に成型したものである。このエンベロープ5は、タイヤ側部被い部5bの外径が被覆するタイヤ1の直径よりもやや小さく設定され、タイヤ側部被い部5bの開口する内径がタイヤ1のタイヤ内径部分よりも小さく設定され、タイヤ外周被い部5aと左右のタイヤ側部被い部5b,5bでタイヤ1の表面を被ったときに丁度、タイヤ1の表面に密着するような大きさに成型されている。このエンベロープ5の内面には、布等の多孔体からなるライナー32と、加硫缶11への投入前にタイヤ1のトレッド部を加温する予熱手段としてのシリコンヒーター7と、エンベロープ5を内外に貫通するバルブ9を備える。
【0022】
ライナー32は、エンベロープ5の内面全体に設けられ、加硫缶11で加硫する前にエンベロープ5により被覆されたタイヤ表面との空間の空気を脱気して、エンベロープ5をトレッドゴム4に密着させて台タイヤ2に押圧させるときに、エンベロープ5とトレッドゴム4や台タイヤ2の表面との間に隙間を作り、脱気し易くするために設けられる。
【0023】
予熱手段としてのシリコンヒーター7は、図5(a),(b)に示すように、例えば、上下2枚のシリコンゴムシート7a,7bの間に所定のパターンで抵抗エレメント7cを配し、上下のシリコンゴムシート7a,7bを圧縮加圧しつつ加熱して、加硫を施したものである。この抵抗エレメント7cの両端部には電源コード7dとプラグ7eが取り付けられ、プラグ7eから電源が供給されることで抵抗エレメント7cが発熱して、シリコンゴムシート7a,7bを介してタイヤ表面を加温する。すなわち、シリコンヒーター7は薄いシート状に成型されたシリコンゴムと電熱線を一体化させた柔らかい薄板状のヒーターである。
この予熱手段としてのシリコンヒーター7は、タイヤ1のトレッド部外周を1周被うように帯状に成型されたもので、タイヤ1をエンベロープ5で被ったときに丁度、トレッドゴム4と重なるようにライナー32上に位置するようにエンベロープ5内側に設けられる。すなわち、エンベロープ5のタイヤ外周被い部5aの内側に沿って筒状に成型され、トレッドゴム4に対応して、シリコンヒーター7がトレッドゴム4と直接接触してクッションゴム3を加温するように設けられる。
本例では、シリコンヒーター7はトレッド部外周を1周被うように帯状に成型された一枚ものを用いたが、加温する面積が小さなものを複数組み合わせて、トレッド部外周を被うようにエンベロープ5の内側に設けても良い。
なお、未加硫ゴムとしてのクッションゴム3をトレッドゴム4と台タイヤ2との間に配置されたタイヤ1を予熱する予熱手段には、シリコンヒーター7だけでなく、加温する抵抗エレメント7cをフィルム状のもので被ったフィルムヒーター等であっても良い。要は、エンベロープ5の内面に容易に設けることのできる大きさ,厚さ,柔らかさ(可撓性)を有し、未加硫ゴムのクッションゴム3を予熱でき、タイヤ1とともに加硫缶11に投入されて加温,加硫したときに、予熱手段が壊れないものであれば良い。
このようにシリコンヒーター7を構成して、トレッドゴム4を介して部分的に接着層となる未加硫ゴムとしてのクッションゴム3を100℃〜130℃で加温して予熱することで、既に加硫済みのビード部やサイド部等が過加硫になることを防止することができる。なお、台タイヤ2に貼り付けるトレッドゴム4が厚肉の場合には、トレッド部だけでなくショルダー部も被うことができる大きさのシリコンヒーターを用いて、ショルダー部からもクッションゴム3が加温されるように構成しても良い。
【0024】
上記構成のエンベロープによりタイヤ1を加硫する手順について説明する。
まず、台タイヤ2にトレッドゴム貼り付け用の接着層である未加硫ゴムとしてのクッションゴム3を貼り付け、このクッションゴム3の上にトレッドゴム4を貼り付けたのち、タイヤ1を図4(a),図7に示すようなエンベローピングマシン6によりエンベロープ5の開口部が拡径保持され一方からエンベロープ5の内側にタイヤ1を位置させた後、エンベローピングマシン6のアーム6Aをエンベロープ5の開口部が縮径するように操作して、タイヤ1の表面をエンベロープ5で被覆して収容する。このエンベロープ5及びタイヤ1の内径部分の開口部にビードリング8をタイヤ1の内径部分に左右からそれぞれ嵌め込んでエンベロープ5をタイヤ1の表面に対して密封し、タイヤセット10を作製する。
【0025】
順次、タイヤセット10の作製を繰り返し、例えば、加硫缶11の許容収容数の22本を容器本体12の天井部16に設けられたフック17にタイヤセット10の開口する内径部分を掛けるとともに、エンベロープ5のバルブ9と容器本体12から延長する接続管18とを接続して、タイヤ表面とエンベロープ5の内面との間の空気を脱気したのち、容器蓋13を閉じて初回の加硫を開始する。この加硫に要する時間は、予熱が施されていないタイヤ1のため約2時間〜5時間である。初回の加硫中に次々とエンベロープ5に被覆され、収容されるタイヤセット10は、エンベロープ5から延長する電源コード7dのプラグ7eを電源供給装置21と接続して、加硫の待機中にシリコンヒーター7の対応するトレッドゴム4及びクッションゴム3が部分的に順次予熱される。このときの予熱温度は、例えば、加硫缶11における加硫温度の100℃〜130℃に設定される。
なお、初回の加硫に用いるエンベロープは、シリコンヒーターを有するものであっても無くても良い。
【0026】
この予熱により加硫缶11での加硫前にトレッドゴム4を介して未加硫ゴムとしてのクッションゴム3を加温して、予熱されたタイヤセット10を加硫缶11に投入したときに直ちにタイヤ1全体の加硫を進行させるとともに、クッションゴム3を十分に加温,加硫して台タイヤ2とトレッドゴム4が接着されるようにする。これにより、加硫缶11において行われるタイヤ1としての加硫は、短時間で済むことになる。
【0027】
初回のタイヤ1の加硫が終了すると、予熱されたタイヤセット10を加硫缶11に上記手順により予熱手段のシリコンヒーター7ごと投入されて加硫が開始される。初回以降の加硫時間は、予熱されているため、予熱しないときと比べて加硫時間が短縮され、具体的には、約30分〜60分で加硫が終了することになる。
つまり、タイヤ1の初回の加硫のみ、従来と同様の加硫時間、約2時間〜5時間が必要となるが、初回以降の予熱済みの場合には、加硫時間が約30分〜60分で済むので、生産性が約4倍以上向上することになる。
なお、予熱手段としてのシリコンヒーター7による予熱は、好ましくは、規定本数、例えば、一度に加硫缶11の許容する本数(本例では22本)に達した後に、同時に予熱を開始することで、予熱によるタイヤ間の温度のバラツキをなくすことができる。
【0028】
以上説明したように、本発明によれば、トレッドゴム4を貼り付けてタイヤ1を加硫して製造するときに使用するエンベロープ5に予熱手段としてのシリコンヒーター7を設けて加硫缶11での加硫の待機時間中にトレッドゴム4及びクッションゴム3を加温して予熱しておくので、待機時間を有効に活用して加硫缶11での加硫時間を短縮させることができる。また、予熱手段がシリコンヒーター7によって構成されているので、トレッドゴム4に対して密着できるので効率良く予熱することができる。また、シリコンヒーター7は加温するヒーター部分がシリコンによりコーティングされているので、ゴム等の可撓性を有する素材からなるエンベロープ5の伸縮を妨げることがないため、従来のエンベロープで被覆するのと同様に作業が行えるので、タイヤ製造における工程を増やすことなく生産性を向上させることが可能となる。
【0029】
上記実施形態において、台タイヤ2に貼り付けられるトレッドゴム4を加硫済みのプレキュアトレッドゴムとして例示したが、トレッドパターンが成型された半加硫済みのトレッドゴムであっても、上記のような効果が同様に得られる。
【符号の説明】
【0030】
1 タイヤ、2 台タイヤ、3 クッションゴム、4 トレッドゴム、
5 エンベロープ、7 シリコンヒーター、8 ビードリング、9 バルブ、
10 タイヤセット、11 加硫缶、12 容器本体、13 容器蓋、
14 加熱手段、15 加圧手段、17 フック、18 接続管、19 減圧手段、
21 電源供給装置、32 ライナー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
未加硫ゴムをトレッドゴムと台タイヤとの間に配置し、前記未加硫ゴムを介して前記台タイヤに前記トレッドゴムが配置されたタイヤを収容して加硫缶内に投入される加硫用袋体であって、
前記加硫用袋体に前記タイヤを加温する予熱手段を設けたことを特徴とする加硫用袋体。
【請求項2】
前記予熱手段は、加硫用袋体に収容されたタイヤの前記未加硫ゴムに対応する位置に設けられることを特徴とする請求項1に記載の加硫用袋体。
【請求項3】
未加硫ゴムをトレッドゴムと台タイヤとの間に配置し、加硫缶内で加硫することでトレッドゴムと台タイヤとを接着する工程を含むタイヤの製造方法において、
前記未加硫ゴムを介して配置された前記トレッドゴムと前記台タイヤとを加硫缶内で加硫する前に予熱手段で加温する予熱工程を有することを特徴とするタイヤの製造方法。
【請求項4】
前記予熱工程は、加硫用袋体に設けられた予熱手段により行うことを特徴とする請求項3に記載のタイヤの製造方法。
【請求項5】
前記予熱手段は、前記加硫用袋体に収容されたタイヤの未加硫ゴムに対応する位置を部分的に加温することを特徴とする請求項4に記載のタイヤの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−56693(P2011−56693A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−206384(P2009−206384)
【出願日】平成21年9月7日(2009.9.7)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】